説明

蓄電装置検査方法

【課題】複数のキャパシタモジュールからなる蓄電装置における不良キャパシタセルを簡便で効率的に発見する方法。
【解決手段】複数のキャパシタセルと並列に接続され、複数のキャパシタセルが満充電に達すると満充電信号を発する複数の並列モニタとからなるキャパシタモジュールより構成される蓄電装置の検査方法であり、キャパシタモジュールそれぞれの電圧を検出するステップと、キャパシタモジュールからの並列モニタ信号を検出するステップと、検出電圧値が所定の範囲内にあるときの並列モニタ信号検出回数をそれぞれのキャパシタモジュール毎に計数する正常検出計数ステップと、検出電圧値が所定の範囲外にあるときの並列モニタ信号検出回数をそれぞれのキャパシタモジュール毎に計数する異常検出計数ステップと、該異常検出計数ステップで検出された信号を発したキャパシタモジュールを不良キャパシタモジュールと判定するステップと、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のキャパシタモジュールからなる蓄電装置における不良キャパシタセルを見出すための蓄電装置検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大電流の充放電が可能な電気二重層キャパシタが注目されている。電気二重層キャパシタは、電極と電解液との界面においてイオンの分極によりできる電気二重層を利用したキャパシタであり、従来のキャパシタに比較して大容量の静電容量を充電できるとともに、急速充放電が可能であり、その応用が期待されている。この電気二重層キャパシタの用途としては、メモリバックアップ用や電気自動車のパワーアシスト用や電力貯蔵用蓄電池代替などがあり、小容量品から大容量品まで幅広く検討されている。本件出願人は、例えば複数の電気二重層キャパシタのセルを直列に接続し、各キャパシタセルを並列モニタで監視しつつ充放電を行う電子回路と組み合わせて構成したキャパシタ蓄電装置を、ECS(Energy Capacitor System)またはECaSS(Energy Capacitor Systems)(登録商標)として提案している。ここで、並列モニタは、複数の電気二重層キャパシタが直列に接続されたキャパシタバンクの各電気二重層キャパシタの端子間に接続され、キャパシタバンクの充電電圧が並列モニタの設定値を越えると充電電流をバイパスする装置である。
【0003】
上記並列モニタを備えたキャパシタバンクは、充電する際にキャパシタバンクの充電電圧が設定値以上に上昇しないように充電電流をバイパスして一定に保つので、キャパシタバンク内のすべての電気二重層キャパシタは、設定された電圧まで均等に充電され、電気二重層キャパシタの蓄積能力をほぼ100パーセント発揮させることができる。したがって、並列モニタは、キャパシタの特性のバラツキや残留電荷の大小がある場合にも、最大電圧の均等化、逆流防止、充電終止電圧の検出と制御などを行い、耐電圧いっぱいまで使えるようにするものとして、きわめて大きな役割を持ち、エネルギー密度の有効利用の手段として不可欠な装置である。このような並列モニタについては、特許文献1(特許第3306325号公報)等に開示されている。
【特許文献1】特許第3306325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなECSやECaSSにおいては、複数のキャパシタセルと並列モニタとであらかじめキャパシタモジュールを構成しておき、このキャパシタモジュールを基本構成単位として顧客に提供する形態が検討されている。このようなキャパシタモジュールにおいては、キャパシタセルの個数が異なるいくつかのバリエーションを用意しておき、顧客は、これらのキャパシタモジュールのバリエーションから選択し、適宜これらを組み合わせることによって自らの設計仕様に最適な蓄電装置を構成することができる。
【0005】
このようなキャパシタモジュールを複数用いて蓄電装置を構成したときにおいて、何らかの異常が検出されたとき、蓄電装置を構成するキャパシタモジュールが全体的に不良であることは極めてまれであり、キャパシタモジュールを構成する複数のキャパシタセルのうちのどれかが、不良であることが多い。ところが、複数のキャパシタモジュールによって蓄電装置を構成し、この蓄電装置に不具合が発生したときにどのキャパシタセルに問題があるかを見極める簡便で効率的な方法についての提案例は見あたらない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、複数のキャパシタと、該複数のキャパシタセルと並列に接続され、該複数のキャパシタセルが満充電に達すると満充電信号を発する複数の並列モニタとからなるキャパシタモジュールを、複数接続して構成した蓄電装置の検査を行う蓄電装置検査方法において、複数のキャパシタモジュールそれぞれの電圧を検出する電圧検出する電圧検出ステップと、複数のキャパシタモジュールからの並列モニタ信号を検出する信号検出ステップと、該信号検出ステップで並列モニタ信号を検出した際、検出電圧値が所定の範囲内にあるときの並列モニタ信号検出回数を、それぞれのキャパシタモジュール毎に計数する正常検出計数ステップと、該信号検出ステップで並列モニタ信号を検出した際、検出電圧値が所定の範囲外にあるときの並列モニタ信号検出回数を、それぞれのキャパシタモジュール毎に計数する異常検出計数ステップと、該異常検出計数ステップで検出された信号を発したキャパシタモジュールを不良キャパシタモジュールと判定する第1キャパシタモジュール判定ステップと、からなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の蓄電装置検査方法において、該正常検出計数ステップで検出されたそれぞれのキャパシタモジュール毎の並列モニタ信号検出回数の平均値と、一つのキャパシタモジュールの並列モニタ信号検出回数との差の絶対値が所定の範囲内にないときに、当該一つのキャパシタモジュールを不良キャパシタモジュールと判定する第2キャパシタモジュール判定ステップと、からなることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、該第1キャパシタモジュール判定ステップと該第2キャパシタモジュール判定ステップとで不良と判定された不良キャパシタモジュールに対して定電流で充電を行う定電流充電ステップと、当該不良キャパシタモジュールを構成するそれぞれのキャパシタセルの電圧検出するセル電圧検出ステップと、該定電流充電ステップによって該セル電圧検出ステップで検出されたそれぞれのキャパシタセルの電圧上昇幅を記録する上昇電圧幅記録ステップと、該上昇電圧幅記録ステップで記録されたそれぞれのキャパシタセルの平均値と、一つのキャパシタセルの上昇電圧幅との差の絶対値が所定の範囲内にないときに、当該一つのキャパシタセルを不良キャパシタセルと判定するキャパシタセル判定ステップと、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法によれば、キャパシタモジュールを複数用いて構成した蓄電装置の、複数のキャパシタモジュールのうちどのキャパシタモジュールに不良があるかを見極めた上で、さらに不良キャパシタモジュール中のどのキャパシタセルに不良があるかを段階的に検査するものであり、データロガーや充電装置などの簡単な構成により効率的に不良キャパシタセルを突き止めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。まず、蓄電装置を構成するキャパシタモジュールについて説明する。図1は、キャパシタモジュールのブロック構成を示す図である。図1において、MNはキャパシタモジュール、C1、C2、C3・・・Cnは単位キャパシタセル、pm1、pm2、pm3・・・pmnは並列モニタ、ORは論理和回路、をそれぞれ示している。このようなキャパシタモジュールMNは、単位キャパシタセルであるC1、C2、C3・・・Cnの直列接続をパッケージしたものである。また、キャパシタモジュールMNは、端子T−T’間に充電源や負荷を接続して、充放電を行うものである。単位キャパシタセルC1、C2、C3・・・Cnのそれぞれには並列モニタpm1、pm2、pm3・・・pmnが図示するように並列に接続されている。
【0011】
並列モニタpm1、pm2、pm3・・・pmnはそれぞれに並列接続されている単位キャパシタセルC1、C2、C3・・・Cnを監視するものであり、監視対象のキャパシタセルが満充電に達したときにf1信号、f2信号、f3信号・・・fn信号を発する。f1信号、f2信号、f3信号・・・fn信号は論理和回路ORで論理和がとられる。論理和回路ORの出力はキャパシタモジュールMN全体のFN信号としてモジュール外部に出力される。論理和回路ORはf1信号、f2信号、f3信号・・・fn信号からの論理和をとるので、このFN信号が出力されるということは、単位キャパシタセルC1、C2、C3・・・Cnのうちの少なくとも1つのキャパシタセルが満充電に達していることを意味する。
【0012】
次に、単位キャパシタセルC1、C2、C3・・・Cnのそれぞれに接続され、キャパシタセルを監視する並列モニタpm1、pm2、pm3・・・pmnについて説明する。図2は、キャパシタモジュールMNに内蔵される一つの並列モニタPMの回路構成を示す図である。図2は、キャパシタモジュールMNのうちの一つのキャパシタセルCに並列に接続される並列モニタMを抜き出して示したものであり、Trはトランジスタ、Rは抵抗、CMPはコンパレータ、Vrefは基準電圧をそれぞれ示している。
【0013】
以上の構成の並列モニタMの動作について説明する。基準電圧Vrefには、キャパシタセルCの満充電電圧(一般には、キャパシタセルCの定格電圧)が設定される。並列モニタPMは、コンパレータCMPにおいて、各キャパシタセルCの端子間(T−T’間)の電圧を、この基準電圧Vrefと比較・監視し、キャパシタセルCの電圧が基準電圧Vrefによる設定値を越えるとトランジスタTrをオンにして充電電流をバイパスするとともに、キャパシタセルCが満充電に達したことを並列モニタM外部に報知するFn信号を発するように構成されている。
【0014】
次に、本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法について説明する。まず本発明で検査対象とする蓄電装置について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法を説明する図である。図4において、M1、M2、M3はキャパシタモジュール、PM1、PM2、PM3はキャパシタモジュールM1、M2、M3のためのF信号発生手段、10はデータロガー、20は蓄電装置をそれぞれ示している。
【0015】
蓄電装置20は本例においては、キャパシタモジュールM1、M2、M3を3つ直列に接続したものであり、端子T−T’間に充電源や負荷を接続して、充放電を行うものである。ここで、キャパシタモジュールM1、M2、M3は全て同じ規格のモジュールであると仮定する。
【0016】
キャパシタモジュールM1、M2、M3は、前記のように複数の単位キャパシタセルからなるものである。図4において、蓄電装置20は3つのキャパシタモジュールによって構成する例について示しているが、本発明においては特に3つのキャパシタモジュールに限定することに意味はなく、本実施形態はあくまで理解しやすいように例示的に示したものである。
【0017】
キャパシタモジュールM1、M2、M3のそれぞれは、本実施形態においては不図示の3つの単位キャパシタセルからなるものとしてある。これも先ほどと同様に例示的に示すためにセル数を限定したものである。それぞれのキャパシタモジュールM1、M2、M3において、それぞれの単位キャパシタセルC1、C2、C3からは、満充電検出信号であるf1信号、f2信号、f3信号が発せられるようになっており、これをF信号発生手段PM1、PM2、PM3が受信する形式となっている。F信号発生手段PM1、PM2、PM3は、f1信号、f2信号、f3信号を一つでも受信すると、F信号を発生する構成であり、具体的にはf1信号、f2信号、f3信号の論理和をとる回路である。
【0018】
PM1、PM2、PM3はキャパシタモジュールM1、M2、M3のためのF信号発生手段であり、それぞれ満充電検出信号であるF1信号、F2信号、F3信号を発するようになっている。F1信号、F2信号、F3信号はキャパシタモジュールM1、M2、M3の満充電信号としてデータロガー10に入力される。
【0019】
データロガー10は、キャパシタモジュールM1の端子間の電圧V1、キャパシタモジュールM2の端子間の電圧V2、キャパシタモジュールM3の端子間の電圧V3、F1信号、F2信号、F3信号に係るデータを取得・記録する構成である。
【0020】
図3は、データロガーで取得・記録するデータ例を示す図である。図3において、横軸は時間経過、最上段は電圧、第2段目はF1信号出力タイミング、第3段目はF2信号出力タイミング、第4段目はF3信号出力タイミングをそれぞれ示している。図3に示す例においては、キャパシタモジュールM1のカウント値がNOK1=3、NNG1=0であり、キャパシタモジュールM2のカウント値がNOK2=2、NNG2=3であり、キャパシタモジュールM3のカウント値がNOK3=1、NNG3=0である。
【0021】
次に、図4のような蓄電装置20における検査方法について説明する。データロガー10において取得するデータの構成について説明する。なお、以下において、α、β(>0)は基準値からの許容ずれ電圧値を示している。また、基準として「3Vref」が用いられているのは、キャパシタモジュールが3つの単位キャパシタセルからなることによる。データロガーでは、取得した電圧データとF信号データに基づいて以下のようなカウント値を得る。
(キャパシタモジュールM1についてのカウント値)
3Vref−3α<V1<3Vref+3βのときのF信号のカウント値:NOK1
3Vref−3α<V1<3Vref+3β以外のときのF信号のカウント値:NNG1
(キャパシタモジュールM2についてのカウント値)
3Vref−3α<V2<3Vref+3βのときのF信号のカウント値:NOK2
3Vref−3α<V2<3Vref+3β以外のときのF信号のカウント値:NNG2
(キャパシタモジュールM3についてのカウント値)
Vref−3α<V3<Vref+3βのときのF信号のカウント値:NOK3
Vref−3α<V3<Vref+3β以外のときのF信号のカウント値:NNG3
NG1がカウントされた場合にはキャパシタモジュールM1が、また、NNG2がカウントされた場合にはキャパシタモジュールM2が、また、NNG3がカウントされた場合にはキャパシタモジュールM3が不良であると判定する。これは、3Vref−3α<V3<3Vref+3β以外のときF信号が発せられるのは明らかに異常であるからである。
【0022】
次に、F信号発生率の相対比較による判定を行う。以下のような計算においてAVG(x、y、z)はx、y、zの平均値を示す。また、Mは所定の基準値である。
(キャパシタモジュールM1についての判定)
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK1|≦Mの場合:キャパシタモジュールM1正常
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK1|>Mの場合:キャパシタモジュールM1不良
(キャパシタモジュールM2についての判定)
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK2|≦Mの場合:キャパシタモジュールM2正常
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK2|>Mの場合:キャパシタモジュールM2不良
(キャパシタモジュールM3についての判定)
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK3|≦Mの場合:キャパシタモジュールM3正常
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK3|>Mの場合:キャパシタモジュールM3不良
以上のような方法によって、本発明ではまず蓄電装置20におけるキャパシタモジュールの不良を発見するようにする。
【0023】
以上、キャパシタモジュールM1、M2、M3を直列に接続した蓄電装置20について説明したが、次にキャパシタモジュールを並列に接続した蓄電装置についても説明する。図5は、本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法を説明する図である。図5において、M1、M2、M3はキャパシタモジュール、PM1、PM2、PM3はキャパシタモジュールM1、M2、M3のためのF信号発生手段、10はデータロガー、20は蓄電装置をそれぞれ示している。
【0024】
蓄電装置20は本例においては、キャパシタモジュールM1、M2、M3を3つ並列に接続したものであり、端子T−T’間に充電源や負荷を接続して、充放電を行うものである。ここで、キャパシタモジュールM1、M2、M3は全て同じ規格のモジュールであると仮定する。
【0025】
直列の例でも示したとおり、キャパシタモジュールM1、M2、M3は、前記のように複数の単位キャパシタセルからなるものである。また、キャパシタモジュールM1、M2、M3のそれぞれは、本実施形態においては不図示の3つの単位キャパシタセルからなるものとしてある。
【0026】
それぞれのキャパシタセルM1、M2、M3からは、満充電検出信号であるf1信号、f2信号、f3信号が発せられるようになっており、これをF信号発生手段PM1、PM2、PM3が受信する形式となっている。F信号発生手段PM1、PM2、PM3は、f1信号、f2信号、f3信号を一つでも受信すると、F信号を発生する構成であり、具体的にはf1信号、f2信号、f3信号の論理和をとる回路である。
【0027】
PM1、PM2、PM3はキャパシタモジュールM1、M2、M3のためのF信号発生手段であり、それぞれ満充電検出信号であるF1信号、F2信号、F3信号を発するようになっている。F1信号、F2信号、F3信号はキャパシタモジュールM1、M2、M3の満充電信号として、データロガー10に入力される。
【0028】
並列接続の蓄電装置20の場合には、データロガー10は、キャパシタモジュールM1、キャパシタモジュールM2、キャパシタモジュールM3の共通の電圧Vに係るデータ及びF1信号、F2信号、F3信号に係るデータを取得・記録する構成となっている。
【0029】
次に、図5のような蓄電装置20における検査方法について説明する。データロガー10において取得するデータの構成について説明する。なお、以下において、α、β(>0)は基準値からの許容ずれ電圧値を示している。また、基準として「3Vref」が用いられているのは、キャパシタモジュールが3つの単位キャパシタセルからなることによる。データロガーでは、取得した電圧データとF信号データに基づいて以下のようなカウント値を得る。
(キャパシタモジュールM1についてのカウント値)
3Vref−3α<V<3Vref+3βのときのF信号のカウント値:NOK1
3Vref−3α<V<3Vref+3β以外のときのF信号のカウント値:NNG1
(キャパシタモジュールM2についてのカウント値)
3Vref−3α<V<3Vref+3βのときのF信号のカウント値:NOK2
3Vref−3α<V<3Vref+3β以外のときのF信号のカウント値:NNG2
(キャパシタモジュールM3についてのカウント値)
Vref−3α<V<Vref+3βのときのF信号のカウント値:NOK3
Vref−3α<V<Vref+3β以外のときのF信号のカウント値:NNG3
NG1がカウントされた場合にはキャパシタモジュールM1が、また、NNG2がカウントされた場合にはキャパシタモジュールM2が、また、NNG3がカウントされた場合にはキャパシタモジュールM3が不良であると判定する。これは、3Vref−3α<V3<3Vref+3β以外のときF信号が発せられるのは明らかに異常であるからである。
【0030】
次に、F信号発生率の相対比較による判定を行う。以下のような計算においてAVG(x、y、z)はx、y、zの平均値を示す。また、Mは所定の基準値である。
(キャパシタモジュールM1についての判定)
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK1|≦Mの場合:キャパシタモジュールM1正常
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK1|>Mの場合:キャパシタモジュールM1不良
(キャパシタモジュールM2についての判定)
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK2|≦Mの場合:キャパシタモジュールM2正常
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK2|>Mの場合:キャパシタモジュールM2不良
(キャパシタモジュールM3についての判定)
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK3|≦Mの場合:キャパシタモジュールM3正常
|AVG(NOK1、NOK2、NOK3)−NOK3|>Mの場合:キャパシタモジュールM3不良
以上のような方法によって、本発明ではまず蓄電装置20におけるキャパシタモジュールの不良を発見するようにする。
【0031】
以上の方法で蓄電装置20におけるキャパシタモジュールの不良を確認できた後、引き続いて不良キャパシタモジュールの解析を行う。以下、不良キャパシタモジュールの解析について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法において不良キャパシタモジュールの解析を説明する図である。図6において、Mbは単位キャパシタセルC1、C2、C3からなる不良キャパシタモジュール、dv1、dv2、dv3は単位キャパシタセルC1、C2、C3のそれぞれの電圧を検出する電圧検出手段、10は電圧検出手段dv1、dv2、dv3で検出した各電圧データを取得・記録するデータロガーを示している。
【0032】
不良キャパシタモジュールMbにおいて、どの単位キャパシタセルについて不良があるかについては、端子T−T’間に対して定電流充電を行い、単位キャパシタセル中の全てのキャパシタセルに対して均等に充電する。すなわち、不良キャパシタモジュールMbをt0からt1までの間に、所定の定電流I0にて充電する。このとき、データロガー10によって、キャパシタセルC1、C2、C3の電圧の変動を観測する。データロガー10によって記録された充電開始時(t0)における単位キャパシタセルC1、C2、C3の電圧を、V10、V20、V30とし、充電終了時(t1)における単位キャパシタセルC1、C2、C3の電圧を、V11、V21、V31とする。ただし、V11、V21、V31は、Vrefよりも小さい電圧でなければならない。
【0033】
ここで、ΔV1=V11−V10、ΔV2=V21−V20、ΔV3=V31−V30とし、
ΔVmax=MAX(ΔV1,ΔV2,ΔV3)、
ΔVmin=MIN(ΔV1,ΔV2,ΔV3)とする。
【0034】
なお、MAX(x,y,z)は、x、y、zのうちの最大値を示し、MIN(x,y,z)は、x、y、zのうちの最小値を示す。
【0035】
ΔVmaxとなったセルは容量が他のセルよりも少ない可能性があり、ΔVminとなったセルは漏れ電流が他のセルよりも大きい可能性があるので、次のような判定を行う。ここで、充電電流と充電時間とセル静電容量(公称値)から決まる電圧変化(=It/C)をΔVreとし、許容ずれ電圧値をγとする。
(キャパシタセルC1についての判定)
ΔVre―γ>ΔV1の場合:漏れ電流が大きい可能性がある。
ΔVre+γ<ΔV1の場合:静電容量が小さい(劣化している)か短絡の可能性がある。
ΔVre≦ΔV1≦ΔVre+γの場合:正常
(キャパシタセルC2についての判定)
ΔVre―γ>ΔV2の場合:漏れ電流が大きい可能性がある。
ΔVre+γ<ΔV2の場合:静電容量が小さい(劣化している)か短絡の可能性がある。
ΔVre≦ΔV2≦ΔVre+γの場合:正常
(キャパシタセルC3についての判定)
ΔVre―γ>ΔV3の場合:漏れ電流が大きい可能性がある。
ΔVre+γ<ΔV3の場合:静電容量が小さい(劣化している)か短絡の可能性がある。
ΔVre≦ΔV3≦ΔVre+γの場合:正常
以上、本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法によれば、キャパシタモジュールを複数用いて構成した蓄電装置の、複数のキャパシタモジュールのうちどのキャパシタモジュールに不良があるかを見極めた上で、さらに不良キャパシタモジュール中のどのキャパシタセルに不良があるかを段階的に検査するものであり、データロガーや充電装置などの簡単な構成により効率的に不良キャパシタセルを突き止めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】キャパシタモジュールのブロック構成を示す図である。
【図2】キャパシタモジュールMNに内蔵される一つの並列モニタPMの回路構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法において、データロガーで取得・記録するデータ例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態に係る蓄電装置検査方法において不良キャパシタモジュールの解析を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
10・・・データロガー、20・・・蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャパシタと、該複数のキャパシタセルと並列に接続され、該複数のキャパシタセルが満充電に達すると満充電信号を発する複数の並列モニタとからなるキャパシタモジュールを、複数接続して構成した蓄電装置の検査を行う蓄電装置検査方法において、
複数のキャパシタモジュールそれぞれの電圧を検出する電圧検出する電圧検出ステップと、
複数のキャパシタモジュールからの並列モニタ信号を検出する信号検出ステップと、
該信号検出ステップで並列モニタ信号を検出した際、検出電圧値が所定の範囲内にあるときの並列モニタ信号検出回数を、それぞれのキャパシタモジュール毎に計数する正常検出計数ステップと、
該信号検出ステップで並列モニタ信号を検出した際、検出電圧値が所定の範囲外にあるときの並列モニタ信号検出回数を、それぞれのキャパシタモジュール毎に計数する異常検出計数ステップと、
該異常検出計数ステップで検出された信号を発したキャパシタモジュールを不良キャパシタモジュールと判定する第1キャパシタモジュール判定ステップと、
からなることを特徴とする蓄電装置検査方法。
【請求項2】
該正常検出計数ステップで検出されたそれぞれのキャパシタモジュール毎の並列モニタ信号検出回数の平均値と、一つのキャパシタモジュールの並列モニタ信号検出回数との差の絶対値が所定の範囲内にないときに、当該一つのキャパシタモジュールを不良キャパシタモジュールと判定する第2キャパシタモジュール判定ステップと、
からなることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置検査方法。
【請求項3】
該第1キャパシタモジュール判定ステップと該第2キャパシタモジュール判定ステップとで不良と判定された不良キャパシタモジュールに対して定電流で充電を行う定電流充電ステップと、
当該不良キャパシタモジュールを構成するそれぞれのキャパシタセルの電圧検出するセル電圧検出ステップと、
該定電流充電ステップによって該セル電圧検出ステップで検出されたそれぞれのキャパシタセルの電圧上昇幅を記録する上昇電圧幅記録ステップと、
該上昇電圧幅記録ステップで記録されたそれぞれのキャパシタセルの平均値と、一つのキャパシタセルの上昇電圧幅との差の絶対値が所定の範囲内にないときに、当該一つのキャパシタセルを不良キャパシタセルと判定するキャパシタセル判定ステップと、
からなることを特徴とする請求項2記載の蓄電装置検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−76127(P2008−76127A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253759(P2006−253759)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【特許番号】特許第3969670号(P3969670)
【特許公報発行日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(393013560)株式会社パワーシステム (127)
【Fターム(参考)】