説明

蓄熱装置、ならびにこれを備えた空気調和機

【課題】容易に装着でき、製造バラツキが少なく、高い密着性が得られる蓄熱装置を提供すること。
【解決手段】蓄熱装置は、圧縮機の外周表面の一部と接する形状とした容器の、少なくとも圧縮機に接する面を柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の圧縮機からの放熱を蓄熱する蓄熱装置、ならびにこれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の空気調和機の圧縮機から放熱される熱を蓄熱する蓄熱装置については以下のものが知られている。かかる蓄熱装置は、少なくとも圧縮機の外周表面の一部と接する形状とした金属製容器を配設し、圧縮機と金属製容器との隙間にはシリコン系樹脂を充填し、金属製容器の中には蓄熱材を充填し、さらに金属製容器の外表面で、少なくとも圧縮機と接していない部分の一部には、断熱材を配設している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−8376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、金属製容器と圧縮機との隙間に充填剤を充填するので、蓄熱装置を圧縮機に装着する工程の作業効率が悪いものであった。
【0005】
また、シリコン系充填材を隙間に充填するので、圧縮機の外周表面の全面に接する形状にすることは困難で製造バラツキが大きく、かつ密着性も低かった。
【0006】
そこで本発明は、容易に装着でき、製造バラツキが少なく、高い密着性が得られる蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の蓄熱装置は、圧縮機の外周表面の一部と接する形状とした容器の、少なくとも圧縮機に接する面を柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材で構成したことを特徴とするもので、蓄熱装置の圧縮機に接する面が磁化しているので磁力により圧縮機に圧接して密着する。このことにより、本発明の蓄熱装置は圧縮機に容易に装着でき、製造バラツキが少なく高い密着性が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の蓄熱装置は圧縮機に容易に装着でき、製造バラツキも少なく高い密着性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における蓄熱装置の斜視図
【図2】本発明の第1の実施形態における蓄熱装置の鉛直断面図
【図3】本発明の第1の実施形態における蓄熱装置の水平断面図
【図4】本発明の第2の実施形態における蓄熱装置の斜視図
【図5】図4に示す本発明の第2の実施形態の蓄熱装置の水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、圧縮機の外周表面の一部と接する形状とした容器の、少なくとも圧縮機に接する面を柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材で構成したことを特徴とする
蓄熱装置とするもので、圧縮機に接する面を磁化してあることで、圧縮機との密着性を高め、圧縮機からの放出熱を効率良く吸収し蓄熱することができる。
【0011】
第2の発明は、圧縮機の外周表面の一部と接する形状とした馬蹄形状容器の、少なくとも圧縮機に接する面を柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材で構成したことを特徴とする蓄熱装置としたことで、圧縮機に取り付けやすく、圧縮機からの放出熱を効率良く吸収しつつ、さらに設計の自由度を向上させることができる。
【0012】
第3の発明は、熱による収縮する材料は、ゴム磁石であることを特徴とする蓄熱装置とするもので、蓄熱装置を圧縮機に効率よく装着することができ、また圧縮機から取り外す時の作業効率を良くすることができる。
【0013】
第4の発明は、上述の蓄熱装置を備えたことを特徴とする空気調和機とするもので、暖房能力が高く、暖房再開時において圧縮機が再び運転を開始するまでの時間が短縮された空気調和機を得ることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である。本実施形態で圧縮機1は従来公知の外周表面が金属製である円筒形状のものを用いることができる。圧縮機1には円筒形状の蓄熱装置2が取り囲むように取り付けられている。設置面積の効率化の観点から圧縮機1と蓄熱装置2は長手方向が鉛直となるよう設置されている。圧縮機1の外周表面に蓄熱装置2の内周表面が密着している。圧縮機1は運転により発熱する。圧縮機1からの熱は蓄熱装置2に伝搬する。伝搬した熱を蓄熱装置2が吸収し蓄熱する。
【0016】
この圧縮機1は、不図示の吸込管と吐出管を備えており、吸込管から冷媒を吸い込み、冷媒を所定の圧力まで圧縮し、圧縮した冷媒を吐出管から吐出する。圧縮機1は、冷媒を圧縮する工程で温度が上昇し、周囲に熱を放出する。
【0017】
圧縮機1の暖房能力を向上させるには、冷媒の温度は高い方が良い。また、圧縮機1の温度は運転のために所定の範囲の値である必要があるが、圧縮機1の運転を停止して放置すると、圧縮機1の温度が機能を果たすのに必要な温度以下にまで低下してしまい、再度運転する場合、圧縮機1の温度を圧縮機1が運転可能となる温度に再度上昇させるまで時間を要する。
【0018】
暖房能力の向上、および運転停止後に再度運転するまでの時間を短縮するために、圧縮機1から放出された熱を蓄熱装置2で蓄熱し、圧縮機1の温度低下を緩やかなものとする。そのため圧縮機1からの放熱を蓄熱装置2で吸収・蓄熱している。
【0019】
また、上記の実施の形態以外にも、冷媒回路の一部を吸熱熱交換器(図示せず)として蓄熱装置2の内部に通し、蓄熱材23と熱交換させることで、蓄熱装置2内部の熱を除霜時に使用することもできる。
【0020】
次に、図2は図1に示す蓄熱装置2の鉛直断面図、図3は図1に示す蓄熱装置2の水平断面図である。
【0021】
蓄熱装置2は、容器体21、断熱材24を備えている。
【0022】
ここで容器体21は、蓄熱材23を収容する有底の二重円筒体であり、内円筒21a、外円筒21b、底部21cからなる。
【0023】
内円筒21aは、圧縮機1の外周表面を取り囲み密着している。圧縮機1の外周表面から放出された熱の大部分が内円筒21aに伝搬する。内円筒21aは圧縮機1より伝搬した熱を蓄熱材23に伝搬させる。蓄熱材23は伝搬された熱を蓄える。
【0024】
そして、内円筒21aを柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材からなすことが重要である。この柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材には、例えば、ゴム磁石を用いることができる。
【0025】
上述の通り、圧縮機1からの放熱は内円筒21aに伝わり、内円筒21aに一部吸収される。内円筒21aは柔軟であるので圧縮機1の金属製の外周表面との間に働く磁力により収縮して圧縮機1の外周表面に吸着する。この磁力により内円筒21aの内周表面は圧縮機1の外周表面に圧接する。そして、圧縮機1の外周表面と内円筒21aの内周表面との密着性が向上する。また、密着性が向上するほど、熱の伝導性が向上することとなる。
【0026】
内円筒21a、外円筒21b、底部21cで囲まれた空所に蓄熱材23が収納されている。蓄熱材23は、従来公知のものを用いる事ができる。例えば顕熱を利用した蓄熱材23として水や、オイル、グリコール等の液体状のもの、また液体と固体の状態変化に伴う潜熱を利用した蓄熱材23として、パラフィン等のものなどを用いることができる。
【0027】
また、外円筒21bは円筒形状である。
【0028】
外円筒21bは磁化されていることが好ましい。そうすれば、蓄熱装置2を固定治具等用いることなく外円筒21bの磁力により、金属製筺体を持つ室外機等に簡便かつ容易に吸着固定することができる。
【0029】
外円筒21bの外周表面に断熱材24が取り付けられている。断熱材24には発泡スチロールや発泡ウレタン、およびフェルト等の、各種の断熱性を有する材料を用いることができる。断熱材24は外気と容器体21との間の熱交換を妨げており、蓄熱材23の放熱を抑制している。
【0030】
次に圧縮機1への蓄熱装置2の装着について説明する。はじめに、圧縮機1の上方に蓄熱装置2を位置させる。次に、圧縮機1を取り囲むように蓄熱装置2を降ろす。内円筒21aが圧縮機1の金属製の外周表面との間の磁力により圧縮機1の外周表面を圧接することによって、内円筒21aが圧縮機1の外周表面に密着する。以上のようにして、密着性を高くして圧縮機1に蓄熱装置2を取り付けることができる。
【0031】
本発明は以上の実施形態に限定されることなく種々の実施の形態とすることが可能である。
【0032】
図4は第2の実施形態の斜視図であり、図5は第2の実施形態の水平断面図である。
【0033】
図4、図5に示すように、第2の実施形態では第1の実施形態の円筒形状の蓄熱材23、外円筒21b、断熱材24の代わりとして、それぞれ、馬蹄形状の蓄熱材23、馬蹄形状の外壁25、馬蹄形状の断熱材24を用いることができる。
【0034】
ここで蓄熱装置2の全体形状が馬蹄形状であるとは、蓄熱装置2が圧縮機1に接する接触面が圧縮機1の曲率と略同一である曲壁部と、基部の端部に接続される一対の並設され
る直壁部からなり、一対の側壁部の間の間隔(すなわち開口幅)が略一定、あるいは曲壁部側の反対側(すなわち先端側)に向かうにつれて大きくなる、曲壁部と直壁部を接続した全体形状が略U字形状のものであることを意味する。
【0035】
これにより、圧縮機1に蓄熱装置2を搭載する際に、圧縮機1の上方からはめ込むだけではなく、圧縮機1の側面から蓄熱装置2を押し当てることで、圧縮機1と蓄熱装置2を一体的に結合することができるので、より一層簡便かつ容易に取り付けを行うことができる。
【0036】
なお、以上の内円筒21a、磁化部材22は圧縮機1と接する面のみが磁化されている片面磁化の状態のものでよい。
【0037】
また、空気調和機の圧縮機1に本発明の蓄熱装置2を装着していることにより、暖房能力が高く、暖房再開時において圧縮機1が運転を開始するまでの時間を短縮した空気調和機を得ることができる。
【0038】
また、冷媒回路の一部を吸熱熱交換器(図示せず)として蓄熱装置2の内部に通し、蓄熱材23と熱交換させることで、蓄熱装置2内部の熱を除霜時に使用することができ、除霜時間の短縮や除霜運転中に暖房運転を継続することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る蓄熱装置は、容易に装着でき、製造バラツキが少なく、高い密着性が得られ、空気調和機等に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 圧縮機
2 蓄熱装置
21 容器体
21a 容器体21の内円筒
21b 容器体21の外円筒
21c 容器体21の底部
22 伝熱部材
23 蓄熱材
24 断熱材
25 容器体21の外壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の外周表面の一部と接する形状とした容器の、少なくとも圧縮機に接する面を柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材で構成した蓄熱装置。
【請求項2】
圧縮機の外周表面の一部と接する形状とした馬蹄形状容器の、少なくとも圧縮機に接する面を柔軟でかつ磁力による吸着力を備えたシート材で構成した蓄熱装置。
【請求項3】
前記シート材は、ゴム磁石であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の蓄熱装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1つに記載の蓄熱装置を備えた空気調和機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−144948(P2011−144948A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3772(P2010−3772)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】