説明

蓋付き側溝の改修方法

【課題】側溝の改修において、一次蓋と二次蓋の二重蓋構造を簡略化し、改修に必要な蓋部材を容易かつ安価に製造できるようにする。
【解決手段】側溝本体の対向する側壁上部内側に凹設した蓋受部に幅方向両端が支持された既存蓋が装着されている既存側溝の改修方法において、既存蓋を取り除き、蓋受部に、新規蓋の下面幅方向両端部に棒状材がボルト止めされていることによって2本の棒状材が一体化されている新規蓋ユニットを装着し、棒状材を蓋受部に接着一体化する。新規蓋が従来の二次蓋として機能し、更に従来の一次蓋における連結部材として作用するので、従来の連結部材は存在せず、新規蓋ユニットの構造部材は新規蓋と2本の棒状材のみで構成され、製造が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿って、又は道路を横断して埋設設置された既存の蓋付き側溝の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋設設置された側溝は、設置直後でもガタツキによる騒音の問題に悩ませられたり、年月が経過するに従って老朽化し、強度が低下していたり、地上に露出している部分や蓋受部が磨り減ったり欠けたりするので、このような騒音を発する側溝や老朽化した側溝の蓋受部を補修する必要がある。また、従来の側溝の蓋は、厚さが100mm程度あり、その重さは45kg程度であった。したがって、蓋はかなり重く、側溝内の清掃作業をする場合などにおいて、蓋を着脱する作業が困難を極める。そこで、このような既存の蓋を騒音防止型や厚さの薄い軽量の蓋に交換したいという要望もある。
【0003】
下記特許文献1には、既存の蓋と交換するための軽量な薄い蓋が開示されている。
また、下記特許文献2には、既存側溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着する側溝の改修方法であって、新たな蓋が、フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からなる技術が開示されている。二次蓋としては、既存蓋よりも薄く、軽量のものを用いることができる。一次蓋を、既存側溝の蓋受部に接着一体化することで、既存側溝が強化される。
これにより、既存側溝の蓋受部分の補修を省略し、容易に新たな軽量蓋を装着でき、現場での工期も短縮できるようになった。
【0004】
図15,16は、前記特許文献2に記載された工法に関し、図15はコンクリート製一次蓋A及び二次蓋Bの例を示す斜視図、図16は一次蓋2を既存側溝本体1に装着した断面図である。
図15において、一次蓋Aは、所定間隔を隔てて平行に対向する2本の蓋受部材Cと、その2本の蓋受部材Cを連結する幅方向の連結部材Dとからなり、全体が四辺形のフレーム状をなし、中央部分が2枚の二次蓋Bを装着する開口部となっている。
図16に示すように、既存の側溝本体1の既存蓋を取り外し、その蓋受部を清掃した後、一次蓋を既存の側溝本体1の蓋受部に装着する。側溝本体の蓋受部と一次蓋の間には接着剤8を注入し、一次蓋を固定する。
【0005】
一次蓋Aの開口部には、二次蓋Bが着脱自在に装着される。二次蓋Bはレジンコンクリート製又は繊維補強コンクリート製とすることが望ましいが、ダクタイル鋳鉄製や鋼製グレーチング等にすることもできる。レジンコンクリートは曲げ強度、引張強度を有するので、必要強度を得るのに蓋の厚さを薄くすることができる。さらにレジンコンクリートは可使時間の制御が可能であり、早期に高強度を発現し、接着性、水密性、耐凍結融解性、耐薬品性、耐摩耗性、電気絶縁性等に優れる。繊維補強コンクリートは、ガラス繊維、鋼繊維、カーボン繊維などの繊維をコンクリート中に分散させたものである。繊維補強コンクリートも曲げ強度、引張強度を有するので、蓋の厚さを薄くすることができる。このようにすることで、二次蓋Bの厚さ、重量共に既存の蓋の1/2〜1/3程度とすることができる。したがって、側溝の清掃作業時などにおける蓋の着脱作業を容易にすることが可能となる。二次蓋Bには、雨水の流入のため、また蓋を取り外すときの手掛とするため、多数のスリット6が形成されている。
【0006】
前記の一次蓋を側溝本体の蓋受部に接着固定する場合、一般的には図17に示すような方法で行われる。
長期間使用された既存の側溝本体1の蓋受部11には、通常欠けなどの損傷部12があるので、一次蓋Aを蓋受部11に装着し、一次蓋と蓋受部の間に接着剤8を注入すると接着剤が側溝本体内部に流れ込んでしまう。
これを防ぐため、側溝の側壁内面上部にせき板9を設ける。せき板9を支持するためには、突っ張り棒10を使用する。突っ張り棒10はターンバックル部(図示せず)を有し、対向する側壁間に、せき板9を側壁内面に押し付けるように設けられ、せき板9を支持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】第3108053号登録実用新案公報
【特許文献2】特開2008−255612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の側溝改修方法は、一次蓋と二次蓋の二重構造で、特に一次蓋は蓋受部材と連結部材で枠状に形成しなければならないので、製造が煩雑であり、ガタツキのない無騒音蓋とするためには、一次蓋と二次蓋の接触部を曲線状にする必要があり、製造コストが高くなっていた。
本発明は、一次蓋と二次蓋の二重蓋構造を簡略化すると共に、曲線状に製造する必要をなくして、改修に必要な蓋部材を容易かつ安価に製造できるようにすることを課題とする。
【0009】
また、接着剤を注入する際、上記従来のせき板を設け、突っ張り棒で支持する作業は非常に煩雑で、作業性が悪かった。
また、いわゆる自由勾配型の側溝では、側壁上部内面の形状が複雑で、せき板を設置するのが困難であった。
本発明は、どのような形状の側溝であっても、接着剤を注入する際の漏れ止め作業を容易にできるようにし、側溝の改修作業の能率を向上することも課題とする。
また、蓋がダクタイルや鋼製グレーチングなどの金属製の場合、盗難に遭う危険がある。本発明は、蓋の盗難を容易に防止できるようにすることも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔請求項1〕
本発明は、側溝本体の対向する側壁上部内側に凹設した蓋受部に幅方向両端が支持された既存蓋が装着されている既存側溝の改修方法であって、
前記既存蓋を取り除き、前記蓋受部に、新規蓋の下面幅方向両端部に棒状材がボルト止めされていることによって2本の棒状材が一体化されている新規蓋ユニットを装着し、前記棒状材を前記蓋受部に接着一体化することを特徴とする蓋付き側溝の改修方法である。
【0011】
本発明において、新規蓋の下面幅方向両端部に棒状材がボルト止めされていることによって2本の棒状材が一体化されている。このため、新規蓋が従来の二次蓋として機能するばかりでなく、従来の一次蓋における連結部材として作用するので、本発明では従来の連結部材は存在せず、新規蓋ユニットの構造部材は新規蓋と2本の棒状材のみで構成され、部材の製造が容易になっている。
また、新規蓋は棒状材にボルト止めされ、棒状材は蓋受部に接着一体化されるので、新規蓋と棒状材の接触部を曲面にしなくとも、蓋のガタツキ、騒音が防止される。
【0012】
〔請求項2〕
また本発明は、前記棒状材がコンクリート製で、その上面にメス又はオスのインサートが植設され、該インサートにボルト又はナットを螺着して前記新規蓋を前記棒状材にボルト止めしている請求項1に記載の蓋付き側溝の改修方法
である。
【0013】
棒状材をコンクリート製としたときは、棒状材の上面の所定位置にインサートを植設しておく。インサートがメス(インサートナット)の場合は、これにボルトを螺着して新規蓋を固定する。インサートがオス(インサートボルト)の場合は、これにナットを螺着して新規蓋を固定する。改修完了後、新規蓋は着脱自在となるが、後述する新規蓋盗難防止機構を採用して新規蓋の盗難を防止することができる。
【0014】
〔請求項3〕
また本発明は、前記棒状材が断面コ字状又はL字状の鋼材で、前記ボルトを該棒状材の上面裏側に配した袋状ナットに螺着して前記新規蓋を前記棒状材にボルト止めした請求項1に記載の蓋付き側溝の改修方法である。
【0015】
棒状材としては、断面コ字状又はL字状の鋼材(いわゆるチャンネル又はアングル)を用いることができる。この場合、ボルトは棒状材の上面裏側に配した袋状ナットに螺着する。袋状ナットは、接着剤がボルトの雄ねじねじ部に浸入しない袋状のものであればよく、コンクリートに植設するインサートナットも使用できる。
改修完了後、袋状ナット内に接着剤が浸入しないので、新規蓋は着脱自在となるが、後述する新規蓋盗難防止機構を採用して新規蓋の盗難を防止することができる。
【0016】
〔請求項4〕
また本発明は、前記棒状材が断面コ字状又はL字状の鋼材で、前記ボルトの一部を該棒状材の上面裏側に配した袋状ナットに、他のボルトをドーナツ板状ナットに螺着して前記新規蓋を前記棒状材にボルト止めした請求項1に記載の蓋付き側溝の改修方法。
【0017】
ボルトを螺着するナットを、一部を袋状ナットとし、その他を通常のドーナツ板状ナットにすることができる。
通常のドーナツ板状ナット部分は、改修完了後に接着剤によりボルトが固定され、回転できなくなるので、新規蓋の盗難防止となる。したがって、側溝の清掃時に蓋開けの必要な部分のみに袋状ナットを用いて新規蓋を着脱自在とし、他の部分にはドーナツ板状ナットを用いて新規蓋を取り外せなくすることが望ましい。
【0018】
〔請求項5〕
また本発明は、前記新規蓋上面に前記ボルトの頭部又はナットを収納する凹部を形成し、前記ボルトの全部又は一部に対して、該ボルト頭部又はナット外周と凹部内周の間にリング部材を装入した新規蓋盗難防止機構を施した請求項1〜4のいずれかに記載の蓋付き側溝の改修方法である。
【0019】
凹部にリング部材を装入することで、スパナなどの工具を凹部内に入れてボルトを回転させることができなくなり、新規蓋の盗難防止となる。
盗難防止機構(リング部材)は、改修する側溝の全ての蓋について設ける必要はなく、清掃時に蓋開けを必要とする部分には盗難防止機構を設けず、その他の部分には盗難防止機構のリング部材を装入することが望ましい。
【0020】
〔請求項6〕
また本発明は、前記リング部材の内周平面形状が前記ボルト頭部又はナットの外周平面形状に対応する非円形形状で、前記リング部材の外周平面形状が前記凹部の内周面平面形状と対応する非円形形状であり、前記リング部材を前記凹部に挿入すると、前記ボルト又はナットが実質的に回転不能になる請求項5に記載の蓋付き側溝の改修方法である。
【0021】
本発明における「対応」の意味は、ボルト若しくはナットがリング部材に対して、又はリング部材が凹部に対して実質的に回転できない関係であり、対応する形状としては、例えば、同一又は相似の形状がある。非円形形状は、多角形など円形以外の形状である。
リング部材を凹部内に挿入すると、ボルト・ナットの回転が防止され、ボルト・ナットの緩み止めとなり、さらに盗難防止効果が高まる。
【0022】
〔請求項7〕
また本発明は、前記新規蓋が鋳鉄製の排水蓋又は鋼製グレーチングである請求項1〜6のいずれかに記載の蓋付き側溝の改修方法である。
新規蓋としては、繊維補強コンクリート製やレジンコンクリート製の強度の大きなコンクリート製とすることもできるが、鋳鉄製の排水蓋又は鋼製グレーチングのような金属製とすることが望ましい。
【0023】
〔請求項8〕
また本発明は、前記蓋受部に前記新規蓋ユニットを装着するときに、前記蓋受部の上面にその長さ方向に沿って、接着剤の漏れを防止する弾性帯状部材を設置し、その上に前記棒状材を載置する請求項1〜7のいずれかに記載の蓋付き側溝の改修方法である。
【0024】
接着剤の漏れ止め作業は、側溝本体の蓋受部に帯状部材を設置するだけなので、きわめて容易であり、作業能率が飛躍的に向上する。
帯状部材の断面形状は四辺形、円形など任意であるが、四辺形とするのが安定性がよく好ましい。
帯状部材の幅、厚みも接着剤の漏れ止め効果を発揮できることを条件に任意であるが、例えば幅10〜50mm、厚み5〜20mm程度とすることができる。
【0025】
帯状部材はゴム、発泡樹脂などの弾性体であるので、帯状部材の上に新規蓋ユニットを載置したときに、その重量で帯状部材が変形し、蓋受部にある損傷部の中に入り込んで損傷部を塞ぐので、接着剤の漏れが防止される。
帯状部材の硬度は任意であるが、例えば20°〜60°にすると漏れ止め効果が大きくなる。
【0026】
本発明において、蓋受部に設置された帯状部材は蓋受部に接着されることが望ましい。接着することにより、一次蓋を装着する際に帯状部材が位置ずれするのを防止できる。
この場合、帯状部材は、片面が予め接着剤を塗布された接着面となっており、その接着面が保護紙によって覆われているものを使用できる。(請求項3)保護紙を剥がすことで容易に側溝本体の蓋受部に接着することができ、漏れ止め防止作業がさらに容易になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、新規蓋ユニットが新規蓋と2本の棒状材で構成されるので、容易かつ安価に製造することができる。
また、新規蓋は棒状材にボルト止めされ、棒状材は蓋受部に接着一体化されるので、新規蓋と棒状材の接触部を曲面にしなくとも、蓋のガタツキ、騒音が防止される。
また、新規蓋盗難防止機構を採用することで、新規蓋の盗難を有効に防止できる。
さらに、接着剤の漏れ止めとして弾性帯状部材を採用することで、漏れ止め作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】新規蓋ユニットの斜視図である。
【図2】改修完了状態の断面説明図である。
【図3】改修完了状態の要部断面説明図である。
【図4】新規蓋ユニットの斜視図である。
【図5】新規蓋ユニットの断面図である。
【図6】改修完了状態の要部断面説明図である。
【図7】改修完了状態の要部断面説明図である。
【図8】新規蓋ユニットの斜視図である。
【図9】改修方法の説明図である。
【図10】盗難防止機構の断面説明図である。
【図11】盗難防止機構の平面説明図である。
【図12】盗難防止機構の断面詳細図である。
【図13】新規蓋ユニットの斜視図である。
【図14】新規蓋ユニットの斜視図である。
【図15】従来改修方法における一次蓋及び二次蓋の斜視図である。
【図16】従来の改修完了状態の断面説明図である。
【図17】従来改修方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1〜3に示す新規蓋ユニット2は、本発明に使用するもので、各々長さの等しい新規蓋3と2本の棒状材4からなる。
新規蓋3は鋳鉄製で、多数のスリット状排水孔33が形成された排水蓋である。所定位置にボルト頭部を収納する凹部31が形成され、凹部内にはボルト孔が貫通形成されている。
棒状材4は、コンクリート製で、断面四辺形をなし、上面の蓋受面41の所定位置にインサートナット42が植設されている。
2本の棒状材4は、新規蓋3の下面の幅方向両端部に位置するように、新規蓋の凹部31からボルト5をインサートナット42に螺着し、固定されている。これにより、新規蓋と棒状材は一体化される。なお、インサートナットに代えてインサートボルトを植設しておき、ナットで新規蓋を固定することもできる。
【0030】
図2,3は、図1の新規蓋ユニット2を用いて本発明改修方法を終了した状態である。
本発明改修方法は、まず、埋設されている既存の側溝本体1から既存の蓋を取り外す。次に、側溝本体の蓋受部11の上面にその長さ方向に沿って、接着剤の漏れを防止する弾性帯状部材7を設置する。次に、新規蓋ユニット2を図2に示すように帯状部材7の上に載置し、側溝本体1の蓋受部に装着する。次に、新規蓋3と側壁上部内面の間から接着剤8を注入し、蓋受部11と棒状材4の間に接着剤8を充填して蓋受部11と棒状材4を接着一体化する。このとき、帯状部材7の作用で接着剤8が側溝本体の内部に漏れ出ることが防止される。接着剤は、棒状材4と側溝本体1の側壁を所望の強度で固定できるものであればよく、セメントミルクなどの無機系接着剤、各種樹脂など有機系接着剤の中から必要に応じて任意に選択できる。
改修完了後、新規蓋3はボルト5を操作することで棒状材4(側溝本体1と一体化している)に対して着脱自在となるが、後述する盗難防止機構を設けることで、新規蓋の盗難を未然に防ぐことができる。
【0031】
図4〜7に示す新規蓋ユニット2は、本発明に使用するもので、各々長さの等しい新規蓋3と2本の棒状材4からなる。
新規蓋3は鋳鉄製で、多数のスリット状排水孔33が形成された排水蓋である。所定位置にボルト頭部を収納する凹部31が形成され、凹部内にはボルト孔が貫通形成されている。
棒状材4は、断面がコ字状の鋼材(いわゆるチャンネル)で、上側の横板部の所定位置にボルト孔が形成されている。
2本の棒状材4は、新規蓋3の下面の幅方向両端部に位置するように、また、その縦板部が内側に位置するように、新規蓋の凹部31からボルト5を上側の横板部のボルト孔に挿入し、該横板部の下側の袋状ナット6aに螺着し、固定されている。これにより、新規蓋と棒状材は一体化される。
【0032】
図4〜7の新規蓋ユニット2を用いた本発明改修方法は、前記の図2,3についての説明と同様に行えばよい。
改修完了後、袋状ナット6aの中には接着剤が浸入しないので、新規蓋3はボルト5を操作することで棒状材4(側溝本体1と一体化している)に対して着脱自在となるが、後述する盗難防止機構を設けることで、新規蓋の盗難を未然に防ぐことができる。
また、図7に示すように、袋状ナット6aに代えて、通常のナット(ドーナツ板状ナット6b)を用いると、ボルト5が蓋受部11と棒状材4の間に注入・充填された接着剤8で固定されるので、ボルトを回転して新規蓋3を取り外すのが困難になり、盗難防止効果を生じる。
なお、本実施例においては、断面コ字状鋼材の縦板部(ウエブ)を内側に向けて配置しているが、外側に向けて配置することもできる。
【0033】
図8,9に示す新規蓋ユニット2は、本発明に使用するもので、各々長さの等しい新規蓋3と2本の棒状材4からなる。
新規蓋3は鋳鉄製で、多数のスリット状排水孔33が形成された排水蓋である。所定位置にボルト頭部を収納する凹部31が形成され、凹部内にはボルト孔が貫通形成されている。
棒状材4は、断面がL字状の鋼材(いわゆるアングル)で、横板部の所定位置にボルト孔が形成されている。
2本の棒状材4は、新規蓋3の下面の幅方向両端部に位置するように、また、縦板部が内側に位置するように、新規蓋の凹部31からボルト5を上側の横板部のボルト孔に挿入し、該横板部の下側の袋状ナット6aに螺着し、固定されている。これにより、新規蓋と棒状材は一体化される。
【0034】
図9に示す本発明改修方法は、まず、埋設されている既存の側溝本体1から既存の蓋を取り外す。次に、新規蓋ユニット2を同図に示すように側溝本体1の蓋受部に装着する。このとき、必要であれば、適宜スペーサを用いて新規蓋ユニットの高さ調整を行う。次に、同図に示すように、側溝本体1の内面にせき板9を設置し、突っ張り棒10で突っ張ってせき板がずり落ちないようにする。なお、突っ張り棒10の中央部はターンバックルになっている。次に、新規蓋3と側壁上部内面の間から接着剤8を注入し、接着剤を側溝本体の蓋受部11と棒状材4の間に充填し、蓋受部11と棒状材4を接着一体化する。
上記は、従来のせき板と突っ張り棒を用いた施工方法であるが、これに代えて、図3などに示すような帯状部材7を用いた施工も可能である。
【0035】
改修完了後、袋状ナット6aの中には接着剤が浸入しないので、新規蓋3はボルト5を操作することで棒状材4(側溝本体1と一体化している)に対して着脱自在となるが、後述する盗難防止機構を設けることで、新規蓋の盗難を未然に防ぐことができる。
また、袋状ナット6aに代えて、通常のナット(ドーナツ板状ナット)を用いると、ボルト5が接着剤8で固定されるので、ボルトを回転して新規蓋3を取り外すのが困難になり、盗難防止効果を生じるのは、前記の場合と同様である。
なお、本実施例においては、断面L字状鋼材の縦板部を内側に向けて配置しているが、外側に向けて配置することもできる。
【0036】
図10,11に、本発明における盗難防止機構の一例を示す。
新規蓋3をボルト5で固定した後、凹部31内のボルト頭部外周と凹部内周の間にリング部材32を装入する。リング部材32は、内周面の平面形状がボルト頭部の外周平面形状とほぼ同一の非円形形状(ボルト頭部の六角形よりやや大きい径の六角形)で、外周部に突出部32bを有するリング状をなす。凹部31の内周面は、突出部32bとほぼ同じ平面形状の切欠部31aが形成され、リング部材32の外周平面形状に対応する非円形の内周平面形状になっている。リング部材32を凹部31内に挿入すると、ボルトを回転する工具を凹部内に入れられなくなり、ボルトを回転して新規蓋を取り外すことが困難になる。したがって、凹部に挿入されたリング部材は蓋の盗難防止機構となっている。また、図11に示すように、突出部32bが切欠部31a内に嵌合するので、ボルト5の回転が防止され、ボルトの緩み止めとなり、さらに盗難防止効果が高まる。リング部材32は、接着剤で固定し、容易に抜けないように装入することが望ましい。リング部材の素材は、プラスチック又は金属が好適である。
リング部材は、天板を設けて上部を閉塞し、キャップ状としてもよい。
【0037】
図12に盗難防止機構の他例を示す。リング部材の内周面形状、外周面形状、及び凹部の形状は図11と同様である。また、リング部材の内周面下端には突起32aが形成されている。ワッシャー51はカラー付ワッシャーで、カラーによりボルト頭部下端とワッシャー本体の円板の間に隙間が生じる。リング部材32を凹部31内に装入すると、突起32aがボルト頭部下端に係合し、リング部材32が容易に抜けないようになっている。この例は、接着剤を用いることなく、リング部材32を凹部31に押し込むだけで装入できるので、装入作業がきわめて簡単である。
【0038】
図13は、本発明で使用できる新規蓋ユニット2の他例の斜視図である。
この新規蓋ユニット2は、2個の新規蓋3と2本の棒状材4からなり、新規蓋3は棒状材4の長さ方向両端部に固定され、中間部には新規蓋は設けられていない。このように、2本の棒状材に複数の新規蓋を取り付けるようにしてもよい。棒状材は、図14に示すように、全ての新規蓋を取り付けた状態において、全新規蓋の全長に亘って設けられるようにする。
新規蓋3は鋳鉄製で、多数のスリット状排水孔33が形成された排水蓋である。所定位置にボルト頭部を収納する凹部31が形成され、凹部内にはボルト孔が貫通形成されている。
棒状材4は、コンクリート製で、断面四辺形をなし、上面の蓋受面41の所定位置にインサートナット42が植設されている。
2本の棒状材4は、各新規蓋3の下面の幅方向両端部に位置するように、新規蓋の凹部31からボルト5をインサートナット42に螺着し、固定されている。これにより、新規蓋と棒状材は一体化されている。
この新規蓋ユニット2を用いた本発明改修方法は、前記の図2,3についての説明と同様に行うことができる。新規蓋ユニット2を側溝本体1の蓋受部に装着した後、図14に示すように、棒状材4の中間部に2個の新規蓋3をボルトで取り付ける。中間部の新規蓋の取り付けは、接着剤を注入する前でも後でもよい。
新規蓋の凹部31には、必要に応じて、盗難防止機構である前記リング部材を装入する。
【符号の説明】
【0039】
1 側溝本体
11 蓋受部
12 損傷部
2 新規蓋ユニット
3 新規蓋
31 凹部
31a 切欠部
32 リング部材
32a 突起
32b 突出部
33 排水孔
4 棒状材
41 蓋受面
42 インサートナット
5 ボルト
51 ワッシャー
6a 袋状ナット
6b 円板状ナット
7 帯状部材
8 接着剤
9 せき板
10 突っ張り棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝本体の対向する側壁上部内側に凹設した蓋受部に幅方向両端が支持された既存蓋が装着されている既存側溝の改修方法であって、
前記既存蓋を取り除き、前記蓋受部に、新規蓋の下面幅方向両端部に棒状材がボルト止めされていることによって2本の棒状材が一体化されている新規蓋ユニットを装着し、前記棒状材を前記蓋受部に接着一体化することを特徴とする蓋付き側溝の改修方法。
【請求項2】
前記棒状材がコンクリート製で、その上面にメス又はオスのインサートが植設され、該インサートにボルト又はナットを螺着して前記新規蓋を前記棒状材にボルト止めしている請求項1に記載の蓋付き側溝の改修方法。
【請求項3】
前記棒状材が断面コ字状又はL字状の鋼材で、前記ボルトを該棒状材の上面裏側に配した袋状ナットに螺着して前記新規蓋を前記棒状材にボルト止めした請求項1に記載の蓋付き側溝の改修方法。
【請求項4】
前記棒状材が断面コ字状又はL字状の鋼材で、前記ボルトの一部を該棒状材の上面裏側に配した袋状ナットに、他のボルトをドーナツ板状ナットに螺着して前記新規蓋を前記棒状材にボルト止めした請求項1に記載の蓋付き側溝の改修方法。
【請求項5】
前記新規蓋上面に前記ボルトの頭部又はナットを収納する凹部を形成し、前記ボルトの全部又は一部に対して、該ボルト頭部又はナット外周と凹部内周の間にリング部材を装入した新規蓋盗難防止機構を施した請求項1〜4のいずれかに記載の蓋付き側溝の改修方法。
【請求項6】
前記リング部材の内周平面形状が前記ボルト頭部又はナットの外周平面形状に対応する非円形形状で、前記リング部材の外周平面形状が前記凹部の内周面平面形状と対応する非円形形状であり、前記リング部材を前記凹部に挿入すると、前記ボルト又はナットが実質的に回転不能になる請求項5に記載の蓋付き側溝の改修方法。
【請求項7】
前記新規蓋が鋳鉄製の排水蓋又は鋼製グレーチングである請求項1〜6のいずれかに記載の蓋付き側溝の改修方法。
【請求項8】
前記蓋受部に前記新規蓋ユニットを装着するときに、前記蓋受部の上面にその長さ方向に沿って、接着剤の漏れを防止する弾性帯状部材を設置し、その上に前記棒状材を載置する請求項1〜7のいずれかに記載の蓋付き側溝の改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−231461(P2011−231461A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99926(P2010−99926)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(300030277)中越製陶株式会社 (10)
【Fターム(参考)】