説明

蓄電モジュールおよび充電制御方法

【課題】高速蓄電素子が直列接続されて成る蓄電体の充電時のバランシングによる発熱を抑えることが可能な蓄電モジュールと、その充電制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】高速蓄電素子B1、B2を含む複数の電池ユニット111、112が直列に接続された蓄電体11、蓄電体11に直列に接続されたスイッチング素子142、電池ユニット111、112の各々に対応して並列に接続され、対応する電池ユニットに流れる電流をバイパスするように切り替えられるスイッチング素子122、124を含むバイパス回路12a、12b、スイッチング素子122、124を制御する充電制御回路13を含み、充電制御回路13の電圧検出器13aは、スイッチング素子142、122、124それぞれのON、OFFを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の高速蓄電素子を含む蓄電モジュールと、その充電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型、軽量、かつ大容量が特徴であるリチウムイオン二次電池を用いた蓄電モジュールが開発されている。この蓄電モジュールは、複数の二次電池が直列接続された蓄電体を含んでいて、直列接続された二次電池によって高電圧で放電することができるため、電源装置として様々な用途に用いられている。また、この蓄電体に含まれる個々の二次電池を、並列接続された単数または複数の二次電池で構成される電池ユニットに置き換えれば、さらに容量を大きくして長時間使用することも可能である。
【0003】
二次電池の充電制御方法としては、CCCV(constant current constant voltage)充電が知られている。CCCV充電では、まず二次電池(内部抵抗をRとする。)を定電流Iで充電し、二次電池の電圧が目標とする最大値Vに達したことを検知すると定電流充電を停止する。この時点で、二次電池の電圧Eは内部抵抗IRによるドロップ分(以下、IRドロップ分と記す)を含むため、実際にはE=V−IRの電圧相当分までしか充電されていない。すなわち、電流Iが大きいほど、実際の充電電圧と目標とする充電電圧の最大値Vとの乖離が大きいことになる。
【0004】
そこで、CCCV充電の充電制御では、電流をIから0に近いI’まで徐々に下げることによってIRドロップ分を減少させながら定電圧Vで充電を行い、満充電に近い状態E=V−I’Rに到達させて定電圧充電を完了する。
上述したCCCV充電によれば、内部抵抗の高い二次電池であっても満充電に近い状態まで充電することが可能となるが、充電には長時間を要することが欠点となる。例えば、携帯電話機に使用される550mAhのリチウムイオン二次電池をCCCV充電する場合には、後述する1Cでの定電流充電に1時間、定電圧充電に1時間の合計2時間を要する。
【0005】
複数の二次電池が直列接続された蓄電体を含む蓄電モジュールの充電制御方法においては、上述のCCCV充電時に電池ユニット間の電圧のばらつきがないように調整する動作(以下「バランシング」ともいう)を行う必要がある。また、電池ユニット間の電圧にばらつきがある状態を、アンバランスとも記す。以下、バランシングについて説明する。
蓄電モジュールでは、その充放電時に、蓄電モジュール内の二次電池間でアンバランスが発生する。このような電圧のアンバランスは、各二次電池の製造ばらつきによる容量の違いや蓄電モジュール内における配置による環境温度の違い等によって発生する。
【0006】
二次電池では、安全性、及び寿命等を考慮して充電電圧の最大値や放電電圧の最小値が定められている場合がある。放電電圧の最小値と充電電圧の最大電圧との間の電圧が、二次電池の「使用可能電圧」となる。また、二次電池では、使用可能電圧の最大値より大きい最大定格電圧を超えた電圧まで充電することを過充電、使用可能電圧の最小値より小さい最小定格電圧を超えた電圧まで放電することを過放電という。
【0007】
特に、リチウムイオン二次電池は、一般的に、過充電及び過放電を防止する機能とセットで蓄電モジュールに使用される。このため、複数の二次電池を用いた蓄電モジュールにおいて電圧のアンバランスが発生すると、蓄電モジュール内の1つの二次電池の電圧が充電電圧の最大値に達したことによって他の二次電池は充電可能であってもそれ以上充電できなくなる。
【0008】
また、1つの二次電池の電圧が放電電圧の最小値に達すると他の二次電池は放電可能であってもそれ以上放電できなくなる。このような蓄電モジュールの構成は、蓄電モジュールを構成する各二次電池の性能を十分に引き出すことができず、蓄電モジュール全体の容量を低下させることになる。
上記した電圧のアンバランスを解消するために、様々な電圧のバランシング方法が開発されてきた。従来の一般的なバランシング方法としては、抵抗とスイッチング素子とを直列接続したバイパス回路を各電池ユニットに並列接続する方法がある。このような方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0009】
特許文献1に記載された従来技術では、蓄電モジュールを構成する各電池ユニットの電圧を監視し、この電圧値が最大値に達すると、電池ユニットに並列接続されているバイパス回路に充電電流を流すことで、各電池ユニットの電圧が最大値以上になることを防ぎ、全ての電池ユニットの電圧値を最大値に到達させることができる。このような蓄電モジュールの充電制御方法は、長時間かけてCCCV充電制御と電圧のバランシングとを行うものであった。
【0010】
ところで、充電速度を表現する指標として、Cレートが用いられている。Cレートとは、二次電池の有する全容量を1時間で充電するときの電流値を1Cとする単位である。一般的なリチウムイオン二次電池(以下、「LIB」とも記す)の最大の充電速度は1C程度であり、容量を犠牲にして充放電速度が向上するように最適化されたものであっても10C程度である。
【0011】
この理由は、二次電池の正極及び負極における電気化学反応速度に由来するものであるので、それ以上の充電速度の高速化は原理的に困難である。これに対して、リチウムイオンキャパシタ(以下「LIC」とも記す)や電気二重層キャパシタ(以下「EDLC」とも記す)等は、数百Cで充電を行うことが可能な高速蓄電素子である。近年、これらを用いた蓄電モジュールが提案されている。
【0012】
瞬間的な大電流での充放電を必要とする用途においては、複数の二次電池が直列接続された蓄電体を含むモジュールに代えて、上記した高速蓄電素子が複数直列接続された蓄電体を含む蓄電モジュールを使用することが考えられる。このとき、蓄電モジュールを繰り返し使用するためには、二次電池と同様にバランシングを行うことが必須であると考えられる。
なお、本明細書において、高速蓄電素子とは、使用可能電圧の最小値まで放電した状態から100C充電後の容量が、放電状態から1C充電後の容量の50%以上となる蓄電素子をいうものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3136677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、本発明の発明者は、上記のように高速蓄電素子が直列接続されて構成される蓄電体を含む蓄電モジュールがバランシングを行いつつ大電流でCCCV充電と放電とを繰り返すと、多大な熱が発生することに着目した。
すなわち、特許文献1記載の蓄電モジュールでは、バイパス回路側に流れた電流は抵抗によって熱に変わる。このときに発生する熱量は電流の2乗に比例するので、二次電池を高速蓄電素子にかえて高速充電するために大きな充電電流を流すと大量の熱が発生し、蓄電モジュール内の温度を大幅に上昇させ、モジュール内の高速蓄電素子の寿命を短くしてしまう恐れがある。
【0015】
蓄電モジュール内の温度上昇は、電流によって発生した熱を放熱させるための放熱フィンや放熱ファン等を設けることによって回避することができる。しかし、このような部材を設けることは、蓄電モジュール全体のサイズを大型化させてしまう。つまり、特許文献1に記載された従来技術は、放電した二次電池を小電流かつ長時間で満充電状態にすることに適した方法であるが、放電した高速蓄電素子を大電流かつ短時間で満充電状態にするには適した方法ではないものといえる。
【0016】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、高速蓄電素子が直列接続されて構成される蓄電体の充電時のバランシングによる発熱を抑えることが可能な蓄電モジュール、その蓄電モジュールの充電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発明者は、上述のような短時間での大出力の充放電を目的とする用途においては、放電状態から使用可能な程度まで短時間で充電でき、短時間で放電できればよく、必ずしも満充電状態にする必要はないとの着想に基づき検討した結果、高速蓄電素子が直列接続されて成る蓄電体の充電制御においては、定電流充電終了後の定電圧充電制御にかえて短時間のタイマ制御で停止させれば発熱が抑制でき、しかもバランシング状態も良好にできることを見出し、以下の本発明を完成させた。
【0018】
すなわち、本発明の蓄電モジュールは、蓄電素子(例えば図1、図9に示した高速蓄電素子B1、B2、例えば図6に示した高速蓄電素子B1、B2、B3、B4)を含む複数の電池ユニット(例えば図1、図9に示した電池ユニット111、112、例えば図6に示した電池ユニット611、612)が直列に接続された蓄電体(例えば図1、図9に示した蓄電体11、例えば図6に示した蓄電体61)と、前記蓄電体に直列に接続された第1スイッチング素子(例えば図1、図6に示したスイッチング素子142)と、複数の前記電池ユニットの各々に対応して並列に接続され、対応する電池ユニットに流れる電流をバイパスするように切り替えられる第2スイッチング素子(例えば図1、図6、図9に示したスイッチング素子122、124)を含む複数のバイパス回路(例えば図1、図6、図9に示したバイパス回路12a、12b)と、前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子を制御する充電制御回路(例えば図1、図6、図9に示した充電制御回路13)と、を含み、前記充電制御回路は、前記電池ユニットの電圧値を個別に検出する電圧検出器(例えば図1、図6、図9に示した電圧検出器13a)を含み、予め定められた充電終了条件が満たされた場合、前記第1スイッチング素子をOFFし、前記電圧検出器によって検出された電圧値に応じて複数の前記第2スイッチング素子それぞれのON、OFFを制御することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の蓄電モジュールは、上記した発明において、前記第1スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる動作タイミングを、前記電圧検出器によって前記電池ユニットのいずれかの電圧値が第1電圧値以上になったことが検出されてから第1の所定の時間経過したタイミングとする第1タイミング制御回路(例えば図9に示した第1タイミング制御回路71)をさらに有することが望ましい。
【0020】
また、本発明の蓄電モジュールは、上記した発明において、前記複数個の第2スイッチング素子の各々をOFF状態からON状態にするタイミングを、該第2スイッチング素子が接続された前記電池ユニットの電圧値が前記電圧検出器によって前記第1電圧値以上となったことが検出されてから第2の所定の時間経過したタイミングとする第2タイミング制御回路(例えば図9に示した第2タイミング制御回路72)をさらに含むことが望ましい。
【0021】
また、本発明の蓄電モジュールは、上記した発明において、前記複数個の第2スイッチング素子の各々をON状態からOFF状態にするタイミングを、該第2スイッチング素子が接続された前記電池ユニットの電圧値が前記電圧検出器によって第2電圧値以下となったことが検出されてから第3の所定の時間経過したタイミングとする第3タイミング制御回路(例えば図9に示した第3タイミング制御回路73)を有することが望ましい。
【0022】
また、本発明の蓄電モジュールは、上記した発明において、前記第1タイミング制御回路、前記第2タイミング制御回路、前記第3タイミング制御回路のうちの少なくとも1つが、それぞれが対応する前記第1の所定の時間、前記第2の所定の時間、前記第3の所定の時間を可変とするタイミング制御回路であることが望ましい。
また、本発明の蓄電モジュールは、上記した発明において、前記蓄電素子が、リチウムイオンキャパシタ、または電気二重層キャパシタのいずれかであることが望ましい。
また、本発明の蓄電モジュールは、上記した発明において、前記電池ユニットが、単数の前記蓄電素子、または並列に接続された複数の蓄電素子を含むことが望ましい。
【0023】
本発明の充電制御方法は、蓄電素子を含む複数の電池ユニットが直列に接続された蓄電体と、前記蓄電体に直列に接続された第1スイッチング素子と、複数の前記電池ユニットの各々に対応して並列に接続され、対応する電池ユニットに流れる電流をバイパスするように切り替えられる第2スイッチング素子を含む複数のバイパス回路と、前記電池ユニットの電圧値に応じて前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子を制御する充電制御回路と、を含む蓄電モジュールの充電を制御する充電制御方法であって、前記充電制御回路が、複数の前記電池ユニットの少なくとも1つの電圧値が第1電圧値以上になるまで前記蓄電体を充電する第1のステップ(例えば、図4に示したステップS401、402、図7に示したステップS701、702)と、電圧値が前記第1電圧値以上になった前記電池ユニットに対応する前記バイパス回路の前記第2スイッチング素子をON状態に切り替えて、前記電池ユニットに流れる電流を前記バイパス回路に流す第2ステップ(例えば、図4に示したステップS402、403、図7に示した704)と、前記第2ステップによって電流がバイパスされた前記電池ユニットの電圧値が第2電圧値以下になった場合、前記第2スイッチング素子をOFF状態に切り替えて、前記バイパス回路に流れる電流を当該バイパス回路に対応する前記電池ユニットに流す第3ステップ(例えば図4に示したステップS405、406、図7に示したステップS706、707)と、前記第3ステップの開始から第1の所定の時間の経過後に、前記蓄電体へ流れる電流を、前記第1スイッチング回路をOFFすることによって遮断する第4ステップ(例えば図4に示したステップS407、図7に示したステップS708)と、を含むことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の充電制御方法は、上記した発明において、前記第2ステップと前記第3ステップとが繰返し実行され、前記第2ステップは、前記電池ユニットに対し、電圧値が前記第1電圧値以上になってから第2の所定の時間が経過した後(ステップS705)、当該電池ユニットに対応する前記バイパス回路の前記第2スイッチング素子をON状態に切り替えて前記電池ユニットに流れる電流を前記バイパス回路に流すことが望ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の蓄電モジュール、及び充電制御方法によれば、高速蓄電素子が直列接続されて成る蓄電体の充電時のバランシングによる発熱量を抑え、しかもバランシング状態も良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態の蓄電モジュールの概略回路図である。
【図2】高速蓄電素子に従来技術の二次電池の充電制御方法を適用した場合の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2に示したフローチャートで示した従来の充電制御方法によって制御された電池ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。
【図4】第1実施形態の充電制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に示した第1実施形態の充電制御方法によって電池ユニットを充電した場合の、電圧と時間との関係を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態の蓄電モジュールの概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態2の充電制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示した第2実施形態の充電制御方法によって電池ユニットを充電した場合の、電圧と時間との関係を説明するための図である。
【図9】本発明の第3実施形態の蓄電モジュールの概略構成図である。
【図10】本発明の実施例の充放電サイクル試験における抵抗素子の温度変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第1実施形態、第2実施形態を説明する。
・第1実施形態
(蓄電モジュール)
図1は、本発明の第1実施形態の蓄電モジュール10の概略回路図である。第1実施形態の蓄電モジュール10は、複数の電池ユニット111、112が直列接続されて構成される蓄電体11と、蓄電体11に直列に接続されるスイッチング回路14と、を備えている。電池ユニット111、112は、それぞれ1つの高速蓄電素子B1、B2によって構成されている。なお、電池ユニットは1つの高速蓄電素子を含むものに限定されるものでなく、後述する他の実施形態のように複数の高速蓄電素子を含むものであってもよい。
【0028】
また、第1実施形態では、電池ユニット111に並列に接続されたバイパス回路12a、電池ユニット112に並列に接続されたバイパス回路12bと、バイパス回路12a、12bを制御する充電制御回路13と、を備えている。充電制御回路13は、電池ユニット111、112の電圧値を検出する電圧検出器13aを備えている。蓄電体11から出力される電流を外部に出力する端子を外部端子15a、15bとする。
【0029】
なお、図1に示した蓄電モジュール10では、使用時に、外部端子15a、15bに放電を行うための図示しない負荷が接続される。また、充電時においては、外部端子15a、15bに充電を行うための図示しない充電装置が接続される。
スイッチング回路14は、スイッチング素子142、ダイオード素子141を有している。外部端子15a、15b間に充電装置が接続される充電時の状態においては、充電制御回路13がスイッチング素子142をONにする。スイッチング素子142がONされたことによって蓄電体11は充電される。また、スイッチング素子142が充電制御回路13によってOFFされると、蓄電体11の充電が停止する。
【0030】
ダイオード素子141は、さらに、外部端子15a、15b間に負荷が接続された状態(蓄電体11使用時)においては、スイッチング素子142のON、OFFに関わらず、蓄電体11が放電を行えるように、スイッチング素子142と並列に配置されている。
スイッチング素子142、121、123に用いられる素子としては、特に指定されるものではないが、MOSFET、サイリスタ、トライアック等が好適である。また、このような素子のうちから、蓄電モジュール10が使用する電圧値や電流値に応じて適するものを選択することができる。
【0031】
特に、多くの電池ユニットを直列接続し、蓄電モジュールの電圧を高電圧にする場合は、スイッチング素子142として、IGBT素子(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やGTO素子(ゲートターンオフサイリスタ)等の耐電圧性の高いスイッチング素子を使用することが好ましい。
バイパス回路12aは、直列接続された抵抗素子121と、スイッチング素子122とを備えている。バイパス回路12bは、直列接続された抵抗素子123と、スイッチング素子124とを備えている。
【0032】
充電時、バイパス回路12aにおいて充電制御回路13によりスイッチング素子122がON状態に制御されると、バイパス回路12aに並列接続された電池ユニット111への充電がバイパスされる。また、スイッチング素子122がOFF状態に制御されると、バイパス回路12aに並列接続された電池ユニット111への充電が行われる。蓄電モジュール10の使用時、スイッチング素子122がOFF状態に制御されると、バイパス回路12aに並列接続された電池ユニット111からの放電が行われる。
【0033】
なお、図示したように、バイパス回路12a、12bは同様に構成されている。このため、バイパス回路12bは、充電制御回路13の制御によって上記したバイパス回路12aと同様に動作する。
充電制御回路13は、後述する充電制御方法に従い、充電の開始、終了(中断)時にスイッチング素子142をON状態またはOFF状態に遷移させるように制御する。また、充電制御回路13は、電池ユニット111、112の電圧を検出し、検出された電圧値に応じてスイッチング素子122、124を個別にON状態またはOFF状態に遷移させるように制御する。
【0034】
電池ユニット111、112としては、EDLC、レドックスキャパシタ、LIC等が適用できる。特に、内部抵抗が小さく、最大充電速度を100C以上にできる蓄電素子として、EDLC、LICが第1実施形態の蓄電モジュール10に好適である。
なお、以上の説明において、図1には説明を簡単にするため電池ユニットを2つ直列接続した例を示したが、電池ユニットの数は2つに限定されるものでなく、必要な電圧に応じて数を増やすことができる。
【0035】
(充電制御方法)
次に、以上説明した第1実施形態の蓄電モジュール10の充電制御方法を説明する。なお、第1実施形態では、第1実施形態の充電制御方法と比較するため、第1実施形態の充電制御方法の説明に先立って、従来の蓄電モジュールの充電制御方法について説明する。
(i)従来の充電制御方法
図2は、高速蓄電素子に従来の二次電池の充電制御方法を適用した場合の動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、図1に示した蓄電モジュール10の電池ユニット111、112を、従来の二次電池の充電制御方法を適用して充電した例を示している。
【0036】
充電時には、外部端子15a、15b間に図示しない充電装置が接続され、外部端子15a、15b間の電圧が所定の電圧値V20になるまで定電流で電池ユニット111、112が充電される。その後、外部端子15a、15b間の電圧の電圧値V20を維持するように、電池ユニット111、112が定電圧充電される。このような充電制御は、前述のCCCV充電を行いつつ、高速蓄電素子間のバランシングを行う充電制御方法である。より具体的には、定電流充電により外部端子15a、15b間の電圧が電圧値V20になった時点では電池ユニット111、112の内部抵抗によるIRドロップ分が含まれているため満充電状態にはなっていないのを、電流を徐々に小さくしながら定電圧充電することにより補償して満充電に近い状態までもっていく制御である。
【0037】
蓄電モジュールの最大の電圧置を電圧値V20とすると、電圧値V20は、各電池ユニットの充電時の目標電圧の最大の電圧値(第1の所定の電圧値V1)と電池ユニットの直列接続数Nから決定される。具体的には、電圧値V20は、下記の式(1)で決定される。
V20 =V1×N …式(1)
目標電圧の最大の電圧値V1は、電池ユニットに組み込まれる高速蓄電素子の充電電圧の最大値と放電電圧の最低値の間に設定される。一般的には、充電電圧の最大値と放電電圧の最低値の中間の値から、充電電圧の最大値の間に設定される。
【0038】
また、充電時の目標電圧の最小の電圧値(第2の所定の電圧値V2)は、充電電流が一度OFF状態になったとき、検出される電池ユニット間の電圧がIRドロップにより低下することによって再度ON状態になることを避けるために、V2=V1−(IRドロップ分+α)に設定される。さらに、第2の所定の電圧値V2は、充電再開時までヒステリシスを持つように設定される。
例えば、内部抵抗13mΩのLICを充電電流I=30A、目標電圧の最大の電圧値V1=4.0Vで充電する場合、第2の所定の電圧V2は、V2=V1−IR=3.61V未満(例えば3.5V)に設定されることになる。
【0039】
充電開始時、充電制御回路13は、スイッチング素子142がON状態、かつ、スイッチング素子122、124をOFF状態とする。そして、定電流充電しながら電池ユニット111、112の電圧を検出する(ステップS201)。次に、充電制御回路13は、検出された電池ユニット111、112の電圧が電圧値V1以上であるかどうかを判定し(ステップS202)、電圧値V1以上でない場合(ステップS202:No)、再び電圧を検出して電池ユニット111、112の電圧が電圧値V1に達するまで待機する。
【0040】
また、充電制御回路13は、電池ユニット111、112の電圧が電圧値V1以上であれば(ステップS202:Yes)、電池ユニット111、112と並列に接続されているバイパス回路12a、12bのスイッチング素子122、124をON状態にし、充電電流を抵抗素子121、123へ流す(ステップS203)。このとき、抵抗素子121、123と並列接続されている電池ユニット111、112からも若干の電流が抵抗素子121、123へ流れるため、電池ユニット111、112の電圧値が低下する。この電圧低下速度は、抵抗素子121、123の抵抗値が小さいほど大きくなる。
【0041】
次に、充電制御回路13は、電池ユニット111、112の少なくともいずれか1つの電圧値がV2以下であるか否か判断する(ステップS204)。電圧値がV2以上である場合はスイッチング素子122、124をON状態のまま維持する。また、電圧値がV2以下の電池ユニットがある場合、この電池ユニットに並列接続されているスイッチング素子をOFFにして充電電流を電圧値V2以下の電池ユニットへ流す(ステップS205)。
【0042】
以下、蓄電モジュールでは、上記した動作が繰り返される。
充電の開始と終了は、外部端子15a、15bに接続される前記した充電装置によって制御される。充電装置予め設定されている充電終了条件に到達すると、この充電装置が充電電流を停止し、充電を終了する。このとき充電制御回路13は、図2に示したステップ101から105のいずれかの状態で停止する。充電装置予め設定されている充電終了条件には、以下の条件が該当し、このうちの少なくともいずれか1つが成立すると、充電装置が充電電流を停止する。
【0043】
・充電開始から所定の時間T10が経過した場合。
・CCCV充電において、CC充電からCV充電に切り替わってから所定の時間が経過した場合
・CCCV充電において、CV充電中に流れる電流量が所定の値より小さくなった場合
・CCCV充電において、CV充電中に流れる電流量の時間変化が所定の値より小さくなった場合
【0044】
図3は、図2に示したフローチャートで示した従来の充電制御方法によって制御された電池ユニットの電圧と時間との関係を示した図である。図3の横軸に時間を、縦軸には電池ユニットの充電電圧を示している。図2に示した充電制御方法によれば、蓄電モジュールの1つの電池ユニットの電圧値をV2からV1の範囲に収めることができる。
【0045】
しかし、図1に示した蓄電モジュールの充電を上記したように制御した場合、以下のような問題が発生する。すなわち、例えば、充電装置に設定された充電終了の条件が充電時間T10の経過であるとすると、蓄電モジュールがバイパス動作を開始してから時間T10が経過して充電が終了するまでの間、蓄電体に投入される電流のかなりの部分が抵抗素子121、123に流れるため、熱として消費されてしまう。この熱によって蓄電モジュール内の温度が上昇し、強制冷却しないと動作不能な温度まで到達する場合がある。
【0046】
(ii)実施形態1の充電制御方法
図4は、このような従来技術の不具合を解消するための第1実施形態の蓄電制御方法を説明するためのフローチャートである。図4のフローチャートのうち、ステップS401〜S403までの処理は図2に示したフローチャートのステップS201〜S203までの処理と同様に行われる。つまり、充電開始時、充電制御回路13の電圧検出器13aは、定電流充電しながら電池ユニット111、112の電圧を検出する(ステップS401)。充電制御回路13は、検出された電池ユニット111、112の電圧が電圧値V1以上でない場合(ステップS402:No)、再び電圧を検出して電池ユニット111、112の電圧が電圧値V1に達するまで待機する。
【0047】
また、充電制御回路13は、電圧検出器13aによって検出された電池ユニット111、112の電圧が電圧値V1以上であれば(ステップS402:Yes)、電池ユニット111、112と並列に接続されているバイパス回路12a、12bのスイッチング素子122、124をON状態にし、充電電流を抵抗素子121、123へ流す(ステップS403)。
【0048】
上記した第1実施形態の目標電圧の最大の電圧値V1は、電池ユニットに組み込まれる高速蓄電素子の充電電圧の最大値と放電電圧の最低値の間に設定される。一般的には、充電電圧の最大値と放電電圧の最低値の中間の値から、充電電圧の最大値の間に設定される。また、充電時の目標電圧の最小の電圧値(第2の所定の電圧値V2)は目標電圧の最大の出圧値V1の0.9倍から1.0倍の間の値に設定される。より好ましくは0.95倍から1.0倍の間の値に設定され、さらに好ましくは0.97倍から1.0倍の間の値に設定される。
電圧値V2の設定は、電圧値V2を、チャタリングを起こさせないようにV2=V1−(IR+α)と設定する従来技術とは大きく異なり、高速蓄電素子を大電流で短時間の間にバランスさせることを可能としている。
【0049】
抵抗素子121、123は、図4のフローチャートにおいてステップS403で、スイッチング素子122、124がON状態となった際、電池ユニット111、112の電圧が、電流の低下による電圧降下(電流変化量×電池ユニットの内部抵抗)によって第2の所定の電圧値V2以下にならないようにして決定される。具体的には、抵抗素子121、123の抵抗値を電池ユニットの内部抵抗値で除した値が、9.0から93.6の範囲内であって、より好ましくは18.5から93.6の範囲内であって、さらに好ましくは32.7から93.6の範囲内に設定される。
【0050】
ステップ404では、スイッチング素子122、124のいずれかがON状態となってから第1の所定の時間T2以上が経過したか否か判断する(ステップS404)。時間T2以上経過している場合(ステップS404:Yes)は、スイッチング素子142をOFF状態とし、充電電流を遮断して充電を終了させる(ステップS407)。なお、時間T2の計時開始T0は、スイッチング素子122、124の少なくとも1つが最初に動作を開始する時間とする。
【0051】
また、時間T2が経過していない場合(ステップS404:No)、充電制御回路13は、電池ユニット111、112の少なくともいずれか1つの電圧値が電圧値V2以下であるか否か判断する(ステップS405)。電圧値がV2以下の高速蓄電素子がある場合、この電池ユニットに並列接続されているスイッチング素子をOFFにして充電電流を電圧値V2以下の電池ユニットへ流す(ステップS406)。
【0052】
図5は、図4に示した第1実施形態の蓄電制御方法によって電池ユニットを充電した場合の、電圧と時間との関係を説明するための図である。図5の横軸は時間を、縦軸は電池ユニットの充電電圧を示している。横軸に示した時間T10は、充電装置に設定される充電時間である。充電前には正確な充電開始の時間T0を把握することはできないので、時間T10は想定されるT0に対して余裕を持って長めに設定する必要がある。第1実施形態の充電制御方法によると、時間T0+T2にて充電電流が遮断されるため、時間T10が経過するのを待たずに充電が終了する。
【0053】
以上のことから、第1実施形態の電流制御方法によれば、抵抗素子121、123に電流が流れている時間を短くすることができるから、抵抗素子121、123における発熱を抑制できる。また、第1実施形態では、図5中に示した時間T0+T2から時間T10の間の期間(図5中に点線で示す)では充電は行われない。このような第1実施形態によれば、電池ユニット間のアンバランスが解消され難いと危惧されるが、電池ユニットの特性と上述したV2設定によりアンバランスに関する問題はない。
【0054】
・実施形態2
次に、本発明の実施形態2について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態の蓄電モジュールの概略構成図である。なお、図6に示した構成のうち、図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
第2実施形態の蓄電モジュール60は、図1に示した第1実施形態の蓄電モジュール10の、直列に接続された電池ユニット111、112を含む蓄電体11を、並列に接続された高速蓄電素子B1、B2を含む電池ユニット611と、並列に接続された高速蓄電素子B3、B4を含む電池ユニット612と、を含む蓄電体61に置き換えたものである。このような蓄電体61では、並列に接続されている高速蓄電素子B1、B2間、あるいは高速蓄電素子B3、B4間では電圧が常に等しいので、バイパス回路12a、12bは、それぞれ電池ユニット611、612に並列に接続される。
【0055】
実施形態2では、説明を簡単にするため、2つの高速蓄電素子が並列接続された電池ユニットが2つ直列接続されている蓄電体61を備えた構成を示しているが、実施形態2は、このような構成に限定されるものではない。すなわち、必要な電圧に応じて直列接続される電池ユニットの数を増やすことができ、必要な容量に応じて各電池ユニットに並列接続される高速蓄電素子の数を増やすことができる。
【0056】
図7は、本発明の実施形態2の充電制御方法を説明するためのフローチャートである。図7のフローチャートのうち、充電開始から702までの処理は図4に示したフローチャートのステップS401、402の処理と同様に行われる。つまり、充電開始時、充電制御回路13は、定電流充電しながら電圧検出器13aで電池ユニット611、612の電圧を検出する(ステップS701)。そして、検出された電池ユニット611、612のいずれかの電圧が電圧値V1以上でない場合(ステップS702:No)、電圧検出器13aが再び電圧を検出して電池ユニット611、612の電圧が電圧値V1に達するまで待機する。
【0057】
また、充電制御回路13は、電池ユニット611、612の電圧が電圧値V1以上であれば(ステップS702:Yes)、時間T1が経過するまで待機する(ステップS703)。そして、時間T1が経過した後、充電制御回路13は、電池ユニット611、612と並列に接続されているバイパス回路12a、12bのスイッチング素子122、124をON状態にし、充電電流を抵抗素子121、123へ流す(ステップS704)。
【0058】
次に、充電制御回路13は、スイッチング素子122、124のいずれかがON状態となってから第1の所定の時間T2以上が経過したか否か判断する(ステップS705)。時間T2以上経過している場合は(ステップS705:Yes)、スイッチング素子142をOFF状態とし、充電電流を遮断して充電を終了させる(ステップS708)。なお、時間T2の計時開始T0は、スイッチング素子122、124の少なくとも1つが最初に動作を開始する時間とする。
【0059】
また、時間T2が経過していない場合(ステップS705:No)、充電制御回路13は、電池ユニット611、612の少なくともいずれか1つの電圧値が電圧値V2以下であるか否か判断する(ステップS706)。電圧値がV2以下の電池ユニットがある場合、この電池ユニットに並列接続されているスイッチング素子をOFFにして充電電流を電圧値V2以下の電池ユニットへ流す(ステップS707)。
【0060】
時間T1は、電池ユニットの有する静電容量の値を充電電流値で除した値に、係数βを掛けた値で設定される。このとき時間T1の単位は秒とする。係数βは、0.005から1.5の範囲であって、より好ましくは0.01から0.5の範囲であって、さらに好ましくは0.02から0.3の範囲に設定される。
図8は、図7に示した第2実施形態の蓄電制御方法によって電池ユニットを充電した場合の、電圧と時間との関係を説明するための図である。図8の横軸は時間を、縦軸は電池ユニットの充電電圧を示している。
【0061】
充電制御回路13では、図8の横軸に示した時間T0において電池ユニットの電圧が第1の所定の電圧値V1以上であることを電圧検出器13aが検出する。そして、第2の所定の時間T1が経過してからスイッチング素子122、124をON状態とする。このため、時間T0から充電が終了するまでの間に抵抗素子121、123に電流が流れる時間が減少するので、抵抗素子121、123における発熱を抑制できる。時間T10は、充電装置にて設定される充電の時間を表している。時間T0+T2から時間T10の間の期間は電池ユニットに充電は行われない。
【0062】
以上説明した実施形態2の充電制御方法では、充電終了後のスイッチング素子142はOFF状態になっている。スイッチング素子142がOFF状態からON状態になるタイミングは、以下のいずれかの方法によって検出される。
・スイッチング素子122、124がそれぞれON、OFF制御される信号を用い、スイッチング素子122、124が全てOFF状態であることを検知したときにスイッチング素子142をON状態にする。
【0063】
・電池ユニット611、612の電圧が第2の所定の電圧値V2以下であるときにスイッチング素子142をON状態にする。
・蓄電モジュールを使用する(放電する)ときに、スイッチング回路14のダイオードに流れる電流を検知し、検知された電流が所定の電流値以上になった場合にスイッチング素子142をON状態にする。
【0064】
なお、電池ユニットの電圧は第1の所定の電圧値V1以上になる場合があるが、充電電圧の最大値、または図示しない過充電保護電圧を超えない範囲内で図8に示す時間T1を設定することができる。時間T1を設定する方法の他にも、最大の電圧値V1の値を本来所望とする電圧値よりも若干小さく設定することで、電池ユニットの電圧が充電電圧の最大値、または図示しない過充電保護電圧に到達しないように制御することができる。
【0065】
以上説明した実施形態1、実施形態2の抵抗素子に電流をバイパスさせる動作は、蓄電体に含まれる電池ユニット間の電圧バランシングを目的として行われる。しかし、上記のようにバイパスさせる回数を減少させ、一定時間経過後に充電電流を遮断させることは、電池ユニット間の電圧バランシングという目的達成を困難にする可能性がある。
【0066】
しかしながら、実施形態1、実施形態2の充電制御方法は、1度目の充電直後で多少電圧のアンバランスが残っていたとしても、充電終了後に負荷を接続して放電し、再度充電する作業を複数回繰り返すことによって、累積的に増加することはなく、よりバランスがとれた状態に近づく。つまり、蓄電モジュールを実際に移動機器や電子機器に搭載して使用する場合には、蓄電体の高速蓄電素子や電池ユニットを、電圧のばらつき無く動作させることができる。
【0067】
なお、図1、図6には図示していないが、実施形態1、実施形態2では、過充電保護回路や過放電保護回路を蓄電モジュールとは別に設置しても良い。過放電保護回路の設定電圧は、高速蓄電素子の電圧下限値によって決定される。また過充電保護回路の設定電圧は、高速蓄電素子の最大定格電圧と第1の所定の電圧値V1との間に設けることが好ましい。
【0068】
また、過充電保護回路における充電電流を遮断するスイッチング素子を、スイッチング素子142として用いても良い。その場合は、過充電保護回路のスイッチング素子のON、OFFを制御する信号ラインに、充電制御回路13からのスイッチング素子をON、OFF制御するための信号をのせることにより実現することができる。
以上、本発明に係る蓄電モジュールと充電制御方法について詳説した。本発明によれば、バイパス回路動作後に一定時間経過してから蓄電体へ掛かる充電電流を遮断する充電制御方法により、バランシングを実現した上で充電時の発熱量を抑えた蓄電モジュールを提供することができる。
【0069】
・実施形態3
次に、本発明の実施形態3について説明する。
図9は、本発明の第3実施形態の蓄電モジュールの概略構成図である。なお、図9に示した構成のうち、図1に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。実施形態3の蓄電モジュールは、図1に示した実施形態1の蓄電モジュールに、第1タイミング制御回路71、第2タイミング制御回路72、第3タイミング制御回路73を追加したものである。
【0070】
第1タイミング制御回路71は、スイッチング素子142をON状態からOFF状態に遷移させる動作タイミングを、電池ユニット111、112のいずれかが第1の所定の電圧値V1以上となったことを電圧検出器13aが検出してから第1の所定の時間T1経過時とする。
【0071】
第2のタイミング制御回路72は、スイッチング素子122をON状態からOFF状態に遷移させる動作タイミングを、スイッチング素子122が並列接続された電池ユニット111の電圧が第1の所定の電圧値V1以上になったことが電圧検出器13aによって検出されてから第2の所定時間T2経過時とする。また、第2のタイミング制御回路72は、スイッチング素子124をON状態からOFF状態に遷移させる動作タイミングを、スイッチング素子124が並列接続された電池ユニット112の電圧が第1の所定の電圧値V1以上になったことが電圧検出器13aによって検出されてから第2の所定時間T2経過時とする。
【0072】
第3のタイミング制御回路73は、スイッチング素子122をON状態からOFF状態にするタイミングを、スイッチング素子122が接続された電池ユニット111の電圧が電圧検出器13aによって第2の所定の電圧値V2以下になったことが電圧検出器13aによって検出されてから第3の所定時間T3経過時とする。また、第3のタイミング制御回路73は、スイッチング素子124をON状態からOFF状態にするタイミングを、スイッチング素子124が接続された電池ユニット112の電圧が電圧検出器13aによって第2の所定の電圧値V2以下になったことが電圧検出器13aによって検出されてから第3の所定時間T3経過時とする。
【0073】
タイミング制御回路71、72、73としては、例えば、タイマICに抵抗素子とキャパシタとで時定数を設定した回路を使用することができる。ここで、これらの回路の少なくとも1つの抵抗素子として可変抵抗器を使用すると、所定時間T3を可変に設定できるので好ましい。
なお、タイミング制御回路71、72、73の機能は、充電制御回路13の中に取り込んで一体とすることができる。また、実施形態3の蓄電モジュールでは、図示されない過充電保護回路や過放電保護回路を備えることもできる。
【実施例】
【0074】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例]
1)リチウムイオンキャパシタの作製
1−1)電極の作製
市販のピッチ系活性炭(BET比表面積1955m2 /g)150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ300gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱処理を行った。熱処理は窒素雰囲気下で行い、室温から670℃まで4時間で昇温し、同温度で4時間保持し、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、電気炉から取り出した。得られた生成物である複合多孔性材料のBET比表面積は、245m2 /gであった。
【0075】
次いで、上記のようにして得た複合多孔性材料83.4質量部、アセチレンブラック8.3質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)8.3質量部、及びN−メチルピロリドン(NMP)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ15 μmの孔あき銅箔(開孔率50%)の両面に塗布し、乾燥し、プレスして、厚さ約135μmの負極を得た。
【0076】
また、負極に用いた複合多孔性材料の原料と同一の市販のピッチ系活性炭81.6質量部、ケッチェンブラック6.1質量部、PVdF12.3質量部、及びNMPを混合したスラリーを、厚さ30μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥して、厚さ約270μmの正極を得た。なお、前記の正極及び負極は、下記工程で電極タブとなる部分はスラリーを塗布しない。
【0077】
1−2)タブ付き電極積層体の作製
上記したようにして得られた負極及び正極を用い、以下のようにして長辺、短辺それぞれの長さが120mm、70mmであり、長辺のうちの一辺から、正極、及び負極のリードタブを導出したタブ付き電極積層体を作製した。
先ず、負極、及び正極を上記寸法で電極タブを有するように打ち抜いた(以下では、打ち抜き後のものを単に「正極、負極」という)。負極の片面の複合多孔性材料層に接するように同面積で厚み20μmのリチウム金属箔を圧着し、正極と負極の間にポリエチレン製のセパレータ(厚み30μm)をはさみ込んで正極7枚負極6枚を積層した電極積層体とした。
【0078】
次に、電極積層体の短辺の2つと長辺の1つを、電極積層体の上面から下面まで積層方向に、ポリイミド製の粘着テープで固定し、粘着テープで固定されていない長辺の正極タブに正極端子用リードタブ(材質:アルミニウム、厚み:0.2mm、幅15mm)、負極タブに負極端子用リードタブ(材質:表面をニッケル鍍金された銅、厚み:0.2mm、幅15mm)を超音波溶接し、タブ付き電極積層体を作製した。このタブ付き電極積層体の厚さは3.0mmとした。また、正極、負極の電極タブと各リードタブの溶接には、いずれも10mmの溶接距離を要した。
【0079】
1−3)リチウムイオンキャパシタの作製
正極端子用リードタブ及び負極端子用リードタブが接続されたタブ付き電極積層体を、最内層が熱溶融性樹脂からなる熱溶融性樹脂/アルミニウム箔/樹脂の三層ラミネートフィルムで構成された外装体の内部に入れ、非水系電解液を注入してヒートシールにより前記熱溶融性樹脂を融着させて密封し、LICを作製した。この非水系電解液は、EC(炭酸エチレン)とEMC(炭酸エチルメチル)を1:4の体積比率で混合した非水溶媒に、1mol/Lの濃度でLiN(SO2252を溶解したものである。
2)蓄電モジュールの作製
上記のようにして得られたLIC(静電容量100F、内部抵抗13mΩ)を、12個直列に接続して蓄電体とした。さらに、それぞれのLICにバイパス回路を並列に接続し、図1に示した蓄電モジュール10を作製した。
【0080】
また、LICに直列となるように、図1に示したスイッチング素子142としてMOSFET素子(三洋半導体株式会社製BBS3002)を接続した。さらに、図1に示したスイッチング素子122、124としてMOSFET素子(インフィニオンテクノロジーズ株式会社製BSC016N03MSG)を選択し、抵抗素子121、123と直列接続して各LICと並列に接続した。抵抗素子121、123としては、800mΩの抵抗を選択した。さらに、図1に示したスイッチング素子142とスイッチング素子122、124とに対して下記のON−OFF制御を行う充電制御回路を接続した。
【0081】
LICと各回路装置を配置したガラスエポキシ製のプリント配線基板とをアルミニウム合金製のケースの中に設置、固定して蓄電モジュールを構成する。そして、充放電を行うための外部端子をケース外に出した電極端子と接続した。なお、蓄電モジュールで発生した熱をするためにケースにはスリットを多数設け、自然空冷による放熱を促す構造とした。
【0082】
3)充電制御
実施例では、以上のようにして作製された蓄電モジュールに、図7に示したフローチャートに基づいて充電制御を行った。具体的には、第1電圧値V1を3.70Vとし、第2電圧値V2を3.65Vとし、第2の所定の時間T1を1秒、第1の所定の時間T2を3秒とした。
【0083】
4)充放電試験
前記したケースの電極端子と充放電装置(高砂製作所社製)とを接続し、充放電試験を行った。この試験は、電圧44.4Vに到達するまで一定の電流(電流30A)で蓄電モジュールに充電をし、その後、電圧値を一定(電圧44.4V)に保つように充電を行った。充放電装置から電流を流す時間(T10)は10秒とした。また、充電終了後、電圧値が27Vになるまで電流30Aの一定電流で放電を行う。上記の充電と放電を1セットとして、充電と放電の間に休止を設けず、これを繰り返す充放電サイクル試験を行った。
また、充放電サイクル試験中の図1に示した抵抗素子121、123の温度を評価するため、抵抗素子121、123の表面に熱電対を取り付けて温度を測定した。
【0084】
5)結果
図10は、上述した充放電サイクル試験における抵抗素子121、123の温度変化を示した図である。図10の縦軸は抵抗素子121、123の温度を示し、横軸は充放電のサイクル数を示している。図10中の2つの曲線のうち、実線は本実施例の結果を示し、破線は後述する比較例の結果を示している。
図10によれば、実施例では、実線で示すように充放電サイクル試験を350回(約75分)行ったところでほぼ温度が42℃の平衡状態に達したことが分かる。また、そのときの各LICの電圧ばらつきは、最も大きい電圧のLICと最も小さい電圧のLICとの差が28mVであった。
【0085】
[比較例]
次に、以上説明した実施例と比較するために行った実験(比較例)について説明する。
1)充放電試験
比較例では、図1に示した蓄電モジュールからスイッチング回路14を除いた蓄電モジュールを用意し、充放電サイクル試験を行った。充電制御は、図7に示したフローチャートにおいて、第1の所定の電圧値V1を3.70Vとし、第2の所定の電圧値V2を3.65Vとし、第1の所定の時間T2は設けず、第2の所定の時間T1を1秒とした。充電条件は、電池ユニットが電圧44.4Vに到達するまで一定の電流(30A)で充電を行い、その後、電圧を一定の電圧値(44.4V)に保つように充電を行う。充放電装置から電流を流す時間は10秒とした。また、充電終了後に27Vまで一定の電流(30A)で放電を行う。上記の充電と放電を1セットとして、充電と放電の間に休止を設けず、これを繰り返す充放電サイクル試験を行った。
【0086】
2)結果
上述の充放電サイクル試験における図1に示した抵抗素子121、123の温度の温度変化を図10中に破線で示した。充放電サイクル試験を350回(約75分)行ったところでほぼ温度が48℃で平衡状態に達した。また、そのときの各LICの電圧ばらつきは、最も大きい電圧のLICと最も小さい電圧のLICとの差が29mVであった。
【0087】
実施例と比較例とを比較すると、バランシング効果はほぼ同じであるが、実施例の充電制御方法は比較例の充電制御方法よりも、抵抗素子121、123の温度を6℃低くすることができている。また、各LICの表面温度やスイッチング素子122、124の温度についても、実施例と比較例とで比較したところ、5℃〜7℃実施例の方が低いという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る蓄電モジュールは、発熱量を抑えた蓄電モジュールである。具体的には、蓄電体を備えた移動機器や電子機器等において有用である。
【符号の説明】
【0089】
10、60 蓄電モジュール
11、61 蓄電体
12a、12b バイパス回路
13 充電制御回路
13a 電圧検出器
14 スイッチング回路
15a、15b 外部端子
71、72、73 タイミング制御回路
111、112、611、612 電池ユニット
121、123 抵抗素子
122、124、142 スイッチング素子
141 ダイオード素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子を含む複数の電池ユニットが直列に接続された蓄電体と、
前記蓄電体に直列に接続された第1スイッチング素子と、
複数の前記電池ユニットの各々に対応して並列に接続され、対応する電池ユニットに流れる電流をバイパスするように切り替えられる第2スイッチング素子を含む複数のバイパス回路と、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子を制御する充電制御回路と、を含み、
前記充電制御回路は、
前記電池ユニットの電圧値を個別に検出する電圧検出器を含み、
予め定められた充電終了条件が満たされた場合、前記第1スイッチング素子をOFFし、
前記電圧検出器によって検出された電圧値に応じて複数の前記第2スイッチング素子それぞれのON、OFFを制御することを特徴とする蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第1スイッチング素子をON状態からOFF状態に遷移させる動作タイミングを、前記電圧検出器によって前記電池ユニットのいずれかの電圧値が第1電圧値以上になったことが検出されてから第1の所定の時間経過したタイミングとする第1タイミング制御回路をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記複数個の第2スイッチング素子の各々をOFF状態からON状態にするタイミングを、該第2スイッチング素子が接続された前記電池ユニットの電圧値が前記電圧検出器によって前記第1電圧値以上となったことが検出されてから第2の所定の時間経過したタイミングとする第2タイミング制御回路をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記複数個の第2スイッチング素子の各々をON状態からOFF状態にするタイミングを、該第2スイッチング素子が接続された前記電池ユニットの電圧が前記電圧検出器によって第2電圧値以下となったことが検出されてから第3の所定の時間経過したタイミングとする第3タイミング制御回路をさらに含むことを特徴とする請求項2または3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記第1タイミング制御回路、前記第2タイミング制御回路、前記第3タイミング制御回路のうちの少なくとも1つが、それぞれが対応する前記第1の所定の時間、前記第2の所定の時間、前記第3の所定の時間を可変とするタイミング制御回路であることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記蓄電素子が、リチウムイオンキャパシタ、または電気二重層キャパシタのいずれかであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記電池ユニットは、単数の前記蓄電素子、または並列に接続された複数の蓄電素子を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
蓄電素子を含む複数の電池ユニットが直列に接続された蓄電体と、前記蓄電体に直列に接続された第1スイッチング素子と、複数の前記電池ユニットの各々に対応して並列に接続され、対応する電池ユニットに流れる電流をバイパスするように切り替えられる第2スイッチング素子を含む複数のバイパス回路と、前記電池ユニットの電圧値に応じて前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子を制御する充電制御回路と、を含む蓄電モジュールの充電を制御する充電制御方法であって、
前記充電制御回路が、
複数の前記電池ユニットの少なくとも1つの電圧値が第1電圧値以上になるまで前記蓄電体を充電する第1のステップと、
電圧値が前記第1電圧値以上になった前記電池ユニットに対応する前記バイパス回路の前記第2スイッチング素子をON状態に切り替えて、前記電池ユニットに流れる電流を前記バイパス回路に流す第2ステップと、
前記第2ステップによって電流がバイパスされた前記電池ユニットの電圧値が第2電圧値以下になった場合、前記第2スイッチング素子をOFF状態に切り替えて、前記バイパス回路に流れる電流を当該バイパス回路に対応する前記電池ユニットに流す第3ステップと、
前記第3ステップの開始から第1の所定の時間の経過後に、前記蓄電体へ流れる電流を、前記第1スイッチング回路をOFFすることによって遮断する第4ステップと、
を含むことを特徴とする充電制御方法。
【請求項9】
前記第2ステップと前記第3ステップとが繰返し実行され、
前記第2ステップは、前記電池ユニットに対し、電圧値が前記第1電圧値以上になってから第2の所定の時間が経過した後、当該電池ユニットに対応する前記バイパス回路の前記第2スイッチング素子をON状態に切り替えて前記電池ユニットに流れる電流を前記バイパス回路に流すことを特徴とする請求項8に記載の充電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−249477(P2012−249477A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120974(P2011−120974)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】