説明

蓄熱システム

【課題】潜熱蓄熱可能な蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに利用することのできる蓄熱システムを提供する。
【解決手段】ウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5に蓄えられた熱の冷却水を介しての放出を行う際、蓄熱カプセル7内の蓄熱材の温度に応じて、ウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5を通過する冷却水の流量が調整される。このため、蓄熱カプセル7内における蓄熱材の放熱に伴う温度低下により同蓄熱材の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材における蓄熱カプセル7の外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、そのときに蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることが可能になる。そして、こうした蓄熱器5を通過する冷却水の流量の増加により、蓄熱器5の熱が速やかに冷却水を介して放出されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加温や冷却のための熱媒体を循環させる循環回路を備えた各種機器において使用されない余剰の熱を一時的に蓄えておき、その蓄えた熱を必要なときに放出して使用する蓄熱システムが採用されている。こうした蓄熱システムには、外部と断熱された蓄熱器(特許文献1参照)に対する上記熱媒体の流入及び流出を行うポンプと、そのポンプの駆動による蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を制御する制御部とが設けられている。同蓄熱システムでは、熱媒体が高温のときにポンプの駆動により蓄熱器に同熱媒体を流入させることにより蓄熱が行われる。そして、各種機器にて熱を必要とするときには、ポンプの駆動を通じて熱媒体が上記蓄熱器を通過するようにされ、それによって蓄熱器から熱が放出されて各種機器にて利用される。
【0003】
ところで、蓄熱システムにおいて、蓄熱器の容量を小さく抑えつつ同蓄熱器全体の蓄熱量を大きくするためには、その蓄熱器内に潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を入れることで同蓄熱器を潜熱蓄熱可能なものとすることが有効である。ここで、潜熱蓄熱とは、蓄熱材となる物質の状態変化(例えば固体と液体との間での変化)に伴う同物質の吸熱・放熱を利用した蓄熱のことである。こうした潜熱蓄熱可能な蓄熱器を用いた場合、蓄熱材での蓄熱を行うべく高温の熱媒体を蓄熱器に入れたとき、同熱媒体の熱により蓄熱材が固体から液体に変化して潜熱蓄熱が行われるようになる。そして、蓄熱器に蓄えられた熱を放出して利用する際、ポンプの駆動を通じて熱媒体が上記蓄熱器を通過するようにされると、液体の状態となっている蓄熱材の保持する熱が蓄熱器を通過する上記熱媒体に伝達されるとともに、それに伴って蓄熱材が液体から固体へと徐々に変化してゆく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−124929公報(段落[0002])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、蓄熱器を潜熱蓄熱可能なものとすることで、蓄熱器の容量を小さく抑えつつ同蓄熱器全体の蓄熱量を大きくすることが可能にはなる。しかし、上記潜熱蓄熱可能な蓄熱器では、同蓄熱器に蓄えられた熱の放出を速やかに行えない傾向があり、そうした傾向に関係して上記蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに利用することが困難になるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、潜熱蓄熱可能な蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに利用することのできる蓄熱システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明によれば、外部と断熱された蓄熱器による蓄熱を行う際には、ポンプの駆動により同蓄熱器に高温の熱媒体が流入される。この蓄熱器の内部には、潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を封入した多数の蓄熱カプセルが入れられている。そして、蓄熱器内に流入した上記高温の熱媒体と同蓄熱器内の各蓄熱カプセル(蓄熱材)との間の熱交換を通じて、その熱媒体から各蓄熱カプセル内の蓄熱材に熱が伝達される。こうした熱媒体から各蓄熱カプセル内の蓄熱材への熱の伝達により、それら蓄熱材が固体から液体に変化して潜熱蓄熱が行われる。このように蓄熱器を潜熱蓄熱を可能なものとすることで、同蓄熱器の容量を小さく抑えつつ蓄熱器全体の蓄熱量を大きくすることができる。
【0008】
一方、蓄熱器に蓄えられた熱を利用すべく放出する必要のあるときには、ポンプの駆動により、蓄熱器に低温の熱媒体が流入され、その後に同熱媒体が蓄熱器を通過して流出するようにされる。このように蓄熱器を低温の熱媒体が通過するとき、その低温の熱媒体と蓄熱器内の各蓄熱カプセル(蓄熱材)との間の熱交換を通じて、各蓄熱カプセル内で高温のために液体の状態となっている蓄熱材から上記熱媒体に熱が伝達される。このように蓄熱材からの熱が伝達されて高温となった熱媒体を蓄熱器から流出させることにより、蓄熱器に蓄えられた熱が放出されて利用可能とされる。なお、蓄熱器における各蓄熱カプセル内の蓄熱材は、自身の熱を上述したように熱媒体に伝達するにつれて温度低下して液体から固体へと徐々に変化してゆく。
【0009】
ところで、上記潜熱蓄熱可能な蓄熱器においては、同蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を速やかに行えない傾向がある。これは、蓄熱器からの熱の放出に伴い同蓄熱器の内部に入れられた各蓄熱カプセル内の蓄熱材が温度低下して液体から固体に徐々に変化する過程で、蓄熱材は熱媒体との熱交換を直接的に行う蓄熱カプセルの外周に近い部分で凝固し始め、その凝固した部分によって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるためと推測される。そして、潜熱蓄熱可能な蓄熱器に蓄えられた熱の放出を速やかに行えないという傾向に関係して、上記蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに利用することが困難になるという問題が生じる。
【0010】
この点、請求項1記載の発明では、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、蓄熱カプセル内の蓄熱材の温度に応じて、ポンプの駆動により蓄熱器を通過する熱媒体の流量が調整される。このため、蓄熱カプセル内における蓄熱材の放熱に伴う温度低下により同蓄熱材の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材における蓄熱カプセルの外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとき、蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることが可能になる。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させれば、蓄熱材の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器の熱が速やかに熱媒体を介して放出されるようになる。従って、蓄熱器に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材の凝固した部分に起因して同蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに放出して利用することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、蓄熱カプセル内の蓄熱材の温度が低下するほど、ポンプの駆動により蓄熱器を通過する熱媒体の流量が多くされる。このため、蓄熱カプセル内における蓄熱材が放熱に伴って徐々に温度低下するとき、同蓄熱材の温度が低下するほど蓄熱材の凝固率が高くなって同蓄熱材から熱媒体への熱伝達の妨げが大きくなるとしても、それに合わせて蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることができる。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることで、蓄熱材の温度低下に伴い蓄熱材の凝固率が高くなってゆく過程において、より的確に蓄熱器からの速やかな放熱を実現することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、蓄熱器内における蓄熱材の現在の温度のもとで、その蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値としたときの同蓄熱器からの単位時間当たりの放出可能熱量が求められる。そして、このときの蓄熱器を通過する熱媒体の流量に関しては、蓄熱器から単位時間当たりに放出される熱量に関する要求熱量(要求値)と上記放出可能熱量とに基づき算出される増加量分だけ上記ベース値に対し増加させた値に調整される。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し増加量分だけ増加させれば、蓄熱材の温度低下に伴う凝固率の上昇によって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器の熱が速やかに熱媒体を介して放出される。また、蓄熱器を通過する熱媒体の流量のベース値に対する上記増加量が蓄熱器から単位時間当たりに放出される熱量に関する要求熱量と上記放出可能熱量とに基づき算出されるため、蓄熱器から単位時間当たりに放出される実際の熱量が上記要求熱量に近づくよう上記増加量を算出することができる。その結果、蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し増加量分だけ増加した値に調整したとき、蓄熱器から単位時間当たりに放出される実際の熱量を上記要求熱量に近づけることができるようになる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、蓄熱器を通過する熱媒体の流量がベース値に対し上記増加量分だけ増加させた値に調整される。そして、この増加量に関しては、蓄熱カプセル内の蓄熱材からの放熱による同蓄熱材の温度低下に伴って上記放出可能熱量が低下するほど、大きい値となるように算出される。このため、蓄熱カプセル内における蓄熱材が放熱に伴って徐々に温度低下するとき、同蓄熱材の温度が低下するほど蓄熱材の凝固率が高くなって同蓄熱材から熱媒体への熱伝達の妨げが大きくなるとしても、それに合わせて蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることができる。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることで、蓄熱材の温度低下に伴い蓄熱材の凝固率が高くなってゆく過程において、より的確に蓄熱器からの速やかな放熱を実現することができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、熱媒体は車両に搭載されるエンジンとの間で熱交換を行うべく循環回路を循環するものであり、そのエンジンの暖機完了前など同エンジンの加温が必要とされるとき、循環回路を循環する上記熱媒体がポンプの駆動により蓄熱器を通過するようにされる。これにより、蓄熱器に蓄えられた熱が上記熱媒体を介して循環回路に放出されてエンジンの暖機に利用されることとなる。そして、蓄熱器からの熱の放出中、蓄熱カプセル内の蓄熱材の温度に応じて蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し増加量分だけ増加させた値に調整する際、その増加量を求めるために用いられる上記要求熱量はエンジンの暖機完了に必要な総熱量に基づいて算出される。従って、上記要求熱量を用いて求められた増加量分だけ蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し増加させた値に調整することで、蓄熱器から単位時間当たりに放出される実際の熱量を上記要求熱量に近づけることができ、蓄熱器に蓄えられた熱を利用してエンジンの暖機を速やかに完了させることができる。
【0015】
請求項6記載の発明によれば、制御手段を通じてのポンプの駆動による蓄熱器からの熱の放出中であって、蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し増加量分だけ増加させた値に調整する際、その増加量を求めるために用いられる上記要求熱量はエンジンの暖機完了に必要な総熱量に基づいて算出される。ここで、上記増加量を大きくして蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し大幅に増加させるほど、エンジンを速やかに暖機完了させることができるようにはなる。ただし、蓄熱器を通過する熱媒体の流量がベース値に対して過度に増加すると、その流量を実現するためのポンプの駆動に起因してエンジンの燃費が悪化することとなる。この点、請求項3記載の発明では、上記増加量分のポンプの駆動に伴うエンジンの燃費悪化と、上記増加量分の冷却水の流量の増加に伴うエンジンの早期暖機完了による同エンジンの燃費改善との両方をふまえたうえで、エンジンの燃費が最良となるように上記増加量が算出される。従って、エンジンの暖機を早期に完了させようとするあまり、蓄熱器を通過する熱媒体の流量を多くしすぎてしまい、その流量を実現するためのポンプの駆動に起因してエンジンの燃費が悪化することを抑制できるようになる。
【0016】
請求項7記載の発明によれば、循環回路を循環する熱媒体はエンジンとの間で熱交換を行う他、車室内に送風される空気を同熱媒体の熱によって暖めるヒータコア、及び、エンジンの排気の熱を同熱媒体によって回収する排熱回収器を通過する。そして、エンジンの暖機完了前など同エンジンの加温が必要とされるとき、循環回路を循環する上記熱媒体がポンプの駆動により蓄熱器を通過するようにされ、それによって蓄熱器に蓄えられた熱が上記熱媒体を介して循環回路に放出されてエンジンの暖機に利用される。蓄熱器からの熱の放出中、蓄熱カプセル内の蓄熱材の温度に応じて蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し増加量分だけ増加させた値に調整する際、その増加量を求めるために用いられる上記要求熱量は次にように算出される。すなわち、エンジンの暖機完了に必要な総熱量、車室内に送風する空気の温度が車室の暖房要求に応じた値となるようヒータコアにて空気を温めるために同ヒータコアに単位時間当たりに送る必要のある熱量、及び排熱回収器にて熱媒体がエンジンの排気から受ける単位時間当たりの熱量に基づき、上記要求熱量が算出される。従って、上記要求熱量を用いて求められた増加量分だけ蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値に対し増加させることで、蓄熱器から単位時間当たりに放出される実際の熱量を上記要求熱量に近づけることができる。その結果、蓄熱器に蓄えられた熱及び排熱回収器により回収された熱を利用してのエンジンの暖機や車室内の暖房を、それぞれの要求に応じて過不足なく行うことができる。
【0017】
請求項8〜11に記載の発明によれば、外部と断熱された蓄熱器による蓄熱を行う際には、ポンプの駆動により同蓄熱器に高温の熱媒体が流入される。この蓄熱器の内部には、潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を封入した多数の蓄熱カプセルが入れられている。そして、蓄熱器内に流入した上記高温の熱媒体と同蓄熱器内の各蓄熱カプセル(蓄熱材)との間の熱交換を通じて、その熱媒体から各蓄熱カプセル内の蓄熱材に熱が伝達される。こうした熱媒体から各蓄熱カプセル内の蓄熱材への熱の伝達により、それら蓄熱材が固体から液体に変化して潜熱蓄熱が行われる。このように蓄熱器を潜熱蓄熱を可能なものとすることで、同蓄熱器の容量を小さく抑えつつ蓄熱器全体の蓄熱量を大きくすることができる。
【0018】
一方、蓄熱器に蓄えられた熱を利用すべく放出する必要のあるときには、ポンプの駆動により、蓄熱器に低温の熱媒体が流入され、その後に同熱媒体が蓄熱器を通過して流出するようにされる。このように蓄熱器を低温の熱媒体が通過するとき、その低温の熱媒体と蓄熱器内の各蓄熱カプセル(蓄熱材)との間の熱交換を通じて、各蓄熱カプセル内で高温のために液体の状態となっている蓄熱材から上記熱媒体に熱が伝達される。このように蓄熱材からの熱が伝達されて高温となった熱媒体を蓄熱器から流出させることにより、蓄熱器に蓄えられた熱が放出されて利用可能とされる。なお、蓄熱器における各蓄熱カプセル内の蓄熱材は、自身の熱を上述したように熱媒体に伝達するにつれて温度低下して液体から固体へと徐々に変化してゆく。
【0019】
ところで、上記潜熱蓄熱可能な蓄熱器においては、同蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を速やかに行えない傾向がある。これは、蓄熱器からの熱の放出に伴い同蓄熱器の内部に入れられた各蓄熱カプセル内の蓄熱材が温度低下して液体から固体に徐々に変化する過程で、蓄熱材は熱媒体との熱交換を直接的に行う蓄熱カプセルの外周に近い部分で凝固し始め、その凝固した部分によって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるためと推測される。そして、潜熱蓄熱可能な蓄熱器に蓄えられた熱の放出を速やかに行えないという傾向に関係して、上記蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに利用することが困難になるという問題が生じる。
【0020】
こうした問題に関しては、請求項8〜11に記載の発明では、それぞれ以下のように対処している。
請求項8記載の発明では、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、蓄熱器の保有熱量に応じて、ポンプの駆動により蓄熱器を通過する熱媒体の流量が調整される。このため、蓄熱カプセル内における蓄熱材の放熱に伴う温度低下により蓄熱器の保有熱量が低下して同蓄熱材の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材における蓄熱カプセルの外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとき、蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることが可能になる。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させれば、蓄熱材の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器の熱が速やかに熱媒体を介して放出されるようになる。従って、蓄熱器に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材の凝固した部分に起因して同蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに放出して利用することができる。
【0021】
請求項9記載の発明では、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、前記蓄熱カプセル内の蓄熱材の凝固率に応じて、ポンプの駆動により蓄熱器を通過する熱媒体の流量が調整される。このため、蓄熱カプセル内における蓄熱材の放熱に伴う温度低下により同蓄熱材の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材における蓄熱カプセルの外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとき、蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることが可能になる。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させれば、蓄熱材の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器の熱が速やかに熱媒体を介して放出されるようになる。従って、蓄熱器に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材の凝固した部分に起因して同蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに放出して利用することができる。
【0022】
請求項10記載の発明では、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、前記蓄熱カプセル内の蓄熱材の熱通過率に応じて、ポンプの駆動により蓄熱器を通過する熱媒体の流量が調整される。このため、蓄熱カプセル内における蓄熱材の放熱に伴う温度低下により同蓄熱材の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材における蓄熱カプセルの外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられて蓄熱材の熱通過率が低下するとき、蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることが可能になる。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させれば、蓄熱材の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器の熱が速やかに熱媒体を介して放出されるようになる。従って、蓄熱器に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材の凝固した部分に起因して同蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに放出して利用することができる。
【0023】
請求項11記載の発明では、制御手段を通じてのポンプの駆動により蓄熱器に蓄えられた熱の熱媒体を介しての放出を行う際、前記蓄熱器を通過する冷却水の流量をベース値としたときの同蓄熱器からの単位時間当たりの放出可能熱量が求められ、その放出可能熱量に応じて、ポンプの駆動により蓄熱器を通過する熱媒体の流量が調整される。このため、蓄熱カプセル内における蓄熱材の放熱に伴う温度低下により同蓄熱材の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材における蓄熱カプセルの外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられて上記放出可能熱量が減少するとき、蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させることが可能になる。このように蓄熱器を通過する熱媒体の流量を増加させれば、蓄熱材の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器の熱が速やかに熱媒体を介して放出されるようになる。従って、蓄熱器に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材の凝固した部分に起因して同蓄熱材から熱媒体への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器に蓄えられた熱を必要なときに速やかに放出して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の蓄熱システムが適用される自動車における循環回路の全体構成を示す略図。
【図2】同蓄熱システムの蓄熱器に用いられる蓄熱カプセルの内部を示す断面図。
【図3】時間経過に伴って低温となる蓄熱材の熱通過率の変化を示すグラフ。
【図4】蓄熱器からの放熱の実行手順を示すフローチャート。
【図5】蓄熱材の温度の変化に対する蓄熱器全体の保有熱量の変化を示すグラフ。
【図6】蓄熱器の保有熱量の変化に対する蓄熱材の凝固率の変化を示すグラフ。
【図7】蓄熱材の凝固率の変化に対する同蓄熱材の熱通過率の変化を示すグラフ。
【図8】蓄熱材の熱通過率の変化に対する蓄熱器から単位時間当たりに放出される熱量の変化態様を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を自動車に搭載された蓄熱システムに具体化した一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
自動車には、図1に示されるように、エンジン1との間で熱交換を行う冷却水(熱媒体)を循環させる循環回路が設けられている。こうした循環回路での冷却水の循環は、例えば電動式のウォータポンプ2を用いて行われる。
【0026】
循環回路においては、ウォータポンプ2から吐出された冷却水が、ヒータコア9、排熱回収器10、メイン通路3、及びエンジン1を通過した後、上記ウォータポンプ2に戻るようになっている。上記ヒータコア9は、自動車に搭載された空調装置を通じて車室内を暖房する際、同装置により車室に送風される空気を上記冷却水の熱によって暖めるためのものである。上記排熱回収器10は、その内部を通過する冷却水とエンジン1の排気との間での熱交換を通じて同排気の熱を上記冷却水により回収する。
【0027】
また、循環回路において、排熱回収器10の下流かつエンジン1の上流には、メイン通路3を迂回するバイパス通路4が設けられている。このバイパス通路4には蓄熱器5及びバルブ11が設けられている。上記蓄熱器5は、外部と断熱されたケース6内に高温の冷却水を流入させて蓄熱を行い、ケース6内に蓄えられた熱を放出する際には低温の冷却水が同ケース6を通過するようにして上記熱の放出を行うものである。上記バルブ11は、バイパス通路4を通じての冷却水の流通を禁止・許可すべく開閉動作する。
【0028】
循環回路の冷却水が高温となっているとき、バルブ11を開くことによりバイパス通路4を通じての冷却水の流通が許容されると、ウォータポンプ2の駆動に伴いバイパス通路4を通じて高温の冷却水が蓄熱器5のケース6に流入し、それによって蓄熱器5での蓄熱が行われる。そして、蓄熱器5での蓄熱が完了した後、バルブ11を閉じることによりバイパス通路4を通じての冷却水の流通が禁止されると、蓄熱器5のケース6に対するバイパス通路4を通じての冷却水の流入、及び同ケース6からの冷却水の流出が停止される。この状態にあっては蓄熱器5が蓄熱状態に保持される。
【0029】
こうした蓄熱器5の蓄熱状態にあって、蓄熱器5に蓄えられた熱を利用すべく放出する必要が生じると、バルブ11を開くことによりバイパス通路4を通じての冷却水の流通が許容され、それに伴いウォータポンプ2の駆動を通じて上記冷却水が蓄熱器5のケース6を通過する。このときの蓄熱器5のケース6からの冷却水の流出を通じて、同ケース6に蓄えられた熱の放出が行われる。言い換えれば、蓄熱器5のケース6から高温の冷却水が流出される。なお、蓄熱器5に蓄えられた熱を利用すべく放出する必要のある状況としては、エンジン1の低温時であって上記蓄熱器の熱を利用してエンジン1を暖機完了となるまで加温させるとき等があげられる。
【0030】
上記蓄熱器5に関しては、その大型化を抑制しつつ蓄熱量を大きくすることが要望されている。このため、蓄熱器5のケース6内には、図2に示される蓄熱材8、より詳しくは潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材8を封入した球状の蓄熱カプセル7が多数入れられている。これら蓄熱カプセル7は、ケース6内に可能な限り多く入れることの可能な並べ方で同ケース6内に並べられている。上記蓄熱材8は、潜熱蓄熱を行うことの可能な物質として、次の[1]及び[2]の特性を有する物質を用いて形成されている。[1]固体から液体に状態変化する際の融点が冷却水回路の冷却水におけるエンジン1(図1)の暖機判定値よりも高い値(例えば80℃)であって、蓄熱器5のケース6内を通過する冷却水の温度が上記融点以上であるときに固体から液体に状態変化する際の吸熱を行う。「2」蓄熱器5のケース6内を通過する冷却水の温度が上記融点(80℃)未満であるとき、液体から固体に状態変化してそれに伴う放熱を行う。
【0031】
次に、本実施形態の蓄熱システムにおける電気的構成について、図1を参照して説明する。
この蓄熱システムは、自動車に搭載された各種機器の制御を実行する電子制御装置21を備えている。電子制御装置21は、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。なお、電子制御装置21は、ヒータコア9における空気の加熱及びその加熱された空気の車室内への送風の制御を司る空調制御部22に対し車内ネットワーク(CAN)を通じて接続されており、相互通信により同空調制御部22と必要な情報を共有するようになっている。
【0032】
電子制御装置21の入力ポートには、以下に示す各種センサ等が接続されている。
・蓄熱器5内における各蓄熱カプセル7のうち、それらを代表する一つの蓄熱カプセル7の蓄熱材8の温度を検出する温度センサ23。
【0033】
・循環回路におけるエンジン1出口での冷却水の温度を検出する水温センサ24。
・エンジン1の吸入空気量を検出するエアフローメータ25。
・エンジン1の出力軸の回転速度(エンジン回転速度)を検出する回転速度センサ26。
【0034】
・エンジン1の吸気温を検出する吸気温センサ27。
電子制御装置21の出力ポートには、エンジン1を駆動するための各種機器の駆動回路、ウォータポンプ2の駆動回路、及びバルブ11の駆動回路等が接続されている。
【0035】
そして、電子制御装置21は、上記各種センサから入力した検出信号に基づき、エンジン回転速度やエンジン負荷(エンジン1の1サイクル当たりに燃焼室2に吸入される空気の量)といったエンジン運転状態を把握する。電子制御装置21は、エンジン負荷やエンジン回転速度といったエンジン運転状態に応じて、上記出力ポートに接続されたエンジン1を駆動するための各種機器の駆動回路に指令信号を出力する。こうしてエンジン1における各種の運転制御、例えば燃料噴射制御、点火時期制御、及びスロットル開度制御といった各種の運転制御が電子制御装置21を通じて実施される。
【0036】
また、電子制御装置21は、上記各種センサから入力した検出信号等に基づき、循環回路における冷却水の温度、エンジン1及びヒータコア9にて必要とされる熱量、及び冷却水が排熱回収器10から受ける熱量等を把握する。電子制御装置21は、それら把握した温度や熱量に応じて、上記出力ポートに接続されたウォータポンプ2の駆動回路及びバルブ11の駆動回路に指令信号を出力する。こうして自動車の蓄熱システムにおけるウォータポンプ2の駆動制御、及びバルブ11の開閉制御等が電子制御装置21を通じて実施される。
【0037】
次に、蓄熱システムにおいて、ウォータポンプ2及びバルブ11の駆動制御を通じて行われる蓄熱器5の蓄熱・放熱の概要について説明する。
蓄熱システムにおいては、循環回路を循環する冷却水が、予め定められた判定値よりも高温であって、且つ蓄熱器5内における蓄熱材8の温度よりも高温であるとき、蓄熱器5による蓄熱が行われる。詳しくは、バルブ11が開弁されることによりバイパス通路4を通じての冷却水の流通が許可されるとともに、ウォータポンプ2の駆動により高温の冷却水をバイパス通路4を通じて蓄熱器5に流入させる。そして、その高温の冷却水が蓄熱器5内を通過する際、同冷却水と蓄熱器5内の各蓄熱カプセル7(蓄熱材8)との間の熱交換を通じて、その冷却水の熱が各蓄熱カプセル7内の蓄熱材8に伝達される。こうした冷却水から各蓄熱カプセル7内の蓄熱材8への熱の伝達により、それら蓄熱材8が固体から液体に変化して蓄熱器5での潜熱蓄熱が行われる。このように蓄熱器5を潜熱蓄熱可能なものとすることで、同蓄熱器5の容量を小さく抑えつつ蓄熱器5全体の蓄熱量を大きくすることができる。そして、蓄熱器5での蓄熱が完了した後、バルブ11を閉じることにより蓄熱器5が蓄熱状態に保持される。
【0038】
また、蓄熱システムにおいては、上記のように蓄熱器5に蓄えられた熱を利用すべく放出する必要のあるとき、例えば循環回路を循環する冷却水が低温となっておりエンジン1やヒータコア9にて熱を必要としているとき、蓄熱器5からの放熱が行われる。詳しくは、バルブ11が開弁されることによりバイパス通路4を通じての冷却水の流通が許可されるとともに、ウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5に低温の冷却水が流入され、その後に同冷却水が蓄熱器5を通過して流出するようにされる。このように蓄熱器5を低温の冷却水が通過するとき、その低温の冷却水と蓄熱器5内の各蓄熱カプセル7(蓄熱材8)との間の熱交換を通じて、各蓄熱カプセル7内で高温のために液体の状態となっている蓄熱材8から上記冷却水に熱が伝達される。このように蓄熱材8からの熱が伝達されて高温となった冷却水を蓄熱器5から流出させることにより、蓄熱器5に蓄えられた熱が冷却水を通じて循環回路に放出されてエンジン1やヒータコア9にて利用可能とされる。なお、蓄熱器5における各蓄熱カプセル7内の蓄熱材8は、自身の熱を上述したように冷却水に伝達するにつれて温度低下して液体から固体へと徐々に変化してゆく。
【0039】
ところで、上記潜熱蓄熱可能な蓄熱器5においては、同蓄熱器5に蓄えられた熱の冷却水を介しての放出を速やかに行えない傾向がある。これは、蓄熱器5からの熱の放出に伴い同蓄熱器5の内部に入れられた各蓄熱カプセル7内の蓄熱材8が液体から固体に徐々に変化する過程で、蓄熱材8は冷却水との熱交換を直接的に行う蓄熱カプセル7の外周に近い部分で凝固し始め、その凝固した部分によって蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるためと推測される。図3は、蓄熱器5からの熱の放出時における蓄熱材8から冷却水への熱通過率の時間経過に伴う推移を示している。同図から分かるように、上記熱通過率に関しては、蓄熱材8が高温であって液体であるときに最も大きくなり、時間経過による蓄熱材8の温度低下に伴う凝固によって同蓄熱材8における固定体の割合が高くなるほど小さくなってゆく。そして、潜熱蓄熱可能な蓄熱器5では、そこに蓄えられた熱の放出を速やかに行えないという上述した傾向に関係して、同蓄熱器5に蓄えられた熱を必要なときに速やかに利用することが困難になるという問題が生じる。
【0040】
そこで本実施形態では、ウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5に蓄えられた熱の冷却水を介しての放出を行う際、蓄熱カプセル7内の蓄熱材8の温度に応じて、ウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5を通過する冷却水の流量を調整する。このため、蓄熱カプセル7内における蓄熱材8の放熱に伴う温度低下により同蓄熱材8の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材8における蓄熱カプセル7の外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとき、蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることが可能になる。このように蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることで、蓄熱材8の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器5の熱が速やかに冷却水を介して放出されるようになる。従って、蓄熱器5に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材8が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材8の凝固した部分に起因して同蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器5に蓄えられた熱を必要なときに速やかに放出して利用することができる。
【0041】
なお、蓄熱器5からの放熱を行う際の同蓄熱器5を通過する冷却水の流量に関しては、蓄熱カプセル7内の蓄熱材8の温度が低下するほど多くすることが好ましい。この場合、蓄熱材8からの放熱による同蓄熱材8の温度低下に伴い蓄熱材8の凝固率が高くなって同蓄熱材8から冷却水への熱伝達の妨げが大きくなるとしても、それに合わせて蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることができる。このように蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることで、蓄熱材8の温度低下に伴い同蓄熱材8の凝固率が高くなってゆく過程において、より的確に蓄熱器5からの速やかな放熱を実現することができる。
【0042】
次に、蓄熱器5からの放熱を行う際の詳細な手順について、放熱ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。この放熱ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0043】
同ルーチンにおいては、まず、蓄熱器5からの放熱中であるか否かを判断するためのフラグFが「0(放熱中でない)」であるか否かの判断が行われる(S101)。そして、蓄熱器5からの放熱中でなくフラグFが「0」となっているとき、蓄熱器5からの放熱を行うべき状況であるか否かが判断される(S102)。例えば、エンジン1の暖機を必要とするエンジン冷間運転時であって、且つ蓄熱器5の保有熱量が同蓄熱器5からの放熱によって循環回路の冷却水の温度を上昇させることの可能なレベル以上であるとき、蓄熱器5からの放熱を行うべき状況である旨判断されることとなる。なお、エンジン1が冷間始動時である旨の判断は、水温センサ24によって検出される循環回路におけるエンジン1出口での冷却水の温度が同エンジン1の暖機判定値未満であることに基づいてなされる。また、蓄熱器5の保有熱量は、温度センサ23によって検出される蓄熱材8の温度に基づき求められる。
【0044】
上記S102の判断処理で肯定判定がなされると、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される熱量の要求値Qdが、エンジン1の暖機完了に必要な総熱量、単位時間当たりにヒータコア9に送る必要のある熱量、及び排熱回収器10にてエンジン1の排気から冷却水に送られる単位時間当たりの熱量といったパラメータに基づいて算出される(S103)。ここで、上記エンジン1の暖機完了に必要な総熱量は、循環回路におけるエンジン1出口の冷却水の温度に基づき求めることが可能である。また、上記単位時間当たりにヒータコア9に送る必要のある熱量は、自動車における空調装置の設定温度(暖房要求に対応)や車室内の温度等に基づいて求めることが可能である。更に、排熱回収器10にてエンジン1の排気から冷却水に送られる単位時間当たりの熱量は、エンジン1の吸気温、負荷、及び排気流量に基づいて求めることが可能である。なお、エンジン1の排気流量はエアフローメータ25の検出信号に基づき求められる。
【0045】
その後、蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bとしたときの同蓄熱器5からの単位時間当たりの放出可能熱量Qtが算出される(S104)。なお、上記ベース値Bとは、蓄熱器5からの放熱を行うべくウォータポンプ2を通常の駆動態様での駆動により蓄熱器5を冷却水が通過するようにしたときの同冷却水の流量のことである。上記放出可能熱量Qtの算出は、詳しくは以下の[1]〜[4]の手順によって行われる。
【0046】
[1]温度センサ23によって検出される蓄熱材8の温度に基づき、蓄熱器5全体の保有熱量が算出される。こうして算出された蓄熱器5全体の保有熱量は、上記蓄熱材8の温度の低下に伴い図5に実線で示されるように減少する。
【0047】
[2]上記[1]で算出された蓄熱器5全体の保有熱量に基づき、蓄熱材8の凝固率が算出される。こうして算出された蓄熱材8の凝固率は、上記蓄熱器5全体の保有熱量の減少に伴い図6に実線で示されるように上昇する。
【0048】
[3]上記[2]で算出された蓄熱材8の凝固率に基づき、同蓄熱材8の熱通過率が算出される。こうして算出された蓄熱材8の熱通過率は、上記蓄熱材8の凝固率の上昇に伴い図7に実線で示されるように低下する。
【0049】
[4]上記[3]で算出された蓄熱材8の熱通過率に基づき、蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bとしたときの同蓄熱器5からの単位時間当たりの放出可能熱量Qtが算出される。こうして算出された放出可能熱量Qtは、上記蓄熱材8の熱通過率の低下に対して例えば図8に実線L1で示されるように減少する。
【0050】
なお、図8から分かるように、蓄熱器5を通過する冷却水の流量がベース値Bに対し増加すると、その増加量が大きくなるほど蓄熱器5から単位時間当たりに放出される熱量が多くなる。従って、蓄熱材8の熱通過率の変化に対する蓄熱器5から単位時間当たりに放出される熱量の変化態様に関しては、蓄熱器5を通過する冷却水の流量がベース値Bに対し増加するほど、実線L1で示す状態から図中のより上方に位置する実線L2、L3・・・で示す状態へと徐々に推移してゆく。
【0051】
上記S104の処理で算出される放出可能熱量Qtは、上述した[1]〜[4]の手順から分かるように、蓄熱材8の温度が低下するほど徐々に減少(低下)してゆくこととなる。この放出可能熱量Qtと上記S103の処理で算出された要求値Qdとは、蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bに対し増加させるための増加量Zを算出する処理(図4のS105)で用いられる。そして、S105の処理で要求値Qdと放出可能熱量Qtとに基づき増加量Zが算出された後、バルブ11が開弁され(S106)、更にウォータポンプ2の駆動制御を通じて蓄熱器5を通過する冷却水の流量がベース値Bに対し上記増加量Z分だけ増加させた値となるよう調整される(S107)。これにより蓄熱器5からの上記冷却水を介しての熱の放出が行われる。そして、こうした蓄熱器5からの放熱中には上記フラグFが「1(放出中)」に設定される(S108)。なお、フラグFが「1」に設定されているときには上記S101の処理で否定判定がなされ、それに伴いS102及びS103の処理がスキップされてS104の処理に進むことになる。
【0052】
上述したように蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bに対し増加量Z分だけ増加させた値に調整した場合、蓄熱材8の温度低下に伴う凝固率の上昇により同蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器5の熱が速やかに冷却水を介して放出される。従って、蓄熱器5に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材8が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材8の凝固した部分に起因して同蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器5に蓄えられた熱をエンジン1の暖機等で必要とされるときに速やかに放出して利用することができる。
【0053】
蓄熱器5を通過する冷却水の流量のベース値Bに対する上記増加量Zに関しては、上記S105の処理で、蓄熱材8の温度低下に伴い放出可能熱量Qtが低下(減少)するほど大きい値となるように算出される。このため、蓄熱カプセル7内における蓄熱材8が放熱に伴って徐々に温度低下するとき、同蓄熱材8の温度が低下するほど蓄熱材8の凝固率が高くなって同蓄熱材8から冷却水への熱伝達の妨げが大きくなるとしても、それに合わせて蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることができる。このように蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることで、蓄熱材8の温度低下に伴い蓄熱材8の凝固率が高くなってゆく過程において、より的確に蓄熱器5からの速やかな放熱を実現することができる。
【0054】
また、上記増加量Zに関しては、蓄熱器5から放出される熱量の要求値Qdと上記放出可能熱量Qtとに基づき、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される実際の熱量が上記要求値Qdに近づくようにも算出される。更に、上記増加量Zは、同増加量Z分のウォータポンプ2の駆動に伴うエンジン1の燃費悪化と、増加量Z分の冷却水の流量の増加に伴うエンジン1の早期暖機完了による同エンジン1の燃費改善との両方をふまえたうえで、エンジン1の燃費が最良となるようにも算出されることとなる。
【0055】
なお、要求値Qdは、上述したS102の処理のとおり、エンジン1の暖機完了に必要な総熱量、単位時間当たりにヒータコア9に送る必要のある熱量、及び排熱回収器10にてエンジン1の排気から冷却水に送られる単位時間当たりの熱量といったパラメータに基づいて算出されるものである。従って、蓄熱器5を通過する冷却水の流量がベース値Bに対し増加量Z分だけ増加した値に調整され、それによって蓄熱器5から単位時間当たりに放出される実際の熱量が上記要求値Qdに近づけられたときには、次のことが実現されるようになる。すなわち、蓄熱器5に蓄えられた熱及び排熱回収器10により回収された熱を利用してのエンジン1の暖機や車室内の暖房が、それぞれの要求に応じて大きな過不足なく行われる。また、エンジン1の暖機を早期に完了させようとするあまり、蓄熱器5を通過する冷却水の流量を多くしすぎてしまい、その流量を実現するためのウォータポンプ2の駆動に起因するエンジン1の燃費悪化が抑制される。
【0056】
バルブ11の開弁及びウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5からの放熱が行われているときには、その放熱の開始時点からの経過時間と蓄熱材8の温度変化とに基づき同蓄熱器5から放出した熱量の合計値が求められる。そして、蓄熱器5から放出した熱量の合計値が所定値以上であるか否かが判断される(S109)。ここで肯定判定であれば、バルブ11が閉弁され(S110)、その後にウォータポンプ2が通常の駆動態様で駆動される(S111)。これにより蓄熱器5からの放熱が停止される。そして、蓄熱器5からの放熱の停止中には上記フラグFが「0(放熱中でない)」に設定される(S112)。なお、上記S110で用いられる所定値としては、エンジン1の暖機に必要とされる総熱量を用いたり、放熱開始時点での蓄熱器5全体の保有熱量を用いたりすることが考えられる。
【0057】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)ウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5に蓄えられた熱の冷却水を介しての放出を行う際、蓄熱カプセル7内の蓄熱材8の温度に応じて、ウォータポンプ2の駆動により蓄熱器5を通過する冷却水の流量が調整される。このため、蓄熱カプセル7内における蓄熱材8の放熱に伴う温度低下により蓄熱材8の凝固率が高くなり、言い換えれば蓄熱材8における蓄熱カプセル7の外周に近い部分であって凝固した部分が厚くなり、それによって蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、そのときに蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることが可能になる。このように蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることで、蓄熱材8の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器5の熱が速やかに冷却水を介して放出されるようになる。従って、蓄熱器5に蓄えられた熱の放出に伴い蓄熱材8が温度低下して液体から固体に徐々に変化する際、その蓄熱材8の凝固した部分に起因して同蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器5に蓄えられた熱をエンジン1の暖機等で必要なときに速やかに放出して利用することができる。
【0058】
(2)蓄熱器5に蓄えられた熱を放出する際、蓄熱器5内における蓄熱材8の現在の温度のもとで、その蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bとしたときの同蓄熱器5からの単位時間当たりの放出可能熱量Qtが求められる。そして、このときの蓄熱器5を通過する冷却水の流量に関しては、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される熱量の要求値Qdと上記放出可能熱量Qtとに基づき算出される増加量Z分だけ上記ベース値Bに対し増加させた値に調整される。このように蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bに対し増加量Z分だけ増加させた値に調整することで、蓄熱材8の温度低下に伴う凝固率の上昇により蓄熱材8から冷却水への熱の伝達が妨げられるとしても、蓄熱器5の熱が速やかに冷却水を介して放出される。また、蓄熱器5を通過する冷却水の流量のベース値Bに対する上記増加量Zが蓄熱器5から単位時間当たりに放出される熱量の要求値Qdと上記放出可能熱量Qtとに基づき算出されるため、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される実際の熱量が上記要求値Qdに近づくよう上記増加量Zを算出することができる。その結果、蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bに対し増加量Z分だけ増加させた値に調整したとき、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される実際の熱量を上記要求値に近づけることができる。
【0059】
(3)蓄熱器5からの放熱を行う際の同蓄熱器5を通過する冷却水の流量に関しては、蓄熱カプセル7内の蓄熱材8の温度が低下するほど多くされる。詳しくは、上述したように蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bから上記増加量Zだけ増加させた値に調整する際、蓄熱材8の温度低下に伴って放出可能熱量Qtが低下(減少)するほど、上記増加量Zが大きい値となるように算出される。このため、蓄熱カプセル7内における蓄熱材8が放熱に伴って徐々に温度低下するとき、同蓄熱材8の温度が低下するほど蓄熱材8の凝固率が高くなって同蓄熱材8から冷却水への熱伝達の妨げが大きくなるとしても、それに合わせて蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることができる。このように蓄熱器5を通過する冷却水の流量を増加させることで、蓄熱材8の温度低下に伴い蓄熱材8の凝固率が高くなってゆく過程において、より的確に蓄熱器5からの速やかな放熱を実現することができる。
【0060】
(4)上記増加量Zを求めるために用いられる上記要求値Qdは、エンジン1の暖機完了に必要な総熱量等に基づいて算出される。ここで、上記増加量Zを大きくして蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bに対し大幅に増加させるほど、エンジン1を速やかに暖機完了させることができるようにはなる。ただし、蓄熱器5を通過する冷却水の流量がベース値Bに対して過度に増加すると、その流量を実現するためのウォータポンプ2の駆動に起因してエンジン1の燃費が悪化することとなる。このため、上記増加量Zに関しては、その増加量Z分のウォータポンプ2の駆動に伴うエンジン1の燃費悪化と、上記増加量Z分の冷却水の流量の増加に伴うエンジン1の早期暖機完了による同エンジン1の燃費改善との両方をふまえたうえで、エンジン1の燃費が最良となるように算出される。従って、蓄熱器5を通過する冷却水の流量を上述したようにベース値Bに対し増加量Z分だけ増加させた値に調整する際、エンジン1の暖機を早期に完了させようとするあまり、蓄熱器5を通過する冷却水の流量を多くしすぎてしまい、その流量を実現するためのウォータポンプ2の駆動に起因してエンジン1の燃費が悪化することを抑制できる。
【0061】
(5)上記増加量Zを求めるために用いられる上記要求値Qdは、詳しくは次にように算出される。すなわち、エンジン1の暖機完了に必要な総熱量、車室内に送風する空気の温度が車室の暖房要求(空調装置の設定温度に対応)に応じた値となるようヒータコア9にて空気を温めるために同ヒータコア9に単位時間当たりに送る必要のある熱量、及び排熱回収器10にて冷却水がエンジン1の排気から受ける単位時間当たりの熱量に基づき算出される。そして、上記要求値Qdを用いて求められた増加量Z分だけ蓄熱器5を通過する冷却素の流量をベース値Bに対し増加させた値に調整することで、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される実際の熱量が上記要求値Qdに近づけられる。その結果、蓄熱器5に蓄えられた熱及び排熱回収器10により回収された熱を利用してのエンジン1の暖機や車室内の暖房を、それぞれの要求に応じて過不足なく行うことができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・蓄熱器5からの放熱のために同蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bに対し増加量Z分だけ増加させた値に調整する際、その増加量Zを求めるために用いられる上記要求値Qdは、エンジン1の暖機完了に必要な総熱量のみに基づいて算出されるものであってもよい。この場合、上記要求値Qdを用いて求められた増加量Z分だけ蓄熱器5を通過する冷却水の流量をベース値Bに対し増加させた値に調整することで、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される実際の熱量を上記要求値Qdに近づけ、それによって蓄熱器5に蓄えられた熱を利用してエンジン1の暖機を速やかに完了させることができる。
【0063】
・上記増加量Zに関しては、要求値Qdと放出可能熱量Qtとの差に基づいて、蓄熱器5から単位時間当たりに放出される実際の熱量が要求値Qdと一致するように算出することも可能である。
【0064】
・循環回路の冷却水が自動車のトランスミッションのオイル等と熱交換を行うものである場合、そのトランスミッション側の加温要求も加味して上記要求値Qdを算出してもよい。
【0065】
・排熱回収器10やヒータコア9に関しては、それらを必ずしも設ける必要はない。排熱回収器10を省略した場合には、上記要求値Qdをエンジン1の暖機完了に必要な総熱量と単位時間当たりにヒータコア9に送る必要のある熱量とに基づいて算出することが好ましい。また、ヒータコア9を省略した場合には、上記要求値Qdをエンジン1の暖機完了に必要な総熱量と排熱回収器10にてエンジン1の排気から冷却水に送られる単位時間当たりの熱量とに基づいて算出することが好ましい。更に、排熱回収器10とヒータコア9との両方を省略した場合には、上記要求値Qdをエンジン1の暖機完了に必要な総熱量に基づいて算出することが好ましい。
【0066】
・上記放出可能熱量Qtに関しては、蓄熱材8の温度に基づいて直接的に算出することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…エンジン、2…ウォータポンプ、3…メイン通路、4…バイパス通路、5…蓄熱器、6…ケース、7…蓄熱カプセル、8…蓄熱材、9…ヒータコア、10…排熱回収器、11…バルブ、21…電子制御装置(制御手段)、22…空調制御部、23…温度センサ、24…水温センサ、25…エアフローメータ、26…回転速度センサ、27…吸気温センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と断熱された蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を行うポンプと、そのポンプの駆動による前記蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を制御する制御手段とを備え、前記ポンプの駆動により高温の熱媒体を前記蓄熱器に流入させて蓄熱を行い、前記蓄熱器に蓄えられた熱を放出する際には前記ポンプの駆動により低温の熱媒体が前記蓄熱器を通過するようにして前記蓄熱器からの熱の放出を行う蓄熱システムにおいて、
前記蓄熱器の内部には潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を封入した多数の蓄熱カプセルが入れられており、
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱カプセル内の蓄熱材の温度に応じて、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を調整する
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱カプセル内の蓄熱材の温度が低下するほど、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を多くする
請求項1記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱材の現在の温度のもとで前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量をベース値としたときの前記蓄熱器からの単位時間当たりの放出可能熱量を求め、前記蓄熱器から単位時間当たりに放出される熱量に関する要求熱量と前記放出可能熱量とに基づき算出される増加量分だけ、前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を前記ベース値に対し増加させた値に調整する
請求項1記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱材の温度低下に伴い前記放出可能熱量が低下するほど前記増加量を大きい値となるように算出し、前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を前記ベース値に対し前記増加量分だけ増加させた値に調整する
請求項3記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記熱媒体は、車両に搭載されるエンジンとの間で熱交換を行うべく循環回路を循環するものであり、
前記制御手段は、前記要求熱量を前記エンジンの暖機完了に必要な総熱量に基づいて算出する
請求項3記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記要求熱量と前記放出可能熱量とに基づき前記増加量を算出する際、その増加量分の前記ポンプの駆動に伴うエンジンの燃費悪化と、前記増加量分の冷却水の流量の増加に伴うエンジンの早期暖機完了による同エンジンの燃費改善との両方をふまえたうえで、エンジンの燃費が最良となるように前記増加量を算出する
請求項5記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記循環回路を循環する熱媒体は、車室内に送風される空気を同熱媒体の熱によって暖めるヒータコア、及び、エンジンの排気の熱を同熱媒体によって回収する排熱回収器を通過するものであり、
前記制御手段は、前記要求熱量を前記エンジンの暖機完了に必要な総熱量、前記車室内に送風される空気の温度が同車室の暖房要求に応じた値となるよう前記ヒータコアにて空気を温めるために同ヒータコアに単位時間当たりに送る必要のある熱量、及び前記排熱回収器にて熱媒体がエンジンの排気から受ける単位時間当たりの熱量に基づいて算出する
請求項5記載の蓄熱システム。
【請求項8】
外部と断熱された蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を行うポンプと、そのポンプの駆動による前記蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を制御する制御手段とを備え、前記ポンプの駆動により高温の熱媒体を前記蓄熱器に流入させて蓄熱を行い、前記蓄熱器に蓄えられた熱を放出する際には前記ポンプの駆動により低温の熱媒体が前記蓄熱器を通過するようにして前記蓄熱器からの熱の放出を行う蓄熱システムにおいて、
前記蓄熱器の内部には潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を封入した多数の蓄熱カプセルが入れられており、
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱器の保有熱量に応じて、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を調整する
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項9】
外部と断熱された蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を行うポンプと、そのポンプの駆動による前記蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を制御する制御手段とを備え、前記ポンプの駆動により高温の熱媒体を前記蓄熱器に流入させて蓄熱を行い、前記蓄熱器に蓄えられた熱を放出する際には前記ポンプの駆動により低温の熱媒体が前記蓄熱器を通過するようにして前記蓄熱器からの熱の放出を行う蓄熱システムにおいて、
前記蓄熱器の内部には潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を封入した多数の蓄熱カプセルが入れられており、
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱カプセル内の蓄熱材の凝固率に応じて、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を調整する
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項10】
外部と断熱された蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を行うポンプと、そのポンプの駆動による前記蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を制御する制御手段とを備え、前記ポンプの駆動により高温の熱媒体を前記蓄熱器に流入させて蓄熱を行い、前記蓄熱器に蓄えられた熱を放出する際には前記ポンプの駆動により低温の熱媒体が前記蓄熱器を通過するようにして前記蓄熱器からの熱の放出を行う蓄熱システムにおいて、
前記蓄熱器の内部には潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を封入した多数の蓄熱カプセルが入れられており、
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱カプセル内の蓄熱材の熱通過率に応じて、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を調整する
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項11】
外部と断熱された蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を行うポンプと、そのポンプの駆動による前記蓄熱器に対する熱媒体の流入及び流出を制御する制御手段とを備え、前記ポンプの駆動により高温の熱媒体を前記蓄熱器に流入させて蓄熱を行い、前記蓄熱器に蓄えられた熱を放出する際には前記ポンプの駆動により低温の熱媒体が前記蓄熱器を通過するようにして前記蓄熱器からの熱の放出を行う蓄熱システムにおいて、
前記蓄熱器の内部には潜熱蓄熱を行うことの可能な蓄熱材を封入した多数の蓄熱カプセルが入れられており、
前記制御手段は、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器に蓄えられた熱の放出を行う際、前記蓄熱器を通過する冷却水の流量をベース値としたときの同蓄熱器からの単位時間当たりの放出可能熱量を求め、その放出可能熱量に応じて、前記ポンプの駆動により前記蓄熱器を通過する熱媒体の流量を調整する
ことを特徴とする蓄熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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