薄層補強材
【課題】 薄くて軽量で、且つ、可撓特性を有する被補強基体を、その厚みや重さ、可撓性などの特徴を保ちつつ、機械的特性(引っ張り強度、引裂き強さ等)を向上させる薄層補強材を提供する。
【解決手段】 薄層補強材10は、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束1が、接着性樹脂11で含浸されたテープ状体からなる薄層の補強テープであり、該補強テープ10を、補強対象である被補強基体20に貼り合わせることで、該被補強基体20の前記機械的特性を補強する。
【解決手段】 薄層補強材10は、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束1が、接着性樹脂11で含浸されたテープ状体からなる薄層の補強テープであり、該補強テープ10を、補強対象である被補強基体20に貼り合わせることで、該被補強基体20の前記機械的特性を補強する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつ被補強基体の機械的特性を強化する薄層補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭素繊維などをそのまま、マトリックスとなる熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に含浸してなるテープが、複合材料用の中間材として広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
また、強化繊維を未硬化の熱硬化性樹脂に含浸して、柱などの建造物の主要部に巻き付けたり貼り合わせるなどして補強するテープも、実用されている。
さらに、複合材料の中間材として、強化繊維を開繊することによって得られる超薄の繊維補強材も発表されている(特許文献2参照)。
【0004】
このような通常の繊維強化ポリマー複合材料の中間体を用いて作製される成形品は、軽量の割には剛体で、高い機械的特性を持つという特徴があり、近年航空機部材を始め種々の用途に展開されている。
【特許文献1】特開2003−165851号公報
【特許文献2】WO 2005/002819 A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来の繊維強化ポリマー複合材料は、高い機械的特性を得ることはできるが、その高い機械的特性に、薄さと可撓性とを兼ね備えることは困難であった。従って、軽量で且つ可撓特性をもつ薄層基体に対し、その特性を保持しつつ機械的特性を補強する補強材として、従来の複合材料の中間体を使用することはできない。
【0006】
例えば、基体の軽量性、薄さ、可撓性などを保持しつつ、引き裂き強さなどの高い機械的特性を兼ね備える必要があるものとして、帆船の帆(セール)が一例に挙げられる。帆船の帆(セール)は、織帆布が好ましい材料として存在してきたが、競技用帆船の場合、様々な条件の風の下で最大限の艇速を引き出す必要があるため、そのセールに対しては、その形状に加えて、軽量であること、高い引き裂き強さを持つこと、十分な可撓性及び耐屈折性を持つことが要求される。このようなセールを従来の複合材料用中間材のテープで作製する場合、セールの厚みが増すと共に、重量も増加し、可撓性や耐折性も損なわれる。またしばしば必要量以上の強化繊維を使用するので、それだけコスト高になる。
【0007】
ところで前述したように、従来には、建造物の主要部に巻き付けたり貼り合わせるなどして建造物の耐震を補強するテープがあるが、このテープは、その補強対象が柱などの剛体である点、また耐震補強という目的をもつ点で、軽量で且つ可撓性の薄層基体を、その特性を保持しつつ機械的特性を補強する補強材として使用するのは不適切である。
【0008】
また、従来においては、強化繊維を開繊することによって得られる超薄の繊維補強材が発表されているが、これを軽量で且つ可撓特性をもつ薄層基体を、その特性を保持しつつ機械的特性を補強する補強材として使用する発想は、文献上全く見当たらない。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するためになされたものであり、薄くて軽量で、且つ可撓特性を有する被補強基体を、その厚みや重さ、可撓性などの特徴を保ちつつ、機械的特性を向上させる薄層補強材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、被補強基体に貼り合わせて該基体の機械的特性を強化する薄層の補強材であって、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸束が、接着性樹脂で含浸されたテープ状体からなるものである。
これにより、前記被補強基体の重量や厚みなどの特性を大きく変化させることなく、その被補強基体の機械的特性を向上させることが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記被補強基体は、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつものである。
これにより、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつという被補強基体の特性を保ったまま、該被補強基体の機械的特性も向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記接着性樹脂が、ホットメルト型樹脂であるものである。
これにより、当該薄層補強材を前記被補強基体に加熱圧着することで接合することができる。
【0013】
さらに、本発明の薄層補強材は、少なくとも当該薄層補強材の片面に、離型テープを貼り合わせるものである。
これにより、当該薄層補強材を巻いて保管することが可能となるため、その保管方法が簡便になると共に、被補強基体に前記薄層補強材を貼り合わせる際にも、その処理をしやすくできる。
【0014】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記強化繊維が、炭素繊維であるものである。
これにより、炭素繊維の高い比強度、比弾性率により、当該薄層補強材の機械的特性を効率的に高めることができる。
【0015】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記強化繊維単糸束の層では、該強化繊維が1軸方向に配列しているものである。
これにより、前記被補強基体の重量や厚みなどの特性を大きく変化させることなく、その被補強基体の配向軸方向の機械的特性を向上させることが可能となる。さらに当該薄層補強材の被補強基体への接合配置を適切に選択することで、被補強基体の機械的特性の強化方向を自由に選択できる。
【0016】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記被補強基体の主構成成分が、2軸延伸フィルムであるものである。
これにより、2軸延伸フィルムの強靱性を利用して、気密性で軽量で薄く且つ可撓性を持つ補強体をより容易に提供できる。この補強体は、セール用材に特に適している。
【0017】
さらに、本発明の薄層補強材は、当該薄層補強材の片面に、印刷されたフィルムを貼り合わせるものである、
これにより、薄層補強材の開繊拡幅された強化繊維面を保護できると共に、該薄層補強材に意匠効果を与えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薄層補強材によれば、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸束に、接着性樹脂が含浸されたテープ状体からなるものとしたので、薄くて軽量で、且つ可撓特性を持ちつつ、高い機械的特性を備えた補強材を提供できる。さらに、当該被薄層補強材を前記被補強基体に貼り合わせることで、前記被補強基体の、厚みや重量あるいは可撓特性などの特性を大きく変化させることなく、該被補強基体の機械的特性を向上させることができる。
【0019】
また、前記薄層補強材の接着性樹脂がホットメルト樹脂である場合、当該補強材を被補強基体に加熱圧着することで接合させることができるため、接合操作を大幅に簡略化できる。
【0020】
また、前記強化繊維が炭素繊維であれば、薄層補強材の機械的特性をより向上させることが可能となるため、被補強基体の機械的特性を更に向上させることができる。
【0021】
また、本発明の薄層補強材は、当該薄層補強材の少なくとも片面に、離型テープを貼り合わせるようにしたので、当該薄層補強材を巻いて保管することが可能となるため、その保管方法が簡便になると共に、被補強基体に前記薄層補強材を貼り合わせる際の作業効率を上げることができる。
【0022】
さらに、前記薄層補強材の片面に、印刷が施されたフィルムを貼り合わせるようにすれば、該補強材の強化繊維を保護できると共に、意匠効果も得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態1の薄層補強材について説明する。
本薄層補強材は、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束が、接着性樹脂によって含浸されたテープ状体からなる薄層の補強材である。
【0024】
そして、本薄層補強材を補強対象である被補強基体に貼り合わせることで、その被補強基体の機械的特性を向上させることができる。なお、ここでの機械的特性とは、引っ張り強度、引裂き強さを指す。
【0025】
本実施の形態1の薄層補強材を貼り合わせる被補強基体は、軽量で薄く、且つ可撓性を有する特性をもつものであり、その典型例としては、帆船の帆(セール)が挙げられる。また、前記被補強基体のその他の例として、パラシュート、テント、バルーン、建築用膜材や、可搬型の電気・情報機器の筐体用シート、カバン用シート、ならびに肉薄の管状ポールなども挙げられる。
【0026】
なお、本被補強基体のもつ特性として、軽量(単位面積当たりの重量)、薄い(厚み)、且つ可撓性(単位幅当たりの曲げ剛性)を有する、ことが挙げられるが、これらはそれぞれ、0.2g/cm2以下、2mm以下、1.3Ncm2/cm(N:ニュートン)以下、であることが好ましい。
【0027】
以下、本発明の薄層補強材(以下、単に「補強材」あるいは「補強テープ」と称す。)について説明する。
【0028】
本発明の補強テープは、予め1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束を接着性樹脂に含浸させて得る。これにより、補強効果を保持しつつ、該補強テープの厚みを薄くでき、重量増加の度合いも少なくすることができる。
【0029】
開繊拡幅する強化繊維の典型例としては、炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は比弾性率、比強度が高いので、補強テープの機械的特性を効率的に高めることができる点で特に優れている。強化繊維のその他の例としては、ガラス繊維、パラ型アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリ・ベンゾオキサゾール繊維などの高力学物性を持つ繊維も挙げられる。例えばセール用基材の補強用としては、軽量性、耐候性、耐折性などの点から、超高分子量ポリエチレン繊維が好適である。
【0030】
強化繊維の開繊拡幅の方法については、実質的に無撚りの強化繊維束を、弛緩状態で走行させ、その懸垂状の強化繊維束に、整流した空気流を、実質的に直交させるように吹き付けることで開繊拡幅する方法が好ましい。懸垂状態の垂れの大きさを大きくしたり、吹き付ける空気の流速を大きくしたりすれば、拡幅される幅は増大する。また吹き付ける空気の流速を大きくしたりすれば、拡幅される幅はさらに増大する。しかし、拡幅し過ぎると、幅方向における繊維の分布の均一性が低下するので、注意が必要である。なお、上述したように、被補強基体の機械的特性を向上させる効果を保ちつつ、厚みを薄くするという本補強テープの目的を達成するためには、1000本当たりの強化繊維単糸束を1.3mm以上まで拡幅することが必要である。
【0031】
以上のようにして開繊拡幅した強化繊維1の配向形態の典型的なものは、図1に示すような1軸配向のものである。
【0032】
この1軸配向の開繊拡幅された強化繊維1に、接着性樹脂(以下、単に「樹脂」と称す。)11を含浸させ、図2に示すような接着性をもつ薄層補強材(以下、「補強テープ」と称す。)10を得る。
【0033】
前記補強テープ10に含浸させる樹脂11は、特に制限はないが、溶剤や水分を限度以上に含むものは貼り合わせ時に手間がかかるため、無溶剤系のものが好ましい。また、特に、樹脂11を含浸後の補強テープ10に、十分な柔軟性と耐屈折性を要する場合、前記樹脂11は、ホットメルト系の樹脂であることが望ましい。
【0034】
さらに、前記開繊拡幅した強化繊維1を樹脂11中に含浸させる方法としては、該開繊拡幅した強化繊維1に樹脂11を塗布したり、あるいは図3に示すようにテープ状にされた樹脂11を前記開繊拡幅した強化繊維1の両面もしくは片面に接合させた後、加圧加熱して含浸させる方法などが考えられる。本実施の形態1では、樹脂11を含浸させる強化繊維が開繊拡幅されているため、強化繊維に樹脂11が含浸されやすいという特徴がある。ただし、開繊拡幅した強化繊維1は、その配向性を保つのが難しいため、樹脂を含浸させる際、図4に示すように該開繊拡幅した強化繊維の配向がずれないようにするために、数本の強化繊維12を、該開繊拡幅した強化繊維1の配向軸と垂直方向に配置させるようにしてもよい。
【0035】
そして、前記開繊拡幅した強化繊維に含浸させる樹脂量としては、テープ状物に貼り合わせた際に、十分な貼り合わせ強度が確保できる量が必要であるが、前記補強テープ10の軽量性を保つために、できるだけ少量であることが好ましく、実用上、80g/m2以下であることが好ましい。
【0036】
また、作製された補強テープ10は、開繊拡幅された強化繊維1が前記樹脂11に含浸されていることが理想であり、特に、図2に図示したように、すべての前記開繊拡幅された強化繊維1が前記樹脂11中に埋没していることが望ましい。このようにすれば、該開繊拡幅された強化繊維の強化効率が高度に発揮され、且つ後述する被補強基体への貼り合わせ強度も高くなり、外部からの横圧荷重や衝撃的荷重などによる強化繊維の損傷を緩和することができる。なお、すべての開繊拡幅された強化繊維が前記樹脂中に埋没している必要はなく、少なくとも該開繊拡幅された強化繊維の両面に前記樹脂が存在し、該繊維の多くの部分が前記樹脂によって含浸されていればよい。
【0037】
このようにして作製された補強テープ10には、図5に示すように、その両面あるいは片面に、離型効果を有する離型テープ13を貼り合わせておく。このようにすれば、前記補強テープ10を保管しておく際に、補強テープを巻いた状態で保管しておくことができるし、また、被補強基材に対し、前記補強テープ10を貼り合わせる際に、補強テープ10をスムーズに引き出して貼り合わせることができるため、作業効率があがるという効果もある。
【0038】
また、図6に示すように、前記補強テープ10の片面に予めフィルム14を貼り合わせておいてもよい。このようにすれば、フィルム14により補強テープ10の強化繊維を保護できると共に、該フィルム14に印刷を施しておけば、意匠効果を高めることも可能である。さらに、前記補強テープ10に貼り合わせるフィルム14に離型効果を持たせておけば、補強テープ10に離型テープを貼り合わせなくとも、補強テープ10をスムーズに引き出すことができ、作業効率が向上できると共に、保管しやすいという効果も得られる。
【0039】
そして、以上のようにして作製された補強テープ10を、被補強基体20に貼り合わせる場合、該補強テープ10を、被補強基体20の機械的特性を強化させたい方向に沿って貼り合わせていく。
【0040】
補強テープ10の強化繊維の配向が1軸配向の場合は、該補強テープ10の厚みが薄く、軽量であるため、前記被補強基体20の重量や厚みなどの特性をほとんど変化させることなく、その被補強基体20の機械的特性を向上させることができる。また、被補強基体20の機械的特性を強化させたい方向に、該補強テープ10を貼り合わせていけばよいので、強化させたい方向の自由度を大きくできるという効果も得られる。例えば、図7(a)に示すように、1軸配向の補強テープ10を1方向に平行に貼っていってもよいし、図7(b)に示すように、該テープ10を異なる方向に重ねて貼っていってもよいし、図7(c)に示すように、被補強基体20の全体に該テープ10を貼るのではなく、一部分だけに貼るものであってもよい。また、図7(a),(b)に示すように、補強テープ10同士が平行になるよう貼り合わせるだけでなく、図7(c)に示すように、曲線を描くように貼ってもよい。
【0041】
なお、前記被補強基体20に対し、2軸的な強化や、面的な強化をする場合は、前述した1軸配向の補強テープ10では、貼り合わせに手間が掛かるという難点がある。その場合は、開繊拡幅された強化繊維単糸の束を、予め多軸に配置して樹脂11で含浸されたテープ状体を作製し、該多軸の補強テープを被補強基体に貼り合わせることも可能である。このようにすれば、被補強基体に多軸の補強テープをそのまま接合するだけで、2軸的な強化や面的な強化、あるいは目的とする補強を、効率的且つ均一に行なうことができる。そして、前述した強化繊維単糸束の多軸配置の典型例は、0度/90度の2軸、0度/+60度/−60度の3軸、(0度/+45度/−45度/90度)の4軸などが挙げあれるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0042】
以上のように、本実施の形態1にかかる薄層補強材は、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束を、接着性樹脂に含浸されたテープ状体からなるものとしたので、被補強基体の厚みや重量、あるいは可撓性などの特性を大幅に変化させることなく、該被補強基体に高い機械的特性を与えることができる。
【0043】
また、本発明の薄層補強材は、少なくとも片面に、離型テープ13を貼り合わせてなるようにしたので、薄層補強材10を保管しておく際に、該補強材10を巻いた状態で保管できるため、その保管が簡便であると共に、前記被補強基材に対して前記補強材10を貼り合わせる際に、該補強材10をスムーズに引き出して貼り合わせることができ、貼り合わせの作業効率をあげることができる。
【0044】
さらに、本発明の薄層補強材の片面に、予め印刷が施されたフィルムを貼り合わせるようにすれば、該補強材10の強化繊維を保護できると共に、意匠効果も高めることが可能となる。
【0045】
なお、上記説明においては、本薄層補強材がテープ状体であるとして説明したが、実際のテープ製造工程では、生産効率を高めるため、前記同様の構成を有する広幅のシート状体である補強シートを作り、それを所定の幅にスリッティングして補強テープを得るのが望ましい。
【実施例1】
【0046】
1)補強テープの製造
まず、12Kの300タイプ東レ炭素繊維を30mmの幅まで開繊拡幅する。そして、該開繊拡幅した炭素繊維1を、その間隔が空かずかつ重ならないように30本引き揃えて、図8の製造装置に供給する。
【0047】
次に、その開繊拡幅した炭素繊維1の両面に、離型フィルム供給部2a,2bから供給された、ホットメルト樹脂薄層(20g/m2ずつ)が塗布された離型フィルム15を、そのホットメルト樹脂層が開繊拡幅された炭素繊維1に接合するように配置する。
【0048】
図9は、樹脂が塗布された離型フィルム15の断面の模式図である。図において、13が離型フィルム、11がホットメルト層であり、該離型フィルム13は、フッ素系樹脂などの離型層(面)13aと、離型層が塗布されたフィルム13bからなる。
【0049】
その後、離型フィルム、開繊強化繊維、離型フィルムの順に配置された広幅のテープを、ヒーター4で加熱しつつ加圧ロール5a,5b間を通過させ、さらに同様に、ヒータ6で加熱しつつ加圧ロール7a,7b間を通過して加圧を行い、該供給された炭素繊維1に接着性樹脂を含浸させる。
【0050】
こうして得られた一体化された広幅のテープ16をワインダー8にて巻き取る。このとき、巻き取りロール9で、広幅テープの両面に貼り合わされていた離型テープ13の一方を巻き取る。図10は、このとき得られるテープの断面図である。
その後、テープ16を所定の幅に切断して、300mm幅の片面に離型フィルム13の付いた1軸配向の補強テープを得る。
【0051】
2)被補強基体への貼り合わせ
被補強基体20は、厚み20μmの2軸延伸ポリエステルフィルムである。この2軸延伸ポリエステルフィルムは、横約7〜8メートル、縦約20メートルの帆船のセール形状に予め裁断成型されている。この被補強基体20の上に、セールで強化されるべき方向に沿って、図11(a)〜(c)に示すように、前記補強テープ10を順次貼り合わせていく。そして、図11(c)に示すようにして前記被補強基体20上に貼り合わされた補強テープ10の上に、メッシュ状の薄い織物を積層接合して、セールが出来上がる。
【0052】
こうして得られたセールは、従来の炭素繊維強化のセールに比べて、その厚みが約53%(93μm)に減少すると共に、セールの重量が約30%に軽量化させることができる。また、従来の炭素繊維強化セールでは、セールを折り畳んだ時、折り畳みの局所で、炭素繊維が切断損傷しがちであったが、本実施例1のセールでは、炭素繊維を開繊拡幅し、超薄層にしていることから、可撓性、及び耐屈折性をもち、従来の難点を大幅に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の薄層補強材は、薄い板状のもの、帆船のセール、パラシュート、各種バルーンやエアバッグのような空気で膨らませるもの、テント、並びに建築業で屋根や天井用に利用されるテンション構造などを補強する材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる1軸配向の開繊拡幅された強化繊維であり、図(a)はその平面図であり、図(b)はその断面図を示すものである。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる1軸配向の補強テープを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる、開繊拡幅された強化繊維の両面に樹脂が塗布された離型テープが配置された状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる、1軸配向の開繊拡幅された強化繊維の別の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる補強テープに、離型テープを貼り合わせた状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる補強テープに、印刷が施されたフィルムを貼り合わせた状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る補強テープを、被補強基体に貼り付けた状態の例を示す図であり、図(a)は、1軸方向に貼り合わせた例を示し、図(b)は2軸方向に貼り合わせた例を示し、図(c)は、一部分にだけ貼り合わせた例を示す。
【図8】本実施例1の補強テープの製造工程を示す図である。
【図9】本実施例1の補強テープの製造工程において貼り合わされる離型フィルムの断面の模式図である。
【図10】本実施例1の補強テープの製造工程にて得られる補強テープの断面の模式図である。
【図11】本実施例1の帆船のセールに補強テープを貼り合わせていく様子を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 開繊拡幅された1軸配向の強化繊維
2a,2b 離型フィルム供給部
4,6 ヒータ
5a,5b,7a,7b 加圧部
8 ワインダー
9 巻き取りロール
10 補強テープ
11 樹脂
12 強化繊維
13 離型テープ
13a 離型層
13b フィルム
14 印刷が施されたフィルム
15 樹脂が塗布された離型フィルム
16 補強シート
20 被補強基体
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつ被補強基体の機械的特性を強化する薄層補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭素繊維などをそのまま、マトリックスとなる熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂に含浸してなるテープが、複合材料用の中間材として広く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
また、強化繊維を未硬化の熱硬化性樹脂に含浸して、柱などの建造物の主要部に巻き付けたり貼り合わせるなどして補強するテープも、実用されている。
さらに、複合材料の中間材として、強化繊維を開繊することによって得られる超薄の繊維補強材も発表されている(特許文献2参照)。
【0004】
このような通常の繊維強化ポリマー複合材料の中間体を用いて作製される成形品は、軽量の割には剛体で、高い機械的特性を持つという特徴があり、近年航空機部材を始め種々の用途に展開されている。
【特許文献1】特開2003−165851号公報
【特許文献2】WO 2005/002819 A2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、従来の繊維強化ポリマー複合材料は、高い機械的特性を得ることはできるが、その高い機械的特性に、薄さと可撓性とを兼ね備えることは困難であった。従って、軽量で且つ可撓特性をもつ薄層基体に対し、その特性を保持しつつ機械的特性を補強する補強材として、従来の複合材料の中間体を使用することはできない。
【0006】
例えば、基体の軽量性、薄さ、可撓性などを保持しつつ、引き裂き強さなどの高い機械的特性を兼ね備える必要があるものとして、帆船の帆(セール)が一例に挙げられる。帆船の帆(セール)は、織帆布が好ましい材料として存在してきたが、競技用帆船の場合、様々な条件の風の下で最大限の艇速を引き出す必要があるため、そのセールに対しては、その形状に加えて、軽量であること、高い引き裂き強さを持つこと、十分な可撓性及び耐屈折性を持つことが要求される。このようなセールを従来の複合材料用中間材のテープで作製する場合、セールの厚みが増すと共に、重量も増加し、可撓性や耐折性も損なわれる。またしばしば必要量以上の強化繊維を使用するので、それだけコスト高になる。
【0007】
ところで前述したように、従来には、建造物の主要部に巻き付けたり貼り合わせるなどして建造物の耐震を補強するテープがあるが、このテープは、その補強対象が柱などの剛体である点、また耐震補強という目的をもつ点で、軽量で且つ可撓性の薄層基体を、その特性を保持しつつ機械的特性を補強する補強材として使用するのは不適切である。
【0008】
また、従来においては、強化繊維を開繊することによって得られる超薄の繊維補強材が発表されているが、これを軽量で且つ可撓特性をもつ薄層基体を、その特性を保持しつつ機械的特性を補強する補強材として使用する発想は、文献上全く見当たらない。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するためになされたものであり、薄くて軽量で、且つ可撓特性を有する被補強基体を、その厚みや重さ、可撓性などの特徴を保ちつつ、機械的特性を向上させる薄層補強材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、被補強基体に貼り合わせて該基体の機械的特性を強化する薄層の補強材であって、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸束が、接着性樹脂で含浸されたテープ状体からなるものである。
これにより、前記被補強基体の重量や厚みなどの特性を大きく変化させることなく、その被補強基体の機械的特性を向上させることが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記被補強基体は、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつものである。
これにより、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつという被補強基体の特性を保ったまま、該被補強基体の機械的特性も向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記接着性樹脂が、ホットメルト型樹脂であるものである。
これにより、当該薄層補強材を前記被補強基体に加熱圧着することで接合することができる。
【0013】
さらに、本発明の薄層補強材は、少なくとも当該薄層補強材の片面に、離型テープを貼り合わせるものである。
これにより、当該薄層補強材を巻いて保管することが可能となるため、その保管方法が簡便になると共に、被補強基体に前記薄層補強材を貼り合わせる際にも、その処理をしやすくできる。
【0014】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記強化繊維が、炭素繊維であるものである。
これにより、炭素繊維の高い比強度、比弾性率により、当該薄層補強材の機械的特性を効率的に高めることができる。
【0015】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記強化繊維単糸束の層では、該強化繊維が1軸方向に配列しているものである。
これにより、前記被補強基体の重量や厚みなどの特性を大きく変化させることなく、その被補強基体の配向軸方向の機械的特性を向上させることが可能となる。さらに当該薄層補強材の被補強基体への接合配置を適切に選択することで、被補強基体の機械的特性の強化方向を自由に選択できる。
【0016】
さらに、本発明の薄層補強材は、前記被補強基体の主構成成分が、2軸延伸フィルムであるものである。
これにより、2軸延伸フィルムの強靱性を利用して、気密性で軽量で薄く且つ可撓性を持つ補強体をより容易に提供できる。この補強体は、セール用材に特に適している。
【0017】
さらに、本発明の薄層補強材は、当該薄層補強材の片面に、印刷されたフィルムを貼り合わせるものである、
これにより、薄層補強材の開繊拡幅された強化繊維面を保護できると共に、該薄層補強材に意匠効果を与えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の薄層補強材によれば、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸束に、接着性樹脂が含浸されたテープ状体からなるものとしたので、薄くて軽量で、且つ可撓特性を持ちつつ、高い機械的特性を備えた補強材を提供できる。さらに、当該被薄層補強材を前記被補強基体に貼り合わせることで、前記被補強基体の、厚みや重量あるいは可撓特性などの特性を大きく変化させることなく、該被補強基体の機械的特性を向上させることができる。
【0019】
また、前記薄層補強材の接着性樹脂がホットメルト樹脂である場合、当該補強材を被補強基体に加熱圧着することで接合させることができるため、接合操作を大幅に簡略化できる。
【0020】
また、前記強化繊維が炭素繊維であれば、薄層補強材の機械的特性をより向上させることが可能となるため、被補強基体の機械的特性を更に向上させることができる。
【0021】
また、本発明の薄層補強材は、当該薄層補強材の少なくとも片面に、離型テープを貼り合わせるようにしたので、当該薄層補強材を巻いて保管することが可能となるため、その保管方法が簡便になると共に、被補強基体に前記薄層補強材を貼り合わせる際の作業効率を上げることができる。
【0022】
さらに、前記薄層補強材の片面に、印刷が施されたフィルムを貼り合わせるようにすれば、該補強材の強化繊維を保護できると共に、意匠効果も得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
本実施の形態1の薄層補強材について説明する。
本薄層補強材は、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束が、接着性樹脂によって含浸されたテープ状体からなる薄層の補強材である。
【0024】
そして、本薄層補強材を補強対象である被補強基体に貼り合わせることで、その被補強基体の機械的特性を向上させることができる。なお、ここでの機械的特性とは、引っ張り強度、引裂き強さを指す。
【0025】
本実施の形態1の薄層補強材を貼り合わせる被補強基体は、軽量で薄く、且つ可撓性を有する特性をもつものであり、その典型例としては、帆船の帆(セール)が挙げられる。また、前記被補強基体のその他の例として、パラシュート、テント、バルーン、建築用膜材や、可搬型の電気・情報機器の筐体用シート、カバン用シート、ならびに肉薄の管状ポールなども挙げられる。
【0026】
なお、本被補強基体のもつ特性として、軽量(単位面積当たりの重量)、薄い(厚み)、且つ可撓性(単位幅当たりの曲げ剛性)を有する、ことが挙げられるが、これらはそれぞれ、0.2g/cm2以下、2mm以下、1.3Ncm2/cm(N:ニュートン)以下、であることが好ましい。
【0027】
以下、本発明の薄層補強材(以下、単に「補強材」あるいは「補強テープ」と称す。)について説明する。
【0028】
本発明の補強テープは、予め1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束を接着性樹脂に含浸させて得る。これにより、補強効果を保持しつつ、該補強テープの厚みを薄くでき、重量増加の度合いも少なくすることができる。
【0029】
開繊拡幅する強化繊維の典型例としては、炭素繊維が挙げられる。炭素繊維は比弾性率、比強度が高いので、補強テープの機械的特性を効率的に高めることができる点で特に優れている。強化繊維のその他の例としては、ガラス繊維、パラ型アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリ・ベンゾオキサゾール繊維などの高力学物性を持つ繊維も挙げられる。例えばセール用基材の補強用としては、軽量性、耐候性、耐折性などの点から、超高分子量ポリエチレン繊維が好適である。
【0030】
強化繊維の開繊拡幅の方法については、実質的に無撚りの強化繊維束を、弛緩状態で走行させ、その懸垂状の強化繊維束に、整流した空気流を、実質的に直交させるように吹き付けることで開繊拡幅する方法が好ましい。懸垂状態の垂れの大きさを大きくしたり、吹き付ける空気の流速を大きくしたりすれば、拡幅される幅は増大する。また吹き付ける空気の流速を大きくしたりすれば、拡幅される幅はさらに増大する。しかし、拡幅し過ぎると、幅方向における繊維の分布の均一性が低下するので、注意が必要である。なお、上述したように、被補強基体の機械的特性を向上させる効果を保ちつつ、厚みを薄くするという本補強テープの目的を達成するためには、1000本当たりの強化繊維単糸束を1.3mm以上まで拡幅することが必要である。
【0031】
以上のようにして開繊拡幅した強化繊維1の配向形態の典型的なものは、図1に示すような1軸配向のものである。
【0032】
この1軸配向の開繊拡幅された強化繊維1に、接着性樹脂(以下、単に「樹脂」と称す。)11を含浸させ、図2に示すような接着性をもつ薄層補強材(以下、「補強テープ」と称す。)10を得る。
【0033】
前記補強テープ10に含浸させる樹脂11は、特に制限はないが、溶剤や水分を限度以上に含むものは貼り合わせ時に手間がかかるため、無溶剤系のものが好ましい。また、特に、樹脂11を含浸後の補強テープ10に、十分な柔軟性と耐屈折性を要する場合、前記樹脂11は、ホットメルト系の樹脂であることが望ましい。
【0034】
さらに、前記開繊拡幅した強化繊維1を樹脂11中に含浸させる方法としては、該開繊拡幅した強化繊維1に樹脂11を塗布したり、あるいは図3に示すようにテープ状にされた樹脂11を前記開繊拡幅した強化繊維1の両面もしくは片面に接合させた後、加圧加熱して含浸させる方法などが考えられる。本実施の形態1では、樹脂11を含浸させる強化繊維が開繊拡幅されているため、強化繊維に樹脂11が含浸されやすいという特徴がある。ただし、開繊拡幅した強化繊維1は、その配向性を保つのが難しいため、樹脂を含浸させる際、図4に示すように該開繊拡幅した強化繊維の配向がずれないようにするために、数本の強化繊維12を、該開繊拡幅した強化繊維1の配向軸と垂直方向に配置させるようにしてもよい。
【0035】
そして、前記開繊拡幅した強化繊維に含浸させる樹脂量としては、テープ状物に貼り合わせた際に、十分な貼り合わせ強度が確保できる量が必要であるが、前記補強テープ10の軽量性を保つために、できるだけ少量であることが好ましく、実用上、80g/m2以下であることが好ましい。
【0036】
また、作製された補強テープ10は、開繊拡幅された強化繊維1が前記樹脂11に含浸されていることが理想であり、特に、図2に図示したように、すべての前記開繊拡幅された強化繊維1が前記樹脂11中に埋没していることが望ましい。このようにすれば、該開繊拡幅された強化繊維の強化効率が高度に発揮され、且つ後述する被補強基体への貼り合わせ強度も高くなり、外部からの横圧荷重や衝撃的荷重などによる強化繊維の損傷を緩和することができる。なお、すべての開繊拡幅された強化繊維が前記樹脂中に埋没している必要はなく、少なくとも該開繊拡幅された強化繊維の両面に前記樹脂が存在し、該繊維の多くの部分が前記樹脂によって含浸されていればよい。
【0037】
このようにして作製された補強テープ10には、図5に示すように、その両面あるいは片面に、離型効果を有する離型テープ13を貼り合わせておく。このようにすれば、前記補強テープ10を保管しておく際に、補強テープを巻いた状態で保管しておくことができるし、また、被補強基材に対し、前記補強テープ10を貼り合わせる際に、補強テープ10をスムーズに引き出して貼り合わせることができるため、作業効率があがるという効果もある。
【0038】
また、図6に示すように、前記補強テープ10の片面に予めフィルム14を貼り合わせておいてもよい。このようにすれば、フィルム14により補強テープ10の強化繊維を保護できると共に、該フィルム14に印刷を施しておけば、意匠効果を高めることも可能である。さらに、前記補強テープ10に貼り合わせるフィルム14に離型効果を持たせておけば、補強テープ10に離型テープを貼り合わせなくとも、補強テープ10をスムーズに引き出すことができ、作業効率が向上できると共に、保管しやすいという効果も得られる。
【0039】
そして、以上のようにして作製された補強テープ10を、被補強基体20に貼り合わせる場合、該補強テープ10を、被補強基体20の機械的特性を強化させたい方向に沿って貼り合わせていく。
【0040】
補強テープ10の強化繊維の配向が1軸配向の場合は、該補強テープ10の厚みが薄く、軽量であるため、前記被補強基体20の重量や厚みなどの特性をほとんど変化させることなく、その被補強基体20の機械的特性を向上させることができる。また、被補強基体20の機械的特性を強化させたい方向に、該補強テープ10を貼り合わせていけばよいので、強化させたい方向の自由度を大きくできるという効果も得られる。例えば、図7(a)に示すように、1軸配向の補強テープ10を1方向に平行に貼っていってもよいし、図7(b)に示すように、該テープ10を異なる方向に重ねて貼っていってもよいし、図7(c)に示すように、被補強基体20の全体に該テープ10を貼るのではなく、一部分だけに貼るものであってもよい。また、図7(a),(b)に示すように、補強テープ10同士が平行になるよう貼り合わせるだけでなく、図7(c)に示すように、曲線を描くように貼ってもよい。
【0041】
なお、前記被補強基体20に対し、2軸的な強化や、面的な強化をする場合は、前述した1軸配向の補強テープ10では、貼り合わせに手間が掛かるという難点がある。その場合は、開繊拡幅された強化繊維単糸の束を、予め多軸に配置して樹脂11で含浸されたテープ状体を作製し、該多軸の補強テープを被補強基体に貼り合わせることも可能である。このようにすれば、被補強基体に多軸の補強テープをそのまま接合するだけで、2軸的な強化や面的な強化、あるいは目的とする補強を、効率的且つ均一に行なうことができる。そして、前述した強化繊維単糸束の多軸配置の典型例は、0度/90度の2軸、0度/+60度/−60度の3軸、(0度/+45度/−45度/90度)の4軸などが挙げあれるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0042】
以上のように、本実施の形態1にかかる薄層補強材は、1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸の束を、接着性樹脂に含浸されたテープ状体からなるものとしたので、被補強基体の厚みや重量、あるいは可撓性などの特性を大幅に変化させることなく、該被補強基体に高い機械的特性を与えることができる。
【0043】
また、本発明の薄層補強材は、少なくとも片面に、離型テープ13を貼り合わせてなるようにしたので、薄層補強材10を保管しておく際に、該補強材10を巻いた状態で保管できるため、その保管が簡便であると共に、前記被補強基材に対して前記補強材10を貼り合わせる際に、該補強材10をスムーズに引き出して貼り合わせることができ、貼り合わせの作業効率をあげることができる。
【0044】
さらに、本発明の薄層補強材の片面に、予め印刷が施されたフィルムを貼り合わせるようにすれば、該補強材10の強化繊維を保護できると共に、意匠効果も高めることが可能となる。
【0045】
なお、上記説明においては、本薄層補強材がテープ状体であるとして説明したが、実際のテープ製造工程では、生産効率を高めるため、前記同様の構成を有する広幅のシート状体である補強シートを作り、それを所定の幅にスリッティングして補強テープを得るのが望ましい。
【実施例1】
【0046】
1)補強テープの製造
まず、12Kの300タイプ東レ炭素繊維を30mmの幅まで開繊拡幅する。そして、該開繊拡幅した炭素繊維1を、その間隔が空かずかつ重ならないように30本引き揃えて、図8の製造装置に供給する。
【0047】
次に、その開繊拡幅した炭素繊維1の両面に、離型フィルム供給部2a,2bから供給された、ホットメルト樹脂薄層(20g/m2ずつ)が塗布された離型フィルム15を、そのホットメルト樹脂層が開繊拡幅された炭素繊維1に接合するように配置する。
【0048】
図9は、樹脂が塗布された離型フィルム15の断面の模式図である。図において、13が離型フィルム、11がホットメルト層であり、該離型フィルム13は、フッ素系樹脂などの離型層(面)13aと、離型層が塗布されたフィルム13bからなる。
【0049】
その後、離型フィルム、開繊強化繊維、離型フィルムの順に配置された広幅のテープを、ヒーター4で加熱しつつ加圧ロール5a,5b間を通過させ、さらに同様に、ヒータ6で加熱しつつ加圧ロール7a,7b間を通過して加圧を行い、該供給された炭素繊維1に接着性樹脂を含浸させる。
【0050】
こうして得られた一体化された広幅のテープ16をワインダー8にて巻き取る。このとき、巻き取りロール9で、広幅テープの両面に貼り合わされていた離型テープ13の一方を巻き取る。図10は、このとき得られるテープの断面図である。
その後、テープ16を所定の幅に切断して、300mm幅の片面に離型フィルム13の付いた1軸配向の補強テープを得る。
【0051】
2)被補強基体への貼り合わせ
被補強基体20は、厚み20μmの2軸延伸ポリエステルフィルムである。この2軸延伸ポリエステルフィルムは、横約7〜8メートル、縦約20メートルの帆船のセール形状に予め裁断成型されている。この被補強基体20の上に、セールで強化されるべき方向に沿って、図11(a)〜(c)に示すように、前記補強テープ10を順次貼り合わせていく。そして、図11(c)に示すようにして前記被補強基体20上に貼り合わされた補強テープ10の上に、メッシュ状の薄い織物を積層接合して、セールが出来上がる。
【0052】
こうして得られたセールは、従来の炭素繊維強化のセールに比べて、その厚みが約53%(93μm)に減少すると共に、セールの重量が約30%に軽量化させることができる。また、従来の炭素繊維強化セールでは、セールを折り畳んだ時、折り畳みの局所で、炭素繊維が切断損傷しがちであったが、本実施例1のセールでは、炭素繊維を開繊拡幅し、超薄層にしていることから、可撓性、及び耐屈折性をもち、従来の難点を大幅に回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の薄層補強材は、薄い板状のもの、帆船のセール、パラシュート、各種バルーンやエアバッグのような空気で膨らませるもの、テント、並びに建築業で屋根や天井用に利用されるテンション構造などを補強する材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる1軸配向の開繊拡幅された強化繊維であり、図(a)はその平面図であり、図(b)はその断面図を示すものである。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる1軸配向の補強テープを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる、開繊拡幅された強化繊維の両面に樹脂が塗布された離型テープが配置された状態を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる、1軸配向の開繊拡幅された強化繊維の別の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる補強テープに、離型テープを貼り合わせた状態を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1にかかる補強テープに、印刷が施されたフィルムを貼り合わせた状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る補強テープを、被補強基体に貼り付けた状態の例を示す図であり、図(a)は、1軸方向に貼り合わせた例を示し、図(b)は2軸方向に貼り合わせた例を示し、図(c)は、一部分にだけ貼り合わせた例を示す。
【図8】本実施例1の補強テープの製造工程を示す図である。
【図9】本実施例1の補強テープの製造工程において貼り合わされる離型フィルムの断面の模式図である。
【図10】本実施例1の補強テープの製造工程にて得られる補強テープの断面の模式図である。
【図11】本実施例1の帆船のセールに補強テープを貼り合わせていく様子を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 開繊拡幅された1軸配向の強化繊維
2a,2b 離型フィルム供給部
4,6 ヒータ
5a,5b,7a,7b 加圧部
8 ワインダー
9 巻き取りロール
10 補強テープ
11 樹脂
12 強化繊維
13 離型テープ
13a 離型層
13b フィルム
14 印刷が施されたフィルム
15 樹脂が塗布された離型フィルム
16 補強シート
20 被補強基体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被補強基体に貼り合わせて該基体の機械的特性を強化する薄層の補強材であって、
1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸束が、接着性樹脂で含浸されたテープ状体からなる、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項2】
請求項1に記載の薄層補強材において、
前記被補強基体は、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつものである、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薄層補強材において、
前記接着性樹脂が、ホットメルト型樹脂である、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
少なくとも当該薄層補強材の片面に、離型テープを貼り合わせる、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
前記強化繊維は、炭素繊維である、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
前記強化繊維単糸束の層は、該強化繊維が1軸方向に配列している、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
前記被補強基体の主構成成分が、2軸延伸フィルムである、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項8】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
当該薄層補強材の片面に、印刷されたフィルムを貼り合わせる、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項1】
被補強基体に貼り合わせて該基体の機械的特性を強化する薄層の補強材であって、
1000本当たりの幅が1.3mm以上になるように開繊拡幅された強化繊維単糸束が、接着性樹脂で含浸されたテープ状体からなる、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項2】
請求項1に記載の薄層補強材において、
前記被補強基体は、軽量で薄く、且つ可撓特性をもつものである、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の薄層補強材において、
前記接着性樹脂が、ホットメルト型樹脂である、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
少なくとも当該薄層補強材の片面に、離型テープを貼り合わせる、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
前記強化繊維は、炭素繊維である、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項6】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
前記強化繊維単糸束の層は、該強化繊維が1軸方向に配列している、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
前記被補強基体の主構成成分が、2軸延伸フィルムである、
ことを特徴とする薄層補強材。
【請求項8】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の薄層補強材において、
当該薄層補強材の片面に、印刷されたフィルムを貼り合わせる、
ことを特徴とする薄層補強材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−55111(P2007−55111A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243969(P2005−243969)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(500152267)丸八株式会社 (12)
【出願人】(504408650)丸八エクスピーテイー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(500152267)丸八株式会社 (12)
【出願人】(504408650)丸八エクスピーテイー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】
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