説明

蓄電装置

【課題】 簡素な構成でありながら、蓄電素子の放熱を効率良く行うことができる蓄電装置を提供する。
【解決手段】 蓄電装置(1)は、複数の蓄電素子(21)と、複数の蓄電素子を密閉状態で収容するケース(10)と、蓄電素子の外面と接触し、蓄電素子からの熱を受けて蒸発可能な液状の冷媒を吸収した吸収シート(23)と、を有する。吸収シートは、毛細管現象を用いることにより、ケース内に充填された冷媒(40)を吸収シート内に吸収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の放熱を行わせる構造を備えた蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のバッテリ冷却構造では、単電池に冷媒(液体)を接触させておき、単電池が発熱したときには、冷媒を蒸発させることにより、単電池を冷却するようにしている。そして、冷媒の蒸気は、凝縮器で冷却されることにより、液化して単電池が収容されたスペースに戻るようになっている。
【0003】
一方、特許文献2に記載の集合電池では、隣り合って配置された2つの単電池の間に、樹脂で形成された断熱部材を配置することにより、一方の単電池で発生した熱が他方の単電池に伝達されるのを抑制するようにしている。また、断熱部材に溝を形成することにより、単電池の冷却に用いられる空気を移動させるための通路(空間)を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−135160号公報(段落0043−0045、図1)
【特許文献2】特開2004−362879号公報(段落0010,0013、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のバッテリ冷却構造では、単電池の全面に冷媒を接触させるようにしているため、冷媒の使用量が多くなってしまう。特に、高価な冷媒を用いる場合には、冷却構造のコストが高くなってしまう。
【0006】
一方、特許文献2に記載の構成において、断熱部材の溝によって形成された通路では、単電池の放熱を効率良く行うことができる。しかしながら、断熱部材のうち、溝が形成されていない部分は、単電池に接触しており、単電池で発生した熱を逃がすためのスペースが形成されていない。このため、単電池および断熱部材が互いに接触している領域では、単電池の放熱を効率良く行うことができないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、簡素な構成で、蓄電素子の放熱を効率良く行うことができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明である蓄電装置は、複数の蓄電素子と、複数の蓄電素子を密閉状態で収容するケースと、蓄電素子の外面と接触し、蓄電素子からの熱を受けて蒸発可能な液状の冷媒を吸収した吸収シートと、を有する。
【0009】
ここで、吸収シートは、毛細管現象を用いることにより、ケース内に充填された冷媒を吸収シート内に吸収することができる。吸収シートは、毛細管現象を発生させることができる構造を有していればよく、具体的には、吸収シートを多孔質体で構成することができる。また、吸収シートを繊維で形成すれば、吸収シートに毛細管現象を発生させたり、安価に製造したりすることができる。
【0010】
複数の蓄電素子は、吸収シートおよびスペーサを挟んだ状態で所定方向に並んで配置することができる。ここで、隣り合って配置された2つの蓄電素子の間には、吸収シートおよびスペーサが所定方向に並んで配置される。スペーサは、吸収シートのうち、蓄電素子との接触面とは所定方向で反対側の面と接触している。しかも、スペーサは、吸収シートとの接触面上において、吸収シートからの冷媒の蒸気をケース側に向かって移動させるためのスペースを形成する。ここで、略鉛直方向に延びる複数の突起部をスペーサに設けることにより、上記スペースを形成することができる。
【0011】
複数の蓄電素子を所定方向に並べて配置した構成において、所定方向から見たときに、蓄電素子の外形に沿った形状に吸収シートを形成することができる。また、所定方向で隣り合う蓄電素子を互いに近づけるための拘束力を、複数の蓄電素子に対して作用させる拘束構造を設けることができる。これにより、吸収シートを蓄電素子に密接させることができ、蓄電素子で発生した熱を吸収シートに容易に伝達させて、吸収シート内の冷媒を容易に蒸発させることができる。ここで、蓄電素子を収容するケースを用いて上記拘束力を発生させたり、拘束力を発生させるための専用の部材を設けたりすることができる。
【0012】
ケースの上面において、ケースの外壁面からケースの外側に向かって突出し、蓄電装置の外部から供給された冷却用の媒体と接触する放熱フィンを設けることができる。これにより、放熱フィンを介してケースを冷却することができ、吸収シートから蒸発した冷媒の蒸気を、ケースとの間で熱交換させて液化させることができる。すなわち、冷媒の蒸気を液化させて、吸収シートに再び吸収させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、蓄電素子が充放電等によって発熱すると、この熱によって、吸収シート中の冷媒を蒸発させることができる。そして、冷媒の気化熱によって、蓄電素子からの熱を吸収することができ、蓄電素子の温度上昇を抑制することができる。また、吸収シートに冷媒を吸収させただけであるため、冷媒の量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1である電池パックの内部構成を示す縦断面図である。
【図2】実施例1である電池パックの内部構成を示す横断面図である。
【図3】実施例1において、単電池の放熱過程を説明する図である。
【図4】実施例1の変形例である電池モジュールの一部の構成を示す図である。
【図5】実施例1の他の変形例において、円筒形の単電池の外観図である。
【図6】円筒形の単電池を複数備えた構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置)について、図1および図2を用いて説明する。ここで、図1は、電池パックの内部構成を示す縦断面図であり、図2は、電池パックの内部構成を示す横断面図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、Z軸は、鉛直方向に相当する軸である。
【0017】
本実施例の電池パック1は、車両に搭載されており、この車両としては、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。ハイブリッド自動車とは、車両を走行させるための動力源として、電池パック1の他に、内燃機関又は燃料電池を備えた車両である。また、電気自動車とは、車両の動力源として、電池パック1だけを用いた車両である。電池パック1を用いれば、車両の制動時に発生する運動エネルギを回生電力として蓄えたり、車両の外部から供給された電力を蓄えたりすることができる。
【0018】
電池パック1は、パックケース10と、パックケース10内に収容された電池モジュール20とを有している。パックケース10の内部は、密閉状態となっている。また、パックケース10の上面には、パックケース10の外側に向かって突出した複数の放熱フィン11が設けられている。各放熱フィン11は、X方向に延びており、複数の放熱フィン11は、Y方向で並んで配置されている。
【0019】
放熱フィン11には、ファン50から供給された空気が接触するようになっている。具体的には、ファン50に接続されたダクトの一部がパックケース10の上面に沿って配置されており、このダクトの内部に放熱フィン11が位置するようになっている。これにより、ファン50からの空気を放熱フィン11に効率良く接触させることができる。放熱フィン11に供給される空気としては、例えば、車室内の空気を用いることができる。車室とは、乗員の乗車するスペースである。
【0020】
なお、本実施例では、放熱フィン11に空気を接触させるようにしているが、これに限るものではない。すなわち、後述するように、放熱フィン11を冷却させることができればよく、具体的には、空気以外の成分を有する気体を用いたり、液体を用いたりすることができる。また、放熱フィン11の形状は、本実施例で説明した形状に限るものではなく、適宜設定することができる。すなわち、放熱フィン11を形成することにより、パックケース10の外壁面において、空気との接触面積を増やすことができればよい。
【0021】
電池モジュール20は、X方向で並んで配置された複数の単電池(蓄電素子)21を有しており、隣り合って配置された2つの単電池21の間には、スペーサ22が位置している。単電池21としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタを用いることもできる。なお、電池モジュール20を構成する単電池21の数は、電池モジュール20に持たせる出力性能に基づいて、適宜設定することができる。
【0022】
スペーサ22は、樹脂といった絶縁性を有する材料で形成されており、複数の突起部22aを有している。各突起部22aは、Z方向において、スペーサ22の一端から他端に向かって延びている。また、複数の突起部22aは、Y方向で並んで配置されている。各突起部22aの先端は、吸収シート23に接触しており、スペーサ22および吸収シート23の間には、Z方向に延びるスペースが形成されている。また、スペーサ22のうち、複数の突起部22aが形成された面(Y−Z平面)とは反対側の面は、略平坦な面で構成されており、単電池21の側面(Y−Z平面)に接触している。
【0023】
単電池21の上面には、正極端子21aおよび負極端子21bが設けられている。単電池21は、発電要素と、発電要素を収容する電池ケースとで構成されている。発電要素は、充放電を行うことができる要素であり、具体的には、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に位置する電解質とで構成されている。正極端子21aは、発電要素の正極素子と電気的に接続され、負極端子21bは、発電要素の負極素子と電気的に接続されている。
【0024】
各単電池21の正極端子21aは、隣り合って配置された他の単電池21の負極端子21bと、バスバー(不図示)を介して電気的に接続されている。そして、電池モジュール20を構成する複数の単電池21は、電気的に直列に接続されている。
【0025】
電池モジュール20のうち、X方向における両端は、パックケース10の内壁面に接触している。具体的には、電池モジュール20のうち、X方向における一端に位置する単電池21がパックケース10に接触しているとともに、X方向における他端に位置するスペーサ22がパックケース10に接触している。そして、パックケース10は、電池モジュール20に対して、図1の矢印Fで示す拘束力を与えている。これにより、単電池21の2つの側面(Y−Z平面)に対してスペーサ22や吸収シート23が密接したり、スペーサ22および吸収シート23が互いに密接したりする。
【0026】
なお、本実施例では、パックケース10を用いて、電池モジュール20に拘束力Fを与えているが、これに限るものではなく、電池モジュール20に対して拘束力Fを与えることができる構造であればよい。例えば、電池モジュール20におけるX方向の両端に一対のエンドプレートを配置しておき、これらのエンドプレートをX方向に延びるロッドで連結することができる。このような構造であっても、電池モジュール20に対して拘束力Fを与えることができる。一方、電池モジュール20に対して拘束力Fを与えない構造であってもよいが、吸収シート23は、例えば、接着剤等を用いて、単電池21に接触させておくことが好ましい。
【0027】
パックケース10の側面には、安全弁30が設けられている。安全弁30は、単電池21からガスが発生した場合において、このガスをパックケース10の外部に排出させるために設けられている。ここで、単電池21を過充電等すると、単電池21内の発電要素からガスが発生するおそれがある。このため、単電池21の電池ケースには、発電要素から発生したガスを電池ケースの外部に排出させるための安全弁(不図示)が設けられている。
【0028】
単電池21からのガスの排出によって、パックケース10の内圧が安全弁30の作動圧に到達すると、安全弁30が閉じ状態から開き状態に切り替わる。そして、安全弁30を通過したガスは、パックケース10の外壁面に接続された排気ダクト31に沿って移動して、車外に排出されるようになっている。
【0029】
安全弁30や、電池ケースに設けられる安全弁としては、破壊型の弁、又は復帰型の弁を用いることができる。破壊型の弁とは、塑性変形によって閉じ状態から開き状態に不可逆的に変化する弁である。また、復帰型の弁とは、パックケース10の内圧の変化に応じて、閉じ状態および開き状態の間で可逆的に変化することができる弁である。
【0030】
単電池21およびスペーサ22の間に配置された吸収シート23は、パルプ繊維およびバインダの混合物を射出成形することにより、シート状に形成されている。この射出成形によって、吸収シート23の限界面圧(許容面圧)を大きくすることができ、単電池21およびスペーサ22から拘束力Fを受けても変形しにくくすることができる。また、吸収シート23は、X方向から見たときに、単電池21やスペーサ22と略等しい大きさを有している。なお、Y−Z平面内での吸収シート23の大きさ(形状)や、吸収シート23の厚さ(X方向の長さ)は、適宜設定することができる。
【0031】
一方、パックケース10の内部には、液状の冷媒40が収容されており、冷媒40は、図1に示すように、電池モジュール10の下部と接触している。言い換えれば、冷媒40の液面40aは、電池モジュール10の上面よりも低い位置となっており、冷媒40は、単電池21、スペーサ22および吸収シート23のそれぞれの一部と接触している。冷媒40は、絶縁性を有する液体であり、例えば、パーフロロカーボンやフッ素系不活性液体を用いることができる。フッ素系不活性液体としては、例えば、スリーエム社製のノベックHFE(Hydro Fluoro Ether)やフロリナートがある。
【0032】
吸収シート23は、繊維で構成されており、多孔質体となっている。このため、冷媒40は、毛細管現象によって吸収シート23に吸い上げられ、吸収シート23の内部全体において、冷媒40が保持されている。ここで、冷媒40の量は、電池モジュール20に含まれる複数の吸収シート23に冷媒40を吸収させることができる量であればよい。
【0033】
本実施例の電池パック1において、単電池21が充放電等によって発熱すると、この熱は、発熱状態の単電池21と接触する吸収シート23に伝達される。ここで、図3に示すように、吸収シート23に吸収された冷媒40は、単電池21からの熱を受けることにより、蒸発するようになっている。このように、冷媒40を蒸発させることにより、単電池21で発生した熱を冷媒40の気化熱として吸収することができ、単電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0034】
本実施例において、冷媒40としては、単電池21からの熱を受けて蒸発しやすい液体を用いており、冷媒40の沸点を、冷媒40を蒸発させようとする温度に設定することができる。この設定温度に基づいて、冷媒40の具体的な材料を決定することができる。
【0035】
吸収シート23中の冷媒40が単電池21からの熱を受けて蒸発すると、冷媒40の蒸気は、スペーサ22の突起部22aに沿って上方に移動する。上述したように、スペーサ22および吸収シート23の間には、突起部22aによって、Z方向に延びるスペースSが形成されている。このため、冷媒40の蒸気は、スペースSに沿って上方に移動することになる。なお、電池モジュール20の下部では、冷媒40が単電池21と直接、接触しているため、この冷媒40は、単電池21からの熱を受けて蒸発することになる。
【0036】
ここで、本実施例では、スペーサ22に対して、Z方向に延びる突起部22aを形成しているが、これに限るものではない。すなわち、スペーサ22および吸収シート23の間に、冷媒40の蒸気を上方に向かって移動させるためのスペースが形成されていればよく、突起部22aの形状は、適宜設定することができる。例えば、突起部22aを円柱状に形成しておき、これらの突起部22aをY−Z平面内でマトリクス状に配置することができる。
【0037】
冷媒40の蒸気がパックケース10の上面に到達すると、蒸気の熱がパックケース10に伝達される。これにより、冷媒40の蒸気は、温度の低下に応じて、液化する。液体となった冷媒40は、重力の作用によって、パックケース10の底面に向かって落下し、パックケース10の底面に溜まることになる。本実施例では、パックケース10の上面に設けられた放熱フィン11に対して、ファン50からの空気を供給することにより、パックケース10の上面を積極的に冷やしている。このため、パックケース10の上面に到達して冷媒40の蒸気を容易に液化させることができる。
【0038】
本実施例では、単電池21の側面(Y−Z平面)に吸収シート23を接触させただけの簡素な構成において、単電池21の側面からの放熱を効率良く行うことができる。すなわち、吸収シート23を用いることにより、冷媒40を単電池21の側面全体に行き渡らせることができ、単電池21の側面全体で冷媒40を蒸発させることができる。ここで、特許文献2に記載の構成のように、スペーサ22の突起部22aを単電池21の側面に接触させてしまうと、この接触領域において、単電池21の放熱効率が低下してしまう。本実施例では、突起部22aおよび単電池21の間にも、冷媒40を含んだ吸収シート23が位置しているため、冷媒40を蒸発させて単電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0039】
また、本実施例では、吸収シート23が毛細管現象によって冷媒40を吸い上げることができるため、単電池21の全面を冷媒40に接触させておく必要はない。言い換えれば、特許文献1に記載の構成のように、冷媒40の液面40aを、電池モジュール20の上面よりも上方に位置させる必要がない。これにより、冷媒40の量を低減することができるとともに、パックケース10内に冷媒40を容易に充填することができる。ここで、冷媒40として、高価な材料を用いる場合には、冷媒40の量を低減することにより、電池パック1のコストダウンを図ることができる。
【0040】
さらに、吸収シート23は、パルプ繊維で構成されているため、吸収シート23を用いることによるコストアップを抑制することができる。また、パルプ繊維で構成された吸収シート23を用いることにより、電池モジュール20を構成する単電池21およびスペーサ22に対して、安定した状態で拘束力Fを作用させることができる。
【0041】
なお、本実施例では、単電池21およびスペーサ22の間に、パルプ繊維で形成された吸収シート23を挟んでいるが、これに限るものではない。すなわち、吸収シート23としては、毛細管現象によって冷媒40を吸い上げて保持できるものであればよく、多孔質体で構成されていればよい。具体的には、パルプ繊維以外の繊維(天然繊維や化学繊維)を用いて、吸収シート23を構成することができる。
【0042】
また、本実施例では、パックケース10の下部において、吸収シート23に吸収される余剰の冷媒40を収容しているが、この余剰の冷媒40を省略することもできる。すなわち、吸収シート23に冷媒40を吸収させておくだけでもよい。この場合であっても、単電池21からの熱によって、吸収シート23中の冷媒40を蒸発させて、単電池21の温度上昇を抑制することができる。また、本実施例では、電池モジュール20を構成する、すべての単電池21に対して吸収シート23を接触させているが、少なくとも1つの単電池21に吸収シート23を接触させるだけでもよい。
【0043】
さらに、本実施例では、単電池21における一方の側面(Y−Z平面)にのみ、吸収シート23を接触させているが、これに限るものではない。例えば、図4に示すように、単電池21における2つの側面(Y−Z平面)に対して、吸収シート23を接触させることもできる。ここで、図4は、本実施例の変形例である電池モジュール20における一部の構成を示す図であり、本実施例で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。図4に示す構成では、スペーサ22に対してX方向の両側に吸収シート23が位置することになるため、これらの吸収シート23と対向する2つの面(Y−Z平面)に突起部22aが形成されている。
【0044】
また、本実施例では、X方向で隣り合う2つの単電池21の間に、スペーサ22および吸収シート23を配置しているが、これに限るものではない。具体的には、スペーサ22を省略し、X方向で隣り合う2つの単電池21の間に、吸収シート23だけを配置することもできる。この場合には、吸収シート23が2つの単電池21の側面(Y−Z平面)に接触することになる。このような構成であっても、吸収シート23に吸収された冷媒40が、単電池21からの熱を受けて蒸発することにより、単電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0045】
また、本実施例では、単電池21における特定の側面(Y−Z平面)に吸収シート23を接触させているが、これに限るものではなく、吸収シート23は、単電池21の外面のうち、任意の領域に接触していればよい。吸収シート23を単電池21の外面に接触させておけば、単電池21からの熱によって、吸収シート23に吸収された冷媒40を蒸発させて、単電池21の温度上昇を抑制することができる。
【0046】
ここで、本実施例では、角形の単電池21を用いているが、円筒形といった他の形状の単電池21を用いることもできる。円筒形の単電池21を用いた場合には、例えば、図5に示すように、単電池21の外周面に対して、冷媒40を吸収した吸収シート23を接触させることができる。
【0047】
そして、図6に示すように、吸収シート23を備えた単電池21を一方向に並べて配置するとともに、冷媒40の層をパックケース10の底面に沿って位置させることができる。ここで、図5および図6において、本実施例で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。また、複数の単電池21は、支持部材によって支持させておくことができる。この支持部材として、例えば、各単電池21の両端側を支持する一対の支持プレート(不図示)を用いることができる。
【0048】
図6に示す構成では、各吸収シート23が毛細管現象によって冷媒40を吸い上げることにより、吸収シート23内で冷媒40を保持することができる。これにより、単電池21が発熱したときには、吸収シート23内の冷媒40を蒸発させることにより、単電池21の温度上昇を抑制することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:電池パック(蓄電装置) 10:パックケース
11:放熱フィン 20:電池モジュール
21:単電池(蓄電素子) 21a:正極端子
21b:負極端子 22:スペーサ
22a:突起部 23:吸収シート
30:安全弁 31:排気ダクト
40:冷媒(液体) 50:ファン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子を密閉状態で収容するケースと、
前記蓄電素子の外面と接触し、前記蓄電素子からの熱を受けて蒸発可能な液状の冷媒を吸収した吸収シートと、
を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記吸収シートは、毛細管現象を用いることにより、前記ケース内に充填された前記冷媒を前記吸収シート内に吸収することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記吸収シートが繊維で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記複数の蓄電素子は、前記吸収シートおよびスペーサを挟んだ状態で所定方向に並んで配置されており、
前記スペーサは、前記吸収シートのうち、前記蓄電素子との接触面とは前記所定方向で反対側の面と接触しているとともに、前記吸収シートとの接触面上において、前記吸収シートからの前記冷媒の蒸気を前記ケース側に向かって移動させるためのスペースを形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記スペーサは、略鉛直方向に延び、前記スペースを形成するための複数の突起部を有することを特徴とする請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記吸収シートは、前記所定方向から見たときに、前記蓄電素子の外形に沿った形状に形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記所定方向で隣り合う前記蓄電素子を互いに近づけるための拘束力を、前記複数の蓄電素子に対して作用させる拘束構造を有することを特徴とする請求項4から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記ケースの上面は、前記ケースの外壁面から前記ケースの外側に向かって突出し、前記蓄電装置の外部から供給された冷却用の媒体と接触する放熱フィンを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の蓄電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−211963(P2010−211963A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54094(P2009−54094)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】