説明

蓄熱剤

【課題】 蓄熱剤の人体や環境に対する安全性を高める。
【解決手段】 蓄熱剤の成分に、少なくともクエン酸、安息香酸、水を含有することによって、温度を0℃付近から常温とする範囲で長時間に亘って蓄熱効果を有することから、人体や環境に対する安全性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば食品流通、血液運搬、精密機器の運搬、屋外作業に使用される蓄熱剤に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば食品や人体等の保冷や冷却等に用いられる蓄熱剤は、多数知られているが、殆どの場合、蓄熱温度、すなわち保持する温度が0℃近辺のものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような蓄熱剤は、蓄熱温度が低すぎるために、冷やしすぎにより例えば食品が凍って風味が落ちたりすることがあった。
【0004】また、このような蓄熱剤は、例えば特殊な有機材料等を用いている場合が多く、材料が高価でありコストが高くなってしまうといった問題もあった。
【0005】そこで、本発明は、温度を0℃付近から常温の範囲で蓄熱させ、人体や環境に対して高い安全性を有し、低価格な蓄熱剤を提供することを目的に提案されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、蓄熱剤の成分としてクエン酸と安息香酸と水とを所定の割合で配合することにより、この混合物が0℃付近から常温の範囲に大きい潜熱を有することを見出した。
【0007】すなわち、この目的を達成する本発明に係る蓄熱剤は、成分に、少なくともクエン酸、安息香酸、水を含有している。
【0008】本発明に係る蓄熱剤では、成分としてクエン酸、安息香酸、水を含有し、全体の成分を100重量%としたときに、少なくともクエン酸の成分を66.7重量%〜85重量%の範囲にし、水の成分を12重量%〜20重量%の範囲にすることにより、潜熱が0℃付近から常温の範囲となり、且つこの潜熱が大きくなる。したがって、0℃付近から常温の範囲で、具体的には0℃〜26℃の範囲で長時間に亘って蓄熱させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用した蓄熱剤について詳細に説明する。この蓄熱剤は、成分として少なくともクエン酸と安息香酸と水とを所定の割合で配合することによって得られる。これらの成分で構成される蓄熱剤は、配合される各成分におけるそれぞれの潜熱は大きくはないが、所定の割合で配合されることによって大きな潜熱を有することとなる。
【0010】具体的に、この蓄熱剤では、潜熱が0℃付近から常温の範囲となり、且つこの潜熱が大きくなることから、周囲温度を−10℃とする環境下で、その温度が0℃〜26℃まで上昇するときに、温度が2℃上昇するのにかかる時間が42g当たり9分30秒以上であり、長時間に亘って0℃〜26℃の温度範囲で蓄熱させることができる。
【0011】したがって、この蓄熱剤では、例えば食品の保冷や人体の冷却等に用いた際に、蓄熱温度を0℃付近から常温の範囲、すなわち0℃〜26℃の範囲にすることができる。
【0012】ところで、この蓄熱剤は、全体の成分を100重量%にしたときに、クエン酸の成分を66.7重量%〜85重量%の範囲とし、水の成分を12重量%〜20重量%の範囲とし、安息香酸を残りの成分にして配合させている。
【0013】全体の成分を100重量%とするときに、クエン酸の成分が66.7重量%より少なく配合された場合には、クエン酸の配合が少なすぎて潜熱を0℃付近から常温の範囲で大きくすることができず、長時間に亘って0℃付近から常温の範囲で蓄熱させることが困難になる。一方、全体の成分を100重量%とするときに、クエン酸の成分が85.0重量%より多く配合された場合には、クエン酸の量が多すぎて潜熱を0℃付近から常温の範囲で大きくすることができず、長時間に亘って0℃付近から常温の範囲で蓄熱させることが困難になる。そこで、本発明を適用した蓄熱剤では、全体の成分を100重量%とするときに、クエン酸の成分を66.7重量%〜85.0重量%の範囲で配合することによって、潜熱が0℃付近から常温の範囲で大きくなることから、長時間に亘って0℃付近から常温の範囲で蓄熱させることができる。
【0014】また、全体の成分を100重量%とするときに、水の成分が12.0重量%より少なく配合された場合には、水の配合が少なすぎて潜熱を0℃付近から常温の範囲で大きくすることができず、長時間に亘って0℃付近から常温の範囲で蓄熱させることが困難になる。一方、全体の成分を100重量%とするときに、水の成分が20.0重量%より多く配合された場合には、水の量が多すぎて潜熱を0℃付近から常温の範囲で大きくすることができず、長時間に亘って0℃付近から常温の範囲で蓄熱させることが困難になる。そこで、本発明を適用した蓄熱剤では、全体の成分を100重量%とするときに、水の成分を12.0重量%〜20.0重量%の範囲で配合することによって、潜熱が0℃付近から常温の範囲で大きくなることから、長時間に亘って0℃付近から常温の範囲で蓄熱させることができる。
【0015】そして、この蓄熱剤では、その温度を0℃〜26℃の範囲するときに、高温付近、すなわち26℃付近で蓄熱させるためにはクエン酸及び安息香酸の配合比を上述した数値限定の範囲内で多くし、一方、低温付近、すなわち2℃付近で蓄熱させるためには水の配合比を上述した数値限定の範囲内で多くさせる。
【0016】また、この蓄熱剤では、全体を100重量%にするときに、DL−リンゴ酸を2.5重量%以内の量で添加しても良い。全体の成分を100重量%とするときに、DL−リンゴ酸の成分が2.5重量%より多く添加された場合には、DL−リンゴ酸の量が多すぎて潜熱を0℃付近から常温の範囲で大きくすることができず、長時間に亘って0℃付近から常温の範囲で蓄熱させることが困難になる。そこで、本発明を適用した蓄熱剤では、全体の成分を100重量%とするときに、DL−リンゴ酸の成分を2.5重量%以下で添加することによって、潜熱が0℃付近から常温の範囲で更に大きくなることから、0℃付近から常温の範囲での蓄熱時間を延ばすことができる。
【0017】さらに、この蓄熱剤は、含有されているクエン酸や安息香酸等の成分が食品添加物であることから、人体及び環境に対して高い安全性を有している。
【0018】さらにまた、この蓄熱剤では、主成分となるクエン酸、安息香酸、水等の材料が比較的廉価であり、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0019】さらにまた、この蓄熱剤は、周囲温度が高い場合、例えば固体から液体へ変化するといった相変化が起こる温度が高くなる。したがって、周囲温度が高い場合には、26℃以上でも蓄熱剤として用いることが可能となる。
【0020】なお、この蓄熱剤には、上述した蓄熱効果、すなわち温度保持効果を損なわない範囲で、例えば防腐剤、防錆剤、防菌剤、pH調整剤等、公知の各種添加剤を配合させても良い。
【0021】
【実施例】以下、本発明を適用した蓄熱剤として、実際に蓄熱剤を作製したサンプルについて説明する。
【0022】〈サンプル1〉サンプル1では、蓄熱剤を作製するのに、先ず、撹拌容器内の水12.0重量%に、安息香酸3.0重量%、クエン酸85.0重量%を順次加えて密閉した。次に、110℃の加熱槽内で撹拌し、各成分を混合した。このようにして、蓄熱剤を作製した。
【0023】〈サンプル2〉サンプル2では、水を13.5重量%、安息香酸を5.4重量%、クエン酸を81.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0024】〈サンプル3〉サンプル3では、水を16.0重量%、安息香酸を4.0重量%、クエン酸を80.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0025】〈サンプル4〉サンプル4では、水を15.8重量%、安息香酸を5.3重量%、クエン酸を78.9重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0026】〈サンプル5〉サンプル5では、水を17.9重量%、安息香酸を5.2重量%、クエン酸を76.9重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0027】〈サンプル6〉サンプル6では、水を20.0重量%、安息香酸を6.4重量%、クエン酸を75.9重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0028】〈サンプル7〉サンプル7では、水を17.5重量%、安息香酸を7.5重量%、クエン酸を75.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0029】〈サンプル8〉サンプル8では、水を19.5重量%、安息香酸を7.3重量%、クエン酸を73.2重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0030】〈サンプル9〉サンプル9では、水を19.0重量%、安息香酸を9.6重量%、クエン酸を71.4重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0031】〈サンプル10〉サンプル10では、水を20.0重量%、安息香酸を13.3重量%、クエン酸を66.7重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0032】〈サンプル11〉サンプル11では、水を14.0重量%、安息香酸を1.0重量%、クエン酸を85.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0033】〈サンプル12〉サンプル12では、水を20.0重量%、安息香酸を1.0重量%、クエン酸を79.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0034】〈サンプル13〉サンプル13では、水を12.0重量%、安息香酸を21.3重量%、クエン酸を66.7重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0035】〈サンプル14〉サンプル14では、蓄熱剤を作製するのに、先ず、撹拌容器内の水17.6重量%に、安息香酸9.8重量%、クエン酸70.6重量%、DL−リンゴ酸2.0重量%を順次加えて密閉した。次に、110℃の加熱槽内で撹拌し、各成分を混合した。このようにして、蓄熱剤を作製した。
【0036】〈サンプル15〉サンプル15では、水を18.8重量%、安息香酸を10.4重量%、クエン酸を68.8重量%、DL−リンゴ酸を2.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル14と同様に作製した。
【0037】〈サンプル16〉サンプル16では、水を18.2重量%、安息香酸を11.4重量%、クエン酸を68.2重量%、DL−リンゴ酸を2.2重量%にして混合したこと以外は、サンプル14と同様に作製した。
【0038】〈サンプル17〉サンプル17では、水を20.0重量%、安息香酸を11.1重量%、クエン酸を66.7重量%、DL−リンゴ酸を2.2重量%にして混合したこと以外は、サンプル14と同様に作製した。
【0039】〈サンプル18〉サンプル18では、水を18.6重量%、安息香酸を9.3重量%、クエン酸を69.8重量%、DL−リンゴ酸を2.3重量%にして混合したこと以外は、サンプル14と同様に作製した。
【0040】〈サンプル19〉サンプル19では、水を18.6重量%、安息香酸を9.1重量%、クエン酸を69.8重量%、DL−リンゴ酸を2.5重量%にして混合したこと以外は、サンプル14と同様に作製した。
【0041】〈サンプル20〉サンプル20では、水を12.0重量%、安息香酸を2.0重量%、クエン酸を86.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0042】〈サンプル21〉サンプル21では、水を20.0重量%、安息香酸を13.4重量%、クエン酸を66.6重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0043】〈サンプル22〉サンプル22では、水を21.0重量%、安息香酸を4.0重量%、クエン酸を75.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0044】〈サンプル23〉サンプル23では、水を11.0重量%、安息香酸を4.0重量%、クエン酸を85.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0045】〈サンプル24〉サンプル24では、水を11.0重量%、安息香酸を3.0重量%、クエン酸を86.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0046】〈サンプル25〉サンプル25では、水を10.0重量%、安息香酸を10.0重量%、クエン酸を80.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0047】〈サンプル26〉サンプル26では、水を22.9重量%、安息香酸を11.1重量%、クエン酸を66.0重量%にして混合したこと以外は、サンプル1と同様に作製した。
【0048】〈サンプル27〉サンプル27では、水を18.6重量%、安息香酸を9.0重量%、クエン酸を69.8重量%、DL−リンゴ酸を2.6重量%にして混合したこと以外は、サンプル14と同様に作製した。
【0049】次に、以上のように作製したサンプル1〜27について、各サンプル42gを内径50mm、肉厚3mmのガラス容器にそれぞれ入れ、110℃まで加熱した後に、周囲温度を−10℃とする環境下で、サンプルの温度が60℃になった時点から2℃降下する毎の経過時間の測定及び相状態変化の確認を行った。
【0050】なお、各サンプルの温度確認は、熱電対温度計(CUSTUM社製:CT−2320)を用い、熱電対センサー先端部をガラス容器内のサンプルの略中央部に位置するように設置し、熱電対温度計に表示される温度で行った。各サンプルの温度が2℃降下する毎の経過時間の測定は、熱電対温度計に内蔵されている積算型タイマーを用い、サンプルの温度確認をしながら、熱電対温度計に表示される経過時間を読みとった。各サンプルの相状態変化の確認は、サンプルの温度確認をしながら、サンプルが液体又は固体であるかを目視によって判断した。各サンプルの周囲温度の制御には、高温槽(タバイエスペック社製:SU−240S3)を用いた。
【0051】以下、サンプル1〜27における、各サンプルの温度が60℃になった時点から2℃降下する毎の経過時間及び相状態変化の評価結果を表1〜表4に示し、表1〜表4より、各サンプルの温度が60℃になった時点から2℃降下するのに要する時間を算出した評価結果を表5〜表8に示す。
【0052】なお、表1〜表4中において、aはクエン酸を示し、bは安息香酸を示し、cは水を示し、dはDL−リンゴ酸を示し、状態はサンプルの相状態を示している。
【0053】
【表1】


【0054】
【表2】


【0055】
【表3】


【0056】
【表4】


【0057】
【表5】


【0058】
【表6】


【0059】
【表7】


【0060】
【表8】


【0061】なお、表1〜表4中において、aはクエン酸を示し、bは安息香酸を示し、cは水を示し、dはDL−リンゴ酸を示している。また、表1〜表4において、状態は、サンプルの相状態を示している。表1〜表8に示す評価結果から、全体の成分を100重量%としたときにクエン酸を85.0重量%以下とするサンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときにクエン酸を85.0重量%より多く配合したサンプル20及びサンプル24に比べ、温度の低下によって液体から固体へ相変化する温度が0℃〜26℃の範囲にあり、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域があることがわかる。
【0062】サンプル20及びサンプル24では、全体の成分を100重量%とにしたときにクエン酸の配合量が85.0重量%より多く配合されており、クエン酸の配合量が多すぎることから、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくすることができず、温度の低下によって液体から固体に変わる相変化が起こらず、温度変化の少ない蓄熱温度領域を得ることが困難となる。
【0063】これに対し、サンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときにクエン酸の配合量が85.0重量%以下であり、クエン酸の配合量が適切となることにより、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくして相変化する温度を0℃〜26℃の範囲にできることから、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域を有し、長時間に亘って温度を0℃〜26℃とする範囲で蓄熱効果、すなわち温度保持効果を得ることができる。
【0064】また、表1〜6に示す評価結果から、全体の成分を100重量%としたときにクエン酸を66.7重量%以上とするサンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときにクエン酸を66.7重量%より少なく配合したサンプル21及びサンプル26と比べ、温度の低下によって液体から固体へ相変化する温度が0℃〜26℃の範囲にあり、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域があることがわかる。
【0065】サンプル21及びサンプル26では、全体の成分を100重量%とにしたときにクエン酸の配合量が66.7重量%より少なく配合されており、クエン酸の配合量が少なすぎることから、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくすることができず、温度の低下によって液体から固体に変わる相変化が起こらず、温度変化の少ない蓄熱温度領域を得ることが困難となる。
【0066】これに対し、サンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときにクエン酸の配合量が66.7重量%以上であり、クエン酸の配合量が適切となることにより、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくして相変化する温度を0℃〜26℃の範囲にできることから、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域を有し、長時間に亘って温度を0℃〜26℃とする範囲で蓄熱効果を得ることができる。
【0067】以上のことから、蓄熱剤の成分の全体を100重量%としたときに、クエン酸の成分を66.7重量%〜85.0重量%の範囲で配合することは、温度が0℃〜26℃の範囲で9分30秒以上の長時間に亘って蓄熱効果が得られる蓄熱剤を作製する上で大変有効である。さらに、表1〜表8に示す評価結果から、全体の成分を100重量%としたときに水を20.0重量%以下とするサンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときに水を20.0重量%より多く配合したサンプル22及びサンプル26に比べ、温度の低下によって液体から固体へ相変化する温度が0℃〜26℃の範囲にあり、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域があることがわかる。
【0068】サンプル22及びサンプル26では、全体の成分を100重量%とにしたときに水の配合量が20.0重量%より多く配合されており、水の配合量が多すぎることから、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくすることができず、温度の低下によって液体から固体に変わる相変化が起こらず、温度変化の少ない蓄熱温度領域を得ることが困難となる。
【0069】これに対し、サンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときに水の配合量が20.0重量%以下であり、水の配合量が適切となることにより、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくして相変化する温度を0℃〜26℃の範囲にできることから、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域を有し、長時間に亘って温度を0℃〜26℃とする範囲で蓄熱効果を得ることができる。
【0070】さらにまた、表1〜表8に示す評価結果から、全体の成分を100重量%としたときに水を12.0重量%以上とするサンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときに水を12.0重量%より少なく配合したサンプル23〜サンプル25と比べ、温度の低下によって液体から固体へ相変化する温度が0℃〜26℃の範囲にあり、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域があることがわかる。
【0071】サンプル23〜サンプル25では、全体の成分を100重量%とにしたときに水の配合量が12.0重量%より少なく配合されており、水の配合量が少なすぎることから、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくすることができず、温度の低下によって液体から固体に変わる相変化が起こらず、温度変化の少ない蓄熱温度領域を得ることが困難となる。
【0072】これに対し、サンプル1〜サンプル13では、全体の成分を100重量%としたときに水の配合量が12.0重量%以上であり、水の配合量が適切となることにより、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくして相変化する温度を0℃〜26℃の範囲にできることから、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分30秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域を有し、長時間に亘って温度を0℃〜26℃とする範囲で蓄熱効果を得ることができる。
【0073】以上のことから、蓄熱剤の成分全体を100重量%としたときに、水の成分を12.0重量%〜20.0重量%の範囲で配合することは、温度が0℃〜26℃の範囲で9分30秒以上の長時間に亘って蓄熱効果が得られる蓄熱剤を作製する上で大変有効である。さらに、表1〜表8に示す評価結果から、全体の成分を100重量%としたときにDL−リンゴ酸が2.5重量%以下で添加されたサンプル14〜サンプル19では、全体の成分を100重量%としたときにDL−リンゴ酸を2.5重量%より多く添加したサンプル27に比べ、温度の低下によって液体から固体へ相変化する温度が0℃〜26℃の範囲にあり、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分50秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域があることがわかる。
【0074】サンプル27では、全体の成分を100重量%とにしたときにDL−リンゴ酸の配合量が2.5重量%より多く配合されており、DL−リンゴ酸の添加量が多すぎることから、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくすることができず、温度の低下によって液体から固体に変わる相変化が起こらず、温度変化の少ない蓄熱温度領域を得ることが困難となる。
【0075】これに対し、サンプル14〜サンプル19では、全体の成分を100重量%としたときに水のDL−リンゴ酸が2.5重量%以下であり、DL−リンゴ酸の添加量が適切となることにより、温度が0℃〜26℃の範囲で潜熱を大きくして相変化する温度を0℃〜26℃の範囲にできることから、相変化する際に温度が2℃低下するのに9分50秒以上かかる温度変化の少ない蓄熱温度領域を有し、長時間に亘って温度を0℃〜26℃とする範囲で蓄熱効果を得ることができる。
【0076】以上のことから、蓄熱剤の成分全体を100重量%としたときに、DL−リンゴ酸の成分を2.5重量%以下にして添加することは、温度が0℃〜26℃の範囲で9分50秒以上の長時間に亘って蓄熱効果が得られる蓄熱剤を作製する上で大変有効である。
【0077】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、温度を0℃付近から常温とする範囲で長時間に亘って蓄熱効果を有し、主成分を食品添加物とすることから、人体や環境に対する安全性が高い蓄熱剤を得ることができる。また、本発明によれば、主成分を構成する材料が廉価であることから、コストダウンが図られた蓄熱剤を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 成分に、少なくとも(a)クエン酸、(b)安息香酸、(c)水を含有する蓄熱剤。
【請求項2】 全体の成分を100重量%としたときに、上記(a)の成分が66.7重量%〜85重量%の範囲、上記(c)の成分が12重量%〜20重量%の範囲である請求項1記載の蓄熱剤。
【請求項3】 成分に、更にDL−リンゴ酸を含有する請求項1又は請求項2記載の蓄熱剤。
【請求項4】 全体の成分を100重量%とするときに、上記DL−リンゴ酸の成分が2.5重量%以下である請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の蓄熱剤。
【請求項5】 周囲温度を−10℃とする環境下で、その温度が0℃〜26℃の範囲にあるときに、温度を2℃変化する経過時間が42g当たり9分30秒以上である請求項1ないし請求項4記載の何れか一項に記載の蓄熱剤。

【公開番号】特開2003−105329(P2003−105329A)
【公開日】平成15年4月9日(2003.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−303375(P2001−303375)
【出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(501383141)株式会社ヘキサセンター技研 (1)
【Fターム(参考)】