説明

薄型基板の洗浄方法及び装置

【課題】しなりによる基板脱落の問題を生じることなく洗浄を行なうことが可能な薄型基板の洗浄方法及び洗浄装置を提供する。
【解決手段】薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄する洗浄方法であって、(i) 基板下面に沿って開口する排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持しつつ洗浄を行ない、或いは、(ii)一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持して支持することにより、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持して洗浄を行なう方法及び装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、プリント基板等の薄型基板の洗浄方法及び装置に関する。本発明が対象とするプリント配線板は、絶縁基板上に導電層を配線パターン状に形成したものであり、プリント基板は、プリント配線板に電子部品がアッセンブルされたものである。また、プリント配線板には、ガラスエポキシ銅張り積層板に代表されるリジッド配線板と、ポリイミド銅張り配線板に代表されるフレキシブル配線板がある。
【0002】
本明細書及び特許請求の範囲において、「薄型基板」は、前記プリント配線板、プリント基板、フレキシブル基板等、電子部品装着前又は後の印刷回路を備えた薄板を言う。
【背景技術】
【0003】
例えば、インターポーザ用プリント配線板のような薄型基板は、ハンダバンプ形成工程及びリフロー工程を経た後、表面に付着しているフラックス、ハンダボール等を除去するために洗浄が行なわれる。ところが、このような薄型基板には、多くの場合その両面にハンダバンプが形成されている。その場合は、ハンダバンプの変形や脱落等を生じないよう、洗浄や搬送には接触式機具の使用を避ける必要がある。また、ハンダバンプが形成されない基板の場合でも、金メッキなどによる導電体薄膜が表面に形成されているので、その薄膜を損傷しないよう、接触型の洗浄器具や搬送装置の使用は避けられる。
【0004】
したがって、従来は、薄型基板の縁部を支持部で支持し、基板面に洗浄液を噴射して洗浄を行なう方法が採られていた。その際、薄板基板は、典型的なものの場合、厚さが0.3〜3mm(平面寸法は240mm×110〜330mm)と薄く、その薄さゆえに、しなり易く、しなりが大きいと薄板基板が支持部から外れて脱落するという問題があった。
【0005】
これに対処する方法の一つとして、次のようにして洗浄が行なわれていた。すなわち、図10(a)に示すように、基板Wにおける対向する縁部を上下からピンチローラ101,102で挟んで基板を水平に保持し、ピンチローラの回転により基板を保持しながら搬送する。そして、基板上方で搬送方向に直交して配列された多数の噴射ノズル103から基板上面に洗浄液を噴射し、基板下方で噴射ノズル103に対応して配列された多数の噴射ノズル104から基板下面に液を噴射する。こうして上下に対応した噴射ノズルからの噴射により、基板Wのしなりを防止しようとするものであった。
【0006】
しかしながら、上下両側からの噴射は、互いに基板を押し合うように作用する一方、多数の噴射ノズルからの噴射を正確に制御するのは極めて困難である。その結果、上下両方からの押圧力を同じにしようとしても、変動を避け得ず、基板が上下に振動を生じてしまう。また、ピンチローラによる挟持も上下両方からの押圧力の差に耐えることができない。さらに、薄型基板は、その上に溜まる洗浄液の重量が上方の噴射圧に加えられて、下向きに撓み易い。これらの結果、基板の搬送が不安定になったり、搬送中にピンチローラから脱落するという問題を解消できなかった。
【0007】
上記インターポーザ用プリント配線板の他、一般用のプリント基板、プリント配線板等についても、フラックスやハンダボールの除去、ハンダバンプや導電体薄膜への損傷防止等の観点から、薄型基板特有の洗浄技術が必要とされるが、上記と同様の問題を生じ、適切な対応が採られていなかった。特に、基板の薄型化は、進行する一方であり(例えば、上記典型的な寸法から厚さ0.1mm程度へ)、これに伴って上記問題は深刻化しており、その解決が待たれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、しなりによる基板脱落の問題を生じることなく洗浄を行なうことが可能な薄型基板の洗浄方法及び洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するため、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄する洗浄方法であって、基板下面に沿って開口する排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持しつつ、前記洗浄を行なうことを特徴とする薄型基板の洗浄方法を提供するものである(第1発明)。
【0010】
本発明はまた、前記目的を達成するため、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄する洗浄方法であって、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持して支持することにより、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持することを特徴とする薄型基板の洗浄方法を提供するものである(第2発明)。
【0011】
本発明はさらに、前記目的を達成するため、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄する洗浄方法であって、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持して支持することにより、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持し、且つ、基板下面に沿って開口する排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持しつつ、前記洗浄を行なうことを特徴とする薄型基板の洗浄方法を提供するものである(第3発明)。
【0012】
本発明はさらに、前記目的を達成するため、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を支持することにより基板を保持する支持部と、基板上面を洗浄するように該上面に洗浄液を吹き付ける吹付け装置と、基板下面に沿って開口する排出口を備え該排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持する給液装置とを備えたことを特徴とする薄型基板の洗浄装置提供するものである(第4発明)。
【0013】
本発明はさらに、前記目的を達成するため、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより基板を保持する支持部と、基板上面を洗浄するように該上面に洗浄液を吹き付ける吹付け装置とを備え、前記支持部は、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持するように、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持する形状とされていることを特徴とする薄型基板の洗浄装置を提供するものである(第5発明)。
【0014】
本発明はさらに、前記目的を達成するため、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより基板を保持する支持部と、基板上面を洗浄するように該上面に洗浄液を吹き付ける吹付け装置と、基板下面に沿って開口する排出口を備え該排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持する給液装置とを備え、前記支持部は、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持するように、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持する形状とされていることを特徴とする薄型基板の洗浄装置を提供するものである(第6発明)。
【発明の効果】
【0015】
上記第1発明によれば、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄するので、基板上面にブラシなどの接触式洗浄器具を接触させずに洗浄を行なうことができる。特に、第1発明では、基板下面に沿って開口する排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持しつつ、前記洗浄を行なう。この溢出流は、基板の下面を自らの方へ引きつける力を作用させつつ、溢出に伴う上方への力を発揮する。したがって、この溢出流を維持することにより、基板は上下両方向の力に対してバランス位置で安定する。その結果、基板上面に洗浄液の吹き付け力が作用しても、これによる影響を減殺して基板を安定位置に保持することができる。したがって、基板脱落の問題を生じないように、洗浄時の基板のしなりを抑制することができる。
【0016】
上述の液の溢出は、上方に開いた排出口から排出される液の流れが排出口縁部から離れずに排出口周囲の少なくとも一部へと流出する形態となる。また、この溢出は、排出口から広い範囲の方向に均質的に流出するのが望ましく、全ての方向に均質に流出するのが最も望ましい。このための形態として、排出口は、楕円形、長円形等、滑らかな曲線の縁部を持つ形状とするのが望ましく、円形とするのが最も望ましい。或いは、上記均質性が保たれれば、四角形、六角形、三角形等、角のある形状とすることもでき、この場合は、正多角形のように等方性の形状とするのが、より望ましい。
【0017】
上記第2発明によれば、薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄するので、第1発明同様、基板上面に洗浄器具を接触させずに洗浄を行なうことができる。特に、第2発明では、基板縁部の内方が外方より高くなるように上下方向から挟持して支持することにより、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持する。この上凸形状は、上方から力が作用しても下方への変形を生じ難い性質を有する。したがって、基板上面に洗浄液の吹き付け力が作用しても、基板は下方への変形に強く対抗して、上凸形状を維持するのであり、たとえ一部に平坦化或いは下凸形状を生じるとしてもその変形領域及び変形程度は限定されたものとなる。その結果、基板脱落の問題を生じないように、洗浄時の基板のしなりを抑制することができる。
【0018】
上記第3発明は、上記第1発明及び第2発明の特徴を兼ね備えるものである。したがって、これら両発明の効果が相俟って、より優れた基板のしなり防止効果が得られる。
【0019】
上記第4発明は、上記第1発明の方法を実施するための装置であり、そのために、上記の通り、基板縁部を支持する支持部と、基板上面への洗浄液吹付け装置と、溢出流で基板を下方から支持する給液装置とを備える。したがって、上記第1発明同様に、洗浄時の基板のしなりを抑制することができる。
【0020】
上記第5発明は、上記第2発明の方法を実施するための装置であり、そのために、上記の通り、基板縁部を支持する支持部と、基板上面への洗浄液吹付け装置とを備え、支持部は、基板を上下方向から挟持して上凸形状に保持する。したがって、上記第2発明同様に、洗浄時の基板のしなりを抑制することができる。
【0021】
上記第6発明は、上記第4発明及び第5発明の特徴を兼ね備えるものである。したがって、これら両発明の効果が相俟って、より優れた基板のしなり防止効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面に示す実施形態中、同一又は同種の部材には同一の番号を付して説明を省略することがある。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に掛かる印刷回路用薄型基板の洗浄装置を備えた洗浄用設備を示しており、(a)は平面図、(b)は正面図である。この洗浄用設備は、6つのステーションS1〜S6を備え、基板Wは図の右から左へと搬送される。各ステーションでは、洗浄液として、薬液、リンス液、水等が必要に応じて使用され、汚れの除去や薬液の濯ぎが行なわれる。基板Wは、ガイドレールG上に置かれ、洗浄や濯ぎの処理中は各ステーションで停止し、処理が終わると、次のステーションへと駆動装置(図示せず)により移動させられる。
【0024】
図2は、洗浄装置1を中心として示した1つの洗浄ステーションSの概略図である。洗浄装置1は、基板Wの縁部を支持する支持部2と、基板Wの上面に洗浄液を供給する吹付け装置3と、基板Wの下面に沿って開口する排出口を備えた給液装置4とを備えている。この例では、洗浄装置1は、下側に位置し上端面が開いた箱状の液受け部6と、上側に位置し下端面が開いた蓋部7とを備え、両者が緩く嵌まり合って、支持部2、吹付け装置3及び給液装置4を囲んでおり、洗浄液が飛散しないようになっている。 洗浄装置1を含む各ステーションは、洗浄液供給のためのポンプPを備えており、該ポンプは、管K1,K2を経て洗浄装置1の吹付け装置3に接続されている。液受け部6の底部には管K3が接続され、管K3は洗浄装置下方の貯液槽Rに挿入されている。そして、貯液槽Rの底部は管K5を経てポンプPに接続されている。管K1は、管K2との境目で分岐して管K4へと延び、管K4は給液装置4に接続されている。管K2,K4には、各々調節弁C2,C4、自動弁D2,D4、圧力計E2,E4(又は流量計F2,F4)が設けられている。調節弁C2,C4は、手動で流量を設定するのに用いられ、自動弁D2,D4は、吹付け装置3と給液装置4に洗浄液を流すタイミングを調整する。管K4の洗浄装置1寄りには、逆止弁G4が設けられ、ポンプPの動作停止時に閉じて洗浄液を給液装置4内に保持するのに使用される。また、管K5には、不純物等の除去のためのストレーナH5が設けられている。
【0025】
したがって、装置の作動時に、ポンプPから送り出された洗浄液は、管K1,K2を経て、吹付け装置3から基板Wに吹き付けられると共に、管K4を経て給液装置4から溢出し、これらの洗浄液はいずれも液受け部6で受けられ、管K3を経て貯液槽Rに一旦貯められた後、管5を経てポンプPに戻る。
【0026】
図3は、洗浄装置1の詳細を示している。基板Wを保持する支持部2は、ガイドレールGによって構成された支承部21と、該支承部と共同して基板における対向する縁部を挟持する押さえ部22と、該押さえ部を上方から押圧し、その解除を行なう押圧部23とを備えている。押圧部23は、蓋部7に結合されており、蓋部に接続された図外の昇降装置により、蓋部7と共に上下動し、下降時に押さえ部22を押し下げて支承部21の間に基板Wを挟持し、上昇時に該挟持を解除する。
【0027】
吹付け装置3は、管K2の先端に結合されたロータリージョイント31と、該ロータリージョイント31の下部に接合された軸部32と、該軸部に結合され、基板Wの上方に位置する回転ノズル33とを備えている。回転ノズル33は、軸部32から放射状に延びた2個のアーム331と、各アーム先端に取り付けられた4個のノズルチップ332とを備えている。ノズルチップ332は、洗浄液を放射状に噴射するようになっており、噴出中心線がアームに直交する方向で、且つ水平面に対し20度下方へ向けられている。吹付け装置3は位置を固定されており、蓋部7の天板に設けられた貫通孔に緩く通されている。回転ノズル33は、ロータリージョイント31において図外の回転駆動装置に接続されており、ノズルチップ332から洗浄液を噴出しつつ、図4に示すように、噴射方向と同じ向きに回転する。これにより、洗浄液は基板Wに対し、渦を描くようにして均質に基板上面に吹き付けられる。
【0028】
給液装置4は、上部の椀状部41と、該椀状部から下方へ続く接続部42とを備え、該接続部42を経て管K4に接続されている。椀状部41の上端は基板Wの下面に沿うように水平に開口した排出口411となっている。また、排出口411を囲む周壁の上面には、Oリング412が配設されている。給液装置4は、溢出流が以下に述べる作用をなすように基板Wとの距離を設定されている。給液装置4はそのような位置に固定されてもよいし、距離の調節のため、図外駆動装置により上下に移動可能とされてもよい。上記Oリングは、不測の事態に基板Wが給液装置4に接触しても傷が付かないようにするために設けられている。但し、その必要が無ければ、Oリングは省略することができる。
【0029】
この実施形態では、給液装置4は1個だけ設けられているので、基板の中央に位置させるのが望ましい。但し、給液装置は、必要に応じて複数個設けることができる。この場合は、各々の給液装置は、基板をバランス良く保持するように配置される。これにより、大きな寸法の基板に対応することができ、或いは、1個当りの給液装置の流量を低減させることができる。
【0030】
次に、支持部2についてさらに詳述する。支持部2の支承部21は、図5及び図6(a),(b)に示すように、基板Wにおける相互に対向する縁部を載せる載置部211と、該載置部から立ち上がる起立部212とを備えている。押さえ部22は、支承部21に沿うように配置され、挟持される基板縁部よりやや長い寸法を有し、支承部21に対して上下方向に摺動可能に支持されている。押さえ部22はまた、一対の支承部21の外側に配置された外側部221と、起立部212の内側に位置する内側部分223と、これら外側部221及び内側部分223の上端同志を結合する上端部222とを備えている。
【0031】
支持部2は、一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、上下方向から基板Wを挟持する形状とされている。すなわち、支承部21の載置部211は、図6(a)では、一対の載置部211同志が向き合う側の端縁が高く、その反対側が低くなるように傾斜している。また、図6(b)では、一対の載置部211同志が向き合う側の端縁及びその反対側の端縁が高く、これらの中間部分が低くなるように断面が円弧状の凹形とされている。押さえ部22の内側部分223の下端面は、図6(a),(b)に示すように、それぞれの載置部211に対応した形状とされている。
【0032】
なお、支持部2は、上記の他、図6(a)の載置部211の傾斜を、断面が直線ではなく凹曲線となるようにして形成することもできる。また、図6(b)の載置部211の凹形を、断面円弧状でなく断面V字状やU字状に直線的に形成することもできる。これらの載置部211に対して、内側部分223の下端面は、それぞれ載置部211に対応した形状とするのが望ましい。
【0033】
載置部211は、図6(a)のように直線的傾斜とする場合は、傾斜角を3〜10度とするのが望ましい。3度未満では、基板Wの上凸形状が十分に形成されない。また、10度を超えると、基板Wが塑性変形したり、支持部2から外れやすくなったりするという支障が生じる。また、載置部211を凹曲線による傾斜又は円弧状もしくはV字状の凹形とする場合は、支持部2に支持された基板Wが載置部211端縁(一対の載置部が向き合う側の端縁)の箇所で示す傾斜が、3〜10度となるように設定するのが望ましい。3度未満の場合及び10度を超えた場合は、図6(a)の場合と同様の支障が生じる。
【0034】
この実施形態に係る装置及び使用される基板の寸法を以下に例示する。なお、括弧[ ]内に、本発明の実施において望ましい寸法の範囲を記載する。
【0035】
基板: 幅(支持部間に亘る寸法)242mm[10〜600mm]、長さ100〜350mm[10〜800mm]、厚さ0.2〜1.5mm[0.1〜2mm]
支持部の載置部211の幅: 5mm[3〜15mm]
給液装置の排出口411の開口径: 50mm[10〜200mm]
基板Wから給液装置の排出口411までの距離: 10mm[5〜20mm]
次に、この実施形態に係る洗浄装置を使用した基板の洗浄方法について説明する。これには、以下の3通りの実施方法がある。
(i) 給液装置で基板を支える洗浄方法
(ii) 支持部により基板を把持する洗浄方法
(iii) 上記(i)及び(ii)を併用する洗浄方法
最初に、上記(i)の方法について説明する。先ず、基板WをガイドレールGに沿って移動し、ステーションS1に停止させる。基板Wは、この方法においては、支持部2の載置部211(ここでは載置面が水平)に載置された状態で保持される(押さえ部22による挟持はされない)。給液装置4の位置は、一対の支持部2における基板支持箇所を結ぶ平面(ほぼ基板の下面に相当する)から若干下方とされている。これは、基板Wが不測の事態で給液装置4に当接するのを避けるためであり、また、給液装置4からの溢出流を適切に基板Wに作用させるためである。このように、給液装置4が位置を固定されている場合は、基板Wの移動の際に排出口411と接触しないように距離を設定する。この実施形態の仕様の場合は、前記平面から下方へ10〜15mmの位置に排出口411が来るようにするのが望ましい。なお、給液装置4は、図外の駆動装置により上下動可能に設置することもできる。この場合は、給液装置4の排出口411を、より基板Wに接近させて、洗浄効果を高めることができる。その場合の洗浄時における排出口411の好ましい位置は、前記平面から下方へ5〜15mm、より好ましくは5〜10mmである。基板Wの移動時には、基板Wとの接触をより確実に避けるため、給液装置4を上記範囲よりもさらに下方へ下げるのが望ましい。
【0036】
給液装置4は、管K4に設けた逆止弁G4の機能に基づき予め洗浄液が満たされた状態としておく。この状態で、ポンプPを作動させる。これにより、吹付け装置3のノズルチップ332及び給液装置4の排出口411から洗浄液が排出される。そして、各管K2,K4上の調節弁C2,C4により、ノズルチップ332からの吹き付け量及び排出口411からの溢出量を適切に調節する。排出口411からの溢出量は、基板Wの寸法、重量、吹付け装置3からの吹きつけ量等に応じて適切な量が決められる。この実施形態の仕様の場合には、通常、流速が排出口411で5〜20cm/秒程度となるように流量を設定するのが望ましい。前記速度が5cm/秒未満では、基板Wの自重及び吹付け装置3からの吹きつけ力により、基板Wが撓んで排出口411に接触するおそれがある。また、前記速度が20cm/秒を超えると、基板Wが大きく上に凸となり、基板縁部が支持部2に挟持されず載置されているだけの場合に、基板Wが不安定となったり支持部2から外れたりするおそれがある。また、後述する支持部2での挟持の場合にも、これらのおそれが生じる。
【0037】
吹付け装置3は、ノズルチップ332の噴射圧が0.03〜1.5MPa、4個のノズルチップ332からの総噴射量が10〜240リットル/分程度とされるのが望ましい。なお、ノズルチップからの噴射方向は必要に応じて種々設定することができる。噴射方向が基板面に対して垂直の場合は、ノズルチップの噴射圧が0.02〜0.5MPa、ノズルチップからの総噴射量が4〜80リットル/分程度とされるのが望ましい。
【0038】
これらの仕様で洗浄が行なわれると、基板Wは図7に示す状態となる。図7は、基板W、支持部2、給液装置4、及び排出口411からの溢出流FLを概略的に示している。図7(a)は、装置の非作動状態において、一対の基板支持箇所を結ぶ平面(ほぼ基板の下面に相当する)と排出口411との間に距離DSが形成されることを示している。図7(b)は距離DSが10mm、図7(c)は距離DSが15mmに設定されたときの、洗浄時の状態を示している(吹付け装置3からの噴射は図示を省略)。図中の一点鎖線は、洗浄開始前の基板Wの位置を示す。
【0039】
洗浄時には、図示のように、基板Wが下方へ若干のしなりを生じるが、給液装置4からの溢出流FLが基板Wの下面を自らの方へ引きつける力を作用させつつ、吹付け装置3からの吹き付け流に対しては溢出に伴う上方への抵抗力を発揮する。したがって、この溢出流FLを洗浄中継続することにより、基板Wを上下両方向の力に対してバランス位置に保持することができる。その結果、基板上面に洗浄液の吹き付け力が作用したときには、基板Wは該吹き付け力をも合わせたバランス位置で保持される。これにより、基板Wの位置を安定的に保持することができるのである。
【0040】
なお、給液装置4は、基板Wが支持された状態で、洗浄液を溢出させつつ位置を上昇させることができ、これにより、基板Wは溢出流で持ち上げられる。この場合、吹付け装置3からの吹き付けも行ないながら、基板Wを水平位置まで持ち上げると、基板Wが支持部2から外れるのをより確実に防止することができる。また、基板を水平又はこれに近い状態とすると、凹状になっている場合に比し、ハンダボール等の固形異物が流れ落ちやすいという利点を得ることもできる。
【0041】
上記のようにして洗浄を必要時間(通常は5〜300秒)継続した後、洗浄装置1の作動を停止させる。停止は、調節弁C2の操作により吹付け装置3を先にし、給液装置4はその後に行なう。給液装置4の停止は、ポンプモータのインバータ制御等により時間を掛けて(5秒程度)行なうのが望ましい。これらにより、基板Wが支持装置4から脱落するのを確実に防止することができる。また、吹付け装置3の停止後に、給液装置4を作動させたまま、基板上面からエアーを吹き付けて液切りをすると、液重量による基板の脱落が防止されるので、より望ましい。
【0042】
洗浄装置1の停止後は、基板Wを次のステーションへと移動させる。この移動は、洗浄設備のステーションを結ぶように延びるコンベアにより、或いは手作業による等、適宜の手段で行なうことができる。また、洗浄は、各ステーションにおいて並行して行なうことができる。なお、給液装置4が上下動可能な場合は、この移動の際に、給液装置4を下降させるのが望ましい。
【0043】
次に、上記(ii)の方法(支持部により基板を把持する洗浄方法)について説明する。この方法において使用する洗浄装置1は、図6(a),(b)に示したように、支持部2が、一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、上下方向から基板Wを挟持する形状とされている。
【0044】
洗浄方法の最初の段階は、方法(i)の場合と同じようにして行なわれ、基板WはステーションS1に停止する。ここで、基板Wは、図6(a),(b)に例示した支持部2に支持される。すなわち、基板Wは、支承部21の載置部211に載置され、押さえ部22の内側部分223により縁部を挟持される。この操作は、図外の駆動装置により蓋部7を下降させ、該蓋部に結合された押圧部23が押さえ部22を押し下げることにより行なわれる。
【0045】
こうして基板縁部が挟持されると、一対の支持部の向き合う側を高くその外側を低くした支持部2の形状に基づき、基板Wは上に凸の形状とされる。図8は、これに関する状態を示している。図8(a)は、図6(a)の支持部2を用いて挟持したときの基板Wの状態、図8(b)は、図6(b)の支持部2を用いて挟持したときの基板Wの状態を各々示している。そして、図8の(a-1),(b-1)は基板Wを載置部211に載せた挟持前の状態、(a-2),(b-2)は内側部分223の下降により挟持した状態を各々示している。
【0046】
この方法では、給液装置4を使用しないので、洗浄装置1に接続された管K4の自動弁D4は閉じた状態とする。この状態で、ポンプPを作動させると、吹付け装置3のノズルチップ332から洗浄液が排出される。そして、管K2上の調節弁C2により、ノズルチップ332からの吹き付け量を適切に調節する。ノズルチップ332からの洗浄液の噴射量は、方法(i)と同様とすればよい。
【0047】
上記のように、基板Wは非洗浄状態で上凸形状に保持されているので、洗浄時に吹付け装置3から基板上面に洗浄液が吹き付けられても、吹き付け力は基板面に沿う方向と基板面に垂直な方向に分散されるのであり、その結果、基板Wは面に垂直な方向への変形を生じ難くなる。図8の(a-3),(b-3)は、各々図6(a),(b)の支持部2に対応して、洗浄時の基板Wの状態を示している。図示のように、基板Wは、上凸形状を若干低くするものの依然として上凸形状を維持している。これは、基板Wのしなりが小さく押さえられていることを示すものである。支持部2の形状については、図6(b)の形状は、図6(a)の形状に比し、基板Wの中央と周縁との高さの差が同じでも、基板周縁付近での上凸形状の曲率半径を小さくすることができ、上方からの吹き付け力に対する変形抵抗を大きくすることができる。
【0048】
なお、基板は、吹付け装置3からの吹き付け力によっては、図8の(a-3),(b-3)に一点鎖線で示すように、上凸形状の中央部に若干の凹形状又は平面形状を生じることがある。この場合も、他の部分は上凸形状に保持されているので、上述の吹き付け力分散効果が得られ、しなり効果が有効に得られる。
【0049】
このようにして、洗浄が行なわれた後は、ポンプPを停止し、必要に応じて、基板上面からエアーを吹き付けて液切りをする。その後、蓋部7と共に押さえ部22を上昇させて基板Wの挟持を解除し、基板Wを次のステーションへと移動させる。この移動は、方法(i)と同様にして行なわれる。
【0050】
次に、上記(iii)の方法(上記(i)及び(ii)を併用する洗浄方法)について説明する。この方法は、上記(i)における給液装置4及び上記(ii)における支持装置4を使用して行なう。先ず、基板WをガイドレールGに沿って移動し、ステーションS1に停止させる。この位置で、基板Wは、支承部21の載置部211に載置され、押さえ部22の内側部分223により縁部を挟持される。この状態で、ポンプPを作動させ、各管K2,K4上の調節弁C2,C4により、ノズルチップ332からの吹き付け量及び排出口411からの溢出量を調節する。
【0051】
このようにして、洗浄が行なわれた後は、吹付け装置3を停止し、必要に応じて、基板上面からエアーを吹き付けて液切りをした後、給液装置4を停止する。その後、蓋部7と共に押さえ部22を上昇させて基板Wの挟持を解除し、基板Wを次のステーションへと移動させる。方法(iii)における他の操作等の詳細は、方法(i),(ii)と同様であるので、説明を省略する。なお、給液装置4が上下動可能に設置されている場合は、方法(i)について説明したように、ステーションに対する基板Wの入出移動の際に、給液装置4を洗浄位置よりも下へ下降させるのが望ましい。
【0052】
次に、以下の仕様で基板の洗浄を行なった実験について説明する。実験仕様は、上記方法(i),(ii),(iii)に対応して、仕様(i),(ii),(iii)と称する。また、これら本発明に係る仕様を採用しないもの(支持部2の載置部211が水平で押さえ部22による把持が無く、給液装置4からの溢出流も無い)を仕様(0)と称する。この他、仕様(iii)の一部を変更して、給液装置4を上下動可能に設置し、支持部2で把持した基板Wが水平になるまで給液装置4を上昇させたものを仕様(iiia)と称する。他の仕様は、次の通りである。
【0053】
基板Wの寸法:幅(支持部間に亘る寸法)242mm、長さ305mm、厚さ1、0.5、0.4、0.3、0.2mm
基板Wの材質:銅張板(ガラスエポキシ樹脂板の両面に厚さ35μmの銅箔を張り付けたもの)、及びガラスエポキシ樹脂系配線板(銅張板の両面に配線を形成した後、各表面を絶縁膜で覆ったもの)
支持部2の載置部211:
仕様(0),(i)では水平(以下、「支持部水平」と記す)、
仕様(ii),(iii),(iiia)で採用された図6(a),(b)タイプに関し、 図6(a)タイプは傾斜5度(以下、「支持部傾斜」と記す)、
図6(b)タイプは曲率半径7mm、載置部端縁での基板接線の傾斜角度5度(以下、「支持部凹形」と記す)
給液装置4の排出口の内径:50mm
給液装置4の位置:一対の支持部2の基板支持箇所を結ぶ平面から10mm
給液装置4からの溢出流: 排出口での流速12cm/秒
吹付け装置3の液噴射: 圧力1MPa、流量100リットル/分
洗浄時間:15秒噴射×6回(噴射間の停止時間15秒)
上記仕様により洗浄実験を行ない、表1に記載の結果を得た。表中、「○」は洗浄中に基板Wの脱落を生じなかったことを示し、「×」は洗浄中に基板Wが支持部2から外れ脱落したことを示す。
【0054】
【表1】

この結果から明らかなように、本発明の構成を採用しない仕様(0)では1mm厚の銅板及びガラスエポキシ樹脂、並びに0.5mm厚の銅板の場合にしか基板の脱落を防止できなかった。これに対し、本発明の構成を採用した仕様(i),(ii),(iii),(iiia)では、より薄い基板の場合でも洗浄中の脱落をより有効に防止している。
【0055】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の変更をすることが可能である。例えば、給液装置4からの溢出流は、吹付け装置3からの洗浄液と共通にすることなく、別個の供給源による液体(洗浄液、水、その他の液体)とすることもできる。
【0056】
また、洗浄装置は、基板を搬送しながら洗浄を行なう連続処理装置とすることもできる。この場合は、例えば、図9に示すように、給液装置4’を基板Wの幅方向より僅かに狭い幅とし、基板Wを矢印TRの方向に搬送し排出口411’から液を溢出させつつ図外の吹付け装置から基板W上面に洗浄液を吹き付ける構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る洗浄装置を備えた洗浄用設備を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】図1の洗浄用設備における1つのステーションの概略図である。
【図3】図1の洗浄用設備に使用されている洗浄装置の縦断図である。
【図4】図3の洗浄装置の作動状態を示す説明図である。
【図5】図3の洗浄装置における支持部を基板と共に示す斜視図である。
【図6】図5に示す支持部の要部の縦断面図である。
【図7】図3の洗浄装置の作動状態の説明図である。
【図8】図3の洗浄装置の作動状態の説明図である。
【図9】本発明に係る洗浄装置の他の実施形態について、要部を示す斜視図である。
【図10】従来の洗浄装置を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 洗浄装置
2 支持部
3 吹付け装置
4 給液装置
21 支承部
22 押さえ部
23 押圧部
211 載置部
411 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄する洗浄方法であって、基板下面に沿って開口する排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持しつつ、前記洗浄を行なうことを特徴とする薄型基板の洗浄方法。
【請求項2】
薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄する洗浄方法であって、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持して支持することにより、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持することを特徴とする薄型基板の洗浄方法。
【請求項3】
薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより、基板を保持し、基板上面に洗浄液を吹き付けて該上面を洗浄する洗浄方法であって、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持して支持することにより、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持し、且つ、基板下面に沿って開口する排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持しつつ、前記洗浄を行なうことを特徴とする薄型基板の洗浄方法。
【請求項4】
薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を支持することにより基板を保持する支持部と、基板上面を洗浄するように該上面に洗浄液を吹き付ける吹付け装置と、基板下面に沿って開口する排出口を備え該排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持する給液装置とを備えたことを特徴とする薄型基板の洗浄装置。
【請求項5】
薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより基板を保持する支持部と、基板上面を洗浄するように該上面に洗浄液を吹き付ける吹付け装置とを備え、前記支持部は、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持するように、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持する形状とされていることを特徴とする薄型基板の洗浄装置。
【請求項6】
薄型のプリント基板、プリント配線板等の薄型基板における対向する縁部を一対の支持部により支持することにより基板を保持する支持部と、基板上面を洗浄するように該上面に洗浄液を吹き付ける吹付け装置と、基板下面に沿って開口する排出口を備え該排出口から液を溢出し続けることにより基板を下方から支持する給液装置とを備え、前記支持部は、少なくとも非洗浄状態において基板を上に凸の形状に保持するように、前記一対の支持部の向き合う側を高く、その外側を低くして、基板を上下方向から挟持する形状とされていることを特徴とする薄型基板の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−96127(P2007−96127A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285521(P2005−285521)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】