説明

蓄熱装置

【目的】 断熱効果に優れ、組立ての容易な蓄熱装置の提供
【構成】 蓄熱コア部が断熱領域を隔てて外側ケーシングに収納されており、該断熱領域に多孔質断熱材粒子が充填されると共に中真空に保持され、さらに蓄熱コア部にその膨脹を抑制する補強部材が設けられており、また蓄熱コア部と外側ケーシングの間にこれらを一体に固定する断熱性の固定支持具が設けられていることを特徴とする蓄熱装置。
【効果】 優れた断熱性を有する多孔質断熱材粒子が充填されているので断熱領域の真空度が3×10-1torr以下の中真空で足り、また蓄熱コア部には補強部材が内装されているので脱気時に断熱領域の幅が減少せずに断熱材粒子が十分に充填される。従って優れた断熱効果が得られる。また蓄熱コア部が固定支持具によって外側ケーシングに一体に固定されているのでその取付け構造が安定であり、組立ても容易である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の廃熱を蓄熱し始動時の予熱あるいは車内の暖房などに利用する蓄熱装置に関し、さらに詳しくは、蓄熱コア部の熱膨張が少なく、断熱性に優れ、また蓄熱コア部の支持構造が安定であり、断熱部分の脱気など装置組立てが容易な蓄熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、自動車用エンジンなどの内燃機関におけるエネルギー効率を高めるために、内燃機関から生じる廃熱の一部を蓄熱保存し、この熱を必要に応じて、例えば冬期間におけるエンジンの始動前の車内暖房やエンジン吸気部の予熱に利用して燃費の改善などに役立てるための蓄熱装置が提案されている。蓄熱装置の原理は、固相および液相状態の比熱が大きく、冷却時の伝熱媒体温度範囲で固相から液相に相転移する際に大きな相転移熱を発生する材料を蓄熱材として用い、この蓄熱材とエンジン内での燃焼熱を冷却するための冷却液(伝熱媒体)との間で熱交換を行わせて熱を蓄えるものである。蓄熱材は蓄熱時には伝熱媒体の熱を吸収して固相から液相に転移し、さらに伝熱媒体の温度まで上昇する。この加熱状態の蓄熱材を断熱状態にて保存しておき、必要時に蓄熱材自体の熱と蓄熱材が液相から固相へ転移するときに放出される転移熱をエンジンや室内に伝熱媒体を介して導く。
【0003】
【発明の解決課題】以上のように蓄熱装置は、伝熱媒体を介して導入された内燃機関の余熱などを蓄熱コア部に蓄え、これを保存するために該蓄熱コア部とこれを収納する外側ケーシングとの間に断熱領域が形成されており、通常、この断熱領域は断熱効果を高めるために真空に保たれている。一般に断熱性は真空度に比例するので、充分な断熱効果を得るために、従来、断熱領域を10-5〜10-6torrの比較的高い真空度に保持しているが、装置内部をこのような高真空度に排気する時間がかかり、しかも蓄熱装置の使用期間を通じてこの真空度を維持するのが難しいという問題がある。さらに高真空度に耐えるように容器を筒型に形成する必要があるなど容器形状の自由度が制限される。また装置組立時の真空脱気に伴い、蓄熱コア部が膨脹して断熱領域が狭くなるため、断熱材粉末の充填が不十分になる。本発明は従来の蓄熱装置における上記課題を解決した蓄熱装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題の解決手段】本発明者等は、従来の蓄熱装置における上記課題を解決するために、断熱領域に超微粒子シリカなどの固体断熱材粉末を充填し、断熱領域を中真空に保持した蓄熱装置を先に提案したが(特願平4−265337号)、本発明はこれをさらに改良し、上記超微粒子シリカなどに代えて断熱効果に優れた多孔質断熱材粒子を用い、さらに蓄熱材コア部の膨脹を抑制して断熱領域の厚さを確保すると共にその組立てを容易にしたものである。
【0005】すなわち、本発明によれば以下の蓄熱装置が提供される。
(1) 熱を断熱保存する蓄熱コア部を有し、該蓄熱コア部には蓄熱材収容部と該収容部を流れる伝熱媒体の流路が形成されており、該伝熱媒体と蓄熱材との間で熱交換が行われる蓄熱装置において、蓄熱コア部が断熱領域を隔てて外側ケーシングに収納されており、該断熱領域に多孔質断熱材粒子が充填されると共に中真空に保持され、さらに蓄熱コア部にその膨脹を抑制する補強部材が設けられており、また蓄熱コア部と外側ケーシングの間にこれらを一体に固定する断熱性の固定支持具が設けられていることを特徴とする蓄熱装置。
(2) 外側ケーシングに耐熱フィルターを備えた脱気孔が設けられている上記(1) の蓄熱装置。
(3) 多孔質断熱材粒子として粒径10μm 〜3mmのパーライト、バーミキュライトまたはケイソウ土が用いられ、断熱領域が3×10-1torr以下の中真空に保持されている上記(1) の蓄熱装置。
【0006】
【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて具体的に説明する。図1は本発明に係る蓄熱装置の概略を示す断面図であり、図2は断熱粒子を充填する方法を示す断面説明図、図3は蓄熱コア部の固定支持具を模式的に示す斜視図、図4はべーキング方法の説明図である。図1の実施例において、蓄熱装置20は、蓄熱コア部21と、該蓄熱コア部21を収納する外側ケーシング22によって形成されている。該蓄熱コア部21は内側ケーシング23を有し、その内部には平管状の管材(冷却水管)を並列に多数配した伝熱媒体管路24が形成されており、該管路24の間に蓄熱剤収容部が設けられている。該蓄熱剤収容部は伝熱効果を高めるようにフィン25によって多数の溝に仕切られ、各溝に蓄熱材26が密閉して充填されている。
【0007】該蓄熱コア部21は断熱領域60を隔てて外側ケーシング22に収納されている。該断熱領域60は気密に形成され、多孔質断熱材粒子が上記蓄熱コア部全体を覆うように充填されると共に3×10-1torr以下の中真空に保持される。多孔質断熱材粒子としてはパーライト、バーミキュライトまたはケイソウ土などが最適である。断熱材として用いられるパーライトはSiO2 を主成分としAl等を含む粒子であり、黒曜石や真珠岩などの天然ガラス質岩石を粉砕し、900〜1200℃に急速に加熱し膨脹させたものであって、気密性の微細気泡を有する。同様に断熱材として用いられるバーミキュライトおよびケイソウ土も気密性の微細気泡を有する多孔質粒子である。該パーライトの粒径は10μm 〜3mmが好ましい。粒径が10μm より小さいと、これを断熱領域60に充填して真空脱気する際にフィルターが目詰りを生じる。また3mmより大きな粒子では固体による熱伝導が大きくなり、また断熱領域に充填し難くなるので好ましくない。上記多孔質断熱材粒子は断熱性に優れるので断熱領域の真空度は3×10-1torr以下、好ましくは1×10-1〜10-3torrの中真空で足りる。
【0008】上記蓄熱コア部21の両端には貯溜部27、28が設けられており、これら貯溜部27、28は隔壁29によって仕切られると共に上記冷却水の管路24に連通し、一方の貯溜部27は、その内部が導入側27a、排出側27cおよび中央部27bに仕切られており、またその反対側の貯溜部28は導入側28aと排出側28bに仕切られ、これにより蓄熱コア部21の内部を循環する伝熱媒体(冷却水)の流路が形成されている。上記貯溜部27aおよび27cには導入管30と排出管31とが各々接続しており、導入管30を通じて導入側貯溜部27aに流入した冷却水は導入側管路24aを経て導入側貯溜部28aに至り、ここから中央部管路24bを通じて中央貯溜部27bに流入し、さらに排出側管路24cおよび貯溜部28bを経て排出側貯溜部27cに至り、排出管31を通じて外部に導かれる。
【0009】上記蓄熱コア部21には真空脱気時の膨脹を抑制するための補強部材70が内装されている。該補強部材70はピン状の部材であり、蓄熱材充填部を貫いて、その両端が内側ケーシング23の両側面に接合されている。該補強部材70は蓄熱コア部21を均等に拘束するように該蓄熱コア部21の4隅と中央部におのおの設けられている。装置組立時に断熱領域が真空脱気されると、外側ケーシング22は大気圧で内側に押圧され、一方、蓄熱コア部21は内部が外気に連通しているので外側に膨脹する圧力を受けるが、蓄熱コア部21の内部には上記補強部材70が設けられているので蓄熱コア部21がこの補強部材70によって拘束され、膨脹が抑えられる。従って断熱領域60の幅が蓄熱コア部21の膨脹によって減少せず、所定の断熱幅が確保されるので、断熱材粒子の充填が不十分になる虞がない。
【0010】図2に示すように、真空脱気のために外側ケーシング22には脱気口71と、該脱気口71に耐熱フィルター72を装着した脱気部73が設けられている。該脱気部73は外部の真空ポンプ(図示省略)に接続される。さらに外側ケーシング22には断熱材粒子80を導入するための供給口81が設けられており、該供給口81には断熱材粒子80を貯溜したホッパ82が取付けられ、供給口81を通じて断熱材粒子80が断熱領域60に充填される。断熱材粒子80を充填した後に、加熱(ベーキング)しながら脱気口71を通じて断熱領域60が真空に脱気され、これに伴いさらに供給口81から断熱材粒子80が吸引される。この真空脱気の際に、脱気口71には耐熱フィルター72が蓋設されているので脱気口71から断熱材粒子80が漏出する虞がない。なお予熱した断熱材粒子80を充填しても良い。耐熱フィルター72としては焼結フィルター、ステンレスワイヤ等を用いることができる。
【0011】ベーキング方法を図4に示す。蓄熱装置20にバンドヒータ90を巻いて200℃程度に加熱し、一方、蓄熱コア部21の内部には沸騰した熱湯91をポンプ92によって循環させ、内部を加熱した状態で真空脱気を行う。脱気後は脱気部73および供給口81を封止する。
【0012】本実施例では、さらに蓄熱コア部21が安定に内装されるように蓄熱コア部21と外側ケーシング22とを一体に固定する固定支持具50が設けられている。該固定支持具50は一対の受部材51と該受部材51に嵌着する係合部材52からなる。図3に示すように、受部材51はU字型をなし、その開口部51aを除く周辺部の縁部51bが内側に折れ込み、該縁部51bによって囲まれた嵌合用凹部51cが形成されている。一方、係合部材52はその胴部52aの両端には平板部52bが設けられており、該平板部52bは該胴部52aの両側に張出している。該係合部材52は受部材51の開口部51aを通じて、その両端の平板部52bが一対の上記受部材52の凹部51cにおのおの嵌合して係合する。上記受部材51は外側ケーシング22および内側ケーシング23の対応する位置に予め取付けられる。蓄熱コア部21を外側ケーシング22に連結固定するには、蓄熱コア部21を外側ケーシング22に収納して位置合わせをした後に受部材51の開口部51aを介して係合部材52の平板部52bを各受部材51の凹部51cに嵌合し、該開口部51aを止板53で塞ぎ、受部材51の端部に設けたネジ孔51dにネジ止めしてこれらを固定する。上記固定支持具50によって蓄熱コア部21は外側ケーシング22に固定され支持されるので、導入管30や排出管31の接合部分に応力が集中せず、この部分に負担がかからない。また固定方法は受部材51に係合部材52を嵌着すれば良いので装置の組立てが容易になる。なお上記固定支持具50は断熱性の耐熱樹脂材料やセラミック材料によって形成するのが良い。
【0013】
【発明の効果】本発明の蓄熱装置は、優れた断熱性を有する多孔質断熱材粒子が蓄熱コア部の周りに充填されているので断熱領域の真空度が3×10-1torr以下の中真空で足り、また蓄熱コア部には真空脱気時の膨脹を抑える補強部材が内装されているので断熱領域の幅が減少せずに断熱材粒子が十分に充填される。従って、優れた断熱効果が得られる。また蓄熱コア部が固定支持具によって外側ケーシングに一体に固定されているのでその取付け構造が安定であり、組立ても容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る蓄熱装置の概略を示す断面図。
【図2】断熱粒子を充填する方法を示す蓄熱装置の断面説明図。
【図3】蓄熱コア部の固定支持具を模式的に示す斜視図。
【図4】べーキング方法の説明図である。
【符号の説明】
20−蓄熱装置
21−蓄熱コア部
22−外側ケーシング
23−内側ケーシング
24−管路
25−フィン
26−蓄熱材
27、28−貯溜部
29−隔壁
30−導入管
31−排出管
50−固定支持具
60−断熱領域
70−補強部材
71−脱気口
72−耐熱フィルター
73−脱気部
80−断熱材粒子
81−供給口
82−ホッパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱を断熱保存する蓄熱コア部を有し、該蓄熱コア部には蓄熱材収容部と該収容部を流れる伝熱媒体の流路が形成されており、該伝熱媒体と蓄熱材との間で熱交換が行われる蓄熱装置において、蓄熱コア部が断熱領域を隔てて外側ケーシングに収納されており、該断熱領域に多孔質断熱材粒子が充填されると共に中真空に保持され、さらに蓄熱コア部にその膨脹を抑制する補強部材が設けられており、また蓄熱コア部と外側ケーシングの間にこれらを一体に固定する断熱性の固定支持具が設けられていることを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】 外側ケーシングに耐熱フィルターを備えた脱気孔が設けられている請求項1の蓄熱装置。
【請求項3】 多孔質断熱材粒子として粒径10μm 〜3mmのパーライト、バーミキュライトまたはケイソウ土が用いられ、断熱領域が3×10-1torr以下の中真空に保持されている請求項1の蓄熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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