蓄電装置用電極及び蓄電装置
【課題】 電極面内での温度分布のバラツキを抑制することのできる蓄電装置用電極を提供する。
【解決手段】 イオン伝導層(14)を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極(1)であって、集電体(11)と、集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層(12、13)とを有し、該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、上記他の領域における電流密度よりも低くなるように、電極層の構成(例えば、活物質の量)を電極層中の位置に応じて異ならせる。
【解決手段】 イオン伝導層(14)を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極(1)であって、集電体(11)と、集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層(12、13)とを有し、該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、上記他の領域における電流密度よりも低くなるように、電極層の構成(例えば、活物質の量)を電極層中の位置に応じて異ならせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池やキャパシタ等の蓄電装置に用いられる蓄電装置用電極および、この蓄電装置用電極を備えた蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ノートパソコンや携帯電話等の携帯型電子機器の電源として広く使用されており、電気自動車等の動力用電源としても用いられている。そして、電池性能の劣化を抑制するために、様々な提案がなされている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0003】
ここで、特許文献1に記載の二次電池用電極では、二次電池内の温度変化による熱応力を緩和するために、基体としての集電体上に、電極層としての複数の微小セルを形成している。
【0004】
また、特許文献1では、集電体上に形成された複数の微小セルにおける導電剤の量を異ならせることで、二次電池用電極上の温度分布を均一にさせたものが記載されている。具体的には、集電体の中心部に位置する微小セルにおける導電剤の含有量を最も少なくし、集電体の端部に位置する微小セルにおける導電剤の含有量を最も大きくしている。
【特許文献1】特開2005−11660号公報(図1,2,11等)
【特許文献2】特開2005−209411号公報
【特許文献3】特開2000−90980号公報
【特許文献4】特開2001−15146号公報
【特許文献5】特開2006−12703号公報
【特許文献6】特開2000−195556号公報
【特許文献7】特開2005−174691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の二次電池用電極では、集電体の表面において、微小セルが形成された領域と、微小セルが形成されていない領域とが存在する。このような構成では、微小セルが形成されていない領域において電流が流れないために、二次電池のエネルギ効率が低下してしまう。
【0006】
また、各微小セルの面積は、集電体の面積に比べて極めて小さいため、二次電池用電極の製造工程や、二次電池用電極を備えた二次電池の配置等において、微小セルが集電体から剥がれやすくなってしまう。ここで、集電体上に複数の微小セルを形成した場合には、この二次電池用電極を曲げやすくなるものの、二次電池用電極を屈曲させた際の応力によって微小セルが集電体の表面から剥がれやすくなってしまう。
【0007】
一方、導電剤の量を異ならせることによって各微小セルの抵抗値を異ならせた構成においては、各微小セル内での抵抗値は一定である。このため、各微小セルが形成された領域内において温度変化が生じる場合には、この温度変化のバラツキを抑制することはできない。
【0008】
また、各微小セル中の導電剤の量を異ならせても、各微小セル中の活物質の量が略等しい場合には、二次電池の充放電時に使用されない活物質が存在してしまう。すなわち、導電剤の量が少ない微小セルでは、この微小セル中に含まれるすべての活物質が二次電池の充放電に用いられないことがある。ここで、活物質の材料は比較的高価であるため、二次電池の充放電に用いられない活物質が存在する場合には、二次電池用電極のコストアップとなってしまう。
【0009】
そこで、本発明の主な目的は、電極層が集電体から剥がれ易くなるのを抑制するとともに、電極面内での温度分布のバラツキを抑制することのできる蓄電装置用電極及び、これを備えた蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極であって、集電体と、集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有し、該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、上記他の領域における電流密度よりも低くなるように、電極層の構成を電極層中の位置に応じて異ならせることを特徴とする。
【0011】
ここで、電極層中の活物質の量を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。例えば、電極の中心部側における電極層中の活物質の量を、電極の端部側における電極層中の活物質の量よりも少なくすることができる。また、複数の電極を積層した構成においては、各電極面内で互いに直交する2つの方向(例えば、後述の実施例におけるX方向およびY方向)において、中心部側における電極層中の活物質の量を、端部側における電極層中の活物質の量よりも少なくすることができる。
【0012】
具体的には、電極層のうち、電極の中心部側に位置する領域の厚さを、電極の端部側に位置する領域の厚さよりも薄くすることができる。ここで、電極層の厚さを、電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少させることができる。そして、電極層中の活物質の密度を略等しくすることができる。
【0013】
また、電極の中心部側における電極層中の活物質の密度を、電極の端部側における電極層中の活物質の密度よりも低くすることができる。ここで、活物質の密度を、電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少させることができる。そして、電極層の厚さを略等しくすることができる。
【0014】
さらに、電極層中の活物質の粒径を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。例えば、電極の中心部側における電極層中の活物質の粒径を、電極の端部側における電極層中の活物質の粒径よりも大きくすることができる。また、電極層が導電剤を含んでいる場合には、電極層中の導電剤の密度を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0015】
また、電極層が固体電解質を含んでいる場合には、電極層中の固体電解質の密度を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。さらに、電極層が、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでいる場合には、電極層中における複数の固体電解質の混合比を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0016】
一方、本発明の蓄電装置は、上述した蓄電装置用電極を、正極及び負極の少なくとも一方として用いることを特徴とする。
【0017】
ここで、上述した、異なる厚さの電極層を有する蓄電装置用電極を用いる場合においては、この蓄電装置用電極に接触するイオン伝導層のうち、蓄電装置用電極の中心部側に対応した領域の厚さを、蓄電装置用電極の端部側に対応した領域の厚さよりも厚くすることができる。なお、イオン伝導層として、好ましくは、高分子固体電解質又は無機固体電解質を用いることができる。
【0018】
また、本発明は、イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置であって、各電極は、集電体と、集電体上に形成され、活物質を含む電極層とを有しており、中心層側及び外層側に位置する電極における電流密度が、他の位置の電極における電流密度よりも低くなるように、複数の電極における活物質の量が互いに異なることを特徴とする。
【0019】
ここで、各電極において、放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、他の領域における電流密度よりも低くなるように、活物質の量を電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0020】
なお、イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極において、集電体と、集電体上に形成され、活物質を含む電極層とを有し、該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、上記他の領域における電流密度よりも低くなるように、活物質の材料又は、活物質を構成する複数の材料の混合比(体積比又は重量比)を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0021】
また、本発明は、複数のイオン伝導層を有し、これらのイオン伝導層が複数の電極を介して積層された蓄電装置であって、各電極は、集電体と、該集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有しており、蓄電装置の積層方向において放熱性が他の位置よりも低い位置(例えば、積層方向における中心層側)に配置された第1の電極の抵抗値が、他の位置に配置された第2の電極の抵抗値よりも大きくなるように、第1及び第2の電極における電極層の構成が互いに異なることを特徴とする。
【0022】
ここで、第1の電極における電極層中の活物質の粒径を、第2の電極における電極層中の活物質の粒径よりも大きくすることができる。また、各電極の電極層が、導電剤を含んでいる場合には、第1の電極における電極層中の導電剤の密度を、第2の電極における電極層中の導電剤の密度よりも低くすることができる。
【0023】
さらに、各電極の電極層が、固体電解質を含んでいる場合には、第1の電極における電極層中の固体電解質の密度を、第2の電極における電極層中の固体電解質の密度よりも低くしたり、第1及び第2の電極における電極層中の固体電解質の材料を、互いに異ならせたりすることができる。また、各電極の電極層が、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでいる場合には、第1及び第2の電極の電極層中における複数の固体電解質の混合比を互いに異ならせることができる。この場合には、第1の電極の電極層におけるイオン伝導度を、第2の電極の電極層におけるイオン伝導度よりも小さくする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電極層の構成(具体的には、活物質の量等)を異ならせて、放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度を、他の領域における電流密度よりも低くすることにより、電極面内での温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0025】
また、電極層中の活物質の量を異ならせることによって、温度分布のバラツキを抑制しているため、特許文献1のように小型(小面積)の電極層(微小セル)を用いなくてもよい。すなわち、本発明では、集電体に対する電極層の形成面積を増加させることができるため、蓄電装置のエネルギ効率を向上させたり、電極層が集電体から剥がれ易くなるのを抑制したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1である蓄電装置としてのバイポーラ型電池について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施例のバイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置と電極層の厚さとの関係を示す図である。また、図2は、バイポーラ電極が積層された構造を有するバイポーラ型電池(一部)の側面図である。
【0028】
ここで、バイポーラ電極は、集電体の一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成されたものである。そして、図1では、バイポーラ電極の一方の面(正極層が形成された面)を示している。
【0029】
なお、本実施例のバイポーラ電極において、正極層及び負極層の構成は、同一の構成となっている。
【0030】
また、以下の実施例では、バイポーラ型の二次電池について説明するが、バイポーラ型ではない二次電池についても本発明を適用することができる。ここで、バイポーラ型ではない二次電池では、集電体の両面に同一の電極層(正極層又は負極層)が形成された電極が用いられたり、集電体の片面のみに電極層が形成された電極が用いられたりする。
【0031】
さらに、以下の実施例では二次電池について説明するが、蓄電装置としての積層型キャパシタ(電気二重層キャパシタ)にも本発明を適用することができる。この積層型キャパシタは、複数の正極及び負極を、セパレータを介在させて交互に重ね合わせたものである。そして、この積層型キャパシタにおいては、例えば、集電体としてアルミ箔、正極活物質及び負極活物質として活性炭、セパレータとしてポリエチレンからなる多孔質膜を用いることができる。
【0032】
図1及び図2において、バイポーラ電極1は、基体としての集電体11を有し、集電体11の一方の面(X−Y平面)には、正極層12が形成されている。また、集電体11の他方の面には、負極層13が形成されている(図2参照)。
【0033】
集電体11は、例えば、アルミニウム箔で形成したり、複数の金属(合金)で形成したりすることができる。また、金属表面にアルミニウムを被覆させたものを集電体11として用いることもできる。
【0034】
なお、バイポーラ電極ではないが、複数の金属泊を貼り合わせた、いわゆる複合集電体を用いることもできる。この複合集電体を用いる場合において、正極用集電体の材料としてアルミニウム等を用い、負極用集電体の材料としてニッケルや銅等を用いることができる。また、複合集電体としては、正極用集電体及び負極用集電体を直接接触させたものを用いたり、正極用集電体及び負極用集電体の間に導電性を有する層を設けたものを用いたりすることができる。
【0035】
各電極層12、13には、正極又は負極に応じた、活物質、導電剤、電解質(例えば、固体電解質)、添加剤等が含まれている。各電極層12、13を構成する材料については、公知の材料を用いることができる。
【0036】
例えば、ニッケル−水素電池では、正極層12の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層13の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlxMnyCoz(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、リチウム二次電池では、正極層12の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層13の活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0037】
各電極層12、13は、インクジェット方式等を用いることにより、集電体11上に形成することができる。
【0038】
図1,2のX方向において、各電極層12、13の厚さ(Z方向の長さ)は、バイポーラ電極1の中心部が最も薄く、外周部に向かって連続的に厚くなっている。また、図1のY方向においても、各電極層12、13の厚さは、バイポーラ電極1の中心部が最も薄く、外周部に向かって連続的に厚くなっている。すなわち、各電極層12、13の表面(後述するイオン伝導層14と接触する面)は、曲率を持った凹形状の面となっている。
【0039】
各電極層12、13の厚さは、従来のバイポーラ電極(集電体の表面に略均一な厚さの電極層を形成した電極)における温度分布に基づいて、設定することができる。ここで、図3に、バイポーラ電極上の位置と温度との関係を示す。図3において、縦軸はバイポーラ電極上の温度であり、横軸はX方向(又はY方向)におけるバイポーラ電極の位置である。
【0040】
図3の点線は、従来のバイポーラ電極を用いたときの温度分布曲線Cを示す。この温度分布曲線Cに示すように、バイポーラ電極の中心部で最も温度が高く、外周側に向かって温度が低下している。すなわち、バイポーラ電極の中心部では、熱がこもりやすく、バイポーラ電極外への熱伝達が低い(放熱性が低い)ために、他の部分に比べて温度が高くなってしまう。
【0041】
温度分布曲線Cに示すように、バイポーラ電極上での温度分布のバラツキが生じると、バイポーラ型電池の性能が劣化し易くなってしまう。
【0042】
なお、特許文献1に記載された構成、すなわち、電極層としての複数の微小セルをマトリクス状等に形成した構成においても、温度分布曲線Cと略等しい挙動を示すことになる。すなわち、電極の中心部の温度が、外周部の温度よりも高くなってしまう。
【0043】
そこで、本実施例では、バイポーラ電極の中心部に位置する各電極層12、13の厚さを、他の部分での厚さよりも薄くしている。ここで、本実施例では、各電極層12、13中の活物質の密度をすべての領域において略等しくしているため、各電極層12、13の厚さを薄くすることで、この薄くした部分における活物質の量が減少することになる。
【0044】
このように活物質の量を減らすことにより、バイポーラ電極上での電流密度を減らすことができ、バイポーラ型電池の充放電に伴う発熱を抑制することができる。そして、部分的に発熱を抑制することで、後述するように、バイポーラ電極上での温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0045】
ここで、バイポーラ電極1の中心部における各電極層12、13の厚さは、ゼロであってもよい。
【0046】
本実施例のバイポーラ電極1を用いた場合において、初期の動作段階では、温度分布曲線が図3の一点鎖線で示す曲線Aとなる。これは、バイポーラ電極1の中心部における各電極層12、13の厚さが、外周部における厚さよりも薄くなっているために、初期の動作段階において、中心部の温度が外周部の温度よりも低くなってしまうことがある。
【0047】
ただし、経時変化によって、バイポーラ電極上での温度分布曲線が一点鎖線で示す曲線Aから実線で示す曲線Bに変化する。
【0048】
これは、バイポーラ電極1の中心部が他の領域に比べて放熱性が低いために、中心部での温度が徐々に上昇してくるためである。そこで、この温度上昇分を考慮して、中心部における電極層12、13の厚さを予め設定しておくことで、図3の温度分布曲線Bに示すようにバイポーラ電極1の全体において温度分布を略均一にさせることができる。本実施例のバイポーラ型電池を実際に使用する場合には、温度分布曲線が図3の実線で示す曲線Bに到達した状態で使用することが好ましい。
【0049】
一方、バイポーラ電極1における各電極層12、13上には、これらの電極層12、13と接触するイオン伝導層14が形成されている。すなわち、積層構造のバイポーラ型電池では、イオン伝導層14が電極層12、13によって狭持された構成となる。
【0050】
イオン伝導層14としては、イオン導電性を有する高分子固体電解質(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド)や無機固体電解質(例えば、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物)を用いることができる。なお、バイポーラ型ではない電池に用いられる電極においては、イオン伝導層として、高分子ゲル電解質を用いることができる。
【0051】
本実施例において、イオン伝導層14の厚さ(図2におけるZ方向の長さ)は、バイポーラ電極1の中心部に対応した部分が最も厚くなっており、外周部に向かって厚さが徐々に薄くなっている。
【0052】
上述したように、本実施例では、各電極層12、13の厚さを中心部側から外周部側に向かって薄くなるように形成しているため、略均一な厚さ(製造誤差を含む)を有するイオン伝導層(特に、固体電解質層)を用いた場合には、このイオン伝導層のうち電極層12、13と接触しない部分が生じてしまう。そこで、イオン伝導層14の全面を各電極層12、13に接触させるために、イオン伝導層14の厚さを上述したように設定している。これにより、積層方向(図2のZ方向)におけるバイポーラ電極1(集電体1)の間隔を略一定(製造誤差を含む)にすることができる。
【0053】
一方、本実施例のバイポーラ型電池は、バイポーラ電極1での熱膨張を主に抑制するために、図4に示すように、バイポーラ型電池100の両側(バイポーラ電極1の積層方向)から狭持部材200によって狭持される構成となっている。具体的には、図4中の矢印で示すように、バイポーラ型電池100の外周部側で狭持する構成となっている。
【0054】
この構成では、バイポーラ型電池100の外周部側での熱膨張を抑制することはできるが、中心部側での熱膨張を抑制することができない。これにより、中心部側の領域だけが熱膨張によって変位してしまうことがある。
【0055】
そこで、本実施例のバイポーラ電極1を用いれば、バイポーラ電極1上での温度分布のバラツキを抑制できるため、中心部側での熱膨張を抑制することができ、図4に示す構造を用いたとしても、バイポーラ型電池100の中心部側の領域だけが熱膨張によって変位してしまうのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施例では、集電体11の全面に電極層12、13を形成しているため、特許文献1に記載の構成のように、複数の微小セル(電極層)を集電体上に形成する場合に比べて、集電体11上への電極層12、13の形成を容易に行うことができるとともに、集電体11から電極層12、13が剥がれてしまうのを抑制することができる。すなわち、本実施例のように、各電極層12、13中の活物質の量を異ならせる構成であれば、特許文献1に記載の微小セルのように、各電極層12、13を小型化させる必要はなく、集電体11上における各電極層12、13の形成面積を増加させることができる。
【0057】
そして、集電体11の全面に電極層12、13を形成することで、電極層を形成しない領域を設ける場合に比べて、電極として使用できる有効面積を増加させることができ、バイポーラ型電池のエネルギ効率を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施例では、バイポーラ電極1のX方向及びY方向において、各電極層12、13の厚さを連続的に変化させているが、X方向及びY方向のうちいずれか一方向において、各電極層12、13の厚さを変化させてもよい。この場合には、各電極層12、13の厚さを変化させた方向において、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0059】
また、電極層12、13のうち一方の電極層(正極層又は負極層)だけについて、この厚さを変化させることもできる。この場合において、厚さを変化させない電極層に接触するイオン伝導層の面は、略平坦(製造誤差を含む)な面となる。
【0060】
さらに、本実施例では、集電体11の全面に電極層12、13を形成した場合について説明したが、集電体11上に電極層が形成されていない部分を設けるようにしてもよい。以下、図5及び図6を用いて、具体的に説明する。ここで、図5は、本実施例の変形例であるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置と電極層の厚さとの関係を示す図である。また、図6は、本変形例のバイポーラ電極を用いたバイポーラ型電池の側面図である。
【0061】
図5及び図6に示すように、集電体21上の3つの領域に、正極層22及び負極層23が形成されている。そして、図5のX方向において隣り合う各電極層22、23の間には、電極層が形成されていない領域が存在する。また、電極層が形成されていない領域は、バイポーラ電極2の中心部側に位置している。
【0062】
バイポーラ電極2の中心部に位置する第1正極層22aにおいて、中心部の厚さが最も薄くなっており、バイポーラ電極2の外周部側に向かって厚さが連続的に厚くなっている。また、第2正極層22bにおいて、バイポーラ電極2の中心部側(言い換えれば、第1正極層22a側)に位置する端部の厚さが最も薄くなっている。但し、この端部での厚さは、第1正極層22aの厚さ(端部での厚さ)よりも厚くなっている。そして、上記端部から、バイポーラ電極2の外周部側に向かって、厚さが連続的に厚くなっている。
【0063】
第3正極層22cについても、第2正極層22bと同様の構成であり、バイポーラ電極2の中心部側(言い換えれば、第1正極層22a側)に位置する端部の厚さが最も薄くなっている。但し、この端部での厚さは、第1正極層22aの厚さ(端部での厚さ)よりも厚くなっている。そして、上記端部から、バイポーラ電極2の外周部側に向かって、厚さが連続的に厚くなっている。
【0064】
ここで、正極層22a〜22cにおける活物質の密度は略等しくなっている。
【0065】
一方、負極層23についても、上述した正極層22と同様の構成となっており、第1正極層22aに対応した第1負極層23aと、第2正極層22b及び第3正極層22cに対応した第2負極層23b及び第3負極層23cとを有している。ここで、負極層23a〜23cにおける活物質の密度は略等しくなっている。
【0066】
イオン伝導層24は、各電極層22、23が形成された領域に対応した領域に形成されている。そして、第1正極層22a及び第1負極層23a間に位置する第1イオン伝導層24aと、第2正極層22b及び第2負極層23b間に位置する第2イオン伝導層24bと、第3正極層22c及び第3負極層23c間に位置する第3イオン伝導層24cとを有している。
【0067】
また、積層方向において隣り合う集電体21間の間隔が略一定となるように、各電極層22a〜22c、23a〜23cの厚さに応じて、各イオン伝導層24a〜24cの厚さも異なっている。
【0068】
本変形例ように、集電体21上に電極層22、23やイオン伝導層24を形成しない領域(空間)を設けることによって、この領域を用いてバイポーラ電極2内で発生した熱を外部に放出させることができる。特に、バイポーラ電極2の中心部が最も温度が高くなるため、この中心部側の位置に、電極層22、23等を形成しない領域を設けることで、バイポーラ電極2内の熱を効率良く放出させることができる。
【0069】
また、各電極層22a〜22c、23a〜23cにおいて、電極層の厚さを異ならせているため、各電極層22a〜22c、23a〜23cにおける温度分布のバラツキを抑制することができる。しかも、電極層22、23の全体としても、上述した実施例1と同様に厚さを異ならせているため、バイポーラ電極2上での温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0070】
なお、図5及び図6に示す変形例では、電極層22、23が形成された領域に対応させてイオン伝導層24を形成したが、イオン伝導層24を本実施例(図2参照)のように一体的に形成してもよい。このように構成すれば、積層方向において隣り合う集電体21が互いに接触して短絡してしまうのを防止することができる。
【0071】
また、本変形例では、電極層22、23等を形成しない領域として、2つの領域を設けた場合について説明したが、これに限るものではなく、電極層22、23等を形成しない領域の数は、適宜設定することができる。
【0072】
上述した実施例及び変形例では、電極層22、23の厚さを連続的に変化させた場合について説明したが、これに限るものではなく、電極層の厚さを段階的に変化させることもできる。例えば、図1における電極層の厚さを示す曲線に沿うように、電極層の厚さを段階的に変化させることができる。このように構成しても、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0073】
ここで、電極層の厚さを段階的に変化させる場合には、少なくとも2つの異なる厚さを持った電極層を用いることができる。そして、厚さが異なる領域の数は、適宜設定することができる。
【0074】
一方、上述した実施例及び変形例では、バイポーラ電極上における電極層の厚さを異ならせるものであるが、バイポーラ電極を積層した構成のバイポーラ型電池においては、この電池の厚さ方向(バイポーラ電極の積層方向)の位置に応じて、電極層の厚さを異ならせてもよい。
【0075】
ここで、積層構造のバイポーラ型電池では、積層方向における中心層側と外層側とで、熱の逃げやすさが異なり、各バイポーラ電極上の温度分布が異なってくることがある。このため、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、このバイポーラ電極上の電極層の厚さを異ならせることで、積層方向における温度分布のバラツキも抑制することができる。
【0076】
具体的には、中心層側に位置するバイポーラ電極における電極層の厚さと、外層側に位置するバイポーラ電極における電極層の厚さとを比較したときに、積層方向で互いに対応する位置での厚さが、中心層側のバイポーラ電極のほうが薄くなるように設定することができる。
【0077】
また、中心層側に位置するバイポーラ電極として、本実施例及び本変形例で説明したバイポーラ電極を用い、外層側に位置するバイポーラ電極として、従来のバイポーラ電極(電極層の厚さが略均一な電極)を用いることもできる。
【実施例2】
【0078】
次に、本発明の実施例2であるバイポーラ型電池について、図7及び図8を用いて説明する。ここで、図7は、本実施例のバイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極の電極層に含まれる活物質の密度とバイポーラ電極上の位置との関係を示す図である。また、図8は、本実施例のバイポーラ型電池の側面図(概略図)である。
【0079】
上述した実施例1では、バイポーラ電極のX方向及びY方向において、電極層の厚さを異ならせた場合について説明したが、本実施例では、電極層の厚さは略均一(製造誤差を含む)にしつつ、電極層に含まれる活物質の密度を異ならせたものである。以下、具体的に説明する。
【0080】
本実施例のバイポーラ電極3において、集電体31の一方の面には、略均一な厚さを有する正極層(電極層)32が形成され、集電体31の他方の面には、略均一な厚さを有する負極層(電極層)33が形成されている。そして、このバイポーラ電極3を積層したバイポーラ型電池では、正極層32及び負極層33の間に、略均一な厚さを有するイオン伝導層34が配置されている。
【0081】
電極層32、33は、実施例1でも説明したように、正極及び負極に応じた、活物質、導電剤、添加剤等で構成されている。ここで、本実施例では、活物質の密度(電極層32、33の単位体積当たりの活物質の量)を、電極層32、33中の位置に応じて異ならせている。
【0082】
具体的には、図7に示すように、X方向及びY方向において、バイポーラ電極3の中心部における活物質の密度が最も低くなっており、外周部側に向かって活物質の密度を連続的に高くしている。
【0083】
ここで、本実施例では、図8に示すように、各電極層32、33の厚さを略均一に設定しているため、活物質の密度を異ならせることで、各電極層32、33中の活物質の量が異なることになる。また、活物質の密度を異ならせることで、各電極層32、33を構成する活物質以外の物質(例えば、導電剤)の密度も異なることになる。すなわち、活物質が低密度となる領域(中心部側の領域)では、導電剤等の密度が比較的高くなり、活物質が高密度となる領域(外周部側の領域)では、導電剤等の密度が比較的低くなる。
【0084】
なお、バイポーラ電極3の中心部における活物質の密度は、ゼロであってもよい。
【0085】
上述したように、活物質の密度を異ならせると、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせることができる。そして、バイポーラ電極3の中心部側における活物質の密度を外周部側よりも低くして、中心部側の電流密度を外周部側よりも低くすることで、電池の充放電に伴う中心部側での発熱を抑制でき、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0086】
また、本実施例では、活物質の密度を異ならせる構成であるため、集電体31の概ね全面に単一の電極層32、33を形成することができる。これにより、特許文献1に記載の構成のように、集電体上に複数の微小セル(電極層)を形成する場合に比べて、電極として用いることのできる有効面積を増加させることができる。しかも、特許文献1に記載の微小セルに比べて、各電極層32、33の面積を大型化できるため、集電体31から各電極層32、33が剥がれてしまうのを抑制することができる。
【0087】
ここで、図7に示す活物質の密度分布を示す曲線は、実施例1で説明した場合と同様に、従来のバイポーラ電極(電極層の厚みが略均一であって、活物質の密度が略均一な電極)での温度分布曲線に基づいて、設定することができる。
【0088】
一方、電極層中の活物質の密度を異ならせる方法としては、活物質の粒径を異ならせる方法がある。この構成について、図9を用いて具体的に説明する。ここで、図9は、本実施例のバイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置に応じた電流密度及び電極層中の活物質の粒径の分布を示す図である。
【0089】
図9に示す構成では、バイポーラ電極3の中心部に位置する活物質として、最も粒径の大きい活物質の粒子を用いている。また、バイポーラ電極3の外周部に位置する活物質として、最も粒径の小さい活物質の粒子を用いている。そして、中心部から外周部に向かって、活物質の粒子の粒径が小さくなるようにしている。
【0090】
粒径の大きい活物質を用いた場合には、活物質の粒子同士の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が小さくなるとともに、活物質の粒子及びイオン伝導層34の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が小さくなる。このように、接触面積が小さい領域では、電池の充放電に伴う反応抵抗を大きくすることができ、電流密度を低下させることができる。
【0091】
一方、粒径の小さい活物質を用いた場合には、活物質の粒子同士の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が大きくなるとともに、活物質の粒子及びイオン伝導層34の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が大きくなる。このように、接触面積が大きい領域では、電池の充放電に伴う反応抵抗を小さくすることができる。
【0092】
上述したように、電流密度が低い領域では電池の充放電に伴う発熱を抑制することができるため、バイポーラ電極3のうち放熱性が低い領域である中心部において、粒径の大きな活物質を用いれば、充放電に伴う温度上昇を抑制することができる。これにより、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0093】
ここで、バイポーラ電極3上の位置に応じて、活物質の粒径を異ならせる方法としては、粒径の異なる複数の活物質の粒子を用意しておき、これらをバイポーラ電極3上の位置に応じて使い分けることができる。また、粒径の異なる複数の活物質の粒子を用意しておき、バイポーラ電極3上の位置に応じて、粒径が異なる粒子の配合比率を異ならせることができる。
【0094】
なお、本実施例では、活物質の密度を連続的に変化させた場合について説明したが、これに限るものではなく、活物質の密度を段階的に変化させることもできる。例えば、図7に示す活物質の密度分布曲線に沿うように、活物質の密度を段階的に変化させることができる。ここで、電極層は、少なくとも2つの異なる密度を有する活物質を備えた構成とすることができる。
【0095】
また、X方向及びY方向のうちいずれか一方向において、各電極層32、33における活物質の密度を異ならせてもよい。この場合には、各電極層32、33における活物質の密度を異ならせた方向において、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0096】
さらに、本実施例では、活物質の密度を異ならせることによって、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせたが、活物質の材料を異ならせることによって、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせるようにしてもよい。すなわち、バイポーラ電極の中心部側における活物質の材料として、外周部側よりも抵抗値の高い材料を用い、バイポーラ電極の外周部側における活物質の材料として、中心部側よりも抵抗値の低い材料を用いることができる。
【0097】
また、活物質として、複数の材料を組み合わせたものを用いた場合には、これらの材料の混合比(体積比又は重量比)を異ならせるようにしてもよい。この場合にも、バイポーラ電極の中心部側の抵抗値が、外周部側の抵抗値よりも大きくなるように、混合比を設定する。
【0098】
ここで、活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムのうち、少なくとも2つを含む混合物を用いることができる。
【0099】
このように、活物質の材料を異ならせたり、活物質を構成する複数の材料の混合比を異ならせたりすることで、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせることができ、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0100】
なお、本実施例では、正極層32及び負極層33を同一の構成としたが、電極層32、33のうち一方の電極層を本実施例で説明した構成とし、他方の電極層を従来と同様の構成(活物質の密度が略均一な構成)とすることもできる。
【0101】
一方、積層構造のバイポーラ型電池において、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、このバイポーラ電極上の電極層の構成(活物質の密度等)を異ならせてもよい。例えば、中心層側に位置するバイポーラ電極における電極層と、外層側に位置するバイポーラ電極における電極層とを比較したときに、積層方向において対応する位置での電極層中の活物質の密度を、中心層側に位置するバイポーラ電極において小さくなるように設定することができる。これにより、積層方向においても温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0102】
なお、積層構造のバイポーラ型電池とは、複数の単電池(発電要素)が積層された構成を有する。また、単電池とは、例えば、図8に示す構成において、イオン伝導層34及び電極層32,33によって構成される発電要素をいう。
【0103】
ここで、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極3における電極層中の活物質の密度を異ならせる具体的な構成について、図10を用いて説明する。図10は、積層構造のバイポーラ型電池の積層方向における温度分布、電圧分布、入出力分布及び電極層中の活物質の粒径分布を示す図である。
【0104】
図10において、バイポーラ型電池100の積層方向における両端には、充放電に用いられる正極端子101及び負極端子102が設けられている。正極端子101及び負極端子102は、バイポーラ型電池100の充放電を制御するための回路に接続されている。
【0105】
ここで、複数の単電池を積層した構成のバイポーラ型電池100では、図10(B)に示すように、積層方向における温度分布が一定にはならず、中心層において最も温度が高くなり、外層において最も温度が低くなる。これは、バイポーラ型電池の充放電等に伴う発熱に起因するものであり、中心層側に位置する単電池では、外層側に位置する単電池に比べて放熱性が低く、熱がこもりやすいためである。
【0106】
この場合において、従来のように、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極3について、活物質の粒径を略一定にすると(図10(E)の点線参照)、中心層に位置する単電池では、温度上昇によって抵抗値が小さくなってしまう。これにより、図10(C)、(D)の点線で示すように、積層方向における単電池間で、電圧値や入出力値にバラツキが生じてしまう。
【0107】
ここで、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極3について、活物質の粒径を略一定にした場合には、積層方向における温度分布のバラツキが生じる前(言い換えれば、バイポーラ型電池100の使用前)において、すべての単電池における抵抗値は略一定となる。しかし、バイポーラ型電池100の使用(充放電等)に伴って、積層方向における温度分布にバラツキが生じるために、積層方向における単電池の抵抗値が変化してしまう。
【0108】
図10に示す構成では、上述したように、積層方向における単電池(バイポーラ電極3)の位置に応じて、電極層中(例えば、正極層)の活物質の粒径を異ならせている。
【0109】
具体的には、中心層に位置するバイポーラ電極3における活物質の粒径を最も大きくし、外層に位置するバイポーラ電極3における活物質の粒径を最も小さくしている。そして、中心層から外層に向かって、各バイポーラ電極3における活物質の粒径を徐々に小さくしている。なお、各バイポーラ電極3における活物質の粒径は略一定(製造誤差を含む)である。
【0110】
ここで、上述したように、活物質の粒径を大きくすれば、この単電池の抵抗値を大きくすることができる。また、活物質の粒径を小さくすれば、この単電池の抵抗値を小さくすることができる。
【0111】
このように、積層方向における位置に応じて、単電池の抵抗値を予め異ならせておけば、バイポーラ型電池100の充放電等によって、図10(B)に示す温度分布が発生したとしても、積層方向における単電池の抵抗値のバラツキを抑制することができる。このように抵抗値のバラツキを抑制すれば、バイポーラ型電池100における電圧値や入出力値のバラツキを抑制することができる。例えば、図10(C)、(D)の実線で示すように、電圧値及び入出力値を略一定にすることができる。
【0112】
ここで、図10(E)に示す粒径分布は、積層方向における温度分布(図10(B))に基づいて設定することができる。すなわち、バイポーラ型電池100の充放電等に伴う積層方向における温度分布を予め求めておけば、この温度変化に伴う各単電池での電圧変化量を得ることができる。
【0113】
そして、各単電池での電圧変化量に基づいて、各単電池の抵抗値(活物質の粒径)を設定することができる。すなわち、変化後の電圧値が積層方向においてばらつかないように、単電池の抵抗値(活物質の粒径)を設定することができる。
【0114】
図10に示す構成にすれば、積層方向における単電池間での電圧値や入出力値のバラツキを抑制できるため、バイポーラ型電池100内のすべての単電池に対して、同一の基準に基づいて充放電の制御を行うことができる。
【0115】
ここで、二次電池では、一般的に、入出力電圧が上下限電圧の範囲から外れると、電池寿命に悪影響を与えることが知られているため、電池の長寿命化を図るために、上下限電圧の範囲外となるような充放電は行わないようにしている(フェールセーフ)。本実施例では、このような充放電制御を、すべての単電池に対して同一の条件で行うことができる。
【0116】
しかも、中心層に位置する単電池を基準として、積層方向におけるすべての単電池の抵抗値を設定することで、図10(D)に示すように、従来のバイポーラ型電池(点線で示す)の最大の入出力値に対応した入出力値を得ることができる。
【0117】
なお、中心層側に位置するバイポーラ電極として、本実施例で説明したバイポーラ電極を用い、外層側に位置するバイポーラ電極として、従来のバイポーラ電極(活物質の密度が略均一な電極)を用いることもできる。
【0118】
また、本実施例では、各電極層32、33の厚さを略均一として、各電極層32、33中の活物質の密度を異ならせているが、活物質の密度を異ならせつつ、各電極層の厚さを異ならせてもよい。この場合には、活物質の密度及び電極層の厚さといった、2つのパラメータを適宜設定することにより、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0119】
上述した実施例1、2で説明した二次電池(キャパシタも同様)は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、燃料電池車(FCV)におけるモータ駆動用の蓄電装置として用いることができる。
【0120】
一方、上述した実施例1、2では、バイポーラ電極自体の放熱特性を考慮して電極層中の活物質の量(具体的には、電極層の厚さや電極層中の活物質の密度)を異ならせているが、外部からの熱的影響を受けてバイポーラ電極上の温度分布にバラツキが生じる場合には、この熱的影響を考慮して、電極層中の活物質の量を異ならせることもできる。以下、具体的に説明する。
【0121】
例えば、バイポーラ型電池の近傍に熱源(エンジンやモータ等)が配置されている場合には、この熱源からの熱的影響を受けることによって、バイポーラ型電池における熱源側の領域は、他の領域に比べて高温となる(言い換えれば、放熱性が悪化する)ことがある。
【0122】
そこで、バイポーラ電極のうち熱源側の領域における活物質の量を、他の領域における活物質の量よりも少なくすることで、バイポーラ電極における温度分布のバラツキを抑制することができる。すなわち、上述した実施例1、2と同様に、活物質の量を異ならせることで、電流密度を異ならせることができ、バイポーラ電極上での温度上昇を抑制することができる。なお、図9に示した構成と同様に、電極層中の活物質の粒径を異ならせることもできる。
【0123】
ここで、熱源からの熱的影響を踏まえたバイポーラ電極上での温度分布特性(予め予測可能である)を考慮することで、電極層中の活物質の量を設定することができる。
【0124】
例えば、上述した実施例1、2で説明したバイポーラ電極の構成に加えて、又は、実施例1、2で説明したバイポーラ電極の構成に代えて、熱源側に位置する領域(一方の外周部側の領域)での活物質の量を他の領域(他方の外周部側の領域)での活物質の量よりも少なくすることができる。これにより、電池の充放電に伴う発熱と、外部からの熱的影響に伴う発熱によって、バイポーラ電極上において温度分布がばらつくのを抑制することができる。
【0125】
また、熱源からの熱的影響によって、バイポーラ電極のうち熱源側の領域において、最も温度上昇が大きくなる場合(最も放熱性が低くなる場合)には、熱源側の領域における活物質の量を最も少なくすることもできる。
【0126】
一方、実施例1、2で説明した複数のバイポーラ電極を積層した構成のバイポーラ型電池に対して、この積層方向に熱源が配置されている場合には、複数のバイポーラ電極のうち熱源側に位置するバイポーラ電極が熱源からの熱的影響を受け易くなっている。そこで、熱源側に位置するバイポーラ電極における電極層の構成と、熱源側とは反対側に位置するバイポーラ電極における電極層の構成とを異ならせることができる。
【0127】
具体的には、積層された複数のバイポーラ電極のうち、熱源側(積層方向のうち一方の最外層側)に位置するバイポーラ電極(1つ又は複数)における活物質の量を、他のバイポーラ電極(例えば、積層方向のうち他方の最外層側に位置するバイポーラ電極)における活物質の量よりも少なくすることができる。すなわち、複数のバイポーラ電極のうち積層方向において対応する領域における活物質の量を異ならせることができる。また、図10に示した構成と同様に、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極の電極層中における活物質の粒径を異ならせることもできる。
【0128】
積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて活物質の量を異ならせる場合には、例えば、積層方向における中心層側と、熱源側の最外層側とに位置するバイポーラ電極における活物質の量を、他のバイポーラ電極における活物質の量よりも少なくすることができる。このように構成することで、バイポーラ型電池が熱源からの熱的影響を受けた場合でも、積層方向における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0129】
なお、熱源側の最外層側に位置するバイポーラ電極上での温度が最も高くなる場合(言い換えれば、放熱性が最も低くなる場合)場合には、このバイポーラ電極における活物質の量を最も少なくすることもできる。
【0130】
ここで、上述した、積層方向における位置に応じてバイポーラ電極における活物質の量を異ならせる構成においては、各バイポーラ電極として、実施例1、2で説明したバイポーラ電極を用いたり、従来のバイポーラ電極(電極層中の活物質の量が略均一な電極)を用いたりすることができる。
【0131】
活物質の量を異ならせる方法としては、上述した実施例1、2で説明した場合と同様に、電極層の厚さを異ならせることで活物質の量を異ならせたり(図1参照)、電極層中の単位体積当たりの活物質の密度を異ならせたり(図7参照)することができる。また、活物質の材料を異ならせたり、活物質を構成する複数の材料の混合比を異ならせたりしてもよい。
【0132】
一方、上述した実施例1、2では、活物質の量を異ならせることによって、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制するようにしているが、電極層に含まれる導電剤の量を異ならせることによって、バイポーラ電極上の温度分布のバラツキを抑制させることもできる。
【0133】
ここで、電極層中の導電剤の密度(単位体積当たりの導電剤の量)を異ならせる構成について、図11を用いて具体的に説明する。図11は、バイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置に応じた電流密度及び導電剤の密度分布を示す図である。
【0134】
図11に示す構成では、バイポーラ電極3の電極層のうち、中心部に位置する領域内における導電剤の密度が最も低い。また、バイポーラ電極3の電極層のうち、外周部に位置する領域内における導電剤の密度が最も高い。そして、中心部から外周部に向かって、導電剤の密度が高くなっている。
【0135】
導電剤は、電極層の電子伝導性を向上させるために用いられているため、導電剤の密度を低くすれば、電極層における抵抗(いわゆる電子抵抗)を大きくでき、導電剤の密度を高くすれば、電極層における抵抗を小さくできる。そして、抵抗が大きくなれば、電流密度を低下させることができる。
【0136】
上述したように、電流密度が低い領域では電池の充放電に伴う発熱を抑制することができるため、バイポーラ電極3のうち放熱性が低い領域である中心部において、電極層中の導電剤の密度を低くすれば、充放電に伴う温度上昇を抑制することができる。これにより、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0137】
なお、図11に示す構成では、電極層中の導電剤の密度を連続的に変化させているが、これに限るものではなく、段階的に変化させることもできる。この場合にも、中心部側の領域内における導電剤の密度を、外周部側の領域内における導電剤の密度よりも低くする。また、図11では、X方向及びY方向において、導電剤の密度を異ならせているが、一方向において導電剤の密度を異ならせることもできる。この場合には、導電剤の密度を異ならせた方向において、温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0138】
ここで、図11に示す構成では、電池自体の放熱性を考慮したものであるが、電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けてバイポーラ電極3上の温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、電極層中の導電剤の密度を異ならせることができる。例えば、バイポーラ電極3のうち、熱源側の領域で最も温度が高くなる場合には、この領域における導電剤の密度を、他の領域における導電剤の密度よりも低くすることができる。
【0139】
一方、積層構造のバイポーラ型電池において、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を異ならせることもできる。
【0140】
ここで、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極における導電剤の密度を異ならせる具体的な構成について、図12を用いて説明する。図12は、積層構造のバイポーラ型電池の積層方向における温度分布、電圧分布、入出力分布及び電極層中の導電剤の密度分布を示す図である。
【0141】
図12(A)において、バイポーラ型電池100の積層方向における両端には、充放電に用いられる正極端子101及び負極端子102が設けられている。正極端子101及び負極端子102は、バイポーラ型電池100の充放電を制御するための回路(不図示)に接続されている。
【0142】
ここで、複数の単電池を積層した構成のバイポーラ型電池100では、図12(B)に示すように、積層方向における温度分布が一定にならず、中心層において最も温度が高くなり、外層において最も温度が低くなることがある。
【0143】
この場合において、従来のように、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の導電剤の密度を略一定にすると(図12(E)の点線参照)、中心層に位置する単電池では、充放電等に伴う温度上昇によって抵抗値が小さくなってしまう。これにより、図12(C)、(D)の点線で示すように、積層方向における単電池間で、電圧値や入出力値にバラツキが生じてしまう。
【0144】
ここで、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の導電剤の密度を略一定にした場合には、積層方向における温度分布のバラツキが生じる前(言い換えれば、バイポーラ型電池100の使用前)において、すべての単電池における抵抗値は略一定となる。しかし、バイポーラ型電池100の使用(充放電等)に伴って、積層方向における温度分布にバラツキが生じるために、積層方向の位置に応じて単電池の抵抗値にバラツキが生じてしまう。
【0145】
図12に示す機構性では、上述したように、積層方向における単電池(バイポーラ電極)の位置に応じて、電極層中の導電剤の密度を異ならせている。
【0146】
具体的には、中心層に位置するバイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を最も低くし、外層に位置するバイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を最も高くしている。そして、中心層から外層に向かって、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を高くしている。
【0147】
なお、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度は略一定(製造誤差を含む)である。ここで、図12に示す構成に加えて、各バイポーラ電極における電極層を、図11で説明した構成とすることもできる。
【0148】
ここで、上述したように、電極層中の導電剤の密度を低くすれば、この単電池の抵抗値を大きくすることができる。また、電極層中の導電剤の密度を高くすれば、この単電池の抵抗値を小さくすることができる。
【0149】
したがって、図12に示す構成のように、積層方向における位置に応じて、単電池の抵抗値を予め異ならせておけば、バイポーラ型電池100の充放電等によって、図12(B)に示す温度分布が発生したとしても、積層方向の位置に応じて単電池の抵抗値にバラツキが生じるのを抑制することができる。このように抵抗値のバラツキを抑制すれば、バイポーラ型電池100における電圧値や入出力値のバラツキを抑制することができる。例えば、図12(C)、(D)の実線で示すように、電圧値及び入出力値を略一定にすることができる。
【0150】
ここで、図12(E)に示す密度分布は、積層方向における温度分布(図12(B))に基づいて設定することができる。すなわち、バイポーラ型電池100の充放電等に伴う積層方向における温度分布を予め求めておけば、この温度変化に伴う各単電池での電圧変化量を得ることができる。
【0151】
そして、各単電池での電圧変化量に基づいて、各単電池の抵抗値(電極層中の導電剤の密度)を設定することができる。すなわち、変化後の電圧値が積層方向においてばらつかないように、単電池の抵抗値(電極層中の導電剤の密度)を設定することができる。
【0152】
図12に示す構成によれば、積層方向における単電池間での電圧値や入出力値のバラツキを抑制できるため、バイポーラ型電池100内のすべての単電池に対して、同一の基準に基づいて充放電の制御を行うことができる。
【0153】
ここで、二次電池では、一般的に、入出力電圧が上下限電圧の範囲から外れると、電池寿命に悪影響を与えることが知られているため、電池の長寿命化を図るために、上下限電圧の範囲外となるような充放電は行わないようにしている(フェールセーフ)。本実施例では、このような充放電制御を、すべての単電池に対して同一の条件で行うことができる。
【0154】
しかも、中心層に位置する単電池を基準として、積層方向におけるすべての単電池の抵抗値を設定することで、図12(D)に示すように、従来のバイポーラ型電池(点線で示す)の最大の入出力値に対応した入出力値を得ることができる。
【0155】
ここで、図12に示す構成では、積層構造のバイポーラ型電池自体の放熱性を考慮したものであるが、このバイポーラ型電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けて積層方向における温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を異ならせることができる。例えば、熱源側に位置する単電池において温度が最も高くなる場合には、この単電池における電極層中の導電剤の密度を、他の単電池における電極層中の導電剤の密度よりも低くすることができる。
【0156】
ただし、電極層の全体において活物質の量を略一定とし、導電剤の量だけを異ならせると、電池の充放電に用いられない活物質が存在してしまうことがある。すなわち、導電剤の量が他の領域よりも少ない領域では、電池の充放電に用いられない活物質が多く存在してしまうことがある。
【0157】
通常、活物質としては、比較的高価な材料を用いているため、使用されない活物質が存在することは好ましくない。したがって、導電剤の量を異ならせた場合には、活物質の量も異ならせることが好ましい。これにより、活物質を効率良く用いることができ、使用されない活物質が含まれることによるバイポーラ電極のコストアップを抑制することができる。
【0158】
一方、上述した実施例1、2では、活物質の量を異ならせることによって、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制するようにしているが、バイポーラ電極の電極層に含まれる固体電解質の構成を異ならせることによって、バイポーラ電極上の温度分布のバラツキを抑制させることもできる。具体的には、電極層中の固体電解質の密度を異ならせたり、電極層中に互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含ませた場合において、これらの固体電解質の混合比を異ならせたりすることができる。
【0159】
ここで、電極層中の固体電解質の密度(単位体積当たりの固体電解質の量)を異ならせる構成について、図13を用いて具体的に説明する。図13は、バイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置に応じた電流密度及び電極層中の固体電解質の密度分布を示す図である。
【0160】
図13に示す構成では、バイポーラ電極3の電極層のうち、中心部に位置する領域内における固体電解質の密度が最も低い。また、バイポーラ電極3の電極層のうち、外周部に位置する領域内における固体電解質の密度が最も高い。そして、中心部から外周部に向かって、固体電解質の密度が高くなっている。
【0161】
ここで、電極層中の固体電解質の密度を低くすれば、電極層におけるイオン伝導度を小さくでき、固体電解質の密度を高くすれば、電極層におけるイオン伝導度を大きくできる。そして、イオン伝導度を小さくすれば、電流密度を低下させることができる。
【0162】
上述したように、電流密度が低い領域では電池の充放電に伴う発熱を抑制することができるため、バイポーラ電極3のうち放熱性が低い領域である中心部において、電極層中の固体電解質の密度を低くすれば、充放電に伴う温度上昇を抑制することができる。これにより、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0163】
なお、図13に示す構成では、電極層中の固体電解質の密度を連続的に変化させているが、これに限るものではなく、段階的に変化させることもできる。この場合にも、電極層のうち、中心部側の領域内における固体電解質の密度を、外周部側の領域内における固体電解質の密度よりも低くする。また、図13に示す構成では、X方向及びY方向において、電極層中の固体電解質の密度を異ならせているが、一方向において電極層中の固体電解質の密度を異ならせることもできる。この場合には、固体電解質の密度を異ならせた方向において、温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0164】
ここで、図13に示す構成では、電池自体の放熱性を考慮したものであるが、電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けてバイポーラ電極上の温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、電極層中の固体電解質の密度を異ならせることができる。例えば、バイポーラ電極のうち、熱源側の領域が最も温度が高くなる場合には、この領域における固体電解質の密度を、他の領域における固体電解質の密度よりも低くすることができる。
【0165】
一方、バイポーラ電極3の電極層中に、互いに異なる種類(材料)の複数の固体電解質を含ませる場合には、バイポーラ電極上の位置に応じて、異なる種類の固体電解質を使い分けたり、複数の固体電解質の混合比を変えたりすることにより、イオン伝導度を異ならせることができる。この場合には、バイポーラ電極3の中心部において最もイオン伝導度が低く、外周部において最もイオン伝導度が高くなるように、固体電解質を使い分けたり、複数の固体電解質の混合比を変えたりすることができる。
【0166】
ここで、固体電解質の材料とイオン伝導度の具体例を挙げると、Li2O−B2O3;10−7[S/cm]、Li2O2−SiO2;10−6[S/cm]、Li2S−GeS4;10−5[S/cm]、Li2S−P2S5;10−4[S/cm]、LiI−Li2S−P2S5;10−3[S/cm]がある。これらの材料を、バイポーラ電極上の位置に応じて使い分けたり、混合比を変えたりすることにより、所望のイオン伝導度を得ることができる。
【0167】
なお、固体電解質の粒子の表面にコーティングを施す場合には、コーティングの材料によって、イオン伝導度を高くしたり、低くしたりすることができる。そして、互いに異なる種類の固体電解質粒子(コーティングの材料が異なる固体電解質粒子)を用いる場合には、バイポーラ電極3上の位置に応じて、固体電解質粒子の種類を異ならせたり、複数の固体電解質粒子(少なくとも2種類)の混合比を異ならせたりすることができる。
【0168】
一方、積層構造のバイポーラ型電池において、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、各バイポーラ電極における電極層中の固体電解質の構成を異ならせることもできる。具体的には、電極層中の固体電解質の密度を異ならせたり、電極層中に互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含ませた場合において、これらの固体電解質の混合比を異ならせたりすることができる。
【0169】
ここで、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極3の電極層における固体電解質の密度を異ならせる具体的な構成について、図14を用いて説明する。図14は、積層構造のバイポーラ型電池の積層方向における温度分布、電圧分布、入出力分布及び各バイポーラ電極の電極層中の固体電解質の密度分布を示す図である。
【0170】
図14(A)において、バイポーラ型電池100の積層方向における両端には、充放電に用いられる正極端子101及び負極端子102が設けられている。正極端子101及び負極端子102は、バイポーラ型電池100の充放電を制御するための回路(不図示)に接続されている。
【0171】
ここで、複数の単電池を積層した構成のバイポーラ型電池100では、図14(B)に示すように、積層方向における温度分布が一定にはならず、中心層において最も温度が高くなり、外層において最も温度が低くなることがある。
【0172】
この場合において、従来のように、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の固体電解質の密度を略一定にすると(図14(E)の点線参照)、中心層に位置する単電池では、温度上昇によって抵抗値が小さくなってしまう。これにより、図14(C)、(D)の点線で示すように、積層方向における単電池間で、電圧値や入出力値にバラツキが生じてしまう。
【0173】
ここで、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の固体電解質の密度を略一定にした場合には、積層方向における温度分布のバラツキが生じる前(言い換えれば、バイポーラ型電池100の使用前)において、すべての単電池における抵抗値は略一定となる。しかし、バイポーラ型電池100の使用(充放電等)に伴って、積層方向における温度分布にバラツキが生じるために、積層方向における単電池の抵抗値が変化してしまう。
【0174】
本実施例では、上述したように、積層方向における単電池(バイポーラ電極)の位置に応じて、電極層中の固体電解質の密度を異ならせている。
【0175】
具体的には、中心層に位置するバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を最も低くし、外層に位置するバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を最も高くしている。そして、中心層から外層に向かって、各バイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を高くしている。
【0176】
なお、各バイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度は略一定(製造誤差を含む)である。ここで、図14に示す構成に加えて、各バイポーラ電極における電極層を、図13で説明した構成とすることもできる。
【0177】
ここで、上述したように、電極層中の固体電解質の密度を低くすれば、この電極層におけるイオン伝導度を小さくすることができる。また、電極層中の固体電解質の密度を高くすれば、この電極層内のイオン伝導度を大きくすることができる。
【0178】
このように、積層方向における位置に応じて、各バイポーラ電極の電極層におけるイオン伝導度を予め異ならせておけば、バイポーラ型電池100の充放電等によって、図14(B)に示す温度分布が発生したとしても、積層方向における単電池の抵抗値のバラツキを抑制することができる。このように抵抗値のバラツキを抑制すれば、バイポーラ型電池100における電圧値や入出力値のバラツキを抑制することができる。例えば、図14(C)、(D)の実線で示すように、電圧値及び入出力値を略一定にすることができる。
【0179】
ここで、図14(E)に示す密度分布は、積層方向における温度分布(図14(B))に基づいて設定することができる。すなわち、バイポーラ型電池100の充放電等に伴う積層方向における温度分布を予め求めておけば、この温度変化に伴う各単電池での電圧変化量を得ることができる。
【0180】
そして、各単電池での電圧変化量に基づいて、各単電池の抵抗値(各バイポーラ電極の電極層におけるイオン伝導度)を設定することができる。すなわち、変化後の電圧値が積層方向においてばらつかないように、単電池の抵抗値(各バイポーラ電極の電極層におけるイオン伝導度)を設定することができる。
【0181】
図14に示す構成にすれば、積層方向における単電池間での電圧値や入出力値のバラツキを抑制できるため、バイポーラ型電池100内のすべての単電池に対して、同一の基準に基づいて充放電の制御を行うことができる。
【0182】
ここで、二次電池では、一般的に、入出力電圧が上下限電圧の範囲から外れると、電池寿命に悪影響を与えることが知られているため、電池の長寿命化を図るために、上下限電圧の範囲外となるような充放電は行わないようにしている(フェールセーフ)。本実施例では、このような充放電制御を、すべての単電池に対して同一の条件で行うことができる。
【0183】
しかも、中心層に位置する単電池を基準として、積層方向におけるすべての単電池の抵抗値を設定することで、図14(D)に示すように、従来のバイポーラ型電池(点線で示す)の最大の入出力値に対応した入出力値を得ることができる。
【0184】
ここで、図14に示す構成では、積層構造のバイポーラ型電池自体の放熱性を考慮したものであるが、電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けて積層方向における温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、積層方向の位置に応じて電極層中の固体電解質の密度(又は、複数種類の固体電解質の混合比)を異ならせることができる。例えば、熱源側に位置するバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を、積層方向で他の位置にあるバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度よりも低くすることができる。
【0185】
一方、電極層中の固体電解質として、互いに異なる種類(材料)の固体電解質を用いる場合には、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、異なる種類の固体電解質を使い分けたり、各バイポーラ電極の電極層に含まれる複数の固体電解質の混合比を変えたりすることにより、イオン伝導度を異ならせることができる。ここで、各バイポーラ電極の電極層は、すべての領域において同一の構成(材料が同一又は混合比が一定)とすることもできるし、図13で説明したようにバイポーラ電極上の位置に応じて構成を異ならせることもできる。
【0186】
複数種類の固体電解質を用いる場合には、中心層に位置するバイポーラ電極の電極層においてイオン伝導度が最も低く、外周部に位置するバイポーラ電極の電極層においてイオン伝導度が最も高くなるように、異なる材料の固体電解質を使い分けたり、各バイポーラ電極の電極層に含まれる複数の固体電解質の混合比を変えたりすることができる。
【0187】
なお、固体電解質の粒子の表面にコーティングを施す場合には、コーティングの材料によって、イオン伝導度を高くしたり、低くしたりすることができる。そして、互いに異なる種類の固体電解質粒子(コーティングの材料が異なる固体電解質粒子)を用いる場合には、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、バイポーラ電極の電極層に含まれる固体電解質粒子の種類を異ならせたり、各バイポーラ電極の電極層に含まれる複数の固体電解質粒子(少なくとも2種類)の混合比を異ならせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の実施例1において、電極上の位置と電極層の厚さの関係を示す図である。
【図2】実施例1におけるバイポーラ型電池の側面図である。
【図3】電極の位置に応じた温度分布を示す図である。
【図4】実施例1におけるバイポーラ型電池の支持構造を示す概略図である。
【図5】実施例1の変形例において、電極上の位置と電極層の厚さの関係を示す図である。
【図6】実施例1の変形例におけるバイポーラ型電池の側面図である。
【図7】本発明の実施例2において、電極上の位置と活物質の密度の関係を示す図である。
【図8】実施例2におけるバイポーラ型電池の側面図である。
【図9】電極上の位置と活物質の粒径との関係を示す図である。
【図10】バイポーラ型電池の積層方向の位置と、温度、電圧値、入出力値および電極層中の活物質の粒径との関係を示す図である(A〜E)。
【図11】電極上の位置と電極層中の導電剤の密度との関係を示す図である。
【図12】バイポーラ型電池の積層方向の位置と、温度、電圧値、入出力値および電極層中の導電剤の密度との関係を示す図である(A〜E)。
【図13】電極上の位置と電極層中の固体電解質の密度との関係を示す図である。
【図14】バイポーラ型電池の積層方向の位置と、温度、電圧値、入出力値および電極層中の固体電解質の密度との関係を示す図である(A〜E)。
【符号の説明】
【0189】
1、2、3:バイポーラ電極
11、21、31:集電体
12、22、32:電極層(正極層)
13、23、33:電極層(負極層)
14、24、34:イオン伝導層
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池やキャパシタ等の蓄電装置に用いられる蓄電装置用電極および、この蓄電装置用電極を備えた蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、ノートパソコンや携帯電話等の携帯型電子機器の電源として広く使用されており、電気自動車等の動力用電源としても用いられている。そして、電池性能の劣化を抑制するために、様々な提案がなされている(例えば、特許文献1〜7参照)。
【0003】
ここで、特許文献1に記載の二次電池用電極では、二次電池内の温度変化による熱応力を緩和するために、基体としての集電体上に、電極層としての複数の微小セルを形成している。
【0004】
また、特許文献1では、集電体上に形成された複数の微小セルにおける導電剤の量を異ならせることで、二次電池用電極上の温度分布を均一にさせたものが記載されている。具体的には、集電体の中心部に位置する微小セルにおける導電剤の含有量を最も少なくし、集電体の端部に位置する微小セルにおける導電剤の含有量を最も大きくしている。
【特許文献1】特開2005−11660号公報(図1,2,11等)
【特許文献2】特開2005−209411号公報
【特許文献3】特開2000−90980号公報
【特許文献4】特開2001−15146号公報
【特許文献5】特開2006−12703号公報
【特許文献6】特開2000−195556号公報
【特許文献7】特開2005−174691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の二次電池用電極では、集電体の表面において、微小セルが形成された領域と、微小セルが形成されていない領域とが存在する。このような構成では、微小セルが形成されていない領域において電流が流れないために、二次電池のエネルギ効率が低下してしまう。
【0006】
また、各微小セルの面積は、集電体の面積に比べて極めて小さいため、二次電池用電極の製造工程や、二次電池用電極を備えた二次電池の配置等において、微小セルが集電体から剥がれやすくなってしまう。ここで、集電体上に複数の微小セルを形成した場合には、この二次電池用電極を曲げやすくなるものの、二次電池用電極を屈曲させた際の応力によって微小セルが集電体の表面から剥がれやすくなってしまう。
【0007】
一方、導電剤の量を異ならせることによって各微小セルの抵抗値を異ならせた構成においては、各微小セル内での抵抗値は一定である。このため、各微小セルが形成された領域内において温度変化が生じる場合には、この温度変化のバラツキを抑制することはできない。
【0008】
また、各微小セル中の導電剤の量を異ならせても、各微小セル中の活物質の量が略等しい場合には、二次電池の充放電時に使用されない活物質が存在してしまう。すなわち、導電剤の量が少ない微小セルでは、この微小セル中に含まれるすべての活物質が二次電池の充放電に用いられないことがある。ここで、活物質の材料は比較的高価であるため、二次電池の充放電に用いられない活物質が存在する場合には、二次電池用電極のコストアップとなってしまう。
【0009】
そこで、本発明の主な目的は、電極層が集電体から剥がれ易くなるのを抑制するとともに、電極面内での温度分布のバラツキを抑制することのできる蓄電装置用電極及び、これを備えた蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極であって、集電体と、集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有し、該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、上記他の領域における電流密度よりも低くなるように、電極層の構成を電極層中の位置に応じて異ならせることを特徴とする。
【0011】
ここで、電極層中の活物質の量を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。例えば、電極の中心部側における電極層中の活物質の量を、電極の端部側における電極層中の活物質の量よりも少なくすることができる。また、複数の電極を積層した構成においては、各電極面内で互いに直交する2つの方向(例えば、後述の実施例におけるX方向およびY方向)において、中心部側における電極層中の活物質の量を、端部側における電極層中の活物質の量よりも少なくすることができる。
【0012】
具体的には、電極層のうち、電極の中心部側に位置する領域の厚さを、電極の端部側に位置する領域の厚さよりも薄くすることができる。ここで、電極層の厚さを、電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少させることができる。そして、電極層中の活物質の密度を略等しくすることができる。
【0013】
また、電極の中心部側における電極層中の活物質の密度を、電極の端部側における電極層中の活物質の密度よりも低くすることができる。ここで、活物質の密度を、電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少させることができる。そして、電極層の厚さを略等しくすることができる。
【0014】
さらに、電極層中の活物質の粒径を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。例えば、電極の中心部側における電極層中の活物質の粒径を、電極の端部側における電極層中の活物質の粒径よりも大きくすることができる。また、電極層が導電剤を含んでいる場合には、電極層中の導電剤の密度を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0015】
また、電極層が固体電解質を含んでいる場合には、電極層中の固体電解質の密度を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。さらに、電極層が、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでいる場合には、電極層中における複数の固体電解質の混合比を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0016】
一方、本発明の蓄電装置は、上述した蓄電装置用電極を、正極及び負極の少なくとも一方として用いることを特徴とする。
【0017】
ここで、上述した、異なる厚さの電極層を有する蓄電装置用電極を用いる場合においては、この蓄電装置用電極に接触するイオン伝導層のうち、蓄電装置用電極の中心部側に対応した領域の厚さを、蓄電装置用電極の端部側に対応した領域の厚さよりも厚くすることができる。なお、イオン伝導層として、好ましくは、高分子固体電解質又は無機固体電解質を用いることができる。
【0018】
また、本発明は、イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置であって、各電極は、集電体と、集電体上に形成され、活物質を含む電極層とを有しており、中心層側及び外層側に位置する電極における電流密度が、他の位置の電極における電流密度よりも低くなるように、複数の電極における活物質の量が互いに異なることを特徴とする。
【0019】
ここで、各電極において、放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、他の領域における電流密度よりも低くなるように、活物質の量を電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0020】
なお、イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極において、集電体と、集電体上に形成され、活物質を含む電極層とを有し、該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、上記他の領域における電流密度よりも低くなるように、活物質の材料又は、活物質を構成する複数の材料の混合比(体積比又は重量比)を、電極層中の位置に応じて異ならせることができる。
【0021】
また、本発明は、複数のイオン伝導層を有し、これらのイオン伝導層が複数の電極を介して積層された蓄電装置であって、各電極は、集電体と、該集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有しており、蓄電装置の積層方向において放熱性が他の位置よりも低い位置(例えば、積層方向における中心層側)に配置された第1の電極の抵抗値が、他の位置に配置された第2の電極の抵抗値よりも大きくなるように、第1及び第2の電極における電極層の構成が互いに異なることを特徴とする。
【0022】
ここで、第1の電極における電極層中の活物質の粒径を、第2の電極における電極層中の活物質の粒径よりも大きくすることができる。また、各電極の電極層が、導電剤を含んでいる場合には、第1の電極における電極層中の導電剤の密度を、第2の電極における電極層中の導電剤の密度よりも低くすることができる。
【0023】
さらに、各電極の電極層が、固体電解質を含んでいる場合には、第1の電極における電極層中の固体電解質の密度を、第2の電極における電極層中の固体電解質の密度よりも低くしたり、第1及び第2の電極における電極層中の固体電解質の材料を、互いに異ならせたりすることができる。また、各電極の電極層が、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでいる場合には、第1及び第2の電極の電極層中における複数の固体電解質の混合比を互いに異ならせることができる。この場合には、第1の電極の電極層におけるイオン伝導度を、第2の電極の電極層におけるイオン伝導度よりも小さくする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電極層の構成(具体的には、活物質の量等)を異ならせて、放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度を、他の領域における電流密度よりも低くすることにより、電極面内での温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0025】
また、電極層中の活物質の量を異ならせることによって、温度分布のバラツキを抑制しているため、特許文献1のように小型(小面積)の電極層(微小セル)を用いなくてもよい。すなわち、本発明では、集電体に対する電極層の形成面積を増加させることができるため、蓄電装置のエネルギ効率を向上させたり、電極層が集電体から剥がれ易くなるのを抑制したりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1である蓄電装置としてのバイポーラ型電池について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施例のバイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置と電極層の厚さとの関係を示す図である。また、図2は、バイポーラ電極が積層された構造を有するバイポーラ型電池(一部)の側面図である。
【0028】
ここで、バイポーラ電極は、集電体の一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成されたものである。そして、図1では、バイポーラ電極の一方の面(正極層が形成された面)を示している。
【0029】
なお、本実施例のバイポーラ電極において、正極層及び負極層の構成は、同一の構成となっている。
【0030】
また、以下の実施例では、バイポーラ型の二次電池について説明するが、バイポーラ型ではない二次電池についても本発明を適用することができる。ここで、バイポーラ型ではない二次電池では、集電体の両面に同一の電極層(正極層又は負極層)が形成された電極が用いられたり、集電体の片面のみに電極層が形成された電極が用いられたりする。
【0031】
さらに、以下の実施例では二次電池について説明するが、蓄電装置としての積層型キャパシタ(電気二重層キャパシタ)にも本発明を適用することができる。この積層型キャパシタは、複数の正極及び負極を、セパレータを介在させて交互に重ね合わせたものである。そして、この積層型キャパシタにおいては、例えば、集電体としてアルミ箔、正極活物質及び負極活物質として活性炭、セパレータとしてポリエチレンからなる多孔質膜を用いることができる。
【0032】
図1及び図2において、バイポーラ電極1は、基体としての集電体11を有し、集電体11の一方の面(X−Y平面)には、正極層12が形成されている。また、集電体11の他方の面には、負極層13が形成されている(図2参照)。
【0033】
集電体11は、例えば、アルミニウム箔で形成したり、複数の金属(合金)で形成したりすることができる。また、金属表面にアルミニウムを被覆させたものを集電体11として用いることもできる。
【0034】
なお、バイポーラ電極ではないが、複数の金属泊を貼り合わせた、いわゆる複合集電体を用いることもできる。この複合集電体を用いる場合において、正極用集電体の材料としてアルミニウム等を用い、負極用集電体の材料としてニッケルや銅等を用いることができる。また、複合集電体としては、正極用集電体及び負極用集電体を直接接触させたものを用いたり、正極用集電体及び負極用集電体の間に導電性を有する層を設けたものを用いたりすることができる。
【0035】
各電極層12、13には、正極又は負極に応じた、活物質、導電剤、電解質(例えば、固体電解質)、添加剤等が含まれている。各電極層12、13を構成する材料については、公知の材料を用いることができる。
【0036】
例えば、ニッケル−水素電池では、正極層12の活物質として、ニッケル酸化物を用い、負極層13の活物質として、MmNi(5−x−y−z)AlxMnyCoz(Mm:ミッシュメタル)等の水素吸蔵合金を用いることができる。また、リチウム二次電池では、正極層12の活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極層13の活物質として、カーボンを用いることができる。また、導電剤として、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0037】
各電極層12、13は、インクジェット方式等を用いることにより、集電体11上に形成することができる。
【0038】
図1,2のX方向において、各電極層12、13の厚さ(Z方向の長さ)は、バイポーラ電極1の中心部が最も薄く、外周部に向かって連続的に厚くなっている。また、図1のY方向においても、各電極層12、13の厚さは、バイポーラ電極1の中心部が最も薄く、外周部に向かって連続的に厚くなっている。すなわち、各電極層12、13の表面(後述するイオン伝導層14と接触する面)は、曲率を持った凹形状の面となっている。
【0039】
各電極層12、13の厚さは、従来のバイポーラ電極(集電体の表面に略均一な厚さの電極層を形成した電極)における温度分布に基づいて、設定することができる。ここで、図3に、バイポーラ電極上の位置と温度との関係を示す。図3において、縦軸はバイポーラ電極上の温度であり、横軸はX方向(又はY方向)におけるバイポーラ電極の位置である。
【0040】
図3の点線は、従来のバイポーラ電極を用いたときの温度分布曲線Cを示す。この温度分布曲線Cに示すように、バイポーラ電極の中心部で最も温度が高く、外周側に向かって温度が低下している。すなわち、バイポーラ電極の中心部では、熱がこもりやすく、バイポーラ電極外への熱伝達が低い(放熱性が低い)ために、他の部分に比べて温度が高くなってしまう。
【0041】
温度分布曲線Cに示すように、バイポーラ電極上での温度分布のバラツキが生じると、バイポーラ型電池の性能が劣化し易くなってしまう。
【0042】
なお、特許文献1に記載された構成、すなわち、電極層としての複数の微小セルをマトリクス状等に形成した構成においても、温度分布曲線Cと略等しい挙動を示すことになる。すなわち、電極の中心部の温度が、外周部の温度よりも高くなってしまう。
【0043】
そこで、本実施例では、バイポーラ電極の中心部に位置する各電極層12、13の厚さを、他の部分での厚さよりも薄くしている。ここで、本実施例では、各電極層12、13中の活物質の密度をすべての領域において略等しくしているため、各電極層12、13の厚さを薄くすることで、この薄くした部分における活物質の量が減少することになる。
【0044】
このように活物質の量を減らすことにより、バイポーラ電極上での電流密度を減らすことができ、バイポーラ型電池の充放電に伴う発熱を抑制することができる。そして、部分的に発熱を抑制することで、後述するように、バイポーラ電極上での温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0045】
ここで、バイポーラ電極1の中心部における各電極層12、13の厚さは、ゼロであってもよい。
【0046】
本実施例のバイポーラ電極1を用いた場合において、初期の動作段階では、温度分布曲線が図3の一点鎖線で示す曲線Aとなる。これは、バイポーラ電極1の中心部における各電極層12、13の厚さが、外周部における厚さよりも薄くなっているために、初期の動作段階において、中心部の温度が外周部の温度よりも低くなってしまうことがある。
【0047】
ただし、経時変化によって、バイポーラ電極上での温度分布曲線が一点鎖線で示す曲線Aから実線で示す曲線Bに変化する。
【0048】
これは、バイポーラ電極1の中心部が他の領域に比べて放熱性が低いために、中心部での温度が徐々に上昇してくるためである。そこで、この温度上昇分を考慮して、中心部における電極層12、13の厚さを予め設定しておくことで、図3の温度分布曲線Bに示すようにバイポーラ電極1の全体において温度分布を略均一にさせることができる。本実施例のバイポーラ型電池を実際に使用する場合には、温度分布曲線が図3の実線で示す曲線Bに到達した状態で使用することが好ましい。
【0049】
一方、バイポーラ電極1における各電極層12、13上には、これらの電極層12、13と接触するイオン伝導層14が形成されている。すなわち、積層構造のバイポーラ型電池では、イオン伝導層14が電極層12、13によって狭持された構成となる。
【0050】
イオン伝導層14としては、イオン導電性を有する高分子固体電解質(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド)や無機固体電解質(例えば、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩、硫化リン化合物)を用いることができる。なお、バイポーラ型ではない電池に用いられる電極においては、イオン伝導層として、高分子ゲル電解質を用いることができる。
【0051】
本実施例において、イオン伝導層14の厚さ(図2におけるZ方向の長さ)は、バイポーラ電極1の中心部に対応した部分が最も厚くなっており、外周部に向かって厚さが徐々に薄くなっている。
【0052】
上述したように、本実施例では、各電極層12、13の厚さを中心部側から外周部側に向かって薄くなるように形成しているため、略均一な厚さ(製造誤差を含む)を有するイオン伝導層(特に、固体電解質層)を用いた場合には、このイオン伝導層のうち電極層12、13と接触しない部分が生じてしまう。そこで、イオン伝導層14の全面を各電極層12、13に接触させるために、イオン伝導層14の厚さを上述したように設定している。これにより、積層方向(図2のZ方向)におけるバイポーラ電極1(集電体1)の間隔を略一定(製造誤差を含む)にすることができる。
【0053】
一方、本実施例のバイポーラ型電池は、バイポーラ電極1での熱膨張を主に抑制するために、図4に示すように、バイポーラ型電池100の両側(バイポーラ電極1の積層方向)から狭持部材200によって狭持される構成となっている。具体的には、図4中の矢印で示すように、バイポーラ型電池100の外周部側で狭持する構成となっている。
【0054】
この構成では、バイポーラ型電池100の外周部側での熱膨張を抑制することはできるが、中心部側での熱膨張を抑制することができない。これにより、中心部側の領域だけが熱膨張によって変位してしまうことがある。
【0055】
そこで、本実施例のバイポーラ電極1を用いれば、バイポーラ電極1上での温度分布のバラツキを抑制できるため、中心部側での熱膨張を抑制することができ、図4に示す構造を用いたとしても、バイポーラ型電池100の中心部側の領域だけが熱膨張によって変位してしまうのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施例では、集電体11の全面に電極層12、13を形成しているため、特許文献1に記載の構成のように、複数の微小セル(電極層)を集電体上に形成する場合に比べて、集電体11上への電極層12、13の形成を容易に行うことができるとともに、集電体11から電極層12、13が剥がれてしまうのを抑制することができる。すなわち、本実施例のように、各電極層12、13中の活物質の量を異ならせる構成であれば、特許文献1に記載の微小セルのように、各電極層12、13を小型化させる必要はなく、集電体11上における各電極層12、13の形成面積を増加させることができる。
【0057】
そして、集電体11の全面に電極層12、13を形成することで、電極層を形成しない領域を設ける場合に比べて、電極として使用できる有効面積を増加させることができ、バイポーラ型電池のエネルギ効率を向上させることができる。
【0058】
なお、本実施例では、バイポーラ電極1のX方向及びY方向において、各電極層12、13の厚さを連続的に変化させているが、X方向及びY方向のうちいずれか一方向において、各電極層12、13の厚さを変化させてもよい。この場合には、各電極層12、13の厚さを変化させた方向において、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0059】
また、電極層12、13のうち一方の電極層(正極層又は負極層)だけについて、この厚さを変化させることもできる。この場合において、厚さを変化させない電極層に接触するイオン伝導層の面は、略平坦(製造誤差を含む)な面となる。
【0060】
さらに、本実施例では、集電体11の全面に電極層12、13を形成した場合について説明したが、集電体11上に電極層が形成されていない部分を設けるようにしてもよい。以下、図5及び図6を用いて、具体的に説明する。ここで、図5は、本実施例の変形例であるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置と電極層の厚さとの関係を示す図である。また、図6は、本変形例のバイポーラ電極を用いたバイポーラ型電池の側面図である。
【0061】
図5及び図6に示すように、集電体21上の3つの領域に、正極層22及び負極層23が形成されている。そして、図5のX方向において隣り合う各電極層22、23の間には、電極層が形成されていない領域が存在する。また、電極層が形成されていない領域は、バイポーラ電極2の中心部側に位置している。
【0062】
バイポーラ電極2の中心部に位置する第1正極層22aにおいて、中心部の厚さが最も薄くなっており、バイポーラ電極2の外周部側に向かって厚さが連続的に厚くなっている。また、第2正極層22bにおいて、バイポーラ電極2の中心部側(言い換えれば、第1正極層22a側)に位置する端部の厚さが最も薄くなっている。但し、この端部での厚さは、第1正極層22aの厚さ(端部での厚さ)よりも厚くなっている。そして、上記端部から、バイポーラ電極2の外周部側に向かって、厚さが連続的に厚くなっている。
【0063】
第3正極層22cについても、第2正極層22bと同様の構成であり、バイポーラ電極2の中心部側(言い換えれば、第1正極層22a側)に位置する端部の厚さが最も薄くなっている。但し、この端部での厚さは、第1正極層22aの厚さ(端部での厚さ)よりも厚くなっている。そして、上記端部から、バイポーラ電極2の外周部側に向かって、厚さが連続的に厚くなっている。
【0064】
ここで、正極層22a〜22cにおける活物質の密度は略等しくなっている。
【0065】
一方、負極層23についても、上述した正極層22と同様の構成となっており、第1正極層22aに対応した第1負極層23aと、第2正極層22b及び第3正極層22cに対応した第2負極層23b及び第3負極層23cとを有している。ここで、負極層23a〜23cにおける活物質の密度は略等しくなっている。
【0066】
イオン伝導層24は、各電極層22、23が形成された領域に対応した領域に形成されている。そして、第1正極層22a及び第1負極層23a間に位置する第1イオン伝導層24aと、第2正極層22b及び第2負極層23b間に位置する第2イオン伝導層24bと、第3正極層22c及び第3負極層23c間に位置する第3イオン伝導層24cとを有している。
【0067】
また、積層方向において隣り合う集電体21間の間隔が略一定となるように、各電極層22a〜22c、23a〜23cの厚さに応じて、各イオン伝導層24a〜24cの厚さも異なっている。
【0068】
本変形例ように、集電体21上に電極層22、23やイオン伝導層24を形成しない領域(空間)を設けることによって、この領域を用いてバイポーラ電極2内で発生した熱を外部に放出させることができる。特に、バイポーラ電極2の中心部が最も温度が高くなるため、この中心部側の位置に、電極層22、23等を形成しない領域を設けることで、バイポーラ電極2内の熱を効率良く放出させることができる。
【0069】
また、各電極層22a〜22c、23a〜23cにおいて、電極層の厚さを異ならせているため、各電極層22a〜22c、23a〜23cにおける温度分布のバラツキを抑制することができる。しかも、電極層22、23の全体としても、上述した実施例1と同様に厚さを異ならせているため、バイポーラ電極2上での温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0070】
なお、図5及び図6に示す変形例では、電極層22、23が形成された領域に対応させてイオン伝導層24を形成したが、イオン伝導層24を本実施例(図2参照)のように一体的に形成してもよい。このように構成すれば、積層方向において隣り合う集電体21が互いに接触して短絡してしまうのを防止することができる。
【0071】
また、本変形例では、電極層22、23等を形成しない領域として、2つの領域を設けた場合について説明したが、これに限るものではなく、電極層22、23等を形成しない領域の数は、適宜設定することができる。
【0072】
上述した実施例及び変形例では、電極層22、23の厚さを連続的に変化させた場合について説明したが、これに限るものではなく、電極層の厚さを段階的に変化させることもできる。例えば、図1における電極層の厚さを示す曲線に沿うように、電極層の厚さを段階的に変化させることができる。このように構成しても、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0073】
ここで、電極層の厚さを段階的に変化させる場合には、少なくとも2つの異なる厚さを持った電極層を用いることができる。そして、厚さが異なる領域の数は、適宜設定することができる。
【0074】
一方、上述した実施例及び変形例では、バイポーラ電極上における電極層の厚さを異ならせるものであるが、バイポーラ電極を積層した構成のバイポーラ型電池においては、この電池の厚さ方向(バイポーラ電極の積層方向)の位置に応じて、電極層の厚さを異ならせてもよい。
【0075】
ここで、積層構造のバイポーラ型電池では、積層方向における中心層側と外層側とで、熱の逃げやすさが異なり、各バイポーラ電極上の温度分布が異なってくることがある。このため、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、このバイポーラ電極上の電極層の厚さを異ならせることで、積層方向における温度分布のバラツキも抑制することができる。
【0076】
具体的には、中心層側に位置するバイポーラ電極における電極層の厚さと、外層側に位置するバイポーラ電極における電極層の厚さとを比較したときに、積層方向で互いに対応する位置での厚さが、中心層側のバイポーラ電極のほうが薄くなるように設定することができる。
【0077】
また、中心層側に位置するバイポーラ電極として、本実施例及び本変形例で説明したバイポーラ電極を用い、外層側に位置するバイポーラ電極として、従来のバイポーラ電極(電極層の厚さが略均一な電極)を用いることもできる。
【実施例2】
【0078】
次に、本発明の実施例2であるバイポーラ型電池について、図7及び図8を用いて説明する。ここで、図7は、本実施例のバイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極の電極層に含まれる活物質の密度とバイポーラ電極上の位置との関係を示す図である。また、図8は、本実施例のバイポーラ型電池の側面図(概略図)である。
【0079】
上述した実施例1では、バイポーラ電極のX方向及びY方向において、電極層の厚さを異ならせた場合について説明したが、本実施例では、電極層の厚さは略均一(製造誤差を含む)にしつつ、電極層に含まれる活物質の密度を異ならせたものである。以下、具体的に説明する。
【0080】
本実施例のバイポーラ電極3において、集電体31の一方の面には、略均一な厚さを有する正極層(電極層)32が形成され、集電体31の他方の面には、略均一な厚さを有する負極層(電極層)33が形成されている。そして、このバイポーラ電極3を積層したバイポーラ型電池では、正極層32及び負極層33の間に、略均一な厚さを有するイオン伝導層34が配置されている。
【0081】
電極層32、33は、実施例1でも説明したように、正極及び負極に応じた、活物質、導電剤、添加剤等で構成されている。ここで、本実施例では、活物質の密度(電極層32、33の単位体積当たりの活物質の量)を、電極層32、33中の位置に応じて異ならせている。
【0082】
具体的には、図7に示すように、X方向及びY方向において、バイポーラ電極3の中心部における活物質の密度が最も低くなっており、外周部側に向かって活物質の密度を連続的に高くしている。
【0083】
ここで、本実施例では、図8に示すように、各電極層32、33の厚さを略均一に設定しているため、活物質の密度を異ならせることで、各電極層32、33中の活物質の量が異なることになる。また、活物質の密度を異ならせることで、各電極層32、33を構成する活物質以外の物質(例えば、導電剤)の密度も異なることになる。すなわち、活物質が低密度となる領域(中心部側の領域)では、導電剤等の密度が比較的高くなり、活物質が高密度となる領域(外周部側の領域)では、導電剤等の密度が比較的低くなる。
【0084】
なお、バイポーラ電極3の中心部における活物質の密度は、ゼロであってもよい。
【0085】
上述したように、活物質の密度を異ならせると、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせることができる。そして、バイポーラ電極3の中心部側における活物質の密度を外周部側よりも低くして、中心部側の電流密度を外周部側よりも低くすることで、電池の充放電に伴う中心部側での発熱を抑制でき、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0086】
また、本実施例では、活物質の密度を異ならせる構成であるため、集電体31の概ね全面に単一の電極層32、33を形成することができる。これにより、特許文献1に記載の構成のように、集電体上に複数の微小セル(電極層)を形成する場合に比べて、電極として用いることのできる有効面積を増加させることができる。しかも、特許文献1に記載の微小セルに比べて、各電極層32、33の面積を大型化できるため、集電体31から各電極層32、33が剥がれてしまうのを抑制することができる。
【0087】
ここで、図7に示す活物質の密度分布を示す曲線は、実施例1で説明した場合と同様に、従来のバイポーラ電極(電極層の厚みが略均一であって、活物質の密度が略均一な電極)での温度分布曲線に基づいて、設定することができる。
【0088】
一方、電極層中の活物質の密度を異ならせる方法としては、活物質の粒径を異ならせる方法がある。この構成について、図9を用いて具体的に説明する。ここで、図9は、本実施例のバイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置に応じた電流密度及び電極層中の活物質の粒径の分布を示す図である。
【0089】
図9に示す構成では、バイポーラ電極3の中心部に位置する活物質として、最も粒径の大きい活物質の粒子を用いている。また、バイポーラ電極3の外周部に位置する活物質として、最も粒径の小さい活物質の粒子を用いている。そして、中心部から外周部に向かって、活物質の粒子の粒径が小さくなるようにしている。
【0090】
粒径の大きい活物質を用いた場合には、活物質の粒子同士の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が小さくなるとともに、活物質の粒子及びイオン伝導層34の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が小さくなる。このように、接触面積が小さい領域では、電池の充放電に伴う反応抵抗を大きくすることができ、電流密度を低下させることができる。
【0091】
一方、粒径の小さい活物質を用いた場合には、活物質の粒子同士の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が大きくなるとともに、活物質の粒子及びイオン伝導層34の接触面積(単位体積当たりの接触面積)が大きくなる。このように、接触面積が大きい領域では、電池の充放電に伴う反応抵抗を小さくすることができる。
【0092】
上述したように、電流密度が低い領域では電池の充放電に伴う発熱を抑制することができるため、バイポーラ電極3のうち放熱性が低い領域である中心部において、粒径の大きな活物質を用いれば、充放電に伴う温度上昇を抑制することができる。これにより、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0093】
ここで、バイポーラ電極3上の位置に応じて、活物質の粒径を異ならせる方法としては、粒径の異なる複数の活物質の粒子を用意しておき、これらをバイポーラ電極3上の位置に応じて使い分けることができる。また、粒径の異なる複数の活物質の粒子を用意しておき、バイポーラ電極3上の位置に応じて、粒径が異なる粒子の配合比率を異ならせることができる。
【0094】
なお、本実施例では、活物質の密度を連続的に変化させた場合について説明したが、これに限るものではなく、活物質の密度を段階的に変化させることもできる。例えば、図7に示す活物質の密度分布曲線に沿うように、活物質の密度を段階的に変化させることができる。ここで、電極層は、少なくとも2つの異なる密度を有する活物質を備えた構成とすることができる。
【0095】
また、X方向及びY方向のうちいずれか一方向において、各電極層32、33における活物質の密度を異ならせてもよい。この場合には、各電極層32、33における活物質の密度を異ならせた方向において、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0096】
さらに、本実施例では、活物質の密度を異ならせることによって、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせたが、活物質の材料を異ならせることによって、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせるようにしてもよい。すなわち、バイポーラ電極の中心部側における活物質の材料として、外周部側よりも抵抗値の高い材料を用い、バイポーラ電極の外周部側における活物質の材料として、中心部側よりも抵抗値の低い材料を用いることができる。
【0097】
また、活物質として、複数の材料を組み合わせたものを用いた場合には、これらの材料の混合比(体積比又は重量比)を異ならせるようにしてもよい。この場合にも、バイポーラ電極の中心部側の抵抗値が、外周部側の抵抗値よりも大きくなるように、混合比を設定する。
【0098】
ここで、活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウムのうち、少なくとも2つを含む混合物を用いることができる。
【0099】
このように、活物質の材料を異ならせたり、活物質を構成する複数の材料の混合比を異ならせたりすることで、バイポーラ電極上の電流密度を異ならせることができ、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0100】
なお、本実施例では、正極層32及び負極層33を同一の構成としたが、電極層32、33のうち一方の電極層を本実施例で説明した構成とし、他方の電極層を従来と同様の構成(活物質の密度が略均一な構成)とすることもできる。
【0101】
一方、積層構造のバイポーラ型電池において、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、このバイポーラ電極上の電極層の構成(活物質の密度等)を異ならせてもよい。例えば、中心層側に位置するバイポーラ電極における電極層と、外層側に位置するバイポーラ電極における電極層とを比較したときに、積層方向において対応する位置での電極層中の活物質の密度を、中心層側に位置するバイポーラ電極において小さくなるように設定することができる。これにより、積層方向においても温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0102】
なお、積層構造のバイポーラ型電池とは、複数の単電池(発電要素)が積層された構成を有する。また、単電池とは、例えば、図8に示す構成において、イオン伝導層34及び電極層32,33によって構成される発電要素をいう。
【0103】
ここで、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極3における電極層中の活物質の密度を異ならせる具体的な構成について、図10を用いて説明する。図10は、積層構造のバイポーラ型電池の積層方向における温度分布、電圧分布、入出力分布及び電極層中の活物質の粒径分布を示す図である。
【0104】
図10において、バイポーラ型電池100の積層方向における両端には、充放電に用いられる正極端子101及び負極端子102が設けられている。正極端子101及び負極端子102は、バイポーラ型電池100の充放電を制御するための回路に接続されている。
【0105】
ここで、複数の単電池を積層した構成のバイポーラ型電池100では、図10(B)に示すように、積層方向における温度分布が一定にはならず、中心層において最も温度が高くなり、外層において最も温度が低くなる。これは、バイポーラ型電池の充放電等に伴う発熱に起因するものであり、中心層側に位置する単電池では、外層側に位置する単電池に比べて放熱性が低く、熱がこもりやすいためである。
【0106】
この場合において、従来のように、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極3について、活物質の粒径を略一定にすると(図10(E)の点線参照)、中心層に位置する単電池では、温度上昇によって抵抗値が小さくなってしまう。これにより、図10(C)、(D)の点線で示すように、積層方向における単電池間で、電圧値や入出力値にバラツキが生じてしまう。
【0107】
ここで、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極3について、活物質の粒径を略一定にした場合には、積層方向における温度分布のバラツキが生じる前(言い換えれば、バイポーラ型電池100の使用前)において、すべての単電池における抵抗値は略一定となる。しかし、バイポーラ型電池100の使用(充放電等)に伴って、積層方向における温度分布にバラツキが生じるために、積層方向における単電池の抵抗値が変化してしまう。
【0108】
図10に示す構成では、上述したように、積層方向における単電池(バイポーラ電極3)の位置に応じて、電極層中(例えば、正極層)の活物質の粒径を異ならせている。
【0109】
具体的には、中心層に位置するバイポーラ電極3における活物質の粒径を最も大きくし、外層に位置するバイポーラ電極3における活物質の粒径を最も小さくしている。そして、中心層から外層に向かって、各バイポーラ電極3における活物質の粒径を徐々に小さくしている。なお、各バイポーラ電極3における活物質の粒径は略一定(製造誤差を含む)である。
【0110】
ここで、上述したように、活物質の粒径を大きくすれば、この単電池の抵抗値を大きくすることができる。また、活物質の粒径を小さくすれば、この単電池の抵抗値を小さくすることができる。
【0111】
このように、積層方向における位置に応じて、単電池の抵抗値を予め異ならせておけば、バイポーラ型電池100の充放電等によって、図10(B)に示す温度分布が発生したとしても、積層方向における単電池の抵抗値のバラツキを抑制することができる。このように抵抗値のバラツキを抑制すれば、バイポーラ型電池100における電圧値や入出力値のバラツキを抑制することができる。例えば、図10(C)、(D)の実線で示すように、電圧値及び入出力値を略一定にすることができる。
【0112】
ここで、図10(E)に示す粒径分布は、積層方向における温度分布(図10(B))に基づいて設定することができる。すなわち、バイポーラ型電池100の充放電等に伴う積層方向における温度分布を予め求めておけば、この温度変化に伴う各単電池での電圧変化量を得ることができる。
【0113】
そして、各単電池での電圧変化量に基づいて、各単電池の抵抗値(活物質の粒径)を設定することができる。すなわち、変化後の電圧値が積層方向においてばらつかないように、単電池の抵抗値(活物質の粒径)を設定することができる。
【0114】
図10に示す構成にすれば、積層方向における単電池間での電圧値や入出力値のバラツキを抑制できるため、バイポーラ型電池100内のすべての単電池に対して、同一の基準に基づいて充放電の制御を行うことができる。
【0115】
ここで、二次電池では、一般的に、入出力電圧が上下限電圧の範囲から外れると、電池寿命に悪影響を与えることが知られているため、電池の長寿命化を図るために、上下限電圧の範囲外となるような充放電は行わないようにしている(フェールセーフ)。本実施例では、このような充放電制御を、すべての単電池に対して同一の条件で行うことができる。
【0116】
しかも、中心層に位置する単電池を基準として、積層方向におけるすべての単電池の抵抗値を設定することで、図10(D)に示すように、従来のバイポーラ型電池(点線で示す)の最大の入出力値に対応した入出力値を得ることができる。
【0117】
なお、中心層側に位置するバイポーラ電極として、本実施例で説明したバイポーラ電極を用い、外層側に位置するバイポーラ電極として、従来のバイポーラ電極(活物質の密度が略均一な電極)を用いることもできる。
【0118】
また、本実施例では、各電極層32、33の厚さを略均一として、各電極層32、33中の活物質の密度を異ならせているが、活物質の密度を異ならせつつ、各電極層の厚さを異ならせてもよい。この場合には、活物質の密度及び電極層の厚さといった、2つのパラメータを適宜設定することにより、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0119】
上述した実施例1、2で説明した二次電池(キャパシタも同様)は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、燃料電池車(FCV)におけるモータ駆動用の蓄電装置として用いることができる。
【0120】
一方、上述した実施例1、2では、バイポーラ電極自体の放熱特性を考慮して電極層中の活物質の量(具体的には、電極層の厚さや電極層中の活物質の密度)を異ならせているが、外部からの熱的影響を受けてバイポーラ電極上の温度分布にバラツキが生じる場合には、この熱的影響を考慮して、電極層中の活物質の量を異ならせることもできる。以下、具体的に説明する。
【0121】
例えば、バイポーラ型電池の近傍に熱源(エンジンやモータ等)が配置されている場合には、この熱源からの熱的影響を受けることによって、バイポーラ型電池における熱源側の領域は、他の領域に比べて高温となる(言い換えれば、放熱性が悪化する)ことがある。
【0122】
そこで、バイポーラ電極のうち熱源側の領域における活物質の量を、他の領域における活物質の量よりも少なくすることで、バイポーラ電極における温度分布のバラツキを抑制することができる。すなわち、上述した実施例1、2と同様に、活物質の量を異ならせることで、電流密度を異ならせることができ、バイポーラ電極上での温度上昇を抑制することができる。なお、図9に示した構成と同様に、電極層中の活物質の粒径を異ならせることもできる。
【0123】
ここで、熱源からの熱的影響を踏まえたバイポーラ電極上での温度分布特性(予め予測可能である)を考慮することで、電極層中の活物質の量を設定することができる。
【0124】
例えば、上述した実施例1、2で説明したバイポーラ電極の構成に加えて、又は、実施例1、2で説明したバイポーラ電極の構成に代えて、熱源側に位置する領域(一方の外周部側の領域)での活物質の量を他の領域(他方の外周部側の領域)での活物質の量よりも少なくすることができる。これにより、電池の充放電に伴う発熱と、外部からの熱的影響に伴う発熱によって、バイポーラ電極上において温度分布がばらつくのを抑制することができる。
【0125】
また、熱源からの熱的影響によって、バイポーラ電極のうち熱源側の領域において、最も温度上昇が大きくなる場合(最も放熱性が低くなる場合)には、熱源側の領域における活物質の量を最も少なくすることもできる。
【0126】
一方、実施例1、2で説明した複数のバイポーラ電極を積層した構成のバイポーラ型電池に対して、この積層方向に熱源が配置されている場合には、複数のバイポーラ電極のうち熱源側に位置するバイポーラ電極が熱源からの熱的影響を受け易くなっている。そこで、熱源側に位置するバイポーラ電極における電極層の構成と、熱源側とは反対側に位置するバイポーラ電極における電極層の構成とを異ならせることができる。
【0127】
具体的には、積層された複数のバイポーラ電極のうち、熱源側(積層方向のうち一方の最外層側)に位置するバイポーラ電極(1つ又は複数)における活物質の量を、他のバイポーラ電極(例えば、積層方向のうち他方の最外層側に位置するバイポーラ電極)における活物質の量よりも少なくすることができる。すなわち、複数のバイポーラ電極のうち積層方向において対応する領域における活物質の量を異ならせることができる。また、図10に示した構成と同様に、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極の電極層中における活物質の粒径を異ならせることもできる。
【0128】
積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて活物質の量を異ならせる場合には、例えば、積層方向における中心層側と、熱源側の最外層側とに位置するバイポーラ電極における活物質の量を、他のバイポーラ電極における活物質の量よりも少なくすることができる。このように構成することで、バイポーラ型電池が熱源からの熱的影響を受けた場合でも、積層方向における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0129】
なお、熱源側の最外層側に位置するバイポーラ電極上での温度が最も高くなる場合(言い換えれば、放熱性が最も低くなる場合)場合には、このバイポーラ電極における活物質の量を最も少なくすることもできる。
【0130】
ここで、上述した、積層方向における位置に応じてバイポーラ電極における活物質の量を異ならせる構成においては、各バイポーラ電極として、実施例1、2で説明したバイポーラ電極を用いたり、従来のバイポーラ電極(電極層中の活物質の量が略均一な電極)を用いたりすることができる。
【0131】
活物質の量を異ならせる方法としては、上述した実施例1、2で説明した場合と同様に、電極層の厚さを異ならせることで活物質の量を異ならせたり(図1参照)、電極層中の単位体積当たりの活物質の密度を異ならせたり(図7参照)することができる。また、活物質の材料を異ならせたり、活物質を構成する複数の材料の混合比を異ならせたりしてもよい。
【0132】
一方、上述した実施例1、2では、活物質の量を異ならせることによって、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制するようにしているが、電極層に含まれる導電剤の量を異ならせることによって、バイポーラ電極上の温度分布のバラツキを抑制させることもできる。
【0133】
ここで、電極層中の導電剤の密度(単位体積当たりの導電剤の量)を異ならせる構成について、図11を用いて具体的に説明する。図11は、バイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置に応じた電流密度及び導電剤の密度分布を示す図である。
【0134】
図11に示す構成では、バイポーラ電極3の電極層のうち、中心部に位置する領域内における導電剤の密度が最も低い。また、バイポーラ電極3の電極層のうち、外周部に位置する領域内における導電剤の密度が最も高い。そして、中心部から外周部に向かって、導電剤の密度が高くなっている。
【0135】
導電剤は、電極層の電子伝導性を向上させるために用いられているため、導電剤の密度を低くすれば、電極層における抵抗(いわゆる電子抵抗)を大きくでき、導電剤の密度を高くすれば、電極層における抵抗を小さくできる。そして、抵抗が大きくなれば、電流密度を低下させることができる。
【0136】
上述したように、電流密度が低い領域では電池の充放電に伴う発熱を抑制することができるため、バイポーラ電極3のうち放熱性が低い領域である中心部において、電極層中の導電剤の密度を低くすれば、充放電に伴う温度上昇を抑制することができる。これにより、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0137】
なお、図11に示す構成では、電極層中の導電剤の密度を連続的に変化させているが、これに限るものではなく、段階的に変化させることもできる。この場合にも、中心部側の領域内における導電剤の密度を、外周部側の領域内における導電剤の密度よりも低くする。また、図11では、X方向及びY方向において、導電剤の密度を異ならせているが、一方向において導電剤の密度を異ならせることもできる。この場合には、導電剤の密度を異ならせた方向において、温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0138】
ここで、図11に示す構成では、電池自体の放熱性を考慮したものであるが、電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けてバイポーラ電極3上の温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、電極層中の導電剤の密度を異ならせることができる。例えば、バイポーラ電極3のうち、熱源側の領域で最も温度が高くなる場合には、この領域における導電剤の密度を、他の領域における導電剤の密度よりも低くすることができる。
【0139】
一方、積層構造のバイポーラ型電池において、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を異ならせることもできる。
【0140】
ここで、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極における導電剤の密度を異ならせる具体的な構成について、図12を用いて説明する。図12は、積層構造のバイポーラ型電池の積層方向における温度分布、電圧分布、入出力分布及び電極層中の導電剤の密度分布を示す図である。
【0141】
図12(A)において、バイポーラ型電池100の積層方向における両端には、充放電に用いられる正極端子101及び負極端子102が設けられている。正極端子101及び負極端子102は、バイポーラ型電池100の充放電を制御するための回路(不図示)に接続されている。
【0142】
ここで、複数の単電池を積層した構成のバイポーラ型電池100では、図12(B)に示すように、積層方向における温度分布が一定にならず、中心層において最も温度が高くなり、外層において最も温度が低くなることがある。
【0143】
この場合において、従来のように、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の導電剤の密度を略一定にすると(図12(E)の点線参照)、中心層に位置する単電池では、充放電等に伴う温度上昇によって抵抗値が小さくなってしまう。これにより、図12(C)、(D)の点線で示すように、積層方向における単電池間で、電圧値や入出力値にバラツキが生じてしまう。
【0144】
ここで、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の導電剤の密度を略一定にした場合には、積層方向における温度分布のバラツキが生じる前(言い換えれば、バイポーラ型電池100の使用前)において、すべての単電池における抵抗値は略一定となる。しかし、バイポーラ型電池100の使用(充放電等)に伴って、積層方向における温度分布にバラツキが生じるために、積層方向の位置に応じて単電池の抵抗値にバラツキが生じてしまう。
【0145】
図12に示す機構性では、上述したように、積層方向における単電池(バイポーラ電極)の位置に応じて、電極層中の導電剤の密度を異ならせている。
【0146】
具体的には、中心層に位置するバイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を最も低くし、外層に位置するバイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を最も高くしている。そして、中心層から外層に向かって、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を高くしている。
【0147】
なお、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度は略一定(製造誤差を含む)である。ここで、図12に示す構成に加えて、各バイポーラ電極における電極層を、図11で説明した構成とすることもできる。
【0148】
ここで、上述したように、電極層中の導電剤の密度を低くすれば、この単電池の抵抗値を大きくすることができる。また、電極層中の導電剤の密度を高くすれば、この単電池の抵抗値を小さくすることができる。
【0149】
したがって、図12に示す構成のように、積層方向における位置に応じて、単電池の抵抗値を予め異ならせておけば、バイポーラ型電池100の充放電等によって、図12(B)に示す温度分布が発生したとしても、積層方向の位置に応じて単電池の抵抗値にバラツキが生じるのを抑制することができる。このように抵抗値のバラツキを抑制すれば、バイポーラ型電池100における電圧値や入出力値のバラツキを抑制することができる。例えば、図12(C)、(D)の実線で示すように、電圧値及び入出力値を略一定にすることができる。
【0150】
ここで、図12(E)に示す密度分布は、積層方向における温度分布(図12(B))に基づいて設定することができる。すなわち、バイポーラ型電池100の充放電等に伴う積層方向における温度分布を予め求めておけば、この温度変化に伴う各単電池での電圧変化量を得ることができる。
【0151】
そして、各単電池での電圧変化量に基づいて、各単電池の抵抗値(電極層中の導電剤の密度)を設定することができる。すなわち、変化後の電圧値が積層方向においてばらつかないように、単電池の抵抗値(電極層中の導電剤の密度)を設定することができる。
【0152】
図12に示す構成によれば、積層方向における単電池間での電圧値や入出力値のバラツキを抑制できるため、バイポーラ型電池100内のすべての単電池に対して、同一の基準に基づいて充放電の制御を行うことができる。
【0153】
ここで、二次電池では、一般的に、入出力電圧が上下限電圧の範囲から外れると、電池寿命に悪影響を与えることが知られているため、電池の長寿命化を図るために、上下限電圧の範囲外となるような充放電は行わないようにしている(フェールセーフ)。本実施例では、このような充放電制御を、すべての単電池に対して同一の条件で行うことができる。
【0154】
しかも、中心層に位置する単電池を基準として、積層方向におけるすべての単電池の抵抗値を設定することで、図12(D)に示すように、従来のバイポーラ型電池(点線で示す)の最大の入出力値に対応した入出力値を得ることができる。
【0155】
ここで、図12に示す構成では、積層構造のバイポーラ型電池自体の放熱性を考慮したものであるが、このバイポーラ型電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けて積層方向における温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、各バイポーラ電極における電極層中の導電剤の密度を異ならせることができる。例えば、熱源側に位置する単電池において温度が最も高くなる場合には、この単電池における電極層中の導電剤の密度を、他の単電池における電極層中の導電剤の密度よりも低くすることができる。
【0156】
ただし、電極層の全体において活物質の量を略一定とし、導電剤の量だけを異ならせると、電池の充放電に用いられない活物質が存在してしまうことがある。すなわち、導電剤の量が他の領域よりも少ない領域では、電池の充放電に用いられない活物質が多く存在してしまうことがある。
【0157】
通常、活物質としては、比較的高価な材料を用いているため、使用されない活物質が存在することは好ましくない。したがって、導電剤の量を異ならせた場合には、活物質の量も異ならせることが好ましい。これにより、活物質を効率良く用いることができ、使用されない活物質が含まれることによるバイポーラ電極のコストアップを抑制することができる。
【0158】
一方、上述した実施例1、2では、活物質の量を異ならせることによって、バイポーラ電極上における温度分布のバラツキを抑制するようにしているが、バイポーラ電極の電極層に含まれる固体電解質の構成を異ならせることによって、バイポーラ電極上の温度分布のバラツキを抑制させることもできる。具体的には、電極層中の固体電解質の密度を異ならせたり、電極層中に互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含ませた場合において、これらの固体電解質の混合比を異ならせたりすることができる。
【0159】
ここで、電極層中の固体電解質の密度(単位体積当たりの固体電解質の量)を異ならせる構成について、図13を用いて具体的に説明する。図13は、バイポーラ型電池に用いられるバイポーラ電極の正面図と、バイポーラ電極上の位置に応じた電流密度及び電極層中の固体電解質の密度分布を示す図である。
【0160】
図13に示す構成では、バイポーラ電極3の電極層のうち、中心部に位置する領域内における固体電解質の密度が最も低い。また、バイポーラ電極3の電極層のうち、外周部に位置する領域内における固体電解質の密度が最も高い。そして、中心部から外周部に向かって、固体電解質の密度が高くなっている。
【0161】
ここで、電極層中の固体電解質の密度を低くすれば、電極層におけるイオン伝導度を小さくでき、固体電解質の密度を高くすれば、電極層におけるイオン伝導度を大きくできる。そして、イオン伝導度を小さくすれば、電流密度を低下させることができる。
【0162】
上述したように、電流密度が低い領域では電池の充放電に伴う発熱を抑制することができるため、バイポーラ電極3のうち放熱性が低い領域である中心部において、電極層中の固体電解質の密度を低くすれば、充放電に伴う温度上昇を抑制することができる。これにより、バイポーラ電極3上における温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0163】
なお、図13に示す構成では、電極層中の固体電解質の密度を連続的に変化させているが、これに限るものではなく、段階的に変化させることもできる。この場合にも、電極層のうち、中心部側の領域内における固体電解質の密度を、外周部側の領域内における固体電解質の密度よりも低くする。また、図13に示す構成では、X方向及びY方向において、電極層中の固体電解質の密度を異ならせているが、一方向において電極層中の固体電解質の密度を異ならせることもできる。この場合には、固体電解質の密度を異ならせた方向において、温度分布のバラツキを抑制することができる。
【0164】
ここで、図13に示す構成では、電池自体の放熱性を考慮したものであるが、電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けてバイポーラ電極上の温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、電極層中の固体電解質の密度を異ならせることができる。例えば、バイポーラ電極のうち、熱源側の領域が最も温度が高くなる場合には、この領域における固体電解質の密度を、他の領域における固体電解質の密度よりも低くすることができる。
【0165】
一方、バイポーラ電極3の電極層中に、互いに異なる種類(材料)の複数の固体電解質を含ませる場合には、バイポーラ電極上の位置に応じて、異なる種類の固体電解質を使い分けたり、複数の固体電解質の混合比を変えたりすることにより、イオン伝導度を異ならせることができる。この場合には、バイポーラ電極3の中心部において最もイオン伝導度が低く、外周部において最もイオン伝導度が高くなるように、固体電解質を使い分けたり、複数の固体電解質の混合比を変えたりすることができる。
【0166】
ここで、固体電解質の材料とイオン伝導度の具体例を挙げると、Li2O−B2O3;10−7[S/cm]、Li2O2−SiO2;10−6[S/cm]、Li2S−GeS4;10−5[S/cm]、Li2S−P2S5;10−4[S/cm]、LiI−Li2S−P2S5;10−3[S/cm]がある。これらの材料を、バイポーラ電極上の位置に応じて使い分けたり、混合比を変えたりすることにより、所望のイオン伝導度を得ることができる。
【0167】
なお、固体電解質の粒子の表面にコーティングを施す場合には、コーティングの材料によって、イオン伝導度を高くしたり、低くしたりすることができる。そして、互いに異なる種類の固体電解質粒子(コーティングの材料が異なる固体電解質粒子)を用いる場合には、バイポーラ電極3上の位置に応じて、固体電解質粒子の種類を異ならせたり、複数の固体電解質粒子(少なくとも2種類)の混合比を異ならせたりすることができる。
【0168】
一方、積層構造のバイポーラ型電池において、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、各バイポーラ電極における電極層中の固体電解質の構成を異ならせることもできる。具体的には、電極層中の固体電解質の密度を異ならせたり、電極層中に互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含ませた場合において、これらの固体電解質の混合比を異ならせたりすることができる。
【0169】
ここで、積層方向の位置に応じて、各バイポーラ電極3の電極層における固体電解質の密度を異ならせる具体的な構成について、図14を用いて説明する。図14は、積層構造のバイポーラ型電池の積層方向における温度分布、電圧分布、入出力分布及び各バイポーラ電極の電極層中の固体電解質の密度分布を示す図である。
【0170】
図14(A)において、バイポーラ型電池100の積層方向における両端には、充放電に用いられる正極端子101及び負極端子102が設けられている。正極端子101及び負極端子102は、バイポーラ型電池100の充放電を制御するための回路(不図示)に接続されている。
【0171】
ここで、複数の単電池を積層した構成のバイポーラ型電池100では、図14(B)に示すように、積層方向における温度分布が一定にはならず、中心層において最も温度が高くなり、外層において最も温度が低くなることがある。
【0172】
この場合において、従来のように、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の固体電解質の密度を略一定にすると(図14(E)の点線参照)、中心層に位置する単電池では、温度上昇によって抵抗値が小さくなってしまう。これにより、図14(C)、(D)の点線で示すように、積層方向における単電池間で、電圧値や入出力値にバラツキが生じてしまう。
【0173】
ここで、積層方向におけるすべてのバイポーラ電極について、電極層中の固体電解質の密度を略一定にした場合には、積層方向における温度分布のバラツキが生じる前(言い換えれば、バイポーラ型電池100の使用前)において、すべての単電池における抵抗値は略一定となる。しかし、バイポーラ型電池100の使用(充放電等)に伴って、積層方向における温度分布にバラツキが生じるために、積層方向における単電池の抵抗値が変化してしまう。
【0174】
本実施例では、上述したように、積層方向における単電池(バイポーラ電極)の位置に応じて、電極層中の固体電解質の密度を異ならせている。
【0175】
具体的には、中心層に位置するバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を最も低くし、外層に位置するバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を最も高くしている。そして、中心層から外層に向かって、各バイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を高くしている。
【0176】
なお、各バイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度は略一定(製造誤差を含む)である。ここで、図14に示す構成に加えて、各バイポーラ電極における電極層を、図13で説明した構成とすることもできる。
【0177】
ここで、上述したように、電極層中の固体電解質の密度を低くすれば、この電極層におけるイオン伝導度を小さくすることができる。また、電極層中の固体電解質の密度を高くすれば、この電極層内のイオン伝導度を大きくすることができる。
【0178】
このように、積層方向における位置に応じて、各バイポーラ電極の電極層におけるイオン伝導度を予め異ならせておけば、バイポーラ型電池100の充放電等によって、図14(B)に示す温度分布が発生したとしても、積層方向における単電池の抵抗値のバラツキを抑制することができる。このように抵抗値のバラツキを抑制すれば、バイポーラ型電池100における電圧値や入出力値のバラツキを抑制することができる。例えば、図14(C)、(D)の実線で示すように、電圧値及び入出力値を略一定にすることができる。
【0179】
ここで、図14(E)に示す密度分布は、積層方向における温度分布(図14(B))に基づいて設定することができる。すなわち、バイポーラ型電池100の充放電等に伴う積層方向における温度分布を予め求めておけば、この温度変化に伴う各単電池での電圧変化量を得ることができる。
【0180】
そして、各単電池での電圧変化量に基づいて、各単電池の抵抗値(各バイポーラ電極の電極層におけるイオン伝導度)を設定することができる。すなわち、変化後の電圧値が積層方向においてばらつかないように、単電池の抵抗値(各バイポーラ電極の電極層におけるイオン伝導度)を設定することができる。
【0181】
図14に示す構成にすれば、積層方向における単電池間での電圧値や入出力値のバラツキを抑制できるため、バイポーラ型電池100内のすべての単電池に対して、同一の基準に基づいて充放電の制御を行うことができる。
【0182】
ここで、二次電池では、一般的に、入出力電圧が上下限電圧の範囲から外れると、電池寿命に悪影響を与えることが知られているため、電池の長寿命化を図るために、上下限電圧の範囲外となるような充放電は行わないようにしている(フェールセーフ)。本実施例では、このような充放電制御を、すべての単電池に対して同一の条件で行うことができる。
【0183】
しかも、中心層に位置する単電池を基準として、積層方向におけるすべての単電池の抵抗値を設定することで、図14(D)に示すように、従来のバイポーラ型電池(点線で示す)の最大の入出力値に対応した入出力値を得ることができる。
【0184】
ここで、図14に示す構成では、積層構造のバイポーラ型電池自体の放熱性を考慮したものであるが、電池が外部(例えば、熱源)からの熱的影響を受けて積層方向における温度分布にバラツキが生じる場合には、上述した場合と同様に、熱的影響を考慮して、積層方向の位置に応じて電極層中の固体電解質の密度(又は、複数種類の固体電解質の混合比)を異ならせることができる。例えば、熱源側に位置するバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度を、積層方向で他の位置にあるバイポーラ電極における電極層中の固体電解質の密度よりも低くすることができる。
【0185】
一方、電極層中の固体電解質として、互いに異なる種類(材料)の固体電解質を用いる場合には、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、異なる種類の固体電解質を使い分けたり、各バイポーラ電極の電極層に含まれる複数の固体電解質の混合比を変えたりすることにより、イオン伝導度を異ならせることができる。ここで、各バイポーラ電極の電極層は、すべての領域において同一の構成(材料が同一又は混合比が一定)とすることもできるし、図13で説明したようにバイポーラ電極上の位置に応じて構成を異ならせることもできる。
【0186】
複数種類の固体電解質を用いる場合には、中心層に位置するバイポーラ電極の電極層においてイオン伝導度が最も低く、外周部に位置するバイポーラ電極の電極層においてイオン伝導度が最も高くなるように、異なる材料の固体電解質を使い分けたり、各バイポーラ電極の電極層に含まれる複数の固体電解質の混合比を変えたりすることができる。
【0187】
なお、固体電解質の粒子の表面にコーティングを施す場合には、コーティングの材料によって、イオン伝導度を高くしたり、低くしたりすることができる。そして、互いに異なる種類の固体電解質粒子(コーティングの材料が異なる固体電解質粒子)を用いる場合には、積層方向におけるバイポーラ電極の位置に応じて、バイポーラ電極の電極層に含まれる固体電解質粒子の種類を異ならせたり、各バイポーラ電極の電極層に含まれる複数の固体電解質粒子(少なくとも2種類)の混合比を異ならせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】本発明の実施例1において、電極上の位置と電極層の厚さの関係を示す図である。
【図2】実施例1におけるバイポーラ型電池の側面図である。
【図3】電極の位置に応じた温度分布を示す図である。
【図4】実施例1におけるバイポーラ型電池の支持構造を示す概略図である。
【図5】実施例1の変形例において、電極上の位置と電極層の厚さの関係を示す図である。
【図6】実施例1の変形例におけるバイポーラ型電池の側面図である。
【図7】本発明の実施例2において、電極上の位置と活物質の密度の関係を示す図である。
【図8】実施例2におけるバイポーラ型電池の側面図である。
【図9】電極上の位置と活物質の粒径との関係を示す図である。
【図10】バイポーラ型電池の積層方向の位置と、温度、電圧値、入出力値および電極層中の活物質の粒径との関係を示す図である(A〜E)。
【図11】電極上の位置と電極層中の導電剤の密度との関係を示す図である。
【図12】バイポーラ型電池の積層方向の位置と、温度、電圧値、入出力値および電極層中の導電剤の密度との関係を示す図である(A〜E)。
【図13】電極上の位置と電極層中の固体電解質の密度との関係を示す図である。
【図14】バイポーラ型電池の積層方向の位置と、温度、電圧値、入出力値および電極層中の固体電解質の密度との関係を示す図である(A〜E)。
【符号の説明】
【0189】
1、2、3:バイポーラ電極
11、21、31:集電体
12、22、32:電極層(正極層)
13、23、33:電極層(負極層)
14、24、34:イオン伝導層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極であって、
集電体と、
該集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有し、
該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、前記他の領域における電流密度よりも低くなるように、前記電極層の構成が前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする蓄電装置用電極。
【請求項2】
前記電極層中の活物質の量が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項3】
該電極の中心部側における前記電極層中の活物質の量が、該電極の端部側における前記電極層中の活物質の量よりも少ないことを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置用電極。
【請求項4】
前記電極層のうち、該電極の中心部側に位置する領域の厚さが、該電極の端部側に位置する領域の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置用電極。
【請求項5】
前記電極層の厚さが、該電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少していることを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置用電極。
【請求項6】
前記電極層中の活物質の密度が略等しいことを特徴とする請求項4又は5に記載の蓄電装置用電極。
【請求項7】
該電極の中心部側における前記電極層中の活物質の密度が、該電極の端部側における前記電極層中の活物質の密度よりも低いことを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置用電極。
【請求項8】
前記活物質の密度が、該電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少していることを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置用電極。
【請求項9】
前記電極層の厚さが略等しいことを特徴とする請求項7又は8に記載の蓄電装置用電極。
【請求項10】
前記電極層中の活物質の粒径が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項11】
該電極の中心部側における前記電極層中の活物質の粒径が、該電極の端部側における前記電極層中の活物質の粒径よりも大きいことを特徴とする請求項10に記載の蓄電装置用電極。
【請求項12】
前記電極層は、導電剤を含んでおり、
前記電極層中の導電剤の密度が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項13】
該電極の中心部側における前記電極層中の導電剤の密度が、該電極の端部側における前記電極層中の導電剤の密度よりも低いことを特徴とする請求項12に記載の蓄電装置用電極。
【請求項14】
前記電極層は、固体電解質を含んでおり、
前記電極層中の固体電解質の密度が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項15】
該電極の中心部側における前記電極層中の固体電解質の密度が、該電極の端部側における前記電極層中の固体電解質の密度よりも低いことを特徴とする請求項14に記載の蓄電装置用電極。
【請求項16】
前記電極層は、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでおり、
前記電極層中における前記複数の固体電解質の混合比が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項17】
前記複数の固体電解質は、互いに異なるイオン伝導度を有することを特徴とする請求項16に記載の蓄電装置用電極。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1つに記載の蓄電装置用電極を、正極及び負極の少なくとも一方として用いたことを特徴とする蓄電装置。
【請求項19】
請求項4から6のいずれか1つに記載の蓄電装置用電極と、
該蓄電装置用電極に接触するイオン伝導層とを有し、
前記イオン伝導層のうち、前記蓄電装置用電極の中心部側に対応した領域の厚さが、前記蓄電装置用電極の端部側に対応した領域の厚さよりも厚いことを特徴とする蓄電装置。
【請求項20】
複数のイオン伝導層を有し、これらのイオン伝導層が複数の電極を介して積層された蓄電装置であって、
前記各電極は、集電体と、該集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有しており、
該蓄電装置の積層方向において放熱性が他の位置よりも低い位置に配置された第1の電極の抵抗値が、前記他の位置に配置された第2の電極の抵抗値よりも大きくなるように、前記第1及び第2の電極における電極層の構成が互いに異なることを特徴とする蓄電装置。
【請求項21】
前記第1の電極における電極層中の活物質の粒径が、前記第2の電極における電極層中の活物質の粒径よりも大きいことを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項22】
前記各電極の電極層は、導電剤を含んでおり、
前記第1の電極における電極層中の導電剤の密度が、前記第2の電極における電極層中の導電剤の密度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項23】
前記各電極の電極層は、固体電解質を含んでおり、
前記第1の電極における電極層中の固体電解質の密度が、前記第2の電極における電極層中の固体電解質の密度よりも低いことを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項24】
前記各電極の電極層は、固体電解質を含んでおり、
前記第1及び第2の電極における電極層中の固体電解質の材料が、互いに異なることを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項25】
前記各電極の電極層は、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでおり、
前記第1及び第2の電極の電極層中における前記複数の固体電解質の混合比が互いに異なることを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項26】
前記第1の電極における電極層のイオン伝導度が、前記第2の電極における電極層のイオン伝導度よりも小さいことを特徴とする請求項23から25のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項27】
前記第1の電極は、該蓄電装置の積層方向における中心層側に位置し、
前記第2の電極は、前記第1の電極に対して外層側に位置していることを特徴とする請求項20から26のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項1】
イオン伝導層を介して積層された複数の電極を有する蓄電装置に用いられる電極であって、
集電体と、
該集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有し、
該電極のうち放熱性が他の領域よりも低い領域における電流密度が、前記他の領域における電流密度よりも低くなるように、前記電極層の構成が前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする蓄電装置用電極。
【請求項2】
前記電極層中の活物質の量が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項3】
該電極の中心部側における前記電極層中の活物質の量が、該電極の端部側における前記電極層中の活物質の量よりも少ないことを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置用電極。
【請求項4】
前記電極層のうち、該電極の中心部側に位置する領域の厚さが、該電極の端部側に位置する領域の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置用電極。
【請求項5】
前記電極層の厚さが、該電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少していることを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置用電極。
【請求項6】
前記電極層中の活物質の密度が略等しいことを特徴とする請求項4又は5に記載の蓄電装置用電極。
【請求項7】
該電極の中心部側における前記電極層中の活物質の密度が、該電極の端部側における前記電極層中の活物質の密度よりも低いことを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置用電極。
【請求項8】
前記活物質の密度が、該電極の端部側から中心部側に向かって、連続的又は段階的に減少していることを特徴とする請求項7に記載の蓄電装置用電極。
【請求項9】
前記電極層の厚さが略等しいことを特徴とする請求項7又は8に記載の蓄電装置用電極。
【請求項10】
前記電極層中の活物質の粒径が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項11】
該電極の中心部側における前記電極層中の活物質の粒径が、該電極の端部側における前記電極層中の活物質の粒径よりも大きいことを特徴とする請求項10に記載の蓄電装置用電極。
【請求項12】
前記電極層は、導電剤を含んでおり、
前記電極層中の導電剤の密度が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項13】
該電極の中心部側における前記電極層中の導電剤の密度が、該電極の端部側における前記電極層中の導電剤の密度よりも低いことを特徴とする請求項12に記載の蓄電装置用電極。
【請求項14】
前記電極層は、固体電解質を含んでおり、
前記電極層中の固体電解質の密度が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項15】
該電極の中心部側における前記電極層中の固体電解質の密度が、該電極の端部側における前記電極層中の固体電解質の密度よりも低いことを特徴とする請求項14に記載の蓄電装置用電極。
【請求項16】
前記電極層は、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでおり、
前記電極層中における前記複数の固体電解質の混合比が、前記電極層中の位置に応じて異なることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置用電極。
【請求項17】
前記複数の固体電解質は、互いに異なるイオン伝導度を有することを特徴とする請求項16に記載の蓄電装置用電極。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1つに記載の蓄電装置用電極を、正極及び負極の少なくとも一方として用いたことを特徴とする蓄電装置。
【請求項19】
請求項4から6のいずれか1つに記載の蓄電装置用電極と、
該蓄電装置用電極に接触するイオン伝導層とを有し、
前記イオン伝導層のうち、前記蓄電装置用電極の中心部側に対応した領域の厚さが、前記蓄電装置用電極の端部側に対応した領域の厚さよりも厚いことを特徴とする蓄電装置。
【請求項20】
複数のイオン伝導層を有し、これらのイオン伝導層が複数の電極を介して積層された蓄電装置であって、
前記各電極は、集電体と、該集電体上に形成され、少なくとも活物質を含む電極層とを有しており、
該蓄電装置の積層方向において放熱性が他の位置よりも低い位置に配置された第1の電極の抵抗値が、前記他の位置に配置された第2の電極の抵抗値よりも大きくなるように、前記第1及び第2の電極における電極層の構成が互いに異なることを特徴とする蓄電装置。
【請求項21】
前記第1の電極における電極層中の活物質の粒径が、前記第2の電極における電極層中の活物質の粒径よりも大きいことを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項22】
前記各電極の電極層は、導電剤を含んでおり、
前記第1の電極における電極層中の導電剤の密度が、前記第2の電極における電極層中の導電剤の密度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項23】
前記各電極の電極層は、固体電解質を含んでおり、
前記第1の電極における電極層中の固体電解質の密度が、前記第2の電極における電極層中の固体電解質の密度よりも低いことを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項24】
前記各電極の電極層は、固体電解質を含んでおり、
前記第1及び第2の電極における電極層中の固体電解質の材料が、互いに異なることを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項25】
前記各電極の電極層は、互いに異なる材料で形成された複数の固体電解質を含んでおり、
前記第1及び第2の電極の電極層中における前記複数の固体電解質の混合比が互いに異なることを特徴とする請求項20に記載の蓄電装置。
【請求項26】
前記第1の電極における電極層のイオン伝導度が、前記第2の電極における電極層のイオン伝導度よりも小さいことを特徴とする請求項23から25のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項27】
前記第1の電極は、該蓄電装置の積層方向における中心層側に位置し、
前記第2の電極は、前記第1の電極に対して外層側に位置していることを特徴とする請求項20から26のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−78109(P2008−78109A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38881(P2007−38881)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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