蓄電池を備えた建物
【課題】蓄電池の寿命を長くすることができ、非常時などに機能する可能性を向上でき、蓄電池が屋内空間を占有することがなく、設計の自由度が高い蓄電池を備えた建物を提供する。
【解決手段】建物1の基礎の基礎底盤コンクリート1bの側縁に立設された基礎側壁コンクリート1cが断熱材2を取り付けた断熱基礎とされた床下空間3内に蓄電池4が設置された構成とされている。
【解決手段】建物1の基礎の基礎底盤コンクリート1bの側縁に立設された基礎側壁コンクリート1cが断熱材2を取り付けた断熱基礎とされた床下空間3内に蓄電池4が設置された構成とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギー用又は非常用の蓄電池を備えた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国家・自治体レベルや企業レベルにとどまらず、家庭レベルにおいても省エネルギーの意識が高まりつつある。
【0003】
また、地震などによる被災後の非常時に、なるべく快適な生活を送れるようにしようとする非常時に対応するための意識も高まりつつある。
【0004】
こうしたことから、省エネルギー用又は非常時用の蓄電池を建物に備えることがなされるようになってきた(特許文献1などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−178237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1のような従来技術では、通常、蓄電池を建物の屋外や屋内空間に設置していた。
【0007】
ここで、蓄電池を建物の屋外に設置した場合は、変化の激しい外気温に曝されるため、蓄電池の寿命が短くなってしまうという問題があった。また、屋外に設置スペースを確保しなければならないという問題もあった。
【0008】
蓄電池を建物の屋内空間に設置した場合は、屋内空間の気温は比較的安定しているため、蓄電池の寿命は屋外に設置した場合に比べればかなり長くなるが、屋内空間に設置スペースが必要であり、蓄電池の設置部分が意匠的美観を損なうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来技術に比して、蓄電池の寿命を長くすることができ、非常時などのいざというときに機能する可能性を向上でき、蓄電池が屋内空間を占有することがなく、設計の自由度が高い蓄電池を備えた建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の蓄電池を備えた建物は、蓄電池を備えた建物であって、前記建物の基礎が断熱材を取り付けられて断熱基礎とされた床下空間内に、前記蓄電池が設置されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記建物には、自然エネルギーによる自家発電手段が設けられており、外部系統の一般電力が正常に供給される場合においては、前記蓄電池は、深夜において、前記外部系統の一般電力により蓄電し、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけで前記建物における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、前記外部系統へ送電し売電可能とし、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけでは前記建物における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、前記外部系統の一般電力から補填するとともに、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合においては、前記蓄電池は、前記自家発電手段による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えていてもよい。
【0012】
また、前記床下空間には、仕切り部が設けられ、蓄電池専用の床下空間が形成されており、当該蓄電池専用の床下空間の少なくとも前記仕切り部に、断熱材が取り付けられ、その中に、前記蓄電池が設置されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明の蓄電池を備えた建物は、建物の基礎が断熱材を取り付けられて断熱基礎とされた床下空間内に、蓄電池が設置された構成である。
【0014】
こうした構成なので、従来技術に比して、蓄電池の寿命を長くすることができ、非常時などのいざというときに機能する可能性を向上でき、蓄電池が屋内空間を占有することがないため、建物の設計の自由度を高くすることができる。
【0015】
ここで、建物には、自然エネルギーによる自家発電手段が設けられており、外部系統の一般電力が正常に供給される場合においては、蓄電池は、深夜において、外部系統の一般電力により蓄電し、自家発電手段及び蓄電池による電力だけで建物における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、外部系統へ送電し売電可能とし、自家発電手段及び蓄電池による電力だけでは建物における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、外部系統の一般電力から補填するとともに、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合においては、蓄電池は、自家発電手段による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えている場合は、外部系統の一般電力が正常に供給される場合は、省エネルギーに貢献し、経済的に、通常の生活を送ることができ、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合も、通常に近い生活を送ることができる。
【0016】
また、床下空間には、仕切り部が設けられ、蓄電池専用の床下空間が形成されており、蓄電池専用の床下空間の少なくとも仕切り部に、断熱材が取り付けられ、その中に、蓄電池が設置されている場合は、蓄電池専用の床下空間内は、単なる断熱基礎の床下空間内と比べても、より安定した温度環境となるため、蓄電池の寿命をさらにより長くすることができるうえに、残る床下空間は、床下冷暖房装置を設置するなどの他用途に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の蓄電池を備えた建物の概略構成を示す説明図である。
【図2】実施例1の蓄電池を備えた建物における電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合における電力の流れを示す説明図である。
【図4】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合における電力の流れを示す説明図である。
【図5】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合における電力の流れを示す説明図である。
【図6】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合における電力の流れを示す説明図である。
【図7】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合における電力の流れを示す説明図である。
【図8】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合と、正常に供給されない場合とで共通に、電力の流れを示す説明図である。
【図9】実施例1のモデルハウスにおいて測定した床下空間の温度、屋内空間の温度、外気温及び基礎底盤コンクリートの上面の温度の関係を示したグラフである。
【図10】実施例1のモデルハウスにおいて測定した床下空間の温度、屋内空間の温度、外気温及び基礎底盤コンクリートの上面の温度の関係を示したグラフである。
【図11】実施例1のモデルハウスにおいて測定した床下空間の温度、屋内空間の温度、外気温及び基礎底盤コンクリートの上面の温度の関係を示したグラフである。
【図12】実施例2の建物の概略構成を示す説明図である。
【図13】実施例3の建物の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例1〜3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
先ず、実施例1について説明する。
【0020】
図1は、実施例1の蓄電池を備えた建物1の概略構成を示している。
【0021】
まず、このような建物1は、断熱基礎として構築された基礎底盤コンクリート1bと、その側縁に立設された基礎側壁コンクリート1cと、さらにその上に立設された外壁部1dと、その外壁部1dの上端開口を塞ぐ天井部1eとから主に構成されている。
【0022】
そして、この天井部1eと外壁部1dとに囲まれる空間は、床としての床部1aによって床下空間3と居室などの屋内空間6とが区切られた構成となっている。
【0023】
また、側壁コンクリート1cの床下空間3側には、グラスウールなどの断熱材2が取り付けられており、床下空間3内の熱が屋外に極力漏れない断熱構造となっている。
【0024】
そして、この実施例1では、床下空間3内に充電器(図示せず)を内蔵した蓄電池4が設置されている。
【0025】
また、天井部1eの上部には、自然エネルギーによる自家発電手段としての太陽光電池パネル5が設けられている。
【0026】
なお、自然エネルギーによる自家発電手段としては、太陽光電池パネル5に限定されず、例えば、風力発電機などを用いて実施してもよい。
【0027】
さらに、この建物1は、図2に示したように、分電盤7、外部系統の一般電力8、太陽電池パネル5、蓄電池4、第1のパワーコンディショナー11、第2のパワーコンディショナー12及び制御装置13から主に構成される電力供給システムを備えている。
【0028】
ここで、分電盤7には、外部系統の一般電力8が電力量計9を介して接続されている。
【0029】
また、分電盤7には、照明やテレビなどの家庭用電化機器10が接続されている。
【0030】
さらに、分電盤7には、太陽電池パネル5が第1のパワーコンディショナー11を介して接続されている。
【0031】
また、分電盤7には、蓄電池4が第2のパワーコンディショナー12を介して接続されている。
【0032】
さらに、太陽電池パネル5と蓄電池4とが、第1のパワーコンディショナー11を介して接続されている。
【0033】
さらに、外部系統の一般電力8、蓄電池4、第1のパワーコンディショナー11及び第2のパワーコンディショナー12の間には、制御装置13が接続されて設けられている。
【0034】
そして、この制御装置13は、外部系統の一般電力8、蓄電池4、パワーコンディショナー11及びパワーコンディショナー12を監視するとともに、これらを適正に働かせるように制御を行うこの電力供給システムの中枢を担う。
【0035】
具体的には、図3に示したように、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合においては、蓄電池4は、料金の安い深夜において、外部系統の一般電力8により蓄電する。
【0036】
ここで、冷蔵庫などの家庭用電化機器10も、料金の安い深夜において、外部系統の一般電力8により稼動させる。
【0037】
また、日中において、太陽電池パネル5及び蓄電池4だけで建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)をまかなえるときは、図4に示したように、余剰分の電力を、外部系統へ送電し売電可能としている。
【0038】
さらに、太陽電池パネル5及び蓄電池4だけで建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)をまかなえないときは、図5に示したように、不足分の電力を、外部系統の一般電力8から補填する。
【0039】
ここで、外部系統の一般電力8が正常に供給されない場合においては、図6に示したように、蓄電池4は、太陽電池パネル5による電力の余剰分により蓄電する。
【0040】
また、建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)が、太陽電池パネル5による電力だけではまかないきれないときは、図7に示したように、蓄電池4による電力から補填する。
【0041】
さらに、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合と、正常に供給されない場合とで共通に、蓄電池4がフル充電され、建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)が、太陽電池パネル5による電力だけでまかなえるときは、図8に示したように、蓄電池4が過充電とならないように、蓄電池4へは電力を供給しない。
【0042】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
【0043】
このような実施例1の蓄電池を備えた建物1は、建物1の基礎の基礎底盤コンクリート1bの側縁に立設された基礎側壁コンクリート1cが断熱材2を取り付けた断熱基礎とされた床下空間3内に、蓄電池4が設置された構成である。
【0044】
こうした構成なので、従来技術に比して、蓄電池4の寿命を長くすることができ、非常時などのいざというときに機能する可能性を向上することができる。
【0045】
ここで、北近畿地方において、この実施例1の建物1のモデルハウスを構築し、気温の変化の激しい3月20日から4月9日までに、床下空間3の温度A、屋内空間6の温度B、外気温C及び床下空間3内における基礎底盤コンクリート1bの上面の温度Dの計測を行った。
【0046】
その結果、図9〜図11に示したように、外気温Cは、最大約22℃の幅で大きく変化し、屋内空間6の温度Bでも約7℃の幅で変化したのに対し、床下空間3の温度Aは、常に13℃乃至14℃であり、約1℃の幅でしか変化しない安定した蓄電池4の寿命を長くするのに適したものであることが立証できた。
【0047】
そのうえ、蓄電池4が屋内空間6を占有することがないため、建物1の設計の自由度を高くすることができる。
【0048】
また、建物1には、自然エネルギーによる自家発電手段としての太陽電池パネル5が設けられている。
【0049】
そして、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合においては、蓄電池4は、深夜において、外部系統の一般電力8により蓄電し、太陽電池パネル5及び蓄電池4だけで建物1における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、外部系統へ送電し売電可能とし、太陽電池パネル5及び蓄電池4による電力だけでは建物1における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、外部系統の一般電力8から補填するとともに、外部系統の一般電力8が正常に供給されない場合においては、蓄電池4は、太陽電池パネル5による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えている。
【0050】
このため、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合は、省エネルギーに貢献し、経済的に、通常の生活を送ることができ、外部系統の一般電力8が正常に供給されない場合も、通常に近い生活を送ることができる。
【実施例2】
【0051】
次に、実施例2について説明する。
【0052】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0053】
この実施例2の蓄電池を備えた建物1Aでは、図12に示したように、床下空間3内において、基礎底盤コンクリート1bの上面にも、グラスウールなどの断熱材21を取り付けてから、蓄電池4が設置されている。
【0054】
なお、床部1aの下面にも、断熱材を取り付けて実施してもよい。
【0055】
すなわち、図9〜図11に示したように、基礎底盤コンクリート1bの上面の温度Dは、約8℃の幅で変化するため、断熱材21を基礎底盤コンクリート1bの上面に取り付けることにより、蓄電池4へ与える熱の変化による悪影響をより低減し、蓄電池4の寿命をより長くすることができる。
【0056】
このことが、上記実施例1と主に異なる。
【0057】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0058】
次に、実施例3について説明する。
【0059】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0060】
この実施例3の蓄電池を備えた建物1Bでは、図13に示したように、床下空間3には、仕切り部1fが設けられ、蓄電池専用の床下空間31と残りの床下空間32とが形成されており、蓄電池専用の床下空間31内の仕切り部1fに、グラスウールなどの断熱材20が取り付けられている。
【0061】
なお、この実施例3では、断熱材20は、仕切り部1fのみに取り付けて実施したが、これに限定されず、蓄電池専用の床下空間31内における基礎底盤コンクリート1bの上面又は床部1aの下面、若しくはこれら双方にも取り付けて実施してもよい。
【0062】
そして、この蓄電池専用の床下空間31の中に、蓄電池4が設置されている。
【0063】
また、残る床下空間32内には、床下冷暖房装置14が設置されている。
【0064】
さらに、仕切り部1fの上方には、中間壁1gが設けられており、屋内空間6が、居間などの居室側空間61と廊下などの非居室側空間62とに区画されている。
【0065】
このため、蓄電池専用の床下空間31内は、実施例1の単なる断熱基礎の床下空間3内と比べても、より安定した温度環境となるため、蓄電池4の寿命をさらにより長くすることができる。
【0066】
そのうえ、残る床下空間32は、断熱材20の存在により、蓄電池専用の床下空間31へ熱を伝達させるなどの悪影響をほとんど与えないので、床下冷暖房装置14を設置することができる。
【0067】
なお、この実施例3では、残る床下空間32内に床下冷暖房装置14を設置して実施したが、これに限定されず、例えば、床下冷蔵庫などを設置して実施してもよいし、何も設置しないで実施してもよい。
【0068】
これらのことが、上記実施例1と主に異なる。
【0069】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0070】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態について実施例1〜3をもとに詳述してきたが、具体的な構成は、上記した実施例1〜3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0071】
例えば、上記実施例1〜3では、建物1,1A,1Bを、説明が簡単なように、単純な平屋の構造としたが、勿論、これに限定されず、より複雑な構造として実施してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B 建物
1a 床部(床)
1b 基礎底盤コンクリート
1c 基礎側壁コンクリート
1f 仕切り部
1g 中間壁
2,20,21 断熱材
3 床下空間
31 蓄電池専用の床下空間
32 残る床下空間
4 蓄電池
5 太陽電池パネル(自然エネルギーによる自家発電手段)
6 屋内空間
61 居室側空間
62 非居室側空間
7 分電盤
8 外部系統の一般電力
9 電力量計
10 家庭用電化機器
11 第1のパワーコンディショナー
12 第2のパワーコンディショナー
13 制御装置
14 床下冷暖房装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネルギー用又は非常用の蓄電池を備えた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国家・自治体レベルや企業レベルにとどまらず、家庭レベルにおいても省エネルギーの意識が高まりつつある。
【0003】
また、地震などによる被災後の非常時に、なるべく快適な生活を送れるようにしようとする非常時に対応するための意識も高まりつつある。
【0004】
こうしたことから、省エネルギー用又は非常時用の蓄電池を建物に備えることがなされるようになってきた(特許文献1などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−178237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1のような従来技術では、通常、蓄電池を建物の屋外や屋内空間に設置していた。
【0007】
ここで、蓄電池を建物の屋外に設置した場合は、変化の激しい外気温に曝されるため、蓄電池の寿命が短くなってしまうという問題があった。また、屋外に設置スペースを確保しなければならないという問題もあった。
【0008】
蓄電池を建物の屋内空間に設置した場合は、屋内空間の気温は比較的安定しているため、蓄電池の寿命は屋外に設置した場合に比べればかなり長くなるが、屋内空間に設置スペースが必要であり、蓄電池の設置部分が意匠的美観を損なうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来技術に比して、蓄電池の寿命を長くすることができ、非常時などのいざというときに機能する可能性を向上でき、蓄電池が屋内空間を占有することがなく、設計の自由度が高い蓄電池を備えた建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の蓄電池を備えた建物は、蓄電池を備えた建物であって、前記建物の基礎が断熱材を取り付けられて断熱基礎とされた床下空間内に、前記蓄電池が設置されていることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記建物には、自然エネルギーによる自家発電手段が設けられており、外部系統の一般電力が正常に供給される場合においては、前記蓄電池は、深夜において、前記外部系統の一般電力により蓄電し、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけで前記建物における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、前記外部系統へ送電し売電可能とし、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけでは前記建物における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、前記外部系統の一般電力から補填するとともに、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合においては、前記蓄電池は、前記自家発電手段による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えていてもよい。
【0012】
また、前記床下空間には、仕切り部が設けられ、蓄電池専用の床下空間が形成されており、当該蓄電池専用の床下空間の少なくとも前記仕切り部に、断熱材が取り付けられ、その中に、前記蓄電池が設置されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明の蓄電池を備えた建物は、建物の基礎が断熱材を取り付けられて断熱基礎とされた床下空間内に、蓄電池が設置された構成である。
【0014】
こうした構成なので、従来技術に比して、蓄電池の寿命を長くすることができ、非常時などのいざというときに機能する可能性を向上でき、蓄電池が屋内空間を占有することがないため、建物の設計の自由度を高くすることができる。
【0015】
ここで、建物には、自然エネルギーによる自家発電手段が設けられており、外部系統の一般電力が正常に供給される場合においては、蓄電池は、深夜において、外部系統の一般電力により蓄電し、自家発電手段及び蓄電池による電力だけで建物における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、外部系統へ送電し売電可能とし、自家発電手段及び蓄電池による電力だけでは建物における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、外部系統の一般電力から補填するとともに、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合においては、蓄電池は、自家発電手段による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えている場合は、外部系統の一般電力が正常に供給される場合は、省エネルギーに貢献し、経済的に、通常の生活を送ることができ、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合も、通常に近い生活を送ることができる。
【0016】
また、床下空間には、仕切り部が設けられ、蓄電池専用の床下空間が形成されており、蓄電池専用の床下空間の少なくとも仕切り部に、断熱材が取り付けられ、その中に、蓄電池が設置されている場合は、蓄電池専用の床下空間内は、単なる断熱基礎の床下空間内と比べても、より安定した温度環境となるため、蓄電池の寿命をさらにより長くすることができるうえに、残る床下空間は、床下冷暖房装置を設置するなどの他用途に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の蓄電池を備えた建物の概略構成を示す説明図である。
【図2】実施例1の蓄電池を備えた建物における電力供給システムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合における電力の流れを示す説明図である。
【図4】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合における電力の流れを示す説明図である。
【図5】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合における電力の流れを示す説明図である。
【図6】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合における電力の流れを示す説明図である。
【図7】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合における電力の流れを示す説明図である。
【図8】図2において、外部系統の一般電力が正常に供給される場合と、正常に供給されない場合とで共通に、電力の流れを示す説明図である。
【図9】実施例1のモデルハウスにおいて測定した床下空間の温度、屋内空間の温度、外気温及び基礎底盤コンクリートの上面の温度の関係を示したグラフである。
【図10】実施例1のモデルハウスにおいて測定した床下空間の温度、屋内空間の温度、外気温及び基礎底盤コンクリートの上面の温度の関係を示したグラフである。
【図11】実施例1のモデルハウスにおいて測定した床下空間の温度、屋内空間の温度、外気温及び基礎底盤コンクリートの上面の温度の関係を示したグラフである。
【図12】実施例2の建物の概略構成を示す説明図である。
【図13】実施例3の建物の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例1〜3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
先ず、実施例1について説明する。
【0020】
図1は、実施例1の蓄電池を備えた建物1の概略構成を示している。
【0021】
まず、このような建物1は、断熱基礎として構築された基礎底盤コンクリート1bと、その側縁に立設された基礎側壁コンクリート1cと、さらにその上に立設された外壁部1dと、その外壁部1dの上端開口を塞ぐ天井部1eとから主に構成されている。
【0022】
そして、この天井部1eと外壁部1dとに囲まれる空間は、床としての床部1aによって床下空間3と居室などの屋内空間6とが区切られた構成となっている。
【0023】
また、側壁コンクリート1cの床下空間3側には、グラスウールなどの断熱材2が取り付けられており、床下空間3内の熱が屋外に極力漏れない断熱構造となっている。
【0024】
そして、この実施例1では、床下空間3内に充電器(図示せず)を内蔵した蓄電池4が設置されている。
【0025】
また、天井部1eの上部には、自然エネルギーによる自家発電手段としての太陽光電池パネル5が設けられている。
【0026】
なお、自然エネルギーによる自家発電手段としては、太陽光電池パネル5に限定されず、例えば、風力発電機などを用いて実施してもよい。
【0027】
さらに、この建物1は、図2に示したように、分電盤7、外部系統の一般電力8、太陽電池パネル5、蓄電池4、第1のパワーコンディショナー11、第2のパワーコンディショナー12及び制御装置13から主に構成される電力供給システムを備えている。
【0028】
ここで、分電盤7には、外部系統の一般電力8が電力量計9を介して接続されている。
【0029】
また、分電盤7には、照明やテレビなどの家庭用電化機器10が接続されている。
【0030】
さらに、分電盤7には、太陽電池パネル5が第1のパワーコンディショナー11を介して接続されている。
【0031】
また、分電盤7には、蓄電池4が第2のパワーコンディショナー12を介して接続されている。
【0032】
さらに、太陽電池パネル5と蓄電池4とが、第1のパワーコンディショナー11を介して接続されている。
【0033】
さらに、外部系統の一般電力8、蓄電池4、第1のパワーコンディショナー11及び第2のパワーコンディショナー12の間には、制御装置13が接続されて設けられている。
【0034】
そして、この制御装置13は、外部系統の一般電力8、蓄電池4、パワーコンディショナー11及びパワーコンディショナー12を監視するとともに、これらを適正に働かせるように制御を行うこの電力供給システムの中枢を担う。
【0035】
具体的には、図3に示したように、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合においては、蓄電池4は、料金の安い深夜において、外部系統の一般電力8により蓄電する。
【0036】
ここで、冷蔵庫などの家庭用電化機器10も、料金の安い深夜において、外部系統の一般電力8により稼動させる。
【0037】
また、日中において、太陽電池パネル5及び蓄電池4だけで建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)をまかなえるときは、図4に示したように、余剰分の電力を、外部系統へ送電し売電可能としている。
【0038】
さらに、太陽電池パネル5及び蓄電池4だけで建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)をまかなえないときは、図5に示したように、不足分の電力を、外部系統の一般電力8から補填する。
【0039】
ここで、外部系統の一般電力8が正常に供給されない場合においては、図6に示したように、蓄電池4は、太陽電池パネル5による電力の余剰分により蓄電する。
【0040】
また、建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)が、太陽電池パネル5による電力だけではまかないきれないときは、図7に示したように、蓄電池4による電力から補填する。
【0041】
さらに、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合と、正常に供給されない場合とで共通に、蓄電池4がフル充電され、建物1における消費電力(家庭用電化機器10の消費する電力)が、太陽電池パネル5による電力だけでまかなえるときは、図8に示したように、蓄電池4が過充電とならないように、蓄電池4へは電力を供給しない。
【0042】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
【0043】
このような実施例1の蓄電池を備えた建物1は、建物1の基礎の基礎底盤コンクリート1bの側縁に立設された基礎側壁コンクリート1cが断熱材2を取り付けた断熱基礎とされた床下空間3内に、蓄電池4が設置された構成である。
【0044】
こうした構成なので、従来技術に比して、蓄電池4の寿命を長くすることができ、非常時などのいざというときに機能する可能性を向上することができる。
【0045】
ここで、北近畿地方において、この実施例1の建物1のモデルハウスを構築し、気温の変化の激しい3月20日から4月9日までに、床下空間3の温度A、屋内空間6の温度B、外気温C及び床下空間3内における基礎底盤コンクリート1bの上面の温度Dの計測を行った。
【0046】
その結果、図9〜図11に示したように、外気温Cは、最大約22℃の幅で大きく変化し、屋内空間6の温度Bでも約7℃の幅で変化したのに対し、床下空間3の温度Aは、常に13℃乃至14℃であり、約1℃の幅でしか変化しない安定した蓄電池4の寿命を長くするのに適したものであることが立証できた。
【0047】
そのうえ、蓄電池4が屋内空間6を占有することがないため、建物1の設計の自由度を高くすることができる。
【0048】
また、建物1には、自然エネルギーによる自家発電手段としての太陽電池パネル5が設けられている。
【0049】
そして、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合においては、蓄電池4は、深夜において、外部系統の一般電力8により蓄電し、太陽電池パネル5及び蓄電池4だけで建物1における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、外部系統へ送電し売電可能とし、太陽電池パネル5及び蓄電池4による電力だけでは建物1における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、外部系統の一般電力8から補填するとともに、外部系統の一般電力8が正常に供給されない場合においては、蓄電池4は、太陽電池パネル5による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えている。
【0050】
このため、外部系統の一般電力8が正常に供給される場合は、省エネルギーに貢献し、経済的に、通常の生活を送ることができ、外部系統の一般電力8が正常に供給されない場合も、通常に近い生活を送ることができる。
【実施例2】
【0051】
次に、実施例2について説明する。
【0052】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0053】
この実施例2の蓄電池を備えた建物1Aでは、図12に示したように、床下空間3内において、基礎底盤コンクリート1bの上面にも、グラスウールなどの断熱材21を取り付けてから、蓄電池4が設置されている。
【0054】
なお、床部1aの下面にも、断熱材を取り付けて実施してもよい。
【0055】
すなわち、図9〜図11に示したように、基礎底盤コンクリート1bの上面の温度Dは、約8℃の幅で変化するため、断熱材21を基礎底盤コンクリート1bの上面に取り付けることにより、蓄電池4へ与える熱の変化による悪影響をより低減し、蓄電池4の寿命をより長くすることができる。
【0056】
このことが、上記実施例1と主に異なる。
【0057】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0058】
次に、実施例3について説明する。
【0059】
なお、上記実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0060】
この実施例3の蓄電池を備えた建物1Bでは、図13に示したように、床下空間3には、仕切り部1fが設けられ、蓄電池専用の床下空間31と残りの床下空間32とが形成されており、蓄電池専用の床下空間31内の仕切り部1fに、グラスウールなどの断熱材20が取り付けられている。
【0061】
なお、この実施例3では、断熱材20は、仕切り部1fのみに取り付けて実施したが、これに限定されず、蓄電池専用の床下空間31内における基礎底盤コンクリート1bの上面又は床部1aの下面、若しくはこれら双方にも取り付けて実施してもよい。
【0062】
そして、この蓄電池専用の床下空間31の中に、蓄電池4が設置されている。
【0063】
また、残る床下空間32内には、床下冷暖房装置14が設置されている。
【0064】
さらに、仕切り部1fの上方には、中間壁1gが設けられており、屋内空間6が、居間などの居室側空間61と廊下などの非居室側空間62とに区画されている。
【0065】
このため、蓄電池専用の床下空間31内は、実施例1の単なる断熱基礎の床下空間3内と比べても、より安定した温度環境となるため、蓄電池4の寿命をさらにより長くすることができる。
【0066】
そのうえ、残る床下空間32は、断熱材20の存在により、蓄電池専用の床下空間31へ熱を伝達させるなどの悪影響をほとんど与えないので、床下冷暖房装置14を設置することができる。
【0067】
なお、この実施例3では、残る床下空間32内に床下冷暖房装置14を設置して実施したが、これに限定されず、例えば、床下冷蔵庫などを設置して実施してもよいし、何も設置しないで実施してもよい。
【0068】
これらのことが、上記実施例1と主に異なる。
【0069】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0070】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態について実施例1〜3をもとに詳述してきたが、具体的な構成は、上記した実施例1〜3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0071】
例えば、上記実施例1〜3では、建物1,1A,1Bを、説明が簡単なように、単純な平屋の構造としたが、勿論、これに限定されず、より複雑な構造として実施してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B 建物
1a 床部(床)
1b 基礎底盤コンクリート
1c 基礎側壁コンクリート
1f 仕切り部
1g 中間壁
2,20,21 断熱材
3 床下空間
31 蓄電池専用の床下空間
32 残る床下空間
4 蓄電池
5 太陽電池パネル(自然エネルギーによる自家発電手段)
6 屋内空間
61 居室側空間
62 非居室側空間
7 分電盤
8 外部系統の一般電力
9 電力量計
10 家庭用電化機器
11 第1のパワーコンディショナー
12 第2のパワーコンディショナー
13 制御装置
14 床下冷暖房装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池を備えた建物であって、
前記建物の基礎が断熱材を取り付けられて断熱基礎とされた床下空間内に、前記蓄電池が設置されていることを特徴とする蓄電池を備えた建物。
【請求項2】
前記建物には、自然エネルギーによる自家発電手段が設けられており、
外部系統の一般電力が正常に供給される場合においては、前記蓄電池は、深夜において、前記外部系統の一般電力により蓄電し、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけで前記建物における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、前記外部系統へ送電し売電可能とし、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけでは前記建物における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、前記外部系統の一般電力から補填するとともに、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合においては、前記蓄電池は、前記自家発電手段による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池を備えた建物。
【請求項3】
前記床下空間には、仕切り部が設けられ、蓄電池専用の床下空間が形成されており、当該蓄電池専用の床下空間の少なくとも前記仕切り部に、断熱材が取り付けられ、その中に、前記蓄電池が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池を備えた建物。
【請求項1】
蓄電池を備えた建物であって、
前記建物の基礎が断熱材を取り付けられて断熱基礎とされた床下空間内に、前記蓄電池が設置されていることを特徴とする蓄電池を備えた建物。
【請求項2】
前記建物には、自然エネルギーによる自家発電手段が設けられており、
外部系統の一般電力が正常に供給される場合においては、前記蓄電池は、深夜において、前記外部系統の一般電力により蓄電し、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけで前記建物における消費電力をまかなえるときは、余剰分の電力を、前記外部系統へ送電し売電可能とし、前記自家発電手段及び前記蓄電池による電力だけでは前記建物における消費電力をまかなえないときは、不足分の電力を、前記外部系統の一般電力から補填するとともに、外部系統の一般電力が正常に供給されない場合においては、前記蓄電池は、前記自家発電手段による電力の余剰分により蓄電する電力供給システムを備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電池を備えた建物。
【請求項3】
前記床下空間には、仕切り部が設けられ、蓄電池専用の床下空間が形成されており、当該蓄電池専用の床下空間の少なくとも前記仕切り部に、断熱材が取り付けられ、その中に、前記蓄電池が設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池を備えた建物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−163744(P2010−163744A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4319(P2009−4319)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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