説明

蓄電池利用システム

【課題】自家発電電源装置18と夜間電力と蓄電池20を相互に有効に利用する。
【解決手段】対象となる日の電力消費量の予想に適するベースパターンデータ58を選択して読み出すベースパターンデータ選択手段40と、建物の利用者のスケジュールデータ60を取得するスケジュールデータ取得手段42と、自家発電電源装置18の発電量を変動させる外部要因となる情報を取得する外部情報取得手段44と、対象となる日の一日の総消費電力量を計算する予想消費電力量計算手段46と、対象となる日および前日の予想発電量を計算する予想発電量計算手段48と、前日の蓄電池20の適正充電電力量を計算する適正充電電力量計算手段50と、蓄電池20に、適正充電電力量の電力を充電蓄電池充電制御手段52を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自家発電電源装置と夜間電力と蓄電池を相互に有効に利用する蓄電池利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置や風力発電装置は、再生可能エネルギーによる電源装置として広く実用化されている。また、クリーンなエネルギーを利用した燃料電池も、次世代の自家発電電源装置として実用化が図られている。
これらの自家発電電源装置により供給される電力は、宅内機器により消費されるとともに、余剰分が蓄電池に蓄積される。さらに、売電のために一部が送配電線側に送り出される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
自家発電電源装置が広く普及すると、送配電線側への逆潮流が電力機器の許容量を越えて、電力品質の低下を招くおそれがある。これを防止するために、自家発電電源装置側に設けられたパワーコンディショナが、自動的に逆潮流を遮断するようにしている。この場合には、自家発電電源装置の余剰電力が無駄になる。自家発電電源装置の余剰電力はできるだけ蓄電池の充電に使用し、その電力を夜間に使用してしまうことが望ましい。しかしながら、翌日の電力使用量が特に大きい場合や天候によって自家発電電源装置の発電能力が低下すると、昼間電力を購入しなければならない。これに備えて、夜間電力を利用して蓄電池を充電しておくことも考えられる。しかしながら、蓄電池を満杯まで充電しておいた場合には、翌日、余剰電力の充電に利用できない。蓄電池の容量を十分に大きくすれば解決するが、それでは設備費が嵩む。
上記の課題を解決するために、本発明は、自家発電電源装置と夜間電力と蓄電池を相互に有効に利用する蓄電池利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
標準値もしくは該当する建物の過去の実績から取得された、一日の電力消費の時間推移を示す複数種類のベースパターンデータを記憶した記憶装置と、この記憶装置から、対象となる日の電力消費量の予想に適する前記ベースパターンデータを選択して読み出すベースパターンデータ選択手段と、前記建物の利用者が、少なくとも外出中か在宅中かを示すスケジュールデータを取得するスケジュールデータ取得手段と、自家発電電源装置の発電量を変動させる外部要因となる情報を、ネットワークを通じて取得する外部情報取得手段と、前記ベースパターンデータと前記スケジュールデータと前記外部情報に基づいて、対象となる日の一日の電力消費の時間推移を計算し、この計算結果を集計して、該当する日一日の総消費電力量を計算する予想消費電力量計算手段と、前記外部情報に基づいて、前記自家発電電源装置の対象となる日の予想発電量を計算する予想発電量計算手段と、前記計算により求められた、対象となる日の予想消費電力量と同日の予想発電量とから、前日終了時の蓄電池の適正充電電力量を計算する適正充電電力量計算手段と、前記建物の宅内配線に電力を供給する蓄電池に、前記計算により求められた適正充電電力量の電力が、前日中に充電されるように充電を制御する蓄電池充電制御手段を備えたことを特徴とする蓄電池利用システム。
【0006】
〈構成2〉
構成1に記載の蓄電池利用システムにおいて、前記記憶装置には、前記ベースパターンデータは、日変動、曜日変動、季節変動、及び特異日変動に応じて異なるデータが記憶され、前記ベースパターンデータ選択手段は、カレンダーを参照して、対象となる日のベースパターンデータを選択することを特徴とする蓄電池利用システム。
【0007】
〈構成3〉
構成1または2に記載の蓄電池利用システムにおいて、前記スケジュールデータは、利用者の使用する任意の端末装置からネットワークを通じて取得することを特徴とする蓄電池利用システム。
【0008】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載の蓄電池利用システムにおいて、過去の電力消費の時間推移を示す実績データを、その変動要因となるデータとともに記憶装置に記憶させる実績データ記録手段と、前記変動要因が近時する実績データにより、前記ベースパターンデータを差し替えるベースパターンデータ差し替え手段を備えたことを特徴とする蓄電池利用システム。
【0009】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の蓄電池利用システムにおいて、計算された適正充電電力量と蓄電池の充電可能な電力量とを表示するディスプレイを備えたことを特徴とする蓄電池利用システム。
【0010】
〈構成6〉
コンピュータを、標準値もしくは該当する建物の過去の実績から取得された、一日の電力消費の時間推移を示す複数種類のベースパターンデータを記憶した記憶装置と、この記憶装置から、対象となる日の電力消費量の予想に適する前記ベースパターンデータを選択して読み出すベースパターンデータ選択手段と、前記建物の利用者が、少なくとも外出中か在宅中かを示すスケジュールデータを取得するスケジュールデータ取得手段と、自家発電電源装置の発電量を変動させる外部要因となる情報を、ネットワークを通じて取得する外部情報取得手段と、前記ベースパターンデータと前記スケジュールデータと前記外部情報に基づいて、対象となる日の一日の電力消費の時間推移を計算し、この計算結果を集計して、該当する日一日の総消費電力量を計算する予想消費電力量計算手段と、前記外部情報に基づいて、前記自家発電電源装置の対象となる日および前日の予想発電量を計算する予想発電量計算手段と、前記計算により求められた、対象となる日の予想消費電力量と同日の予想発電量とから、前日の蓄電池の適正充電電力量を計算する適正充電電力量計算手段と、前記建物の宅内配線に電力を供給する蓄電池に、前記計算により求められた適正充電電力量の電力が、前日中に充電されるように充電を制御する蓄電池充電制御手段、として機能させる蓄電池利用システム制御プログラム。
【0011】
〈構成7〉
構成6に記載の蓄電池利用システム制御プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0012】
〈構成1の効果〉
過去の実績から取得された、電力消費のベースパターンデータと、利用者のスケジュールデータと外部情報により、利用者の建物で消費される一日の総消費電力量を正確に計算する。さらに、自家発電電源装置の予想発電量を計算する。これにより、最も廉価な自家発電電源装置の電力を優先的に蓄電池の充電に利用するように、蓄電池の充電量を最適化制御することができる。
〈構成2の効果〉
多種のベースパターンデータを準備しておけば、精度の高い予想計算をすることができる。
〈構成3の効果〉
蓄電池の充電制御のためだけにスケジュールデータの入力を求めるのではなく、通常、利用者が使用しているスケジュール管理用のデータを、ネットワークを通じて取得するとよい。
〈構成4の効果〉
実績データに基づいてベースパターンデータを差し替えていけば、ベースパターンデータを順次最適化できる。
〈構成5の効果〉
計算された適正充電電力量に対して、蓄電池の充電可能な電力量が少ないときは、最も経済的な電力利用はできない。両者をディスプレイに表示すれば、利用者は、蓄電池の増設計画を立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の蓄電池利用システムを示すブロック図である。
【図2】ベースパターンデータの一例を示す説明図である。
【図3】スケジュールデータの取得方法説明図である。
【図4】個人別の在宅中電力消費パターンデータの説明図である。
【図5】外部情報の取得方法説明図である。
【図6】予想消費電力量と適正充電電力量の関係を示す説明図である。
【図7】ベースパターンデータの差し替え動作説明図である。
【図8】蓄電池の充電制御動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は実施例1の蓄電池利用システム10を示すブロック図である。
図の蓄電池利用システム10は、一般家庭のような建物に設置される。この建物には、送配電線路12から分電盤14を介して宅内配線16に商用電力が供給されている。また、この建物には、自家発電電源装置18が設けられている。さらに、建物内部で使用する電力を蓄積するための蓄電池20が設けられている。
【0016】
この蓄電池20に電力を充電するために、第1充電回路22と第2充電回路24とが設けられている。また、この蓄電池20から宅内配線側に電力を供給するために放電回路26が設けられている。まず、以上の部分について、各部の具体的な構成の説明をする。
【0017】
[自家発電電源装置]
蓄電池の充電には、自家発電電源装置18と、送配電線路12から供給される電力を使用する。自家発電電源装置18は、太陽エネルギを電気エネルギに変換して出力する太陽光発電装置の他に、風力エネルギを電気エネルギに変換して出力する風力発電装置や、水素等を燃料として発電する燃料電池が良く知られている。この他に、熱エネルギや水力波力を電気エネルギに変換して出力する電源装置も知られている。これらは全て、本発明のシステムで自家発電電源装置として使用することができる。
【0018】
[送配電線路と宅内配線]
送配電線路12は、電力会社から商用電源を供給するための線路である。宅内配線16は、送配電線路12と分電盤14を介して接続される。宅内配線16は、送配電線路12と分電盤14等の受電設備により隔てられた配電設備で、住宅やマンション等の住人が商用電源を利用するための設備である。分電盤14は、宅内配電用の分岐回路やブレーカー等を内蔵した機器である。
【0019】
[蓄電池]
蓄電池20は充放電により電力を蓄積したり放出したりする機能を持つ2次電池である。蓄電池20は、自家発電電源装置18から供給される電力の蓄積に使用される。自家発電電源装置18の出力する電力は不安定なため、蓄電池20にいったん蓄積してから使用する。また、自家発電電源装置18の出力する電力を蓄積する。送配電線路12から供給される電力の蓄積にも使用される。主として、割安な夜間電力を蓄積する。
【0020】
[充放電回路]
蓄電池20の充放電のために以下の回路を備えている。
第1充電回路22は、自家発電電源装置18の電力を受け入れて要求されている直流電力を出力し蓄電池20を充電する回路である。第2充電回路24は、宅内配線16の電力を受け入れて要求されている直流電力を出力し、蓄電池を充電する回路である。放電回路26は、蓄電池20の電力を受け入れて要求されている交流電力を出力し、宅内配線16に供給する回路である。
【0021】
第1充電回路22は、例えば、太陽光発電装置の出力する直流電圧を、蓄電池20の充電に適当な電圧に変換するDC−DCコンバータと、充電電流を制御する電流制御回路と、充電時間を制御するタイマー等を備える。第2充電回路24は、例えば、AC100ボルトの宅内配線16に接続して、蓄電池20の充電に適当な直流電圧に変換するAC−DCコンバータと、充電電流を制御する電流制御回路と、充電時間を制御するタイマー等を備える。放電回路26は、蓄電池20に接続して宅内配線16用の交流電圧を出力するDC−ACコンバータと過電流保護回路等を備える。
【0022】
[充放電制御]
図1に示したシステムは、例えば、HEMS(ホームエネルギマネージメントサービス)サーバにより制御されるとよい。HEMSサーバは、一般住宅等の建物内部のエネルギ供給量とエネルギ消費量とを詳細にモニタして、その結果をディスプレイ36に表示したり、例えば、エアコンの運転を制御して、適正温度に制御するといった機能を持つ。このHEMSサーバに、蓄電池20の充放電制御機能を付与することが好ましい。
【0023】
図1に示したHEMSサーバは、既知のコンピュータであって、演算処理装置30と記憶装置32とを備える。データ入力のための入力装置34と、演算処理結果を表示するためのディスプレイ36を備えている。また、HEMSサーバはネットワーク38に接続されて、外部情報を取得できるように構成されている。
【0024】
演算処理装置30の部分に示した各手段は、コンピュータプログラムによって機能する機能ブロックである。記憶装置32には、図2に例示したような、一日の電力消費量の時間推移を示す複数種類のベースパターンデータ58が記憶されている。ベースパターンデータ58は、どこの家庭でも利用できる標準値を初期値とし、該当する建物の過去の実績から取得されたものを、任意の数だけ用意しておく。
【0025】
ベースパターンデータ選択手段40は、記憶装置32から、対象となる日の電力消費量の予想に適するベースパターンデータ58を選択して読み出す機能を持つ。スケジュールデータ取得手段42は、建物の利用者が、少なくとも外出中か在宅中かを示すスケジュールデータ60を取得する機能を持つ。スケジュールデータ60は、例えば、入力装置34を使用して入力される。その内容は、後で図3を用いて詳述する。
【0026】
外部情報取得手段44は、自家発電電源装置18の発電量を変動させる外部要因となる情報を、ネットワーク38を通じて取得する機能を持つ。例えば、自家発電電源装置18が太陽光発電装置や風力発電装置の場合には、気象情報が重要な情報になる。気象情報から抽出するデータの種類は自家発電電源装置18の種類に応じて相違してよい。
【0027】
予想消費電力量計算手段46は、上記のベースパターンデータ58とスケジュールデータ60と外部情報に基づいて、対象となる日の一日の電力消費の時間推移を計算し、この計算結果を集計して、該当する日一日の総消費電力量を計算する機能を持つ。予想発電量計算手段48は、上記の外部情報に基づいて、自家発電電源装置18の対象となる日および前日の予想発電量を計算する機能を持つ。
【0028】
適正充電電力量計算手段50は、計算により求められた、対象となる日の予想消費電力量と同日の予想発電量とから、前日の蓄電池20の適正充電電力量を計算する機能を持つ。蓄電池充放電制御手段52は、建物の宅内配線16に電力を供給する蓄電池20に、計算により求められた適正充電電力量の電力が前日中に充電されるように充電を制御する機能を持つ。
【0029】
[ベースパターンデータ]
図2はベースパターンデータの一例を示す説明図である。
図の横軸は1日の時間経過を示し、縦軸は単位時間毎の電力消費量を示す。コンピュータに記憶されているのは、単位時間毎の電力消費量の数値リストである。建物の電力消費パターンは、建物の建設場所や利用者の家族構成、建物で常時使用される設備機器の種別等によりある程度固定的な特性をもつ。だから、一般家庭の場合には、家族構成が同じならベースパターンデータ58は類似する。これを標準値にするとよい。即ち、家族構成を入力したとき、標準値のベースパターンデータ58が記憶装置32から初期値として読み出される。
【0030】
ベースパターンデータ58の大きな変動要因に、日変動、曜日変動、季節変動、盆や正月等の特異日変動がある。日変動は、建物の利用者のスケジュールデータ60や外部情報により予測する。その他の変動については、複数のベースパターンデータ58を用意しておく。ベースパターンデータ選択手段40は、カレンダーデータを取得して、最適なベースパターンデータ58を選択する。即ち、曜日毎に、季節毎に、特異日毎に別々のベースパターンデータ58を記憶装置32に記憶しておき、予測対象日の日時を取得して、該当するベースパターンを読み出す。入力装置34を使用して、特異日であるかどうかを入力できるようにしてもよい。
【0031】
[スケジュールデータ]
図3は、スケジュールデータの取得方法説明図である。
図のHEMSサーバ28は、例えば、ローカルエリアネットワークやインターネットを通じて、携帯端末62やパーソナルコンピュータ64から取得する。即ち、建物の利用者(住宅の住人)のスケジュールデータを、任意のインタフェースを通じて取得する。蓄電池の充電管理だけのために利用者に毎日継続的にスケジュールデータの入力を要求するのは現実的でない。そこで、利用者が日常使用しているデータを自動的に取得するようにする例を示した。
【0032】
この実施例では、利用者が日常、自己の行動予定を入力するために使用するパーソナルコンピュータやモバイルフォン等の端末装置をマンマシンインタフェースに利用する。利用者端末装置に行動予定を入力すると,ネットワークを通じて自動的にスケジュールデータがHEMSサーバ28に転送される。
【0033】
例えば、リビングの壁にディスプレイ36を取り付けておく。テレビジョン受像機の画面でも構わない。ここに、HEMSサーバ28の出力するカレンダーデータを表示する。家族の外出予定を相互に連絡しあうためのものとして活用できる。また、この画面を見ながら図1に示した入力装置34を操作して、スケジュールデータ60を入力できるようにしてもよい。
【0034】
スケジュールデータ60は、少なくとも、各利用者が外出中か在宅中かを示すデータを含む。また、単に外出中か在宅中かだけではなく、その詳細予定を入力して利用してもよい。例えば、図3に示すように、外出の場合には、外出時刻や帰宅時刻、食事の要不要など、在宅の場合には、在宅中の行動予定、リビングで映画鑑賞、書斎でPC作業、キッチンでお菓子作りといった内容も入力するとよい。来客予定や食事や宿泊の有無や人数等を入力してもよい。
【0035】
[個人別の在宅中電力消費パターンデータ]
図4は、個人別の在宅中電力消費パターンデータの説明図である。
上記のようにして、家族全員のスケジュールデータが入力されたときには、各人について、図のような個人別の在宅中電力消費パターンデータを生成する。これも、初期値として標準値を用意しておき、実績により少しずつ実情に合わせていくとよい。図4の(a)は一日中在宅の場合の個人別在宅中電力消費パターンデータで、図4の(b)は昼間外出の場合の個人別在宅中電力消費パターンデータである。この個人別在宅中電力消費パターンデータを使用してベースパターンデータ58を補正する。
【0036】
家族全員の個人別在宅中電力消費パターンデータが比較的正確に得られた場合には、これらの総和を差し引いた共通の電力消費パターンがベースパターンデータ58であればよい。またあるいは、個人別在宅中電力消費パターンデータは、ベースパターンデータ58の一部を補正するための、例えば、各時間当たりの消費電力を1%〜10%の範囲で割り増しをする補正係数であってもよい。
【0037】
[外部情報]
図5は外部情報の取得方法説明図である。
外部情報は、現在の天候、気温、天気予報等、ベースパターンの変動要因を含む情報である。これは、図に示すように、ウェブサーバ66からインターネット等のネットワーク38を通じてHEMSサーバ28が自動的に取得するとよい。例えば、天気予報から、気温が平均気温を下回る場合、ベースパターンデータに一定の補正係数を乗算するだけで、補正が可能である。気温と補正係数とを関係付けたテーブルデータを用意しておくとよい。天候や気温が異なる毎に別々のベースパターンデータ58を記憶装置32に記憶させておき、天候や気温の情報に応じて、いずれかのベースパターンデータ58を選択するように利用してもよい。
【0038】
[予想消費電力量計算手段と適正充電電力量計算手段]
図6は、予想消費電力量と適正充電電力量の関係を示す説明図である。
適切なベースパターンデータあるいはスケジュールデータを加味したパターンデータが選択されていれば、予想消費電力量計算手段46は、一日分を時間積分することにより、該当する日の予想消費電力量を計算することができる。適正充電電力量計算手段50は、翌日の予想消費電力量と予想発電量の計算結果を取得する。
【0039】
そして、当日現在の蓄電池の蓄積電力量を取得する。例えば、図6(a)に示すように、翌日の予想発電量と当日終了時現在の蓄電池の蓄電電力量の合計値が翌日の予想消費電力量とほぼ等しくなるように、夜間電力による蓄電池の充電電力量を選定する。例えば、当日と翌日の予想発電量の合計値が当日と翌日の予想消費電力量の合計値を越えているときは、夜間電力による蓄電池の充電電力量をゼロにするとよい。
【0040】
なお、蓄電池をフル充電しても、翌日の予想消費電力量をまかなえない場合には、図6(b)に示すように、翌日の不足分は送配電線路により電力供給を受けることになる。図2や図4や図6に示した図や、これをもっと分かりやすく色分けをした図を、ディスプレイ36(図1)に表示すれば、利用者のエネルギ消費パタンを利用者に伝えてその最適化を促すことができる。
【0041】
また、適正充電電力量と、現在設備されている蓄電池20の充電可能な電力量の関係を表示するとよい。計算された適正充電電力量に対して、蓄電池20の充電可能な電力量が少ないときは、最も経済的な電力利用はできない。両者の関係がわかれば、利用者は、蓄電池20の増設計画を立てることができる。
【0042】
[ベースパターンデータの差し替え]
図7はベースパターンデータの差し替え方法説明図である。
利用者の過去の実績データ68aや68bを蓄積する。それらから既存のベースパターンデータ58aを補正して、新たなベースパターンデータ58bを生成して記憶装置に記憶させておくことが望ましい。毎日の電力消費の時間推移を示すデータは、利用者の参考のために、ディスプレイに表示したり、プリンタにより印刷出力してもよい。毎日取得される実績データは、既存の該当する曜日、季節、特異日のベースパターンデータと比較して、差分が一定範囲以下の場合には、既存のベースパターンデータを最適化するためのデータとして上記のように保存する。即ち、ベースパターンデータ差し替え手段は、より実績に即したベースパターンデータを保存し、既存のデータを補正して差し替えて、記憶装置32に記憶させる。差分が大きい場合には例外データとして破棄してもよいし、ベースパターンデータを最適化するためには相応しくないデータの例として蓄積しておいてもよい。
【0043】
以上のシステムにより、利用者の建物で消費される一日の総消費電力量を正確に予測計算し、自家発電電源装置18の予想発電量を計算して、蓄電池20の充電量を最適化制御することができる。これにより、最も廉価な自家発電電源装置18の電力を優先的に蓄電池20の充電に利用することができる。
【実施例2】
【0044】
図8は、蓄電池の充電制御動作例を示すフローチャートである。
まず、ステップS11では、入力装置34が利用者の建物の構成等の基礎データを受け入れて、ベースパターンデータ58の初期設定をする。同時に、予想対象日の日変動を考慮した複数のベースパターンデータ58を生成して記憶装置32に記憶させておく。その後、蓄電池の充電制御が開始されると、ベースパターンデータ選択手段40は、ステップS12で、予想対象日の曜日等を取得して、適切なベースパターンデータ58を選択して、記憶装置32から読み出す。
【0045】
ステップS13では、スケジュールデータ取得手段42が、スケジュールデータ60の取得をする。このときには、既に、建物の利用者全員のスケジュールデータ60が入力されているものとする。ステップS14では、外部情報取得手段44が、ネットワーク38を通じて外部情報(例えば、天気予報)の取得をする。ステップS15では、予想消費電力量計算手段46が、予想消費電力量計算をする。
【0046】
予想消費電力量計算手段46は、スケジュールデータ60を使用して図4に示した個人別の在宅中電力消費パターンデータを生成し、ベースパターンデータ58を補正する。さらに、天気予報のデータにより、ベースパターンデータ58を補正する。一方、ステップS16でも、この天気予報のデータを使用して、予想発電量計算手段48が自家発電電源装置18の予想発電量の計算をする。例えば、単位時間あたりの平均発電電力と、その時間帯の日照エネルギに応じた係数の積により、各時間帯の発電電力を求めて、一日分を積分すればよい。
【0047】
ステップS17では、適正充電電力量計算手段50が、適正充電電力量計算をする。この処理は図6を用いて説明したとおり、翌日の予想消費電力量から翌日の予想発電量と現在の蓄電池の蓄電電力量を差し引く処理である。ステップS18では、蓄電池20がこうして求められた適正充電電力量となるように、蓄電池充放電制御手段52が、第1充電回路22と第2充電回路24と放電回路26に対して、充電時間と放電時間の設定をし、ステップS19で、蓄電池充放電制御を実行する。
【0048】
ステップS20では、実績データ記録手段54がエネルギ消費実績から実績データを取得して、ステップS21でこれらを記憶装置32に記憶させる。ステップS22では、ベースパターンデータ差し替え手段56が、ベースパターンの差し替えが必要かどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS23の処理に移行し、ノーのときはステップS12に戻り、繰り返し処理を実行する。ステップS23では、図7で説明した要領で、差し替え処理を実行する。その後、ステップS11でベースパターンデータの初期制定処理をやりなおす。こうして蓄電池の充電制御を継続する。
【0049】
なお、上記の演算処理装置で実行されるコンピュータプログラムは、機能ブロックで図示した単位でモジュール化されてもよいし、複数のモジュールを組み合わせて一体化されてもよい。また、上記のコンピュータプログラムは、既存のアプリケーションプログラムに組み込んで使用してもよい。本発明を実現するためのコンピュータプログラムは、例えばCD−ROMのようなコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、任意の情報処理装置にインストールして利用することができ、ネットワークを通じてダウンロードすることもできる。
【符号の説明】
【0050】
10 蓄電池利用システム
12 送配電線路
14 分電盤
16 宅内配線
18 自家発電電源装置
20 蓄電池
22 第1充電回路
24 第2充電回路
26 放電回路
28 HEMSサーバ
30 演算処理装置
32 記憶装置
34 入力装置
36 ディスプレイ
38 ネットワーク
40 ベースパターンデータ選択手段
42 スケジュールデータ取得手段
44 外部情報取得手段
46 予想消費電力量計算手段
48 予想発電量計算手段
50 適正充電電力量計算手段
52 蓄電池充放電制御手段
54 実績データ記録手段
56 ベースパターンデータ差し替え手段
58 ベースパターンデータ
60 スケジュールデータ
62 携帯端末
64 パーソナルコンピュータ
66 ウェブサーバ
68 実績データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準値もしくは該当する建物の過去の実績から取得された、一日の電力消費の時間推移を示す複数種類のベースパターンデータを記憶した記憶装置と、
この記憶装置から、対象となる日の電力消費量の予想に適する前記ベースパターンデータを選択して読み出すベースパターンデータ選択手段と、
前記建物の利用者が、少なくとも外出中か在宅中かを示すスケジュールデータを取得するスケジュールデータ取得手段と、
自家発電電源装置の発電量を変動させる外部要因となる情報を、ネットワークを通じて取得する外部情報取得手段と、
前記ベースパターンデータと前記スケジュールデータと前記外部情報に基づいて、対象となる日の一日の電力消費の時間推移を計算し、この計算結果を集計して、該当する日一日の総消費電力量を計算する予想消費電力量計算手段と、
前記外部情報に基づいて、前記自家発電電源装置の対象となる日の予想発電量を計算する予想発電量計算手段と、
前記計算により求められた、対象となる日の予想消費電力量と同日の予想発電量とから、前日終了時の蓄電池の適正充電電力量を計算する適正充電電力量計算手段と、
前記建物の宅内配線に電力を供給する蓄電池に、前記計算により求められた適正充電電力量の電力が、前日中に充電されるように充電を制御する蓄電池充電制御手段を備えたことを特徴とする蓄電池利用システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池利用システムにおいて、
前記記憶装置には、前記ベースパターンデータは、日変動、曜日変動、季節変動、及び特異日変動に応じて異なるデータが記憶され、
前記ベースパターンデータ選択手段は、カレンダーを参照して、対象となる日のベースパターンデータを選択することを特徴とする蓄電池利用システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の蓄電池利用システムにおいて、
前記スケジュールデータは、利用者の使用する任意の端末装置からネットワークを通じて取得することを特徴とする蓄電池利用システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の蓄電池利用システムにおいて、
過去の電力消費の時間推移を示す実績データを、その変動要因となるデータとともに記憶装置に記憶させる実績データ記録手段と、
前記変動要因が近時する実績データにより、前記ベースパターンデータを差し替えるベースパターンデータ差し替え手段を備えたことを特徴とする蓄電池利用システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の蓄電池利用システムにおいて、
計算された適正充電電力量と蓄電池の充電可能な電力量とを表示するディスプレイを備えたことを特徴とする蓄電池利用システム。
【請求項6】
コンピュータを、
標準値もしくは該当する建物の過去の実績から取得された、一日の電力消費の時間推移を示す複数種類のベースパターンデータを記憶した記憶装置と、
この記憶装置から、対象となる日の電力消費量の予想に適する前記ベースパターンデータを選択して読み出すベースパターンデータ選択手段と、
前記建物の利用者が、少なくとも外出中か在宅中かを示すスケジュールデータを取得するスケジュールデータ取得手段と、
自家発電電源装置の発電量を変動させる外部要因となる情報を、ネットワークを通じて取得する外部情報取得手段と、
前記ベースパターンデータと前記スケジュールデータと前記外部情報に基づいて、対象となる日の一日の電力消費の時間推移を計算し、この計算結果を集計して、該当する日一日の総消費電力量を計算する予想消費電力量計算手段と、
前記外部情報に基づいて、前記自家発電電源装置の対象となる日および前日の予想発電量を計算する予想発電量計算手段と、
前記計算により求められた、対象となる日の予想消費電力量と同日の予想発電量とから、前日の蓄電池の適正充電電力量を計算する適正充電電力量計算手段と、
前記建物の宅内配線に電力を供給する蓄電池に、前記計算により求められた適正充電電力量の電力が、前日中に充電されるように充電を制御する蓄電池充電制御手段、
として機能させる蓄電池利用システム制御プログラム。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電池利用システム制御プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191700(P2012−191700A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51175(P2011−51175)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】