説明

薄畳用の真空断熱畳床

【課題】厚さが薄く、剛性に優れ、断熱性能にすぐれた真空断熱材を用いた薄畳用の畳床であって、畳床の周縁部を裁断することが可能でさらに畳床の周縁部に針を使用することができ、畳床から畳を製作する過程においても特別な加工方法を用いることなく、真空断熱材に穴が開き真空封止が損なわれることのない薄畳用の畳床。
【解決手段】真空断熱材と真空断熱材の側部外周に配置された裁断が可能な外周芯層を畳床の芯層に使用して、畳床の構成を畳裏側クッション層、芯層、剛性保持層、畳裏側クッション層とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋間やバリアフリー住宅に使用できる薄畳用の真空断熱畳床に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フローリングの部屋の和室化、老齢化に対応するバリアフリー住宅などにおいて、厚さが30mm未満の薄畳の需要が増加してきている。
この薄畳に従来使用されていた藁やインシュレーションボード、発泡スチロールなどからなる畳床をそのまま用いると、強度や剛性が足りないため、張力をかけた状態で畳表を貼り上げることや、敷設のために運搬することが難しいなどの問題があった。
【0003】
このような問題点を解決するために、上記材料の片面又は両面に合板などの剛性の高い材料を積層して薄畳を作成することが行われていた。
しかし、このような薄畳は感触が固いため、座り心地が悪い、歩いたときの感触に違和感があるなどの問題点を抱えていた。
また畳を製造する際に畳床の端部を包丁で裁断する工程があるが、上記合板を使用した畳床の場合、合板が包丁で切れにくいことによる製造効率の低下さらには合板の吸水吸湿による変形の問題があった。
【0004】
ところで、畳は人が直接肌で接する建築材料であり、高い断熱性能が要求されていて、薄畳であるからといってその性能を劣化させることはできない。さらに、薄畳を木材製又は合成樹脂製のフローリングの上に敷き詰めて使用する場合、フローリングから受ける冷たい感触を緩和させるための効能も付加しなければならない。さらに地球温暖化の問題が深刻化しつつあり、建築分野での炭酸ガス削減も急務となっており、バリアフリー住宅に使用する薄畳においても、従来の畳床と同等以上の断熱性能が要求されている。
【0005】
断熱性能を高めるための方法として、断熱性能に優れる合成樹脂発泡体を薄畳用の畳床の芯層に使用し、さらに該合成樹脂発泡体の発泡倍率を小さくして畳床を薄くする方法が従来から提案されている。しかし単層の発泡体層よりなる薄畳用芯層では、発泡倍率の局所的不均一や組成の不均一によって、熱により膨張・収縮の不均一が生じ、芯層が薄いことも原因にして、使用時に畳の反りや変形が発生しやすかった。
【0006】
ところで、上記で紹介した断熱材にくらべて断熱性能にすぐれた薄肉の断熱材として、家庭用冷蔵庫などで使用実績のある真空断熱材を建築分野に応用することが提案されている。
【0007】
この真空断熱材は、例えば極細のガラス繊維、シリカ粉末、スチレンフォーム、連続気泡形の硬質プラスチックフォームのスラブ材などの芯材と、ゼオライトなどのゲッタ剤とを、ナイロン、PET、アルミ箔、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)などを積層した少なくとも4層のドライラミネート材からなる被覆材に入れてシールし、その内部を0.05Torr以下に減圧して封止したもの、あるいはプラスチックフィルムと金属箔とのラミネートフィルムを有するものなどの他の被覆材で、シリカ粉末またはグラスウールを有したものなどの他の芯材を包み内部を真空にして封止したものなどで、厚さが5mm程度でも従来のウレタンフォーム断熱材に比べて約4〜10倍の断熱性能を持ち、熱伝導率で比較すると、硬質ウレタン断熱材が22mW/mKであるのに対し、真空断熱材は2〜5mW/mKと小さく、高い断熱性が得られるものである。
【0008】
高い断熱性能を有する真空断熱材ではあるが、建築の分野に応用する場合、建築物を施工する段階で、釘や針などを使用することにより真空断熱材に傷がつく危険性が高く、真空断熱材を建築分野に応用することは困難とされてきた。しかしながら、最近では真空断熱材を建築分野の断熱構造の構造要素として使用する際に、柱や母屋などに取り付け易くするために該断熱材の一部に切り欠き部を形成するような技術や、真空断熱材の矩形の四隅を切除して真空断熱材を合成樹脂フォームで覆って一体化する技術など真空断熱材を建築分野に応用するための技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3115091号公報
【特許文献2】特開2000−170359号公報
【特許文献3】特開2000−170360号公報
【特許文献4】特開2006−90070号公報
【特許文献5】特開2010−18968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、このような真空断熱材は、断熱性能については、経年変化も小さく何ら問題はないが、真空断熱材に穴が開き真空封止が損なわれる事態が起きると、途端に断熱性能が失われるという問題があることが知られている。
【0011】
一方、上記断熱性能にすぐれた真空断熱材を畳床に使用しようとするとき、畳床の製作過程および畳床に畳表を縫着して畳を製作する過程で、真空断熱材に穴が開く危険が多数存在しているので、これまでは真空断熱材を畳に使用することは困難とされてきた。
【0012】
畳の寸法は伝統的に地域によって異なっていて、例えば、京間では955mm×1910mm、中京間では910mm×1820mm、関東間では880mm×1760mmとなっている。これらの伝統的な畳の寸法にしたがって、畳床の寸法も日本工業規格においては、1000×2000mmの100W、950m×1900mmの95W、920mm×1840mmの92Wと複数の寸法が規定されている。
【0013】
ところが、一般住宅の部屋の寸法精度は規格化された畳をそのままの状態で部屋に敷き込む事ができるような精度とはなっておらず、従来から、部屋のサイズである寄せを測る寸取りを行うことによって、畳を敷設する部屋の寸法を予め測定して、規格化された畳床を部屋に合わせた寸法に裁断して畳が製作されてきた。
【0014】
したがって、畳床から畳を製作する工程において、畳床を部屋の寸法にあわせて裁断する必要があり、畳床の框および上前と下前の床を包丁で切り落とす作業すなわち畳床の周縁部を切り落とすことによって、部屋の寸法に合った畳を1枚1枚オーダーメイドで製作することが一般的であった。
【0015】
さらに、畳床に畳表を張り上げる工程では、畳表を畳床に張るための待ち針、畳表のい筋(い草の方向性)を正すための縁引き針、畳表の目を通すために定規の動きを止めるための縁引き針、上前の通りが動かないようするための縁引き針など、様々な針を畳表の上から畳床に刺す工程が存在している。また、畳表を畳床に縫着する工程では、縁張りと畳表を畳床に畳針と糸で縫い込む工程がある。そして、上記で使用される縁引き針、待ち針、畳針は、畳床の内部まで深く刺しこまれている。
【0016】
このように、畳床から畳を製作する過程において、畳床の周縁部の裁断および畳床に針を刺す作業があるので真空断熱材に穴が開く危険性が高く、これまでは畳床に真空断熱材を使用しようとすることは困難とされていた。
【0017】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、厚さが薄く断熱性能にすぐれた真空断熱材を用いた薄畳用の畳床であって、畳床から畳を製作する過程においても特別な加工方法を用いることもなく、真空断熱材に穴が開き真空封止が損なわれることのない薄畳用の畳床を提供しようとするものである。
【0018】
本発明の畳床を用いた薄畳では、柔軟性に富み、剛性も優れ、軽量で持ち運びに便利で、反りや変形が生じにくく、従来の製作手法を使用して畳床から薄畳を製作するが可能であって、さらに薄畳を木材製又は合成樹脂製のフローリングの上に敷き詰めて使用する場合では、そのフローリングから受ける冷たい感触を緩和させ、さらにフローリングの上全体に敷き詰めて使用するためばかりでなく、その1枚又は数枚をそのフローリングの上に単に戴置して、所謂、置き薄畳として使用することもできる薄畳を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、高い断熱性能を有しながらも厚さが薄くバリアフリーに対応した薄畳であって、真空断熱材を使用しているにもかかわらず裁断することが可能で、さらに針を使用した加工にも対応できる畳床を見出し、この発明を完成したものである。
本発明者は、真空断熱材を用いた断熱性能を有する薄畳について鋭意検討した結果。芯層に使用される真空断熱材の側部外周に裁断が可能な外周芯層を配置することにより、畳床としての加工性を阻害することのない真空断熱材を使用した畳床の構成を見出した。 さらに、芯層と畳表側クッション層の間に剛性保持層を配置することにより、薄畳でありながらも剛性とクッション性を兼ね備えることを見出して、断熱性能に優れ、柔軟性に富み、剛性に優れ、軽量で持ち運びに便利であって、しかも畳の反りや変形が生じにくい、コスト的にも安価な薄畳用の畳床である本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち本発明の畳床は、
真空断熱材を有し、全体の厚みが8mm以上30mm未満の薄畳に使用される畳床であって、
該畳床の芯層は前記真空断熱材と前記真空断熱材の側部外周に配置された裁断が可能な外周芯層からなり、
前記芯層の畳表側には畳表側クッション層が配置されていて、前記芯層の畳裏側には畳裏側クッション層が配置されていて、
前記芯層と前記畳表側クッション層の間に剛性保持層が配置されていることを特徴とする。
【0021】
ここで、芯層と畳表側クッション層および芯層と畳裏側クッション層の間には、他のクッション層やその他の層を有していてもよく、また、畳表側クッション層と畳裏側クッション層の機能を損なわない限り、各層の畳表側または畳裏側には、他のクッション層やその他の層を有していてもよい。
このように、真空断熱材の側部外周に裁断可能な外周芯層が配置されているので、芯層に真空断熱材を使用しているにもかかわらず、外周芯層を芯層に持つ畳床の周縁部を裁断することが可能であり、さらに畳床の周縁部には針を使用することができる。
【0022】
上記において、前記芯層と前記畳表側クッション層と前記畳裏側クッション層と前記剛性保持層が接着により一体化されていることが好ましい。
これにより各層が一体化するので、畳床を加工する際において、施工性が向上する。
【0023】
さらに、本発明の畳床は、上記のいずれかに記載の畳床の前記剛性保持層が木質繊維板であることが好ましい。
この構成により、上記畳床の作用効果に加えて、木質繊維が吸放湿を行うとともに、薄畳用畳床の熱膨張・熱収縮を防止し、寒冷時の薄畳と薄畳の間の隙間の発生の防止と、暑熱時の薄畳の反り上がりを防止することが可能になる。更に、衝撃力なども吸収・緩和し、歩行時のフィット感や座り心地も従来の藁を畳床とした畳と同等にすることができる。
【0024】
また、本発明の畳床は、上記のいずれかに記載の畳床において、最も畳裏側に裏シートが更に設けられていることが好ましい。
この構成により、上記畳床の作用効果に加えて、畳裏側クッション層を保護するとともに、畳表の縫着における畳裏側の糸を保持し、更に美粧性、耐久性、防湿性を付与することが可能になる。
【0025】
本発明の畳床は、上記のいずれかに記載の畳床の畳床の畳表側と畳裏側との少なくとも畳表側に、吸放湿紙又は板紙を配置してあることが好ましい。
この構成により、上記畳床の作用効果に加えて、吸水性のないクッション層であっても吸湿性を持たせることが可能になり、畳を使用する上でのべたつき感を防止することが可能になる。
【0026】
本発明の薄畳は、上記のいずれかに記載の畳床の最も畳表側に、畳表を設けてあることを特徴とする。
この構成により、上述の薄畳用畳床の作用効果と同じ作用効果を奏することができる。
【0027】
本発明の薄畳は、上記のいずれかに記載の畳床が針と糸によって畳表と縫着されていることを特徴とする。
この構成により、上述の薄畳用畳床の作用効果と同じ作用効果を奏することができるとともに、伝統的な畳の感触を維持しつつ、接着剤の使用を抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
真空断熱材と真空断熱材の側部外周に配置された裁断が可能な外周芯層を畳床の芯層に使用して、畳床の構成を畳裏側クッション層、芯層、剛性保持層、畳表側クッション層とすることで、断熱性能に優れた真空断熱材を使用していても畳床の周縁部を裁断することが可能で、さらに畳床の周縁部に針を使用することができるようになり、従来と同様の方法で畳床から畳を製作することを可能にし、薄くて、バリアフリーに対応した薄畳でありながらも剛性とクッション性を兼ね備え、断熱性能に優れ、柔軟性に富み、剛性に優れ、軽量で持ち運びなどに便利であって、しかも畳の反りや変形が生じにくい、コスト的にも安価な薄畳用の畳床とそれを使用した薄畳を得た。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の畳床の斜視図
【図2】本発明の畳床のB−B線断面図
【図3】本発明の畳床の斜視図であって、畳裏側クッション層と芯層までを図示する。
【図4】真空断熱材の構成を説明する断面図
【図5】畳床の裁断線を示す図
【図6】畳表を針で畳床に固定する工程を示す図
【図7】本発明の畳床を使用した薄畳の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、使用材料、全体構造の順で説明する。
【0031】
(使用材料)
本発明の畳床は、図1に示すように、畳裏側クッション層8、芯層7、剛性保持層6、畳表側クッション層5を基本構成としている。また芯層7は真空断熱材11と外周芯層10から構成されている。
【0032】
芯層7に使用される真空断熱材11としては、断熱性能に優れ厚さが30mm未満のものであれば、製造方法、構成等はいずれのものでもよい。
実施例で使用された真空断熱材11は、図4に示すように、芯材34と外被材31とで構成されている。そして外被材31には内部を減圧密封するための熱溶着部33を有している。
さらに、真空断熱材11には、合成ゼオライトや活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの物理吸着剤、およびアルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物などの化学吸着剤のような、水分吸着剤やガス吸着剤を封入しても良い。
【0033】
ここで、芯材34に使用する材料は、気相比率が90%前後の多孔体を板状に加工したものであればよく、工業的に利用できるものとして、粉体、発泡体および繊維体等があり、その使用用途や必要特性に応じて公知の材料を利用することができる。
【0034】
このうち、粉体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物があり、工業的には乾式シリカ、湿式シリカ、パーライト等を主成分とするものが利用できる。
発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等の連続気泡体が利用できる。
【0035】
また、繊維体としては、無機系、有機系、およびこれらの混合物があるが、断熱性能の観点から無機繊維が有利である。無機繊維としては、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等の公知の材料を利用できる。
【0036】
本実施の形態における真空断熱材11の芯材34の形状は一般的には四角形であるが、特殊な形状の畳の場合には、その他の四角形、多角形、円形、L型、およびこれらの組み合わせからなる任意の形状も選定できる。
【0037】
真空断熱材11の外被材31は、芯材34と外気とを遮断することが可能なものが利用される。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などの金属箔や、金属箔とプラスチックフィルムなどのラミネート構造を有したラミネート材からなる。
【0038】
ラミネート材は、少なくとも表面保護層、ガスバリア層、熱溶着層32によって構成される。表面保護層としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルムの延伸加工品などが利用でき、さらに、外側にナイロンフィルムなどを設けると可とう性が向上し、折り曲げなどに対する耐久性が向上する。
【0039】
表面保護層は、外被材31の表面における埃や塵等による傷つきや、摩擦、折り曲げ、さらには外部からの異物による芯材34への突き刺し等によるピンホールの発生を防ぐものである。
【0040】
ガスバリア層は、外被材31の表面を通じての芯材34への空気の侵入を防ぐものであり、ガスバリア層としては、アルミなどの金属箔フィルムや金属蒸着フィルムが利用可能であるが、よりヒートリークを抑制し、優れた断熱性能を発揮するには金属蒸着フィルムが望ましい。
【0041】
ここで、熱溶着層32は、加熱加圧することで外被材31の内部を減圧封止するものである。
【0042】
蒸着に関しては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどへの蒸着が望ましい。また、熱溶着層32としては、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、無延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどが利用可能である。
【0043】
このようにして作製した真空断熱材11の熱伝導率は、平均温度24℃において、0.0020〜0.0035W/m・Kであり、汎用的な断熱材である硬質ウレタンフォームの10倍程度の断熱性能を有する。
【0044】
剛性保持層6の材料としては、畳床2の形状を保持するための剛性を保持する材料であって、加えて裁断が容易で針が容易に刺さり、針を刺した後に針を保持することができる材料であればどのような材料でもよい。例えば、ハードボードやインシュレーションボード、MDFなどの木質繊維板、針葉樹合板、コルクシート、ラバーシート、合成樹脂シートなどが使用できる。
特に好ましい材料としては木質繊維板が選択される。木質繊維板は畳床としての剛性を持ち、さらに、人間の手による針の圧入であっても針の圧入が容易であり、裁断も容易で、工業製品として均質な組成を持っており好適である。ところで、木質繊維板といえども厚さが厚くなると裁断や針の圧入も困難になるので、本発明のように30mm未満の薄畳であれば、木質繊維板にハードボードを使用した場合は厚さが3.0mm以下が好ましい。
【0045】
畳表側クッション層5および畳裏側クッション層8の材料としては、畳としてのクッション性を持ち、畳床2としての加工に必要とされる性能、例えば裁断および針の圧入が容易で針の保持力等の性能を有する材料であればどのような種類の材料でも良い。例えば、アンダーレイシート、合繊フェルト、麻フェルト、ラバーフェルト、ポリエチレンフェルト、ゴム麻の複合フェルト、スポンジフェルト、コルクシート、発泡ポリエチレンシートなど床下地クッション材として使用されている材料から選択される。
【0046】
芯層7の外周芯層10は、裁断および針の圧入が容易で針の保持力等の性能を有する材料であればどのような種類の材料でも良い。畳として使用されたときに部分的な圧縮むらが起きないように真空断熱材11と近似の圧縮性能を有する材料であればさらに好ましい。
例えば、アンダーレイシート、合繊フェルト、麻フェルト、ラバーフェルト、ポリエチレンフェルト、ゴム麻の複合フェルト、スポンジフェルト、コルクシート、発泡ポリエチレンシートなど床下地クッション材として使用されている材料、あるいはハードボードやインシュレーションボード、MDFなどの木質繊維板、針葉樹合板、コルクシート、ラバーシート、合成樹脂シートなどの材料から選択される。
【0047】
(全体構造)
以下、本発明の真空断熱材からなる畳床、及び薄畳の構造について、図面に基づいて説明する。
【0048】
図1は、畳裏側クッション層8、芯層7、剛性保持層6、畳表側クッション層5の4層からなる本発明の真空断熱材11からなる畳床2の実施形態を示すものである。
【0049】
図2に示すように、本実施形態では、芯層7は真空断熱材11と外周芯層10から構成されていて、図3に示すように外周芯層10は真空断熱材11の側部外周36を取り囲むように配置されている。その結果、畳床2の周縁部18の芯層7は外周芯層10で構成されている。
【0050】
芯層7に配置された真空断熱材11の畳表側には剛性保持層6が配置されているので、畳表側からの予期しない破損の危険、例えば人間の生活における針状の異物や重量物の落下さらに衝撃などから真空断熱材11の外被材31の破れを回避することができる。
【0051】
剛性保持層6の畳表側には畳表側クッション層5が配置されているので、薄畳でありながら畳床としての弾力性が保たれる。
【0052】
芯層7の畳裏側には畳裏側クッション層8が配置されているので、床や床下地の不陸や突起から芯層7を保護し、真空断熱材11の外被材31の破れの危険性を回避する。
【0053】
芯層7において、真空断熱材11の側部外周36を囲むように外周芯層10が配置されていて、外周芯層10は畳床2の周縁部18の芯層7を形成している。
畳床2の周縁部18の一部は、畳床から畳を製造する工程で裁断されることが一般的である。本発明では、畳床2の周縁部18には真空断熱材11が存在せず、裁断が可能な材料からなる外周芯層10により周縁部18が形成されているので、従来の製造方法と同じ製造方法で畳床2の周縁部18の一部を裁断して畳を製造することが可能である。
【0054】
上記でのべたように、畳床2の周縁部18の芯層を形成する外周芯層には、畳床2の周縁部の一部が裁断される際に真空断熱材11に傷がつかないだけの巾が必要である。
図5に畳床を規定の寸法に裁断する切断ライン(下前床切断ラインC1と上前床切断ラインC2、手元框切断ラインD1、手先框切断ラインD2)を示す。図5では下前床切断ラインC1と上前床切断ラインC2、手元框切断ラインD1、手先框切断ラインD2の内側に真空断熱材と外周芯層との境界Eがくるように外周芯層の巾15が設定される。このように、外周芯層の巾15の中に切断ラインが入ることにより、規格化された寸法で製造された畳床の周縁部を裁断して畳を必要とされる寸法に加工することが可能となる。
【0055】
なお、各層が接合一体化していると畳床2としての取り扱いが容易になり、畳床2から畳に加工する上で作業性が良くなる。各層を接合一体化する方法としては、縫着糸による縫着、もしくは、接着剤もしくは接着・粘着テープ等による全面接着や部分接着による方法、または熱溶着による接合一体化方法を採用することができる。
【0056】
畳床2の各層の厚みの和が8mm以上30mm未満であれば、いわゆる薄畳用の畳床として好適に使用される。
本実施形態では、畳床2の各層(畳裏側クッション層8、芯層7、剛性保持層6、畳表側クッション層5)は互いに縫着糸によって縫着、または接着剤もしくは接着・粘着テープ等による全面接着や部分接着または熱溶着により接合一体化されており、更にこの畳床に畳表が縫着されている。また、畳裏側クッション層8、芯層7、剛性保持層6、畳表側クッション層5の間に介在してもよい中間層としては、上記の接着層、粘着層の他に発泡体層や樹脂シートなどの層を有していてもよい。
【0057】
畳床2の畳裏側を保護するために裏シートを使用すると畳裏側クッション層8が保護されて好ましい。
裏シートとしては、ポリプロピレン糸やポリプロピレン細巾帯を織物にしたポリプロピレン製織布シートなどが挙げられる。
【0058】
さらに、畳にしたときの快適性能を向上させるために、畳床の畳表側と畳裏側とに、吸放湿紙を配置することも好ましい。この吸放湿紙を持つ畳床の場合、吸放湿紙は畳表と畳表側クッション層との間、及び裏シートと畳裏側クッション層との間に介装される。
前記吸放湿紙としては、ダンボール紙のように通気性と比較的大きな表面積を有する紙類などが使用でき、ポリプロピレン樹脂で形成する場合には、遮水透湿性のフィルム、シートなどが使用できる。
【0059】
畳床を裁断した後、畳床に畳表を張り上げて畳が完成する。畳表を畳床に張り上げる際の針の状態は図6に示すように、畳表3のい筋を正すために畳表3の上から畳床2にむかって縁引き針28を刺し、次に畳床2の框20に待ち針27を畳表3の上から畳床2に向かって刺すことよって、畳表3が畳床2に固定される。その後、畳表3が畳床2に針と糸で縫い込まれる。
畳表3を畳床に張り上げる際に使用される縁引き針28は、外周芯層を芯層に持つ周縁部18に刺し込まれるので、真空断熱材11に傷がつくことは無い。また、框20に刺し込まれる待ち針27の長さよりも外周芯層の巾15は長くなっている。
【0060】
畳表3としては、い草等を麻糸等で織ったものや、ポリプロピレン等の合成樹脂製のもの(合成い草)等を用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0062】
(実施例1)
畳裏側クッション層に厚さ4mmのアンダーレイシート(株式会社サンゲツ製、アンダーレイNT−4)、芯層の真空断熱材に厚さ4mmの真空断熱材(マグ・イゾベール株式会社製)、そして芯層の外周芯層に厚さ4mmのアンダーレイシート(株式会社サンゲツ製、アンダーレイNT−4)、剛性保持層に厚さ1.8mmのハードボード(ニチハ株式会社製 HSY180)、畳表側クッション層に厚さ2.4mmのアンダーレイシート(東リ株式会社NSアンダーレイシート NSUS)を住友林業クレスト株式会社製のインスターボンド(V−6800NA)で接着して、厚さ12.2mm×910mm×1820mmの畳床を製作した。なお、外周芯層の巾は100mmとした。
そして上記畳床に3mmの畳表を公知の製造方法で畳床に縫合して、15.2mmの畳を製作した。
【0063】
その結果、実施例1では、真空断熱材が傷つく事もなく、畳表の畳床への縫合も問題なく畳を製作することができた。そして、実施例1の熱抵抗値を測定したところ、1.53m2・k/Wという結果を得た。一般的な断熱材の厚さ15mm比較での熱抵抗値は住宅用グラスウール24Kが0.39m2・k/W、A種硬質ウレタンフォーム2種4号が0.55m2・k/W、A種フェノールフォームが0.68m2・k/Wであり、本発明品は薄畳として良好な断熱性能であった。
【比較例】
【0064】
(比較例1)
畳裏側クッション層に厚さ4mmのアンダーレイシート(株式会社サンゲツ製、アンダーレイNT−4)、芯層の真空断熱材に厚さ4mmの真空断熱材(マグ・イゾベール株式会社製)、そして芯層の外周芯層に厚さ4mmのアンダーレイシート(株式会社サンゲツ製、アンダーレイNT−4)、剛性保持層は設定せず、畳表側クッション層に厚さ4mmのアンダーレイシート(株式会社サンゲツ製、アンダーレイNT−4)を住友林業クレスト株式会社製のインスターボンド(V−6800NA)で接着して、厚さ12.0mm×910mm×1820mmの畳床を製作した。なお、外周芯層の巾は100mmとした。
そして上記畳床に3mmの畳表を公知の製造方法で畳床に縫合して、15.0mmの畳を製作した。
【0065】
その結果、比較例1では、真空断熱材が傷つく事もなく、畳表の畳床への縫合も問題なく畳を製作することができたが、畳床、畳ともに剛性が弱く、畳製作時のハンドリングで折れ曲がってしまった。
比較例1の熱抵抗値を測定したところ、1.38m2・k/Wであり、断熱性能は良好であった。
【0066】
(比較例2)
畳裏側クッション層に厚さ4mmのアンダーレイシート(株式会社サンゲツ製、アンダーレイNT−4)、芯層の真空断熱材に厚さ4mmの真空断熱材(マグ・イゾベール株式会社製)、そして芯層の外周芯層に厚さ4mmのアンダーレイシート(株式会社サンゲツ製、アンダーレイNT−4)、剛性保持層は設定せず、畳表側クッション層に厚さ4mmの小粒コルクシート(東亜コルク株式会社製、M−1064)を住友林業クレスト株式会社製のインスターボンド(V−6800NA)で接着して、厚さ12.0mm×910mm×1820mmの畳床を製作した。なお、外周芯層の巾は100mmとした。
そして上記畳床に3mmの畳表を公知の製造方法で畳床に縫合して、15.0mmの畳を製作した。
【0067】
その結果、比較例2では、真空断熱材が傷つく事もなく、畳表の畳床への縫合も問題なく畳を製作することができたが、畳床、畳ともに剛性が弱く、畳製作時のハンドリングで折れ曲がってしまった。
比較例2の熱抵抗値を測定したところ、1.52m2・k/Wであり、断熱性能は良好であった。
【0068】
なお、本発明の畳床および畳は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えうることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 薄畳
2 畳床
3 畳表
4 畳縁
5 畳表側クッション層
6 剛性保持層
7 芯層
8 畳裏側クッション層
10 外周芯層
11 真空断熱材
15 外周芯層の巾
18 周縁部
20 框
27 待ち針
28 縁引き針
31 外被材
32 熱溶着層
33 熱溶着部
34 芯材
35 端部
36 側部外周
C1 下前床裁断ライン
C2 上前床裁断ライン
D1 手元框裁断ライン
D2 手先框裁断ライン
E 真空断熱材と外周芯層との境界


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空断熱材を有し、全体の厚みが8mm以上30mm未満の薄畳に使用される畳床であって、
該畳床の芯層は前記真空断熱材と前記真空断熱材の側部外周に配置された裁断が可能な外周芯層からなり、
前記芯層の畳表側には畳表側クッション層が配置されていて、前記芯層の畳裏側には畳裏側クッション層が配置されていて、
前記芯層と前記畳表側クッション層の間に剛性保持層が配置されていることを特徴とする畳床。
【請求項2】
前記芯層と前記畳表側クッション層と前記畳裏側クッション層と前記剛性保持層が接着により一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の畳床。
【請求項3】
前記剛性保持層が木質繊維板であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の畳床
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の畳床において、最も畳裏側に裏シートが設けられていることを特徴とする畳床。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の畳床の畳表側と畳裏側との少なくとも畳表側に、吸放湿紙又は板紙を配置してあることを特徴する畳床。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の畳床の最も畳表側に、畳表を設けてあることを特徴とする薄畳。
【請求項7】
前記畳表が前記畳床に針と糸によって縫着されていることを特徴とする請求項6に記載の薄畳。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−19236(P2013−19236A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155441(P2011−155441)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】