説明

蓄熱材用支持台、及び、この蓄熱材用支持台を備えた蓄熱装置

【課題】 簡単かつ安価な構造で、加工性に優れ、使用時にも損傷等の不具合が発生しにくい構成とする。
【解決手段】 第1支持板2と、第1支持板2に交差して載置される第2支持板3とを備えた構成とする。第1支持板2に所定間隔で複数のガイド溝5を形成する。第2支持板3をガイド溝5に配置することにより、隣接する第2支持板3の間に形成される隙間を載置する蓄熱材11の落下を防止可能な値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材が載置される蓄熱材用支持台、及び、この蓄熱材用支持台を備えた蓄熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱装置として、蓄熱材用支持台に、例えばアルミナボール等の蓄熱材を多数載置し、上方側から高温の排気ガスを通過させて蓄熱材に吸熱し、下方側から低温の空気を供給して前記蓄熱材から放熱させることにより、その熱を例えば燃焼用空気の予熱に利用するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、蓄熱材用支持台として、図7に示すように、複数枚の支持板21を所定間隔(蓄熱材が落下しない間隔)で並設し、各支持板21に形成した貫通孔22に棒材23を挿通し、支持板21と棒材23とを溶接一体化したものが知られている。
【0004】
また、他の蓄熱材用支持台として、ハニカム構造のものが知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3182045号公報
【特許文献2】特開平7−127983号公報
【特許文献3】実用新案登録第2598619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の蓄熱材用支持台では次のような問題点がある。
【0007】
(1)支持板と棒材とを溶接により一体化しているが、溶接作業時、支持板の位置がずれることがあり、支持板の間隔を適正な値に維持できないことが多い。つまり、歩留まりが悪い。
【0008】
(2)支持板の間隔がずれないように、各支持板を治具等で位置決めしておく必要がある。また、全ての支持板と棒材との間を溶接する必要があり、溶接箇所が多くなる上、ノロ取りの手間もかかる。つまり、加工性が悪い。
【0009】
(3)溶接箇所と蓄熱材が載置される位置とが近いため、溶接箇所が熱影響を受けやすい。この結果、熱収縮により溶接箇所が損傷する可能性が高い。そして、溶接箇所が損傷すれば、支持板の間隔がずれ、使用中に蓄熱材が落下する恐れが生じる。つまり、耐久性に乏しい。
【0010】
(4)歩留まりの悪さ、及び、加工性の悪さ等が原因で、加工コストがかかる。
【0011】
また、後者の蓄熱材用支持台では製造が困難でコストがかかる。
【0012】
そこで、本発明では、簡単かつ安価な構造で、加工性に優れ、使用時にも損傷等の不具合が発生しにくい蓄熱材用支持台及び蓄熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、蓄熱材用支持台を、第1支持板と、前記第1支持板に交差して載置される第2支持板とを備えた構成とし、少なくとも前記第1支持板に所定間隔で複数のガイド溝を形成し、前記第2支持板を前記ガイド溝でガイドすることにより、隣接する第2支持板の間に形成される隙間を載置する蓄熱材の落下を防止可能な値としたものである。
【0014】
この構成により、蓄熱材を支持する第2支持板の間隔が第1支持板に形成されるガイド溝の間隔によって決定される。したがって、第2支持板の間隔を正確に所望の値とすることができる。また、第1支持板と第2支持板を必ずしも溶接一体化する必要がなくなる。したがって、加工性が向上し、歩留まりがよくなる。また、ガイド溝はプレス加工等により簡単に形成することができるので、製作コストを抑制することができる。
【0015】
前記第1支持板と前記第2支持板とは、前記第1支持板に形成したガイド溝の底面側で溶接一体化するのが好ましい。
【0016】
この構成により、載置される蓄熱材から離れた位置で溶接一体化することができ、排気ガス等の高温ガスは蓄熱材側から供給されるので、溶接箇所が熱影響を受けにくい。したがって、損傷しにくく、長期に亘って使用することが可能となる。また、溶接箇所が損傷したとしても、第2支持板がガイド溝によってガイドされているので、位置ずれする心配もない。
【0017】
前記第1支持板及び前記第2支持板を互いに交差するように組み立てた状態で周囲をガイドする矩形状の枠体をさらに備え、前記枠体には、2組の対向壁のうち、一方の対向壁の上部から第1係合溝をそれぞれ形成し、他方の対向壁の下部から第2係合溝をそれぞれ形成し、前記第1支持板の両端部に、前記第1係合溝に支持される第1係合部をそれぞれ形成し、前記第2支持板の両端部に、前記第2係合溝に支持される第2係合部をそれぞれ形成するのが好ましい。
【0018】
この構成により、第1支持板及び第2支持板を枠体でガイドすることができるので、全体の剛性が高まり、強固な構造とすることが可能となる。また、第2支持板は第1支持板と枠体とで上下からサンドイッチされた状態で支持されることになる。つまり、蓄熱材を直接支持する第2支持板の取付状態を強固なものとすることができ、安定した支持構造を得ることができる。
【0019】
前記支持板で支持する蓄熱材は球状であり、前記支持板のうち、隣接する支持板の間隔を、前記蓄熱材の直径に対して45〜85%、好ましくは60〜70%、最適には65%とすればよい。
【0020】
この構成により、蓄熱材の支持状態を安定させることができる。
【0021】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、蓄熱装置を、前記蓄熱材用支持台と、前記蓄熱材用支持台に支持される蓄熱材とを、流体通路に配置し、前記流体通路に、前記蓄熱材が位置する上方側から高温ガスを供給し、前記蓄熱材用支持台が位置する下方側から低温ガスを供給する構成としたものである。
【0022】
なお、前記支持板すなわちガイド溝の間隔は、蓄熱材のサイズに応じて適宜選択すればよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1支持板に所定間隔でガイド溝を形成し、このガイド溝で第2支持板を支持するようにしたので、簡単かつ安価な構成であるにも拘わらず、蓄熱材を支持する第2支持板の間隔を正確に位置決めすることができる。また、第1支持板と第2支持板を必ずしも一体化しておく必要がなくなり、加工性が向上し、歩留まりもよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る蓄熱材用支持台1を示す。この蓄熱材用支持台1は、第1支持板2、第2支持板3、及び、枠体4で構成されている。
【0026】
第1支持板2は、図2に示すように、略矩形状の板状体(例えば、フラットバー)からなり、一側縁部には所定間隔でガイド溝5が形成され、両端部には第1係合部6が設けられている。ガイド溝5には第2支持板3が配置され、その間隔は後述するように蓄熱材11を支持可能な値とされる。第1支持板2の両端には第1係合部6が設けられている。第1支持板2はプレス加工され、その際、ガイド溝5及び第1係合部6も同時に加工される。したがって、金型精度を高めれば、ガイド溝5の位置を高精度で得ることができる。そして、量産できるので、安価に作成することが可能となる。
【0027】
第2支持板3は、図2に示すように、前記第1支持板2と同様に、プレス加工により形成可能な略矩形状の板状体(例えば、フラットバー)からなり、両端部には第2係合部7が設けられている。第2支持板3は前記第1支持板2に交差(ここでは直交)し、前記ガイド溝5にガイドされるように配置される。この状態では、第2支持板3の間隔は、前述のように形成されたガイド溝5によって高精度に得ることができる。この場合、隣接する第2支持板3の間隔は、載置する蓄熱材11が球状であれば、その直径の45〜85%、好ましくは60〜70%、最適には65%とする。これにより、蓄熱材11を落下させることなく安定した状態で載置することが可能となる。また、第1支持板2の上縁部と第2支持板3の上縁部とは同一面内に位置している。但し、必要に応じて第2支持板3の上縁部を第1支持板2よりも上方に位置させることも可能である。また、第2支持板3の上縁部は必ずしも同一平面内に位置させる必要はなく、例えば、凹面状に配置できるように高さを変えてもよい。
【0028】
枠体4は、図2に示すように、4枚の板状体を組み合わせたもので、2組の対向壁のうち、一方の対向壁(第1側壁8a及び第2側壁8b)の上部には前記第1支持板2の第1係合部6が係合する第1係合溝9がそれぞれ形成され、他方の対向壁(第3側壁8c及び第4側壁8d)の下部には前記第2支持板3の第2係合部7が係合する第2係合溝10がそれぞれ形成されている。
【0029】
前記構成の蓄熱材用支持台1は次のようにして組み立てる。
【0030】
まず、第1支持板2を、そのガイド溝5を形成された側縁部が上部に位置するようにして間隔を開けて配置する(ここでは、3枚並設する。)。そして、第2支持板3を前記第1支持板2に交差させて載置し、前記ガイド溝5に位置させる。これにより、第1支持板2が整列され、2枚目以降の第2支持板3の配置が容易となる(ここでは、11枚配置する。)。
【0031】
その後、枠体4を構成する板状体のうち、第2対向壁の一方(例えば、第3側壁8c)を各第2支持板3の一端側に配置し、第2支持板3の第2係合部7を第2係合溝10に係合する。これにより、各第2支持板3の長手方向の位置を揃えることができる。また、第1対向壁の一方(例えば、第1側壁8a)を第1支持板2の一端側に配置し、第1係合部6を第1係合溝9に位置させる。そして、第1側壁8aに第3側壁8cの端面を当接させ、当接部分を溶接一体化する。これにより、第1支持板2と第2支持板3の間に所望の位置関係を得ることができる。さらに、第2側壁8b及び第4側壁8dを取り付け、各側壁8a〜8dの当接部分を溶接一体化することにより蓄熱材用支持台1を完成する。また、必要に応じて第1支持板2のガイド溝5の底面側で第2支持板3を溶接一体化する。ここでは、支持板同士の溶接箇所は、図4に示すように、ガイド溝5の最も深い位置としている。但し、溶接位置は必ずしも全ての支持板間で行う必要はなく、全体の強度を考慮して適宜必要な箇所で行うようにすればよい(図4では、2つおきに溶接している。)。
【0032】
以上のようにして蓄熱材用支持台1が完成する。この蓄熱材用支持台1によれば、第1支持板2のガイド溝5に第2支持板3を位置させるだけで、第2支持板3の間隔を蓄熱材11を支持可能な値とすることができる。そして、第1支持板2と第2支持板3とは必ずしも溶接により一体化しておく必要がない。このため、溶接及びその後のノロ取り(「ノロ」と呼ばれる金属酸化物、SiO等からなる不純物を除去すること)が不要となる。したがって、非常に加工性に優れ、しかも精度良く作成することができる。
【0033】
なお、前記実施形態では、図3及び図4に示すように、蓄熱材11の直径をφA、第2支持板3の厚みをB、隣接する第2支持板3の間隔をC、第1支持板2の厚みをDとしたとき、寸法Cの基準値CH、寸法Cの許容範囲CP、寸法Bの許容範囲BP、寸法Dの許容範囲DPを次のように決定した。
【0034】
【数1】

【0035】
また、前記実施形態では、枠体4により第1支持板2及び第2支持板3をガイドするようにしたが、第1支持板2及び第2支持板3を交差させた状態で組み立てたものを炉等に設置するようにすることも可能である。また、各支持板2、3の長さ寸法を異ならせることにより、円形、多角形等、種々の平面形状を取ることも可能であり、支持板2、3の高さ寸法も自由に設定できる。さらに、配置する通路の断面形状に合わせて、蓄熱材用支持台1を複数組み合わせて設置することも可能である。
【0036】
前記構成の蓄熱材用支持台1には蓄熱材11が載置され、蓄熱装置12として利用される。この場合、載置する蓄熱材11が側方に転がり落ちる等の不具合のないように、例えば、第1支持板2及び第2支持板3の高さ寸法に比べて枠体4の高さ寸法を大きくすることにより、蓄熱材11を収容可能な凹状の空間を形成するようにしてもよい。また、このような凹状の空間は、前述のように、第2支持板3の高さ寸法を異ならせ、例えば、第2支持板3の上縁部が位置する面を凹状とすることよっても実現可能である。
【0037】
前記蓄熱装置12は、例えば、図5に示す蓄熱式バーナ装置13(詳しくは、特許第3182045号公報を参照のこと)に組み込まれて次のように機能する。
【0038】
すなわち、蓄熱式バーナ装置13の排気通路14の途中に蓄熱材用支持台1を設置し、その上方に蓄熱材11を載置する。これにより、バーナを介して排出される炉内の高温ガス(図5中、高温ガスの流動方向を実線の矢印で示す。)が蓄熱材11を通過して吸熱された後、蓄熱材用支持台1を通って外部へと排出される。したがって、支持板2、3同士の溶接箇所には蓄熱材11で吸熱されて温度低下した空気が流動することになる。このため、溶接箇所が損傷しにくく、長期に亘って良好な状態を維持することが可能である。また、バーナの予熱時には、外気を取り入れた空気(図5中、外気の流動方向を点線の矢印で示す。)を蓄熱材用支持台1から蓄熱材11を通過させ、蓄熱材11から放熱させることにより加熱して供給する。
【0039】
なお、前記実施形態では、第1支持板2にのみガイド溝5を形成するようにしたが、図6に示すように、第2支持板3の対応する位置にガイド溝15を形成することにより、両者を互いに係合するようにしてもよい。これによれば、第1支持板2と第2支持板3を組み付けるだけで、両者の位置関係を所望の状態とすることが可能となる。したがって、枠体4は必ずしも必要ではない。但し、蓄熱式バーナ装置等に組み付けるまでは、図示しない治具等で両支持板2、3を一体化しておくか、溶接等で仮固定しておくのが好ましい。また、第2支持板3に形成するガイド溝15の深さは、第1支持板2の位置ずれを防止可能な程度であれば十分である。また、第2支持板3にガイド溝15を形成する場合、第1支持板2と第2支持板3との溶接箇所は、第2支持板3の下縁部(ガイド溝15の入口側:図6中、「溶接箇所」と記載)とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る蓄熱材用支持台の斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】図1の部分平面図である。
【図4】図3の正面断面図である。
【図5】図1に示す蓄熱材用支持台を蓄熱式バーナ装置に組み込んだ状態を示す断面図である。
【図6】第1支持板と第2支持板の組み付け例を示す部分斜視図である。
【図7】従来例に係る蓄熱材用支持台を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1…蓄熱材用支持台
2…第1支持板
3…第2支持板
4…枠体
5…ガイド溝
6…第1係合部
7…第2係合部
8a〜8d…側壁
9…第1係合溝
10…第2係合溝
11…蓄熱材
12…蓄熱装置
13…蓄熱式バーナ装置
14…排気通路
15…ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1支持板と、
前記第1支持板に交差して載置される第2支持板とを備え、
少なくとも前記第1支持板に所定間隔で複数のガイド溝を形成し、
前記第2支持板を前記ガイド溝でガイドすることにより、隣接する第2支持板の間に形成される隙間を載置する蓄熱材の落下を防止可能な値としたことを特徴とする蓄熱材用支持台。
【請求項2】
前記第1支持板と前記第2支持板とは、前記第1支持板に形成したガイド溝の底面側で溶接一体化したことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱材用支持台。
【請求項3】
前記第1支持板及び前記第2支持板を互いに交差するように組み立てた状態で周囲をガイドする矩形状の枠体をさらに備え、
前記枠体には、2組の対向壁のうち、一方の対向壁の上部から第1係合溝をそれぞれ形成し、他方の対向壁の下部から第2係合溝をそれぞれ形成し、
前記第1支持板の両端部に、前記第1係合溝に支持される第1係合部をそれぞれ形成し、
前記第2支持板の両端部に、前記第2係合溝に支持される第2係合部をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱材用支持台。
【請求項4】
前記支持板で支持する蓄熱材は球状であり、
前記支持板のうち、隣接する支持板の間隔を、前記蓄熱材の直径に対して45〜85%としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蓄熱材用支持台。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蓄熱材用支持台と、
前記蓄熱材用支持台に支持される蓄熱材とを、流体通路に配置し、
前記流体通路に、前記蓄熱材が位置する上方側から高温ガスを供給し、前記蓄熱材用支持台が位置する下方側から低温ガスを供給するようにしたことを特徴とする蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24340(P2007−24340A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203169(P2005−203169)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】