説明

蓄電装置

【課題】 静電容量の減少が防止された蓄電装置を提供する。
【解決手段】 容器と、容器の内部から外部に取り出された一対の電極と、容器の内部に密封配置され、一対の電極と電気的に接続された蓄電構造とを有し、蓄電構造は、一対の電極の一方に電気的に接続され、それぞれ切り欠き部が形成された複数の第1の電極と、一対の電極の他方に電気的に接続された複数の第2の電極と、複数のセパレータとを含み、第1の電極と、第2の電極とが、各々の一部の領域で重なり、他の領域では重ならないように、セパレータを介して交互に積層されてなる積層構造を有し、複数の第1の電極に形成された切り欠き部は、少なくとも一点において、セパレータまたは第2の電極に遮られることなく、複数の第1の電極を積層方向に貫通する蓄電装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置、たとえば作業機械に使用される電気二重層キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械に用いられる蓄電装置として、電気二重層キャパシタが注目されている。電気二重層キャパシタは、例えば、集電極と、多孔質のセパレータとが交互に積層された構造を有する。集電極の表面には、活性炭等の分極性電極が塗布されており、セパレータには、電解液が含浸されている。集電極とセパレータとの積層体が、ラミネートフィルムで覆われる。ラミネートフィルムで覆われた積層体が、1つの蓄電セルを構成する。
【0003】
図7A及び図7Bは、電気二重層キャパシタの集電極を示す平面図である。正極用集電極51の両面の一部領域に、活物質57が塗布されている。延伸部分51Aは、正極用集電極51表面のうち、活物質57が塗布されていない領域である。同様に、負極用集電極52の両面の一部領域には、活物質58が塗布されている。延伸部分52Aは、負極用集電極52表面のうち、活物質58が塗布されていない領域である。正極用集電極51と負極用集電極52は、材料、形状、活物質57、58の塗布領域等、すべての面において相互に等しい電極である。集電極51、52は、同一工程で、両者の区別なく製造される。
【0004】
図7Cに、集電極51、52とセパレータ55の積層構造を示す。積層構造は、たとえば正極用集電極51、セパレータ55、負極用集電極52、セパレータ55をこの順に、繰り返し重ねることによって形成される。集電極51、52及びセパレータ55は、集電極51、52の延伸部分51A、52Aが相互に反対方向に延在し、活物質57、58塗布領域が、セパレータ55を介し、積層方向に重なるように積層される。
【0005】
集電極51、52とセパレータ55の積層は、たとえば人手によって行われる。このため、集電極51、52及びセパレータ55が誤って積層されることがある。本図には、集電極の面内回転方向に関する姿勢を誤り、正極用集電極51を、負極用集電極52を配置する向きに配置した結果、集電極がセパレータ55を介し負極側に3枚連続して積層される例を、誤配置箇所Fとして示した。たとえば誤配置箇所Fのように、セパレータ55を介して、一方電極側に集電極が複数枚連続して積層されても、そのことによっては静電容量が発現せず、その積層部分の静電容量は、集電極を1枚配置した場合に等しい。集電極とセパレータ55の積層が、静電容量の増大につながらないため、誤配置箇所Fは蓄電に無益である。また、誤配置が行われた蓄電装置は、全体の静電容量が規定値を満たさなくなり、使用できない場合がある。
【0006】
正電極と負電極の外形形状をコーナーカット等でマーキングすることにより、両電極の識別を可能にした燃料電池の発明が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−331851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、静電容量の減少が防止された蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によると、容器と、前記容器の内部から外部に取り出された一対の電極と、前記容器の内部に密封配置され、前記一対の電極と電気的に接続された蓄電構造とを有し、前記蓄電構造は、前記一対の電極の一方に電気的に接続され、それぞれ切り欠き部が形成された複数の第1の電極と、前記一対の電極の他方に電気的に接続された複数の第2の電極と、複数のセパレータとを含み、前記第1の電極と、前記第2の電極とが、各々の一部の領域で重なり、他の領域では重ならないように、前記セパレータを介して交互に積層されてなる積層構造を有し、前記複数の第1の電極に形成された切り欠き部は、少なくとも一点において、前記セパレータまたは前記第2の電極に遮られることなく、前記複数の第1の電極を積層方向に貫通する蓄電装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、静電容量の減少が防止された蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1−1】(1A)は、第1の実施例による蓄電装置の平面図であり、(1B)は、(1A)の一点鎖線1B−1Bにおける断面図であり、(1C)は蓄電積層体11の断面図である。
【図1−2】(1D)は、(1A)の一点鎖線1D−1Dにおける断面図であり、(1E)は、(1A)の一点鎖線1E−1Eにおける断面図である。
【図2】(2A)及び(2B)は、それぞれ第1の集電極、第2の集電極を示す平面図である。
【図3】(3A)は、第2の集電極22を積層するにあたり、面内回転方向に関する姿勢を誤り、第1の集電極21を配置する向きに積層した場合の積層例を示し、(3B)は、第1の集電極21の一枚が面内方向にずれを生じた場合の積層例を示す。
【図4】第2の実施例による蓄電装置の平面図である。
【図5】(5A)及び(5B)は、それぞれ第2の実施例における第1の集電極、第2の集電極を示す平面図である。
【図6】(6A)及び(6B)は、複数の切り欠き部が形成された第1、第2の集電極の平面図である。
【図7】(7A)及び(7B)は、電気二重層キャパシタの集電極を示す平面図であり、(7C)は、集電極とセパレータの積層構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1Aに、第1の実施例による蓄電装置(蓄電セル、電気二重層キャパシタ)の平面図を示す。蓄電容器10内に、蓄電積層体(蓄電構造)11が収容されている。蓄電容器10の平面形状は、例えば、頂点がやや丸みを帯びた長方形である。蓄電積層体11は、第1の集電極21、第2の集電極22、セパレータ25、第1の分極性電極27、及び第2の分極性電極28を含む。第1の集電極21と第2の集電極22とは、各々の一部の領域で相互に重なり、他の領域では重ならないように、セパレータ25を介して積層配置されている。両集電極21、22の重なる部分には、第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28が配置されている。
【0013】
第1の分極性電極27と第2の分極性電極28とは、平面視においてほぼ同一の領域に配置される。第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28が配置されている領域に電荷を蓄積可能である。
【0014】
第1の集電極21及び第2の集電極22は、第1及び第2の分極性電極27、28の配置領域から相互に反対向き(図1Aにおいて、上向き及び下向き)に伸びた延伸部分21A、22Aを有する。また、延伸部分21A、22Aに、それぞれ切り欠き部21B、22Bを有する。セパレータ25の外周線は、第1の集電極21と第2の集電極22とが重なっている領域よりも外側に位置する。延伸部分21A、22Aは、セパレータ25の外周よりも外側まで導出されている。切り欠き部21B、22Bは、それぞれセパレータ25の外周よりも外側の延伸部分21A、22Aに形成されている。
【0015】
なお、図1Aにおいては、図面を見やすくする観点から、第1の集電極21と第2の集電極22の幅(図1Aにおける左右方向の長さ)を異ならせているが、両者は等しい。また、第1及び第2の分極性電極27、28の配置領域を、第1及び第2の集電極21、22の重なり領域より一回り小さく図示しているが、両集電極21、22が重なる部分はすべて、第1及び第2の分極性電極27、28の配置領域である。更に、実施例では、第1の集電極21と第2の集電極22の幅を等しいとしたが、どちらか一方を広くし、幅を相互に異ならせてもよい。
【0016】
第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13が、それぞれ蓄電容器10の内部から、蓄電容器10の相互に平行な縁と交差して、蓄電容器10の外部に取り出されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、それぞれ第1の集電極21の延伸部分21A及び第2の集電極22の延伸部分22Aと重なり、第1の集電極21及び第2の集電極22に電気的に接続されている。第1の集電極21と第2の集電極22、及び、第1の集電極タブ12と第2の集電極タブ13とは、それぞれ相互に逆極性の電極として作用する。たとえば第1の集電極21及び第1の集電極タブ12は正電極(カソード)として作用し、第2の集電極22及び第2の集電極タブ13は負電極(アノード)として作用する。
【0017】
蓄電容器10の第1及び第2の分極性電極27、28の配置領域の外方に、ガス抜き孔14が形成されている。ガス抜き孔14は、例えば第1の集電極21の延伸部分21Aと重なる位置に配置される。ガス抜き構造物15が、ガス抜き孔14に重なる位置に配置される。
【0018】
図1Bに、図1Aの一点鎖線1B−1Bにおける断面図を示す。蓄電容器10は、2枚のアルミラミネートフィルム10A、10Bを含む。アルミラミネートフィルム10A、10Bは、蓄電積層体11を挟み、蓄電積層体11を密封する。一方のラミネートフィルム10Bは、ほぼ平坦であり、他方のラミネートフィルム10Aは、蓄電積層体11の形状を反映して変形している。蓄電積層体11の形成されている領域は、その周辺領域よりも厚い。図1Bでは、セパレータ25、第1の分極性電極27、及び第2の分極性電極28の記載を省略している。
【0019】
図1Cに蓄電積層体11の断面図を示す。第1の集電極21の両面に、第1の分極性電極27が形成されており、第2の集電極22の両面に、第2の分極性電極28が形成されている。第1の集電極21及び第2の集電極22には、例えばアルミニウム箔が用いられる。第1の分極性電極27は、例えば、活性炭粒子が混錬されたバインダを含むスラリーを、第1の集電極21の表面に塗布した後、加熱して定着させることにより形成することができる。第2の分極性電極28も同様の方法で形成することができる。
【0020】
両面に第1の分極性電極27が形成された第1の集電極21と、両面に第2の分極性電極28が形成された第2の集電極22とが交互に積層されている。第1の分極性電極27と第2の分極性電極28との間に、セパレータ25が配置されている。セパレータ25には、例えばセルロース紙が用いられる。このセルロール紙に、電解液が含浸されている。電解液の溶媒には、例えば分極性有機溶剤、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート等が用いられる。電解質(支持塩)として、4級アンモニウム塩、例えばSBPB(スピロビピロリジニウムテトラフルオロボレート)が用いられる。セパレータ25は、第1の分極性電極27と第2の分極性電極28との短絡、及び第1の集電極21と第2の集電極22との短絡を防止する。
【0021】
第1の集電極21、第2の集電極22、及びその間に配置されたセパレータ25によって、蓄電領域が一つ画定される。セパレータ25を介し、第1の集電極21と第2の集電極22とが交互に積層され、多数の蓄電領域が形成された蓄電積層体11に蓄電が可能である。
【0022】
図1Bに戻って説明を続ける。複数の第1の集電極21の延伸部分21Aが重ね合わされ、第1の集電極タブ12に超音波溶接され、電気的に接続されている。複数の第2の集電極22の延伸部分22Aが重ね合わされ、第2の集電極タブ13に超音波溶接され、電気的に接続されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13には、例えばアルミニウム板が用いられる。第1の集電極21の延伸部分21Aが積層された領域には、第2の集電極22、第1の分極性電極27、第2の分極性電極28、及びセパレータ25が配置されていない。このため、延伸部分21Aが積層された部分は、蓄電積層体11が形成された部分より薄い。同様に、第2の集電極22の延伸部分22Aが積層された部分も、蓄電積層体11が形成された部分より薄い。
【0023】
第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、ラミネートフィルム10Aとラミネートフィルム10Bとの間を通って、蓄電容器10の外側まで導出されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、導出箇所において、ラミネートフィルム10Aとラミネートフィルム10Bとに熱融着されている。なお、第1の集電極タブ12とラミネートフィルム10A、10Bとの間、及び第2の集電極タブ13とラミネートフィルム10A、10Bとの間に、タブフィルムを挟んでもよい。タブフィルムは、シール強度を向上させる。
【0024】
第1の集電極21の延伸部分21Aと、ラミネートフィルム10Aとの間に、ガス抜き構造物15が配置されている。ガス抜き構造物15は、ガス抜き孔14を塞ぐように配置され、ラミネートフィルム10Aに熱融着されている。ガス抜き構造物15は、蓄電容器10内のガスを外部に排出するが、外部から蓄電容器10内への水分等の侵入を禁止する。
【0025】
蓄電容器10内は、真空排気されている。このため、ラミネートフィルム10A、10Bは、大気圧により、蓄電積層体11及びガス抜き構造物15の外形に沿うように、変形している。
【0026】
図1Dに、図1Aの一点鎖線1D−1Dにおける断面図を示す。蓄電積層体11の積層構造は、図1B及び図1Cに示したものと同一である。蓄電積層体11よりも外側の領域において、ラミネートフィルム10Aと10Bとが相互に熱融着されている。図1Dに示した断面においては、第1の集電極21及び第2の集電極22に、延伸部分が設けられていない。すなわち、蓄電積層体11の両脇に、相対的に薄い部分が設けられていない。このため、図1Dに示した断面において、蓄電積層体11の端面を覆っているラミネートフィルム10Aの傾斜は、図1Bに示した断面における傾斜よりも急峻である。
【0027】
図1Eに、図1Aの一点鎖線1E−1Eにおける断面図を示す。第1の集電極21の延伸部分21Aに形成された切り欠き部21Bは、重ね合わせられ、超音波溶接で溶着された複数の第1の集電極21の延伸部分21Aを、厚さ方向(積層方向)に貫通している。複数の第1の集電極21の各々に形成される切り欠き部21Bの形成位置及び外形(サイズ及び形状)は相互に等しい。このため、超音波溶接された複数の第1の集電極21の延伸部分21Aの積層体を貫通する切り欠き部の外形も、これと等しい。第2の集電極22の延伸部分22Aの切り欠き部22Bについても同様である。第1の集電極21と第2の集電極22には、相互に貫通位置が重複しないように切り欠き部21B、22Bが形成されている。
【0028】
図2A及び図2Bは、それぞれ第1の集電極21、第2の集電極22を示す平面図である。第1、第2の集電極21、22はともに、1枚の厚さが数十μmのアルミニウム板で構成される。また、両面の一部領域には、それぞれ第1、第2の分極性電極27、28が形成されている。
【0029】
図2Aに示すように、第1の集電極21上には、第1の分極性電極27が形成される。第1の分極性電極27が形成されていない領域が、延伸部分21Aとなる。延伸部分21Aには、例えば三角形状の切り欠き部21Bが形成されている。同様に、図2Bに示すように、第2の集電極22上には、第2の分極性電極28が形成されており、第2の分極性電極28の不形成領域が、延伸部分22Aとなる。延伸部分22Aには、例えば三角形状の切り欠き部22Bが形成されている。切り欠き部21Bと切り欠き部22Bの外形(サイズ及び形状)は、形成される位置が異なれば相互に等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0030】
切り欠き部21B、22Bが形成されていないとした場合に、両集電極21、22の外形は相互に等しく、例えば頂点がやや丸みを帯びた長方形である。また、第1の集電極21上における、第1の分極性電極27の形成範囲と、第2の集電極22上における、第2の分極性電極28の形成範囲とは相互に等しい。すなわち、第1の集電極21と第2の集電極22とは、例えば切り欠き部21B、22Bの形成位置だけが異なる電極とすることができる。
【0031】
なお、図2A及び図2Bには、第1の集電極21と第2の集電極22とを、切り欠き部21B、22Bを除く外周線を一致させて重ねたとき、切り欠き部21Bと切り欠き部22Bとが相互に重ならないように形成されている両集電極21、22の例を示した。
【0032】
第1の実施例による蓄電装置の製造に際しては、蓄電積層体11は、たとえば第1の集電極21、セパレータ25、第2の集電極22、セパレータ25をこの順に、繰り返し重ねることによって形成される。第1、第2の集電極21、22及びセパレータ25は、第1、第2の集電極21、22の延伸部分21A、22Aが相互に反対方向に延在し、第1、第2の分極性電極27、28形成領域が、セパレータ25を介し、積層方向に重なるように、たとえば人手によって積層される。
【0033】
第1の実施例による蓄電装置の第1、第2の集電極21、22は、相互に異なる位置に、それぞれ切り欠き部21B、22Bを備える。このため積層作業に際し、集電極21、22の面内回転方向に関する姿勢を誤った場合や、正確に積層した集電極21、22であっても、電極の面内方向にずれを生じた場合には、積層作業の終了後に、これを検出することが可能である。検出は、切り欠き部21B、22Bが蓄電積層体11(第1、第2の集電極21、22)の積層方向に貫通しているか否かを、たとえば目視で判定し、貫通していないと判定された場合には、積層作業をやり直す。
【0034】
図3Aは、第2の集電極22を積層するにあたり、面内回転方向に関する姿勢を誤り、第1の集電極21を配置する向きに積層した場合の積層例を示す。また、図3Bに、第1の集電極21の一枚が面内方向にずれを生じた場合の積層例を示す。両例ともに、切り欠き部21Bは蓄電積層体11(第1の集電極21)の積層方向に貫通していない。たとえばこのような場合に、積層作業のやり直しが行われる。
【0035】
集電極21、22の面内回転方向に関する姿勢の誤りの避止や、面内方向のずれの防止が実現されるため、第1の実施例による蓄電装置においては、静電容量の減少が回避される。
【0036】
なお、切り欠き部21B、22Bが積層方向に貫通している場合であっても、一方の集電極、たとえば第1の集電極21が複数枚、セパレータ25と交互に積層されるという誤配置が生じ、集電極21、22及びセパレータ25の全枚数が設計値と異なっている可能性は否定できない。このような問題の有無は、積層作業終了後、集電極21、22、及びセパレータ25の積層体の重量を測定することで検出することができる。積層数の過不足も、積層体の重量を測定することで検出することが可能である。
【0037】
図4に、第2の実施例による蓄電装置の平面図を示す。以下の説明のおいては、図1Aに示した第1の実施例による蓄電装置との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0038】
第1の実施例においては、第1の集電極タブ12と第2の集電極タブ13とが、蓄電容器10の相互に反対側の縁から引き出されていた。これに対し、第2の実施例では、第1の集電極タブ12と第2の集電極タブ13とが、蓄電容器10の同一の縁の異なる位置から引き出されている。第1の集電極21、第2の集電極22、第1の分極性電極27、第2の分極性電極28、及びセパレータ25の積層構造は、第1の実施例の積層構造と同一である。
【0039】
第1の集電極21の延伸部分21A及び第2の集電極22の延伸部分22Aの一部は、第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13の配置に適合させて、第1及び第2の分極性電極27、28の配置領域の同一の縁の異なる位置から外方に延びている。
【0040】
延伸部分21A、22Aには、それぞれセパレータ25の外周よりも外側に、切り欠き部21B、22Bが形成されている。複数の第1の集電極21の各々に形成される切り欠き部21Bの形成位置及び外形は相互に等しい。切り欠き部21Bは、溶接された複数の第1の集電極21の延伸部分21Aを、厚さ方向(積層方向)に貫通している。第2の集電極22の切り欠き部22Bについても同様である。
【0041】
ガス抜き孔14及びガス抜き構造物15は、蓄電容器10の第1及び第2の分極性電極27、28の配置領域の外方であって、第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13が引き出されている縁に対応する側に配置されている。
【0042】
なお、図4においては、第1の集電極21を第2の集電極22よりも幾分大きく示しているが、これは図面の見易さを確保するためであり、切り欠き部21B、22Bがないとした場合、両集電極21、22の外形は等しい。切り欠き部21B、22Bを考慮の外においた場合の両集電極21、22は、一方の表裏を幅方向(図4における左右方向)に反転させると他方になる配置関係にある。また、第1及び第2の分極性電極27、28の配置領域を、第1及び第2の集電極21、22の重なり領域より小さく図示しているが、幅方向(図4における左右方向)及び第1、第2の集電極タブ12、13の引き出し方向とは反対方向(図4における下方向)については、両領域の縁は重なっている。
【0043】
図5A及び図5Bは、それぞれ第2の実施例における第1の集電極21、第2の集電極22を示す平面図である。第1、第2の集電極21、22の材料、厚さは、第1の実施例におけるそれらと等しい。両集電極21、22の両面の一部領域に、それぞれ第1、第2の分極性電極27、28が形成されており、分極性電極27、28の不形成領域が、延伸部分21A、22Aとなる点においても、第1の実施例と等しい。
【0044】
第1、第2の集電極21、22の延伸部分21A、22Aには、それぞれ例えば長方形状の切り欠き部21B、22Bが形成されている。切り欠き部21Bと切り欠き部22Bの外形は、形成される位置が異なれば相互に等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0045】
切り欠き部21B、22Bが形成されていないとした場合の両集電極21、22の外形は相互に等しく、たとえば長方形に、該長方形の長辺の一部を一辺とし、短辺の延長線をそれと隣り合う一辺とする長方形状の突出部を接続した平面形状である。突出部は、延伸部分21A、22Aの一部を構成し、図5A及び図5Bに示す例においては、突出部に切り欠き部21B、22Bが形成されている。第1、第2の集電極タブ12、13は、それぞれ第1、第2の集電極21、22の延伸部分21A、22Aの突出部に溶接され、電気的に接続される。
【0046】
第1の集電極21上における、第1の分極性電極27の形成範囲と、第2の集電極22上における、第2の分極性電極28の形成範囲とは相互に等しい。第1の集電極21と第2の集電極22とは、例えば切り欠き部21B、22Bの形成位置だけが異なる電極とすることができる。
【0047】
第2の実施例による蓄電装置の製造に際しては、蓄電積層体11は、たとえば第1の集電極21、セパレータ25、第2の集電極22、セパレータ25をこの順に、繰り返し重ねることによって形成される。この際、一例として、第1の集電極21は、セパレータ25上に裏面を向けて(図5Aに示す状態で)、第2の集電極22は、セパレータ25上に表面を向けて(図5Bに示す状態から左右方向に表裏を反転させた状態で)配置される。また積層は、第1、第2の分極性電極27、28形成領域が、セパレータ25を介し、積層方向に重なるように行われる。この結果、第1、第2の集電極21、22及びセパレータ25は、集電極21、22の突出部が、集電極21、22の同一側の縁の異なる位置から、等しい方向に突出するように積層される。積層は、たとえば人手によって行われる。
【0048】
第2の実施例においても、積層作業の終了後に、切り欠き部21B、22Bが蓄電積層体11(第1、第2の集電極21、22)の積層方向に貫通しているか否かを判定し、貫通していないと判定された場合には、積層作業をやり直す。集電極21、22の面内回転方向に関する姿勢の誤りや、面内方向のずれを防止することができるため、第2の実施例による蓄電装置においても、静電容量の減少を回避することが可能である。
【0049】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0050】
たとえば、実施例においては、第1、第2の集電極21、22の双方に切り欠き部21B、22Bを形成したが、いずれか一方に形成されていればよい。集電極21、22の双方に切り欠き部21B、22Bを形成する場合に比べ、コストダウンの効果が得られる。
【0051】
また、たとえば複数の第1の集電極21に形成される切り欠き部21Bを、すべて同一外形(同一サイズ、同一形状)に形成する必要はなく、一例として相互に異なる外形とすることも可能である。切り欠き部21Bは、すべての第1の集電極21を重ねたときに、少なくとも一点において、複数の第2の集電極22またはセパレータ25に遮られることなく、複数の第1の集電極21を積層方向に貫通するように形成されていればよい。複数の第2の集電極22の切り欠き部22Bについても同様である。更に、第1、第2の集電極21、22が同じ材料で形成され、それぞれを交互に積層した際に延伸部分21A、22Aが重ならない場合には、切り欠き部21B、22Bを、同一位置に同一形状で形成することもできる。
【0052】
更に、第1、第2の集電極21、22に複数の切り欠き部を形成してもよい。図6A及び図6Bに、複数の切り欠き部が形成された第1、第2の集電極21、22の平面図を示す。両図には、集電極21、22の幅方向(図6A及び図6Bにおいては左右方向)の中線に関して対称な位置に、同形の切り欠き部21B、21b(22B、22b)が形成されている例を示した。図6A及び図6Bに示す第1、第2の集電極21、22は、表側から見た外形と裏側から見た外形とが相互に等しい。
【0053】
蓄電装置の製造に際し、たとえば図2A及び図2Bに示す集電極21、22とセパレータ25とを積層する場合、集電極21、22の表裏を誤ると、切り欠き部が積層方向に貫通しないため、面内回転方向に関する姿勢に誤りがなくても、積層作業のやり直しが行われる。図6A及び図6Bに示す集電極21、22を用いると、表裏を誤って積層しただけでは、積層作業をやり直す必要がなくなるため、製造効率を向上させることができる。なお、集電極21、22の表裏を反転させて配置しても、蓄電装置の動作に問題は生じない。
【0054】
第1、第2の集電極21、22のうちの一方のみを、表側から見た外形と裏側から見た外形とが相互に等しくなるように形成してもよい。
【0055】
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0056】
たとえば作業機械に使用される電気二重層キャパシタに利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 蓄電容器
10A、10B ラミネートフィルム
11 蓄電積層体
12 第1の集電極タブ
13 第2の集電極タブ
14 ガス抜き孔
15 ガス抜き構造物
21 第1の集電極
21A 延伸部分
21B、21b 切り欠き部
22 第2の集電極
22A 延伸部分
22B、22b 切り欠き部
25 セパレータ
27 第1の分極性電極
28 第2の分極性電極
51 正極用集電極
51A 延伸部分
52 負極用集電極
52A 延伸部分
55 セパレータ
57、58 活物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器の内部から外部に取り出された一対の電極と、
前記容器の内部に密封配置され、前記一対の電極と電気的に接続された蓄電構造と
を有し、
前記蓄電構造は、
前記一対の電極の一方に電気的に接続され、それぞれ切り欠き部が形成された複数の第1の電極と、
前記一対の電極の他方に電気的に接続された複数の第2の電極と、
複数のセパレータと
を含み、
前記第1の電極と、前記第2の電極とが、各々の一部の領域で重なり、他の領域では重ならないように、前記セパレータを介して交互に積層されてなる積層構造を有し、
前記複数の第1の電極に形成された切り欠き部は、少なくとも一点において、前記セパレータまたは前記第2の電極に遮られることなく、前記複数の第1の電極を積層方向に貫通する蓄電装置。
【請求項2】
前記複数の第2の電極のそれぞれに切り欠き部が形成され、
前記複数の第2の電極に形成された切り欠き部は、少なくとも一点において、前記セパレータまたは前記第1の電極に遮られることなく、前記複数の第2の電極を積層方向に貫通し、
前記複数の第1の電極、及び前記複数の第2の電極には、両電極の切り欠き部を除く外周線を一致させて重ねたとき、前記複数の第1の電極の切り欠き部と、前記複数の第2の電極の切り欠き部とが相互に重ならないように、切り欠き部が形成されている請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記第1の電極には、表側から見た外形と裏側から見た外形とが相互に等しくなるように複数の切り欠き部が形成されている請求項1または2に記載の蓄電装置。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−231066(P2012−231066A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99457(P2011−99457)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】