薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置
【課題】製造、修理、保守時等において短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費等の低減を図ることができる薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置を提供すること。
【解決手段】薄板金属の孔明け装置1は、油圧ラム等により昇降される上型ホルダ2と、上型ホルダ2に固着された押圧板3と、上型ホルダ2に弾性部材4を介して吊り下げられている押圧パッド5と、押圧パッド5にボルト6を介して固着されたパンチユニットとしてのパンチホルダ7と、孔明け加工が施される薄板金属8が載置される下型9と、下型9に埋設されたダイス10とを具備している。
【解決手段】薄板金属の孔明け装置1は、油圧ラム等により昇降される上型ホルダ2と、上型ホルダ2に固着された押圧板3と、上型ホルダ2に弾性部材4を介して吊り下げられている押圧パッド5と、押圧パッド5にボルト6を介して固着されたパンチユニットとしてのパンチホルダ7と、孔明け加工が施される薄板金属8が載置される下型9と、下型9に埋設されたダイス10とを具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイスの孔径よりも小さい外径を有した円柱状のパンチ本体とこのパンチ本体の一端面に一体的に形成された円錐形の突起とを有したパンチを薄板金属に押し付け、パンチの突起により薄板金属に先行して突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチ本体をダイスの円孔に、当該ダイスの円孔の一端から挿入することによりパンチ本体と協同してダイスの円孔の一端を規定するダイスの円筒状内面の円環状縁の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようにした孔明け装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されている孔明け装置において、パンチユニット(パンチホルダ)は、押圧パッドにボルト等を介して固着されたケースと、ケースに上下方向に摺動自在に装着されたスライダと、スライダ内に上下方向に摺動自在に装着されたパンチと、スライダ内に配されていると共にパンチを介してスライダを上方向に弾性的に付勢してパンチ及びスライダを初期位置に復帰させるコイルばねと、パンチの上下方向の移動を案内するようにケースに設けられた滑り案内部材とを具備しているために、パンチユニットの組み立てにおいては、スライダの凹所にパンチ及びコイルばねを挿着し、その後、スライダ、パンチ及びコイルばねの組み合わせ体をケース内に挿着し、又は、スライダの凹所にパンチを挿着する一方、ケース内にコイルばねを挿着し、その後、スライダ及びパンチの組み合わせ体をケース及びコイルばねの組み合わせ体においてケース内に挿着するために、製造、修理、保守時に時間の掛かる煩雑な組み立て作業を必要とする。
【0005】
また、斯かる孔明け装置におけるパンチユニットでは、パンチに加えてスライダを用いているために、部品個数の増加による製造原価及び保守経費の増加を招来している。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、製造、修理、保守時等において短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費等の低減を図ることができる薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による薄板金属の孔明け用のパンチユニットは、中空のケースと、このケースの中空部に軸方向に移動自在に配されたパンチと、ケースの中空部に配されていると共にパンチを軸方向において初期位置に向かって弾性的に押圧する弾性部材と具備しており、ケースは、小径内周面と、小径内周面よりも大径の大径内周面と、小径内周面と大径内周面との間の環状の段部面とを具備しており、中空部は、小径内周面と大径内周面とにより規定されており、パンチは、突起と、この突起が軸方向の一方の端面に一体的に設けられていると共に小径外周面でケースの小径内周面に軸方向に移動自在に接触する小径パンチ部と、この小径パンチ部の軸方向の他方の端面に軸方向の一方の端面で一体的に設けられていると共に小径パンチ部よりも大径であって大径外周面でケースの大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径パンチ部とを具備しており、小径パンチ部においてケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在になっている一方、大径パンチ部においてケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出しており、突起は、ケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在な小径パンチ部の軸方向の一方の端面に一体的に形成されており、弾性部材は、その一端でケースの段部面に接触していると共にその他端ではパンチの小径外周面と大径外周面との間の環状の段部面に接触している。
【0008】
斯かる薄板金属の孔明け用のパンチユニットによれば、パンチの小径パンチ部の小径外周面がケースの小径内周面に軸方向に移動自在に接触すると共にパンチの大径パンチ部の大径外周面がケースの大径内周面に軸方向に移動自在に接触しているために、これらケースの小径内周面及び大径内周面に案内されてパンチが軸方向に移動自在になっている結果、パンチとケースとの間にスライダを介在させなくても、パンチを軸方向に移動させることができる上に、弾性部材のケースの中空部への挿着と共にパンチをケースの中空部へ挿着することによりパンチユニットを組み立てることができ、而して、製造、修理、保守時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費の低減を図ることができる。
【0009】
本発明において、ケースの大径の大径内周面は、当該ケースの段部面から当該ケースの軸方向の他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチの大径パンチ部は、当該パンチの段部面から当該パンチの他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチは、ケースの軸方向の他方の端面を介してケースの中空部から抜き出せるようになっていてもよく、また、ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端面に固着されていると共に貫通孔を有した環状部材とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び貫通孔を規定する環状部材の内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に環状部材の貫通孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の環状部材への接触で禁止されるようになっていてもよく、この場合、環状部材は、ケース本体の軸方向の他方の端面に、弾性部材及びパンチのケースの中空部への挿着後、螺合、嵌着、ねじ止め等により取り外し自在に固着されていても、これに代えて、弾性部材及びパンチのケースの中空部への挿着後、溶接、接着等により一体的に固着されていてもよい。
【0010】
また、本発明において、ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端部に形成された絞り部とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び絞り部の内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に絞り部の内周面で規定される孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の絞り部への接触で禁止されるようになっていてもよい。
【0011】
ケースは、通常、金属製であるが、より原価低減を図るためには、ポリアセタール等の摺動性を有する樹脂材からなっていてもよく、斯かる樹脂材からなるケースであると、軽量化をも図り得るので好ましい。
【0012】
突起は、その底面で小径パンチ部の一方の端面に一体的に設けられた錐形状を有していても、これに代えて、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及び円形頂面をもって一体的に設けられた円柱状部と、この円柱状部の円形頂面に一体的に設けられた錐状部とを具備していてもよく、更には、これらに代えて、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及びこの円形底面よりも小径の円形頂面を有して一体的に設けられた截頭円錐部と、この截頭円錐部の円形頂面に一体的に設けられている錐状部とを具備していてもよい。
【0013】
錐形状の突起及び錐状部は、円錐状であっても、三角錐状、四角錐状等の多角錐状であってもよい。
【0014】
本発明の薄板金属の孔明け用のパンチユニットは、突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチの小径パンチ部をダイスの孔に、当該ダイスの孔の一端から挿入することによりダイスの孔の一端を規定するダイスの筒状内面の環状縁の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっている薄板金属の孔明け装置に用いるとよい。
【0015】
本発明のパンチユニットにより孔明けされる薄板金属は、良好な結果を得るには、その板厚が0.4mmから2.0mm程度のものであるが、より良好な結果を得るには、その板厚が0.6mmから1.6mm程度のものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造、修理、保守時等において短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費等の低減を図ることができる薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の好ましい例の断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の底面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例のパンチの一部拡大説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例を具備した薄板金属の孔明け装置の一例の断面説明図である。
【図5】図5は、図4に示す例の動作説明図である。
【図6】図6は、図4に示す例の動作説明図である。
【図7】図7は、図4に示す例の動作説明図である。
【図8】図8は、図4に示す例の動作説明図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい他の例の断面説明図である。
【図10】図10は、本発明の好ましい更に他の例の断面説明図である。
【図11】図11は、本発明の好ましいパンチの他の例の一部拡大説明図である。
【図12】図12は、本発明の好ましいパンチの更に他の例の一部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0019】
図1から図4において、本例の薄板金属の孔明け装置1は、油圧ラム等により昇降される上型ホルダ2と、上型ホルダ2に固着された押圧板3と、上型ホルダ2に弾性部材4を介して吊り下げられている押圧パッド5と、押圧パッド5にボルト6を介して固着されたパンチユニットとしてのパンチホルダ7と、孔明け加工が施される薄板金属8が載置される下型9と、下型9に埋設されたダイス10とを具備している。
【0020】
パンチホルダ7は、押圧パッド5にボルト6を介して固着された円筒状の中空のケース11と、ケース11の中空部12に軸方向である上下方向Hに移動自在に配されたパンチ13と、ケース11の中空部12に配されていると共にパンチ13を上下方向Hにおいて初期位置に向かって弾性的に押圧して当該パンチ13を初期位置(図4に示す位置)に復帰させるコイルばねからなる弾性部材14とを具備している。
【0021】
ケース11は、円筒状の小径内周面21、小径内周面21よりも大径の円筒状の大径内周面22、小径内周面21と大径内周面22との間の円環状の段部面23、円筒状の外周面24を夫々有したケース本体25と、外周面24の上下方向Hの一方の端部に一体的に形成された円環状の鍔部26と、ケース本体25及び鍔部26に形成された切り欠き部27とを具備しており、押圧パッド5に螺着されたボルト6の頭部に切り欠き部27においてケース本体25が係合して押圧パッド5に固着されており、小径内周面21は、ケース11の上下方向Hの一方の円環状の端面28から段部面23までに亘って同径に形成されており、大径内周面22も、段部面23からケース11の上下方向Hの他方の円環状の端面29までに亘って同径に形成されており、端面28及び端面29の夫々でケース11の外部に開口した中空部12は、小径内周面21と大径内周面22とにより規定されている。
【0022】
パンチ13は、円錐形状の突起31と、突起31がその円形の底面32で上下方向Hの一方の円形の端面33に一体的に設けられていると共に底面32と同心の円筒状の小径外周面34でケース11の小径内周面21に上下方向Hに移動自在に接触する小径パンチ部35と、小径パンチ部35の上下方向Hの他方の円形の端面36に上下方向Hの一方の円形の端面37で一体的に設けられていると共に小径パンチ部35よりも大径であって円筒状の大径外周面38でケース11の大径内周面22に上下方向Hに移動自在に接触する大径パンチ部39とを具備しており、小径パンチ部35においてケース11の上下方向Hの一方の端面28からケース11外に突出自在になっている一方、大径パンチ部39においてケース11の上下方向Hの他方の端面29からケース11外に突出しており、ケース11外に突出した大径パンチ部39の上下方向Hの他方の円形の端面40は、押圧板3の下面41に接触するようになっており、突起31は、ケース11の上下方向Hの一方の端面28からケース11外に突出自在な小径パンチ部35の上下方向Hの一方の端面33に一体的に形成されており、端面33は、湾曲面42を介して小径外周面34に連接されており、而して、パンチ13は、ケース11の上下方向Hの他方の端面29を介してケース11の中空部12から抜き出せるようになっている。
【0023】
小径パンチ部35を囲繞して中空部12に配された弾性部材14は、その一端51でケース11の段部面23に接触していると共にその他端52ではパンチ13の小径外周面34と大径外周面38との間の環状の段部面53に接触して、パンチ13を上下方向Hにおいて初期位置に向かって弾性的に押圧して当該パンチ13を初期位置に復帰させるようになっている。
【0024】
ダイス10は、パンチ13の小径パンチ部35が挿入される円孔61と、円孔61に連接していると共に円孔61よりも大径であってパンチ屑62(図8参照)を排出する円孔63とを有しており、円孔61は、ダイス10の円筒状内面64で規定されており、円筒状内面64の一方の円環状縁65は、円筒状内面64と円筒状内面64に直交するダイス10の一方の円環状の端面66との交差縁で規定されて直角縁となっている(図5参照)。
【0025】
以上の孔明け装置1では、上型ホルダ2の上下方向Hにおける下降と共に押圧板3、押圧パッド5及びパンチホルダ7が下降されると、下型9の上面71に載置された薄板金属8が押圧パッド5の下面72により押圧されて下型9の上面71及びダイス10の端面66と押圧パッド5の下面72及びケース11の端面28との間に挟まれて固定されると、ケース11の下降が停止される一方、弾性部材14の弾性力に抗してパンチ13が押圧板3に押されて更に下降され、パンチ13の下降で、図5に示すように突起31により薄板金属8に突き破り孔73が明けられ、突き破り孔73に挿入された突起31で薄板金属8の移動が規制された状態で図6に示すように更にパンチ13が下降されてダイス10の円孔61にパンチ13の小径パンチ部35が挿入されると、小径パンチ部35の端面33に接触した薄板金属8が当該端面33に押されて小径パンチ部35の下降と共に下降され、この下降において、小径パンチ部35の湾曲面42と円孔61の一端を規定するダイス10の円筒状内面64の円環状縁65とでその間にある薄板金属8が引っ張られて伸ばされて、その後、ダイス10の円環状縁65の周りで薄板金属8は、図7に示すように引き千切られて破断され、薄板金属8のダイス10の円環状縁65側での破断後、図8に示すようにパンチ13は上昇される一方、パンチ屑62は円孔63を通って排出され、こうして薄板金属8には貫通孔74が形成される。
【0026】
斯かる薄板金属8の孔明け用のパンチホルダ7によれば、パンチ13の小径パンチ部35の小径外周面34がケース11の小径内周面21に上下方向Hに移動自在に接触すると共にパンチ13の大径パンチ部39の大径外周面38がケース11の大径内周面22に上下方向Hに移動自在に接触しているために、これらケース11の小径内周面21及び大径内周面22に案内されてパンチ13が上下方向Hに移動自在になっている結果た、パンチ13とケース11との間にスライダを介在させなくても、パンチ13を上下方向Hに移動させることができる上に、弾性部材14のケース11の中空部12への挿着と共にパンチ13をケース11の中空部12へ挿着することによりパンチホルダ7を組み立てることができ、而して、製造、修理、保守時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費の低減を図ることができる。
【0027】
上記のパンチホルダ7では、中空部12は、ケース本体25の端面29でそのままケース11の外部に開口しているが、これに代えて、例えば図9に示すように、パンチホルダ7を形成してもよく、図9に示すパンチホルダ7におけるケース11は、ケース本体25の上下方向Hの他方の端面29に固着されていると共に円形の貫通孔81を有した環状部材82を更に具備しており、大径パンチ部39は、ケース本体25の大径内周面22に上下方向Hに移動自在に接触する大径外周面38及び弾性部材14の他端52に接触する段部面53を夫々有した大径パンチ本体部83と、大径パンチ本体部83の大径外周面38及び貫通孔81を規定する環状部材82の円環状の内周面84の夫々の径よりも小径の円筒状の外周面85を有していると共に環状部材82の貫通孔81を貫通してケース11の上下方向Hの他方の端面29からケース11外に突出した大径パンチ突出部86とを一体的に具備しており、ケース11の中空部12からのパンチ13の抜け出しを大径パンチ本体部83の環状部材82への接触で禁止するようになっており、大径パンチ突出部86は、押圧板3の下面41に接触する端面40を有しており、大径パンチ突出部86の径は、小径パンチ部35の径よりも大きくても、小さくてもよい。
【0028】
図9に示すパンチホルダ7でも、ケース本体25の端面29への環状部材82の固着前に、弾性部材14及びパンチ13をケース11の中空部12へ挿着し、その後、ケース本体25の端面29へ環状部材82を固着することにより当該パンチホルダ7を組み立てることができ、而して、製造、修理、保守時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費の低減を図ることができる。
【0029】
図9に示すパンチホルダ7では、ケース本体25の端面29に環状部材82を固着して、ケース11の中空部12からのパンチ13の抜け出しを大径パンチ本体部83の環状部材82への接触で禁止するようにしたが、これに代えて、図10に示すように、ケース本体25の上下方向Hの他方の端面29に連接して絞り部91を形成し、絞り部91の内周面92で規定される孔93を貫通して大径パンチ突出部86をケース11外に突出させ、ケース11の中空部12からのパンチ13の抜け出しを大径パンチ本体部83の絞り部91への接触で禁止するようにしてもよい。
【0030】
図10に示すパンチホルダ7でも、絞り部91の形成前に、弾性部材14及びパンチ13をケース11の中空部12へ挿着し、その後、絞り部91を形成することにより当該パンチホルダ7を組み立てることができ、而して、製造時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価の低減を図ることができる。
【0031】
ところで、上記のパンチホルダ7では、突起31を円錐形状でもって形成したが、これに代えて、図11に示すように、小径パンチ部35の一方の端面33に、当該端面33と同心に配されている円形底面95及び円形頂面96をもって一体的に設けられた円柱状部97と、円柱状部97の円形頂面96に一体的に設けられた円錐状部98とを具備して突起31を形成してもよく、更に、図12に示すように、小径パンチ部35の一方の端面33に、当該端面33と同心に配されている円形底面95及び円形底面95よりも小径の円形頂面96を有すると共に頂角θ1をもって一体的に設けられた截頭円錐部99と、截頭円錐部99の円形頂面96に一体的に設けられていると共に頂角θ1よりも大きな頂角θ2もった円錐状部98とを具備して突起31を形成してもよく、斯かる突起31のいずれも、突き破り孔73の形成後における突き破り孔73らの突起31の抜け出しを効果的に防止することができ、薄板金属8の移動を確実に規制した状態で薄板金属8の引き千切り破断を行い得る上に、特に、図12に示す突起31では、突き破り孔73を先行して形成する円錐部98が大きな頂角θ2を有しているために、そのへたりを防止でき、斯かる円錐部98のへたりを効果的に防止できる結果、截頭円錐部99のへたりをも防止でき、而して、長期の使用によっても突起31のへたりの虞をなくし得、耐久性を向上することができる。
【0032】
以上の孔明け装置1では、パンチ13を上下動させて貫通孔74を形成したが、パンチ13を斜めに移動させて薄板金属8の傾斜部に貫通孔74を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 孔明け装置
2 上型ホルダ
3 押圧板
4 弾性部材
5 押圧パッド
6 ボルト
7 パンチホルダ
8 薄板金属
9 下型
10 ダイス
11 ケース
12 中空部
13 パンチ
14 弾性部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイスの孔径よりも小さい外径を有した円柱状のパンチ本体とこのパンチ本体の一端面に一体的に形成された円錐形の突起とを有したパンチを薄板金属に押し付け、パンチの突起により薄板金属に先行して突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチ本体をダイスの円孔に、当該ダイスの円孔の一端から挿入することによりパンチ本体と協同してダイスの円孔の一端を規定するダイスの円筒状内面の円環状縁の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようにした孔明け装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で提案されている孔明け装置において、パンチユニット(パンチホルダ)は、押圧パッドにボルト等を介して固着されたケースと、ケースに上下方向に摺動自在に装着されたスライダと、スライダ内に上下方向に摺動自在に装着されたパンチと、スライダ内に配されていると共にパンチを介してスライダを上方向に弾性的に付勢してパンチ及びスライダを初期位置に復帰させるコイルばねと、パンチの上下方向の移動を案内するようにケースに設けられた滑り案内部材とを具備しているために、パンチユニットの組み立てにおいては、スライダの凹所にパンチ及びコイルばねを挿着し、その後、スライダ、パンチ及びコイルばねの組み合わせ体をケース内に挿着し、又は、スライダの凹所にパンチを挿着する一方、ケース内にコイルばねを挿着し、その後、スライダ及びパンチの組み合わせ体をケース及びコイルばねの組み合わせ体においてケース内に挿着するために、製造、修理、保守時に時間の掛かる煩雑な組み立て作業を必要とする。
【0005】
また、斯かる孔明け装置におけるパンチユニットでは、パンチに加えてスライダを用いているために、部品個数の増加による製造原価及び保守経費の増加を招来している。
【0006】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、製造、修理、保守時等において短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費等の低減を図ることができる薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による薄板金属の孔明け用のパンチユニットは、中空のケースと、このケースの中空部に軸方向に移動自在に配されたパンチと、ケースの中空部に配されていると共にパンチを軸方向において初期位置に向かって弾性的に押圧する弾性部材と具備しており、ケースは、小径内周面と、小径内周面よりも大径の大径内周面と、小径内周面と大径内周面との間の環状の段部面とを具備しており、中空部は、小径内周面と大径内周面とにより規定されており、パンチは、突起と、この突起が軸方向の一方の端面に一体的に設けられていると共に小径外周面でケースの小径内周面に軸方向に移動自在に接触する小径パンチ部と、この小径パンチ部の軸方向の他方の端面に軸方向の一方の端面で一体的に設けられていると共に小径パンチ部よりも大径であって大径外周面でケースの大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径パンチ部とを具備しており、小径パンチ部においてケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在になっている一方、大径パンチ部においてケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出しており、突起は、ケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在な小径パンチ部の軸方向の一方の端面に一体的に形成されており、弾性部材は、その一端でケースの段部面に接触していると共にその他端ではパンチの小径外周面と大径外周面との間の環状の段部面に接触している。
【0008】
斯かる薄板金属の孔明け用のパンチユニットによれば、パンチの小径パンチ部の小径外周面がケースの小径内周面に軸方向に移動自在に接触すると共にパンチの大径パンチ部の大径外周面がケースの大径内周面に軸方向に移動自在に接触しているために、これらケースの小径内周面及び大径内周面に案内されてパンチが軸方向に移動自在になっている結果、パンチとケースとの間にスライダを介在させなくても、パンチを軸方向に移動させることができる上に、弾性部材のケースの中空部への挿着と共にパンチをケースの中空部へ挿着することによりパンチユニットを組み立てることができ、而して、製造、修理、保守時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費の低減を図ることができる。
【0009】
本発明において、ケースの大径の大径内周面は、当該ケースの段部面から当該ケースの軸方向の他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチの大径パンチ部は、当該パンチの段部面から当該パンチの他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチは、ケースの軸方向の他方の端面を介してケースの中空部から抜き出せるようになっていてもよく、また、ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端面に固着されていると共に貫通孔を有した環状部材とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び貫通孔を規定する環状部材の内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に環状部材の貫通孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の環状部材への接触で禁止されるようになっていてもよく、この場合、環状部材は、ケース本体の軸方向の他方の端面に、弾性部材及びパンチのケースの中空部への挿着後、螺合、嵌着、ねじ止め等により取り外し自在に固着されていても、これに代えて、弾性部材及びパンチのケースの中空部への挿着後、溶接、接着等により一体的に固着されていてもよい。
【0010】
また、本発明において、ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端部に形成された絞り部とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び絞り部の内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に絞り部の内周面で規定される孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の絞り部への接触で禁止されるようになっていてもよい。
【0011】
ケースは、通常、金属製であるが、より原価低減を図るためには、ポリアセタール等の摺動性を有する樹脂材からなっていてもよく、斯かる樹脂材からなるケースであると、軽量化をも図り得るので好ましい。
【0012】
突起は、その底面で小径パンチ部の一方の端面に一体的に設けられた錐形状を有していても、これに代えて、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及び円形頂面をもって一体的に設けられた円柱状部と、この円柱状部の円形頂面に一体的に設けられた錐状部とを具備していてもよく、更には、これらに代えて、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及びこの円形底面よりも小径の円形頂面を有して一体的に設けられた截頭円錐部と、この截頭円錐部の円形頂面に一体的に設けられている錐状部とを具備していてもよい。
【0013】
錐形状の突起及び錐状部は、円錐状であっても、三角錐状、四角錐状等の多角錐状であってもよい。
【0014】
本発明の薄板金属の孔明け用のパンチユニットは、突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチの小径パンチ部をダイスの孔に、当該ダイスの孔の一端から挿入することによりダイスの孔の一端を規定するダイスの筒状内面の環状縁の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっている薄板金属の孔明け装置に用いるとよい。
【0015】
本発明のパンチユニットにより孔明けされる薄板金属は、良好な結果を得るには、その板厚が0.4mmから2.0mm程度のものであるが、より良好な結果を得るには、その板厚が0.6mmから1.6mm程度のものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造、修理、保守時等において短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費等の低減を図ることができる薄板金属の孔明け用のパンチユニット及びこのパンチユニットを具備した薄板金属の孔明け装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の好ましい例の断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す例の底面説明図である。
【図3】図3は、図1に示す例のパンチの一部拡大説明図である。
【図4】図4は、図1に示す例を具備した薄板金属の孔明け装置の一例の断面説明図である。
【図5】図5は、図4に示す例の動作説明図である。
【図6】図6は、図4に示す例の動作説明図である。
【図7】図7は、図4に示す例の動作説明図である。
【図8】図8は、図4に示す例の動作説明図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい他の例の断面説明図である。
【図10】図10は、本発明の好ましい更に他の例の断面説明図である。
【図11】図11は、本発明の好ましいパンチの他の例の一部拡大説明図である。
【図12】図12は、本発明の好ましいパンチの更に他の例の一部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0019】
図1から図4において、本例の薄板金属の孔明け装置1は、油圧ラム等により昇降される上型ホルダ2と、上型ホルダ2に固着された押圧板3と、上型ホルダ2に弾性部材4を介して吊り下げられている押圧パッド5と、押圧パッド5にボルト6を介して固着されたパンチユニットとしてのパンチホルダ7と、孔明け加工が施される薄板金属8が載置される下型9と、下型9に埋設されたダイス10とを具備している。
【0020】
パンチホルダ7は、押圧パッド5にボルト6を介して固着された円筒状の中空のケース11と、ケース11の中空部12に軸方向である上下方向Hに移動自在に配されたパンチ13と、ケース11の中空部12に配されていると共にパンチ13を上下方向Hにおいて初期位置に向かって弾性的に押圧して当該パンチ13を初期位置(図4に示す位置)に復帰させるコイルばねからなる弾性部材14とを具備している。
【0021】
ケース11は、円筒状の小径内周面21、小径内周面21よりも大径の円筒状の大径内周面22、小径内周面21と大径内周面22との間の円環状の段部面23、円筒状の外周面24を夫々有したケース本体25と、外周面24の上下方向Hの一方の端部に一体的に形成された円環状の鍔部26と、ケース本体25及び鍔部26に形成された切り欠き部27とを具備しており、押圧パッド5に螺着されたボルト6の頭部に切り欠き部27においてケース本体25が係合して押圧パッド5に固着されており、小径内周面21は、ケース11の上下方向Hの一方の円環状の端面28から段部面23までに亘って同径に形成されており、大径内周面22も、段部面23からケース11の上下方向Hの他方の円環状の端面29までに亘って同径に形成されており、端面28及び端面29の夫々でケース11の外部に開口した中空部12は、小径内周面21と大径内周面22とにより規定されている。
【0022】
パンチ13は、円錐形状の突起31と、突起31がその円形の底面32で上下方向Hの一方の円形の端面33に一体的に設けられていると共に底面32と同心の円筒状の小径外周面34でケース11の小径内周面21に上下方向Hに移動自在に接触する小径パンチ部35と、小径パンチ部35の上下方向Hの他方の円形の端面36に上下方向Hの一方の円形の端面37で一体的に設けられていると共に小径パンチ部35よりも大径であって円筒状の大径外周面38でケース11の大径内周面22に上下方向Hに移動自在に接触する大径パンチ部39とを具備しており、小径パンチ部35においてケース11の上下方向Hの一方の端面28からケース11外に突出自在になっている一方、大径パンチ部39においてケース11の上下方向Hの他方の端面29からケース11外に突出しており、ケース11外に突出した大径パンチ部39の上下方向Hの他方の円形の端面40は、押圧板3の下面41に接触するようになっており、突起31は、ケース11の上下方向Hの一方の端面28からケース11外に突出自在な小径パンチ部35の上下方向Hの一方の端面33に一体的に形成されており、端面33は、湾曲面42を介して小径外周面34に連接されており、而して、パンチ13は、ケース11の上下方向Hの他方の端面29を介してケース11の中空部12から抜き出せるようになっている。
【0023】
小径パンチ部35を囲繞して中空部12に配された弾性部材14は、その一端51でケース11の段部面23に接触していると共にその他端52ではパンチ13の小径外周面34と大径外周面38との間の環状の段部面53に接触して、パンチ13を上下方向Hにおいて初期位置に向かって弾性的に押圧して当該パンチ13を初期位置に復帰させるようになっている。
【0024】
ダイス10は、パンチ13の小径パンチ部35が挿入される円孔61と、円孔61に連接していると共に円孔61よりも大径であってパンチ屑62(図8参照)を排出する円孔63とを有しており、円孔61は、ダイス10の円筒状内面64で規定されており、円筒状内面64の一方の円環状縁65は、円筒状内面64と円筒状内面64に直交するダイス10の一方の円環状の端面66との交差縁で規定されて直角縁となっている(図5参照)。
【0025】
以上の孔明け装置1では、上型ホルダ2の上下方向Hにおける下降と共に押圧板3、押圧パッド5及びパンチホルダ7が下降されると、下型9の上面71に載置された薄板金属8が押圧パッド5の下面72により押圧されて下型9の上面71及びダイス10の端面66と押圧パッド5の下面72及びケース11の端面28との間に挟まれて固定されると、ケース11の下降が停止される一方、弾性部材14の弾性力に抗してパンチ13が押圧板3に押されて更に下降され、パンチ13の下降で、図5に示すように突起31により薄板金属8に突き破り孔73が明けられ、突き破り孔73に挿入された突起31で薄板金属8の移動が規制された状態で図6に示すように更にパンチ13が下降されてダイス10の円孔61にパンチ13の小径パンチ部35が挿入されると、小径パンチ部35の端面33に接触した薄板金属8が当該端面33に押されて小径パンチ部35の下降と共に下降され、この下降において、小径パンチ部35の湾曲面42と円孔61の一端を規定するダイス10の円筒状内面64の円環状縁65とでその間にある薄板金属8が引っ張られて伸ばされて、その後、ダイス10の円環状縁65の周りで薄板金属8は、図7に示すように引き千切られて破断され、薄板金属8のダイス10の円環状縁65側での破断後、図8に示すようにパンチ13は上昇される一方、パンチ屑62は円孔63を通って排出され、こうして薄板金属8には貫通孔74が形成される。
【0026】
斯かる薄板金属8の孔明け用のパンチホルダ7によれば、パンチ13の小径パンチ部35の小径外周面34がケース11の小径内周面21に上下方向Hに移動自在に接触すると共にパンチ13の大径パンチ部39の大径外周面38がケース11の大径内周面22に上下方向Hに移動自在に接触しているために、これらケース11の小径内周面21及び大径内周面22に案内されてパンチ13が上下方向Hに移動自在になっている結果た、パンチ13とケース11との間にスライダを介在させなくても、パンチ13を上下方向Hに移動させることができる上に、弾性部材14のケース11の中空部12への挿着と共にパンチ13をケース11の中空部12へ挿着することによりパンチホルダ7を組み立てることができ、而して、製造、修理、保守時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費の低減を図ることができる。
【0027】
上記のパンチホルダ7では、中空部12は、ケース本体25の端面29でそのままケース11の外部に開口しているが、これに代えて、例えば図9に示すように、パンチホルダ7を形成してもよく、図9に示すパンチホルダ7におけるケース11は、ケース本体25の上下方向Hの他方の端面29に固着されていると共に円形の貫通孔81を有した環状部材82を更に具備しており、大径パンチ部39は、ケース本体25の大径内周面22に上下方向Hに移動自在に接触する大径外周面38及び弾性部材14の他端52に接触する段部面53を夫々有した大径パンチ本体部83と、大径パンチ本体部83の大径外周面38及び貫通孔81を規定する環状部材82の円環状の内周面84の夫々の径よりも小径の円筒状の外周面85を有していると共に環状部材82の貫通孔81を貫通してケース11の上下方向Hの他方の端面29からケース11外に突出した大径パンチ突出部86とを一体的に具備しており、ケース11の中空部12からのパンチ13の抜け出しを大径パンチ本体部83の環状部材82への接触で禁止するようになっており、大径パンチ突出部86は、押圧板3の下面41に接触する端面40を有しており、大径パンチ突出部86の径は、小径パンチ部35の径よりも大きくても、小さくてもよい。
【0028】
図9に示すパンチホルダ7でも、ケース本体25の端面29への環状部材82の固着前に、弾性部材14及びパンチ13をケース11の中空部12へ挿着し、その後、ケース本体25の端面29へ環状部材82を固着することにより当該パンチホルダ7を組み立てることができ、而して、製造、修理、保守時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価及び保守経費の低減を図ることができる。
【0029】
図9に示すパンチホルダ7では、ケース本体25の端面29に環状部材82を固着して、ケース11の中空部12からのパンチ13の抜け出しを大径パンチ本体部83の環状部材82への接触で禁止するようにしたが、これに代えて、図10に示すように、ケース本体25の上下方向Hの他方の端面29に連接して絞り部91を形成し、絞り部91の内周面92で規定される孔93を貫通して大径パンチ突出部86をケース11外に突出させ、ケース11の中空部12からのパンチ13の抜け出しを大径パンチ本体部83の絞り部91への接触で禁止するようにしてもよい。
【0030】
図10に示すパンチホルダ7でも、絞り部91の形成前に、弾性部材14及びパンチ13をケース11の中空部12へ挿着し、その後、絞り部91を形成することにより当該パンチホルダ7を組み立てることができ、而して、製造時に短時間で簡単に組み立てることができ、しかも、製造原価の低減を図ることができる。
【0031】
ところで、上記のパンチホルダ7では、突起31を円錐形状でもって形成したが、これに代えて、図11に示すように、小径パンチ部35の一方の端面33に、当該端面33と同心に配されている円形底面95及び円形頂面96をもって一体的に設けられた円柱状部97と、円柱状部97の円形頂面96に一体的に設けられた円錐状部98とを具備して突起31を形成してもよく、更に、図12に示すように、小径パンチ部35の一方の端面33に、当該端面33と同心に配されている円形底面95及び円形底面95よりも小径の円形頂面96を有すると共に頂角θ1をもって一体的に設けられた截頭円錐部99と、截頭円錐部99の円形頂面96に一体的に設けられていると共に頂角θ1よりも大きな頂角θ2もった円錐状部98とを具備して突起31を形成してもよく、斯かる突起31のいずれも、突き破り孔73の形成後における突き破り孔73らの突起31の抜け出しを効果的に防止することができ、薄板金属8の移動を確実に規制した状態で薄板金属8の引き千切り破断を行い得る上に、特に、図12に示す突起31では、突き破り孔73を先行して形成する円錐部98が大きな頂角θ2を有しているために、そのへたりを防止でき、斯かる円錐部98のへたりを効果的に防止できる結果、截頭円錐部99のへたりをも防止でき、而して、長期の使用によっても突起31のへたりの虞をなくし得、耐久性を向上することができる。
【0032】
以上の孔明け装置1では、パンチ13を上下動させて貫通孔74を形成したが、パンチ13を斜めに移動させて薄板金属8の傾斜部に貫通孔74を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 孔明け装置
2 上型ホルダ
3 押圧板
4 弾性部材
5 押圧パッド
6 ボルト
7 パンチホルダ
8 薄板金属
9 下型
10 ダイス
11 ケース
12 中空部
13 パンチ
14 弾性部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のケースと、このケースの中空部に軸方向に移動自在に配されたパンチと、ケースの中空部に配されていると共にパンチを軸方向において初期位置に向かって弾性的に押圧する弾性部材と具備しており、ケースは、小径内周面と、小径内周面よりも大径の大径内周面と、小径内周面と大径内周面との間の環状の段部面とを具備しており、中空部は、小径内周面と大径内周面とにより規定されており、パンチは、突起と、この突起が軸方向の一方の端面に一体的に設けられていると共に小径外周面でケースの小径内周面に軸方向に移動自在に接触する小径パンチ部と、この小径パンチ部の軸方向の他方の端面に軸方向の一方の端面で一体的に設けられていると共に小径パンチ部よりも大径であって大径外周面でケースの大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径パンチ部とを具備しており、小径パンチ部においてケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在になっている一方、大径パンチ部においてケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出しており、突起は、ケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在な小径パンチ部の軸方向の一方の端面に一体的に形成されており、弾性部材は、その一端でケースの段部面に接触していると共にその他端ではパンチの小径外周面と大径外周面との間の環状の段部面に接触している薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項2】
ケースの大径内周面は、当該ケースの段部面から当該ケースの軸方向の他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチの大径パンチ部は、当該パンチの段部面から当該大径パンチ部の軸方向の他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチは、ケースの軸方向の他方の端面を介してケースの中空部から抜き出せるようになっている請求項1に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項3】
ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端面に固着されていると共に貫通孔を有した環状部材とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び環状部材の貫通孔を規定する内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に環状部材の貫通孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の環状部材への接触で禁止されるようになっている請求項1又は2に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項4】
ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端面に連接して形成された絞り部とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び絞り部の内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に絞り部の内周面で規定される孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の絞り部への接触で禁止されるようになっている請求項1に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項5】
ケースは、樹脂材からなっている請求項1から4のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項6】
突起は、その底面で小径パンチ部の一方の端面に一体的に設けられた錐形状を有している請求項1から5のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項7】
突起は、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及び円形頂面をもって一体的に設けられた円柱状部と、この円柱状部の円形頂面に一体的に設けられた錐状部とを具備している請求項1から5のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項8】
突起は、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及びこの円形底面よりも小径の円形頂面を有して一体的に設けられた截頭円錐部と、この截頭円錐部の円形頂面に一体的に設けられている錐状部とを具備している請求項1から5のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項9】
突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチの小径パンチ部をダイスの孔に、当該ダイスの孔の一端から挿入することによりダイスの孔の一端を規定するダイスの筒状内面の環状縁の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっている薄板金属の孔明け装置に用いる請求項1から8のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニットと、このパンチユニットのパンチが挿入される孔を有したダイスとを具備している薄板金属の孔明け装置。
【請求項1】
中空のケースと、このケースの中空部に軸方向に移動自在に配されたパンチと、ケースの中空部に配されていると共にパンチを軸方向において初期位置に向かって弾性的に押圧する弾性部材と具備しており、ケースは、小径内周面と、小径内周面よりも大径の大径内周面と、小径内周面と大径内周面との間の環状の段部面とを具備しており、中空部は、小径内周面と大径内周面とにより規定されており、パンチは、突起と、この突起が軸方向の一方の端面に一体的に設けられていると共に小径外周面でケースの小径内周面に軸方向に移動自在に接触する小径パンチ部と、この小径パンチ部の軸方向の他方の端面に軸方向の一方の端面で一体的に設けられていると共に小径パンチ部よりも大径であって大径外周面でケースの大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径パンチ部とを具備しており、小径パンチ部においてケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在になっている一方、大径パンチ部においてケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出しており、突起は、ケースの軸方向の一方の端面からケース外に突出自在な小径パンチ部の軸方向の一方の端面に一体的に形成されており、弾性部材は、その一端でケースの段部面に接触していると共にその他端ではパンチの小径外周面と大径外周面との間の環状の段部面に接触している薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項2】
ケースの大径内周面は、当該ケースの段部面から当該ケースの軸方向の他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチの大径パンチ部は、当該パンチの段部面から当該大径パンチ部の軸方向の他方の端面までに亘って同径に形成されており、パンチは、ケースの軸方向の他方の端面を介してケースの中空部から抜き出せるようになっている請求項1に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項3】
ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端面に固着されていると共に貫通孔を有した環状部材とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び環状部材の貫通孔を規定する内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に環状部材の貫通孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の環状部材への接触で禁止されるようになっている請求項1又は2に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項4】
ケースは、小径内周面及び大径内周面を具備したケース本体と、ケース本体の軸方向の他方の端面に連接して形成された絞り部とを具備しており、大径パンチ部は、ケース本体の大径内周面に軸方向に移動自在に接触する大径外周面を有した大径パンチ本体部と、この大径パンチ本体部の大径外周面及び絞り部の内周面の夫々の径よりも小径の外周面を有していると共に絞り部の内周面で規定される孔を貫通してケースの軸方向の他方の端面からケース外に突出した大径パンチ突出部とを具備しており、ケースの中空部からのパンチの抜け出しが大径パンチ本体部の絞り部への接触で禁止されるようになっている請求項1に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項5】
ケースは、樹脂材からなっている請求項1から4のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項6】
突起は、その底面で小径パンチ部の一方の端面に一体的に設けられた錐形状を有している請求項1から5のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項7】
突起は、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及び円形頂面をもって一体的に設けられた円柱状部と、この円柱状部の円形頂面に一体的に設けられた錐状部とを具備している請求項1から5のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項8】
突起は、小径パンチ部の一方の端面に、当該端面と同心に配されている円形底面及びこの円形底面よりも小径の円形頂面を有して一体的に設けられた截頭円錐部と、この截頭円錐部の円形頂面に一体的に設けられている錐状部とを具備している請求項1から5のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項9】
突起により薄板金属に突き破り孔を明け、突き破り孔に挿入された突起で薄板金属の移動を規制した状態で更にパンチの小径パンチ部をダイスの孔に、当該ダイスの孔の一端から挿入することによりダイスの孔の一端を規定するダイスの筒状内面の環状縁の周りで薄板金属を破断させて薄板金属に貫通孔を形成するようになっている薄板金属の孔明け装置に用いる請求項1から8のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニット。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の薄板金属の孔明け用のパンチユニットと、このパンチユニットのパンチが挿入される孔を有したダイスとを具備している薄板金属の孔明け装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−240076(P2012−240076A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111466(P2011−111466)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(500583726)株式会社ワンズ (9)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(500583726)株式会社ワンズ (9)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】
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