説明

蓋材及びこれを用いた包装材

【課題】カップ状容器と蓋材からなる食品の包装材において、保管時や運搬時の振動によっても内面が損傷しにくい蓋材を提供する。
【解決手段】基材層11とアルミ箔層12とシーラント層14とを有する蓋材において、アルミ箔層12とシーラント層14との間に、ショアD硬度が50以上のエチレン−メタクリル酸共重合体からなる緩衝層13を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺等を包装するための包装材に関し、特に、カップ状容器の開口の周縁部にヒートシールされる蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺などの食品の包装材としては、カップ状の容器と、該容器の開口の周縁部にヒートシールされる蓋材とからなる包装材が一般的である。係る蓋材としては、一般的に、容器にヒートシールするためのシーラント層と、蓋材に遮光性とガスバリア性を付与するためのアルミ箔層等の金属層、印刷などを施す表面層の3層からなる積層体を基本構成としている。
【0003】
例えば特許文献1には、蓋材を容器から剥離する際に、容器の縁から容器表面のコーティング層が剥がれて毛羽立ちを生じるのを防止するため、ホットメルト層(シーラント層)とアルミ箔層との間に、エチレン−メタクリル酸共重合体からなる介在樹脂層を設けた蓋材が開示されている。また、特許文献2には、包装後に多少の外圧が加わった場合や高温下でも容器から剥離せず、開封時には容器に損傷を与えないように、ホットメルト層とアルミ箔層との間にポリエチレンのポリマーアロイからなる下地層を介在させた蓋材が開示されている。さらに、特許文献3には、蓋材の強度を向上させるために、シーラント層と金属層との間にポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、紙などからなる中間層を介在させた蓋材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−217147号公報
【特許文献2】特開2001−150591号公報
【特許文献3】特開2007−39107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したカップ状容器と蓋材からなる食品の包装材においては、包装後の包装体の保管時や運搬時の振動によって、被包装物である食品が蓋材の内面に接触して傷つけ、アルミ箔層が露出して酸化し、黒ずみを発生してしまう場合や、アルミ箔層の損傷によって蓋材のガスバリア性が低下し、被包装物である食品が酸化するといった場合があった。いずれの場合も、商品価値を低下させることになり、その対策が望まれていた。
【0006】
本発明の課題は、上記したような保管時や運搬時の振動によっても内面が損傷しにくい蓋材と、該蓋材を用いた包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1は、カップ状容器の開口の周縁部にヒートシールされて前記開口を塞ぐ蓋材であって、
基材層とアルミ箔層と緩衝層とシーラント層とをこの順序で有し、
前記緩衝層が、ショアD硬度が50以上のエチレン−メタクリル酸共重合体からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2は、カップ状容器と、前記カップ状容器の開口の周縁部にその外周部がヒートシールされる蓋体とからなる包装材であって、前記蓋体が前記本発明の蓋材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、シーラント層とアルミ箔層との間に緩衝層を設けたことによって、シーラント層に被包装物が接触してもアルミ箔層に至る損傷を生じることがなく、アルミ箔層の露出による酸化や、アルミ箔層の損傷によるガスバリア性の低下が防止される。よって、蓋材の内面の黒ずみや食品の酸化による商品価値の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の包装材の断面模式図である。
【図2】本発明の蓋材の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の蓋材は、カップ状容器の開口の周縁部にヒートシールされて該開口を塞ぐ蓋材であり、基材層とアルミ箔層と緩衝層とシーラント層とをこの順序で有する。包装時には、基材層が外側、シーラント層が内側に配置し、シーラント層によって容器の開口の周縁部にヒートシールされる。また、本発明の包装材は、上記本発明の蓋材と、該蓋材をヒートシールするカップ状容器からなる。
【0012】
図1は、本発明の包装材の一実施形態の断面模式図である。図中、1は包装材、2はカップ状容器、3は蓋材である。図1に示したように、カップ状容器と蓋材からなる包装材は、カップ状容器2内に被包装物(不図示)を収納した後、該容器2の開口の周縁部(フランジ部)に蓋材3の外周部をヒートシールして密封される。カップ状容器2は、被包装物の形態によって、深さや平面形状が適宜選択される。
【0013】
図2は、本発明の蓋材2の断面模式図である。図2中、11は基材層、12はアルミ箔層、13は緩衝層、14はシーラント層(ヒートシール層)である。以下に各層について説明する。
【0014】
〔基材層11〕
基材層11は、包装時に外側になる層である。よって、印刷に適した紙層を有することが好ましく、また、紙層とアルミ箔層12とを接着するために、内側にポリエチレン(PE)層を有することが好ましい。よって、具体的には、紙層とポリエチレン(PE)層との2層構成(紙層が外側)、或いは、PET層と紙層とPE層(PET層が外側)との3層構成が好ましい。
【0015】
〔アルミ箔層12〕
アルミ箔層12は、蓋材に遮光性とガスバリア性を付与するための層であり、好ましくはその厚さが6〜15μmである。
【0016】
〔緩衝層13〕
緩衝層13は、アルミ箔層12とシーラント層14の両者との接着性が良好で、製造上、アルミ箔層12に直接押し出し成形することによって、実用性のある層間強度が得られる層である。このような特性を備えた緩衝層構成樹脂として、本発明においては、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)が用いられる。さらに、本発明においては、アルミ箔層12の傷つき防止効果を得るため、緩衝層13にはショアD硬度として50以上が必要である。具体的には、三井デュポン・ポリケミカル社製「ニュクレル(登録商標) N0908C」、「ニュクレル N1108C」を用いることができる。また、緩衝層13の厚さとしては10〜30μmが好ましい。
【0017】
本発明においては、アルミ箔層12とシーラント層14との間に緩衝層13を介在させることによって、シーラント層14表面に被包装物が接触して該表面を傷つけた場合でも、緩衝層13が係る傷の侵入を抑制するため、傷はアルミ箔層12に至るほど深くならず、アルミ箔層12の露出或いは損傷が防止される。
【0018】
〔シーラント層14〕
シーラント層14は、ヒートシールされる容器2との接着性及び、接着後の剥離性が必要であり、緩衝層13との接着性が良いことも必要である。好ましい厚さは15〜30μmであり、EVA、アイオノマー、オレフィン樹脂及びこれらの混合物が好ましく用いられる。通常、カップ状容器2はポリスチレン製であることから、シーラント層14としては、ポリスチレンや緩衝層13のEMAAとの接着性及びポリスチレンとの剥離性を有する三井デュポン・ポリケミカル社製の多目的シール樹脂「CMPS(登録商標) VN−503」が好ましく用いられる。
【0019】
本発明の蓋材3においては、シーラント層14側からの鉛筆法による引っかき強度(JIS K5600−5−4)が5H以上であると、被包装物による引っかきに対して充分な耐性が示され、蓋材3の損傷が防止されるため、望ましい。
【0020】
本発明の蓋材の作製方法としては、紙層とアルミ箔層12とをPEを介して押し出しラミネートして中間積層体を得、次いで、該中間積層体のアルミ箔層12側に緩衝層13の構成樹脂を介してシーラント層14を押し出しラミネートする方法が挙げられる。
【実施例】
【0021】
紙層(大王製紙社製「竜王コート」、目付け74g/m2)と厚さ7μmのアルミ箔(住軽アルミ箔社製「1N30」)との間に、厚さが15μmとなるようにPE(旭化成ケミカルズ社製「サンテック(登録商標) L1850K」)を押し出しラミネータで樹脂温度330℃、圧力30MPaで押し出し、紙層/PE層/アルミ箔層の中間積層体を得た。次に、この中間積層体のアルミ箔層側に、下記表1に示す緩衝層構成樹脂を厚さが15μmとなるように介して、厚さ20μm層のシーラント層(三井デュポン・ポリケミカル社製「CMPS VN−503」を樹脂温度300℃、圧力30MPaで押し出しラミネートし、蓋材を得た。
【0022】
表1中、EMAAは全て三井デュポン・ポリケミカル社製品であり、実施例1は「ニュクレル N0908C」、実施例2は「ニュクレル N1108C」、比較例1は「ニュクレル AN4228C」である。また、比較例3のLDPEは低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ社製「サンテック L1850K」)であり、金属との接着性が低いため、アンカー剤(東洋モートン社製「EL−420」)をアルミ箔層に塗布し、乾燥した後、該LDPEを該アンカー層に直接押し出した。
【0023】
得られた各例の蓋材について、下記の各試験を行い、結果を表1に示した。
【0024】
〔鉛筆法による引っかき硬度〕
JIS K5600−5−4に準じて、三菱鉛筆社製のUniシリーズを用い、各蓋材のシーラント層の表面について引っかき強度を調べた。
【0025】
〔ショアD硬度〕
JIS K7215に準じて、緩衝層のショアD硬度を測定した。
【0026】
〔傷つき性〕
市販の即席麺カップ容器の蓋材を剥離し、内容物を入れたまま、本例の蓋材のシーラント層と上記カップ容器の開口の周縁部とが接するように重ねてヒートシール(温度:140℃、圧力:0.3MPa、時間:0.7sec)した。この容器を蓋材が下になるように逆さまにして各例10個ずつを段ボール箱に水平に並べて封止した。この箱を配送用トラックに積み、1000km輸送した後、各容器を取り出し、蓋材を剥離して蓋材内面の傷つき具合を目視で観察した。各例において10個の試料の中でばらつきは認められなかった。評価基準は以下の通りである。
【0027】
評価基準
◎:変化なし。
×:肉眼で判別できる3mm長以下の傷がある。
××:3mm長を超える傷がある。
【0028】
【表1】

【0029】
尚、シーラント層のショアD硬度は40であった。
【符号の説明】
【0030】
1:包装材、2:カップ状容器、3:蓋材、11:基材層、12:アルミ箔層、13:緩衝層、14:シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状容器の開口の周縁部にヒートシールされて前記開口を塞ぐ蓋材であって、
基材層とアルミ箔層と緩衝層とシーラント層とをこの順序で有し、
前記緩衝層が、ショアD硬度が50以上のエチレン−メタクリル酸共重合体からなることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
シーラント層側からの、鉛筆法による引っかき強度が5H以上である請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
カップ状容器と、前記カップ状容器の開口の周縁部にその外周部がヒートシールされる蓋体とからなる包装材であって、前記蓋体が請求項1または2に記載の蓋材であることを特徴とする包装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−219116(P2011−219116A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88444(P2010−88444)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】