説明

蓋体及びそれを用いた容器

【課題】より機械的強度、密封性が高く、また、より製作しやすい蓋体およびそれを用いた容器を提供すること。
【解決手段】一つの解決手段として、複数の接続部を介して一体に成型される蓋本体部及び食器部と、少なくとも蓋本体部の一部と前記食器部とを覆って配置されるシール材を有する蓋体とする。
また、複数の接続部を介して一体に成型される蓋本体部及び食器部と、少なくとも前記蓋本体部の一部と食器部とを覆って配置されるシール材を有する蓋体と、蓋体と嵌合可能であって、底部及び胴部により収納空間を成型する器と、を有する容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体及びそれを用いた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大量のプラスチック容器が市場に流通している。これらプラスチック容器のなかでも、例えばプリン等の食品用に用いられるプラスチック容器においては、蓋体において別体として又は一体としてスプーンが付属しているものがある。
【0003】
このようにスプーンが付属したプラスチック容器の蓋体の例として、例えば、下記特許文献1に、剥離層の成型された蓋天板を蓋体と一体成型するとともに剥離層を介してスプーンを一体成型したスプーン付蓋体とその製造方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−91416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、スプーンと蓋体とを一体成型しているものの、蓋天板の殆どが紙を主体とした構成であるため機械的強度、密封性において課題が残り、また、その製造方法である射出成型においても材料となる樹脂の流動性において課題が残る。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決し、より機械的強度、密封性が高くまた、より製作しやすい蓋体およびそれを用いた容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、本発明の一形態に係る蓋体は、複数の接続部を介して一体に成型される蓋本体部及び食器部と、少なくとも前記蓋本体部の一部と前記食器部とを覆って配置されるシール材を有することを特徴とする。なおこの手段において、限定されるわけではないが、接続部の数は2以上であることが好ましい。またこの手段において、限定されるわけではないが、蓋本体部と食器部は、食器部の形状に対応して成型される切欠により分離されていることが好ましい。更に、この手段において、限定されるわけではないが、食器部はスプーン、フォーク、ナイフ又はへらであることが好ましい。
【0008】
また、本発明の他の一形態に係る容器は、複数の接続部を介して一体に成型される蓋本体部及び食器部と、少なくとも前記蓋本体部の一部と前記食器部とを覆って配置されるシール材を有する蓋体と、この蓋体と嵌合可能であって、底部及び胴部により収納空間を成型する器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によって、より機械的強度、密封性が高く、また、より製作しやすい蓋体及びそれを用いた容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書においては同一又は同様の機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
(実施形態1)
まず図1に、本実施形態に係る容器における蓋体1の内面図を、図2に外面図(図1の内面図を反対側から見た場合の図)を、図3に図1におけるA−A’断面図を、図4に図1におけるB−B’断面図を、それぞれ示す。図1で示すとおり蓋体1は、蓋本体部2とスプーン3とが切欠7により区切られるとともに複数の接続部4を介して一体に成型されている。また蓋体1は、図2、図3、図4で示すとおり、蓋本体部2の一部とスプーン3全体とを覆うように配置されたシール材5を有している。なお蓋体1は、器6と嵌合することによりヨーグルト等の食品を収容、保存させることが可能となる。図5に蓋体1と器6とが嵌合された状態の容器の斜視図を示しておく。
【0012】
図1で示すように蓋体1における蓋本体部2は、蓋体の主要な部位の一つであって、器6と嵌合可能となるように成型される淵部21と、蓋として機能する天板部22とに大きく分けることができ、スプーン3は天板部22側に配置されている。なお、天板部22の断面形状としては、中心部分に向かうに従い盛り上がるドーム形状であってもよいし、平板状であってもよい。また平面形状としては円形であってもよいし、楕円形状であってもよく、更に角の丸い四角形など様々な形状を採用することができ特に限定はされない。なお、本実施形態では図1乃至図4で示すように、本実施形態に係る蓋体1は、平面形状が円形で立体形状がドーム形状のものとなっている。
【0013】
蓋本体部2の材質としては、スプーン3と一体成型できる限りにおいて特段に制限はなく、いわゆる熱可塑性のプラスチック、例えばポリエチレン樹脂(PE)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリオキシメチレン樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂(PMMA)等を用いることができる。
【0014】
また図1が示すとおり、蓋体におけるスプーン3は、容器を開封して器6に収容された食品などを取り出す際に、取り外して使用する食器部であって、スプーン形状に成型される切欠7により分離されている。スプーン3は上記蓋本体部2と一体で成型されるため、蓋本体部2と同じ材質である。ここで、「食器部」とは、食品をすくう、刺す、切る等の動作を行う用具をいい、本実施形態では一例としてスプーンを用いているがこれに限られず、例えばフォーク、ナイフ、更にはヘラとすることも可能であり、皿部はそれら形状に応じて適宜調整可能である。
【0015】
スプーン3は、皿部31と、柄部32に分けることができ、更に柄部32にはゲート部33が成型されている。
【0016】
スプーン3の皿部31は、容器に収容される食品を取り出す際にその食品を載せるためのものであって、くぼみを有する略楕円形状となっている。またこの皿部31の周辺には、スプーン3の強度を補強するための隆起部34が成型されている。
【0017】
またスプーン3の柄部32は、スプーンを持つ際に把持する部分であって、長い板形状となっている。また柄部32の周辺にも、スプーン3の強度を補強するための隆起部34が成型されている。なおさらに皿部31と柄部32との間には、接続部分における強度補強のためリブ35が成型されている(断面形状については図4参照)。
【0018】
更にスプーン3の柄部32にはゲート部33が成型されており、蓋本体部2とスプーン3とを接続する複数の接続部4が接続されている。特に本実施形態において接続部4は、ゲート部33におけるゲート中心331から放射線状にかつ等しい距離に4つ配置されているが、接続部の数は2以上あれば差し支えない。また、ゲート部33は、後述する蓋体の製造方法において溶融した材料の注入口(ゲート)として用いられる部分であり、本実施形態では柄部32の幅方向に対し円弧状に盛りあがった部分を有している。
【0019】
これは、蓋体の製造過程において、ゲートから溶融した材料を金型に注入した場合、複数の接続部4にほぼ同時に注入できるよう設計したものであり、これにより製造を容易にすることができる。即ち、従来の蓋体の例では、スプーンの皿部の先端や柄部の先端といったスプーンの中心軸上にある遠い位置から蓋枠に溶融した材料を注入せざるを得ないが、本実施形態では複数の接続部4をゲート中心331から放射線状に配置することで、注入口をゲート中心に近づけ、より安定的に蓋本体部2に溶融した材料を注入しやすくでき、製造しやすいといった利点がある。特に本実施形態では、複数の接続点4がゲート中心331から等距離にも配置されているため、理想的にはいずれの接続部4において同時に溶融した材料を注入することができ有用である。また、本蓋体1において、蓋本体部2からスプーン3を取り外す際、蓋部の外面側(シール材5側)からゲート部33の近傍を押しつつ、スプーン3を引き剥がすことが考えられるが、本実施形態に係る蓋体はこのような構成にすることで、ゲート部33近傍を押す力をより効果的に接続部4に伝えることができ、スプーン3の取り外しをより容易に行うことができるようになる。また、本実施形態において接続部4は蓋本体部2の中央近傍に配置されることともなるため、蓋本体部2も中央近傍に成型され、従来の技術に比べ蓋本体部2を広くすることが可能となり、蓋体の強度向上にも寄与する。
【0020】
また、蓋体におけるシール材5は、上記のとおり蓋本体部2の一部とスプーン3の全体とを覆うように配置されるものであり、より具体的には蓋本体部2の一部、スプーン3、接続部4、切欠7を覆うよう配置され、蓋体2と器6とが嵌合した場合において容器内部に空気が入らないように密封するためのものである。上記機能を奏する限りにおいて形状は限定されないが、例えば容器のラベルとしてのデザインの観点、スプーンや切欠を十分に覆うことができる観点から、楕円形状、円形状などが望ましい。本実施形態では図2で示すとおり楕円形状としている。
【0021】
また、シール材5の材質としては、空気や水分を透過させない程度の密封性を有し、蓋本体部2と接着可能である限りにおいて特段に制限はないが、例えばプラスチックフィルム、紙、アルミニウム薄膜、合成紙の少なくともいずれかを好適に用いることができる。
【0022】
蓋体1と嵌合する器6としては、底部と胴部により収納空間を成型することができるものであれば特段に制限はない。また、この材質においても上記蓋体と同様の材質を使用することができる。
【0023】
次に、上記蓋体1の製造方法について、図6を用いて説明する。図6は、本容器を製造するための金型における断面図であり、より具体的には図1におけるB−B’線断面に対応したものである。
【0024】
図6で示すとおり、蓋体は、上記説明した蓋体の形状に対応したくぼみが成型されるよう組み合わされる一対の金型81、82に、溶融した材料をゲート83から注入することで製造可能である。
【0025】
また、上記のように蓋体には蓋本体部の一部、スプーン、切欠を覆うシール材が配置されるが、このシール材5は一対の金型81、82の成型の際にあらかじめ一方の金型に設けておき、蓋本体部、スプーンと適度に接着させて製造する。なおこの場合において、スプーンと蓋本体部とは、容器内部の密封性を保持する一方スプーンを蓋本体部から取り外しやすいよう適度の接着性を有することが好ましい。図6で示しているとおり、本実施形態では一方の金型(図6では一方の金型82側)にあらかじめシール材5を配置する。
【0026】
また、本実施形態において、ゲート83は蓋体の内面側に形成させ、内面側から溶融した材料を注入することが望ましい。内面側から溶融した材料を注入する構成とすれば、シール材を金型内に予め配置して製造する場合であっても、シール材5にゲート83による孔を空ける必要がなくなるため、密封性を維持することができるという利点がある。
【0027】
以上、本容器によって、より機械的強度、密封性が高く、また、より製作しやすい蓋体及びそれを用いた容器を提供することができる。
【0028】
また、本実施形態において、スプーン3と蓋本体部2とを接続する接続部4は、4つの例を記載しているが、数はこれに限られず、2つであってもよいし、4つ以上あってもかまわない。但し、蓋体の形状が対称性を有する観点から偶数であることが望ましく、また溶融した材料の注入のしやすさの観点から、4以上の偶数であることがより望ましい。
【0029】
更に、本実施形態においては、スプーン3の皿部31、柄部32のそれぞれの先端部には接続部4を設けていないが、上記実施形態の構成を備える限りにおいて設けることは差し支えない。
【0030】
(実施形態2)
本実施形態は、ほぼ実施形態1と同様であるが、ゲート中心331の位置が異なる。具体的には、本実施形態におけるゲート中心331は、蓋体の内面側ではなく、外面側に成型されていることを特徴の一つとする。
【0031】
図7に、本実施形態に係る蓋体の外面図を、図8に図7におけるC−C’断面図を、図9に図7におけるD−D’断面図を、図10に本実施形態に係る蓋体の製造工程を説明する図をそれぞれ示す。
【0032】
図7乃至図10が示すとおり、本実施形態における蓋体1は、ほぼ実施形態1における蓋体と同様であるが、シール材5のうち、ゲート中心331に対応する部分に孔が設けられることとなるが、上記実施形態と同様、このような構成とすることで蓋体及びこれを用いた容器は、機械的強度、密封性が高く、また、より製作しやすくなる。
【0033】
本実施形態に係る蓋体の製造方法は、ほぼ実施形態1と同様であるが、図10で示すとおり、蓋体の外面方向から溶融した材料を注入していることを特徴とする。これにより、本実施形態に係る蓋体を製造することができる。
【0034】
以上、本蓋体及びこれを用いた容器によって、より機械的強度、密封性が高く、また、より製作しやすい蓋体及びそれを用いた容器を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る蓋体及び容器は、例えばヨーグルト、プリン、バター、マーガリン等の食品等の容器として産業上の利用可能性がある。もちろん、本容器の効果を利用する限りにおいて食品等以外の用途にも適用は可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態1に係る蓋体の内面図である。
【図2】実施形態1に係る蓋体の外面図である。
【図3】図1における蓋体のA−A’断面図である。
【図4】図2における蓋体のB−B’断面図である。
【図5】実施形態1に係る容器の斜視図である。
【図6】実施形態1に係る蓋体の製造工程を説明する図(内面側にゲートを設ける場合)である。
【図7】実施形態2に係る蓋体の外面図である。
【図8】図7における蓋体のC−C’断面図である。
【図9】図7における蓋体のD−D’断面図である。
【図10】実施形態2に係る蓋体の製造工程を説明する図(外面側にゲートを設ける場合)である。
【符号の説明】
【0037】
1…蓋体、2…蓋本体部、3…スプーン、4…接続部、5…シール材、6…器、7…切欠、8…金型、21…淵部、22…天板部、31…皿部、32…柄部、33…ゲート部、34…隆起部、35…リブ、81、82…金型、83…射出口、331…ゲート中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続部を介して一体に成型される蓋本体部及び食器部と、
少なくとも前記蓋本体部の一部と前記食器部とを覆って配置されるシール材を有する蓋体。
【請求項2】
前記複数の接続部は、2以上であることを特徴とする請求項1記載の蓋体。
【請求項3】
前記蓋本体部と前記食器部は、前記食器部の形状に対応して成型される切欠により分離されていることを特徴とする請求項1記載の蓋体。
【請求項4】
前記食器部は、スプーン、フォーク、ナイフ又はへらの何れかであることを特徴とする請求項1記載の蓋体。
【請求項5】
複数の接続部を介して一体に成型される蓋本体部及び食器部と、少なくとも前記蓋本体部の一部と前記食器部とを覆って配置されるシール材を有する蓋体と、
前記蓋体と嵌合可能であって、底部及び胴部により収納空間を成型する器と、を有する容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−286483(P2009−286483A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143996(P2008−143996)
【出願日】平成20年6月1日(2008.6.1)
【出願人】(000222565)東洋科学株式会社 (13)
【Fターム(参考)】