説明

蓄電装置

【課題】 蓄電素子に作用する拘束力の状態を目視で確認することができる蓄電装置を提供する。
【解決手段】 蓄電装置(100)は、所定方向(X方向)に並んで配置された複数の蓄電素子(10)と、所定方向において、複数の蓄電素子を挟む一対のエンドプレート(40)と、所定方向に延びて一対のエンドプレートを連結し、一対のエンドプレートを介して複数の蓄電素子に拘束力を与えるための複数の連結部材(50)と、を有する。複数の連結部材のうち、少なくとも1つの連結部材は、マーク(S、62)を有しており、拘束力の変化に伴う変形によって、マークの形状を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電素子に対して拘束力を与える構造を備えた蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の単電池(いわゆる角型の単電池)を一方向に並べて組電池を構成するときには、複数の単電池に対して拘束力を与えることがある。拘束力は、複数の単電池の配列方向に働く力であり、各単電池を配列方向において挟む力である。
【0003】
具体的には、複数の単電池を挟む位置に、一対のエンドプレートを配置するとともに、複数の単電池の配列方向に延びる拘束バンドによって、一対のエンドプレートを連結することにより、複数の単電池に対して拘束力を与えることができる。拘束力は高すぎても、低すぎても、不具合が生じるおそれがあるため、所定の範囲内であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−076265号公報
【特許文献2】特開2006−024445号公報
【特許文献3】特開2009−238606号公報
【特許文献4】特表平10−503079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組電池を組み立てた段階において、複数の単電池に対する拘束力を設定しても、組電池を使用し始めた後の拘束力を確認することはできない。ここで、特許文献1等では、組電池の内部に圧力センサを配置し、圧力センサの出力に基づいて、組電池に作用する拘束力を監視するようにしている。圧力センサを用いた構成では、圧力センサの出力信号を処理することにより、拘束力を算出する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、蓄電素子に作用する拘束力の状態を目視で確認することができる蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、所定方向において、複数の蓄電素子を挟む一対のエンドプレートと、所定方向に延びて一対のエンドプレートを連結し、一対のエンドプレートを介して複数の蓄電素子に拘束力を与えるための複数の連結部材と、を有する。ここで、複数の連結部材のうち、少なくとも1つの連結部材は、マークを有しており、拘束力の変化に伴う変形によって、マークの形状を変化させる。
【0008】
連結部材は、マークが形成された第1領域と、マークが形成されていない第2領域とを有しており、第1領域の大きさを、第2領域の大きさよりも小さくすることができる。これにより、拘束力が変化したときに、第1領域に応力を集中させることができ、第1領域を積極的に変形させることができる。そして、第1領域に形成されたマークの形状を変化させやすくすることができる。
【0009】
マークとしては、連結部材の長手方向に沿って形成された目盛を用いることができる。ここで、拘束力の変化に伴う連結部材の変形によって、目盛の間隔を変化させることができる。目盛の間隔の変化を確認することにより、拘束力の状態を確認することができる。
【0010】
連結部材には、目盛が形成された領域から分岐したアームを設けることができる。そして、アームには、目盛と隣り合う位置に設けられる指標を形成することができる。この構成では、目盛および指標の位置関係に基づいて、拘束力の状態を確認することができる。
【0011】
本願第2の発明である蓄電装置は、所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、所定方向において、複数の蓄電素子を挟む一対のエンドプレートと、所定方向に延びて一対のエンドプレートを連結し、一対のエンドプレートを介して複数の蓄電素子に拘束力を与えるための複数の連結部材と、を有する。複数の連結部材のうち、少なくとも1つの連結部材は、この連結部材の長手方向に沿って形成された目盛を有する第1連結部材と、第1連結部材と分離された第2連結部材と、第1連結部材および第2連結部材に接続され、目盛を指し示す指標を備えたバネと、を有する。
【0012】
本願第2の発明によれば、拘束力の状態に応じてバネが伸びたり、縮んだりし、バネの変形によって、目盛および指標の位置関係が変化する。したがって、目盛および指標の位置関係を確認すれば、蓄電素子に作用する拘束力の状態を確認することができる。
【0013】
上述した連結部材は、蓄電素子の上面に配置することができる。これにより、蓄電装置の上方から、連結部材に設けられたマークや目盛を容易に確認することができる。一方、所定方向で隣り合う2つの蓄電素子の間には、仕切り部材を配置することができる。仕切り部材は、蓄電素子の温度調節に用いられる気体を移動させるためのスペースを、蓄電素子の表面に形成するために用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連結部材に形成されたマークの形状を見るだけで、蓄電素子に作用している拘束力の状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1における電池スタックの外観図である。
【図2】実施例1である電池パックの断面図である。
【図3】実施例1において、自然状態にあるときの拘束バンドの一部を示す図である。
【図4】実施例1において、拘束状態にあるときの拘束バンドの一部を示す図である。
【図5】実施例1の変形例における拘束バンドの一部を示す図である。
【図6】実施例2における拘束バンドの一部を示す図である。
【図7】実施例2の変形例において、拘束バンドおよびパックケースの概略図である。
【図8】実施例2の他の変形例における拘束バンドの一部を示す図である。
【図9】実施例3における拘束バンドの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1である電池パック(蓄電装置に相当する)について説明する。図1は、電池スタックの外観図であり、図2は、電池パックの断面図である。図1および図2において、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸であり、本実施例では、鉛直方向に相当する軸をZ軸としている。
【0018】
本実施例の電池パックは、例えば、車両に搭載することができる。電池パックの出力を用いることにより、車両を走行させるための運動エネルギを生成することができる。また、車両の制動時に発生する運動エネルギを回生電力として電池パックに蓄えることができる。
【0019】
図2に示すように、電池パック100は、電池スタック1と、電池スタック1を収容するパックケース110とを有する。パックケース110は、アッパーケース111およびロアーケース112で構成されている。アッパーケース111およびロアーケース112は、例えば、金属で形成することができる。
【0020】
電池スタック1は、X方向(所定方向)に並んで配置された複数の単電池(蓄電素子に相当する)10を有する。単電池10は、いわゆる角型の単電池であり、単電池10の外面は、複数の単電池10の配列方向(X方向)と直交する平面(Y−Z平面)を含んでいる。単電池10としては、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池を用いることができる。また、二次電池の代わりに、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を用いることができる。電池スタック1を構成する単電池10の数は、電池スタック1(電池パック100)の要求出力等に基づいて適宜設定することができる。
【0021】
本実施例では、複数の単電池10をX方向に並べているが、これに限るものではない。具体的には、複数の単電池によって1つの電池モジュール(蓄電素子に相当する)を構成し、複数の電池モジュールをX方向に並べて配置することができる。
【0022】
単電池10の上面には、正極端子11および負極端子12が設けられている。単電池10の内部には、発電要素が収容されており、発電要素は、例えば、正極素子と、負極素子と、正極素子および負極素子の間に配置されたセパレータ(電解液を含む)とで構成することができる。正極素子は、集電板の表面に、正極活物質等を含む層を形成したものであり、負極素子は、集電板の表面に、負極活物質等を含む層を形成したものである。正極端子11は、発電要素の正極素子と電気的に接続されており、負極端子12は、発電要素の負極素子と電気的に接続されている。
【0023】
電池スタック1を構成する複数の単電池10は、バスバーモジュール20によって、電気的に直列に接続されている。バスバーモジュール20は、複数のバスバーと、これらのバスバーを保持する保持プレートとで構成されている。バスバーは、導電性を有する部材であり、X方向で隣り合う2つの単電池10のうち、一方の単電池10の正極端子11と、他方の単電池10の負極端子12とに接続される。保持プレートは、樹脂等といった絶縁材料で形成されている。
【0024】
本実施例では、すべての単電池10が電気的に直列に接続されているが、電気的に並列に接続された複数の単電池10が含まれていてもよい。また、正極端子11および負極端子12は、単電池10の上面に設けられているが、これに限るものではない。例えば、Y方向における単電池10の両端面に、正極端子11および負極端子12を設けることができる。
【0025】
X方向で隣り合う2つの単電池10の間には、仕切り板(仕切り部材に相当する)30が配置されており、仕切り板30は、例えば、樹脂で形成することができる。なお、仕切り板30の形状は、適宜設定することができる。例えば、単電池10を保持できる構造を、仕切り板30に設けることができる。
【0026】
仕切り板30は、単電池10と対向する面において、X方向に突出するリブ(図示せず)を有している。リブが単電池10に接触することにより、単電池10および仕切り板30の間には、スペースが形成される。このスペースは、単電池10の温度調節に用いられる気体が移動する通路となる。
【0027】
単電池10が発熱しているときには、冷却用の気体を用いることにより、単電池10の温度上昇を抑制することができる。単電池10が過度に冷えているときには、加温用の気体を用いることにより、単電池10の温度低下を抑制することができる。電池パック100を車両に搭載したときには、ブロワの駆動によって車室内の空気を電池パック100に供給することができる。車室とは、乗員の乗車するスペースであり、車室内の空気は、空調装置等によって、単電池10の温度調節に適した温度に設定されていることがある。
【0028】
X方向における電池スタック1の両端には、一対のエンドプレート40が配置されている。一対のエンドプレート40には、X方向に延びる拘束バンド(連結部材に相当する)50が接続されている。拘束バンド50の両端は、エンドプレート40の外面に沿って曲げられており、ボルトやリベットを用いてエンドプレート40に固定されている。
【0029】
拘束バンド50を用いて一対のエンドプレート40を連結することにより、一対のエンドプレート40によって挟まれた複数の単電池10に対して拘束力を与えることができる。拘束力は、X方向において、単電池10を挟む力である。単電池10に拘束力を与えることにより、単電池10の膨張等を抑制することができ、単電池10の入出力特性の劣化を抑制することができる。
【0030】
なお、拘束バンド50をエンドプレート40に固定するための構造は、適宜設計することができる。また、拘束バンド50の形状も、適宜設定することができる。本実施例では、拘束バンド50の長手方向と直交する断面が、矩形状に形成されているが、他の形状、例えば、円形に形成することができる。
【0031】
電池スタック1の上面には、2つの拘束バンド50が配置され、電池スタック1の下面には、2つの拘束バンド50が配置されている。電池スタック1の上面に配置された拘束バンド50は、正極端子11および負極端子12を避けた位置に配置されている。
【0032】
本実施例では、電池スタック1の上面および下面に、拘束バンド50を配置しているが、これに限るものではない。すなわち、一対のエンドプレート40を連結することにより、一対のエンドプレート40によって挟まれる複数の単電池10に対して拘束力を与えることができればよい。例えば、Y方向における電池スタック1の両側面に対して、拘束バンド50を配置することができる。
【0033】
次に、拘束バンド50の構成について説明する。4つの拘束バンド50のうち、少なくとも1つの拘束バンド50は、図3に示す構造を有している。図3は、拘束バンド50の一部を示す正面図である。図3に示す構造を有する拘束バンド50は、外部から容易に確認できることが好ましく、例えば、電池スタック1の上面に配置された拘束バンド50に対して、図3に示す構造を持たせることができる。
【0034】
拘束バンド50は、目盛Sが形成された目盛領域Rを有しており、目盛領域Rの幅(Y方向の長さ)W1は、他の領域の幅(Y方向の長さ)W2よりも狭い。また、目盛領域Rは、X方向において、長さL1を有している。目盛領域RとY方向で隣り合う位置には、X方向に延びるアーム51が設けられており、アーム51の先端部には、指標51aが設けられている。
【0035】
アーム51の基端部は、幅W2を有する一方の領域につながっており、アーム51の先端部は、幅W2を有する他方の領域から離れている。また、Y方向において、アーム51および目盛領域Rの間には、スペースが形成されている。言い換えれば、アーム51は、目盛領域Rから分岐している。アーム51は、X方向において、長さL2を有しており、長さL2は、長さL1よりも短い。アーム51の幅(Y方向の長さ)W3は、幅W2よりも狭くなっている。幅W3は、幅W1と同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0036】
図3は、拘束バンド50が自然状態にあるときの図である。自然状態とは、拘束バンド50を一対のエンドプレート40に取り付けていない状態であり、言い換えれば、複数の単電池10がX方向において広がろうとする力を拘束バンド50が受けていない状態である。
【0037】
複数の単電池10に対して拘束力を与えているときには、拘束バンド50は、複数の単電池10から図4の矢印Fで示す荷重を受ける。荷重Fは、複数の単電池10がX方向において広がろうとする力である。拘束バンド50は、荷重Fを受けることにより、X方向に伸びて変形する。自然状態の拘束バンド50において、目盛領域Rの幅W1は、幅W2よりも狭いため、拘束バンド50が荷重Fを受けたときには、目盛領域Rが変形しやすくなる。図4において、目盛領域Rが変形することにより、目盛領域Rの幅は、W1からW4(<W1)に変化し、目盛領域Rの長さは、L1からL3(>L1)に変化する。
【0038】
目盛領域RがX方向に伸びると、目盛領域Rに形成された目盛Sの間隔も変化する。具体的には、図4に示す状態における目盛Sの間隔は、図3に示す状態における目盛Sの間隔よりも広くなる。一方、アーム51は、目盛領域Rから分岐しており、拘束バンド50に荷重Fが作用しても、アーム51は変形しない。このため、アーム51の指標51aと、目盛領域Rに形成された目盛Sとの相対的な位置関係が変化する。
【0039】
指標51aおよび目盛Sの相対的な位置関係を目視することにより、複数の単電池10に作用している拘束力の状態を把握することができる。例えば、複数の単電池10に拘束力を与えた直後において、言い換えれば、電池スタック1を組み立てた直後において、指標51aと向かい合う目盛Sの位置を基準位置としておく。そして、拘束力の変化によって拘束バンド50(目盛領域R)が伸びると、指標51aの位置と基準位置との関係が変化する。この変化を確認することにより、拘束力の状態を把握することができる。
【0040】
本実施例の変形例について、図5を用いて説明する。図5は、本変形例における拘束バンドの一部を示す図であり、図3および図4に対応した図である。本変形例において、本実施例で説明した部材と同一の機能を有する部材については、同一符号を用いている。
【0041】
本変形例では、幅W2を有する領域の外縁に沿って目盛Sが形成されている。また、アーム51の指標51aは、Y方向で目盛Sと隣り合う位置に配置されている。本変形例においても、幅W1を有する領域が、幅W2を有する領域よりも変形しやすくなっている。
【0042】
図5に示す状態は、複数の単電池10に拘束力を与えた直後、言い換えれば、電池スタック1を組み立てた直後における拘束バンド50の状態を示している。図5に示す状態から拘束力が変化すると、目盛Sに対する指標51aの位置が変化する。具体的には、図5に示す状態よりも拘束バンド50(幅W1の領域)が伸びると、指標51aは、目盛Sに対して矢印D1の方向に移動する。一方、図5に示す状態よりも拘束バンド50(幅W1の領域)が縮むと、指標51aは、目盛Sに対して矢印D2の方向に移動する。
【0043】
本変形例では、目盛Sの両端に、「MAX」および「MIN」の表示を設けている。「MAX」は、拘束力が許容範囲の最大値であることを示しており、「MIN」は、拘束力が許容範囲の最小値であることを示している。「MAX」および「MIN」の間の範囲は、拘束バンド50の変形特性に基づいて、設定することができる。
【0044】
指標51aが、「MAX」および「MIN」の間の領域内に位置していないときには、単電池10の拘束状態に不具合が生じていると判断することができる。複数の単電池10を拘束するときには、所望の拘束状態で単電池10を拘束することが好ましく、本変形例の目盛Sを用いることにより、所望の拘束状態が維持されているか否かを確認することができる。
【0045】
単電池10の熱膨張等が発生すると、拘束バンド50がX方向に伸びることにより、指標51aは、「MAX」に近づく方向に移動する。ここで、指標51aが「MAX」の位置よりも矢印D1の方向に位置しているときには、過剰な拘束力が発生していると判断することができる。一方、仕切り板30等にクリープ現象が発生すると、拘束バンド50がX方向に縮むことにより、指標51aは、「MIN」に近づく方向に移動する。ここで、指標51aが「MIN」の位置よりも矢印D2の方向に位置しているときには、拘束力が不足していると判断することができる。
【0046】
本変形例では、目盛Sに対して指標51aが移動するため、目盛Sに対する指標51aの位置を見ることにより、拘束力の状態を確認することができる。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2である電池パックについて説明する。ここで、実施例1で説明した部材と同一の部材については、同一符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例では、実施例1に対して、拘束バンドの構造を変更している。以下、実施例1と異なる点について、主に説明する。
【0048】
図6は、本実施例における拘束バンド(連結部材に相当する)60の一部を示す図であり、実施例1で説明した図3や図4に対応する図である。拘束バンド60の縁には、2つの凹部61が形成されている。凹部61は、曲率を有しており、2つの凹部61は、Y方向に並んで設けられている。2つの凹部61を設ける位置は、適宜設定することができる。2つの凹部61の間に位置する領域には、複数の目盛62が形成されている。複数の目盛62は、X方向およびY方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0049】
図6は、拘束バンド60が自然状態にあるときの図である。拘束バンド60が自然状態にあるとき、X方向に関して、すべての目盛62の間隔は、M1に設定されている。また、Y方向に関して、すべての目盛62の間隔は、M2に設定されている。ここで、間隔M1,M2は、等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0050】
電池スタック1を組み立てると、複数の単電池10に対して拘束力が与えられ、拘束バンド60は、エンドプレート40からの力を受けることにより、X方向に伸びる。拘束バンド60には、凹部61が設けられているため、2つの凹部61の間に位置する領域に対して応力を集中させることができ、この領域を最も変形しやすくすることができる。言い換えれば、2つの凹部61の間に位置する領域が、X方向において、伸びやすくなる。
【0051】
電池スタック1を組み立てた直後においては、目盛62の間隔M1が所定値(基準値という)に維持される。そして、単電池10の拘束力が変化すると、拘束バンド60が伸びたり、縮んだりすることにより、目盛62の間隔M1が変化する。具体的には、単電池10に作用する拘束力が上昇すれば、目盛62の間隔M1が基準値よりも広がり、拘束力が低下すれば、目盛62の間隔D1が基準値よりも狭まる。そこで、変化後の間隔M1を、基準値と比較することにより、単電池10に作用している拘束力の状態を確認することができる。
【0052】
変化後の間隔M1を基準値と比較するときに、例えば、基準値を示す物差しを用意しておけば、基準値との比較を容易に行うことができる。一方、拘束バンド60と隣り合う位置に、基準値を示す目盛を設けることができる。具体的には、図7に示すように、パックケース110のうち、拘束バンド60の凹部61と隣り合う領域に、基準値Drefを示す目盛Sを設けることができる。図7に示す構成でも、基準値Drefおよび目盛62の間隔M1を比較することにより、拘束力の状態を確認することができる。
【0053】
図7に示す構成において、基準値Drefは、適宜設定することができる。基準値Drefが、電池スタック1を組み立てた直後における目盛62の間隔M1であれば、パックケース110に形成された目盛Sと、拘束バンド60に形成された目盛62とを一致させることができる。一方、基準値Drefが、電池スタック1を組み立てた直後における目盛62の間隔M1とは異なる値であるときには、これらの差分を考慮することにより、拘束力の状態を確認することができる。
【0054】
図7に示す構成では、基準値Drefを示す目盛Sを、パックケース110に設けているが、これに限るものではない。すなわち、基準値Drefを示す目盛Sは、拘束バンド60とは異なる部材に設ければよく、例えば、単電池10に設けることができる。
【0055】
本実施例では、X方向およびY方向に沿った目盛62をそれぞれ形成しているが、これに限るものではない。具体的には、目盛の間隔M1を確認するために、Y方向に沿った目盛62だけを拘束バンド60に形成することができる。
【0056】
また、本実施例では、凹部61が曲率を有しているが、これに限るものではない。すなわち、目盛62を形成する領域の幅が、他の領域の幅よりも狭ければよい。例えば、図8に示す拘束バンドを用いることができる。図8に示す構成において、凹部61は、X方向に延びる面と、Y方向に延びる面とで構成されている。
【実施例3】
【0057】
本発明の実施例3である電池パックについて説明する。実施例1,2で説明した部材と同一の部材については、同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。本実施例では、実施例1,2に対して、拘束バンドの構造を変更している。以下、実施例1,2と異なる点について、主に説明する。
【0058】
図9は、本実施例における拘束バンド(連結部材に相当する)の一部を示す図であり、実施例1で説明した図3および図4に相当する図である。拘束バンド70は、互いに分離された第1バンド(第1連結部材に相当する)71および第2バンド(第2連結部材に相当する)72を有し、第1バンド71および第2バンド72は、バネ73によって連結されている。
【0059】
第1バンド71の一端(図示せず)は、実施例1で説明したように、エンドプレート40に固定されており、第1バンド71の他端には、バネ73の一端73aが固定されている。第1バンド71およびバネ73の固定方法としては、例えば、バネ73の一端73aにフックを設けておき、このフックを第1バンド71に形成した開口部に引っ掛けることができる。
【0060】
第2バンド72の一端(図示せず)は、実施例1で説明したように、エンドプレート40に固定されており、第2バンド72の他端には、バネ73の他端73bが固定されている。第2バンド72およびバネ73の固定方法は、第1バンド71およびバネ73の固定方法と同様とすることができる。
【0061】
第1バンド71の他端には、X方向に延びるアーム71aが形成されており、アーム71aは、Y方向において、バネ73と並んで配置されている。アーム71aの先端は、第2バンド72から離れており、アーム71aには、目盛Sが形成されている。バネ73には、指標74が設けられており、指標74は、目盛Sを指している。
【0062】
本実施例において、単電池10に作用する拘束力が変化すると、第1バンド71および第2バンド72の間隔が変化する。具体的には、拘束力が上昇すると、第1バンド71および第2バンド72の間隔が広がり、バネ73が伸びることになる。一方、拘束力が低下すると、第1バンド71および第2バンド72の間隔が狭まり、バネ73が縮むことになる。
【0063】
バネ73が伸びたり、縮んだりすると、目盛Sに対する指標74の位置が変化する。ここで、電池スタック1を組み立てた直後において、指標74に対した目盛Sの位置を基準位置として決めておけば、基準位置に対する指標74のずれを見ることにより、拘束力の状態を確認することができる。
【0064】
上述した実施例1〜3では、拘束バンドに目盛を形成しているが、これに限るものではない。具体的には、拘束バンドの外面にマークを形成しておき、拘束力の変化に伴う拘束バンドの変形によって、マークの形状を変化させることができる。このような構成では、マークの形状の変化を確認することにより、拘束力の状態を確認することができる。
【0065】
上述したマークとしては、例えば、円を用いることができる。拘束バンドが伸びるときと、拘束バンドが縮むときとで、円の変形方向が異なる。すなわち、拘束バンドが伸びたり、縮んだりするときには、円が楕円に変化する。ここで、拘束バンドが伸びるときには、楕円の長軸は、拘束バンドの長手方向に沿った軸となる。また、拘束バンドが縮むときには、楕円の長軸は、拘束バンドの長手方向と直交する方向に沿った軸となる。
【符号の説明】
【0066】
1:電池スタック 10:単電池(蓄電素子)
11:正極端子 12:負極端子
20:バスバーモジュール 30:仕切り板(仕切り部材)
40:エンドプレート 50:拘束バンド(連結部材)
51:アーム 51a:指標
100: 電池パック(蓄電装置) 110:パックケース
111:アッパーケース 112:ロアーケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、
前記所定方向において、前記複数の蓄電素子を挟む一対のエンドプレートと、
前記所定方向に延びて前記一対のエンドプレートを連結し、前記一対のエンドプレートを介して前記複数の蓄電素子に拘束力を与えるための複数の連結部材と、を有し、
前記複数の連結部材のうち、少なくとも1つの前記連結部材は、マークを有しており、前記拘束力の変化に伴う変形によって、前記マークの形状を変化させることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの連結部材は、前記マークが形成された第1領域と、前記マークが形成されていない第2領域とを有しており、
前記第1領域の大きさは、前記第2領域の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記マークは、前記連結部材の長手方向に沿って形成された目盛であり、
前記連結部材は、前記拘束力の変化に伴う変形によって、前記目盛の間隔を変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記連結部材は、前記目盛が形成された領域から分岐したアームを有しており、
前記アームは、前記目盛と隣り合う位置に設けられた指標を有することを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
所定方向に並んで配置された複数の蓄電素子と、
前記所定方向において、前記複数の蓄電素子を挟む一対のエンドプレートと、
前記所定方向に延びて前記一対のエンドプレートを連結し、前記一対のエンドプレートを介して前記複数の蓄電素子に拘束力を与えるための複数の連結部材と、を有し、
前記複数の連結部材のうち、少なくとも1つの前記連結部材は、
この連結部材の長手方向に沿って形成された目盛を有する第1連結部材と、
前記第1連結部材と分離された第2連結部材と、
前記第1連結部材および前記第2連結部材に接続され、前記目盛を指し示す指標を備えたバネと、
を有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの連結部材は、前記蓄電素子の上面に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記所定方向で隣り合う2つの前記蓄電素子の間に配置された仕切り部材を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の蓄電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−129029(P2012−129029A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278448(P2010−278448)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】