説明

蓄積疲労算出方法およびこの蓄積疲労算出方法を用いた振動試験方法

【課題】 構造体に非ガウス型の振動が加わっている場合でも、その蓄積疲労を正確に算出するとともに、周波数ごとの蓄積疲労の算出を簡便に行うことを目的とする。
【解決手段】 振動環境下に置かれた輸送品Pに生ずる蓄積疲労を算出するための蓄積疲労算出方法であって、第2の加速度センサ5により得られる輸送品Pの振動加速度の時系列波形データを計測する第1のステップと、計測した前記振動加速度の時系列波形データに基づき、レインフロー法により変動する前記振動加速度の蓄積疲労に寄与する振幅Sを順次抽出する第2のステップと、前記振幅Sごとに、その時間軸方向の幅Tを計測することによって周波数f(ただし、f=1/T)を設定する第3のステップと、前記周波数fごとに、前記振幅Sとその大きさごとの発生頻度Nとに基づいて、構造体に生ずる蓄積疲労を算出する第4のステップとを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動環境下に置かれた構造体に生ずる蓄積疲労を算出するための蓄積疲労算出方法、および、この蓄積疲労算出方法を用いて、自動車、鉄道車両などの輸送手段に積載される構造体などの輸送品の振動に対する耐久性を評価するための振動試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両、鉄道、航空機などの輸送手段に搭載される貨物、機器などの構造体に対しては、事前に振動試験を行うことにより、その耐久性を評価することが従来から行われている。このような振動試験として、例えば特許文献1に開示されている方法が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の振動試験方法は、実輸送時に車両などの輸送手段で発生する振動を予め計測しておき、この振動を振動試験機で再現することにより構造体を振動させる。そして、この振動により構造体に発生するパワースペクトル密度(PSD)を計測し、この計測されたPSDを所望の周波数帯域ごとに分割した後、逆フーリエ変換によって上記周波数帯域ごとに振動波形データを導出し、この振動波形データに基づいて、実輸送時に構造体に蓄積される蓄積疲労を上記周波数帯域ごとに算出する。この算出した蓄積疲労を目標蓄積疲労とし、振動試験では、実輸送時よりも大きいPSDを有する振動を構造体に、構造体に生じる蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるまで加え、このとき、輸送品に損傷が発生しているか否かを検査することによって、実輸送時に構造体に損傷が発生するか否かを予測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−181195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の振動試験方法では、蓄積疲労を算出する際に導出した上記周波数帯域ごとの振動波形データを、その確率密度関数が正規分布となるガウス型の振動と仮定している。すなわち、上記した特許文献1では、構造体の蓄積疲労を算出する際に、各振動波形データの振動加速度のピーク位置の分布がレイリー分布に従っているとして、下記の数式(1)を用いて構造体の蓄積疲労を算出している。なお、αは構造体固有の値を、βは蓄積疲労を、fは期待振動数を、σは振動加速度の瞬時値に関する確率密度関数の標準偏差を、Tは実輸送時間を、Γはガンマ関数を、それぞれ示している。
【0006】
【数1】

【0007】
しかし、実際の輸送時に輸送手段に生ずる振動は、その確率密度関数が必ずしも正規分布になっていない非ガウス型の振動であることが認識されている。具体的には、ガウス型の振動ではその尖度が3を示すのに対し、実振動では3以外の尖度を示すことが認識されている。よって、従来の方法による蓄積疲労の算出方法では、実際に構造体に非ガウス型の振動が加わっているとすると、その蓄積疲労を正確に算出することができないという問題が生じる。
【0008】
そのうえ、上記した特許文献1に記載の振動試験方法では、所定の周波数帯域ごとに構造体に生ずる振動波形データを導出し、その後、それぞれの周波数帯域ごとに振動波形データに基づき蓄積疲労を算出しているため、周波数帯域ごとの蓄積疲労を算出するのに非常に手間がかかるという問題も有している。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたもので、構造体に非ガウス型の振動が加わっている場合でも、その蓄積疲労を正確に算出することができるとともに、周波数ごとの蓄積疲労の算出を簡便に行うことが可能な蓄積疲労算出方法、および、この蓄積疲労算出方法を用いた振動試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による蓄積疲労算出方法は、振動環境下に置かれた構造体に生ずる蓄積疲労を算出するためのものであって、構造体の振動を検出するセンサにより得られる構造体の振動検出値の時系列波形データを計測する第1のステップと、計測した前記振動検出値の時系列波形データに基づき、変動する前記振動検出値の蓄積疲労に寄与する振幅Sを順次抽出する第2のステップと、前記振幅Sごとに、その時間軸方向の幅Tを計測することによって周波数f(ただし、f=1/T)を設定する第3のステップと、前記周波数fごとに、前記振幅Sとその大きさごとの発生頻度Nとに基づいて、構造体に生ずる蓄積疲労を算出する第4のステップとを備えることを特徴とする。この疲労蓄積方法によれば、構造体に加わる振動が非ガウス型の振動であっても、振動により生ずる蓄積疲労を周波数ごとに算出することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様においては、前記第2のステップでは、振動検出値のピーク位置の山部ピークを順次抽出して各山部ピークの振動検出値を検出するとともに、谷部ピークを順次抽出して各谷部ピークの振動検出値を検出した後、隣接する山部ピークおよび谷部ピークの振動検出値の差を算出してこの差を前記振動検出値の振幅Sとして設定し、前記第3のステップでは、隣接する山部ピークと谷部ピークとの時間間隔を計測してこの時間間隔を前記時間軸方向の幅Tとして設定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の好ましい実施態様においては、前記第2のステップでは、レインフロー法に基づいて前記振動検出値のピーク位置とこれに対応する底部位置を順次抽出し、前記ピーク位置およびこれに対応する底部位置の振動検出値の差を算出してこの差を前記振動検出値の振幅Sとして設定し、前記第3のステップでは、対応するピーク位置と底部位置との時間間隔を計測してこの時間間隔を前記時間軸方向の幅Tとして設定することを特徴とする。なお、前記振動検出値の振幅Sを抽出する方法としては、レンジ法、レンジペア法など、その他のサイクルカウント法を用いることができる。
【0013】
本発明による振動生成方法は、振動体に載置される構造体の振動耐久性を評価するための振動試験方法であって、振動体に生ずる振動の振動条件に基づいて、構造体に付与する振動の基準用振動条件を決定する試験仕様設定ステップと、前記基準用振動条件の振動によって構造体に生ずる蓄積疲労を、上記した蓄積疲労算出方法により周波数ごとに算出し、これを目標蓄積疲労とする基準値取得ステップと、希望する試験時間を設定して構造体を前記試験時間振動させたとき、前記基準値取得ステップと同様にして算出した前記試験時間内に構造体に生ずる周波数ごとの蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるように、構造体に付与する振動の試験用振動条件を決定する試験条件決定ステップと、前記試験条件決定ステップで得られた試験用振動条件および試験時間に基づいて構造体を振動させて、構造体の破損の有無を判別する振動付与ステップとを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の上記した構成において、「振動体」としては、例えば、機器や部品、貨物などを輸送する車両や鉄道、飛行機などの輸送手段が挙げられ、本発明は、このような輸送手段により輸送される輸送品の振動耐久性を評価するために用いられるが、必ずしもそれに限られるものではない。例えば、作動中、常に振動が加わる装置などに搭載される機器や部品などの振動耐久性を評価するためにも適用することができる。
【0015】
この振動試験方法によれば、振動体に発生する振動が非ガウス型の振動であったとしても、構造体について実輸送環境に即した高精度な振動耐久性の評価を行うことができる。
【0016】
本発明の好ましい実施態様は、前記試験条件決定ステップでは、構造体に付与する振動の周波数成分fごとのパワースペクトル密度と各周波数成分fについて与える位相角Φとを適宜設定することにより、前記試験時間内に構造体に生ずる周波数ごとの蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるような試験用振動条件を決定することを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様は、前記試験条件決定ステップでは、各周波数成分fの位相角の遅れを表す位相差ΔΦ(ΔΦ=Φ(k+1)−Φ)の確率密度分布(ただし、0≦ΔΦ≦2π)を適宜設定し、この確率密度分布に基づき各周波数成分間の位相差ΔΦを算出して各周波数成分fの位相角Φを設定することを特徴とする。
【0018】
本発明の他のさらに好ましい実施態様は、前記試験条件決定ステップでは、各周波数成分fの位相角Φを、角振動数ωと、初期位相Φ(0≦Φ≦2π)と、平均μおよび分散σをもとにした正規乱数N(μ,σ)を用いて算出される群遅延時間tとで表した数式:Φ(k+1)=Φ+t(k+1)dωにより設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の蓄積疲労算出方法によれば、構造体に加わる振動が非ガウス型の振動であっても、その蓄積疲労を周波数ごとに算出することができる。また、本発明の振動試験方法によれば、振動体に発生する振動が非ガウス型の振動であったとしても、振動体に載置される構造体に対して、実輸送環境に即した高精度な振動耐久性の評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の振動試験方法を実施する振動試験機の機略構成図である。
【図2】本発明の振動試験方法の概要を説明するためのフローチャートである。
【図3】試験仕様設定ステップを説明するためのフローチャートである。
【図4】実輸送の輸送経路の一例を模式的に示す図である。
【図5】基準値取得ステップを説明するためのフローチャートである。
【図6】輸送品に生じる振動の一例を示す振動波形データである。
【図7】レインフロー法による振幅の抽出方法を説明するための図である。
【図8】振幅の大きさおよび時間軸方向の幅の算出方法を説明するための図である。
【図9】輸送品に生じる目標蓄積疲労の一例を示す図である。
【図10】段積み状態の輸送品に生じる目標蓄積疲労の一例を示す図である。
【図11】試験条件決定ステップを説明するためのフローチャートである。
【図12】実蓄積疲労と目標蓄積疲労との比較例を示した図である。
【図13】図11のステップ33の第1実施形態を示すフローチャートである。
【図14】位相差の確率密度分布の一例を示す図である。
【図15】図11のステップ33の第2実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。本発明の蓄積疲労算出方法は、振動環境下に置かれた構造体に生ずる蓄積疲労を算出するためのものである。また、本発明の振動試験方法は、例えば、車両、鉄道、飛行機などの輸送手段に積載される輸送品Pが、輸送中の振動(以下、「実振動」という。)によって受ける損傷の有無を予測するためのものであり、本発明の蓄積疲労算出方法を用いることを特徴としている。前記輸送品Pとしては、例えば精密機器などの構造体が該当し、このような輸送品Pは、通常、緩衝材とともに、箱などの容器に収納された状態で輸送される。緩衝材は、発泡材料、紙、木材などで形成され、容器内面と輸送品Pとの間に配置される。
【0022】
図1は、本発明の一実施例である振動試験方法で使用される振動試験装置1の概略構成を示している。振動試験装置1は、輸送品Pが載置される振動台2と、所定の加速度の振動を振動台2に付与することが可能な加振機3と、加振機3の作動を制御する制御装置10とを備えている。前記輸送品Pは、振動台2上に、緩衝材6により支持された状態で配置される。
【0023】
振動台2および輸送品Pには、これらの振動を検出する加速度センサ4,5がそれぞれ取り付けられている。各加速度センサ4,5は、検出した振動台2および輸送品Pの振動加速度を制御装置10に出力する。なお、輸送品Pに取り付ける第2の加速度センサ5は、輸送品Pの複数部位に取り付けるようにしてもよい。また、複数の輸送品Pを多段積みにする場合には、段積みされた各輸送品Pごとに第2の加速度センサ5を取り付けるようにしてもよい。
【0024】
なお、本実施例では、輸送品Pの振動検出値として振動加速度を用いているが、その他、振動により輸送品Pに生ずるひずみ、応力、荷重などを振動検出値として用いることも可能である。
【0025】
制御装置10は、制御、演算の主体であるCPU13、記憶手段であるROM14、RAM15の他に、表示部11、入力部12、およびメモリ部16を備えており、それぞれはバス19を介して接続されている。この制御装置10は、例えばパーソナルコンピュータなどの情報処理装置により構成され、A/D変換器17を介して第1の加速度センサ4および第2の加速度センサ5に接続されるとともに、D/A変換器18を介して加振機3に接続される。
【0026】
表示部11は、液晶モニタやCRTモニタなどで構成される。入力部12は、マウス、入力キー、タッチパネルなどで構成される。ROM14は、CPU13が実行するプログラムの他、各種データなどを格納する。RAM15は、プログラムの実行時に必要なデータの読み書きに用いられる。
【0027】
メモリ部16には、予め各種の輸送手段による輸送経路ごとに計測された実振動の振動波形データ、これを基に算出される実振動の振動加速度についての確率密度関数、PSD( Power Spectrum Density:パワースペクトル密度)、尖度および歪度などの各種情報を格納する。また、入力部12からの入力情報、第1の加速度センサ4および第2の加速度センサ5による振動検出値のデータ、CPU13による蓄積疲労の算出の際に使用するデータ処理方法や計算式、その演算情報などの各種情報を格納する。
【0028】
CPU13は、ROM14に格納されたプログラムに従ってRAM15に対するデータの読み書きを行いつつ、振動試験で再現する振動の振動波形データを生成し、これを加振機3に付与して振動台2を振動させることで輸送品Pについての振動試験を行い、その耐久性を評価する。
【0029】
次に、上記振動試験装置1を用いた輸送品Pの振動試験方法について説明する。本実施例の振動試験方法の大まかな流れは、図2にフローチャートで示すとおりである。なお、同図において、STは「ステップ(STEP)」の略である。
【0030】
まず、実輸送時に車両などの輸送手段に発生する実振動の振動条件に基づいて、輸送品Pに与える振動の基準用振動条件を決定する試験仕様設定ステップを行い、実振動を再現した振動を生成する(ステップ1)。
【0031】
次に、前記試験仕様設定ステップで生成された前記基準用振動条件の振動を輸送品Pに与えることにより、輸送品Pに生じる蓄積疲労を、本発明の蓄積疲労算出方法(詳細は後述)により算出する基準値取得ステップを行い、本試験の試験条件の決定に用いるための基準値(目標蓄積疲労)を求める(ステップ2)。
【0032】
そして、希望する試験時間を設定し、この試験時間の間、輸送品Pを振動させたとき、輸送品Pに生ずる蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるように、輸送品Pに与える振動の試験用振動条件を決定する試験条件決定ステップを行い、本試験の試験条件(試験用振動条件および試験時間)を決定する(ステップ3)。
【0033】
最後に、前記試験条件決定ステップで決定した試験用振動条件および試験時間に基づいて、輸送品Pを振動させる振動付与ステップを行い、本試験を行う(ステップ4)。以下、ステップごとに詳細に説明する。
【0034】
(1)試験仕様設定ステップ(ステップ1)
図3に示すフローチャートを適宜参照しながら、試験仕様設定ステップを説明する。
【0035】
まず、ステップ10では、CPU13は、実輸送時に輸送手段(例えば、車両)に生じる実振動の一定時間の振動波形データをフーリエ変換して、周波数成分fごとのPSDを算出する処理を行う。この振動波形データは、例えば、実輸送時における被輸送品Pの載置面(例えば、車両の荷台など)の振動加速度を、振動記録計により実際に計測することにより得られる。
【0036】
また、実振動の振動波形データから、振動波形データの特徴を表すパラメータである尖度と歪度とを算出する処理を行う。ここで、尖度とは振動加速度の度数分布の急峻度(尖っている度合い)を表す特徴量であり、歪度とは振動加速度の度数分布の非対称性を表す特徴量であり、どちらも統計学で用いられる一般的な指標である。これらのデータはメモリ部16に格納される。なお、ここでは、車両について言及しているが、各種の輸送手段(鉄道や飛行機、台車など)に発生する実振動の振動波形データを計測しておき、各振動波形データからPSD、尖度、歪度などを算出して、輸送手段ごとにメモリ部16に格納しておく。
【0037】
次のステップ11では、CPU13は、これら算出したPSDに基づき、各周波数成分f各々について、以下の数式(2)を用いて、その振幅Xを算出する処理を行う。なお、本明細書においては、kを各周波数成分へのインデックスとしている。
【0038】
【数2】

【0039】
次に、ステップ12において、CPU13は、各周波数成分fk各々について位相角Φkを設定する処理を実行する。ここでは、実振動の振動波形データから求められる尖度および歪度を目標値として、生成する振動波形データの尖度および歪度が前記目標値と一致するように、各周波数成分fについて位相角Φkを設定する。この各周波数成分fについての位相角Φkの設定は、本願の出願人が特願2009−051940号で提案した方法により行うことができる。なお、この特許出願を本願明細書に参考のため援用する。
【0040】
そして、ステップ13において、CPU13は、振幅Dおよび位相角Φが設定された各周波数成分fを逆フーリエ変換することにより、振動波形データを生成し、次のステップにおいて輸送品Pに与える振動の基準用振動条件を決定する。
【0041】
この試験仕様設定ステップによれば、生成される振動は、実輸送時に輸送手段に生ずる実振動のPSDと同じPSDを有しているとともに、その尖度、さらには歪度が、実振動の振動波形データから求められる尖度および歪度とほぼ一致する。よって、この試験仕様設定ステップによれば、実輸送時に輸送手段に生じる実振動(特に非ガウス型の振動)を高精度に再現可能であり、実輸送に近い振動環境の下、輸送品Pの振動試験を行うことができるようになる。
【0042】
なお、実輸送においては、輸送品Pが単一の輸送手段のみによって輸送されるケースは少なく、複数の輸送手段を乗り継いで輸送されるのが一般的である。よって、例えば、実輸送の輸送経路が、図4に示すように、複数のシナリオa1〜a5によって構成されている場合には、輸送経路を、{a1 and (a2 or a3) and a4} or a5 で表し、各シナリオa1〜a5に対応する実振動の振動波形データに基づいて、各シナリオa1〜a5ごとに実振動を再現した振動波形データを生成し、これらを組み合わせることにより、実輸送に対応する振動波形データを作成して、輸送品Pに与える振動の基準用振動条件を決定するようにする。
【0043】
(2)基準値取得ステップ(ステップ2)
図5に示すフローチャートを適宜参照しながら、基準値取得ステップを説明する。
【0044】
まず、ステップ20において、CPU13は、上記試験仕様設定ステップで生成した振動波形データに基づき振動台2を振動させて、実振動を再現した振動を輸送品Pに与える。そして、輸送品Pに取り付けられた第2の加速度センサ5によって、図6に示すような、この振動によって輸送品Pに生ずる振動加速度の時系列波形データを計測する。なお、輸送品Pが小型であり、輸送品Pに加速度センサを直接取り付けることができないような場合などには、振動台2に取り付けた第1の加速度センサ4によって、輸送品Pに生ずる振動加速度の時系列波形データを計測するようにしてもよい。
【0045】
また、輸送品Pが、実輸送時に段積み状態で輸送される場合には、輸送品Pを実際に段積みした状態(例えば、2段積みの状態)で振動台2上に載置し、段積みされた各輸送品Pごとに、第2の加速度センサ5によって、輸送品Pに生ずる振動加速度の時系列波形データを計測する。
【0046】
次のステップ21において、CPU13は、計測された輸送品Pの振動加速度の時系列波形データから、変動する振動加速度の蓄積疲労に寄与する振幅Sを順次抽出する処理を行う。
【0047】
本実施例では、図7に示すように、レインフロー法によって、上記の振幅Sを抽出している。図7に示す振動波形は、図6に示す振動波形の一部を取り出したものであり、横軸は振動加速度であり、縦軸は時間である。
【0048】
レインフロー法では、図7に示すように、縦軸を時間軸とする振動波形を想定し、この振動波形を多重になった屋根構造にみたて、各屋根の付け根の位置(ピーク位置)P1,P2・・・から山と谷の番号順に雨滴を流すことを想像する。雨滴は、以下の3条件を満たして流れ落ち停止するものとする。
【0049】
雨滴は、屋根の付け根の位置から番号順に流れ始め、停止条件が満たされるまで下の屋根に流れ落ち続ける(条件1)。また、軒先から落下中の雨滴は次の2つの停止条件の一方を満足したときに落下を停止する(条件2)。右向きの流れの場合には、右向きに流れる雨滴の出発点より左側に他の屋根の軒先が現れたときに停止する(停止条件1)。一方、左向きの流れの場合には、左向きに流れる雨滴の出発点より右側に他の屋根の軒先が現れたときには停止する(停止条件2)。例えば、図7に示すP7からP8へ流れる雨滴は、P7よりも左側にあるP9が現れたためにP8で停止する。さらに、屋根の一部を既に雨滴が流れていたらその流れは停止する(条件3)。例えば、P3からP4への流れは、P1からの流れにぶつかるためP2と同じ横位置(P2’)で停止する。
【0050】
CPU13は、上記したレインフロー法により、図7に示すように、各屋根の付け根のピーク位置P(i=1,2・・・)から雨滴が停止した位置をそれぞれ抽出し、その停止位置を各ピーク位置Pに対応する底部位置Bとして抽出する。そして、CPU13は、各ピーク位置Pおよび各底部位置Bの横座標を測定して、各ピーク位置Pおよび各底部位置Bの振動加速度をそれぞれ検出する。そして、図8に示すように、各ピーク位置Pの振動加速度とこれに対応する各底部位置Bの振動加速度との差の絶対値を算出して、この絶対値を前記振幅Sとして設定する(図示例では、ピーク位置Pと底部位置B、および、ピーク位置Pと底部位置Bについての例を示している)。
【0051】
次に、CPU13は、ステップ22において、図8に示すように、各ピーク位置Pとこれに対応する各底部位置Bとの間の時間間隔tを計測し、この時間間隔tを前記振幅Sの時間軸方向の幅Tとして設定することにより、前記振幅Sごとに周波数f(ただし、f=1/T)を設定する処理を行う。そして、周波数fごとに前記振幅Sを振り分け、振幅Sの大きさごとにその発生頻度(カウント数)Nを計数する。
【0052】
最後に、CPU13は、ステップ23において、疲労S−N曲線を利用した以下の数式(3)を用いることによって、周波数fごとに輸送品Pの蓄積疲労βを算出する処理を行う。これにより、図9に示すように、実輸送時に輸送品Pに生ずる蓄積疲労βが周波数fごとに算出され、この算出した蓄積疲労を目標蓄積疲労とする。なお、下記数式(3)のαは加速係数であり、輸送品Pに固有の値である。
【0053】
【数3】

【0054】
なお、輸送品Pを実際に段積みした状態で振動させた場合には、図10に示すように、段積みした輸送品Pごとに、蓄積疲労(A),(B)を周波数fごとに算出する。そして、この算出した各蓄積疲労(A),(B)をともに包含するような蓄積疲労(C)を算出し、この蓄積疲労(C)を目標蓄積疲労とする。これにより、実輸送時には輸送品Pが段積みされていても、以後の本試験では1段積みで、その振動に対する耐久性を評価することが可能となる。
【0055】
また、実輸送の輸送経路が、図3に示すように、複数のシナリオa1〜a5によって構成されている場合には、シナリオごとに算出した蓄積疲労をA1〜A5とすると、実輸送において輸送品Pに生ずる目標蓄積疲労を、max[ sum{A1 , max(A2 , A3 ), A4}, A5](max:最大値、sum:総和)とする。これにより、さまざまな実輸送において輸送経路が考えられる場合に、必要最小な蓄積疲労を周波数ごとに算出することができ、過剰試験および過小試験を回避できる。
【0056】
この基準値設定ステップによれば、実輸送時に輸送手段に生ずる実振動が、その確率密度分布が正規分布となっていない非ガウス型の振動であったとしても、輸送品Pに生ずる蓄積疲労を、周波数fごとに算出することが可能となる。また、実輸送時に輸送手段に生ずる実振動がガウス型の振動であったとしても、実際に輸送品Pに生ずる振動が非ガウス型の振動であった場合に、輸送品Pに生ずる蓄積疲労を周波数fごとに算出することが可能である。
【0057】
加えて、従来技術において記載した特許文献1に記載の振動試験方法のように、周波数ごとに構造体に生ずる振動加速度の時系列波形データを導出する必要もないので、簡便な方法で周波数fごとの蓄積疲労を算出することができる。
【0058】
なお、本実施例では、レインフロー法により前記振幅Sを抽出するようにしているが、ピークカウント法、レンジ法、レンジペア法など、他のサイクルカウント法を用いて、振動加速度の蓄積疲労に寄与する前記振幅Sを抽出するようにしてもよい。
【0059】
例えば、図7において、振動波形のピーク位置Pのうち、山部ピークP,P,P・・・を順次抽出して各山部ピークP,P,P・・・の振動加速度を検出するとともに、谷部ピークP,P,P・・・を順次抽出して各谷部ピークP,P,P・・・の振動加速度を検出する。そして、隣接する山部ピークおよび谷部ピーク(例えば、PとP、PとPなど)の振動加速度の差を算出して、この差を前記振幅Sとして設定する。さらに、隣接する山部ピークと谷部ピークとの間の時間間隔を計測して、この時間間隔を前記振幅Sの時間軸方向の幅Tとして設定し、前記振幅Sごとに周波数f(ただし、f=1/T)を設定する。そして、周波数fごとに前記振幅Sを振り分け、前記振幅Sとその大きさごとの発生頻度Nとに基づいて、周波数fごとに輸送品Pの蓄積疲労βを算出するようにしてもよい。
【0060】
(3)試験条件決定ステップ(ステップ3)
図11に示すフローチャートを適宜参照しながら、試験条件決定ステップを説明する。
【0061】
まず、ステップ30において、ユーザが本試験において希望する輸送品Pの試験時間を入力する。この入力は、CPU13が表示部11に表示する所定の設定画面において行うことができる。一般には、試験時間を短くすると、本試験が短時間で終了するために試験効率が向上する一方、実振動の振動条件と本試験の振動条件とが乖離して、試験精度が低下するおそれが生じ得る。
【0062】
次に、CPU13は、入力された試験時間に基づいて、実際に本試験を行う場合の試験用振動条件を決定する。具体的には、希望する試験時間の間、輸送品Pを振動させたとき、前記基準値取得ステップと同様にして算出した前記試験時間内に輸送品Pに生ずる周波数fごとの蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるように、輸送品Pに与える振動の振動条件を決定する。
【0063】
ここで、従来では、この試験用振動条件を決定する際には、試験時間に応じて、ユーザが輸送品Pに与える振動の周波数成分fごとのパワースペクトル密度(初期PSD)を適宜設定し、さらに、この各周波数成分fに位相角Φをランダムに与えて逆フーリエ変換を行うことにより振動波形データを生成する。そして、この生成した振動波形データに基づく振動を輸送品Pに設定した試験時間与え、この振動により輸送品Pに生ずる周波数fごとの蓄積疲労を算出して目標蓄積疲労と比較する。以下、このように、試験時間内の振動によって輸送品Pが受ける疲労を「実蓄積疲労」と称する。そして、初期PSDによる振動での実蓄積疲労に対する目標蓄積疲労の割合を算出し、この割合を基に、輸送品Pに与える振動のパワースペクトル密度を補正することで、実蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるようにしている。
【0064】
しかし、この従来の方法では、上記した試験用振動条件を決定する際に、輸送品Pにガウス型の振動を与えることになるため、実蓄積疲労と目標蓄積疲労とが一致せず、特に、図12に示すように、高周波数領域において、実蓄積疲労が目標蓄積疲労と一致しないことが確認される。そのため、本試験において、振動耐久性の評価精度が落ちるという問題がある。
【0065】
そこで、本実施例では、輸送品Pに与える振動のパワースペクトル密度だけでなく、各周波数成分fに与える位相角Φを適宜設定して、輸送品Pに非ガウス型の振動を与えることにより、試験時間内に輸送品Pに生ずる実蓄積疲労を前記目標蓄積疲労と一致あるいは略一致させるようにしている。
【0066】
図11において、ステップ31では、ユーザが輸送品Pに与える振動の周波数成分fごとのパワースペクトル密度(PSD)を適宜設定する。次に、ステップ32では、CPU13は、これら設定されたPSDに基づき、各周波数成分f各々について、上記数式(2)を用いて、その振幅xを算出する処理を行う。次に、CPU13は、ステップ33において、各周波数成分fk各々について位相角φkを設定する処理を実行する。
【0067】
図13は、図11のステップ33の位相角設定処理の第1実施形態を示しており、図13に示すフローチャートを適宜参照しながら第1実施形態の位相各設定処理を説明する。この第1実施形態では、CPU13は、まず、ステップ33Aにおいて、各周波数成分fの位相角φの遅れ(位相差)Δφ(=φ(k+1)−φ)の確率密度分布を予め設定する。このとき、位相差Δφの確率密度分布の形状は、図14に示すように、位相差Δφの確率密度分布のピーク値の位置が、例えば、位相差の最大値2πと最小値0の中央部であるπの位置に位置するようにして位相差Δφの確率密度分布を作成する。この位相差Δφの確率密度分布の形状は、その底辺の長さLを適宜調節することにより、変更が可能である。
【0068】
次に、CPU13は、ステップ33Bにおいて、作成した位相差Δφの確率密度分布を用いて各周波数成分間の位相差Δφをそれぞれ算出する処理を行い、最後に、基準とする周波数成分fの位相角φを適宜設定することによって、各周波数成分f各々について、位相角φkを設定する処理を行う(ステップ33C)。
【0069】
図11に戻って、CPU13は、ステップ34において、振幅Dおよび位相角φが設定された各周波数成分fを逆フーリエ変換することにより、輸送品Pに与える振動の振動波形データを生成する。そして、この振動波形データに基づき振動台2を振動させて、輸送品Pに前記試験時間、振動を与える(ステップ35)。
【0070】
次に、ステップ36において、輸送品Pに取り付けられた第2の加速度センサ5からの検出値に基づいて、前記基準値取得ステップと同様にして、本発明の蓄積疲労算出方法により、前記試験時間内に輸送品Pに生ずる周波数fごとの実蓄積疲労を算出する。そして、CPU13は、この実蓄積疲労を目標蓄積疲労と比較し(ステップ37)、実蓄積疲労と目標蓄積疲労とが一致していなければ、ステップ37が「NO」となってステップ31に戻り、その差を基に、実蓄積疲労が目標蓄積疲労と一致するように、輸送品Pに与える振動の周波数成分fごとのパワースペクトル密度と位相角φとを補正する。
【0071】
この操作を繰り返すことで、実蓄積疲労が目標蓄積疲労と一致または略一致すれば、ステップ37は「YES」となってステップ38に進み、CPU13は、求めたこの振動条件を試験用振動条件として設定する。
【0072】
この第1実施形態では、生成される振動の尖度をコントロールすることができる。よって、この第1実施形態によれば、輸送品Pに与える振動を非ガウス型の振動とすることができるため、実蓄積疲労を目標蓄積疲労と一致あるいは略一致させること(高周波数領域においても)が可能となる。
【0073】
図15は、図11のステップ33の位相角設定処理の第2実施形態を示しており、図15に示すフローチャートを適宜参照しながら第2実施形態の位相各設定処理を説明する。この第2実施形態は、各周波数成分fに位相角φを設定するために、群遅延時間tを導入したものである。ここで、群遅延時間tとは、一般的に、フーリエ変換された各成分波の位相角Φの遅れΔφ(=φ(k+1)−φ)を角振動数ωで微分したものを指し、t=dΦ/dω(ただし、ω=2πf)で定義されるものである。この第2実施形態では、各周波数成分fの位相角φを、この群遅延時間tを用いた以下の数式(4)に基づいて設定している。
【0074】
【数4】

【0075】
具体的に、位相角Φの設定方法を説明すると、CPU13は、まず、ステップ33Dにおいて、群遅延時間tの分布が正規分布に従っているとし、その平均μ(以下、「平均群遅延時間μ」という。)および分散σ(以下、「分散群遅延時間σ」という。)を適宜設定することにより、設定した平均群遅延時間μおよび分散群遅延時間σをもとに群遅延時間tの正規乱数N(μ、σ)を発生させて、各周波数成分f各々に対してそれぞれ群遅延時間tを算出する処理を行う(ステップ33E)。
【0076】
ここで、分散群遅延時間σは、成分波群の継続時間に対応している。平均群遅延時間μを一定にし、分散群遅延時間σを変化させると、生成される振動波形データは、分散群遅延時間σが大きくなればなるほど、振動の衝撃度が分散して振幅が小さくなり、振動波形データは定常波形となることが確認されている。よって、分散群遅延時間σは、生成される振動波形データの尖度と対応するパラメータであり、分散群遅延時間σを適切に設定することにより、生成される振動波形データの尖度をコントロールすることができる。
【0077】
また、CPU13は、ステップ33Fにおいて、初期位相φを[0〜2π]の間で適宜設定する処理を行う。ここで、初期位相φは成分波群の時間軸に関する上下対称性に対応している。分散群遅延時間σおよび平均群遅延時間μを一定にし、初期位相φを変化させると、生成される振動波形データは、初期位相φが変化することにより、時間軸に関する上下対称性、つまり歪度が変化することが確認されている。よって、初期位相φ0は、生成される振動波形データの歪度に対応するパラメータであり、初期位相φを適切に設定することにより、生成される振動波形データの歪度をコントロールすることができる。
【0078】
CPU13は、ステップ33D〜ステップ33Fにおいて、分散群遅延時間σおよび平均群遅延時間μと、初期位相Φとを適宜設定する。そして、各周波数成分f各々について群遅延時間tを正規乱数N(μ,σ)を基に発生させて、次のステップ33Gにおいて、上記数式(4)を用いて各周波数成分fについて位相角φkを設定する。
【0079】
そして、CPU13は、振幅Dおよび位相角φが設定された各周波数成分fを逆フーリエ変換することにより(図11のステップ34)、輸送品Pに与える振動の振動波形データを生成する。そして、この振動波形データに基づき振動台2を振動させて、輸送品Pに前記試験時間、振動を与える(ステップ35)。その後のステップ36〜38は、上記した第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0080】
この第2実施形態では、生成される振動の尖度および歪度をコントロールすることができる。よって、この第2実施形態によれば、輸送品Pに与える振動を、第1実施形態よりさらに非ガウス型の振動に近づけることができるため、実蓄積疲労を目標蓄積疲労と一致あるいは略一致させること(高周波数領域においても)が可能となる。
【0081】
(4)振動付与ステップ(ステップ4)
この振動付与ステップでは、輸送品Pを振動台2に載置した後、上記試験条件決定ステップで決定された試験条件(試験用振動条件および試験時間)の振動で振動台2を振動させることで、本試験を行う。そして、所定の試験時間の経過後、振動台2の振動を停止させて、輸送品Pについてその損傷状況を検査する。
【0082】
このように、本実施例の振動試験方法では、輸送手段に生ずる振動が非ガウス型の振動であったとしても、輸送品Pに対して、高精度、かつ、実輸送環境に即した正確な振動耐久性の評価を行うことが可能である。
【0083】
なお、本実施例においては、輸送手段により輸送される輸送品Pについて説明したが、輸送手段などの常に振動が加わる装置に搭載される機器や部品などに対しても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 振動試験装置
4 第1の加速度センサ
5 第2の加速度センサ
10 制御装置
13 CPU
14 ROM
15 RAM
16 メモリ部
P 輸送品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動環境下に置かれた構造体に生ずる蓄積疲労を算出するための蓄積疲労算出方法であって、
構造体の振動を検出するセンサにより得られる構造体の振動検出値の時系列波形データを計測する第1のステップと、
計測した前記振動検出値の時系列波形データに基づき、変動する前記振動検出値の蓄積疲労に寄与する振幅Sを順次抽出する第2のステップと、
前記振幅Sごとに、その時間軸方向の幅Tを計測することによって周波数f(ただし、f=1/T)を設定する第3のステップと、
前記周波数fごとに、前記振幅Sとその大きさごとの発生頻度Nとに基づいて、構造体に生ずる蓄積疲労を算出する第4のステップとを備えることを特徴とする蓄積疲労算出方法。
【請求項2】
前記第2のステップでは、振動検出値のピーク位置の山部ピークを順次抽出して各山部ピークの振動検出値を検出するとともに、谷部ピークを順次抽出して各谷部ピークの振動検出値を検出した後、隣接する山部ピークおよび谷部ピークの振動検出値の差を算出してこの差を前記振動検出値の振幅Sとして設定し、
前記第3のステップでは、隣接する山部ピークと谷部ピークとの時間間隔を計測してこの時間間隔を前記時間軸方向の幅Tとして設定することを特徴とする請求項1に記載の蓄積疲労算出方法。
【請求項3】
前記第2のステップでは、レインフロー法に基づいて振動検出値のピーク位置とこれに対応する底部位置を順次抽出し、前記ピーク位置およびこれに対応する底部位置の振動検出値の差を算出してこの差を前記振動検出値の振幅Sとして設定し、
前記第3のステップでは、対応するピーク位置と底部位置との時間間隔を計測してこの時間間隔を前記時間軸方向の幅Tとして設定することを特徴とする請求項1に記載の蓄積疲労算出方法。
【請求項4】
振動体に載置される構造体の振動耐久性を評価するための振動試験方法であって、
振動体に生ずる振動の振動条件に基づいて、構造体に付与する振動の基準用振動条件を決定する試験仕様設定ステップと、
前記基準用振動条件下における振動によって構造体に生ずる蓄積疲労を、請求項1〜3のいずれかに記載の蓄積疲労算出方法により周波数ごとに算出し、これを目標蓄積疲労とする基準値取得ステップと、
希望する試験時間を設定して構造体を前記試験時間振動させたとき、前記基準値取得ステップと同様にして算出した前記試験時間内に構造体に生ずる周波数ごとの蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるように、構造体に付与する振動の試験用振動条件を決定する試験条件決定ステップと、
前記試験条件決定ステップで得られた試験用振動条件および試験時間に基づいて構造体を振動させて、構造体の破損の有無を判別する振動付与ステップとを備えることを特徴とする振動試験方法。
【請求項5】
前記試験条件決定ステップでは、構造体に付与する振動の周波数成分fごとのパワースペクトル密度と各周波数成分fについて与える位相角Φとを適宜設定することにより、前記試験時間内に構造体に生ずる周波数ごとの蓄積疲労が前記目標蓄積疲労となるような試験用振動条件を決定することを特徴とする請求項4に記載の振動試験方法。
【請求項6】
前記試験条件決定ステップでは、各周波数成分fの位相角の遅れを表す位相差ΔΦ(ΔΦ=Φ(k+1)−Φ)の確率密度分布(ただし、0≦ΔΦ≦2π)を適宜設定し、この確率密度分布に基づき各周波数成分間の位相差ΔΦを算出して各周波数成分fの位相角Φを設定することを特徴とする請求項5に記載の振動試験方法。
【請求項7】
前記試験条件決定ステップでは、各周波数成分fの位相角Φを、角振動数ωと、初期位相Φ(0≦Φ≦2π)と、平均μおよび分散σをもとにした正規乱数N(μ,σ)を用いて算出される群遅延時間tとで表した数式:
Φ(k+1)=Φ+t(k+1)dω
により設定することを特徴とする請求項5に記載の振動試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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