説明

薄板搬送用コンテナ

【課題】 薄板の種類毎にコンテナの大きさを変える必要が無く、複数種類の大きさの薄板でも単一のコンテナで搬送することが可能であり、コンテナの共用化を図り、コンテナ保管のためのスペースの無駄を削減し、搬送作業効率に優れた薄板搬送用コンテナを提供すること。
【解決手段】パレット4と、その上にトレー収容空間を形成するように解体自在あるいは折り畳み自在に組み立てられた側板6、8と、トレー収容空間の内部に段積み可能に積層され、略水平に位置する薄板を、少なくとも1枚収容可能なトレー30とを有する薄板搬送用コンテナである。トレー30が、底板と、底板の周囲を囲むように立設される固定枠部材と、複数の位置で固定枠部材および/または底板に対して着脱自在に固定される第1、第2の移動枠部材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナに係り、さらに詳しくは、たとえば各種のフラットパネル、ディスプレー装置(プラズマ表示装置、液晶表示装置等)などの製造に用いる薄板状電子部品の搬送に用いる薄板搬送用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば液晶表示装置やプラズマ表示装置などの平面表示装置では、その製造過程で、ガラス基板を破損しないように、且つ、基板表面が汚れないように、基板を保管および搬送するためのコンテナが必要となる。
【0003】
しかしながら、従来のコンテナは、平面表示装置に用いるガラス基板などの薄板を、破損しないように、且つ、基板表面が汚れないように搬送することができるものではなかった。
【0004】
また、従来のコンテナの開口部は、コンテナの上部に設けられているため、薄板を上方から入れて、上方から取り出す作業を必要とし、薄板を割らないようにコンテナに出し入れすることが困難であった。
【0005】
そこで、下記の特許文献1および2に示すように、コンテナの側方から薄板を取り出せるようにした薄板用コンテナが開発されている。
【0006】
しかしながら、これらの文献などに記載してある従来の薄板用コンテナでは、薄板を縦置きにしてコンテナの内部に収容するようにしてある。比較的に小面積の薄板の場合には、薄板を縦置きにしても、たわみなどの問題が発生せずに良好に搬送することができる。
【0007】
ところが、近年では、平面表示装置などに用いるガラス基板などの薄板は、表示画面の拡大と共に大きくなり、薄板を縦置きでコンテナの内部に配置すると、撓みなどが生じることから、薄板同士を十分に間隔を開けて配置する必要がある。そのためにコンテナの内部に、あまり多くの薄板を収容することが困難になっている。
【0008】
しかしながら、ガラス基板などの薄板を、コンテナの内部で単純に横置きにして収容すると、薄板が割れるなどの課題がある。また、薄板を、コンテナの内部で横置きに収容する場合には、コンテナの上部開口部から薄板を収容することは困難である。
【0009】
そこで、本出願人は、コンテナの内部に横置き式のトレーを段積みに位置し、各トレーの内部に、薄板を収容して搬送するコンテナを開発し、先に出願している。ところが、先に出願したコンテナでは、一種類の大きさの薄板しか搬送することができないものであった。
【0010】
平面ディスプレイ装置などは、画面の大きさに合わせて、多数種類の薄板を準備する必要があり、薄板の種類毎にコンテナの大きさを変えていたのでは、コンテナの種類が多く成りすぎて、コンテナのコストが増大すると共に、コンテナの保管のためのスペースが無駄になると共に、コンテナの輸送に際して大きさの異なるコンテナを搬送することは搬送作業効率が悪い。
【特許文献1】特開平10−310145号公報
【特許文献2】特開2003−40271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、薄板の種類毎にコンテナの大きさを変える必要が無く、複数種類の大きさの薄板でも単一のコンテナで搬送することが可能であり、コンテナの共用化を図り、コンテナ保管のためのスペースの無駄を削減し、搬送作業効率に優れた薄板搬送用コンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る薄板搬送用コンテナは、
搬送台と、
前記搬送台の上にトレー収容空間を形成するように、前記搬送台の上に解体自在あるいは折り畳み自在に組み立てられた側板と、
前記トレー収容空間の内部に段積み可能に積層され、略水平に位置する薄板を、少なくとも1枚収容可能なトレーと、
を有する薄板搬送用コンテナであって、
前記トレーが、
底板と、
前記底板の周囲を囲むように立設される固定枠部材と、
前記固定枠部材の長手方向に沿って複数の位置で前記固定枠部材および/または前記底板に対して着脱自在に固定される第1移動枠部材と、
前記固定枠部材の長手方向と略垂直な幅方向に沿って複数の位置で前記固定枠部材および/または前記底板に対して着脱自在に固定される第2移動枠部材と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る薄板搬送用コンテナでは、前記第1移動枠部材および前記第2移動枠部材が、それぞれ前記固定枠部材の内側に隣接して固定された状態では、前記トレーの底板の上に、前記第1移動枠部材、前記第2移動枠部材および固定枠部材で周囲が囲まれた単一の薄板収容空間が形成される。その単一の薄板収容空間の大きさは、そのトレーに収容することができる最大限の大きさである。
【0014】
また、その最大限の大きさの薄板を収容できる状態から、前記第1移動枠部材および/または前記第2移動枠部材を、前記トレーの底板に沿って移動させて固定することで、前記単一の薄板収容空間の面積を変化させることが可能であると共に、前記単一の薄板収容空間を複数の薄板収容空間に分割することが可能である。
【0015】
したがって、本発明に係る薄板搬送用コンテナでは、薄板の種類毎にトレーおよびコンテナの大きさを変える必要が無く、複数種類の大きさの薄板でも単一のコンテナで搬送することが可能であり、コンテナの共用化を図り、コンテナ保管のためのスペースの無駄を削減し、搬送作業効率に優れた薄板搬送用コンテナを提供することができる。
【0016】
また、本発明に係る薄板搬送用コンテナでは、コンテナの内部に積み重ねられるトレーの内部に、薄板を横置き(略水平)に配置してあるので、比較的に大きな薄板でも、撓ませることなく収容することができる。また、コンテナの内部に直接薄板を配置するのではなく、トレーの内部に薄板を収容するため、薄板が破損するおそれも少ない。
【0017】
また、本発明の薄板搬送用コンテナでは、コンテナの側板が搬送台に対して解体自在あるいは折り畳み自在に組み立てられていることから、コンテナの内部から、積み重ねられたトレーの出し入れを行う作業が容易である。
【0018】
特に、大型のPDP(プラズマディスプレイパネル)用ガラスパネル、あるいは大型の液晶パネル用ガラスパネルは、割れやすく、高価であり、しかも重量が大きく、持ち上げることが困難である。本発明のコンテナは、このような複数のガラスパネルを安全且つ効率的に搬送する用途に適している。
【0019】
さらに本発明では、トレーの上方開口部が開いた状態でトレーを積み重ねることができるので、トレーから薄板の出し入れ作業も容易である。しかも、トレーを積み重ねても、積み重ねられた上下のトレーの枠部材相互が接触するので、トレーの内部に収容してある薄板が破損することもない。
【0020】
本発明において、好ましくは、前記トレーにおける前記薄板収容空間内には、複数の薄板が積層して収容される。薄板とトレーとの間、あるいは薄板相互の間には、緩衝シートを配置してもよい。緩衝シートとしては、特に限定されないが、たとえば段ボールプラスチックなどが例示される。各トレーの各薄板収容空間内に一枚の薄板を収容する場合には、薄板同士が接触しないと言う利点があり、各トレーの各薄板収容空間内に複数枚の薄板を積層して収容する場合には、搬送効率が上がるという利点がある。
【0021】
好ましくは、前記固定枠部材の内側面、前記第1および第2移動枠部材の両側面には、緩衝シートが具備してある。緩衝シートを具備させることで、薄板の側端部が直接に枠部材に当接することはなくなり、緩衝作用が向上する。
【0022】
好ましくは、前記トレーの固定枠部材の内側には、長手方向に沿って複数の位置に第1側面取付孔が形成してあり、いずれかの前記第1側面取付孔に対して、前記第1移動枠部材の長手方向両端部に具備してある固定用ピンが着脱自在に係合し、
前記第1移動枠部材の側面には、長手方向に沿って複数の位置に第2側面取付孔が形成してあり、いずれかの前記第2側面取付孔に対して、前記第2移動枠部材の長手方向一方の第1端部に具備してある固定用ピンが着脱自在に係合し、
前記トレーの底板には、複数の底面取付孔が形成してあり、いずれかの前記底面取付孔に対して、前記第2移動枠部材の長手方向他方の第2端部の底部に具備してある固定用ピンが着脱自在に係合する。
【0023】
このような構成にすることで、第1および第2移動枠部材を固定枠部材および/または前記底板に対して着脱自在に固定する作業が容易になる。
【0024】
好ましくは、前記トレーにおける前記固定枠部材の底面および頂面には、前記トレーを段積みする際の位置決めとなる位置決め手段が具備してある。位置決め手段としては、枠部材の外周の一部に装着してある上方突起、枠部材の上部表面に形成してある凹凸と枠部材の下部表面に形成してある凸凹との嵌合などが例示される。
【0025】
位置決め手段を各トレーに形成することで、トレーを積み重ねた場合に、上下のトレーが位置決めされ、コンテナの搬送などの振動などによっても、コンテナの内部でトレーが位置ズレすることがないため好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る薄板搬送用コンテナの分解斜視図、
図2(A)は図1に示すトレーの平面図、図2(B)は図2に示すIIB−IIB線に沿う断面図、
図3は図2に示すトレーから移動枠部材を取り除いたトレーのみの平面図、
図4は図3のIV−IV線に沿う断面図、
図5は図2(A)に示すV−V線に沿う部分断面図、
図6(A)は図2(A)に示す第1移動枠部材の平面図、図6(B)は図6(A)に示す第1移動枠部材の縦断面図、図6(C)は図6(B)に示すVIC−VICに示す側面図、
図7(A)は図2(A)に示す第2移動枠部材の平面図、図7(B)は図7(A)に示す第1移動枠部材の縦断面図、図7(C)は図7(B)に示す部材の右側面図、図7(D)は図7(B)に示す部材の左側面図、
図8(A)は図1に示すトレーの他の使用態様を示す平面図、図8(B)は図8(A)に示すVIIIB−VIIIB線に沿う断面図、
図9(A)は図1に示すトレーのさらに他の使用態様を示す平面図、図9(B)は図9(A)に示すIXB−IXB線に沿う断面図、
図10(A)は図1に示すトレーのさらに他の使用態様を示す平面図、図10(B)は図10(A)に示すXB−XB線に沿う断面図、図10(C)は図10(A)に示すXC−XC線に沿う断面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る薄板搬送用コンテナ2は、搬送台としてのパレット4を有する。パレット4には、フォークリフトの爪部が差し込まれるリフト用孔5が形成してある。パレット4は、たとえばステンレスなどの金属で構成してあるが、それに限定されず、発泡プラスチックとプラスチック製ダンボールとの組合せなど、金属以外の材質で構成することも可能である。
【0028】
パレット4の上には、内部にトレー収容空間を形成するように、合計4枚の側板6および8が、解体自在あるいは折り畳み自在に組み立てられる。これらの側板6,8は、たとえば金属あるいはプラスチックなどで構成される。これら側板の内、一枚または二枚の側板8を、上下に分割可能なパネル10および12で構成しても良い。
【0029】
側板6および8の内側で、パレット4の上面には、コンテナ用底板14が設置される。側板6および8と底板14とは、たとえば金属あるいはプラスチックなどで構成される。
【0030】
コンテナ2の内部には、パレット4の上に設けられた側板6,8で囲まれたトレー収容空間が形成され、その上部開口部には、蓋16が着脱自在に装着される。蓋16は、たとえば金属あるいはプラスチックなどで構成される。
【0031】
コンテナ2の内部のトレー収容空間には、底板14の上に形成してあるトレー受け用凸部15の上に、複数のトレー30が積み重ねられて収容される。トレー30は、その上部開口部が空いている状態で積み重ねられ、最も上に位置するトレー30の上部開口部のみが、トレー用蓋20により覆われる。積み重ねられたトレー30は、トレー用蓋20の上から、ベルト22が掛け渡され、ベルトの両端が底板14に対して取り付けられることで、コンテナ2の内部でトレー30の移動を防止している。
【0032】
トレー30は、たとえば図2(A)、図2(B)および図3〜図5に示すように、長方形のトレー用底板36の4つの辺位置に位置して周囲を囲むように配置される固定枠部材32を有する。固定枠部材32は、図5に示すように、トレー用底板36に対して固定され、特に限定されないが、たとえばアルミニウムなどの金属製中空パイプで構成され、横断面が長方形状である。
【0033】
本実施形態では、各トレー30には、固定枠部材32の内側に、複数の第1移動枠部材70および第2移動枠部材80が着脱自在に固定される。第1移動枠部材70および第2移動枠部材80の詳細な構造については後述する。
【0034】
トレー用底板36の上で固定枠部材32と第1移動枠部材70および第2移動枠部材80とにより囲まれた空間が、後述する薄板収容空間33となる。底板36の底部には、補強部材34が掛け渡してある。補強部材34は、底板36または枠部材32に接合してある。補強部材34は、たとえばアルミニウムなどの金属製棒材あるいは中空パイプで構成され、横断面が長方形状である。
【0035】
図5に示すように、補強部材34の上には、底板36が固定してある。底板36は、たとえばアルミニウム製の金属板などで構成される。図2(B)に示すように、底板36の上には、薄板収容空間33が形成され、そこに、複数枚の薄板50が積み重ねられて積層される。すなわち、薄板50は、縦置きではなく、横置き(略水平方向X,Yに設置)にされる。1つのトレー30の薄板収容空間33に収容される薄板50の数は、特に限定されないが、好ましくは5〜10枚である。
【0036】
積み重ねられた薄板50の積層方向Zの上下には、緩衝シートが設置される。緩衝シートは、たとえば段ボールプラスチック材などで構成され、その厚みは、たとえば3〜5mmである。なお、積み重ねられた薄板50の間にも、緩衝シートを積層させても良い。
【0037】
図2(B)に示すように、薄板収容空間33の深さは、必要な枚数の薄板50および緩衝シートを積み重ねて積層しても、最も上に位置する緩衝シートが、トレー30の上部開口部60から、はみ出さないように決定される。すなわち、最も上に位置する緩衝シートが、枠部材32の頭頂面から上にはみ出さないように、固定枠部材32および移動枠部材70および80のZ軸方向高さ寸法が決定される。
【0038】
図2(A)および図5に示すように、固定用枠部材32の頂面には、周方向に沿って4カ所に位置決め孔42が形成してある。各位置決め孔42には、Z軸方向に積み重ねられる他のトレー30の底板36の裏面に具備してある補強部材34の所定位置に装着してある位置決めピン40が着脱自在に挿入される。位置決めピン40および位置決め孔42が、トレー30を段積みする際の位置決め手段となる。
【0039】
図3および図4に示すように、トレー30の底板36には、複数の底面取付孔38が形成してある。これらの底面取付孔38の形成数や形成パターンは、特に限定されない。トレー30の固定枠部材32の内側面には、その長手方向Xに沿って、複数の位置に、第1側面取付孔39が形成してある。これらの取付孔38および39には、後述する第1移動枠部材70および第2移動枠部材80に具備してあるピン74または84が着脱自在に係合する。
【0040】
図6(A)〜図6(C)に示す第1移動枠部材70は、図2に示す使用例では、底板36の長手方向Xの両端部に位置する固定枠部材32の内側近傍に、底板36の長手方向Xに隣接して配置される。第1移動枠部材70の長さは、トレー30における幅方向Yの両側に位置する固定枠部材32の内側面同士の距離よりも僅かに短い程度である。
【0041】
図6(A)〜図6(C)に示すように、第1移動枠部材70は、たとえばステンレスなどで構成されたアングル材で構成してある。各第1移動枠部材70の両端部には、ピン進退機構72が装着してある。ピン進退機構72の把手75を操作することで、機構72に装着してあるピン74が、部材70の各端面70a,70bから突出移動または後退移動するようになっている。
【0042】
ピン74の先端を部材70の各端面70a,70bに対して面一に引き込ませた状態では、部材70は、図2(B)に示す底板36の上で底板36の長手方向に沿って自由に移動が可能である。ピン74の先端を部材70の各端面70a,70bから突出させることで、各ピン74は、図3および図4に示す固定枠部材32の内側面に形成してあるいずれかの側面取付孔39に入り込み、第1移動枠部材70の両端部は、固定枠部材32に対して着脱自在に固定される。
【0043】
図6(A)および図6(B)に示すように、第1移動枠部材70の両側面には、枠部材70の長手方向に沿って複数の位置に、第2側面取付孔76が形成してある。また、図6(C)に示すように、第1移動枠部材70の両側面には、緩衝シート100が接着してある。緩衝シート100は、たとえばゴムシートなどで構成される。この緩衝シート100にも、側面取付孔76が対応する位置に形成してある。
【0044】
図7(A)〜図7(D)に示す第2移動枠部材80は、図2に示す使用例では、底板36の幅方向Yの一方の端部に位置する固定枠部材32の内側近傍に、底板36の幅方向Yに隣接して配置される。第2移動枠部材80の長さは、特に限定されないが、本実施形態では、第1移動枠部材の長さの半分以下程度である。
【0045】
図7(A)〜図7(D)に示すように、第2移動枠部材80は、第1移動枠部材70と同様な材質であり、同様な断面形状を有する。各第2移動枠部材80の一方の端部には、第1移動枠部材70に装着してあるものと同様なピン進退機構72が装着してある。ピン進退機構72の把手75を操作することで、機構72に装着してあるピン74が、部材80の一方の端面80aから突出移動または後退移動するようになっている。
【0046】
また、部材80の他方の端面80bの近くに位置する部材80の底面80cには、他の種類のピン進退機構82が装着してある。ピン進退機構82には、他の端面80b方向に向けて突出移動可能なピン84が装着してあり、ピン進退機構82の把手85を操作することで、機構82に装着してあるピン84が、機構82の端面83から突出移動または後退移動するようになっている。
【0047】
機構82に装着してあるピン84を引き込ませた状態では、部材80の底面80cから突出している機構82の全体が、図2(A)に示すトレー30の底板36に形成してある底面取付孔38のいずれかに入り込むことが可能になっている。その状態で、図7に示す把手85を操作してピン84を機構82の端面から突出移動させれば、機構82が底面取付孔38から抜けなくなり、部材80の他方の端部がトレー30の底板36に対して着脱自在に固定される。
【0048】
部材80の一方の端部に具備してある機構70のピン74の先端は、部材80の一方の端面80aから突出させることで、図6に示す第1移動枠部材70の内側面に形成してあるいずれかの第2側面取付孔76に入り込み、第2移動枠部材80の一方の端部は、第1移動枠部材70に対して着脱自在に固定される。
【0049】
図7(C)および図7(D)に示すように、第2移動枠部材80の両側面には、第1移動枠部材70の両側面に具備してある物と同様な緩衝シート100が接着してある。
【0050】
本実施形態に係る薄板搬送用コンテナ2の内部に段積みして収容される各トレー30では、次のような作用効果を奏する。すなわち、図2に示すように、4つの第1移動枠部材70が、二つづつ、底板36の長手方向Xに沿って反対側に位置する固定枠部材32の内側に隣接して固定され、底板36における幅方向Yの片側位置で、第2移動枠部材80が、固定枠部材32の内側に隣接して固定された状態では、トレー30の底板36の上に、第1移動枠部材70、第2移動枠部材80および固定枠部材32で周囲が囲まれた単一の長方形状の薄板収容空間33が形成される。その単一の薄板収容空間33の大きさは、そのトレー30に収容することができる最大限の大きさである。
【0051】
そのトレー30に形成された単一の薄板収容空間33には、図2(B)に示すように、最大限の大きさの薄板50が積層して収容される。薄板50の周囲縁部は、固定枠部材32および移動枠部材70および80の側面に具備してある緩衝シート100に当接するので、薄板50の周囲縁部を破損させることなく保持することができる。
【0052】
図2に示すように最大限の大きさの薄板50を収容できる状態から、第1移動枠部材70および/または第2移動枠部材80を、たとえば図8(A)および図8(B)に示すように、トレー30の底板に沿って移動させて固定することで、単一の薄板収容空間33の面積を変化させることが可能である。図8(A)および図8(B)に示す場合には、図2に比較して小面積の薄板50aを、薄板収容空間33内に積層して収容することができる。
【0053】
また、図2に示すように最大限の大きさの薄板50を収容できる状態から、第1移動枠部材70および/または第2移動枠部材80を、たとえば図9(A)および図9(B)に示すように、トレー30の底板に沿って移動させて固定することで、分割された二つの薄板収容空間33を形成することも可能である。図9(A)および図9(B)に示す場合には、図2に比較して小面積の薄板50bを、二列の各薄板収容空間33内に積層して収容することができる。
【0054】
さらに、図2に示すように最大限の大きさの薄板50を収容できる状態から、第1移動枠部材70および/または第2移動枠部材80を、たとえば図10(A)〜図10(C)に示すように、トレー30の底板に沿って移動させて固定することで、分割された三つの薄板収容空間33を形成することも可能である。図10(A)〜図10(C)に示す場合には、図2に比較して小面積の薄板50cを、三列の各薄板収容空間33内に積層して収容することができる。
【0055】
したがって、本実施形態に係る薄板搬送用コンテナ2では、薄板の種類毎にトレー30およびコンテナ2の大きさを変える必要が無く、複数種類の大きさの薄板50,50a〜50cでも単一のコンテナ2で搬送することが可能であり、コンテナ2の共用化を図り、コンテナ保管のためのスペースの無駄を削減し、搬送作業効率に優れた薄板搬送用コンテナ2を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る薄板搬送用コンテナ2では、コンテナ2の内部に積み重ねられるトレー30の内部に、薄板50を横置き(略水平)に配置してあるので、比較的に大きな薄板50でも、撓ませることなく収容することができる。また、コンテナ2の内部に直接薄板50を配置するのではなく、トレー30の内部に薄板50を収容するため、薄板50が破損するおそれも少ない。
【0057】
また、本実施形態の薄板搬送用コンテナ2では、コンテナ2の側板6,8がパレット4に対して解体自在あるいは折り畳み自在に組み立てられていることから、コンテナ2の内部から、積み重ねられたトレー30の出し入れを行う作業が容易である。
【0058】
特に、大型のPDP(プラズマディスプレイパネル)用ガラスパネル、あるいは大型の液晶パネル用ガラスパネルは、割れやすく、高価であり、しかも重量が大きく、持ち上げることが困難である。本実施形態のコンテナ2は、このような複数のガラスパネルを安全且つ効率的に搬送する用途に適している。
【0059】
さらに本実施形態では、トレー30の上方開口部60が開いた状態でトレー30を積み重ねることができるので、トレー30から薄板50の出し入れ作業も容易である。しかも、トレー30を積み重ねても、積み重ねられた上下のトレー30の枠部材相互が接触するので、トレー30の内部に収容してある薄板50が破損することもない。
【0060】
また本実施形態では、移動枠部材70および80に装着してあるピン74および84の出し入れを操作するのみで、トレー30の底板36の上で移動枠部材70および80の固定位置をずらすことができる。したがって、移動枠部材70および80を固定枠部材32および/または底板36に対して着脱自在に固定する作業が容易になり、収容すべき薄板の大きさに合わせて薄板収容空間33の大きさを変化させる作業が容易である。
【0061】
さらに、本実施形態では、トレー30を積み重ねた場合に、上下のトレー30が位置決めされ、コンテナ2の搬送などの振動などによっても、コンテナ2の内部でトレー30が位置ズレすることがない。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る薄板搬送用コンテナの分解斜視図である。
【図2】図2(A)は図1に示すトレーの平面図、図2(B)は図2に示すIIB−IIB線に沿う断面図である。
【図3】図3は図2に示すトレーから移動枠部材を取り除いたトレーのみの平面図である。
【図4】図4は図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図5は図2(A)に示すV−V線に沿う部分断面図である。
【図6】図6(A)は図2(A)に示す第1移動枠部材の平面図、図6(B)は図6(A)に示す第1移動枠部材の縦断面図、図6(C)は図6(B)に示すVIC−VICに示す側面図である。
【図7】図7(A)は図2(A)に示す第2移動枠部材の平面図、図7(B)は図7(A)に示す第1移動枠部材の縦断面図、図7(C)は図7(B)に示す部材の右側面図、図7(D)は図7(B)に示す部材の左側面図である。
【図8】図8(A)は図1に示すトレーの他の使用態様を示す平面図、図8(B)は図8(A)に示すVIIIB−VIIIB線に沿う断面図である。
【図9】図9(A)は図1に示すトレーのさらに他の使用態様を示す平面図、図9(B)は図9(A)に示すIXB−IXB線に沿う断面図である。
【図10】図10(A)は図1に示すトレーのさらに他の使用態様を示す平面図、図10(B)は図10(A)に示すXB−XB線に沿う断面図、図10(C)は図10(A)に示すXC−XC線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0064】
2… 薄板搬送用コンテナ
4… パレット(搬送台)
6,8… 側板
14… コンテナ用底板
16… 蓋
30… トレー
32… 固定枠部材
33… 薄板収容空間
36… トレー用底板
38… 底面取付孔
39… 第1側面取付孔
40… 位置決めピン
42… 位置決め孔
50,50a,50b,50c… 薄板
60… 上部開口部
70… 第1移動枠部材
72… ピン進退機構
74… ピン
76… 第2側面取付孔
80… 第2移動枠部材
82… ピン進退機構
84… ピン
100… 緩衝シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送台と、
前記搬送台の上にトレー収容空間を形成するように、前記搬送台の上に解体自在あるいは折り畳み自在に組み立てられた側板と、
前記トレー収容空間の内部に段積み可能に積層され、略水平に位置する薄板を、少なくとも1枚収容可能なトレーと、
を有する薄板搬送用コンテナであって、
前記トレーが、
底板と、
前記底板の周囲を囲むように立設される固定枠部材と、
前記固定枠部材の長手方向に沿って複数の位置で前記固定枠部材および/または前記底板に対して着脱自在に固定される第1移動枠部材と、
前記固定枠部材の長手方向と略垂直な幅方向に沿って複数の位置で前記固定枠部材および/または前記底板に対して着脱自在に固定される第2移動枠部材と、を有することを特徴とする薄板搬送用コンテナ。
【請求項2】
前記第1移動枠部材および前記第2移動枠部材が、それぞれ前記固定枠部材の内側に隣接して固定された状態では、前記トレーの底板の上に、前記第1移動枠部材、前記第2移動枠部材および固定枠部材で周囲が囲まれた単一の薄板収容空間が形成され、
前記第1移動枠部材および/または前記第2移動枠部材を、前記トレーの底板に沿って移動させて固定することで、前記単一の薄板収容空間の面積を変化させることが可能であると共に、前記単一の薄板収容空間を複数の薄板収容空間に分割することが可能であることを特徴とする薄板搬送用コンテナ。
【請求項3】
前記薄板収容空間内には、複数の薄板が積層して収容されることを特徴とする請求項2に記載の薄板搬送用コンテナ。
【請求項4】
前記固定枠部材の内側面、前記第1および第2移動枠部材の両側面には、緩衝シートが具備してある請求項1〜3のいずれかに記載の薄板搬送用コンテナ。
【請求項5】
前記トレーの固定枠部材の内側には、長手方向に沿って複数の位置に第1側面取付孔が形成してあり、いずれかの前記第1側面取付孔に対して、前記第1移動枠部材の長手方向両端部に具備してある固定用ピンが着脱自在に係合し、
前記第1移動枠部材の側面には、長手方向に沿って複数の位置に第2側面取付孔が形成してあり、いずれかの前記第2側面取付孔に対して、前記第2移動枠部材の長手方向一方の第1端部に具備してある固定用ピンが着脱自在に係合し、
前記トレーの底板には、複数の底面取付孔が形成してあり、いずれかの前記底面取付孔に対して、前記第2移動枠部材の長手方向他方の第2端部の底部に具備してある固定用ピンが着脱自在に係合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄板搬送用コンテナ。
【請求項6】
前記トレーにおける前記固定枠部材の底面および頂面には、前記トレーを段積みする際の位置決めとなる位置決め手段が具備してある請求項1〜5のいずれかに記載の薄板搬送用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−111328(P2006−111328A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302584(P2004−302584)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】