説明

薄葉紙

【課題】薄葉紙処理剤の取り扱い性の向上と、さらさら感、滑らかさを向上させる。
【解決手段】基材紙に対して薄葉紙処理剤を5〜35重量%含有してなり、前記基材紙は、1プライあたりの米坪が10〜35g/m2であり、前記薄葉紙処理剤は、カチオン性界面活剤とソルビタン脂肪酸エステルとタルクとを含有し、前記ソルビタン脂肪酸エステルは、その脂肪酸部分が炭素数16以上の脂肪酸由来のものであり、前記タルクは、平均粒子径が5〜25μmでありかつ粒度分布において粒子径5μm以下のものを10%以上、粒子径30μm以上のものを5%以上含む薄葉紙により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性や滑らかさ、さらさら感等を向上させるための処理剤を含有し、肌触りを向上させた薄葉紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、保湿剤等の薄葉紙処理剤を含有させることによりしっとり感を高め、肌触りを向上させた、いわゆる高級タイプのティシュペーパーが市販され、繰り返し鼻をかんでも肌がヒリヒリし難い、または鼻が赤くなり難いとして人気を呼んでいる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかし、普及するにしたがって、化粧の際や化粧直しの際にアイシャドーをぼかすため目元など肌の敏感な部分を擦るようにして用いるなど、新たなスキンケア用途などに使用されることも多くなり、これまでの鼻かみ時に要求されていたしっとり感に加えて、表面の滑らかさ、さらさら感も要求されるようになってきた。
このような観点から、さらさらした滑らかな感触を向上させるために、薄葉紙処理剤中にパウダー、とりわけ好適にタルクを含有させることが知られるが、近年の多様な使用方法における要求を十分に満たすものではなかった(特許文献3、特許文献4等参照)。
また、タルクを含む処理剤は取り扱い性に優れるものではなく、よりさらさら感と滑らかさを向上させるべく、タルクの増量や平均粒径の微細化等の改良を行うと、処理剤製造の際に経時的な増粘、シェアをかけたときの泡の巻き込みよる増粘、これらによる製造時の薬液飛散や塗布不良といった種々の弊害が顕著となり使用が困難であった。
【特許文献1】特許3450230号公報
【特許文献2】特開2001−29256号公報
【特許文献3】特開平5−156596号公報
【特許文献4】特開平7−82662号公報
【特許文献5】特開2006−118089号公報
【特許文献6】特開平9−296389号公報
【特許文献7】特表平8−511069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、トラブルなく処理剤製造及び基材紙への処理剤塗工が可能であり、しかも滑らかさやさらさら感がより向上された薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明及びその作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
基材紙に対して薄葉紙処理剤を5〜35重量%含有してなり、
前記基材紙は、1プライあたりの米坪が10〜35g/m2であり、
前記薄葉紙処理剤は、カチオン性界面活性剤とソルビタン脂肪酸エステルとタルクとを含有し、
前記ソルビタン脂肪酸エステルは、その脂肪酸部分が炭素数16以上の脂肪酸由来のものであり、
前記タルクは、平均粒子径が5〜25μmでありかつ粒度分布において粒子径5μm以下のものを10%以上、粒子径30μm以上のものを5%以上含む、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
【0005】
(作用効果)
本発明にかかる薄葉紙処理剤は、タルクを含有しつつも、その取り扱い性に難がない。
本発明の薄葉紙処理剤の構成により、タルク含有に起因する増粘等の問題が改善されるメカニズムは定かではないが、前記カチオン界面活性剤及び後述するソルビタン脂肪酸エステルとの関係で、タルクに作用する凝集力等が適当値になるとともに、粒度分布のブロード化によりタルク粒子間の相互作用が抑制されるものと推測される。
さらに当該範囲にタルク粒子径等を調整した場合には、前記カチオン界面活性剤及び後述するソルビタン脂肪酸エステルとの関係で予想以上の風合い向上、特に滑らかさが向上する。
風合い向上については、基材紙の繊維はアニオン系であるためこれに本発明の薄葉紙処理剤を含有させると、カチオン系界面活性剤との適度な結合力を介して特定粒子径等のタルク粒子が基材紙繊維に付着することになり、カチオン系界面活性剤の潤滑作用及びカチオン系界面活性剤との解離作用により、前記タルクの基材紙繊維に対する滑り性が向上され、肌に触れたときに滑らかさ、さらさら感が得られるようになると考えられる。
このように、本発明では処理剤製造時の粘度の増加などが改善され、処理剤の取り扱い性、塗工性が格段に向上されるため、塗工ムラなどがなくなり風合いが向上する。さらに処理剤の取り扱い性向上と相まって、薄葉紙の製造性は著しく改善される。例えば、抄造した基材紙に薄葉紙処理剤を付与した後、インターフォルダ等で折り畳む設備又は本出願人による特願2004−251874号に例示する折り畳み装置内で折り畳みのために基材紙を搬送する過程で薄葉紙処理剤を付与する設備での高速製造も可能となる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
ソルビタン脂肪酸エステルは、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンである請求項1記載の衛生薄葉紙。
【0007】
(作用効果)
特に、薄葉紙処理剤の安定性を良くする。また、滑らかさ、さらさら感もいっそう向上する。
【発明の効果】
【0008】
以上のとおり、本発明によれば、トラブルなく製造可能であり、しかも滑らかさやさらさら感がより向上された薄葉紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳説する。
本発明の薄葉紙は、1プライであっても、2プライ(2枚重ねで一組)、3プライ、4プライ又はそれ以上の複数プライであってもよい。複数プライとする場合、表面を構成する基材紙のみに薬液が含有されていても、全ての基材紙に薬液が含有されていてもよい。
他方、本発明の薄葉紙は、その伸び率が10〜20%、特に好ましくは10〜15%であるのがよい。伸び率が10%未満であると製造時に破れ、断紙等のトラブルが発生しやすくなる。また、伸び率が20%を超えると紙表面の凹凸の数が多いことから肌を擦った時にざらつきを感じることがある。
この伸び率は、JIS P 8113に準じて測定する。具体的には、紙の縦方向の乾燥引張強度を測定し、その破断直前の紙の長さと測定前の紙の長さとから、紙の伸び率を算出する。測定は最終製品、すなわち2プライの製品であれば2プライで、3プライの製品であれば3プライにて測定を行う。
他方、本発明の薄葉紙は、任意の点から1cmあたりの皺の数が、3000〜8000であるのがよい。皺の数が3000未満であると紙の伸びがなくなるため破れ、断紙等のトラブルが発生する。8000以上であると紙表面の凹凸の数が多いことから肌を擦った時にざらつきを感じることがある。なお、皺の数は、レーザー顕微鏡(キーエンス社製:VK−9510)にて、ティシューの皺間隔を4本分測定し、その間隔の平均から、1cmあたりの皺の数を算出した値である。
【0010】
〔基材紙について〕
本発明の薄葉紙の基材紙は、その薄葉紙のプライ数が任意であることから、同様に限定されない。薄葉紙の用途等に応じて適宜選択することができる。
ただし、1プライ当たりの米坪(JIS P 8124)は10.0〜35.0g/m2とする。米坪が10.0g/m2よりも小さいと、十分な強度を保つことができず製造時に破れ、断紙等の原因となる。また米坪が35.0g/m2よりも大きいと製造時にインターフォルダ等の折り畳み装置で折り畳んだ際に嵩高くなるため製品にした際の携帯性が悪化する。
他方、本発明の薄葉紙の基材紙の紙厚(尾崎製作所製ピーコックにより測定)は例えば2プライ(2枚重ね)で100〜300μm、特に130〜200μmであるのが好ましく、1プライの場合はその半分であるのが望ましい。
また、基材紙は、その伸び率が10〜35%、特に好ましくは15〜30%であるのが望ましい。基材紙自体の伸び率がこの範囲にあれば、薄葉紙処理剤を含有させたとしても前記薄葉紙の所望の伸び率を達成できる。なお、伸び率の測定方法は、前述の薄葉紙の伸び率の測定方法と同様である。
なお伸び率は、クレープ率との相関が大きく、当該伸び率を好適に達成するために、基材紙の製造時のクレープ率を12.0〜26.0%にするのが望ましい。なお、クレープ率は、式(((製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速))/(製紙時のドライヤーの周速)×100)により算出される値である。
他方、本発明の薄葉紙の基材紙は、既知の抄紙技術により得られる公知のものを限定無く用いることができるが、特にパルプ原料におけるNBKP配合率(JIS P 8120)が30.0〜80.0%、特に40.0〜70.0%であるものが好適である。
他方、本発明の基材紙としては、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)が、2プライで縦方向130cN/25mm以上、より好ましくは150cN/25mm以上、特に280〜400cN/25mm、横方向40cN/25mm以上、より好ましくは60〜100cN/25mm、特に60〜90cN/25mmのものを用いるのが好ましく、1プライの場合はその半分であるのが望ましい。基材紙の乾燥紙力が低過ぎると、製造時に破れ等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、紙力剤を内添(ドライヤーパートよりも前の段階、例えばパルプスラリーに添加)する、パルプのフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、NBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する、後述の薄葉紙処理剤に紙力剤を添加する等の手法を適宜数組み合わせることができる。
乾燥紙力剤としては、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等を用いることができる。湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で5〜20kg/t程度とすることができる。また、CMCを内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で0.5〜1.0kg/t程度とすることができる。
【0011】
〔薄葉紙処理剤について〕
本発明では、基材紙中に薄葉紙処理剤が含有される。薄葉紙における薄葉紙処理剤含有量は、本発明では基材紙に対して5〜35重量%とされる。特に好ましい範囲は20〜30重量%である。薄葉紙処理剤含有量が少な過ぎると効果が乏しくなるだけでなく、基材紙に対する塗布量が安定しなくなり、多過ぎるとべとつくようになり、さらさら感や滑らかさが阻害される。
薄葉紙処理剤を含有させるための方法としては、従来公知の方法、例えば、ロール転写法、スプレー塗布法、浸漬等の任意の方法を採用できる。
本発明の薄葉紙処理剤は、60〜100重量%程度、特に80〜95重量%程度の有効成分と、0〜40重量%程度、特に5〜20重量%程度の水分等の非有効成分とで構成することができる。
【0012】
(カチオン系界面活性剤)
本発明の薄葉紙処理剤は、滑らかさをより一層のものとするために、カチオン系界面活性剤を含有させる。
このカチオン界面活性剤は、滑らかさ感向上効果の他、基材紙の柔軟性を向上させる柔軟剤としても機能するため、この効果も考慮して配合量を定めるのが好ましい。界面活性剤は有効成分中0.05〜30重量%含有させるのがよく。より好ましい含有量は0.1〜10重量%である。界面活性剤が多過ぎると泡立ち易くなるため、風合いの悪化や操業性の悪化をもたらすおそれがあり、反対に少な過ぎると滑らか感向上効果、柔軟効果が乏しくなる。
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アミン塩、またはアミンなどをもちいることができる。例えば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、セトステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジベヘニルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
好適には、分子内にエステル結合を有する第4級アンモニウム塩(以下、エステル型第4級アンモニウム塩ということもある。)であり、具体的には下記一般式(I)で表されるトリエステル型第4級アンモニウム塩、一般式(II)で表されるジエステル型第4級アンモニウム塩、及び、一般式(III)で表されるモノエステル型第4級アンモニウム塩またはこれらの混合物である。このエステル型第4級アンモニウム塩の合成方法については、例えば、特開平5−98571、特願2007−141348に開示される。
【0013】
【化1】

【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
なお、一般式(I)〜(III)中、R1〜R3及びR5〜R7は、それぞれ炭素数9〜23、好ましくは13〜19のアルキル又はアルケニル基である。9以上であることにより、薄葉紙に適用したときにソフトな風合いを好適に付与でき、23以下であることにより、液安定性の高い薄葉紙処理剤とすることができる。
一般式(I)〜(III)中、R4は、炭素数1〜4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基である。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
一般式(I)〜(III)中、pは2〜4の整数であり、好ましくは2または3であって、特に2が好ましい。pが3の場合、−Cp2p−で表される基は、イソプロピレン基が望ましい。
一般式(I)〜(III)中、nは2〜4の整数であり、好ましくは2である。また、mは0〜3の整数であり、好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。一分子中の各n、m及びpは、それぞれ互いに同一であってもよく、あるいは相互に異なっていてもよい。
-はアニオンを示し、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンやメチル硫酸、エチル硫酸等のアルキル硫酸イオン、メチル炭酸イオンが好ましく、塩素イオン、臭素イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンがより好ましく、さらにはメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンが好ましい。特にメチル硫酸イオンが、設備の腐食性など、実用上の観点から好ましい。
【0017】
他方、本発明の薄葉紙処理剤は、平均粒子径が5〜25μmでありかつ粒度分布において粒子径5μm以下のものを5%以上、粒子径30μm以上のものを10%以上含むタルクを含有させる。この平均粒子径及び粒度分布は、レーザー回析・散乱法による。このレーザー回析・散乱法による測定は、例えば、島津製作所SALD−2000Jを用いて測定可能である。平均粒子径に関しては、好ましくは8〜20μm、特に好ましくは8〜16μmである。平均粒子径が5μm未満であるとタルクの凝集に起因すると考えられる薄葉紙処理剤の経時的な増粘が発生して薄葉紙処理剤としての使用が困難となる。平均粒子径が25μmを超えると滑らかさの向上が見込めなくなる。また、この平均粒子径範囲であっても、粒度分布において5μm以下のものを10%以上、粒子径30μm以上のものを5%以上含むようにしないと、タルク含有に起因すると考えられる増粘が発生する。
このタルクの平均粒子径等の範囲において粘度上昇が抑制されるメカニズムは定かではないが、前記カチオン界面活性剤及び後述するソルビタン脂肪酸エステルとの関係で、タルクに作用する凝集力等が適当値になるとともに、粒度分布のブロード化によりタルク粒子間の相互作用が抑制されたものとも推測される。
さらに当該範囲にタルク粒子径等を調整した場合には、前記カチオン界面活性剤及び後述するソルビタン脂肪酸エステルとの関係で予想以上の風合い向上、特に滑らかさが向上する。
ここでタルクは有効成分中1.0〜40重量%含有させるのがよく、より好ましい含有量は3〜25重量%である。タルクが多過ぎると、滑らかさの向上効果泡立ち易くなるため、風合いの悪化や操業性の悪化をもたらすおそれがあり、反対に少な過ぎると滑らか感向上効果、柔軟効果が乏しくなる。
【0018】
他方、本発明の薄葉紙処理剤においては、タルク以外の増粘に関与しないパウダー成分は用いることができる。用いうるパウダーの種類としては、例えば、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、加工澱粉、コーンスターチ、小麦粉、馬鈴薯澱粉、米澱粉、小麦粉タンパク質などを例示することができる。
ただし、パウダー成分は、平均粒子径が5μmを超えて200μm以下とされているのが好ましく、10〜100μmとされているのがより好ましい。パウダー成分の平均粒子径が5μm以下とされていると、肌への貼り付きを抑える効果が乏しく、べたつき感が残ってしまう。他方、パウダー成分の平均粒子径が200μmを超えると、肌への貼り付きは抑えられるものの、パウダー成分のザラザラした感触が強く感じられ、使用感が悪くなる恐れがある。
【0019】
他方、本発明の薄葉紙処理剤は、炭素数16以上の脂肪酸とソルビトールとのエステルを含有する。この特定のエステルは、非イオン性界面活性剤の一つであり、タルク含有による増粘の発現なく、効果的に滑らかさ感とさらさら感を向上させる。脂肪酸は、好ましくは炭素数が18〜24のもの、特に好適には炭素数18のステアリン酸である。
炭素数の16以上とすることで、前記疎水性のタルクとのなじみが良好となる適度な疎水性が発現し、前記タルクの平均粒子径等と相まって、薄葉紙処理剤の安定性と風合い向上を発現させるものと推測される。
【0020】
さらに、このソルビタン脂肪酸エステルとしては、エチレンオキサイドが付加されたポリオキシエチレンオキサイドソルビタン脂肪酸エステルが特に好ましい。この場合のエチレンオキサイド付加量は特に限定されず3〜100程度が選択されるが、好適には20である。
このソルビタン脂肪酸エステルは、有効成分中0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.2〜3重量%含有させるのがよい。0.05重量%未満であると、風合いが不足し、10重量%を超えると加工時の発泡性が高まるとともに、配合量以上の効果向上が見込めず経済的に不利となる。
さらに、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとカチオン界面活性剤との使用比率は、5/95〜70/30の範囲が好ましく、より好ましくは、10/90〜50/50である。この範囲のとき、カチオン界面活性剤とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの形成するゲル構造が発達して風合向上効果が顕著となる。
【0021】
また、他の有効成分としては、例えば保湿剤を含有させることができる。保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類、グルコール系薬剤およびその誘導体、流動パラフィン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せで用いることができる。なかでもヒアルロン酸は、本発明にかかるタルク及び界面活性剤との相性がよく、効果的にその保湿効果を発現させる。
保湿剤は、有効成分中50〜90重量%含有するのが好ましく、特に70〜85重量%含有するのが好ましい。保湿剤が多過ぎると、多過ぎるとべたつき感が増し、風合いの悪化や操業性の悪化をもたらすおそれがあり、少な過ぎるとさらさら感に乏しくなる。
【0022】
さらに別の有効成分としては、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン、グリシン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、シスチンなどのアミノ酸、アロエエキス、アマチャエキス、アシタバエキス、カリンエキス、キュウリエキス、スギナエキス、トマトエキス、ノバラエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、レンゲソウエキスなどの植物抽出エキス、キトサン、尿素、ハチミツ、ローヤルゼリー等を用いることができる。また、MPCポリマー(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体)のような角質細胞類似成分を添加することもできる。
これらの各種ビタミンや植物抽出エキス等の含有量は、有効成分中0.0001〜3重量%程度とするのが好ましい。
【0023】
薄葉紙処理剤は、各配合成分を均一に混合することにより、得ることができる。
他方、この薄葉紙処理剤は、20℃におけるpHが2〜9の範囲であることが好ましく、3〜8の範囲がより好ましい。そのために、必要に応じて適当なpH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、硫酸等)を添加することができる。pHが上記の範囲であると保存安定性が向上する。また、肌に対してよりやさしく低刺激性になり好ましい。
かくして得られる薄葉紙処理剤を基材紙に含有させることにより、ぬめり感、滑らかさ、さらさら感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が極めて良好な薄葉紙が得られる。
【0024】
〔好ましい製造方法例〕
他方、本発明の薄葉紙は製造方法によって限定されるものではないが、折り畳んで積層する製品形態、例えば箱詰め型のティシュペーパーの場合、抄造した基材紙に薄葉紙処理剤を付与した後、インターフォルダ等の折り畳み装置で折り畳むよりも、折り畳み装置内で折り畳みのために基材紙を搬送する過程で薄葉紙処理剤を付与するようにすると、効率良く製造でき、また薄葉紙処理剤や水分の蒸発も少なく、品質の安定した製品を製造できるようになるため好ましい。なお、後者の方法としては、本出願人による特願2004−251874号を例示することができる。
【実施例】
【0025】
表1に示す各種の2プライティシューペーパー(本発明に係る実施例1〜2および比較例1〜3)を製造し、官能評価および各種物性の測定を行った。薄葉紙処理剤の配合、基材紙の物性等は表1のとおりとした。官能評価の詳細は次記のとおりである。
「滑らかさ」
被験者30人の官能評価とした。評価は、試料となる薄葉紙を触る、顔にあてる、鼻をかむ等して滑らかさについて、どのように感じるかを比較例1を基準として、点数付けすることで行った。点数は、3点:比較例1と比べると明らかに風合いの劣ることがわかる、4点:比較例1と比べると風合いが若干劣ることがわかる、5点:比較例1と同等、6点:比較例1と比べると若干風合いが勝ることがわかる、7点:比較例1と比べると明らかに風合いの勝ることがわかる。表中の点数は30人の平均である。
「さらさら感」
被験者30人の官能評価とした。評価は、試料となる薄葉紙を触る、顔にあてる、鼻をかむ等してさらさら感について、どのように感じるかを比較例1を基準として、点数付けすることで行った。点数は、3点:比較例1と比べると明らかに風合いの劣ることがわかる、4点:比較例1と比べると風合いが若干劣ることがわかる、5点:比較例1と同等、6点:比較例1と比べると若干風合いが勝ることがわかる、7点:比較例1と比べると明らかに風合いの勝ることがわかる。表中の点数は30人の平均である。
「粘度差」
製造後40℃で4週間保存したものの粘度から初期の粘度を引いて算出した値である。粘度(単位:mPa・s)は、次のようにして測定した。100mLのサンプル瓶に前記調製した薄葉紙処理剤を100g入れ、40℃の恒温槽で2時間温度調整し、その後、B型粘度計(TOKIMEC製)により、1000mPa・s未満はNo.2ロータ、1000〜4000mPa・sはNo.3ロータを用い、30rpmで30秒後の値を読み取った。
「薬液安定性(経時)」
前記粘度差が20以下の場合を良(表中○)、粘度差が50以上の場合を使用可能(表中△)、粘度差が100以上の場合を使用困難(表中×)と評価した。
「薬液安定性(加工時)」
操業時の粘度上昇が200以下のものを操業性に優れる(表中○)、操業時の粘度上昇が200〜400以下のものを操業可能である(表中△)、操業時の粘度上昇が400を超えるものを操業にトラブルが生ずるおそれがある(表中×)。
「タルクの沈殿」
薬液の安定性試験の際に、タルクの沈殿が見られない又は沈殿は見られるが再分散可能である(表中○)、タルクの沈殿がみられるうえに再分散ができない(表中×)。
「薬剤等」
主たる薬剤については以下のものを使用した。それ以外は標準品である。
タルク(平均粒子径:7μm、5μ以下含有率:31%、30μ以上含有率:0.7%):MICRO−ACE−K−1(日本タルク社製)
タルク(平均粒子径:18μm、5μ以下含有率:6.9%、30μ以上含有率:23%):タルクMT−S(日本タルク社製)
タルク(平均粒子径:20μm、5μ以下含有率:6.4%、30μ以上含有率:32%):タルクMS−KY(日本タルク社製)
タルク(平均粒子径:9μm、5μ以下含有率:27%、30μ以上含有率:9.6%):タルクSW(日本タルク社製)
タルク(平均粒子径16μm、5μ以下含有率:13%、30μ以上含有率:26%):タルクMS−K(日本タルク社製)
ジエステルカチオン:エステル型第4級アンモニウム塩
【0026】
【表1】

【0027】
表1の結果より、本発明の実施例は、製造過程における薄葉紙処理剤や操業時における粘度の増加やタルクの沈殿は確認されなかった。それに対して、比較例1〜4については、処理剤の増粘が確認された。
また、本発明の実施例は、比較例と比較しても同等以上の滑らかさ、さらさら感が得られるとの官能評価を得られた。特に、この官能評価については、同じ薬液を用いても、基材紙の異なる実施例1、2と比較例5、6とで評価が大きくことなることから、本発明において基材紙も重要な要素であるといえる。
以上のことより、本発明によれば、トラブルなく製造可能であり、しかも滑らかさやさらさら感がより向上された薄葉紙が提供される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ティシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、クレープ紙等の薄葉紙に適用可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材紙に対して薄葉紙処理剤を5〜35重量%含有してなり、
前記基材紙は、1プライあたりの米坪が10〜35g/m2であり、
前記薄葉紙処理剤は、カチオン性界面活性剤とソルビタン脂肪酸エステルとタルクとを含有し、
前記ソルビタン脂肪酸エステルは、その脂肪酸部分が炭素数16以上の脂肪酸由来のものであり、
前記タルクは、平均粒子径が5〜25μmでありかつ粒度分布において粒子径5μm以下のものを10%以上、粒子径30μm以上のものを5%以上含む、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
【請求項2】
ソルビタン脂肪酸エステルは、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンである請求項1記載の衛生薄葉紙。

【公開番号】特開2009−35832(P2009−35832A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200165(P2007−200165)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】