説明

蓄熱ボード及び暖房パネル

【課題】製造が容易で製造コストを低減することができる蓄熱ボードと、この蓄熱ボードを用いた暖房パネルとを提供する。
【解決手段】蓄熱ボード1は、ボード外殻を構成するシェル2内に蓄熱材3を充填したものである。シェル2は、第1及び第2の主板面4,5と側端面6とを有したボード形状である。シェル2には蓄熱材6の充填口2aが設けられている。第1の主板面4からは第2の主板面5に向って凹穴7が凹設されている。融解した蓄熱材3を充填口2aからシェル2内に流し込み、放冷して固化させた後、充填口2aを熱融着やキャップ20等により封塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル内に蓄熱材を充填してなる蓄熱ボードと、この蓄熱ボードを備えた暖房パネルとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シェル内に蓄熱材を充填した蓄熱ボードの従来例として特開2010−31635号公報に記載の蓄熱パネル体がある。同号公報の蓄熱パネル体は、多数の凹部を有する板状のパネル材を2枚、各々のパネル材の凹部の底面同士を突き合わせて融着し、パネル材同士の間に蓄熱材を充填したものである。なお、同号公報では、パネル材の外面にシート材を融着させ、このシート材の端縁をパネル体の側端面に回り込ませ、これによってパネル体の側端面を封じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−31635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の蓄熱ボードは、2枚のパネル体と2枚のシート材とを融着させる工程を経て製造されるものであり、製造に手間がかかる。
【0005】
本発明は、製造が容易で製造コストを低減することができる蓄熱ボードと、この蓄熱ボードを用いた暖房パネルとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の蓄熱ボードは、ボードの外殻を構成するシェルと、該シェル内に充填された蓄熱材とを有する蓄熱ボードにおいて、該シェルの一方の第1の主板面から他方の第2の主板面にまで達する凹穴が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の蓄熱ボードは、請求項1において、該凹穴は、該主板面と平行な断面形状が六角形であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の暖房パネルは、請求項1又は2の蓄熱ボードと、該蓄熱ボードの側辺に沿って配置された小根太とを備えてなるものである。
【0009】
請求項4の暖房パネルは、放熱体を有した放熱パネルと、該放熱パネルに重ね合わされた請求項1又は2の蓄熱ボードと、該放熱パネル及び蓄熱ボードの重ね合わせ体の側辺に沿って配置された小根太とを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蓄熱ボードは、1対の主板面を有した、ボードの外殻を構成するシェル内に蓄熱材を充填したものである。このシェルは、例えば真空成形やブロー成形等によって容易に成形することができるので、蓄熱ボードの製造工程が簡略化される。このシェルの凹穴は、シェルの強度を高めると共に、蓄熱材の熱膨張収縮を吸収する効果も有する。
【0011】
このシェルの第1の主板面の凹穴を六角形の凹穴とすることにより、シェルのボード厚み方向における耐圧強度が向上する。
【0012】
本発明の暖房パネルは、この蓄熱ボードの側辺、又はこの蓄熱ボードと放熱パネルとの重ね合わせ体の側辺に沿って小根太を配置したものであり、容易に建物の床、壁などに施工することができる。この暖房パネルは、短辺の寸法が303mmの長方形状とされることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る蓄熱ボードのシェルの平面図である。
【図2】(a)図は図1のシェルの一部の拡大図、(b)図は(a)図のB−B線断面図、(c)図は(a)図のC−C線断面図である。
【図3】シェルの一部の断面斜視図である。
【図4】実施の形態に係る蓄熱ボードの断面図である。
【図5】実施の形態に係る暖房パネルの断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る暖房パネルの断面図である。
【図7】別の実施の形態に係る蓄熱ボードのシェルの平面図である。
【図8】図7の蓄熱ボードの充填口部分の側面図である。
【図9】キャップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、第1図〜第4図を参照して実施の形態に係る蓄熱ボードについて説明する。
【0015】
この蓄熱ボード1は、ボード外殻を構成するシェル2内に蓄熱材3(第4図)を充填したものである。シェル2は、第1及び第2の主板面4,5と側端面6とを有した長方形状の中空ボードである。シェル2には蓄熱材6の充填口2aが設けられている。
【0016】
第1の主板面4からは第2の主板面5に向って凹穴7が凹設されている。この凹穴7は、主板面4,5と平行な断面が六角形(図示の実施の形態では正六角形)である。なお、凹穴7は、第1の主板面4から第2の主板面5に向うほど主板面4,5と平行な断面積が小さくなる切頭六角錐形状となっている。これは、凹穴7をプレス成形により形成する際の抜き勾配のためである。凹穴7の壁面と主板面4,5との交差角度は75〜85゜特に約80゜程度が好適である。
【0017】
主板面4における凹穴7の対角線長さ(最大長径)は5〜30mm特に5〜15mm程度が好適である。主板面4におけるすべての凹穴7の開口面積の合計は、シェル2の板面の面積の10〜70%特に20〜45%程度が好適である。
【0018】
シェル2の厚みは、床暖房用蓄熱ボードの場合であれば、3〜20mm特に5〜10mm程度が好適である。シェル2を構成する材料はABS、ポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン66、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリペルフロロアルコキシフッ化プラスチック、ポリクロロトリフルオロエチレン、フェノール樹脂等の合成樹脂、特にABSなどの非晶性樹脂が好適である。
【0019】
このシェル2を製造するには、分割金型間に溶融状態の熱可塑性樹脂を配置し、真空又は圧空により金型のキャビティ形状に賦形するのが好適である。例えば、一対の金型のうち、一方のキャビティが凹穴7を有しない主板面5を形成する平坦面を有し、他方のキャビティが凹穴7を有する主板面4を形成する凹穴形成用突起を有した金型を用いる。シェルの成形工程において、凹穴7の底面を主板面5に融着させるとともに、分割金型の合わせ面によって側端面6を蓄熱材を充填する充填口2aを除いて溶着により封塞し、長方形袋状のシェル2を形成する。ただし、シェル2の製造方法はこれに限定されない。
【0020】
シェル2内に充填する蓄熱材としては、パラフィン系潜熱蓄熱材のほか、硫酸ナトリウム水和物、酢酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム水和物などの無機水和塩系潜熱蓄熱材等を用いることができる。このパラフィン系潜熱蓄熱材の場合、加熱融解させて充填口2aからシェル2内に流し込み、放冷して固化させた後、充填口2aを熱融着等により封塞することによりシェル2に充填され、蓄熱ボード1が構成される。
【0021】
このように構成された蓄熱ボード1は、主板面4,5同士の間に多数の凹穴7がリブ部ないしボス部のように立設されているものであり、ボード厚み方向の耐圧強度が大きい。また、凹穴7が点在しているので、暖房パネルに用いた場合、蓄熱材3の熱膨張収縮が吸収され、蓄熱ボード1の破損が防止される。
【0022】
次に、この蓄熱ボード1を用いた暖房パネルの実施の形態について第5,6図を参照して説明する。
【0023】
第5図の暖房パネル10は、上記蓄熱ボード1の長手方向の両側辺に沿って合板等よりなる小根太9,9を配置したものである。蓄熱ボード1と小根太9とは同一の厚みを有する。
【0024】
第6図の暖房パネル11は、上記蓄熱ボード1と、放熱パネル12とを重ね合わせ、この重ね合わせ体の両側辺に小根太9,9を配置したものである。放熱パネル12と蓄熱ボード1とは同一の縦横寸法である。これらの重ね合わせ体の厚みと小根太9の厚みとは同一である。
【0025】
放熱パネル12としては、方形板状の発泡合成樹脂材等よりなる複数枚の基体13と、基体13同士の間に配置された温水通水用放熱管14とを有した薄型床暖房パネルが好適である。なお、基体13の厚みが大きいときには、基体13の上面に溝を設け、この溝内に放熱管14を配置してもよい。
【0026】
いずれの暖房パネル10,11においても、床暖房用暖房パネルの場合であれば、左側の小根太9の左端から右側の小根太9の右端までの寸法が303mmであり、暖房パネルの厚みが12mmであることが好ましい。この場合、第6図の暖房パネル11にあっては、蓄熱ボードの厚みが6.5mmであり、放熱パネル12の厚みが5.5mmであることが好ましい。暖房パネル10,11の小根太方向の長さは303mmの倍数の長さで3333mm以下、小根太と垂直方向は303mmの倍数−45mmの長さであり、特に3288mmであることが好ましい。
【0027】
第5,6図の暖房パネル10,11のいずれにおいても、図の上面側にアルミ箔などよりなる均熱材を貼っておくのが好ましい。均熱材は、小根太9の上にまで貼っておくのが好ましい。この場合、均熱材のうち小根太9の上面領域に、釘打ち可能であることを表示する表示を設けておくのが好ましい。なお、蓄熱ボード1のうち小根太9に沿う部分にあっては、幅10mmほど、蓄熱材3が充填されていない部分を設け、釘が打ち抜かれても蓄熱材3に達しないようにするのが好ましい。
【0028】
第7図〜第9図に別の実施の形態に係る蓄熱ボードのシェル2Aを示す。このシェル2Aは充填口2aにキャップ20を装着するようにしたものである。第7,8図の通り、この実施の形態では、該充填口2aは略円筒形状であり、その筒軸心線方向をシェル2Aの長辺方向と平行方向として該シェル2Aの外方へ突出している。第8図の通り、充填口2aの先端側の外周面には、この充填口2aを封塞するためのキャップ20が螺着される雄ねじ(符号略)が設けられている。
【0029】
第9図の通り、キャップ20の内周面には螺旋状の凸条21を突設することにより、該雄ねじに螺合する雌ねじが形成されている。このキャップ20の奥底面にパッキン23が設けられている。キャップ20の材料はシェル2の構成材料と同じであることが好ましい。パッキン23の材料は蓄熱材に応じて選定するのが好ましい。蓄熱材3としてパラフィン系潜熱蓄熱材を用いた場合、パッキン23としてはニトリルゴムが好適である。
【0030】
キャップ20を充填口2aに装着する場合、キャップ20の内面及び充填口2aの外周面の少なくとも一方に接着剤を塗布しておき、キャップ20を接着剤で充填口2aに固着させ、キャップ20が外れないようにするのが好ましい。この接着剤としては、湿気硬化型接着剤が好適である。なお、キャップ20の封着手段として熱融着も考えられるが、融着すべき面にパラフィン等が付着していると熱融着不良を起すおそれがあるので、上記のように接着剤によるのが好適である。
【0031】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば凹穴7は円形や、六角形以外の多角形であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 蓄熱ボード
2,2A シェル
2a 充填口
3 蓄熱材
4,5 主板面
6 側端面
7 蓄熱材
10,11 暖房パネル
12 放熱パネル
13 基体
14 放熱管
20 キャップ
23 パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボードの外殻を構成するシェルと、該シェル内に充填された蓄熱材とを有する蓄熱ボードにおいて、
該シェルの一方の第1の主板面から他方の第2の主板面にまで達する凹穴が設けられていることを特徴とする蓄熱ボード。
【請求項2】
請求項1において、該凹穴は、該主板面と平行な断面形状が六角形であることを特徴とする蓄熱ボード。
【請求項3】
請求項1又は2の蓄熱ボードと、該蓄熱ボードの側辺に沿って配置された小根太とを備えてなる暖房パネル。
【請求項4】
放熱体を有した放熱パネルと、
該放熱パネルに重ね合わされた請求項1又は2の蓄熱ボードと、
該放熱パネル及び蓄熱ボードの重ね合わせ体の側辺に沿って配置された小根太と
を備えてなる暖房パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate