説明

薄膜電池

本発明は、正極、負極、および正極と負極の間に挟まれたセパレータ層によって構成されたパッケージと、前記パッケージの周囲に延在する封止フレームと、負極と接触する第1の電流コレクタと、正極と接触する第2の電流コレクタとを含む扁平な電池に関する。第1と第2の電流コレクタはそれぞれ、パッケージに隣接したゾーン内で封止フレームを部分的に覆う。本発明によれば、電池は、さらに、第1の電流コレクタ上に配置された第1の高分子ジャケット層と、第2の電流コレクタ上に配置された第2の高分子ジャケット層とを有し、前記第1と第2の高分子ジャケット層が、電流コレクタと封止フレームの周囲を越えて延在し、結合封止されて電池用の外側ジャケットを形成する。さらに、本発明は、また、そのような電池を作る方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に薄膜一次電池に関する。
【0002】
様々な物理形態の電気化学素子(すなわち、電池)が知られている。ほとんどの場合、これらの素子は、機械的に頑強なハウジングを有し、円形、ボタンまたは角柱の単電池(セル)の形である。そのような単電池内には、正電極、負電極、セパレータおよび電解質が配置される。このタイプの単電池のハウジングは、一般に、鋼、ステンレス鋼合金またはアルミニウムからなる。
【背景技術】
【0003】
しかしながら、特定の用途では、柔軟なハウジングを有するきわめて薄い電池が必要とされる。そのような用途には、アクティブ無線周波数識別(RFID)タグ、PCMCIAカード、スマート・カードなどがある。そのような用途に使用される電池は、柔らかく且つ小型で、高エネルギー密度の特定のエネルギーを低い自己放電率で提供しなければならず、また確実な封止を備えていなければならない。封止はきわめて重要であり、その理由は、電池が曲げられるか機械的応力を受けたときでも、湿気が電池に入って電流が流出し自己放電するのを防ぎ、また電解質中の有機溶剤を失うことによって生じる乾燥を防がなければならないからである。さらに、電池は、コスト効率が高く信頼性の高い方法で製造できなければならない。
【0004】
先行技術から様々な薄膜電池が知られており、それらのほとんどは、負極材料としてリチウムを使用している。
【0005】
米国特許第5,989,751号は、例えば、柔軟で小型の設計を有する一次リチウム電池を開示している。この単電池には電解質を含む複合正極が提供される。スペーサおよび高分子シートを使用するパッケージングが提供される。
【0006】
米国特許第2003/0228517A1号は、互いに封止された2枚のプラスチックシートによって構成されたパッケージングを有する薄型単電池を示す。この文献に記載された薄型単電池は、積み重ねられてより大きな電気化学素子を構成する。プラスチックシートは、単電池の電極との電気接点を形成するために、特定領域内が金属化される。
【0007】
米国特許第2005/0239917号は、また、薄膜リチウム電池を開示しており、負極は、リチウム金属粉末を主とするインクを使用して、銅電流コレクタ上に印刷される。負極および正極電流コレクタは、ポリエステル・シーラント・フレームによって電池の周囲が封止される。
【0008】
米国特許第6,752,842B2号は、異なる層を積み重ねて印刷することによって製造された薄膜単電池を開示している。
【0009】
封止の品質と製造上のコスト効率の点で、前述の電池はまだ完全に満足できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,989,751号
【特許文献2】米国特許第2003/0228517 A1号
【特許文献3】米国特許第2005/0239917号
【特許文献4】米国特許第6,752,842 B2号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、正極(cathode)、負極(anode)、および正極と負極の間に挟まれたセパレータ層によって構成されたパッケージを含む扁平な電池に関する。前記パッケージの周囲に封止フレームが延在する。電池は、さらに、負極と接触する第1の電流コレクタと、金属箔で作成され正極と接触する第2の電流コレクタとを有し、第1と第2の電流コレクタはそれぞれ、パッケージと隣接した領域内で封止フレームを部分的に覆う。
【0012】
前記電池は、さらに、第1の電流コレクタ上に配置された第1の高分子ジャケット層と、第2の電流コレクタ上に配置された第2の高分子シートとを有し、前記第1と第2の高分子シートは、電流コレクタと封止フレームの周囲を超えて延在し、結合封止されて、電池用の外側ジャケットを構成する。
【0013】
本発明は、また、
(a)第1の高分子ジャケット層を提供する段階と、
(b)第1の電流コレクタを提供し、その第1の電流コレクタを前記第1の高分子シート上に配置する段階と、
(c)前記第1の電流コレクタ上に負極材料を付着させる段階と、
(d)第2の高分子ジャケット層を提供する段階と、
(e)第2の電流コレクタを提供し、その第2の電流コレクタを前記第2の高分子ジャケット層上に配置する段階と、
(f)第1の電流コレクタ上の負極材料とセパレータの外側輪郭に実質的に一致する内側輪郭を有する封止フレームを提供する段階と、
(g)一方の電流コレクタ上に、電流コレクタの外周を覆う前記フレームを配置する段階と、
(h)正極材料を提供し、その正極材料を第2の電流コレクタ上に付着させる段階と、
(i)セパレータ層を提供し、そのセパレータ層を正極材料上に配置する段階と、
(j)セパレータ層が、正極材料と負極材料の間に挟まれ、封止フレームが、負極材料、正極材料およびセパレータの周囲に延在するように、2つの高分子ジャケット層の一方を高分子ジャケット層の他方上に戻し構成することによって扁平な電池を組み上げる段階と、
(k)前記第1と第2の高分子ジャケット層を、電流コレクタの周囲を越えて延在するゾーン内で結合封止して、電池パッケージ用の外側ジャケットを構成する段階とを含む、扁平な電池を作成する方法に関する。
【0014】
結合封止されて電池用の外側ジャケットを構成する第1と第2の高分子ジャケット層は、水や他の液体が単電池に入り自己放電率を高める可能性のある導電経路ができるのを防ぐのに役立つ。さらに、電解質が電池から漏れるのを防ぎ、それにより電池の乾燥が回避される。負極、正極、セパレータおよび電解質によって構成されたパッケージの周囲に延在する封止フレームが、さらに、シーリングの高品質化に寄与する。封止フレームが前記パッケージの周囲に延在するので、第1と第2の高分子シートがフレームの周囲を越えて延在し、二重封止が提供される。封止フレームを部分的に覆う電流コレクタは、第1の封止領域を形成し、前記封止領域の周囲を越えて延在する高分子シートは、第2の追加の封止領域を形成する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、封止フレームは、ヒートシール可能材料で被覆される。封止フレーム自体は、ナイロン、ポリエステル(PET)、ポリプロピレンまたは任意の適切な高分子などの高分子、特にPET((ポリエチレンテレフタレート)、ポリエステル類の樹脂)で作成することができる。被覆は、ホットメルト接着剤EVA(エチレン酢酸ビニル)またはEMA(エチル・アクリル酸メチル)、または別の適切なヒートシール可能材料から成ってもよい。被覆により、フレームを電流コレクタおよび高分子シートに容易に封止することができる。封止フレームは、それぞれフレーム自体を構成する2つのフレーム要素から成ってもよい。一般に、電池の組み上げの際に、1つのそのようなフレーム要素が正極側に配置され、別のフレーム要素が負極側に配置され、2つのフレーム要素は、最終組み上げ段階で接合されて1つのフレームを構成する。2つのフレーム要素を使用する場合、セパレータは、その周縁が2つのフレーム要素間にある状態で配置されてもよい。これにより、2つのフレーム要素が接合されたときに、セパレータがこの2つのフレーム要素によって適所に保持され、負極材料と正極間の接触をきわめて確実かつ単純に防ぐことができる。
【0016】
第1と第2の高分子ジャケット層はそれぞれ、第1と第2の電流コレクタの側にホットメルト接着剤が被覆されてもよい。これにより、積層操作で熱を加えるだけで2つの高分子ジャケット層を接合封止して外側ジャケットを構成することができる。
【0017】
高分子ジャケット層は、配置される電流コレクタの表面より大きい表面を有する単純な高分子シートでよい。完全な電流コレクタは、高分子シートによって覆われ、これにより2枚の高分子シートによって構成されたジャケットは、電池の2つの接点タブ以外の部分にアクセスできなくする。
【0018】
あるいは、高分子ジャケット層は、一般に高分子シートから切り出され高分子フレームによって形成されてもよく、高分子フレームは、配置される電流コレクタの外側輪郭を覆う。そのようなフレームを使用することにより、完全なシートを使用するときより電池全体が薄くなり、また付加的な封止が、そのような封止が実際に不可欠な領域、すなわち電流コレクタの外側輪郭に限定されるという利点を有する。他方、電池の特定の望ましい表面特性を得るのは、フレームだけを使用するときよりもシート全体を使用するときの方が容易である。したがって、特定の接着剤または特定の外観が必要とされるときは、完全なシートが好ましい解決法である可能性がある。
【0019】
電流コレクタは、金属箔、特に銅箔であることが好ましい。外部から電池に接触するための接点タブは、そのような銅箔と一体的に形成されてもよく、したがって追加の接点が不要である。しかしながら、金属箔の代わりに金属化した高分子フィルムまたはシートを使用することもできる。本発明の好ましい実施形態によれば、電流コレクタの少なくとも一方は、中央領域内に形成された窪みを有する予成形された金属箔である。そのような窪みは、正極混合物の電流コレクタへの付着をさせる、正極混合物用の受部を形成することができ、また電池の組み上げを容易にする。
【0020】
負極材料は、リチウムであることが好ましい。しかしながら、負極には、本発明の範囲を逸脱することなく、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水素吸蔵合金または他の適切な材料などの別の材料を使用することもできる。
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、正極は、活性材料として二酸化マンガン(MnO2)を含む。一般に、このためには電解二酸化マンガン(すなわち、EMD)が使用される。しかしながら、正極には、本発明の範囲を逸脱することなく、水酸化ニッケル、酸化銀、一フッ化炭素または他の適切な材料などの別の材料を使用することもできる。
【0022】
さらに、第1と第2の高分子ジャケット層は、外側ジャケットを構成するために中間で折り畳まれ、それにより電池が封止される単一シートで作成されてもよいことに注意されたい。そのような解決法の利点は、折り畳み線が、完全に封止される一方の辺を既に提供していることである。
【0023】
本発明は、また、請求項12により電池を作成する方法に関する。この方法の好ましい実施形態は、従属クレームと、以下に示す2つの好ましい実施形態の説明によるものである。
【0024】
本発明の主題は、図面を参照して以下の説明で詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態による扁平な電池の断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による扁平な電池の断面図である。
【図3】図3aは図1の扁平な電池の第1の組み上がり部分の平面図であり、図3bは図1の扁平な電池の第2の組み上がり部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明が、図に示すために選択されたが添付の特許請求の範囲以外に本発明を定義も限定もしない本発明の2つの特定の実施形態を参照することを理解されよう。
【0027】
図1は、本発明による扁平な電池の断面を示し、図3(a)および図3(b)には、図1に示された扁平な電池における上側下側それぞれの組み上がり部分の平面図を示す。より正確には、図3(a)は、図1に示された電池の上側ユニットを示し、図3(b)は、同じ電池の下側ユニットを示す。
【0028】
図3(a)と図3(b)を参照して、次に、図1に示されたような電池を作成する本発明による方法を述べる。
最初に、図3(b)に示されたような下側層の予め行う組み上げについて述べる。
【0029】
第1の段階で、一方の面にヒートシール可能材料が被覆された第1の長方形高分子シート24が提供される。本明細書で説明する実施形態では長方形構成要素が選択されたが、個々の構成要素や組み上がり電池は、任意の望ましい形状、例えば、縁の丸い長方形、楕円形、円形などを有することができることに注意されたい。第1の電流コレクタ18は、前記高分子シート24のヒートシール可能材料が被覆された側に配置される。前記電流コレクタ18は、長方形の銅箔または別の適切な金属箔で作成され、例えば全ての辺が数ミリメートルの高分子シート24の周辺長より小さい周辺長を有する。1つの辺に、高分子シート24の外側輪郭を越えて延在する接点タブ17を備える。図3(a)で分かるように、電流コレクタ18は、第1の高分子シート24の中心に配置され、その結果、高分子シート24のフレーム状の外側ゾーンは覆われないままになる。
【0030】
次の段階で、第1のフレーム要素22aが、第1の高分子シート24と第1の電流コレクタ18上に配置される。このフレーム要素は、約100μm程度の厚さを有し、上側面と下側面にホットメルト接着剤EVA(エチレン酢酸ビニル)が被覆された長方形ポリエステル・フレーム22である。このフレーム要素22aの外周は、高分子シート24の周囲より小さいが、電流コレクタ18の周囲より大きく、それに対してフレーム要素22aの内周は、電流コレクタ18の周囲より小さい。フレーム要素22aは、高分子シート24と電流コレクタ18上にすべての構成要素の中心に対して対称的に配置され、その結果、フレーム要素22aの内側領域が電流コレクタ18上になり、フレーム要素22aの外側領域が高分子シート24の真上になる。
【0031】
これらの3つの要素、すなわち第1の高分子シート24、第1の電流コレクタ18および第1のフレーム要素22aは、互いに接着される。これを行うには、例えば加熱ブロックを当てることにより熱と圧力を加えることで十分であり、高分子シート上とフレーム要素22a上のホットメルト被覆が溶け、真ん中にある金属箔に密着する。あるいは、加熱ピンをいくつかの特定の箇所に当てることによって、これらの3つの要素を単に一時的に接着してもよい。
【0032】
次の段階で、負極12を形成するリチウム箔が、電流コレクタ銅箔18上に配置される。これは、通常、リチウムを保護するために低湿度環境で行われる。負極リチウム箔12は、また、電流コレクタ18の表面よりわずかに小さい表面を有する長方形である。負極リチウム箔12は、好ましくは電流コレクタ18の真ん中に対称的に配置され、それにより、電流コレクタ18のフレーム状外側領域は露出したままである。
【0033】
次に図3(a)を参照すると、同様に、第1の高分子シート24と同一で従ってヒートシール可能材料が被覆された第2の高分子シート26が提供される。第1の電流コレクタ18上に配置された第1の高分子シート24に関して前述したのと同じように、第2の接点タブ19を有する第2の電流コレクタ20が、前記第2の高分子シート26上に配置される。次の段階で、前述の第1のフレーム要素22aと同一の第2のフレーム要素22bが、前述の説明と全く同じように、第2の高分子シート26と第2の電流コレクタ20上に配置される。次に、やはり図3(a)を参照した前の説明と全く同じように、第2の高分子シート26、第2の電流コレクタ20および第2のフレーム要素22bが、互いに接着される。
【0034】
フレーム要素22bが、電流コレクタ20を形成する銅箔上に重なり、前述のように銅箔と高分子シート26に接着された後、負極12を形成するリチウム箔の代わりに、正極16を構成する混合物が、電流コレクタ20の中心ゾーンに付着させられる。この中心ゾーンは、混合物を適所に保持する壁を構成するフレーム要素22bによって限定される。前記混合物は、活性正極材料として二酸化マンガンを含むことが好ましいが、本発明の範囲から逸脱することなく他の適切な正極材料を選択することができる。この混合物は、活性正極材料の他に、さらに、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)またはリチウムトリフラート(LiCF3SO3)などの電解質(一般に、リチウム塩)を、PC:EC(プロピレン・カーボネート:エチレン・カーボネート)、EC:DME(エチレン・カーボネート:ジメトキシエタン)またはEC:DMC(エチレン・カーボネート:炭酸ジメチル)などの非プロトン性有機溶媒の混合物中に含む。また、任意の他の適切な電解質を使用することもできる。さらに、正極混合物は、コンダクタンスを高めかつ導電性炭素、グラファイトまたは別の適切な材料のような活性材料の利用を高める導電相を含む。混合物は、さらに、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPVDFなどの様々な構成要素を結合するバインダの役割をする物質を含む。
【0035】
複合正極16を構成する正極混合物を付着させた後、この正極16上に、当該技術分野で周知のようなセパレータ14として働く多孔性薄膜(例えば、PEまたはPP薄膜)が配置される。ここに示された例では、セパレータ14の外側輪郭は、2つのフレーム要素22a,22bの内側輪郭と一致する。セパレータは、正極より大きい表面を有し、正極の周囲を越えて延在してもよい。そのような解決法は、一般に、正極と負極が互いに接触するのを回避できるので好ましい。セパレータは、適所に維持されるように、前述の2つのフレーム要素間のその外周上に配置されてもよい。
【0036】
次に、図3(b)に示された第1の高分子シート24、第1の電流コレクタ18、フレーム要素22aおよび負極12を含む組み上がりユニットを、図3(a)に示された組み上がりユニットに取り付けることができる。これを行うため、2つの組み上がりユニットの一方がひっくり返され、2つの半体は、2つのフレーム要素22a,22bが互いに位置合わせされ1つのフレーム22を構成するように互いの上に配置される。それにより、負極12は、セパレータ14と接触し、2枚の高分子シート24,26の外側輪郭が互いに積み重なる。また、本明細書に記載されているように2つのフレーム要素からなるフレームの代わりに、一体的に作成されたフレームを使用できることに注意されたい。次に、このフレームは、図2に示された第2の実施形態に関して後述する説明と全く同じように、図3(a)と図3(b)に示された2つのユニットが互いに組み上げられる前に正極側に配置されることが好ましい。
【0037】
図1に示されたように、負極12、セパレータ14および正極16は、フレーム要素22a,22bによって構成されたフレーム22が前記パッケージ10を取り囲む状態で、電池の中心に実質的にブロック形のパッケージ10を構成する。フレーム22の内側輪郭は、パッケージ10の外側輪郭と一致し、フレーム22の高さhは、負極12、正極16およびセパレータ14によって構成されたパッケージ10の高さhと一致する。負極12より外に延在する電流コレクタ18の周辺外側領域は、封止フレーム22上のパッケージ10と隣接した領域、すなわちフレーム22の周辺内側領域内にあり、それにより前記フレームを部分的に覆う。図1と図2で分かるように、フレーム22の表面の約半分が、電流コレクタ18,20によって覆われ、それに対してフレーム22の周辺外側領域は、電流コレクタ18,20によって覆われず、電池が組み上げられたときに高分子シート24,26と直接接触する。
【0038】
積層操作において、フレーム要素22a,22bの接触面上の熱溶融接着剤被覆が溶融し、その結果、2つのフレーム要素22a,22bが、最終的に接着して1つのフレーム22を構成する。これが事前に起こらなかった場合、フレーム要素22a,22bは、電流コレクタ18,20にも接着する。同時に、互いに接触した内側にヒートシール可能材料が被覆された2枚の高分子シート24,26は、その外周が幅Wを有する外側封止領域内で結合封止される。高分子ジャケット層の役割をし外側ジャケットを構成する高分子シート24,26は、一般に、厚さ50〜75μmを有する。この積層操作は、第1段階では、電池の3つの辺に限定され、第4の辺は一時的に封止されないままである。この場合は、次の段階で、電池から空気、蒸気、湿気などを除去するために真空が適用される。この真空が適用されながら、第4の辺は、電池を完全に封止するように積層される。また、1段階で全ての辺を密閉すると同時に電池を排気することもできるが、これは、取り扱いが少し難しい。この排気段階は、前述の組み上げ段階より長くかかる場合があるので、前述の組み上げ段階が、例えば回転アセンブリ上やベルトコンベヤ上で、個別に実行された場合に、排気中と第4の辺の密閉中とにおいて電池をグループ化してもよい。
【0039】
2枚の別個のシート24,26の代わりに1枚の高分子シートだけを使用してもよいうことに注意されたい。この場合、第1の電流コレクタ18、第1のフレーム要素22aおよび負極12が、前述のようにこのシートの半分上に付着させられ、一方第2の電流コレクタ20、正極16、第2のフレーム要素22bおよびセパレータ14が、2枚の個別のシート24,26に関して前述したのと全く同じように、他方の半分の上に配置される。次に、高分子シートが真ん中で折り畳まれて電池が組み上げられ、前述のような積層操作を実行する。この方法の1つの利点は、1つの辺、すなわち折り畳まれた辺を封止しなくてもよく、電池を構成する2つの半体を互いに位置合わせするのが容易になることである。
【0040】
図2は、本発明による電池の第2の実施形態を示す。同一部分は、同じ参照数字を使用して示され、下記では、第1の実施形態に対する違いだけを述べる。
【0041】
図2で分かるように、図1に示された高分子シート24,26の代わりに、高分子フレーム24’,26’が使用される。これらのシートは、第1の実施形態の高分子シート24,26と同じ働きをする。前記高分子フレーム24’,26’は、第1の実施形態の高分子シート24,26に使用されたように高分子シートから切り出されもよく、従ってやはり、一般に、50〜75μmの厚さを有する。図2に示された高分子フレーム24’,26’の外側輪郭は、第1の実施形態に使用され図1に示されたシート24,26の外側輪郭と対応する。フレーム24’,26’の内側輪郭は、電流コレクタ18’,20’の外側輪郭よりわずかに小さく、その結果、電池の組み上げ後に、電流コレクタ18,20’の外側輪郭は、フレーム24’,26’によって覆われる。したがって、2つの高分子フレーム24’,26’によって構成された外側ジャケットは、完全には閉じられず、電流コレクタ18’,20’は中心が覆われない。露出した中心は接点としても働き、したがって、完全なシートの代わりにフレームを使用してジャケットを構成するときは、図3(a)と図3(b)に示されたような接点タブは絶対に必要とは限らない。
【0042】
電流コレクタ18’,20’は、第1の実施形態の場合と全く同じように銅箔であるが、第2の電流コレクタ20’は、予成形されており、その中心に窪みが設けられている。この窪みは、図2で分かるように、正極混合物16’用の受部を形成する。また、第1の電流コレクタ18’に、負極12’を構成するリチウム箔を収容する窪みが設けられてもよいが、負極の厚さは正極の厚さより小さいので、リチウム側のそのような窪みの利点は、正極混合物用の受部を形成する正極側の窪みより明確でない。
【0043】
フレーム22’は、第1の実施形態に関して述べたような2つのフレーム要素22a,22bによって構成されるのではなく、単一フレームだけで構成される。このフレームは、第1の実施形態に関して前述したものと全く同じように、正極側、すなわち第2の電流コレクタ20’と高分子フレーム26’上に配置され、この3つの部分が、正極混合物16’を付着させる前に接着される。フレーム22’の全厚さは、活性材料によって形成されたパッケージ10’の厚さより小さく、セパレータ層14の厚さとパッケージ10の厚さの間にある。最後の積層段階で、両面にホットメルト接着剤が被覆されたフレーム22が、第1の電流コレクタ18と高分子フレーム24’,26’に接着されて、外側ジャケットが形成される。
【0044】
図2に示されたような実施形態の場合、図1の実施形態で達成することができる厚さよりも薄い全厚さを有する電池を得ることができる。
【0045】
ここで述べた電池の主な利点の1つは、多数の封止領域である。図1と図2で分かるように、フレーム22,22’の周辺内側部分は、2つの電流コレクタ18,18’と20,20’の間に挟まれ、フレーム22,22’の溶融したホットメルト接着剤被覆によって接着される。したがって、電流コレクタ18,18’,20,20’と、それらの間にあるフレーム22は、パッケージ10,10’を保護して、それにより湿気が電池の負極と正極に入るのを防ぐ気密封止された「ハウジング」を構成する。
【0046】
電流コレクタ18,18’,20,20’に封止されたフレーム22,22’によって提供されたこの内側封止に加えて、外側封止ジャケットが、外周が互いに封止された2つの高分子ジャケット層によって形成され、すなわち第1の実施形態では高分子シート24,26によって、または第2の実施形態では高分子フレーム24’,26’によって形成される。このジャケットは、電流コレクタ18,18’,20,20’を含む完全な電池の付加的な保護を形成する。さらに、高分子ジャケット層24,24’,26,26’は、電流コレクタ18,18’,20,20’の周辺外側の領域内のフレーム22,22’にも封止される。最後に、高分子ジャケット層24,24’,26’,26は、これらの電流コレクタの完全な表面上の電流コレクタ18,18’,20,20’に封止される。単一層の薄い厚さ、すなわち高分子ジャケット層、電流コレクタ、活性材料ならびにフレームの薄い厚さにより、電池全体は、完全に封止される間柔軟なままである。したがって、周辺内側領域内の電流コレクタ間に挟まれ且つ外側領域内の2つの高分子ジャケット層間に挟まれたフレームと、そのようなジャケット層によって構成されたジャケットとの組み合わせが、本発明による電池に優れた封止を提供する。
【符号の説明】
【0047】
10,10’…パッケージ、12,12’…負極、14,14’…セパレータ、16,16’…正極、17…接点タブ、19…接点タブ、18,18’…第1の電流コレクタ、20,20’…第2の電流コレクタ、22,22’…フレーム、22a,22b…フレーム要素、24,24’…第1の高分子ジャケット層、26,26’…第2の高分子ジャケット層、h…高さ、W…幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な電池であって、
正極(16)、負極(12)、および前記正極(16)と前記負極(12)の間に挟まれたセパレータ層(14)によって構成されたパッケージ(10)と、
前記パッケージ(10)の周囲に延在する封止フレーム(22,22’)と、
前記負極(12,12’)と接触する第1の電流コレクタ(18,18’)と、
前記正極(16,16’)と接触する第2の電流コレクタ(20,20’)とを含み、
前記第1および第2の電流コレクタ(18,18’;20,20’)がそれぞれ、前記パッケージ(10,10’)に隣接したゾーン内で前記封止フレーム(22,22’)を部分的に覆っており、
更に、前記第1の電流コレクタ(18)上に配置された第1の高分子ジャケット層(24,24’)と、
前記第2の電流コレクタ(20,20’)上に配置された第2の高分子ジャケット層(26,26’)とを有し、
前記第1および第2の高分子ジャケット層(24,24’;26,26’)が、前記電流コレクタ(18,18’;20,20’)と前記封止フレーム(22,22’)の周囲を越えて延在し、接合封止されて前記電池用の外側ジャケットを構成する、
ことを特徴とする扁平な電池。
【請求項2】
前記封止フレーム(22,22’)が、ヒートシール可能材料で被覆された、請求項1に記載の扁平な電池。
【請求項3】
前記封止フレーム(22)が、高分子、特にPETで作成された、請求項1または2に記載の扁平な電池。
【請求項4】
前記封止フレーム(22)が、互いに積み重ねられた2つのフレーム要素(22a,22b)を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項5】
前記第1および第2の高分子ジャケット層(24,24’;26,26’)には、それぞれ、前記第1および第2の電流コレクタ(18,18’;20,20’)の側で、ホットメルト接着剤が被覆された、請求項1から4のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項6】
前記第1および第2の高分子ジャケット層(24,26)は、それぞれが配置される前記電流コレクタ(18,20)を完全に覆う高分子シートである、請求項1から5のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項7】
前記第1および第2の高分子ジャケット層(24’,26’)は、それぞれが配置される前記電流コレクタ(18,20)の外側輪郭を覆う高分子フレーム(24’,26’)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項8】
前記電流コレクタ(18’)の少なくとも1つが、中央部分に形成された窪みを有する予成形された金属箔である、請求項1から7のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項9】
前記負極(12)が、活性材料としてリチウムを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項10】
前記正極(16)が、活性材料として二酸化マンガン(MnO2)を含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項11】
前記第1と第2の高分子ジャケット層(24,26)が、前記中間で折り畳まれ、それにより前記外側ジャケットが形成される単一シートで作成された、請求項1から10のいずれか1項に記載の扁平な電池。
【請求項12】
扁平な電池を作る方法であって、
(a)第1の高分子ジャケット層(24,24’)を提供する段階と、
(b)第1の電流コレクタ(18)を提供し、前記第1の電流コレクタ(18)を第1の高分子シート(24)上に配置する段階と、
(c)前記第1の電流コレクタ(18)上に負極材料(12)を付着させる段階と、
(d)第2の高分子シート(26)を提供する段階と、
(e)前記金属箔で作成された第2の電流コレクタ(20)を提供し、前記第2の電流コレクタ(20)を前記第2の高分子シート(26)上に配置する段階と、
(f)前記第1の電流コレクタ(18)上の前記負極材料(12)と前記セパレータ(14)の外側輪郭に実質的に一致する内側輪郭を有する封止フレーム(22)を提供する段階と、
(g)前記電流コレクタ(20)の前記外周を覆う前記フレーム(22)を、前記電流コレクタ(20)の一方の上に配置する段階と、
(h)前記正極材料(16)を提供し、前記正極材料(16)を前記第2の電流コレクタ(20)に付着させる段階と、
(i)セパレータ層(14)を提供し、前記セパレータ層(14)を前記正極材料(12)上に配置する段階と、
(j)前記セパレータ層(14)が、前記正極材料(16)と前記負極材料(12)の間に挟まれ、前記封止フレーム(22)が、前記負極材料(12)、前記正極材料(16)および前記セパレータ(14)の周囲に延在するように、前記2つの高分子ジャケット層(24;26)の一方を他方の高分子ジャケット層(26;24)上に戻し配置することにより前記扁平な電池を組み上げる段階と、
(k)前記電流コレクタ(18,20)の周囲を越えて延在するゾーン内の前記第1と第2の高分子ジャケット層(24,26)を接合封止して、前記電池パッケージ用の外側ジャケットを形成する段階と
を含む方法。
【請求項13】
段階(h)が実行される前に、前記封止フレーム(22)が、前記第2の電流コレクタ(20)上に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記封止フレーム(22)が、2つの封止フレーム要素(22a,22b)から成り、
段階(c)の実行前に、第1のフレーム要素(22a)が前記第1の電流コレクタ(18)に付着させられ、
段階(h)の実行前に、第2のフレーム要素(22a)が前記第2の電流コレクタ(20)上に付着させられ、
段階(k)の実行時に、前記2つのフレーム要素(22a,22b)が接合されてフレーム(22)が構成される、
請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
各封止フレーム要素(22a,22b)、前記各封止フレーム要素(22a,22b)が配置される前記電流コレクタ(18,20)、および前記電流コレクタ(18,20)が配置される前記高分子ジャケット層(24,26)がそれぞれ、段階(c)および(h)の実行前に互いに接合される、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記封止フレーム(22)が、ヒートシール可能材料で被覆され、段階(j)が実行される前に、前記封止フレーム(22)が配置される前記電流コレクタ(20)に接合される、
請求項12から15のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【公表番号】特表2012−502413(P2012−502413A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525414(P2011−525414)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061816
【国際公開番号】WO2010/025773
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510017505)レナタ・アーゲー (2)
【Fターム(参考)】