説明

蓄電池集合体制御システム

【課題】蓄電池集合体制御システムにおいて、複数の蓄電池制御単位を並列接続する際の電圧差をなくす処理を適切に行うことである。
【解決手段】蓄電池集合体制御システムは、1つの電力変換器の充放電メインバス28に、5つの蓄電池ユニット40が並列に接続される。蓄電池ユニット40はそれぞれ4つの蓄電池パック列44を含み、各蓄電池パック列44はスイッチ56を介して充放電メインバス28と接続される。サブコントローラ30は、当該蓄電池パック列44に対し無効化回路72が無効化処理を解除中である条件と、当該蓄電池パック列44に対応するスイッチ56のオン指令信号を出力できる状態である条件を満たす蓄電池パック列44が2以上となったときに、この条件を全て蓄電池パック列44のそれぞれにオン指令信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池集合体制御システムに係り、特に、並列接続された蓄電池制御単位の
間の電圧差をなくす処理が行われる蓄電池集合体制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力管理において、負荷の電力消費に合わせて、発電や送電を効率的に行うことが好ましい。負荷の電力消費が変動する場合、蓄電装置を用いて電力需給を平均化することができる。蓄電装置としては、リチウムイオン電池のような2次電池を用いることができるが、リチウムイオン電池等の2次電池は、単位セルと呼ばれる単位蓄電池の端子間電圧が1Vから4V程度で、その充放電電流容量も小さい。そこで、単位セルを複数個用いる組電池である蓄電池パックが用いられるが、負荷の電力消費によっては、その蓄電池パックの多数を直列接続あるいは並列接続して用いることが必要になる。
【0003】
ところで、蓄電池パックを互いに並列接続するときに、それぞれの蓄電池パックの電圧が異なっていると、電圧の高いほうから低い方へ電流が流れ、場合によっては過大な電流となることが生じる。
【0004】
例えば、特許文献1は、電圧均等化回路に関して、従来の鉛蓄電池よりも内部インピーダンスが低いリチウムイオン電池等を直接並列接続すると、製造のばらつきに起因するインピーダンスや接触抵抗の僅かな違いによって、列電池の一方に過大電流が流れる可能性を指摘している。そこで、複数の二次電池が接続される列電池を並列に接続した電力貯蔵装置において、各列電池の列電池情報に基づいて電圧調整を行うか否かが判定され、電圧調整が必要であるとされると、電圧調整手段から電圧調整のためのオフセット指令が出力されて、列電池のそれぞれに接続される電力変換器による充放電制御が行われることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−141970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
二次電池を並列接続するときの電圧差を解消するには、電圧均等化回路を用いればよいが、システム構成が複雑になる。蓄電池集合体の場合には、最初に複数の蓄電池を組み合わせるときに電圧差が生じているが、一旦相互に接続されて集合体になると、充放電を行っても、蓄電池自体が故障しない限り、蓄電池の間の電圧差はほとんど生じない。したがって、蓄電池を組み合わせて接続する際に、複数の蓄電池の間で順次電圧均等化処理を行えばよい。
【0007】
ところが、複数の蓄電池の間で順次電圧均等化処理を行うときに、大多数の蓄電池の間の電圧均等化処理が進んで、ごく一部の蓄電池がまだ電圧均等化処理が済んでいないときに、その電圧均等化処理が済んでいない蓄電池について、電圧均等化処理を行うときに問題が生じることがある。例えば、既に電圧均等化処理が済んでいる蓄電池と、まだ電圧均等化処理が済んでいない蓄電池との間に電圧差があると、電圧均等化処理を行うためにこれらをそのまま接続すると、その電圧差のために、電流が流れる。特に、まだ電圧均等化処理が済んでいない蓄電池の数が少ないと、その少ない数の蓄電池に電流が集中し、予期せぬ過大電流となることがある。
【0008】
本発明の目的は、複数の蓄電池制御単位を並列接続する際の電圧差をなくす処理を適切に行うことができる蓄電池集合体制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蓄電池集合体制御システムは、充放電メインバスに保護抵抗を介してそれぞれ並列接続されるとともに、充放電メインバスにスイッチを介してそれぞれ並列接続される複数の蓄電池制御単位と、複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が予め定められた第1閾値電圧差以下となるときに、該当するスイッチに対してオン指令信号を出力するサブコントローラと、充放電メインバスと複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が、第1閾値電圧差よりも大きい値を有する予め定められた第2閾値電圧差を超えるときに、当該蓄電池制御単位に対するサブコントローラからのオン指令信号を無効化する無効化処理を行う無効化回路と、を備え、サブコントローラは、複数の蓄電池制御単位のそれぞれについて、当該蓄電池制御単位に対し無効化回路が無効化処理を解除中である第1条件を満たすか否かと、かつ当該蓄電池制御単位に対しオン指令信号を出力できる状態である第2条件を満たすか否かを判断し、第1条件と第2条件とを満たす蓄電池制御単位が2以上となったときに、第1条件と第2条件とを満たす蓄電池制御単位の複数にオン指令信号をそれぞれ出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、蓄電池集合体制御システムは、複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が予め定められた第1閾値電圧差以下となるときに、該当するスイッチに対してオン指令信号を出力するサブコントローラと、充放電メインバスと複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が、第2閾値電圧差を超えるときに、当該蓄電池制御単位に対するサブコントローラからのオン指令信号を無効化する無効化処理を行う無効化回路とを備える。そして、サブコントローラは、複数の蓄電池制御単位のそれぞれについて、当該蓄電池制御単位に対し無効化回路が無効化処理を解除中である第1条件と、当該蓄電池制御単位に対しオン指令信号を出力できる状態である第2条件とを共に満たす蓄電池制御単位が2以上となるときに、初めて、第1条件と第2条件とを満たす蓄電池制御単位の複数にオン指令信号をそれぞれ出力する。このように、少なくとも2つ以上の蓄電池制御単位で電圧均等化処理を行うので、仮に電圧差があっても、1つの蓄電池制御単位で電圧均等化処理を行うことに比べて、電圧差によって流れる電流を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施の形態の蓄電池集合体制御システムの構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の蓄電池集合体制御システムにおける無効化回路の作用の様子を説明する図である。
【図3】本発明の課題を説明する図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の蓄電池集合体制御システムにおける電圧均等化処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、蓄電池としてリチウムイオン電池を説明するが、これ以外の2次電池であってもよい。例えばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等であってもよい。蓄電池集合体とするのは、負荷の必要電力に対応するための電圧と電流とを得るためであるので、蓄電池集合体を構成する単位蓄電池の数、単位蓄電池を組み合わせた蓄電池パックの数、蓄電池パックを組み合わせた蓄電池ユニットの数等は、蓄電池集合体制御システムの仕様に応じ適宜なものとできる。
【0013】
また、以下で、蓄電池集合体と接続される電力源として、太陽光発電電力と外部商用電力を説明するが、これ以外の電力源、例えば風力発電電力等であってもよい。また、以下で述べる抵抗値、電圧値等は、説明のための例示であり、蓄電池集合体制御システムの電力仕様等に応じ適宜変更が可能である。
【0014】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0015】
図1は、蓄電池集合体制御システム10の構成を示す図である。蓄電池集合体制御システム10は、複数の蓄電池を組み合わせた蓄電池集合体と、電力源と、負荷との間の電力管理を通して、蓄電池集合体の最適な充放電制御を行うシステムである。
【0016】
電力源として、外部商用電源12と、太陽光発電システム14を含む。外部商用電源12は、単相または三相の交流電力源であり、電力需給の変動に合わせて、水力発電、原子力発電、火力発電等の様々な発電方式で発電された電力を組み合わせて、外部の電力会社から供給される。太陽光発電システム14は、例えば、数MWの大規模なシステムである。負荷16は、ここでは工場の負荷が図示されている。工場の負荷としては、機械設備の他、一般照明、一般空調、厨房器具、サーバやPC等の事務機器、工場内空調等を含む。
【0017】
蓄電池集合体制御システム10において、蓄電池集合体の最適な充放電制御を行うため、図示されていないシステムコントローラによって、電力源側の供給電力情報データと、負荷側の負荷電力情報データと、蓄電池集合体側の蓄電池電力情報データとに基づいて、これらの電力管理全体に対する1つの充放電制御指令である全体充放電制御指令が生成される。全体充放電制御指令は、例えば「XXkWでYY秒間充電すること」、「電圧がZZVになるまでXXkW充電すること」等の指令である。
【0018】
マスタコントローラ20は、図示されていないシステムコントローラから受け取った1つの全体充放電制御指令に基づいて、HUB22を介して、電力変換器管理部24に集合体充放電制御指令を送信する機能を有する制御装置である。
【0019】
電力変換器管理部24は、8つの電力変換器26の動作状態を管理する管理装置である。電力変換器26は、外部商用電源12の交流電力と蓄電池の直流電力との間の電力変換、あるいは太陽光発電システム14の電圧と蓄電池の電圧との間の電圧変換、あるいは蓄電池の電圧と負荷16の電圧との間の電圧変換を行う機能を有し、双方向AC/DCコンバータ、双方向DC/DCコンバータ等のコンバータである。具体的には、実際に行われる変換の内容に応じて、用いられるコンバータの種類が選択される。
【0020】
電力変換器管理部24は、マスタコントローラ20からの集合体充放電指令に合わせるように、蓄電池集合体の全体を8つに分けて、その8つのそれぞれに1つの電力変換器26を割り当てて電力管理を行う管理装置である。図1では、蓄電池集合体の全体の内で、1つの電力変換器26に接続される蓄電池集合体が図示されている。1つの電力変換器26には、5つの蓄電池ユニット40が接続される。
【0021】
充放電メインバス28は、1つの電力変換器26と5つの蓄電池ユニット40を接続する電力バスで、5つの蓄電池ユニット40は、この充放電メインバス28に互いに並列接続される。具体的には、各蓄電池ユニット40は、スイッチ基板50を介して充放電メインバス28に接続される。ここで、スイッチ基板50は、サブコントローラ30によって制御される。このように、1つの蓄電池ユニット40には、スイッチ基板50とサブコントローラ30が付属するので、これらは、1つのラックにまとめられる。
【0022】
蓄電池ユニット40は、予め定められた個数の蓄電池パック42を直列接続した蓄電池パック列44を、予め定めた列数で並列に接続して構成される。図1の例では、5つの蓄電池パック42を直列接続して1つの蓄電池パック列44を形成し、その蓄電池パック列44を4列並列接続して、1つの蓄電池ユニット40が構成される。すなわち、1つの蓄電池ユニット40は、20つの蓄電池パック42から構成されることになる。なお、1つの蓄電池パック42は、312のセルと呼ばれる単位蓄電池から構成される。各単位蓄電池は、端子電圧が1Vから4Vのリチウムイオン電池である。
【0023】
なお、蓄電池パック列44を構成する5つの蓄電池パック42のそれぞれの端子間電圧はセル電圧の加算として、図示されていない電圧検出器によって検出される。また、蓄電池パック42の温度はパック温度として図示されていない温度検出器によって検出される。また、各蓄電池パック列44に流れる電流はパック列電流として、図示されていない電流検出器によって検出される、これらのデータは、その蓄電池ユニット40を管理するサブコントローラ30に伝送される。
【0024】
スイッチ基板50は、蓄電池ユニット40と、充放電メインバス28との間に配置される回路基板で、複数の保護抵抗54、複数のスイッチ56、サブスイッチ51を含む。
【0025】
保護抵抗54は、蓄電池ユニット40において4つ並列接続される蓄電池パック列44の間の電圧差を少なくするために設けられる抵抗素子である。具体的には、4つの蓄電池パック列44の間に電圧差があるときに、その電圧差に応じた電流が流れることで、各蓄電池パック列44の間の電圧差を少なくするために、各蓄電池パック列44の間に設けられる抵抗素子である。図1の例では、各蓄電池パック列44の充放電端子とサブバス52の間にそれぞれ直列に抵抗素子を配置し、これを保護抵抗54としてある。この場合には、隣接する蓄電池パック列44には、サブバス52を介して2つの保護抵抗54があることになる。この構成に代わって、例えば、隣接する蓄電池パック列44の充放電端子の間にそれぞれ1つの抵抗素子を配置してもよい。この場合には、この1つの抵抗素子が保護抵抗54として機能することになる。
【0026】
保護抵抗54は、各蓄電池パック列44の間の電圧差を少なくするためであるので、電圧差の目標電圧と、蓄電池パック列44の蓄電電力量をあまり減らさずに電圧差を少なくするために流せる電流値とで、その抵抗値を設定できる。一例を示すと、電圧差の目標電圧を1V、流せる電流値を300mA程度とすると、保護抵抗54の抵抗値を約3Ωとすることができる。蓄電池パック42の充放電特性は、例えば、33Aの1時間放電で端子電圧が約10V変化する。約300mAの電流は、約100時間で1Vの端子電圧変化に相当するので、過充放電による蓄電池パック42の性能低下をほとんど起こさずに、ゆっくりと、各蓄電池パック列44の電圧差が解消してゆくことができる。なお、サブスイッチ51は、充放電メインバス28とサブバス52との間に設けられ、通常はオン状態であるが、異常のときなど、必要に応じてオフすることができる手段として用いられる。
【0027】
スイッチ56は、蓄電池パック列44の間の電圧差が予め定めた閾値電圧差以下になったときに、その蓄電池パック列42を充放電メインバス28に接続するための素子である。スイッチ56は、各蓄電池パック列44の充放電端子と充放電メインバス28との間にそれぞれ1ずつ設けられる。場合によっては、充電と放電とを区別して、1つの蓄電池パック列44に対して2つずつスイッチを設けるものとしてもよい。ここでは上記の目標電圧を、例えば、閾値電圧差を±1Vとすることができる。なお、この閾値電圧差を、後述する無効化回路72の閾値電圧差と区別するため、以下では、第1閾値電圧差と呼ぶことにする。
【0028】
このように、蓄電池ユニット40においては、各蓄電池パック列44を単位として、保護抵抗54の機能を用いてそれぞれの蓄電池パック列44の充放電端子の電圧を揃え、閾値電圧差に収まったところでその蓄電池パック列44についてのスイッチ56をオンする制御が行われる。この観点から、各蓄電池パック列44を、蓄電池ユニット40における蓄電池制御単位と呼ぶことができる。
【0029】
サブコントローラ30は、蓄電池ユニット40を構成する4つの蓄電池パック列44のパック列電流データと、各蓄電池パック列44を構成する5つの蓄電池パック42のセル電圧とパック温度データを取得し、適当な伝送タイミングでマスタコントローラ20に伝送する機能を有する。また、各蓄電池パック列44を構成する5つの蓄電池パック42のセル電圧から、各蓄電池パック列44の電圧を算出して監視する機能を有する。
【0030】
サブコントローラ30は、さらに、スイッチ56の動作を制御する機能を有する。すなわち、上記のように、保護抵抗54の作用によって、各蓄電池パック列44の間の電圧差が少なくなって、予め定められた第1閾値電圧差以下となるときに、該当するスイッチ56をオンさせる。第1閾値電圧差としては、上記のように、±1Vとすることができる。オンさせる順序としては、例えば、電圧の高い蓄電池パック列44のスイッチ56から順に、とすることができる。この他に、予め定めた順序でオンさせるものとしてもよい。
【0031】
サブコントローラ30によるスイッチ56のオンによって、該当する蓄電池パック列44は、保護抵抗54を介さずに、直接充放電メインバス28に接続され、充放電メインバス28の電圧に一気になる。つまり、その蓄電池パック列44の充放電端子と、充放電メインバス28との間の電圧差はなくなる。これによって、その蓄電池パック列44は、充放電メインバス28を介して、電力変換器26の充放電に寄与することができるようになる。
【0032】
このように、サブコントローラ30は、その担当する蓄電池ユニット40に含まれる4つの蓄電池パック列44の間の電圧差をなくすためにスイッチ56をオンする制御を行うが、他の蓄電池ユニット40との間の電圧差については関与しない。そこで、蓄電池ユニット40の間の電圧差があまり大きくなることを防ぐために、サブコントローラ30のスイッチオン指令に対するハード的な保護が掛けられる。
【0033】
図2は、その様子を説明する図である。ここでは、1つの蓄電池ユニット40を取り出して、4つの蓄電池パック列44の電圧差をなくすためのスイッチ56周りの詳細な構成が示される。サブコントローラ30と、各スイッチ56との間には、それぞれ、無効化回路72が設けられる。無効化回路72は、所定の一定条件の下で、サブコントローラ30からのスイッチ56に対するオン指令70を無効化する処理を行うハードウェアの回路である。所定の一定条件は、充放電メインバス28と蓄電池パック列44の充放電端子との間の電圧差が所定の閾値電圧差を超えていることである。この閾値電圧差を、先ほどの第1閾値電圧差と区別して、以下では、第2閾値電圧差と呼ぶことにする。
【0034】
第1閾値電圧差が2つの蓄電池ユニット40の間の4つの蓄電池パック列44の間の電圧差に関するものであるのに対し、第2閾値電圧差は、他の蓄電池ユニット40との間の電圧差を考えるものである。したがって、第2閾値電圧差は、第1閾値電圧差よりも大きい値に設定される。例えば、上記のように第1閾値電圧差が±1Vであるときは、第2閾値電圧差を±3Vと設定することができる。
【0035】
サブコントローラ30によって行われる蓄電池パック列44の間の電圧差が第1閾値電圧差以下か否かは、ソフトウェア手段によって実行される。すなわち、蓄電池パック列44の充放電端子の電圧は、その蓄電池パック列44を構成する5つの蓄電池パック42の端子間電圧をサブコントローラ30が取得し、その値を加算して充放電端子の電圧を計算する。そして、計算された値を、予め定めた第1閾値電圧差の値と比較演算する。このように、演算処理によって行われた判断に基づいて、サブコントローラ30は、スイッチ56のオン指令70を出力する。
【0036】
これに対し、無効化回路72は、充放電メインバス28の電圧を数値ではなく、物理特性としての電圧そのもので取得し、また、蓄電池パック列44の充放電端子の電圧も数値ではなく、物理特性としての電圧そのもので取得し、この物理特性としての2つの電圧で、回路素子を動作させて、サブコントローラ30のオン指令70の信号がスイッチ56に伝達されるのを遮断する無効化処理を行う。
【0037】
図2では、充放電メインバス28の電圧をV0、4つの蓄電池パック列の電圧をそれぞれV1,V2,V3,V4で示した。無効化回路72は、各蓄電池パック列44にそれぞれ対応するスイッチ56ごとにそれぞれ設けられる。例えば、図2で、一番左側の蓄電池パック列44のスイッチ56に対応する無効化回路72には、電圧V0と電圧V1が入力される。図2で左から二番目の蓄電池パック列44のスイッチ56に対応する無効化回路72には、電圧V0と電圧V2が入力される。同様に、左から三番目の無効化回路72には電圧V0と電圧V3が入力され、一番右の無効化回路72には電圧V0と電圧V4が入力される。
【0038】
サブコントローラ30は、V1,V2,V3,V4の値について蓄電池ユニット40を構成する各蓄電池パック42の端子電圧から計算し、これらの間の電圧差を求める。例えば、V1を基準とすると、V1とV2,V3,V4の間の電圧差を求める。そして、それらの間の電圧差が第1閾値電圧差である±1V以下であれば、対応するスイッチ56をオンするオン指令70を出す。例えば、すなわち、V1=V2=V3=V4=250Vで揃っていれば、サブコントローラ30は、これら4つの蓄電池パック列44にそれぞれ対応する4つのスイッチ56にオン指令70を出すことになる。
【0039】
無効化回路72には、4つの蓄電池パック列44のそれぞれの充放電端子電圧であるV1,V2,V3,V4のいずれか1つと、充放電メインバス28の電圧V0とが入力される。、そして、入力された2つの電圧の電圧差が第2閾値電圧差を超えるときは、サブコントローラ30から各スイッチ56へのオン指令70を無効化する。例えば、上記の例で、V1=V2=V3=V4=250Vで揃っていたとして、充放電メインバス28の電圧がV0=245Vであれば、V0−V1=5Vで第2閾値電圧差を超えているので、図2で最も左側のスイッチ56に対するサブコントローラ30からのオン指令70が無効化される。同様に、V0−V2も、V0−V3も、V0−V4もいずれも5Vであるので、この場合は、サブコントローラ30から4つのスイッチ56に対するオン指令70がすべて無効化されることになる。
【0040】
すなわち、1つの蓄電池ユニット40の間で各蓄電池パック列44の間の電圧差が第1閾値電圧差以下となっていれば、サブコントローラ30からスイッチ56に対するオン指令70が出力される。その場合でも、その揃った電圧が充放電メインバス28の電圧との差が大きくて、第2閾値電圧差を超えるときには、無効化回路72によるハードウェア的保護が働き、オン指令70が無効化される。これによって、各蓄電池パック列44の充放電端子電圧と充放電メインバス28との間の電圧差が大きい状態でのスイッチ56のオンが防止される。このようにして、蓄電池パック列44と充放電メインバス28との間の過大な充放電電流の発生が防止される。
【0041】
図3は、上記の構成の場合でも、蓄電池パック列44と充放電メインバス28との間に過大な充放電電流が発生し得る状況を説明する図である。この図は、図1を簡略化した図で、サブコントローラ30、サブバス52、保護抵抗54の記載を省略してある。また、20個の各蓄電池パック列44を区別して、1から20の数字を付した。
【0042】
いま、5から20の数字を付した16個の各蓄電池パック列44について、スイッチ56がオンされて、既に充放電メインバス28に接続されているものとする。1から4の数字を付した各蓄電池パック列44のスイッチ56はまだオンしていない。そして、この4つの蓄電池パック列44の間の電圧差は既に揃っていて、各スイッチ56に対するオン指令70が出されているが、無効化回路72の無効化処理によって、オン指令70が無効化されているため、各スイッチがオンされていない状態である。このような状況としては、例えば、充放電メインバス28の電圧V0が245Vで、数字1から4の各蓄電池パック列44の電圧V1,V2,V3,V4の値がすべて250Vである場合である。
【0043】
ここで、電力変換器26からの充電等によって、充放電メインバス28の電圧V0が次第に上がってきて、V0=247Vになると、数字1から4の各蓄電池パック列44の充放電端子の電圧V1,V2,V3,V4とV0との間の電圧差が第2閾値電圧差以下となる。上記の説明では、4つの無効化回路72の無効化処理がいずれも解除されるので、サブコントローラ30から4つのスイッチ56に対するオン指令70のいずれもが有効になり、4つのスイッチ56がオンすることになる。
【0044】
ところで、4つの無効化回路72は、ハードウェアとしての回路であるので、ソフトウェア的な演算処理に比べて、その処理にばらつきが生じやすい。つまり、4つの無効化回路72は、すべて同じ特性を有していないことが多い。そこで、V1,V2,V3,V4とV0との間の電圧差が、いずれも実際には3Vであっても、4つの無効化回路72のすべてが無効化処理を解除しないことが生じ得る。具体的には、4つの無効化回路72の中で、ハードウェア的に第2閾値電圧差について最も小さい値で無効化処理が解除される無効化回路72が、最初にオン指令70の無効化処理を解除することが生じる。
【0045】
図3において、数字4を付した蓄電池パック列44についての無効化回路72が最初に無効化処理を解除し、他の3つの無効化回路72はまだ無効化処理を解除していないとする。その場合には、数字4を付した蓄電池パック列44のスイッチ56がオンし、他の3つの蓄電池パック列44のスイッチ56はオフしたままである。図3では、数字4を付した蓄電池パック列44のスイッチ56がオンしたことを、破線で示してある。
【0046】
この場合には、数字5から20を付した蓄電池パック列44についての16のスイッチ56が既にオンしているときに、1つのスイッチ56がオンすることが生じ得る。この場合に、第2閾値電圧差に相当する3Vの電圧差に応じて、数字4を付した1個の蓄電池パック列44と、数字5から20を付した16個の蓄電池パック列44との間に、突入電流が流れる。すなわち、数字4を付した蓄電池パック列44の電流は、数字5から20を付した蓄電池パック列44のそれぞれの影響を受けた突入電流が発生する。
【0047】
上記では、蓄電池パック列44に過大な突入電流が生じ得ることを説明したが、充放電メインバス28の電圧V0と蓄電池パック列44の電圧V1,V2,V3,V4との大小関係によって、過大な逆方向の電流となることもある。このように、上記構成では、無効化回路72のハードウェア的な特性ばらつきによって、場合によっては、蓄電池パック列44に過大な突入電流が流れることが生じ得る。これが本発明の解決すべき課題である。
【0048】
図4は、上記課題を解決するサブコントローラ30の処理手順を示すフローチャートである。この手順は、蓄電池集合体制御システム10における電圧均等化処理の手順を示すもので、各手順は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、電圧均等化処理プログラムを実行することで実現できる。一部をハードウェアで実現するものとしてもよい。以下では、主に図3の構成を用いて説明する。
【0049】
電圧均等化処理プログラムが立上ると、適当なサンプリング間隔で、既にオンしているスイッチ56があるか否かが判断される(S10)。図3の場合では、既に16個のスイッチ56がオンしているので、判断は肯定される。
【0050】
S10で判断が肯定されると、次に、オフしたままのスイッチ56に対応する蓄電池パック列44を選択する(S12)。S12は、オフしたままのスイッチ56に対応する蓄電池パック列44のそれぞれについて順番にS14以下のことを判断することを意味する。選択とは、1つの蓄電池パック列44についてS14以下の判断が済めば、次の蓄電池パック列44についてS14以下の判断を行うという繰り返しを意味している。
【0051】
S14からS20は、選択された1つの蓄電池パック列44について行われる処理手順である。まず、その蓄電池パック列44に対応する無効化回路72が無効化処理の解除中であるか否かが判断される(S14)。無効化処理の解除中とは、充放電メインバス28と、当該蓄電池パック列44の充放電端子との間の電圧差が、第2閾値電圧差以下であるとして、その無効化回路72が処理したことを意味する。S14の判断が否定されると、その蓄電池パック列44に対応する無効化回路72は無効化処理中であるので、S12に戻り、次の蓄電池パック列44についてS14の判断がなされる。
【0052】
S14の判断が肯定されると、次に、中間条件を満たすか否かが判断される(S16)。中間条件とは、S14の判断は無効化回路72のばらつきに左右されることがあるので、システムにとって安全側の保険のために、第2閾値電圧差と第1閾値電圧差の中間の電圧差を中間閾値電圧差として用いるものである。具体的には、充放電メインバス28と、当該蓄電池パック列44の充放電端子との間の電圧差が、中間閾値電圧差以下であるときに、中間条件を満たすとする。第2閾値電圧差を±3V、第1閾値電圧差を±1Vとして、中間閾値電圧差を±2Vとすることができる。
【0053】
S16の判断が否定されると、S12に戻り、次の蓄電池パック列44についてS14以下の判断がなされる。なお、S14は、安全側の保険のためであるので、場合によっては省略してもよい。
【0054】
S16の判断が肯定されると、次に、当該蓄電池パック列44について、オン指令70が出力可能であるか否かが判断される(S18)。具体的には、充放電メインバス28と、当該蓄電池パック列44の充放電端子との間の電圧差が、第1閾値電圧差以下であるか否かが判断される。S18の判断が否定されると、S12に戻り、次の蓄電池パック列44についてS14以下の判断がなされる。
【0055】
S18で判断が肯定されると、次に、S14、S16,S18の3つの条件を全て満たす蓄電池パック列44が2つ以上となったか否かが判断される(S20)。S12で最初に選択された蓄電池パック列44がS14、S16,S18の3つの条件を全て満たすとしても、まだ1つの蓄電池パック列44のみがS14、S16,S18の3つの条件を全て満たしているだけであるので、S20の判断は否定される。S18の判断が否定されると、S12に戻り、次の蓄電池パック列44についてS14以下の判断がなされる。
【0056】
これを繰り返して、S20の判断が肯定されると、ここで初めて、サブコントローラ30から、S14、S16,S18の3つの条件を全て満たす2つ以上の蓄電池パック列44の中の少なくとも複数に、スイッチ56のオン指令70が同時に出力される(S22)。
【0057】
このようにして、オン指令70の出力と、無効化回路72の無効化処理の解除とを関連付けることで、少なくとも2つのスイッチ56が同時にオンされる。したがって、図3で説明したように、1つのスイッチ56のみがオンして、1つの蓄電池パック列44の充放電電流が、他の蓄電池パック列44の充放電電流の影響を受ける突入電流状態を回避できる。図3の例の場合では、図4の処理を行うことで、突入電流が軽減される。S14において、2倍以上を3倍以上とすれば、さらに充放電電流の軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る蓄電池集合体制御システムは、複数の蓄電池を並列接続する蓄電池集合体の充放電制御に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
10 蓄電池集合体制御システム、12 外部商用電源、14 太陽光発電システム、16 負荷、20 マスタコントローラ、22 HUB、24 電力変換器管理部、26 電力変換器、28 充放電メインバス、30 サブコントローラ、38 充放電メインバス、40 蓄電池ユニット、42 蓄電池パック、42 蓄電池パック列、50 スイッチ基板、51 サブスイッチ、52 サブバス、54 保護抵抗、56 スイッチ、70 オン指令、72 無効化回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電メインバスに保護抵抗を介してそれぞれ並列接続されるとともに、前記充放電メインバスにスイッチを介してそれぞれ並列接続される複数の蓄電池制御単位と、
前記複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が予め定められた第1閾値電圧差以下となるときに、該当する前記スイッチに対してオン指令信号を出力するサブコントローラと、
前記充放電メインバスと前記複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が、前記第1閾値電圧差よりも大きい値を有する予め定められた第2閾値電圧差を超えるときに、当該蓄電池制御単位に対する前記サブコントローラからの前記オン指令信号を無効化する無効化処理を行う無効化回路と、
を備え、
前記サブコントローラは、
前記複数の蓄電池制御単位のそれぞれについて、
前記当該蓄電池制御単位に対し前記無効化回路が前記無効化処理を解除中である第1条件を満たすか否かと、かつ前記当該蓄電池制御単位に対し前記オン指令信号を出力できる状態である第2条件を満たすか否かを判断し、
前記第1条件と前記第2条件とを満たす前記蓄電池制御単位が2以上となったときに、前記第1条件と前記第2条件とを満たす前記蓄電池制御単位の複数に前記オン指令信号をそれぞれ出力することを特徴とする蓄電池集合体制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池集合体制御システムにおいて、
前記サブコントローラは、
前記複数の蓄電池制御単位のそれぞれについて、前記充放電メインバスと前記複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が、前記第2閾値電圧差よりも小さく、前記第1閾値電圧差よりも大きい中間閾値電圧差以下である中間条件を満たすか否かを判断する中間条件判断手段を有し、
前記第1条件と前記中間条件と前記第2条件とを満たす前記蓄電池制御単位が2以上となったときに、前記第1条件と前記中間条件と前記第2条件とを満たす前記蓄電池制御単位の複数にオン指令信号をそれぞれ出力することを特徴とする蓄電池集合体制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電池集合体制御システムにおいて、
前記複数の蓄電池制御単位のそれぞれは、複数の蓄電池パックを直列に接続した蓄電池パック列であり、
前記無効化回路は、前記複数の蓄電池パック列のそれぞれに設けられ、
前記サブコントローラは、予め定められた数の複数の前記蓄電地パック列を並列に接続して構成される蓄電池ユニットごとに設けられることを特徴とする蓄電池集合体制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄電池集合体制御システムにおいて、
前記サブコントローラは、
前記複数の蓄電池制御単位のそれぞれの間の電圧差が予め定められた第1閾値電圧差以下となるときに、電圧の高い前記蓄電池制御単位から順に、該当する前記スイッチに対してオン指令信号を出力することを特徴とする蓄電池集合体制御システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−205410(P2012−205410A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68312(P2011−68312)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】