説明

蓄電装置用負極、および蓄電装置

【課題】より容量の大きな負極活物質を提供する。また、小型化が可能な蓄電装置を提供する。
【解決手段】負極活物質として、アモルファスPAHsと、キャリアイオン吸蔵金属、Sn化合物、キャリアイオン吸蔵合金、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上と、の混合物を用いる。アモルファスPAHsの理論容量はグラファイト系炭素材料の理論容量を大きく上回る。そのためアモルファスPAHsを用いることで、グラファイト系炭素材料を用いる場合よりも前記負極活物質を大容量とすることができる。さらに、キャリアイオン吸蔵金属、Sn化合物、キャリアイオン吸蔵合金、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上をアモルファスPAHsに混合することで、アモルファスPAHsのみの場合よりも前記負極活物質の容量を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置用負極、および該負極を有する蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題への関心が高まるなか、ハイブリッド自動車用電源等に使用できる二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電装置の開発が盛んである。その候補として、エネルギー性能の高いリチウム(Li)イオン二次電池やLiイオンキャパシタなどの蓄電装置が注目されている。Liイオン二次電池は、小型でも大容量の電気を蓄えられるため、携帯電話やノート型パーソナルコンピュータなどの携帯情報端末には既に搭載され、製品の小型化などに一役買っている。
【0003】
蓄電装置の基本構成は、正極と負極との間に電解質を介在させた構成である。正極及び負極としては、それぞれ、集電体と、集電体上に設けられた活物質と、を有する構成が知られている。例えばLiイオン二次電池は、Liイオンを吸蔵及び放出することができる材料を活物質として用いる。
【0004】
蓄電装置の特性を向上させるため、様々な面からのアプローチが図られている。例えば蓄電装置用負極活物質の検討もその一つである。負極活物質として主流のグラファイト系炭素材料は理論容量が372mAh/gであり、既に理論容量に近い値で実用化されている。そのため、より大きな容量(充電容量)をもつ活物質が要求されている。
【0005】
蓄電装置の負極活物質として用いたとき、グラファイト系炭素材料より大きな容量を持つ材料の一つとして、半金属、半金属化合物、金属または金属化合物を含む材料がある。たとえば珪素(Si)はグラファイト系炭素材料より高い容量を持つことが知られており、特許文献1には、グラファイト系炭素材料に加えて、繊維状炭素材料、珪素および珪素化合物を用いたLiイオン二次電池の負極が開示されている。また特許文献2には、グラファイト系炭素材料および金属−炭素複合系材料を用いたLiイオン二次電池が開示されている。
【0006】
しかしながら、さらなる蓄電装置の小型化の要求に伴い、より容量の大きな負極活物質が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−182512号公報
【特許文献2】特開2009−105046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の一態様では、より容量の大きな負極活物質を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、負極活物質として、アモルファスPAHs(polycyclic aromatic hydrocarbons:多環芳香族炭化水素)と、キャリアイオン吸蔵金属、キャリアイオン吸蔵合金、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上と、の混合物を用いることとした。なお、本明細書等において、キャリアイオン吸蔵金属とは、蓄電装置におけるキャリアイオンを吸蔵および放出することが可能な金属をいう。同様に、キャリアイオン吸蔵合金とは、蓄電装置におけるキャリアイオンを吸蔵および放出することが可能な合金をいう。
【0010】
アモルファスPAHsの理論容量は1116mAh/g、実験的な容量は680mAh/gであり、グラファイト系炭素材料の理論容量372mAh/gを大きく上回る。そのためアモルファスPAHsを用いることで、グラファイト系炭素材料を用いる場合よりも負極活物質を大容量とすることができる。
【0011】
さらに、大容量の材料であるアモルファスPAHsと、キャリアイオン吸蔵金属、キャリアイオン吸蔵合金、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上と、を混合することで、アモルファスPAHsのみの場合よりも負極活物質は容量を増加させることができる。
【0012】
本発明の一態様は、アモルファスPAHsと、キャリアイオン吸蔵金属、キャリアイオン吸蔵合金、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上を含む負極活物質と、集電体と、を含む蓄電装置用負極である。
【0013】
またキャリアイオン吸蔵金属は、Sn、Al、Zn、またはBiのいずれか一であってもよい。またキャリアイオン吸蔵合金は、Sn−M合金(MはFe、Co、Mn、V、またはTi)で表される合金のいずれか一であってもよい。また金属化合物としては、Sn化合物またはキャリアイオンが減少された状態(脱キャリアイオン状態)の正極材料として用いられる金属化合物を用いることができる。Sn化合物としては、SnO、Sn、またはSnPBOいずれか一であってもよい。またキャリアイオンが減少された状態(脱キャリアイオン状態)の正極材料として用いられる金属化合物としてはSnPOClCoO、NiO、MnO、またはFePOのいずれか一であってもよい。
【0014】
また上記において、キャリアイオンは、LiイオンまたはNaイオンのいずれか一であってもよい。
【0015】
またアモルファスPAHsは、球状であってもよい。
【0016】
また金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上が、アモルファスPAHsの該表面に付着していてもよい。
【0017】
またアモルファスPAHsに対して、金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上が、1重量%以上50重量%以下の範囲で含有されていてもよい。
【0018】
また本発明の一態様は、上記の負極と、正極と、電解質を含む電解液と、を有することを特徴とする蓄電装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様により、より容量の大きな負極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】負極活物質および負極の一例の模式図。
【図2】蓄電装置の一形態を説明するための平面図および断面図。
【図3】蓄電装置の応用の形態を説明するための図。
【図4】負極活物質の一例の走査型電子顕微鏡写真。
【図5】負極活物質の一例の走査型電子顕微鏡写真。
【図6】負極の一例の評価結果を示す図。
【図7】負極の一例の評価結果を示す図。
【図8】負極の一例の評価結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書などにおいて開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
なお、図面などにおいて示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面などに開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である蓄電装置用の負極活物質およびその作製方法について、図1を用いて説明する。
【0024】
<負極活物質>
以下に図1(A)を用いて負極活物質100の一例について説明する。負極活物質100は、アモルファスPAHs101と、金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一からなる微粒子102を有する。さらに複数の微粒子102が凝集した二次粒子103を有していてもよい。
【0025】
アモルファスPAHs101としては、H/C比(炭素と水素の原子数比)が0.05以上0.5以下のPAHsを用いる。以下、炭素と水素の原子数比をH/C比という。H/C比が0.05以上0.5以下のアモルファスPAHsとして、たとえばポリアセン系材料、ハードカーボン系材料等を用いることができる。
【0026】
ポリアセン系材料は、グラファイト系炭素材料に比べて大容量(850mAh/g程度)である。またハードカーボン系材料も、グラファイト系炭素材料に比べて大容量(400〜700mAh/g程度)であり、また放電終了電圧まで均一に電圧が降下していくという放電特性を有する。そのためこれらを負極活物質に用いることでエネルギー密度の大きな蓄電装置とすることができ好ましい。
【0027】
またアモルファスPAHs101は球状であると、他の負極構成要素との接触面積のばらつきが少なくなる。そのため、負極活物質層における抵抗の偏りが少なくなり好ましい。また、球状の材料は搬送時の摩耗が少なく、高密度充填が容易であり、他の負極構成要素と混合した場合の流動性を向上させることができ好ましい。具体的には粒径100μm以下のアモルファスPAHs101とすることが好ましい。
【0028】
なお、本明細書等において球状とは、厳密な球状である必要はない。たとえば、略球状(例えば最も短い径が最も長い径の70%以上100%未満)、ゆがんだ球状、表面に突起を持つ球状、および楕円球状等を含む。
【0029】
本実施の形態ではアモルファスPAHs101として、球状のポリアセン系材料を用いることとする。
【0030】
上記のアモルファスPAHs101に、金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOを混合する。
【0031】
混合する金属としては、キャリアイオン吸蔵金属を用いる。また混合する金属化合物としては、キャリアイオン吸蔵合金、または金属化合物を用いる。
【0032】
キャリアイオンとしては、Liイオン、ナトリウム(Na)イオンをはじめとするアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ベリリウム(Be)イオンまたはマグネシウム(Mg)イオン等を用いることができる。Liイオンをキャリアイオンに用いることで、メモリー効果が小さく、エネルギー密度が高く、充放電容量が大きく、出力電圧が高いといった特徴を持つ蓄電装置とすることができ好ましい。またNaイオンは資源量が豊富であるため、キャリアイオンに用いると蓄電装置の製造コストを低減することができ好ましい。本実施の形態では、キャリアイオンとしてLiイオンを用いることとする。
【0033】
混合するキャリアイオン吸蔵金属としては、キャリアイオンを吸蔵する性質を持つ金属、たとえばSn、Al、Zn、またはBiを用いることができる。
【0034】
混合するキャリアイオン吸蔵合金としては、キャリアイオンを吸蔵する性質を持つ合金、たとえばSn−M(MはFe、Co、Mn、V、またはTi)で表される合金を用いることができる。
【0035】
混合する金属化合物としては、Sn化合物またはキャリアイオンが減少された状態(脱キャリアイオン状態)の正極材料として用いられる金属化合物を用いることができる。Sn化合物としては、たとえばSnO、Sn、SnPBO、またはSnPOClを用いることができる。またキャリアイオンが減少された状態(脱キャリアイオン状態)の正極材料として用いられる金属化合物としては、蓄電装置の正極活物質として用いることのできる物質のうち、キャリアイオンが存在しない場合でも安定な物質、たとえばCoO、NiO、MnO、NiMnOまたはFePOを用いることができる。
【0036】
微粒子102は、金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOからなる粒子である。微粒子102は、キャリアイオンとの反応の効率を高めるため、たとえば粒径を1μm以下とすることが好ましい。
【0037】
金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOの微粒子102はアモルファスPAHs101の外表面に付着していてもよいし、付着していなくてもよい。また金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOの微粒子102は二次粒子103を形成していてもよい。二次粒子103は、アモルファスPAHs101の外表面に付着していてもよいし、付着していなくてもよい。ただし金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOの微粒子102は、凝集せずにアモルファスPAHs101に付着していることがより好ましい。微粒子102は、凝集した二次粒子103よりも比表面積が大きく、キャリアイオンと反応しやすいためである。微粒子102がアモルファスPAHs101と付着していると、二次粒子103を形成しにくくなる。
【0038】
さらに混合する金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOが、アモルファスPAHs101に対して1重量%以上50重量%以下の範囲で含有されることが好ましく、1重量%以上30重量%以下の範囲で含有されることがより好ましい。混合する金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOが少なすぎれば、蓄電装置を大容量にする効果が低下するが、多すぎる場合負極活物質の電気伝導度が低くなりすぎてしまうため好ましくない。本実施の形態では、アモルファスPAHs101に対して1重量%以上30重量%以下のSiOを混合することとする。
【0039】
<負極>
以下に図1(B)および図1(C)を用いて、本発明の一態様に係る蓄電装置用の負極200の一例について説明する。
【0040】
図1(B)の負極200は、負極集電体130上に、負極活物質100、導電助剤120および図1(B)には図示しないが、バインダを有している。
【0041】
負極集電体130には、銅(Cu)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)またはステンレスなどの導電材料を箔状、板状又は網状などの形状したものを用いることができる。
【0042】
導電助剤120には、蓄電装置中で化学変化を起こさない電子伝導性材料を用いる。例えば、グラファイト、炭素粒子、炭素繊維など、Cu、ニッケル(Ni)、Al若しくは銀(Ag)などの金属材料又はこれらの混合物の粉末や繊維などを用いることができる。図1(B)の負極200では、炭素粒子の一つであるアセチレンブラックを用いることとする。
【0043】
バインダは負極活物質100、導電助剤120および負極集電体130の間に存在し、これらを接着している。バインダにはバインダとしては、澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロースなどの多糖類や、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムなどのビニルポリマー、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテルなどがある。本実施の形態では、PVdFを用いることとする。
【0044】
なお、負極活物質層にキャリアイオンをプレドープしてもよい。キャリアイオンにLiイオンを用いる場合、プレドープ方法としては、スパッタリング法により負極活物質層表面にLi層を形成すればよい。また、負極活物質層の表面にLi箔を設けることでも、負極活物質層にLiをプレドープすることができる。
【0045】
また図1(C)のように、導電助剤120およびバインダに代えて、グラフェン又は多層グラフェン121を用いてもよい。グラフェン又は多層グラフェン121を用いることで、キャリアイオンの吸蔵および放出に伴って生じる負極活物質100の膨張及び収縮が与える影響(負極活物質100の微粉化及び負極活物質層の剥離)を抑制することができる。また、グラフェン又は多層グラフェン121はキャリアイオンを吸蔵し負極活物質としても機能するため、より大容量の負極とすることができる。
【0046】
<負極活物質の作製方法>
以下に負極活物質の作製方法の一例を説明する。
【0047】
まず、アモルファスPAHsの材料を用意する。アモルファスPAHs101としてポリアセン系材料を用いる場合、ポリアセン系材料の原料には、たとえばフェノール樹脂を用いることができる。ポリアセン系材料を用いると、後述する焼成において、焼成温度を低くすることができるため生産性が向上する。
【0048】
アモルファスPAHs101としてハードカーボン系材料を用いる場合、ハードカーボン系材料の原料には、たとえばフルフリルアルコール樹脂、ショ糖やセルロース等の糖を用いることができる。
【0049】
なお、アモルファスPAHs101に付着した有機不純物を除去するため、洗浄を行うことが好ましい。例えば、有機溶剤中で超音波洗浄を行ってもよい。
【0050】
次に、アモルファスPAHs101の材料に、金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOを混合する。金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOについては、図1(A)についての記載を参酌することができる。
【0051】
本実施の形態では、アモルファスPAHs101としてポリアセン系材料を用い、ポリアセン系材料の原料として球状フェノール樹脂を用いることとする。これにSiOの微粒子を混合することとする。
【0052】
混合方法は特に限定されないが、例えば乾式混合で行うことができる。なお球状フェノール樹脂を用いる場合、その形状を維持できる方法で行うことが好ましく、例えば回転ローラーによる混合を行うことが好ましい。
【0053】
次に、アモルファスPAHs101の材料と、金属、金属化合物、Si、Sb、またはSiOの混合物を焼成する。焼成は不活性雰囲気で行うことが好ましく、たとえば窒素雰囲気下で行うことができる。また焼成の温度および時間は、アモルファスPAHs101の材料の炭化に十分な条件で行えばよい。たとえばフェノール樹脂を用いる場合、焼成温度は600℃以上800℃以下とすることができる。方法は特に限定されないが、マッフル炉などを用いて行うことができる。
【0054】
上記の方法によって、本発明の一態様である負極活物質100を作製することができる。
【0055】
<負極の作製方法>
以下に負極活物質100を用いた負極200の作製方法の一例について説明する。
【0056】
まず、負極活物質100、導電助剤120およびバインダを、溶媒を用いて混合し、スラリーを作製する。溶媒は特に限定されないが、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの有機溶媒を用いることができる。
【0057】
導電助剤120およびバインダに代えて、グラフェン又は多層グラフェン121を用いてもよい。なお本明細書において、グラフェンとは、sp結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。また、多層グラフェンとは、2乃至100のグラフェンが積み重なっているものであり、多層グラフェンには、30原子%以下の酸素、水素等、炭素以外の元素が含まれていてもよい。また15原子%以下の炭素と水素以外の元素が含まれていてもよい。なお、グラフェン及び多層グラフェンは、Li、Na、カリウム(K)などのアルカリ金属を添加したものでもよい。
【0058】
次にスラリーを負極集電体130に塗布する。負極集電体130と負極活物質100との密着性を向上させるため、スラリーを塗布する前に、アンカーコート剤を塗布してもよい。また負極活物質100を含むスラリーは、図1(B)および(C)のように負極集電体130の一方の面に塗布してもよいが、両方の面に塗布してもよい。
【0059】
次に、負極集電体130とスラリーを乾燥させ、負極200を所望の形に形成した後、さらに乾燥させる。
【0060】
上記の方法によって、本発明の一態様である負極200を作製することがでる。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態では、図2を用いて本発明の一態様に係る蓄電装置の一例について説明する。
【0062】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、少なくとも、正極、負極、セパレータ、電解液で構成される。当該負極は、実施の形態1に記載の負極である。
【0063】
電解液は、電解質塩を含む非水溶液又は電解質塩を含む水溶液である。当該電解質塩は、キャリアイオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Beイオン、又はMgイオンを含む電解質塩であればよい。アルカリ金属イオンとしては、例えば、Liイオン、Naイオン、又はKイオンがある。アルカリ土類金属イオンとしては、例えばカルシウム(Ca)イオン、ストロンチウム(Sr)イオン、又はバリウム(Ba)イオンがある。本実施の形態において、当該電解質塩は、Liイオンを含んだ電解質塩(以下、含Li電解質塩という)とする。
【0064】
上記構成とすることで、二次電池又はキャパシタとすることができる。また、電解質塩を用いず、溶媒のみを電解液として用いることで、電気二重層キャパシタとすることができる。
【0065】
ここでは、蓄電装置ついて図面を参照して説明する。
【0066】
図2(A)に蓄電装置351の構造の例を示す。また、図2(B)は、図2(A)の一点鎖線X−Yの断面図である。
【0067】
図2(A)に示す蓄電装置351は、外装部材353の内部に蓄電セル355を有する。また、蓄電セル355に接続する端子部357、359を有する。外装部材353は、ラミネートフィルム、高分子フィルム、金属フィルム、金属ケース、プラスチックケース等を用いることができる。
【0068】
図2(B)に示すように、蓄電セル355は、負極363と、正極365と、負極363及び正極365の間に設けられるセパレータ367と、外装部材353中に満たされる電解液369とで構成される。
【0069】
負極363は、実施の形態1に記載の負極である。負極集電体371は、端子部359と接続される。また、正極集電体375は、端子部357と接続される。
【0070】
また、端子部357及び端子部359は、それぞれ一部が外装部材353の外側に導出されている。
【0071】
正極365は、正極集電体375及び正極活物質層377で構成される。正極活物質層377は、正極集電体375の一方又は両方の面に形成される。また、正極365には正極集電体375及び正極活物質層377の他にバインダ及び導電助剤等が含まれていてもよい。
【0072】
なお、本実施の形態では、蓄電装置351の外部形態として、密封された薄型蓄電装置を示しているが、これに限定されない。蓄電装置351の外部形態として、ボタン型蓄電装置、円筒型蓄電装置、角型蓄電装置など様々な形状を用いることができる。また、本実施の形態では、正極、負極、及びセパレータが積層された構造を示したが、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0073】
正極集電体375には、Al又はステンレスなどの導電材料を箔状、板状又は網状などの形状したものを用いる。また、別途基板上に成膜することにより設けられた導電層を剥離して正極集電体375として用いることもできる。
【0074】
正極活物質層377は、LiFeO、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiFePO、LiCoPO、LiNiPO、LiMnPO、V、MnO、その他のLi化合物を材料として用いることができる。なお、キャリアイオンが、Liイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、Beイオン又はMgイオンの場合には、正極活物質層377として、前記Li化合物におけるLiの代わりに、アルカリ金属(例えば、Na又はKなど)、アルカリ土類金属(例えば、Ca、Sr又はBaなど)、Be又はMgを用いてもよい。例えばキャリアイオンがNaイオンの場合、NaNi0.5Mn0.5を用いることができる。
【0075】
また、正極365は、正極集電体375上に正極活物質層377を塗布法又は物理気相成長法(例えばスパッタリング法)で形成することで作製できる。塗布法を用いる場合は、上記列挙した正極活物質層377の材料に導電助剤(例えばアセチレンブラック)やバインダ(例えばPVDF)などを混合させてペースト化し、正極集電体375上に塗布して乾燥させて、正極365を形成する。このとき必要に応じて正極365を加圧成形するとよい。
【0076】
また、正極活物質層377は、導電助剤及びバインダの代わりにグラフェン又は多層グラフェンを正極活物質と混合させてもよい。
【0077】
導電助剤及びバインダの代わりにグラフェン又は多層グラフェンを用いることで、正極365中の導電助剤及びバインダの含有量を低減させることできる。つまり、正極365の重量を低減させることができ、結果として、負極の重量あたりにおける蓄電装置の充放電容量を増大させることができる。
【0078】
なお、厳密には正極または負極の「活物質」とは、キャリアであるイオンの吸蔵および放出に関わる物質のみを指す。ただし本明細書では、塗布法を用いて活物質層を形成した場合、便宜上、活物質層の材料、すなわち本来「活物質」である物質に、導電助剤やバインダなどを含めて活物質層と呼ぶこととする。
【0079】
電解液369は、上記したように電解質塩を含む非水溶液又は電解質塩を含む水溶液である。特に、Liイオン二次電池では、キャリアイオンであるLiイオンを移送することが可能で、且つLiイオンが安定して存在することが可能である含Li電解質塩を用いる。含Li電解質塩の例としては、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSONなどがある。なお、キャリアイオンをLi以外のアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンとする場合には、電解液369の溶質として、アルカリ金属塩(例えば、Na塩又はK塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、Ca塩、Sr塩又はBa塩など)、Be塩又はMg塩などを用いることができる。例えばキャリアイオンとしてNaイオンを用いる場合は、溶質(電解質塩)としてNaPF、NaClO等を用いることができる。
【0080】
また、電解液369は、電解質塩を含む非水溶液とすることが好ましい。つまり、電解液369の溶媒は、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランなどが挙げられ、これらの一又は複数を用いることができる。さらに、非プロトン性有機溶媒として、一のイオン液体又は複数のイオン液体を用いてもよい。イオン液体は、難燃性及び難揮発性であることから、蓄電装置351の内部温度が上昇した際に蓄電装置351の破裂又は発火などを抑制でき、安全性を高めることが可能となる。
【0081】
また、電解液369として、電解質塩を含み、且つゲル化された高分子材料を用いることで、漏液性を含めた安全性が高まり、蓄電装置351の薄型化及び軽量化が可能となる。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド又はフッ素系ポリマーなどがある。
【0082】
さらに、電解液369としては、LiPOなどの固体電解質を用いることができる。
【0083】
セパレータ367としては、絶縁性の多孔体を用いる。例えば、紙、不織布、ガラス繊維、またはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンといった合成繊維、セラミックス等で形成されたものを用いればよい。ただし、電解液369に溶解しない材料を選ぶ必要がある。
【0084】
本発明の一態様に係る蓄電装置をLiイオンキャパシタとする場合には、正極活物質層377の代わりに、Liイオン及びアニオンの一方又は双方を可逆的に吸蔵・放出できる材料を用いればよい。当該材料としては、活性炭、グラファイト、導電性高分子、ポリアセン系材料などがある。
【0085】
本発明の一態様に係る負極活物質を用いることで、大容量の蓄電装置とすることができる。
【0086】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態又は実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0087】
(実施の形態3)
本発明の一態様に係る蓄電装置は、電力により駆動する様々な電気機器および電子機器の電源として用いることができる。
【0088】
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電気機器および電子機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、タブレット型端末、電子書籍、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫や透析装置等の医療用電気機器および電子機器などが挙げられる。また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器および電子機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
【0089】
なお、上記電気機器および電子機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための蓄電装置(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器および電子機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器および電子機器への電力の供給を行うことができる蓄電装置(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電気機器および電子機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器および電子機器への電力の供給と並行して、電気機器および電子機器への電力の供給を行うための蓄電装置(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
【0090】
図3に、上記電気機器および電子機器の具体的な構成を示す。図3において、表示装置1000は、本発明の一態様に係る蓄電装置1004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置1000は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体1001、表示部1002、スピーカー部1003、蓄電装置1004等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置1004は、筐体1001の内部に設けられている。表示装置1000は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置1004に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置1004を無停電電源として用いることで、表示装置1000の利用が可能となる。
【0091】
表示部1002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(FieldEmission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0092】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0093】
図3において、据え付け型の照明装置1100は、本発明の一態様に係る蓄電装置1103を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置1100は、筐体1101、光源1102、蓄電装置1103等を有する。図3では、蓄電装置1103が、筐体1101及び光源1102が据え付けられた天井1104の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置1103は、筐体1101の内部に設けられていても良い。照明装置1100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置1103に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置1103を無停電電源として用いることで、照明装置1100の利用が可能となる。
【0094】
なお、図3では天井1104に設けられた据え付け型の照明装置1100を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井1104以外、例えば側壁1105、床1106、窓1107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0095】
また、光源1102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0096】
図3において、室内機1200及び室外機1204を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置1203を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機1200は、筐体1201、送風口1202、蓄電装置1203等を有する。図3では、蓄電装置1203が、室内機1200に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置1203は室外機1204に設けられていても良い。或いは、室内機1200と室外機1204の両方に、蓄電装置1203が設けられていても良い。エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置1203に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機1200と室外機1204の両方に蓄電装置1203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置1203を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0097】
なお、図3では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
【0098】
図3において、電気冷凍冷蔵庫1300は、本発明の一態様に係る蓄電装置1304を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫1300は、筐体1301、冷蔵室用扉1302、冷凍室用扉1303、蓄電装置1304等を有する。図3では、蓄電装置1304が、筐体1301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫1300は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置1304に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置1304を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫1300の利用が可能となる。
【0099】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0100】
また、電気機器および電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫1300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉1302、冷凍室用扉1303の開閉が行われない夜間において、蓄電装置1304に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉1302、冷凍室用扉1303の開閉が行われる昼間において、蓄電装置1304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0101】
図3において、タブレット型端末1400は、本発明の一態様に係る蓄電装置1403を用いた電子機器の一例である。具体的に、タブレット型端末1400は、筐体1401、筐体1402、蓄電装置1403等を有する。筐体1401および筐体1402はそれぞれタッチパネル機能を有する表示部を有し、指等の接触により表示部の表示内容を操作することができる。またタブレット型端末1400は、筐体1401および筐体1402の表示部を内側にして折りたたむことができ、小型化するとともに表示部を保護することが可能である。本発明の一態様に係る蓄電装置1403を用いることで、タブレット型端末1400の小型化および長時間のモバイル使用が可能となる。
【0102】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態又は実施例に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例1】
【0103】
本実施例では、本発明の一態様である蓄電装置用の負極活物質を実際に作製し、その特性評価を行った結果について、図4乃至図8を用いて説明する。
【0104】
<負極活物質の作製>
本実施例では、アモルファスPAHsの原料として、球状フェノール樹脂(マリリン HF−008、群栄化学工業製)を用いた。粒度分布計で平均粒子径を測定したところ、9.6μmであった。
【0105】
上記のアモルファスPAHsの原料に、SiOを混合した。SiOとして、粒子径10〜20nmのSiOナノパウダ(アルドリッチ製)を用いた。
【0106】
まず、球状フェノール樹脂に付着した有機不純物を除去するため、アセトン中で超音波洗浄を行った。
【0107】
次に、洗浄した球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを添加し、回転ローラーにより乾式混合した。添加量は下記の表1のように、球状フェノール樹脂5gに対して、SiOナノパウダを0wt%添加(0g〔参照例〕)、1wt%添加(0.05g)、10wt%添加(0.50g)、20wt%添加(1.00g)および30wt%添加(1.50g)とした。
【0108】
【表1】

【0109】
次に、球状フェノール樹脂とSiOナノパウダの混合物を焼成し、負極活物質とした。焼成にはマッフル炉を用い、窒素雰囲気下(N 5L/分)、700℃にて10時間行った。焼成後の重量収率を表1に示す。
【0110】
上記のように作製した負極活物質の走査型電子顕微鏡写真を図4および図5に示す。図4(A)はSiOナノパウダを0wt%添加〔参照例〕した負極活物質、図4(B)は球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを1wt%添加した負極活物質、図5(A)は球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを20wt%添加した負極活物質、図5(B)は球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを30wt%添加した負極活物質である。図4(B)、図5(A)および図5(B)において、球状フェノール樹脂の外表面にSiOナノパウダが付着している状態が観察された。
【0111】
<負極の作製>
上記の負極活物質を用いて負極を作製した。負極の材料として負極活物質に加えて、導電助剤としてアセチレンブラック、バインダとしてPVdF、集電体としてCu箔を用いた。負極活物質、アセチレンブラック、PVdFの配合率は、負極活物質を82wt%、アセチレンブラックを8wt%、PVdFを10wt%とした。
【0112】
まず、NMPを溶媒に用いて、負極活物質とPVdFをホモジナイザーで混合した。これにアセチレンブラックを加えてさらに混合した。さらにNMPで粘度を調整し、スラリーとした。Cu箔集電体にアンカーコート剤を1〜2μm程度塗布した後、スラリーを塗布した。
【0113】
次に、Cu箔集電体とスラリーを、通風乾燥機を用いて70℃にて15分乾燥した。これを直径16.15mmの円形に打ち抜き、真空炉を用いて170℃にて10時間乾燥させ、負極とした。
【0114】
上記のように作製した負極の厚みと密度を、表2に示す。表2のように各条件において電極厚、密度とも同程度である負極を作製することができた。
【0115】
【表2】

【0116】
<負極の評価>
上記のように作製した負極について、充放電容量および効率を測定し、充放電特性の評価を行った。
【0117】
充放電特性の評価のために、作用極として上記のように作製した負極を用い、対極として直径15mmのLi金属を用いてセルを作製した。セパレータにはガラス繊維濾紙、電解液には1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)をエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合液(体積比3:7)に溶かしたものを用いた。
【0118】
充電は、駆動方式CCCV(定電流−定電圧)、電流値0.2C(1.3mA)、下限電圧1mV、終了電流10μAで行った。放電は、駆動方式CC(定電流)、電流値0.2C(1.3mA)、上限電圧2Vで行った。
【0119】
充放電特性の評価の結果を図6乃至図8および表3に示す。それぞれ図6は球状フェノール樹脂のみ(0wt%添加〔参照例〕)、図7は球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを1wt%添加、図8は球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを30wt%添加した負極活物質を用いた負極の充放電特性である。測定は全てサンプル数2で行った。縦軸に電圧を、横軸に容量を示す。
【0120】
【表3】

【0121】
図6の球状フェノール樹脂のみ(0wt%添加〔参照例〕)の場合、最大で充電容量は1076.7mAh/g、放電容量は433.2mAh/g、効率は40.8%であった。
【0122】
それに対して、図7の球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを1wt%添加した場合、最大で充電容量は1116.6mAh/g、放電容量は467.6mAh/g、効率は42.3%であった。
【0123】
また、図8の球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを30wt%添加した場合、最大で充電容量は1730.0mAh/g、放電容量は633.2mAh/g、効率は39.4%であった。
【0124】
上記の結果から、球状フェノール樹脂にSiOナノパウダを添加することで、充電容量および放電容量が向上することが明らかとなった。またSiOナノパウダを1wt%添加した場合より30wt%添加した場合の方が、より充電容量および放電容量が向上することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0125】
100 負極活物質
101 アモルファスPAHs
102 微粒子
103 二次粒子
120 導電助剤
121 多層グラフェン
130 負極集電体
200 負極
351 蓄電装置
353 外装部材
355 蓄電セル
357 端子部
359 端子部
363 負極
365 正極
367 セパレータ
369 電解液
371 負極集電体
375 正極集電体
377 正極活物質層
1000 表示装置
1001 筐体
1002 表示部
1003 スピーカー部
1004 蓄電装置
1100 照明装置
1101 筐体
1102 光源
1103 蓄電装置
1104 天井
1105 側壁
1106 床
1107 窓
1200 室内機
1201 筐体
1202 送風口
1203 蓄電装置
1204 室外機
1300 電気冷凍冷蔵庫
1301 筐体
1302 冷蔵室用扉
1303 冷凍室用扉
1304 蓄電装置
1400 タブレット型端末
1401 筐体
1402 筐体
1403 蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファスPAHsと、
キャリアイオン吸蔵金属、Sn化合物、キャリアイオン吸蔵合金、金属化合物、Si、Sb、またはSiOのいずれか一以上を含む負極活物質と、
集電体と、を含む蓄電装置用負極。
【請求項2】
前記キャリアイオン吸蔵金属は、Sn、Al、Zn、またはBiのいずれか一である、
請求項1に記載の蓄電装置用負極。
【請求項3】
前記Sn化合物は、SnO、Sn、SnPBO、またはSnPOClのいずれか一である、
請求項1に記載の蓄電装置用負極。
【請求項4】
前記キャリアイオン吸蔵合金は、SnM(MはFe、Co、Mn、V、またはTi)で表される合金のいずれか一である、
請求項1に記載の蓄電装置用負極。
【請求項5】
前記金属化合物は、CoO、NiO、MnO、またはFePOのいずれか一である、
請求項1に記載の蓄電装置用負極。
【請求項6】
前記キャリアイオン吸蔵金属又は前記キャリアイオン吸蔵合金のキャリアイオンは、LiイオンまたはNaイオンのいずれか一である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の蓄電装置用負極。
【請求項7】
前記アモルファスPAHsは、球状である、
請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の蓄電装置用負極。
【請求項8】
前記キャリアイオン吸蔵金属、前記金属化合物、前記Si、前記Sb、または前記SiOのいずれか一以上が、前記アモルファスPAHsの外表面に付着している、
請求項1乃至請求項7に記載の蓄電装置用負極。
【請求項9】
前記アモルファスPAHsに対して、前記キャリアイオン吸蔵金属、前記金属化合物、前記Si、前記Sb、または前記SiOのいずれか一以上が、1重量%以上50重量%以下の範囲で含有されている、
請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の蓄電装置用負極。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9に記載の負極と、
正極と、
電解質を含む電解液と、
を有することを特徴とする蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−65554(P2013−65554A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189127(P2012−189127)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】