説明

薄切片試料作製装置及び薄切片試料作製方法

【課題】スライドガラスに対する薄切片の新規な貼り付け手法を採用した薄切片試料作製装置を提供する。
【解決手段】前記キャリアテープの走行軌道に対して交差する方向に延在する第1搬送部10と、前記接着液をスライドガラス22の所定位置に塗布する接着液塗布部11と、薄切片がスライドガラスの貼着位置に位置あわせし、キャリアテープとスライドガラスとを接触させることによって薄切片をスライドガラスに貼り付ける薄切片貼付部12と、第1搬送部10によって搬送されたスライドガラスを前記第1搬送部の搬送方向と逆方向に搬送する第2搬送部13と、第2搬送部を搬送されたスライドガラスを再び第1搬送部に供給する再搬送部14と、前記第2搬送部を搬送されたスライドガラスを装置外部へ搬出する搬出部15と、前記再搬送部または搬出部に供給するかを切り換える切換部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学試料分析や生体試料等の顕微鏡観察などに利用される薄切片試料を作製する薄切片試料作製装置及び薄切片試料作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、理化学試料分析や生体試料等の顕微鏡観察などに利用される薄切片試料を作製するための装置としては、ミクロトームが広く知られている。ミクロトームは、生体試料等の被検体をパラフィン等の包埋材の中に埋め込んだ試料ブロックの表層部分をカッターによって薄切りすることにより、薄切片を作製する装置である。
【0003】
ミクロトームにより作製された薄切片は、例えば、筆や紙等を用いて、水あるいは湯等の伸展用の液体を充填した槽に回収されて皺等を伸展されたのち、接着液(例えば水)を用いてスライドガラスに貼付けられる。あるいは、上記薄切片は、接着剤を塗布したスライドガラスに直接配置され、スライドガラスが加温されることで皺等の伸展が行われてスライドガラスに貼付けられる。スライドガラスに貼り付いた薄切片は、接着液の蒸発に伴いスライドガラスに密着固定され、組織観察用の薄切片試料として利用される。
【0004】
上記のようなミクロトームを用いた薄切片試料の作製作業は、従来、作業者によって手動で行われており、多大な手間と労力を要していた。ミクロトームの使用に熟練した作業者であっても、数十個の試料ブロックを処理するのには、通常、数日かかる一方、同様の作業の繰り返しであるため、肉体的にも精神的にも作業者に過度の負担がかかるものであった。このため、作業者の負担を軽減するとともに、薄切片試料の精度の低下を低減する装置が求められていた。
【0005】
特許文献1(特開2004−28910号公報)や特許文献2(特許第3745554号公報)には、薄切りされた試料をキャリアテープに保持させたあと、キャリアテープを走行させて薄切り試料をスライドガラスの正面に送り、次いでキャリアテープをスライドガラスの表面に密着させることによって、スライドガラスの表面に試料を貼り付ける薄切片試料貼付装置が開示されている。
【0006】
この装置は、キャリアテープの走行を制御して、キャリアテープに保持された薄切片を接着液を塗布したスライドガラスの正面に移動させた後、キャリアテープをスライドガラス表面に近づけることによって薄切片をスライドガラスに貼り付け、スライドガラスを加熱して薄切片のしわを伸ばしたあと装置外へ搬出するように動作する。
【特許文献1】特開2004−28910号公報
【特許文献2】特許第3745554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献に開示された装置は、スライドガラスに1枚の薄切片を貼り付けるごとに装置外に搬出する。したがって、数多くの薄切片の試料を作製すると、スライドガラスの数が多くなり、乾燥スペースの問題や、コストがかさむといった問題が生じる。
【0008】
また、次工程である染色作業の作業性が悪く、染色試薬量のムダ、実験評価の効率化の悪化を招くなどの問題がある。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、上記問題を解決し、スライドガラスに対する薄切片の新規な貼り付け手法を採用した薄切片試料作製装置及び薄切片試料作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の薄切片試料作製装置及び薄切片試料作製方法を提供する。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、試料ブロックの表層部分が薄切りされ、キャリアテープに吸着した状態で搬送された薄切片を、接着液が塗布されたスライドガラスに貼着させる薄切片試料作製装置において、
前記未使用のスライドガラスを貯留すると共に1枚ずつ搬出可能に構成されたスライドガラス供給部と、
前記スライドガラス供給部から前記キャリアテープの走行軌道に対して交差する方向に延在する第1搬送部と、
前記第1搬送部により搬送される前記スライドガラスの前記薄切片を貼着させる貼着位置と前記スライドガラス供給部との間に位置する前記第1搬送部上の場所で前記接着液を前記スライドガラスの所定位置に塗布する接着液塗布部と、
前記キャリアテープに吸着している薄切片が前記第1搬送部により搬送されるスライドガラスの前記貼着位置に対向するように位置あわせし、前記キャリアテープと前記スライドガラスとを接触させることによって薄切片を前記スライドガラスに転移させる薄切片貼付部と、
前記第1搬送部に対し並行して設けられ、前記第1搬送部によって搬送されたスライドガラスを前記第1搬送部の搬送方向と逆方向に搬送する第2搬送部と、
前記第2搬送部に連通して設けられ、前記第2搬送部を搬送されるスライドガラスを再び第1搬送部に供給する再搬送部と、
前記第2搬送部に連通して設けられ、前記第2搬送部を搬送されるスライドガラスを装置外部へ搬出する搬出部と、
前記第2搬送部を搬送されるスライドガラスを前記再搬送部または搬出部に供給するかを切り換える切換部と、を備えることを特徴とする薄切片試料作製装置を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記第2搬送部は前記スライドガラスを加熱する加熱部を備えることを特徴とする、第1態様の薄切片試料作製装置を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記接着液塗布部は、前記第1搬送部により搬送されるスライドガラスに噴霧状の接着液を塗布する噴霧ノズルを備えることを特徴とする、第1又は第2態様の薄切片試料作製装置を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記接着液塗布部は、前記接着液が貯留された接着液貯留槽と、前記接着液貯留槽よりも低位置に設けられた前記スライドガラスに前記接着液を滴下する滴下ノズルを備え、前記滴下ノズルから滴下された液滴が前記スライドガラスに衝突して拡散する程度の落下距離を確保して前記第1搬送部の上方に設けられていることを特徴とする第1又は第2態様の薄切片試料作製装置を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、キャリアテープに吸着された状態で搬送され、試料ブロックの表層部分が薄切りされて作製された薄切片を、接着液が塗布されたスライドガラスに貼着させる薄切片試料作製装置を用いて前記薄切片を前記スライドガラスに貼着させる薄切片試料作製方法であって、
前記キャリアテープの走行軌道と交差する方向に前記スライドガラスを搬送する第1搬送部上において、前記スライドガラス上の任意の位置である第1薄切片貼着位置に接着液を塗布し、
前記キャリアテープの走行量及び前記第1搬送部におけるスライドガラスの搬送量を制御して前記第1薄切片貼着位置に前記薄切片が対向するように位置あわせを行い、
前記薄切片をスライドガラスの第1薄切片貼着位置に転移し、
前記第1搬送部から前記スライドガラスを加熱手段を有する第2搬送部に供給して前記第1搬送部の搬送方向とは逆向きに搬送させつつ、前記薄切片の皺をさせて薄切片をスライドガラスに密着させ、
前記第2搬送部から第1搬送部に前記スライドガラスを配置させたのち第1搬送部上を搬送させつつ、前記第1薄切片貼着位置とは異なる前記スライドガラス上の第2薄切片貼着位置に接着液を塗布し、
前記キャリアテープの走行量及び前記第1搬送部におけるスライドガラスの搬送量を制御して前記第2薄切片貼着位置に前記薄切片が対向するように位置あわせを行い、
前記薄切片をスライドガラスの第2薄切片貼着位置に転移して、
前記スライドガラスに前記薄切片を複数枚貼着させるようにしたことを特徴とする、薄切片試料作製方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1搬送部がキャリアテープの走行軌道に対して交差する方向に延在するので、キャリアテープの走行位置を調整することにより、第1搬送部上を搬送されるスライドガラスとキャリアテープに保持された薄切片との対応位置を変化させることができる。したがって、接着液塗布装置により所定の位置に塗布された接着液に対向するように薄切片を移動させ、スライドガラスの所定の位置に薄切片を貼り付けることができる。
【0017】
また、薄切片を貼り付けたスライドガラスを第2搬送部によって第1搬送部の搬送方向と逆方向に搬送し、再搬送部によって第1搬送部に戻すことによって、再度の接着液塗布装置とキャリアテープの対向位置にスライドガラスを搬送することができる。これによって、再度の接着液塗布、キャリアテープからの薄切片の貼り付けを行うことで、1枚のスライドガラスに複数枚の薄切片を貼り付けることができる。
【0018】
本発明の第2態様によれば、第2搬送部に加熱部を設けることにより、第2搬送部を搬送中にスライドガラスが冷却され、皺が再発生するのを防止することができる。
【0019】
本発明の第3態様によれば、接着液を霧状にして塗布することにより、接着液を薄くスライドガラス全体に塗布することができる。したがって、例えば、薄切片が貼り付けられたスライドガラスであっても、薄い霧状の接着液であるので、薄切片の位置ずれなどの原意とならず、スライドガラスへの貼り付け位置にかかわらず容易に接着液を塗布することができる。
【0020】
本発明の第4態様によれば、接着液貯留槽よりも滴下ノズルの方が低位置に設けられているため、重量によって所定量の接着液を滴下することができる。すなわち、接着液貯留槽と滴下ノズルとの間の流路を開閉するだけで接着液の吐出制御を行うことができるので、操作を容易にすることができる。また、滴下ノズルとスライドガラスとの間の落下距離が所定量以上であり、接着液がスライドガラスに衝突して拡散するように構成されているので、スライドガラス表面上の接着液の塗布を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態にかかる薄切片試料作製装置について、図面を参照しながら説明する。まず、図1を用いて、本発明の実施形態にかかる薄切片試料装置100の全体構成及び動作について説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる薄切片試料装置100の概要構成を示す正面図である。図2は、図1の薄切片試料装置の試料貼付室の概要構成を示す平面図である。
【0022】
図1において、薄切片試料装置100は、試料ブロック20を薄切りして薄切片試料24を作製する一連の構成部が配置される試料作製室100Aと、薄切片試料24をスライドガラス22に転写して強固に貼り付ける一連の構成部が配置される試料貼付室100Bとを備えている。
【0023】
薄切片試料装置100において薄切り処理される試料ブロック20は、一例として生体試料等の被検体をパラフィン等の包埋材の中に埋め込んだものが使用される。このような試料ブロック20は、その表層部分が乾燥した状態で切断されると、切断面に傷や変形が生じやすい一方、温度及び湿度の微妙な変化によって膨張及び収縮が発生しやすく、薄切り処理時に薄切片の厚さにムラが生じやすいという問題点を有する。このため、試料作製室100Aは、図示しない冷却機及び加湿器により、一定温度(例えば25℃)及び一定の高湿度(例えば65%以上)を維持するように、その内部の温度及び湿度が設定されている。なお、上記温度及び湿度の設定は、被検体及び包埋体の種類等によって適宜設定すればよい。
【0024】
試料作製室100Aには、試料保管部30と、試料ブロック搬送部1と、第1の帯電部2と、冷却部3と、第2の帯電部4と、カッター部5と、供給リール6と、キャリアテープ案内部8が配置されている。
【0025】
試料貼付室100Bには巻取リール7と、薄切片貼付部9と、スライドガラス搬送部10と、接着液塗布部11と、伸展部12と、スライドガラス保管部40とが配置されている。上記各構成部には、後述する制御部50と接続され、制御部50からの制御信号を受けて、適宜動作を行うように構成されている。
【0026】
試料ブロック搬送部1は、多数の試料ブロックを保管する試料保管部30から、次に薄切り処理される1つの試料ブロック20を取り出して、位置A上に搬送したのち、当該試料ブロック20を位置A〜Dの間で往復搬送可能に構成されている。なお、位置A〜Dは、横方向(図1に示す±X方向)に直線的に整列しており、試料保管部30は、試料作製室100Aと同一温湿度環境で試料ブロック20を保管している。また、試料ブロック搬送部1は、例えば、後述するようにカッター部5が備えるカッター5aにより試料ブロック20が薄切りされるときに、試料ブロック20に−X方向に力が加わったとしても、試料ブロック20が試料ブロック用載置位置(図示せず)から位置ズレして薄切片試料24の精度が低下することがないように、試料ブロック20を試料ブロック用載置位置でしっかりと保持可能に構成されている。
【0027】
また、試料ブロック搬送部1は、試料ブロック20の薄切り後の表層部分である切断表面が、位置Dの上方に位置しかつ後述するカッター部5が備えるカッター5aによって薄切りされることができる位置(以下、薄切可能位置hという)に位置するように、試料ブロック20の高さ位置(±X方向と直交する±Z方向の位置)を調整可能に構成されている。
【0028】
第1の帯電部2は、位置Aにおいて、試料ブロック搬送部1の上方に配置されている。第1の帯電部2は、位置Aに搬送された試料ブロック20の表層部分にプラスの電荷を与えて、試料ブロック20の表層部分をプラスに帯電させる。
【0029】
冷却部3は、位置Bにおいて、試料ブロック搬送部1の上方に配置されている。冷却部3は、位置Bに搬送される試料ブロック20と、後述するように当該試料ブロック20の上方に供給され試料ブロック20と対向するキャリアテープ21の一部分とを、試料作製室100Aの温度雰囲気よりも低い温度に冷却する。この冷却により、試料ブロック20の表層部分が薄切りしやすくなるとともに、キャリアテープ21の上記一部分に薄切片試料24が貼り付きやすくなるという効果が得られる。なお、上記冷却温度は、キャリアテープ21の上記一部分が結露する程度に低く設定されることが好ましい。これにより、上記効果を大きくすることができる。
【0030】
第2の帯電部4は、位置Cにおいて、試料ブロック搬送部1の上方に配置されている。第2の帯電部4は、後述するように試料ブロック20の移動に同期して位置Bの上方から位置Cの上方に供給されるキャリアテープ21の上記一部分に、マイナスの電荷を与えて、キャリアテープ21の上記一部分をマイナスに帯電させる。
【0031】
カッター部5は、カッター5aを備え、カッター5aを、薄切可能位置hより薄切片試料24の厚さ分(例えば3μm〜10μm)だけ、試料ブロック20側(−Z方向側)に離れたXY平面上に刃先がくるように配置する。カッター部5は、カッター5aを固定した状態で、上記高さ位置調整後の試料ブロック20が試料ブロック搬送部1により+X方向に搬送されて薄切可能位置hに移動されることによって、上記高さ位置調整後の試料ブロック20の表層部分を薄切りして薄切片試料24を作製する。なお、試料ブロック20の+X方向側の側面は、カッター5aにより薄切りし易くするために、例えばXY平面に対して垂直、つまりYZ平面に平行となるように形成されることが好ましい。
【0032】
供給リール6は、繰り出しモータ(図示せず)とともに、位置Aと位置Bの間の上方に配置されている。供給リール6は、上記繰り出しモータが駆動されることにより、薄切補助部材として機能するキャリアテープ21を繰り出し可能に構成されている。
【0033】
巻取リール7は、モータ71とともに、位置Dよりキャリアテープ21の走行(供給)経路の下流側(+X方向側)に位置する位置Eよりも、更に下流側に配置されている。巻取リール7には、モータ71が常に駆動されることにより、常に一定のトルクがかけられており、上記繰り出しモータにより供給リール6から繰り出されたキャリアテープ21を繰り出しと同時に巻き取り可能に構成されている。キャリアテープ21の繰り出し及び巻き取りを行う上記繰り出しモータ及びモータ71の駆動は、制御部50に制御される。
【0034】
キャリアテープ案内部8は、複数のガイドローラ81,82,83,91,92,93を備えている。複数のガイドローラ81,82,83は、供給リール6より繰り出され、巻取リール7に巻き取られるキャリアテープ21が、位置Bに搬送された試料ブロック20の表層部分と冷却部3との間と、位置Cに搬送された試料ブロック20の表層部分と第2の帯電部4との間と、位置Dの上方でかつ位置D上に搬送された試料ブロック20の表層部分と近い領域に配置される。また、ガイドローラ91,92は、位置Eの上方において、キャリアテープ21をガイドすると共に、挟んで固定可能に構成された一対のローラで構成される。ガイドローラ93は、位置Eの下流側において、キャリアテープ21を巻き掛けて巻取リール7に案内可能に構成されている。
【0035】
なお、供給リール6及び巻取リール7は、上記のように配置されることに限定されるものではなく、キャリアテープ21がキャリアテープ案内部により上記のように案内されることができるのであれば、その配置及び個数は問われない。
【0036】
薄切片貼付部9は、位置Eの上方でかつキャリアテープ21の走行経路の上流側(−X方向側)に配置された1対のガイドローラ91,91と、位置Eの上方でかつキャリアテープ21の走行経路の下流側(+X方向側)に配置された1対のガイドローラ92,92の間において、キャリアテープ21に保持されている薄切片試料をスライドガラスに貼り付ける動作を行う。例えば、一対のガイドローラ91,91の間と一対のガイドローラ92,92の間で薄切片試料24が貼り付いているキャリアテープ21の一部分を挟み、その状態で一対のガイドローラ92,92又は一対のガイドローラ91,91を−Z方向に移動させることで、キャリアテープ21を下方に撓ませ、後述するように上面に接着液23を供給され位置Eに位置するスライドガラス22の上面に薄切片試料24を接触させて、スライドガラス22の上面に薄切片試料24を貼り付けるように構成されている。以下、薄切片を転写されたスライドガラスを、薄切片付きスライドガラスという。
【0037】
スライドガラス搬送部10は、多数のスライドガラス22を保管するスライドガラス保管部40から、次に薄切片試料24を貼り付ける1つのスライドガラス22を位置F上に搬送し、位置F、位置E、位置Gの順に搬送し、位置Gで伸展部12が備えるヒータ61上に載置する(図2参照)。
【0038】
接着液塗布部11は、位置Fの上方に配置され、位置Fに搬送されたスライドガラス22の上面に接着液23を供給する。接着液23の一例としては、水、あるいはエチルアルコールなどを含有した水が挙げられる。接着液塗布部の詳細な構成については、後述する。
【0039】
伸展部12は、ヒータ61を備え、スライドガラス搬送部10により加温板上に載置された薄切片付きスライドガラス22に、上記ヒータ61により、第1の加温(例えば40℃〜60℃程度、数秒〜数十秒)をして薄切片試料24の皺の伸展を行うとともに薄切片試料24のスライドガラス22への貼付力を強くする。
【0040】
第2スライドガラス搬送部13は、スライドガラス搬送部10に平行に設けられ、伸展部12によってスライドガラス搬送部10から搬送された薄切片付きスライドガラスをスライドガラス搬送部10の搬送方向と逆方向に搬送する。第2スライドガラス搬送部13には、ヒータ62が設けられており、伸展部12によって加熱された第1の加温に加えてさらに第2の加熱(例えば40℃程度)をしてスライドガラス22上の薄切片試料24の皺を完全に伸展し、かつ、薄切片試料24とスライドガラス22の接着性を強めるように構成されている。
【0041】
再搬送部14は、第2スライドガラス搬送部13によって搬送された薄切片付きスライドガラスを、再度スライドガラス搬送部10に戻すように搬送する部材である。また、搬出部15は、第2スライドガラス搬送部13によって搬送された薄切片付きスライドガラスを、試料貼付室100Bの外部へ搬出するための部材である。第2スライドガラス搬送部13によって搬送された薄切片付きスライドガラスが再搬送部14に送られるか搬出部15に送られるかは、切換部16により決定される。これらの構成についての詳細は後述する。
【0042】
制御部50は、上記各構成部材に接続されて、記憶部(図示せず)に予め記憶された動作プログラムに基づいてそれぞれの構成部材の動作を制御する。なお、動作プログラムは、図示しない入力部により、例えば、薄切片付きスライドガラスの製造個数や1枚のスライドガラスあたりの薄切片の貼り付け数などの各種設定を行うことができるように構成されている。
【0043】
次に、薄切片試料装置100の薄切片試料24の作製動作を説明する。この薄切片試料24の作製動作は、制御部50の制御の下に行われる。
【0044】
精度の高い薄切片試料24を作製するには、凹凸等のある試料ブロック20の表層部分を予め、カッター5aにより薄切りして、試料ブロック20の薄切り後の表層部分である切断表面が薄切可能位置hのある平面(XY平面)に対して平行となるようにすることが好ましい。この平行出しを行うために、下記のような初期動作を行ってもよい。
【0045】
まず、試料保管部30から薄切り処理される1つの試料ブロック20が取り出され、試料ブロック搬送部1により位置A上に搬送される。次いで、上記試料ブロック20が、試料ブロック搬送部1により、位置A、位置B、及び位置C上を通過するように搬送されるとともに、当該搬送の間に上記試料ブロック20の表層部分が薄切可能位置hのあるXY平面上に位置するように、上記試料ブロック20の高さ位置(±Z方向の位置)が調整されて、上記試料ブロック20が位置D上の薄切可能位置h(図1参照)まで搬送される。
【0046】
この上記試料ブロック20の薄切可能位置hへの移動により、薄切準備位置Hで固定されたカッター部5のカッター5aが、上記試料ブロック20の表層部分を薄切りして、上記試料ブロック20に、薄切可能位置hのある平面(XY平面)に対して平行な切断表面が形成される。
【0047】
次いで、試料ブロック搬送部1により、上記切断表面がXY平面と平行になった試料ブロック20が位置Dから位置Aまで移動されるとともに、上記試料ブロック20の上記切断表面が薄切可能位置hのあるXY平面上に位置するように、上記試料ブロック20の高さ位置(±Z方向の位置)が調整される。これにより、初期動作が完了する。
【0048】
次に、上記初期動作の完了後の薄切片試料24の作製動作について説明する。まず、試料ブロック搬送部1により、上記切断表面が薄切可能位置hのあるXY平面上に位置するように高さ位置調整された試料ブロック20が位置A上から位置D上の薄切可能位置hへ向けて搬送される。
【0049】
このとき、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20が位置A上を通過するとき、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20の上記切断表面に、第1の帯電部2によりプラスの電荷が供給され、上記試料ブロック20の上記切断表面がプラスに帯電される。
【0050】
また、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20が位置B上を通過するとき、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20の上記切断表面と、位置Bの上方に位置し且つ上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20と対向するキャリアテープ21の一部分とが、冷却部3により冷却される。
【0051】
次いで、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20が位置B上から位置C上に移動するとき、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20の移動に同期して、キャリアテープ21の上記一部分が上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20との対向状態を維持して移動するように、上記繰り出しモータ(図示せず)が駆動される。
次いで、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20が位置C上を通過するとき、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20の移動に同期して位置Cの上方に移動したキャリアテープ21の上記一部分に、第2の帯電部4によりマイナスの電荷が供給される。これにより、キャリアテープ21の上記一部分がマイナスに帯電する。
【0052】
次いで、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20が、試料ブロック搬送部1により位置C上から位置D上の薄切可能位置hに搬送されるとき、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20の表層部分が薄切準備位置Hで固定されるカッター部5のカッター5aに当接し、試料ブロック搬送部1が搬送されることにより薄切りされて、一枚の薄切片試料24が作製される。また、このとき、キャリアテープ21は、試料ブロック搬送部1の搬送速度と同期して走行し、カッター5aによって薄切りされた薄切片試料がキャリアテープ21に貼り付いて保持される。
【0053】
カッター部5のカッター5aにより上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20の上記切断表面が薄切りされるときにおいて、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20は位置D上の薄切可能位置hまで搬送されると薄切可能位置hで停止する。一方、上記高さ位置調整後の上記試料ブロック20の移動と同期して移動するキャリアテープ21の上記一部分は、試料作製室100Aを出て試料貼付室100Bまで移動を続ける。
【0054】
なお、キャリアテープ21が試料貼付室100Bまで移動する場合において、薄切片試料24は、上記したようにプラスに帯電し、薄切片試料24に対向するキャリアテープ21の上記一部分がマイナスに帯電しているため、静電気によって、及び上記した冷却部3による冷却の効果によって、キャリアテープ21の上記一部分に貼り付いた状態となっている。
【0055】
試料貼付室100Bに送られた薄切片試料24は、後述するようにスライドガラスに貼り付けられ、薄切片付きスライドガラスを作製する。なお、本実施形態にかかる薄切片試料作製装置は、1枚のスライドガラスに複数枚の薄切片試料24を貼り付けることが可能に構成されている。この動作についても詳細は後述する。
【0056】
なお、上記において、薄切片試料24が位置Eの上方まで移動されたとき、位置D上の薄切可能位置hで停止している試料ブロック20は、次の薄切片試料24の作製のために、試料ブロック搬送部1により位置Dから位置Aまで戻されるとともに、最初の一枚の薄切片試料24を作製した後の上記試料ブロック20の切断表面が薄切可能位置hのあるXY平面上に位置するように、上記試料ブロック20の高さ位置(±Z方向の位置)が調整される。
【0057】
以下、上記と同様にして試料ブロック搬送部1により試料ブロック20が位置Aから位置Dへと搬送されて、薄切り動作が、任意の回数、自動的且つ連続的に繰り返され、任意の枚数の薄切片試料24が作製される。
【0058】
次に、試料貼付室100B内に設けられている各部材の構成及び動作について、詳細に説明する。なお、以下の説明において、スライドガラスを実際に移動させる場合についても説明を加えるため、スライドガラスなどの位置が変化する部材の存在位置を説明するために、スライドガラス22−1,22−2や動作片52−1などのように枝番を付して説明を進めるが、これらは特に別の部材を示すものではない。
【0059】
上述のように、試料貼付室100B内には、スライドガラス保管部40、薄切片貼付部9、スライドガラス搬送部10、接着液塗布部11、伸展部12、第2スライドガラス搬送部13、再搬送部14、搬出部15、切換部16、巻取リール7が設けられている。
【0060】
スライドガラス保管部40は、薄切片を貼り付ける未使用のスライドガラスをストックしておくと共に、制御部50からの制御を受けてスライドガラス22をスライドガラス搬送部10へ供給する。
【0061】
スライドガラス搬送部10は、スライドガラスをY軸方向に沿って搬送する。スライドガラス搬送部10は、スライドガラス保管部40から搬送されたスライドガラス22−1の長手方向両端部近傍を保持するガイド部31,ガイド部に平行に設けられたガイドバー32、スライドガラスを押し出してガイドバー32に沿って移動する移動部33を備える。移動部33は、ガイドバー32を貫通してガイドバー32に沿って移動可能に保持されており、駆動ベルト34が駆動することによってガイドバー32に沿って移動する。駆動ベルト34は、ガイドバー32の両端近傍に設けられたローラ35a,35bに巻き掛けられている。ローラ35aはモータ36によって回転駆動し、当該ローラ35aの回転駆動によって駆動ベルト34が駆動し、移動部33を移動させる。移動部33はガイド部31に載置されたスライドガラスの搬送方向後端に当接し、移動部33の移動によりスライドガラスを位置F,位置Eを経由して位置Gまで移動させる。
【0062】
接着液塗布部11は、スライドガラス搬送部10のガイド部31の途中に設けられている。接着液塗布部11は、スライドガラス搬送部10を搬送されるスライドガラス22−2上に接着液を塗布するものであり、具体的な構成としては、例えば、図3A,図3Bに示すものが例示される。図3Aは、図1に示す薄切片試料作製装置に用いられる接着液塗布部の構成例を示す模式図である。図3Bは、図1に示す薄切片試料作製装置に用いられる接着液塗布部の他の構成例を示す模式図である。
【0063】
図3Aに示す接着液塗布部11aは、接着液をスライドガラス22−2表面に塗布するためのノズルを複数本(本実施形態においては4本)備えるノズルユニット45aを備える。ノズルユニット45aに設けられた各ノズルは、スライドガラスの長手方向に並んで配列されており、スライドガラスの塗布位置に応じて接着液を吐出するノズルを適宜選択することができるようになっている。各ノズル41a,41b,41c,41dは、接着液95を貯留する接着液タンク44と供給管43によって連通する。接着液タンク44は、ノズル41a,41b,41c,41dよりも高い位置に設けられており、重力によってノズル41a,41b,41c,41dに接着液が供給され、吐出するようになっている。なお、接着液タンク44内の接着液の消費に伴い、接着液タンク44の液面とノズル先端との距離が変化するため、接着液の消費量に伴い、接着液タンクの高さ方向位置を調整可能に構成してもよい。このように重力により接着液を供給することによって、接着液を供給、吐出するためのポンプを設ける必要がない。なお、供給管43の途中には、ノズルごとに開閉弁42a,42b,42c,42dが設けられており、制御部50の制御により、任意ノズルから任意の量の接着液を吐出することができるように、開閉のタイミングが制御されている。なお、開閉弁42a,42b,42c,42dは、ノズル41a,41b,41c,41dの近傍に設けることが好ましい。
【0064】
ノズル41a,41b,41c,41dは、スライドガラス22の表面からの距離Dを隔てて配置されており、ノズルから滴下した接着液がスライドガラスの表面に衝突して拡散するようになっている。また、ノズルユニット45aは距離Dを調整可能に構成されており、これを調整することによってノズルから滴下した接着液の拡散の程度を調整することができる。
【0065】
図3Bに示す接着液塗布部11bは、接着液をスライドガラス22−2表面に塗布するための単一のノズル41eを備えるノズルユニット45bを備える。ノズルユニット45bに設けられたノズル41eは、スライドガラスの長手方向中央部分に配置されており、霧状の接着液を広角に吐出することができるようになっている。ノズル41eは、接着液95を貯留する接着液タンク44と供給管43によって連通する。この構成の接着液塗布部11bは、ノズルから接着液を吐出するためのポンプ(図示なし)を備えており、ポンプの駆動タイミングは、制御部50によって制御されている。この構成の接着液塗布部11bによれば、ノズル41eからの霧状の接着液の吐出により、広範囲にわたって、ごく薄く接着液を塗布することができる。したがって、後述する薄切片のスライドガラスへの密着位置に関係なく同じ制御処理により接着液を塗布することができるので、制御を容易にすることができる。
【0066】
薄切片貼付部9は、接着液塗布部11の下流側に設けられている。薄切片貼付部9は、上述したとおり、キャリアテープ案内部8のガイドローラ91,92の近傍すなわち、キャリアテープ21がスライドガラス搬送部10と交差する部分の近傍に設けられている。薄切片貼付部9は、制御部50によってキャリアテープ21の薄切片試料が保持されている一部分がガイドローラ91,92の中間の特定位置にくるように位置決めされ、案内部8のガイドローラ91,92によって挟持されたキャリアテープを、スライドガラス22−3に押しつけて、キャリアテープ21に保持されている薄切片試料24をスライドガラス22−3に転移させる。具体的には、上述のようにガイドローラ91,92がキャリアテープ21を挟持した状態でスライドガラス22−3側に移動するように構成されている。また、変形例としては、キャリアテープ21を薄切片試料24が保持されていない側の面から下側に押しつけるように動作する1又は複数のプッシャー(図示なし)を有していてもよい。複数のプッシャーを用いる場合の配置箇所は、例えば、スライドガラスの薄切片試料の貼り付け位置(図6参照)に対応させた位置に設けることができる。
【0067】
伸展部12は、スライドガラス搬送部10の終端にX軸方向に沿って延在し、薄切片付きスライドガラスをX軸方向に搬送する。伸展部12は、スライドガラス搬送部10から第2スライドガラス搬送部13へ薄切片付きスライドガラス22を送るための部材であり、当該スライドガラスの搬送中に薄切片付きスライドガラス22を加熱して薄切片試料24の組織を伸展させると共に薄切片試料24とスライドガラス22の接着性を強める。すなわち、伸展部12にはヒータ61が設けられており、例えば、スライドガラスを所定の温度(例えば40℃〜60℃程度、数秒〜数十秒)に加熱する。
【0068】
伸展部12は、薄切片付きスライドガラスを長手方向に搬送するために、スライドガラスの短手方向端部を押し出す動作片49と動作片49を駆動させるためのモータ47を備える。モータ47は動作片49につながる2本の連結棒48を進退させるように駆動可能であり、連結棒48を最も伸ばした状態において、スライドガラス搬送部10から搬送された薄切片付きスライドガラス22を係止し、最も短くした状態(図2の符号49−1で示す位置)において第2スライドガラス搬送部13へスライドガラスを供給可能な位置に搬送する。
【0069】
第2スライドガラス搬送部13は、伸展部12の終端からY軸方向に沿って延在し、薄切片付きスライドガラスをY軸方向に沿ってスライドガラス搬送部10と逆方向に搬送する。第2スライドガラス搬送部13は、薄切片付きスライドガラス22の搬送中に、伸展部で加熱されたスライドガラスの保温を行うためのヒータ62が設けられている。伸展部12と第2スライドガラス搬送部13による、薄切片付きスライドガラス22の加熱及び保温によって、薄切片試料24の皺の伸展を行うとともに薄切片試料24のスライドガラス22への貼付力を強くすることができる。
【0070】
第2スライドガラス搬送部13は、スライドガラスを搬送するモータ53と伸展部12からスライドガラスを供給するための動作片52及びモータ51とを備える。モータ51は、動作片52に連結されている連結棒54を進退させることによって動作片52を移動させる。連結棒54を最も短くした状態において、伸展部12によって搬送されたスライドガラス22の長手方向後端側に動作片52が位置するようになっており、連結棒54を最も伸ばした状態(図2の符号52−1で示す位置)においてベルトコンベア53の上流側端にスライドガラスを供給可能に構成されている。第2スライドガラス搬送部13のベルトコンベア53によりスライドガラスが終端まで移動することによって、スライドガラス22を切換部16に供給することができる。
【0071】
切換部16は、第2スライドガラス搬送部13によって搬送されたスライドガラスを再搬送部14、搬出部15のいずれかへ搬送するための切換を行うものであり、X軸方向に沿って薄切片付きスライドガラスを搬送可能なモータで構成されている。
【0072】
再搬送部14は、モータで構成されており、スライドガラス搬送部10へ薄切片付きスライドガラスを供給する。搬出部15は、モータで構成されており、薄切片付きスライドガラスを外部へ搬出する。
【0073】
次に、試料貼付室100B内に設けられている各部材を用いて薄切片付きスライドガラスを作製する動作について、詳細に説明する。図4は、1枚の薄切片付きスライドガラスを作製する処理動作のフローチャートである。これらの動作処理は、制御部50からの指示により、各種部材が以下の動作を行うことによって行われる。
【0074】
まず、図示しない入力部を操作して制御部50内の記憶領域に貼り付け条件をセットする。貼り付け条件としては、薄切片1枚あたりの厚み、1枚のスライドガラスあたりの薄切片試料の貼り付け枚数、薄切片試料のスライドガラスへの貼り付け位置、伸展部12及び第2スライドガラス搬送部13における加熱温度、薄切片試料付きスライドガラスの作製枚数、などである。これらの条件の入力が終了すると、図示しないスタートボタンを操作することにより、以下の動作が開始される。以下、試料作製室100Aにおいて行われる薄切り動作の説明は省略し、試料貼付室100B内において薄切片試料付きスライドガラスの作製動作についてのみ説明する。
【0075】
試料作製室100Aにおいて行われた薄切り動作により、薄切片試料24がキャリアテープ21の表面に保持された状態で、キャリアテープ21が搬送される。また、同時にスライドガラス保管部40から未使用のスライドガラスがスライドガラス搬送部10に供給され、スライドガラスがY軸方向に沿って薄切片試料の貼り付け位置まで搬送される(#2)。なお、この途中において、スライドガラスは、接着液塗布部11による接着液塗布位置(図2の位置F)において、いったん停止し、接着液塗布部11によって接着液が塗布される。
【0076】
以下、本実施形態においては、図3Aに示す4つのノズルを有する接着液塗布部11aを用いた場合について説明する。接着液の塗布は、図5に示すように、接着液塗布位置に停止しているスライドガラスに、4つのノズル41a,41b,41c,41dに対応した位置46a,46b,46c,46dに接着剤を塗布する。例えば、ノズル41aから吐出された接着液はスライドガラス22上の位置46aに塗布される。すなわち、接着剤供給部11aの開閉弁42a,42b,42c,42dの開閉を制御することによって、スライドガラス22のいずれの位置においても接着剤を塗布することができる。また、サイズの大きな試料やノズル位置間の位置に試料を貼付ける場合には、1回の貼付け動作において複数個のノズルから吐出させてもよい(例えば、1回の貼付け動作において、ノズル41aとノズル41bとを使用し、46aと46bの間位置に貼付ける)。
【0077】
以下、この例では、1枚のスライドガラスに2枚の薄切片試料を貼り付けることとし、1枚目の薄切片試料は位置46aに、2枚目の薄切片試料は位置46cに貼り付ける場合を例にとって説明する。すなわち、制御部50によって開閉弁42aが開放されると、重力により接着液が供給されノズル41aから滴下する。上述のように、ノズルとスライドガラス表面との間には所定の落下距離が設けられているので、ノズル41aから滴下した接着液は、スライドガラス表面に衝突することにより拡散して塗布される。
【0078】
接着液の塗布が終了すると、スライドガラス搬送部10によりスライドガラスが薄切片試料の貼り付け位置Eまで搬送され、スライドガラスの対応位置決めが完了する。
【0079】
スライドガラスの対応位置の上側には、キャリアテープが直交して存在しているため、図6に示すように、キャリアテープ21の送り量を制御することによりスライドガラス22−3の任意の位置に薄切片試料を移動させることができる。上記のように接着液が位置46aに塗布されているため、キャリアテープ21の表面に保持されている薄切片試料が位置46aに対向するようにキャリアテープ21を走行させる。
【0080】
スライドガラス22及びキャリアテープ21が対応位置に搬送されると(#3でYes)、ガイドローラ91,92がキャリアテープ21を挟持して固定する(#4)。
【0081】
次いで、薄切片貼付部9により、ガイドローラ91,92がキャリアテープ21を挟持したまま下側に移動し、キャリアテープ21に保持された薄切片試料24がスライドガラス22の上面の接着液に押し当てられて、薄切片試料24がキャリアテープ21からスライドガラス22の上面に転移する(#5)。
【0082】
薄切片試料24が転写された薄切片付きスライドガラス22は、スライドガラス搬送部10により、伸展部12まで搬送される。伸展部12に搬送された薄切片付きスライドガラス22は、伸展部12に設けられたヒータ61により加温(例えば40〜60℃程度)されて、薄切片試料24の組織の伸展が行われるとともに、薄切片試料24のスライドガラス22への貼付力が強くされる(#6)。
【0083】
次いで、薄切片付きスライドガラス22は、第2スライドガラス搬送部13へ供給され、Y軸方向に沿ってスライドガラス搬送部10と逆向きに搬送される。第2スライドガラス搬送部13では、ヒータ62によって保温(例えば40℃程度)がされて、しわが再発生することなく、かつ、薄切片試料24とスライドガラス22との接着性が強められる。これにより、最初の一枚の薄切片試料24の貼り付けが完了する。
【0084】
本処理例では、同じスライドガラスに2枚目の薄切片試料24を貼り付ける(#7)ので、第2スライドガラス搬送部13により搬送され、切換部16に送られたスライドガラスを再搬送部14を通してスライドガラス搬送部へ戻す(#8)。以下、同様の処理が行われてスライドガラスの位置46cへの接着液の塗布、2枚目の薄切片試料24のスライドガラスの位置46cへの貼り付け、伸展部12による加熱、第2スライドガラス搬送部13による保温が行われ、2枚の薄切片試料が貼り付けられたスライドガラスが切換部16に送られる。
【0085】
2枚の薄切片試料が貼り付けられ、次の薄切片試料が存在しないため、切換部16はスライドガラスを搬出部15へ送り(#9)、搬出部15によって外部へ排出される。外部に搬出された薄切片試料付きスライドガラスは、保温庫などに送られ、完全に接着液を蒸発させることが好ましい。
【0086】
これにより、1枚の薄切片付きスライドガラスの作製が終了し、入力部によって入力された所定枚数のスライドガラスを作製するまで、上記動作が繰り返し行われる。
【0087】
以上のように、本実施形態にかかる薄切片試料作製装置によれば、薄切片試料が貼り付けられたスライドガラスをスライドガラス搬送部に戻す第2スライドガラス搬送部13、再搬送部14,切り換え部16を備えることによって、複数枚の薄切片試料を1枚のスライドガラスに貼り付けることができる。また、2枚目の薄切片試料をスライドガラスに貼り付ける場合に、貼り付け位置を精密に制御することができるように、キャリアテープの搬送方向をスライドガラス搬送部10に対して交差する方向とし、また、接着液を塗布する接着液塗布部をスライドガラス22の任意の位置に接着液を塗布可能な構成とすることとして、より確実な複数枚の薄切片試料の貼り付けを行うこととした。
【0088】
なお、上記実施形態によれば、連続して送られる薄切片試料を1枚のスライドガラスに貼り付けるように動作処理が行われているが、特にこれに限定されるものではない。すなわち、図7に示すように順次送られてくる薄切片試料(24−1、24−2、・・・、24−n)を未使用のスライドガラスの第1の位置に順次貼り付けていき、その後、所定枚数(n枚)全てのスライドガラスに薄切片試料を貼り付けてから、スライドガラスの第2の位置へ薄切片試料(24−n+1、24−n+2、・・・、24−2n)を貼り付けるようにしてもよい。なお、このときの1枚目の薄切片試料を貼り付けられたスライドガラスは、第2スライドガラス搬送部13のベルトコンベア上にストックされておくことが好ましい。
【0089】
なお、接着液塗布部11として、図3Bに示す構造の接着液塗布部11bのものを用いた場合、接着液の塗布は霧状に広角に吐出される接着液によりスライドガラスの全面がほぼ1回の吐出により行われる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施形態にかかる薄切片試料装置の概要構成を示す正面図である。
【図2】図1の薄切片試料装置の試料貼付室における概要構成を示す平面図である。
【図3A】図1に示す薄切片試料作製装置に用いられる接着液塗布部の構成例を示す模式図である。
【図3B】図1に示す薄切片試料作製装置に用いられる接着液塗布部の他の構成例を示す模式図である。
【図4】1枚の薄切片付きスライドガラスを作製する処理動作のフローチャートである。
【図5】接着液の塗布位置の例を示す概略図である。
【図6】スライドガラスへの貼り付け位置とキャリアテープの搬送量の関係を示す図である。
【図7】スライドガラスへの薄切片試料の貼り付け順序の変形例を説明する図である。
【符号の説明】
【0091】
1 試料ブロック搬送部
2 第1の帯電部
3 冷却部
4 第2の帯電部
5 カッター部
6 供給リール
7 巻取リール
8 キャリアテープ案内部
9 薄切片貼付部
10 スライドガラス搬送部
11 接着液塗布部
12 伸展部
13 第2スライドガラス搬送部
14 再搬送部
15 搬出部
16 切換部
20 試料ブロック
21 キャリアテープ
22 スライドガラス
23 接着液
41a,41b,41c,41d,41e ノズル
50 制御部
81,82,83,91,92 ガイドローラ
100 薄切片試料作製装置
100A
100B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ブロックの表層部分が薄切りされ、キャリアテープに吸着した状態で搬送された薄切片を、接着液が塗布されたスライドガラスに貼着させる薄切片試料作製装置において、
前記未使用のスライドガラスを貯留すると共に1枚ずつ搬出可能に構成されたスライドガラス供給部と、
前記スライドガラス供給部から前記キャリアテープの走行軌道に対して交差する方向に延在する第1搬送部と、
前記第1搬送部により搬送される前記スライドガラスの前記薄切片を貼着させる貼着位置と前記スライドガラス供給部との間に位置する前記第1搬送部上の場所で前記接着液を前記スライドガラスの所定位置に塗布する接着液塗布部と、
前記キャリアテープに吸着している薄切片が前記第1搬送部により搬送されるスライドガラスの前記貼着位置に対向するように位置あわせし、前記キャリアテープと前記スライドガラスとを接触させることによって薄切片を前記スライドガラスに転移させる薄切片貼付部と、
前記第1搬送部に対し並行して設けられ、前記第1搬送部によって搬送されたスライドガラスを前記第1搬送部の搬送方向と逆方向に搬送する第2搬送部と、
前記第2搬送部に連通して設けられ、前記第2搬送部を搬送されるスライドガラスを再び第1搬送部に供給する再搬送部と、
前記第2搬送部に連通して設けられ、前記第2搬送部を搬送されたスライドガラスを装置外部へ搬出する搬出部と、
前記第2搬送部を搬送されたスライドガラスを前記再搬送部または搬出部に供給するかを切り換える切換部と、を備えることを特徴とする薄切片試料作製装置。
【請求項2】
前記第2搬送部は前記スライドガラスを加熱、保温する加熱保温部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の薄切片試料作製装置。
【請求項3】
前記接着液塗布部は、前記第1搬送部により搬送されるスライドガラスに噴霧状の接着液を塗布する噴霧ノズルを備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の薄切片試料作製装置。
【請求項4】
前記接着液塗布部は、前記接着液が貯留された接着液貯留槽と、前記接着液貯留槽よりも低位置に設けられた前記スライドガラスに前記接着液を滴下する滴下ノズルを備え、前記滴下ノズルから滴下された液滴が前記スライドガラスに衝突して拡散する程度の落下距離を確保して前記第1搬送部の上方に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄切片試料作製装置。
【請求項5】
キャリアテープに吸着された状態で搬送され、試料ブロックの表層部分が薄切りされて作製された薄切片を、接着液が塗布されたスライドガラスに貼着させる薄切片試料作製装置を用いて前記薄切片を前記スライドガラスに貼着させる薄切片試料作製方法であって、
前記キャリアテープの走行軌道と交差する方向に前記スライドガラスを搬送する第1搬送部上において、前記スライドガラス上の任意の位置である第1薄切片貼着位置に接着液を塗布し、
前記キャリアテープの走行量及び前記第1搬送部におけるスライドガラスの搬送量を制御して前記第1薄切片貼着位置に前記薄切片が対向するように位置あわせを行い、
前記薄切片をスライドガラスの第1薄切片貼着位置に転移し、
前記第1搬送部から前記スライドガラスを加熱手段を有する第2搬送部に供給して前記第1搬送部の搬送方向とは逆向きに搬送させつつ、前記薄切片の皺を伸展させて薄切片をスライドガラスに密着させ、
前記第2搬送部から第1搬送部に前記スライドガラスを配置させたのち第1搬送部上を搬送させつつ、前記第1薄切片貼着位置とは異なる前記スライドガラス上の第2薄切片貼着位置に接着液を塗布し、
前記キャリアテープの走行量及び前記第1搬送部におけるスライドガラスの搬送量を制御して前記第2薄切片貼着位置に前記薄切片が対向するように位置あわせを行い、
前記薄切片をスライドガラスの第2薄切片貼着位置に転移して、
前記スライドガラスに前記薄切片を複数枚貼着させるようにしたことを特徴とする、薄切片試料作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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