説明

薬に利用可能な新規抗コリン作用物質及びその調製方法

【課題】活動特性によって1日1回投与する薬を調製することを可能にする、新規抗コリン作用物質を提供する。
【解決手段】本発明は、一般式(1)の新規抗コリン作用物質に関する(式中、A、X-、及びR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は明細書及び請求項において与えられる意味を持つ)。本発明はまた、これらの物質の薬としての使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式1の新規抗コリン作用物質に関し
【化1】

(式中、A、X-、及び、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の基は、請求項及び明細書中において与えられた意味を持つ)、その調製方法及び薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
抗コリン作用物質は、広範囲の病気に治療効果があるとして使用され得る。特に挙げられるのは、例えば、喘息又はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療である。
これらの疾患治療のために、WO 92/16528はスコピン、トロペノール又はトロピンの基本構造を有する抗コリン作用物質を提案している。
WO 92/16528の根本的な目的は、長期的な活性に特徴付けられる抗コリン作用性効果を持つ化合物の調製である。この目標を達成するためにWO 92/16528は特に、スコピン、トロペノール又はトロピンのベンジル酸エステルを開示している。
慢性疾患の治療のためには、多くの場合、より長い活性持続時間を有する薬の調製が望まれる。一般にこのことは、治療的効果を達成するのに必要とされる有効成分の体内濃度が、頻繁な間隔で薬を再投与する必要なしに長時間保証されることを確実にする。さらに、有効成分を長時間の間隔で投与することは、患者の安寧に対して高度に貢献する。特に、1日に1回の投与(単回投与)での治療的使用が可能な医薬組成物の調製が望ましい。1日1回の薬の使用は、患者は1日のうちの特定の時刻における規則的な薬の服用に比較的早く順応できるという点で優れている。
1日1回服用する薬として使用される目的で投与される有効成分は、特定の要求を満たさねばならない。まずは、望まれる活性が薬の投与後相対的に早く開始されるべきであり、理想的には、投与後かなり長い時間にわたってできるだけ一定な効果を有すべきである。その反面、薬の活性持続時間は、実質的に約1日の期間を越えてはならない。理想的には、有効成分が、治療上有益な量の有効成分を含む1日1回投与する薬の調製を計画的に調節し得るような活動特性を有することである。
WO 92/16528が開示するスコピン、トロペノール及びトロピンのベンジル酸エステルは、上記の厳しい要求を満たさないことが見出されている。これらの極端に長い活性期間は約1日の上述期間をはるかに越えるため、これらは1日あたりの単回投与に治療上用いることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の目的は、その活動特性によって1日1回投与する薬を調製することを可能にする、新規抗コリン作用物質を提供することである。本発明のさらなる目的は、相対的に早く開始される活性に特徴付けられる化合物を調製することである。本発明はさらに、早い活性開始の後、続く長時間にわたりできるだけ一定な活性を有する化合物の提供を目指す。本発明のさらなる目的は、治療上有益な量での活性持続時間が実質的に約1日の期間を越えない化合物を提供することである。最終的に、本発明は、治療的効果の優れた制御(例えば、体内における薬の蓄積によって引き起こされる副作用を伴わない、全治療的効果)を確実なものとする活動特性を有する化合物を提供することを目指す。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の詳細な説明)
驚くべきことに、一般式1の化合物(式中、R7の基はヒドロキシを表さない)を用いることにより、上記目的が達成されることを見出した。
従って、本発明は一般式1の化合物に関する。
【化2】

(式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化3】

X-は一価の陰電荷を有するアニオンを表し;
R1及びR2はC1-C4-アルキルを表し、これはヒドロキシ又はハロゲンによって置換されていてもよく;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキルオキシ、ヒドロキシ、CF3、CN、NO2、又はハロゲンを表し;
R7は、水素、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキルオキシ、C1-C4-アルキレン-ハロゲン、ハロゲン-C1-C4-アルキルオキシ、C1-C4-アルキレン-OH、CF3、-C1-C4-アルキレン-C1-C4-アルキルオキシ、-O-COC1-C4-アルキル、-O-COC1-C4-アルキル-ハロゲン、-O-COCF3又はハロゲンを表す。
ただし、
Aが以下のものを表し、
【化4】

R1及びR2がメチルを表し、
R3、R4、R5及びR6が水素を表す場合、
R7は水素ではない。)
【0005】
好ましい一般式1の化合物は、以下のものである。すなわち、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化5】

X-は、クロリド、ブロミド、メチルサルフェート、4-トルエンスルホネート及びメタンスルホネートより選択される一価の陰電荷を有するアニオンを表し、好ましくはブロミドであり;
R1及びR2は、同一又は異なってもよく、メチル、エチル、n-プロピル及びiso-プロピルより選択される基を表し、これらはヒドロキシ又はフッ素によって置換されていてもよく、好ましくは置換されていないメチルであり;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素、CN、CF3又はNO2を表し;
R7は、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、-CH2-F、-CH2-CH2-F、-O-CH2-F、-O-CH2-CH2-F、-CH2-OH、-CH2-CH2-OH、CF3、-CH2-OMe、-CH2-CH2-OMe、-CH2-OEt、-CH2-CH2-OEt、-O-COMe、-O-COEt、-O-COCF3、-O-COCF3、フッ素、塩素又は臭素を表す。
特に好ましくは、一般式1の化合物であって、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化6】

X-は、クロリド、ブロミド及びメタンスルホネートより選択される一価の陰電荷を有するアニオンを表し、好ましくはブロミドであり;
R1及びR2は、同一又は異なってもよく、メチル及びエチルより選択される基を表し、これらはヒドロキシ又はフッ素で置換されていてもよく、好ましくは置換されていないメチルであり;
R3、R4、R5、及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、ヒドロキシ、フッ素、塩素又は臭素を表し;
R7は、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、CF3又はフッ素を表す。
【0006】
本発明による好ましい一般式1の化合物は、以下のものである。すなわち、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化7】

X-はブロミドを表し;
R1及びR2は、同一又は異なってもよく、メチル及びエチルより選択される基を表し、好ましくはメチルであり;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、メチル、メチルオキシ、塩素又はフッ素を表し;
R7は、水素、メチル又はフッ素を表す。
本発明において特に重要なのは、一般式1の化合物であって、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化8】

X-はブロミドを表し;
R1及びR2は、同一又は異なってもよく、メチル又はエチルを表し、好ましくはメチルであり;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素又はフッ素を表し、好ましくは水素であり;
R7は、水素、メチル又はフッ素を表し、好ましくはメチル又はフッ素、最も好ましくはメチルである。
本発明は式1の化合物に関し、これらは独立した光学異性体、独立した鏡像異性体の混合物、又はそれらのラセミ化合物の形態をとってもよい。
【0007】
一般式1の化合物において、R3、R4、R5及びR6の基は水素を表さない場合に、"-C-R7"基の方向に向かう結合に対して、各々オルト、メタ又はパラ位をとり得る。R3、R4、R5及びR6のどれも水素を表さない場合には、R3及びR5はパラ位に結合するのが好ましく、R4及びR6はオルト又はメタ位に結合するのが好ましいが最も好ましいのはメタ位である。R3及びR4の基の一つとR5及びR6の基の一つが水素を表す場合には、各対の他方の基はメタ又はパラ位に結合するのが好ましいが、最も好ましいのはパラ位である。R3、R4、R5及びR6のどれも水素を表さない場合には、本発明によると、R3、R4、R5及びR6の基が同じ意味を有する一般式1の化合物が、特に好ましい。
本発明において特に重要な一般式1の化合物は、窒素二環式基上のエステル置換基がα配置をとるものである。これらの化合物は一般式1-αに相当する。
【化9】

本発明によれば、以下の化合物が特に重要である:
-トロペノール2,2-ジフェニルプロピオネート-メトブロミド;
-スコピン2,2-ジフェニルプロピオネート-メトブロミド;
-スコピン2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセテート-メトブロミド;
-トロペノール2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセテート-メトブロミド。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
特に指定のない限り、アルキル基は1〜4の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル基である。以下のものがその一例として挙げられる:メチル、エチル、プロピル又はブチル。一部の例では、省略形Me、Et、Prop又はBuは、メチル、エチル、プロピル又はブチルを表すのに用いられる。特に指定のない限り、プロピル及びブチルという定義は、その可能な異性体形の基を全て含む。従って例えば、プロピルはn-プロピル及びiso-プロピルを含み、ブチルはiso-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル等を含む。
特に指定のない限り、アルキレン基は1〜4の炭素原子を有する分枝及び分枝でない二重結合のアルキル・ブリッジである。以下のものがその一例として挙げられる:メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレン。
特に指定のない限り、アルキレン-ハロゲン基はハロゲンにより1、2又は3置換された1〜4の炭素原子を有する分枝及び分枝でない二重結合のアルキル・ブリッジであり、好ましくはハロゲンにより1置換されたものである。従って、特に指定のない限り、アルキレン-OH基はヒドロキシにより1、2又は3置換された1〜4の炭素原子を有する分枝及び分枝でない二重結合のアルキル・ブリッジであり、好ましくはヒドロキシにより1置換されたものである。
特に指定のない限り、アルキルオキシ基という用語は、酸素原子を介して結合する1〜4の炭素原子を有する分枝及び分枝でないアルキル基を表す。それらの例は以下のものを含む:メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ又はブチルオキシ。一部の例では、省略形MeO-、EtO-、PropO-又はBuO-は、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ又はブチルオキシ基を表すのに用いられる。特に指定のない限り、プロピルオキシ及びブチルオキシという定義は、その可能な異性体形の基を全て含む。従って、例えば、プロピルオキシはn-プロピルオキシ及びiso-プロピルオキシを含み、ブチルオキシはiso-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ及びtert-ブチルオキシ等を含む。本発明の範囲において一部の例では、アルコキシという用語はアルキルオキシという用語の代わりに用いられている。従って、メトキシ、エトキシ、プロポキシ又はブトキシという用語は、メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ又はブチルオキシ基を表すのにも用いられ得る。
特に指定のない限り、アルキレン-アルキルオキシ基は、アルキルオキシ基によって1、2又は3置換された1〜4の炭素原子を有する分枝又は分枝でない二重結合のアルキル・ブリッジを表し、好ましくはアルキルオキシ基によって1置換されたものである。
特に指定のない限り、-O-CO-アルキル基という用語はエステル基を介して結合する1〜4の炭素原子を有する分枝又は分枝でないアルキル基を表す。前記アルキル基は、エステル基のカルボニル炭素と直接結合している。-O-CO-アルキル-ハロゲン基という用語もそれと同様に理解されるべきである。-O-CO-CF3基はトリフルオロアセテートを表す。
本発明の範囲において、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す。特に指定のない限り、フッ素及び臭素が、好ましいハロゲン類である。CO基はカルボニル基を表す。
【0009】
本発明に記載する化合物は部分的に、以下に図解するような先行技術によって既知の手順と同じように、調製されてもよい(ダイヤグラム1)。式3のカルボン酸誘導体は、この技術分野において知られているものであるか、又は、この技術分野において知られる合成方法を用いて得られてもよい。仮に、適切に置換されたカルボン酸のみがこの技術分野において知られている場合には、式3の化合物は、対応するアルコールとともに酸又は塩基を触媒とするエステル化、又は、対応するハロゲン化試薬とともにハロゲン化することによって、それらから直接得ることもできる。
【化10】

ダイヤグラム1:
2の化合物から出発して、式3のカルボン酸誘導体(式中、Rは例えば、塩素又はC1-C4-アルキルオキシ基を表す)と反応させることにより、一般式4のエステルを得ることができる。RがC1-C4-アルキルオキシ基を表す場合に、例えば、高温、好ましくは約50〜150℃、最も好ましくは約90〜100℃であって、低圧、好ましくは500 mbar以下、最も好ましくは75 mbar以下でナトリウム融解生成物中において、この反応を行うことができる。あるいは、RがC1-C4-アルキルオキシを表す誘導体3の代わりに、対応する酸クロリド(RがClに相当する)を用いることもできる。
このようにして得られた式4の化合物は、R2-X化合物(式中、R2及びXは上に定義したものである)と反応させることにより、式1の目的化合物に転換され得る。この合成工程も、WO 92/16528が開示する合成例と同じように行うことができる。
ダイヤグラム1に図解した式4の化合物を合成する手順の代わりに、式4の化合物(式中、窒素二環式基はトロペニル基である)の酸化(エポキシ化)によって、窒素二環式基がスコピン誘導体である誘導体4を得ることができる。本発明によれば、これは以下のように行うことができる。
化合物4(式中、Aは-CH=CH-を表す)を極性有機溶媒、好ましくはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドより選択される溶媒、さらに好ましくはジメチルホルムアミド、に懸濁した後、約30〜90℃の温度、好ましくは40〜70℃、に熱する。それから適切な酸化剤を加え、この混合物を、温度を一定に保って2〜8時間、好ましくは3〜6時間攪拌する。好ましい酸化剤は、五酸化バナジウムをH2O2と一緒に混合したもの、最も好ましくはH2O2-尿素複合体と五酸化バナジウムの併用である。前記混合物は徐々に反応が進行する。この生成物は、それ自体の結晶化傾向に従って、結晶化又はクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0010】
あるいは、式4の化合物(式中、R7はハロゲンを表す)は、ダイヤグラム2に示す方法によっても得ることができる。
【化11】

ダイヤグラム2:
このため、式5のベンジル酸エステルは、適切なハロゲン化試薬を用いて、化合物4(式中、R7はハロゲンを表す)に転換される。このハロゲン化反応がダイヤグラム2に従って進行することは、この技術分野において既に充分よく知られている。
5のベンジル酸エステルは、この技術分野において知られる方法(例えばWO 92/16528を参照)に基づいて、又は、それと同様に得ることができる。
ダイヤグラム1に示す一般式4の中間生成物は、非常に重要である。従って、もう一つの側面において、本発明は式4の中間生成物に関する。
【化12】

(式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化13】

R1はC1-C4-アルキルを表し、これはヒドロキシ又はハロゲンで置換されていてもよく;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキルオキシ、ヒドロキシ、CF3、CN、NO2又はハロゲンを表し;
R7は、水素、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルキルオキシ、C1-C4-アルキレン-ハロゲン、ハロゲン-C1-C4-アルキルオキシ、C1-C4-アルキレン-OH、CF3、-C1-C4-アルキレン-C1-C4-アルキルオキシ、-O-COC1-C4-アルキル、-O-COC1-C4-アルキル-ハロゲン、-O-COCF3又はハロゲンを表す。
ただし、
Aが以下のものを表し、
【化14】

R1がメチルを表し、
R3、R4、R5及びR6が水素を表す場合、
R7はn-プロピルではない。)
【0011】
さらに好ましいのは、一般式1の化合物であって、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化15】

R1は、同一又は異なってもよく、メチル、エチル、n-プロピル及びiso-プロピルより選択される基を表し、これはヒドロキシ又はフッ素で置換されていてもよく、好ましくは置換されていないメチルであり;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素、CN、CF3又はNO2を表し;
R7は、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、-CH2-F、-CH2-CH2-F、-O-CH2-F、-O-CH2-CH2-F、-CH2-OH、-CH2-CH2-OH、CF3、-CH2-OMe、-CH2-CH2-OMe、-CH2-OEt、-CH2-CH2-OEt、-O-COMe、-O-COEt、-O-COCF3、-O-COCF3、フッ素、塩素又は臭素を表す。
特に好ましいのは、一般式1の化合物であって、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化16】

R1は、同一又は異なってもよく、メチル及びエチルより選択される基を表し、これはヒドロキシ又はフッ素で置換されていてもよく、好ましくは置換されていないメチルであり;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、ヒドロキシ、フッ素、塩素又は臭素を表し;
R7は、水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、CF3又はフッ素を表す。
【0012】
本発明の好ましい一般式1の化合物は、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化17】

R1は、同一又は異なってもよく、メチル及びエチルより選択される基を表し、好ましくはメチルであり;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素、メチル、メチルオキシ、塩素又はフッ素を表し;
R7は、水素、メチル又はフッ素を表す。
本発明の特に重要なのは、一般式1の化合物であって、
式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化18】

R1は、同一又は異なってもよく、メチル又はエチルを表し、好ましくはメチルであり;
R3、R4、R5及びR6は、同一又は異なってもよく、水素又はフッ素を表し、好ましくは水素であり;
R7は、水素、メチル又はフッ素を表し、好ましくはメチル又はフッ素、最も好ましくはメチルである。
一般式1の化合物のように、式4の中間生成物においても、R3、R4、R5及びR6の基が水素を表さない場合に、これらは"-C-R7"基の方向に向かう結合に対して各々オルト、メタ又はパラ位をとり得る。R3、R4、R5及びR6の基のどれも水素を表さない場合、R3及びR5はパラ位に結合するのが好ましく、R4及びR6はオルト又はメタ位に結合するのが好ましいが最も好ましくはメタ位である。R3及びR4の基の一つ、及びR5及びR6の基の一つが水素を表す場合、各対において他方の基はメタ又はパラ位に結合するのが好ましく、パラ位が最も好ましい。R3、R4、R5及びR6のいずれの基も水素を表さない場合、本発明によると、R3、R4、R5及びR6の基が同じ意味を持つ一般式4の中間生成物が特に好ましい。
以下に記述する合成の実施例は、本発明をさらに詳しく説明するのに役立つ。
しかしながら、これらは本発明の手段の具体例を説明することのみを意図するものであって、本発明を実施例として記述する記述記号内容に限定するものではない。
【実施例】
【0013】
実施例1:スコピン2,2-ジフェニルプロピオネート-メトブロミド:
【化19】

1.1: 2,2-ジフェニルプロピオン酸クロリド 3a:
オキサリルクロリド52.08 g(0.33 mol)を、2,2-ジフェニルプロピオン酸25.0g(0.11 mol)、ジクロロメタン100 ml及びジメチルホルムアミド4滴の懸濁液に20℃でゆっくり滴下する。前記混合物を、20℃で1時間攪拌し、50℃で0.5時間攪拌する。この溶媒を留去し、残った残留物を、さらなる精製を行わずに次の工程に用いる。
1.2: スコピン2,2-ジフェニルプロピオネート 4a:
1.1の工程で得られた残留物をジクロロメタン100 mlに溶解したものに、スコピン51.45 g(0.33 mol)を加えたジクロロメタン200 mlの溶液を40℃にして滴下する。得られた懸濁液を40℃で24時間攪拌し、生成した沈殿物を吸引フィルターにかける。この濾液を、最初に水で、その後、塩酸水溶液で酸性抽出する。これらを混合した水相を、炭酸ナトリウム水溶液を用いてアルカリ性にし、ジクロロメタンを用いて抽出する。得られた有機相をNa2SO4で乾燥し、蒸発乾固すると、前記残留物から塩酸塩が沈殿する。この生成物をアセトニトリルで再結晶化して精製する。
収率:20.85 g(=理論値の47%)
TLC:Rf値:0.24(溶離液:sec-ブタノール/蟻酸/水 75:15:10);
融点:203〜204℃
1.3: スコピン2,2-ジフェニルプロピオネート-メトブロミド:
4aを11.98 g(0.033 mol)、アセトニトリル210 ml、ジクロロメタン70 ml及びブロモメタン46.92%のアセトニトリル溶液20.16 g(0.1 mol)を20℃で混合し、3日間静置しておく。この溶液を蒸発乾固し、残留物をイソプロパノールで再結晶化する。
収率:11.34 g(=理論値の75%);融点:208〜209℃
C24H28NO3xBr(458.4);
元素分析:計算値:C(62.89) H(6.16) N(3.06)
実測値:C(62.85) H(6.12) N(3.07)
【0014】
実施例2:スコピン2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセテート-メトブロミド:
【化20】

2.1: スコピンベンジレート 5a:
この技術分野において、スコピンベンジレートの調製方法は知られており、WO 92/16528に記述されている。
2.2: スコピン2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセテート 4b:
ジメチルアミノスルファトリフルオリド2.66 g(0.02 mol)をジクロロメタン10 mlに溶解し0℃に冷却する。これに5.48 g(0.015 mol)のスコピンベンジレート5aをジクロロメタン100 mlに加えた溶液を滴下する。この混合物を0℃で30分より長く攪拌した後、20℃で30分攪拌する。冷却しながら、この溶液を水と混合し、NaHCO3を加えて(pH7〜8になるまで)、有機相を分離する。その水相からジクロロメタンを用いて抽出する。これと前記有機相との混合物を水で洗い、Na2SO4で乾燥し、蒸発乾固する。
残留物から塩酸塩を沈殿させ、それをアセトニトリルで再晶化する。
収率:6.90 g(=理論値の85%)
融点:227〜230℃
2.3: スコピン2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセテート-メトブロミド:
スコピンベンジレートの遊離塩基2.88 g(0.0078 mol)を1.3の工程と同様な手順で反応させる。この生成物をイソプロパノールで再結晶化して精製する。
収率:2.62 g(=理論値の73%)
TLC:Rf値:0.31(溶離液は工程1.2と同様);融点:130〜134℃
【0015】
実施例3:トロペノール2,2-ジフェニルプロピオネート-メトブロミド:
【化21】

3.1: メチル2,2-ジフェニルプロピオネート 3b:
37.60 g(0.247 mol)のDBUを、2,2-ジフェニルプロピオン酸50.8 g(0.225 mol)とアセトニトリル200 mlの懸濁液に20℃で滴下する。得られた溶液にヨウ化メチル70.10 g(0.494 mol)を30分以内に滴下する。その後、この混合物を20℃で一晩攪拌する。この溶媒を濃縮し、ジエチルエーテル/水を用いて残留物を抽出する。この有機相を水で洗って、Na2SO4で乾燥し、蒸発乾固する。
収率:粘性残留物48.29 g(=理論値の89%)
3.2: トロペノール2,2-ジフェニルプロピオネート 4c:
4,80 g(0.02 mol)のメチル2,2-ジフェニルプロピオネート3b、トロペノール2.78 g(0.02 mol)、ナトリウム0.046 gを、75 mbarで4時間、時々振とうしながら沸騰した湯浴で熱して融解する。このナトリウム残留物を冷却した後、アセトニトリルに溶解する。この溶液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン/水で抽出する。その有機相を水で洗い、MgSO4を用いて乾燥し、蒸発乾固する。
残留物から4cが塩酸塩として沈殿し、これをアセトンで再結晶化する。
収率:5.13 g(=理論値の67%)
TLC:Rf値:0.28(溶離液:sec-ブタノール/蟻酸/水 75:15:10);
融点:134〜135℃
3.3: トロペノール2,2-ジフェニルプロピオネート-メトブロミド:
2.20 g(0.006 mol)の4cを実施例1の工程1.3と同様に反応させる。生成した結晶を吸引フィルターにかけ、ジクロロメタンで洗い、乾燥し、メタノール/ジエチルエーテルで再結晶化する。
収率:1.84 g(=理論値の66%)
TLC:Rf値:0.11(溶離液は工程1.2と同じ);融点:222〜223℃
C24H28NO2xBr (442.4);
元素分析:計算値:C(65.16) H(6.38) N(3.17)
実測値:C(65.45) H(6.29) N(3.16)
【0016】
実施例4:トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(3,4-ジフルオロフェニル)アセテート-メトブロミド:
【化22】

4.1: エチル3,3',4,4'-テトラフルオロベンジレート 3c:
グリニャール試薬は、2.24 g(0.092 mol)のマグネシウム片、数粒のヨウ素、1-ブロモ-3,4-ジフルオロベンゼン17.80 g(0.092 mol)をTHF100 mlに加えて50℃にして調製する。ハロゲン化物を全て加えた後、混合物をさらにもう1時間攪拌する。このようにして得られたグリニャール試薬を、エチル3,4-ジフルオロフェニルグリオキシレート18.81 g(0.088 mol)をTHF80 mlに加えたものに10〜15℃で滴下する。この得られた混合物を5℃で2時間攪拌する。
得られた白い懸濁液を氷/硫酸に注いで反応を完了させ、エチルアセテートを用いて抽出する。この有機相を水で洗い、MgSO4で乾燥し、蒸発乾固する。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液:トルエン)で精製する。
収率:オイル10.80 g(=理論値の38%)
4.2: トロペノール3,3',4,4'-テトラフルオロベンジレート 5b:
4.27 g(0.013 mol)のエチル3,3',4,4'-テトラフルオロベンジレート3c、トロペノール1.81 g(0.013 mol)及びナトリウム0.03 gを、75 mbarで4時間、時々振とうしながら沸騰した湯浴で熱して融解する。このナトリウム残留物を冷却した後、アセトニトリルに溶解する。この溶液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン/水で抽出する。その有機相を水で洗い、MgSO4で乾燥し、蒸発乾固する。
得られた残留物を1:9のジエチルエーテル/石油エーテルと混合し、吸引フィルターにかけ、洗う。
収率:2.50 g(=理論値の46%);
TLC: Rf値:0.29(溶離液:sec-ブタノール/蟻酸/水 75:15:10);
融点:147〜148℃
【0017】
4.3: トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(3,4-ジフルオロフェニル)アセテート 4d:
ビス-(2-メトキシエチル)-アミノスルファトリフルオリド2.66 g(0.012 mol)をジクロロメタン10 mlに加えたものに、0.01 molの5bをジクロロメタン65 mlに溶解した溶液を、15〜20℃で20分以内に滴下する。
この混合物を常温で20時間攪拌し、0℃に冷却して、充分攪拌しながら水80 mlを慎重に混ぜる。NaHCO3水溶液を用いて前記混合物をpH 8に慎重に調整し、有機相を分離する。その水相をジクロロメタンで再抽出し、前記有機相と合わせて水で洗い、MgSO4で乾燥し、蒸発乾固する。塩酸塩を沈殿させて、アセトニトリル/ジエチルエーテルで再結晶化する。
収率:白色結晶2.60 g(=理論値の57%)
融点:233℃
4.4: トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(3,4-ジフルオロフェニル)アセテート-メトブロミド:
2.20 g(0.0052 mol)の4dを、実施例1の工程1.3と同様に反応させる。生成した結晶を吸引フィルターにかけてジクロロメタンで洗い、乾燥し、メタノール/ジエチルエーテルで再結晶化する。
収率:1.95 g(=理論値の72%)
TLC: Rf値:0.17(溶離液:n-ブタノール/水/濃蟻酸/アセトン/ジクロロメタン 36:15:15:15:5);融点:247℃
C23H21F5NO2xBr(518.3);
元素分析:計算値:C(53.30) H(4.08) N(2.70)
実測値:C(53.22) H(4.19) N(2.69)
【0018】
実施例5:スコピン2,2-ジフェニルプロピオネート-エチルブロミド:
【化23】

1.81 g(0.005 mol)の4a、アセトニトリル35 ml、エチルブロミド1.64 g(0.015 mol)を20℃で混合した後、3日間静置する。この溶液を蒸発乾固して、残留物をエタノールで再結晶化する。
収率:1.38 g(=理論値の58%);融点:208〜209℃
TLC: Rf値:0.33(溶離液は工程1.2と同様);融点:210〜211℃
C25H30NO3xBr(472.42);
元素分析:計算値:C(63.56) H(6.40) N(2.96)
実測値:C(63.49) H(6.24) N(2.88)
実施例6:スコピン2-フルオロ-2,2-ビス(3,4-ジフルオロフェニル)アセテート-メトブロミド:
【化24】

6.1: スコピン3,3',4,4'-テトラフルオロベンジレート 5c:
3.61 g(0.011 mol)のエチル3,3',4,4'-テトラフルオロベンジレート3c、スコピン1.71 g(0.011 mol)、ナトリウム0.03 gを、75 mbarで4時間、時々振とうしながら沸騰した湯浴で熱して融解する。ナトリウム残留物を冷却した後、アセトニトリルに溶解する。この溶液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン/水で抽出する。その有機相を水で洗い、MgSO4で乾燥し、蒸発乾固する。
得られた残留物を1:9のジエチルエーテル/石油エーテルと混合し、吸引フィルターにかけ、洗う。
収率:1.75 g(=理論値の36%);
融点:178〜179℃
6.2: スコピン2-フルオロ-2,2-ビス(3,4-ジフルオロフェニル)アセテート 4e: ビス-(2-メトキシエチル)-アミノスルファトリフルオリド0.6 ml(0.0033 mol)を、1.2 g(0.0028 mol)の5cとともに、実施例4の工程4.3と同様に反応させる。
収率:無色のオイル1.15 g(=理論値の95%)
6.3: スコピン2-フルオロ-2,2-ビス(3,4-ジフルオロフェニル)アセテート-メトブロミド:
1.15 g(0.0026 mol)の4eと50%メチルブロミド溶液1.5 g(0.0079 mol)を実施例1の工程1.3と同様に反応させる。生成した結晶を吸引フィルターにかけ、ジクロロメタンで洗い、乾燥し、アセトンで再結晶化する。
収率:0.88 g(=理論値の63%)
TLC: Rf値:0.27(溶離液:n-ブタノール/水/濃蟻酸/アセトン/ジクロロメタン 36:15:15:15:5);融点:212℃
C23H21F5NO3xBr(535.33)
【0019】
実施例7:トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)アセテート-メトブロミド:
【化25】

7.1: メチル4,4'-ジフルオロベンジレート 3d:
7.1.1: 4,4'-ジフルオロベンジル酸:
4,4'-ジフルオロベンジル24.62 g(0.1 mol)をジオキサン250 mlに加えた溶液を、NaOHフレーク49.99 g(1.25 mol)を水300 mlに加えた溶液に約100℃で滴下し、2時間攪拌する。このジオキサンの大部分を留去し、残った水溶液をジクロロメタンで抽出する。その水溶液を硫酸で酸性にして、生成した沈殿物を吸引フィルターにかけ、洗い、乾燥する。その濾液をジクロロメタンで抽出して、得られた有機相をNa2SO4で乾燥して、蒸発乾固する。
収率:25.01 g(=理論値の95%);融点:133〜136℃

7.1.2: メチル4,4'-ジフルオロベンジレート:
4,4'-ジフルオロベンジル酸25.0 g(0.095 mol)をナトリウム2.17 g(0.095 mol)とエタノール200 mlを含む新しく調製したナトリウムエトキシド溶液に20℃で加え、3時間攪拌する。その溶液を蒸発乾固して、残留物をDMFに溶解する。ヨウ化メチル22.57 g(0.16 mol)を20℃で滴下し、この混合物を24時間攪拌する。これを、化合物3bと同様に、反応を終了させて精製する。
収率:21.06 g(=理論値の80%)
【0020】
7.2: トロペノール4,4'-ジフルオロベンジレート 5d:
11.13 g(0.04 mol)のメチル4,4'-ジフルオロベンジレート3d、トロペノール5.57 g(0.04 mol)を、ナトリウム0.09 gとともに、実施例3の工程3.2と同様に反応させる。この生成物をアセトニトリルで再結晶化する。
収率:10.43 g(=理論値の62%);
融点:233〜235℃
7.3: トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)-アセテート 4f: ビス-(2-メトキシエチル)-アミノスルファトリフルオリド2.94 g(0.013 mol)を、3.85 g(0.01 mol)の5dとともに、実施例4の工程4.3と同様にジクロロメタン100 ml中で反応させる。この生成物をアセトニトリルで再結晶化し、塩酸塩として得られる。
収率:2.93 g(=理論値の69%)
7.4: トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)-アセテート-メトブロミド:
2.6 g(0.0067 mol)の4fと50%メチルブロミド溶液1.9 g(0.0079 mol)を、実施例1の工程1.3と同様に反応させる。生成した結晶を吸引フィルターにかけ、ジクロロメタンで洗い、乾燥してメタノール/ジエチルエーテルで再結晶化する。
収率:白色結晶2.82 g(=理論値の87%)
TLC: Rf値:0.55(溶離液:実施例1の工程1.2に準ずる)
融点:230〜231℃
C23H23F3NO2xBr(482.34);
元素分析:計算値:C(57.27) H(4.81) N(2.90)
実測値:C(57.15) H(4.84) N(2.96)
【0021】
実施例8:スコピン2-フルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)アセテート-メトブロミド:
【化26】

8.1: スコピン4,4'-ジフルオロベンジレート 5e:
4.22 g(0.01 mol)のトロペノール4,4'-ジフルオロベンジレート5dをDMF80 mlに懸濁する。これに、H2O2-尿素2.57 g(0.0273 mol)を水20 mlに溶解し約40℃にした溶液に、五酸化バナジウム0.2 g(0.0011 mol)を加える。得られた混合物を60℃で4.5時間攪拌する。20℃に冷却した後、生成した沈殿物を吸引フィルターにかける。その濾液を4N塩酸でpH3に調整し、水に溶解したNa2S2O5と混合する。得られた緑色溶液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン/水で抽出する。この酸性水相をNa2CO3で塩基性にして、ジクロロメタンで抽出する。得られた有機相をNa2SO4で乾燥して、濃縮する。
アセチルクロリド0.5 mlを約15℃で加え、1.5時間攪拌する。これを0.1N塩酸で抽出した後、その水相を塩基性にして、ジクロロメタンで抽出する。得られた有機相をNa2SO4で乾燥し、蒸発乾固する。残留物から塩酸塩を沈殿させ、メタノール/ジエチルエーテルで再結晶化する。
収率:白色結晶3.61 g(=理論値の78%);
融点:243〜244℃
【0022】
8.2: スコピン2-フルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)-アセテート 4g:
ビス-(2-メトキシエチル)-アミノスルファトリフルオリド1.48 g(0.0067 mol)を2.0 g(0.005 mol)の5eとともに、実施例4の工程4.3と同様に、ジクロロメタン80 ml中で反応させる。この生成物をエタノールで再結晶化し、塩酸塩として得られる。
収率:2.07 g(=理論値の94%);融点:238〜239℃
8.3: スコピン2-フルオロ-2,2-ビス(4-フルオロフェニル)-アセテート-メトブロミド:
1.6 g(0.004 mol)の4gと50%メチルブロミド溶液1.14 g(0.0079 mol)を、実施例1の工程1.3と同様に反応させる。生成した結晶を吸引フィルターにかけ、ジクロロメタンで洗い、乾燥して、アセトニトリルで再結晶化する。
収率:白色結晶1.65 g(=理論値の61%)
TLC: Rf値:0.25(溶離液:実施例1の工程1.2に準ずる);
融点:213〜214℃
C23H23F3NO3xBr(498.34);
元素分析:計算値:C(55.43) H(4.65) N(2.81)
実測値:C(54.46) H(4.67) N(2.80)
【0023】
実施例9:トロペノール2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセテート-メトブロミド:
【化27】

9.1: トロペノールベンジレート 5f:
トロペノールベンジレート及びその調製方法はWO 92/16528によって知られている。
9.2: トロペノール2-フルオロ-2,2-ジフェニルアセテート 4h:
ビス-(2-メトキシエチル)-アミノスルファトリフルオリド15.86 ml(0.086 mol)を25 g(0.072 mol)の5fとともに、実施例4の工程4.3と同様に、クロロホルム480 ml中で反応させる。この生成物をアセトンで再結晶化し、塩酸塩として得られる。
収率:白色結晶18.6 g(=理論値の67%);
融点:181〜182℃
9.3: トロペノール2-フルオロ-2,2-ジフェニル-アセテート-メトブロミド:
11.12 g(0.032 mol)の4hと50%メチルブロミド溶液18.23 g(0.096 mol)を、実施例1の工程1.3と同様に反応させる。生成した結晶をアセトニトリルで再結晶化する。
収率:白色結晶11.91 g(=理論値の83%)
TLC: Rf値:0.4(溶離液:実施例4の工程4.4に準ずる);
融点:238〜239℃
C23H25FNO2xBr(446.36)
元素分析:計算値:C(61.89) H(5.65) N(3.14)
実測値:C(62.04) H(5.62) N(3.17)
【0024】
実施例10:トロペノール2-フルオロ-2,2-(3-クロロフェニル)アセテート-メトブロミド:
【化28】

10.1: メチル3,3'-ジクロロベンジレート 3e:
10.1.1:3,3'-ジクロロベンジル:
常温のエタノール100 mlに3-クロロベンズアルデヒド50.0 g(0.356 mol)と3-エチル-5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾリウムブロミド4.54 g(0.018 mol)を加える。その後、トリエチルアミン10.7 g(0.11 mol)を滴下する。この混合物を3時間還流し、蒸発乾固する。この残留物をエチルアセテートに溶解して、水、ナトリウムピロスルフィト水溶液及びNa2CO3溶液を用いて抽出する。MgSO4で乾燥し、蒸発乾固する。この生成物をイソプロパノールと石油エーテルで再結晶化する。
収率:白色結晶13.2 g(=理論値の13%);融点:69〜70℃
このようにして得られたアシロイン13.0 gを室温でアセトニトリル460 mlに溶解し、バナジウム-(V)-オキシトリクロリド0.0867 gを加え、酸素をパイプで送る。1.5時間後に、この溶液を蒸発乾固して、エチルアセテート、水及びNa2CO3溶液を用いて抽出する。MgSO4で乾燥して、蒸発乾固する。得られた残留物を95:5の石油エーテル/エチルアセテートと共に攪拌する。
収率:黄色結晶12.59 g(=理論値の97%);融点:116〜117℃

10.1.2: 3,3'-ジクロロベンゼン酸:
水酸化ナトリウム51.45 g(1.286 mol)を水1000 mlに加えたものを、充分攪拌しながら沸騰した湯浴で熱する。3,3'-ジクロロベンジル28.5 g(0.102 mol)をジオキサン700 mlに加えた溶液を滴下し、さらに1時間攪拌する。冷却した後ジオキサンを濃縮し、その残留物を水で希釈し、ジエチルエーテルで抽出する。得られた有機相を酸性にして、ジクロロメタンで抽出する。MgSO4で乾燥し、蒸発乾固する。
収率:32.7 g(=理論値の71%)
【0025】
10.1.3: メチル3,3'-ジクロロベンジレート:
エタノール100 mlとナトリウム1.97 g(0.0855 mol)で、ナトリウムエトキシド溶液を調製する。これに、3,3'-ジクロロベンゼン酸26.6 g(0.0855 mol)をエタノール50 mlに加えた溶液を滴下する。この混合物を4時間常温で攪拌する。溶媒を留去した後、残留物をDMF150 mlに溶解する。ヨウ化メチル24.27 g(0.171 mol)を滴下し、さらに24時間攪拌する。氷で冷却しながら水300 mlとジエチルエーテル200 mlを滴下すると、相が分離する。その水相をジエチルエーテルで抽出して、得られた有機相をNa2CO3溶液で洗い、中性になるまで水と振り混ぜる。Na2SO4で乾燥した後、この混合物を蒸発乾固する。
収率:黄色オイル22.91 g(=理論値の82%)
10.2: トロペノール3,3'-ジクロロベンジレート 5g:
22.9 g(0.074 mol)のメチル3,3'-ジクロロベンジレート3e、トロペノール15.37 g(0.11 mol)、及びナトリウム0.17 gを、75 mbarで4時間、時々振とうしながら沸騰した湯浴で熱して融解する。冷却した後、ナトリウム残留物をアセトニトリルに溶解する。この溶液を蒸発乾固し、残留物をジクロロメタン/水で抽出する。得られた有機相を水で洗い、MgSO4で乾燥して、蒸発乾固する。
生成物をアセトニトリルで再結晶化し、塩酸塩として得られる。
収率:白色結晶16.83 g(=理論値の50%);融点:184〜185℃
10.3: トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(3-クロロフェニル)アセテート 4i:
ビス-(2-メトキシエチル)-アミノスルファトリフルオリド1.48 g(0.0067 mol)をジクロロメタン10 mlに加える。これに、2.09 gの5gをジクロロメタン65 mlに加えた溶液を15〜20℃で20分以内に滴下する。この混合物を常温で20時間攪拌し、0℃に冷却して、充分に攪拌しながら水80 mlを慎重に混ぜる。その後、NaHCO3水溶液を用いてpH 8に慎重に調整する。その有機相を分離しておき、水相を再度ジクロロメタンで抽出して、前記有機相と合わせる。得られた混合有機相を水で洗い、MgSO4で乾燥し、蒸発乾固する。塩酸塩が沈殿し、この沈殿物をアセトニトリル/ジエチルエーテルで再結晶化する。
収率:白色結晶1.20 g(=理論値の53%)
融点:136〜137℃
10.4: トロペノール2-フルオロ-2,2-ビス(3-クロロフェニル)アセテート-メトブロミド:
1.0 g(0.002 mol)の4hを、実施例1の工程1.3と同様に反応させる。生成した結晶を吸引フィルターにかけ、ジクロロメタンで洗い、乾燥して、メタノール/ジエチルエーテルで再結晶化する。
収率:白色結晶0.82 g(=理論値の80%)
TLC: Rf値:0.14(溶離液:n-ブタノール/水/濃蟻酸/アセトン/ジクロロメタン 36:15:15:15:5);融点:180〜181℃
C23H23Cl2FNO2xBr(515.25)
【0026】
見出されたように、一般式1の化合物は、治療上の使用におけるその汎用性に特徴付けられる。これらの用途に関して特に言及するべきは、本発明の式1の化合物は、その抗コリン作用物質としての医薬的活性に基づいて使用されるのが好ましいということである。それは、例えば、喘息又はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療を含む。一般式1の化合物は、迷走神経誘導性の洞性徐脈の治療、及び、心律動疾患の治療にも用いることができる。一般に、本発明の化合物は痙攣、例えば消化管におけるもの、の治療にも、治療上の利点を伴って用いることができる。例えば、この化合物は、尿路の痙攣及び月経不順の治療にも用いることができる。上述した適応症の範囲においては、本発明の式1の化合物を使用する喘息及びCOPDの治療が特に重要である。
一般式1の化合物は、単独、又は本発明の他の式1の有効成分と併せて用いることができる。
一般式1の化合物を、他の薬理的に有効な成分と併用してもよい。前記成分には特に、β様物質(betamimetic)、抗アレルギー薬、PAFアンタゴニスト、ロイコトリエン-アンタゴニスト、コルチコステロイド、及び、これらの有効成分の組合せを含む。
【0027】
本発明において式1の化合物と併せて用いられるβ様物質の例は、バムブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、クレンブテロール、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、サルメテロール、スルフォンテロール、テルブタリン、ツロブテロール、4-ヒドロキシ-7-[2-{[2-{[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルフォニル}エチル]-アミノ}エチル]-2(3H)-ベンゾチアゾロン(benzothiazolone)、1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾル-3-yl]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノール、5-ヒドロキシ-8-(1-ヒドロキシ-2-イソプロピルアミノブチル)-2H-1,4-ベンゾキサジン-3-(4H)-オン、1-(4-アミノ-3-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル)-2-tert-ブチルアミノ)エタノール及び1-(4-エトキシカルボニルアミノ-3-シアノ-5-フルオロフェニル)-2-(tert-ブチルアミノ)エタノールより選択される化合物を含み、これらはラセミ化合物、鏡像異性体、光学異性体の形であってもよく、これらの薬理的に許容される酸付加塩及び水和物であってもよい。本発明において式1の化合物と併用する種類の有効成分で、β様物質として特に好ましいものは、フェノテロール、フォルモテロール、サルメテロール、1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンゾキサジン-8-yl]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾル-3-yl]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノールより選択され、これらはラセミ化合物、鏡像異性体、光学異性体の形体であってもよく、それらの薬理的に許容される酸付加塩及び水和物であってもよい。上述のβ様物質の中で、フォルモテロール及びサルメテロールが特に重要な化合物であり、これらはラセミ化合物、鏡像異性体、光学異性体の形でもよく、これらの薬理的に許容される酸付加塩及び水和物であってもよい。
【0028】
本発明によると、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、スルフェート、フォスフェート、フマレート、メタンスルフォネート及びキナホエートより選択されるβ様物質の酸付加塩が好ましい。サルメテロールの場合では、ヒドロクロリド、スルフェート及びキナホエートより選択される塩が特に好ましく、その中でも特に好ましいのはスルフェート及びキナホエートである。本発明によると、中でも際立って重要なのは、サルメテロールx 1/2 H2SO4及びサルメテロールキナホエートである。フォルモテロールの場合では、ヒドロクロリド、スルフェート及びフマレートより選択される塩が特に好ましく、その中でも特に好ましいのはヒドロクロリド及びフマレートである。本発明によると、中でも際立って重要なのはフォルモテロールフマレートである。
本発明の範囲において、式1の化合物と併用してもよいコルチコステロイドという用語は、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、ロフレポニド(rofleponide)、GW 215864、KSR 592、ST-126及びデキサメタゾンより選択される化合物を表す。本発明の範囲において好ましいコルチコステロイドは、フルニソリド、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、シクレソニド、及び、デキサメタゾンより選択されるが、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン及びシクレソニドが特に重要であり、その中でもブデソニド及びフルチカゾンが特別に重要である。本特許出願の範囲においては、ステロイドという用語はそれだけで、コルチコステロイドという用語の代わりに用いられ得る。本発明の範囲においてステロイドに対するどんな言及も、ステロイドより生成し得る塩又は誘導体に対する言及を含む。可能な塩又は誘導体の例は、以下のものを含む:ナトリウム塩、スルホベンゾエート、フォスフェート、イソニコチネート、アセテート、プロピオネート、ジヒドロゲンフォスフェート、パルミテート、ピバレート又はフロエート。前記コルチコステロイドは水和物の形であってもよい。
【0029】
本発明の範囲において、式1の化合物と併用してもよいドーパミンアゴニストという用語は、ブロモクリプチン、カベルゴリン、α-ジヒドロエルゴクリプチン、リスリド、ペルゴリド、プラミペキソール、ロキシンドール(roxindol)、ロピニロール、タリペキソール、テルグリド及びバイオザン(viozan)より選択される化合物を表す。本発明の範囲において式1の化合物のコンビネーション・パートナーとして用いられるのは、プラミペキソール、タリペキソール、及びバイオザンより選択されるドーパミンアゴニストが好ましく、中でもプラミペキソールが特別に重要である。本発明の範囲において、上述のドーパミンアゴニストに対するどんな言及も、その存在し得る薬理的に許容される酸付加塩及び水和物全てに対する言及を含む。上述のドーパミンアゴニストより生成し得る、これらの生理的に許容される酸付加塩及び水和物は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、酪酸、クエン酸、酒石酸及びマレイン酸の塩より選択される、医薬として許容される塩を意味する。
本発明によれば、式1の化合物と併せて用いることができる抗アレルギー薬の例は、エピナスチン、セチリジン、アゼラスチン、フェキソフェナジン(fexofenadin)、レボカバスチン、ロラタジン、ミゾラスチン(mizolastin)、ケトチフェン、エメダスチン、ジメチンデン、クレマスチン、バミピン、シーエクスクロロフェニラミン(cexchloropheniramine)、フェニラミン、ドキシラミン、クロロフェノキサミン(chlorophenoxamine)、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、エバスチン、デスロラチジン(desloratidine)及びメクリジンを含む。本発明の範囲において本発明における式1の化合物と併せて用いることができる抗アレルギー薬は、エピナスチン、セチリジン、アゼラスチン、フェキソキナジン、レボカバスチン、ロラタジン、エバスチン、デスロラチジン及びミゾラスチンより選択されるのが好ましく、その中でもエピナスチン及びデスロラチジンが特に好ましい。本発明の範囲において、上述の抗アレルギー薬に対するどんな言及も、存在し得るその薬理的に許容される酸付加塩全てに対する言及を含む。
【0030】
以下のものが、本発明における式1の化合物と併せて用いることができるPAFアンタゴニストの例である:4-(2-クロロフェニル)-9-メチル-2-[3(4-モルホリニル)-3-プロパノン-1-yl]-6H-チエノ-[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン、6-(2-クロロフェニル)-8,9-ジヒドロ-1-メチル-8-[(4-モルホリニル)カルボニル]-4H,7H-シクロ-ペンタ-[4,5]チエノ-[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン。
1の化合物が他の有効成分と併せて用いられる場合には、上述化合物の全カテゴリーの中で、ステロイド又はβ様物質との組合せが特に好ましい。特にβ様物質は長時間持続する活性を有するため、β様物質との組合せが特別に重要である。本発明に記載する式1の化合物とサルメテロール又はフォルモテロールとの組合せが特に好ましく、フォルモテロールとの組合せが最も好ましい。
1の化合物の投与に対して適切な製剤は、錠剤、カプセル、坐剤、液剤などを含む。本発明によると、特別に重要なのは(特に、喘息又はCOPDの治療の場合)本発明による化合物の吸入による投与である。医薬的に活性な化合物又は化合物類の比率は、全組成物の0.05〜90質量%の範囲内にされるべきであり、全組成物の0.1〜50質量%が好ましい。例えば、適切な錠剤は、知られている賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はラクトースのような不活性な希釈剤、コーンスターチ又はアルギン酸のような崩壊剤、デンプン又はゼラチンのような結合剤、ステアリン酸マグネシウム又はタルクのような潤滑剤及び/又はカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート又はポリビニルアセテートのような遅延溶出のための物質、と1又は2以上の有効成分を混合することによって得られてもよい。前記錠剤は幾つかの層を含んでいてもよい。
被覆錠剤は、錠剤と同様に製造されたコアを、通常錠剤のコーティングに用いられる成分、例えばコリドン(collidone)又はセラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン又は糖、でコーティングすることによって適宜調製されてもよい。遅延型溶出を達成するため、又は、配合禁忌を防ぐために、前記コアは多数の層から成っていてもよい。
【0031】
錠剤のコーティングも同様に、遅延型溶出を達成するために多数の層から成っていてもよく、その場合はできる限り、錠剤に対して上述する賦形剤を用いる。
本発明によれば、有効成分又はその組合せを含むシロップ剤又はエリキシル剤は、サッカリン、シクラメート、グリセロール又は糖のような甘味料、及び、風味増強剤、例えばバニリン又はオレンジ抽出物のような香味料、をさらに含んでいてもよい。それらは、懸濁補助剤又はナトリウムカルボキシメチルセルロースのような増粘剤、例えば脂肪アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物のような湿潤剤又はp-ヒドロキシベンゾエートのような防腐剤を含んでいてもよい。
液剤は、例えば等張剤、p-ヒドロキシベンゾエートのような防腐剤又はエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩のような安定剤の添加といった通常の方法によって調製され、乳化剤及び/又は分散剤が用いられてもよく、希釈剤として水が用いられる場合には、例えば、溶媒和剤又は溶解補助剤として有機溶媒が用いられてもよい。調製後、液剤は注入バイアル又はアンプル又は輸液瓶に移される。
一つないしはそれ以上の有効成分又は有効成分の組合せを含むカプセルは、例えば、有効成分をラクトース又はソルビトールのような注入担体と混合し、これらをゼラチンカプセルに封入することにより、調製することができる。適切な坐剤は、例えば、中性脂肪又はポリエチレングリコール又はその誘導体のような、この目的のために規定される担体と混合して作ることができる。用いてもよい賦形剤は、例えば水、パラフィン(例えば石油留分)、植物性油脂(例えば、落花生油又はごま油)、単官能基又は多官能基アルコール(例えば、エタノール又はグリセロール)のような医薬として許容される有機溶媒、例えば天然鉱物粉末(例えば、カオリン、粘土、タルク、白亜)、合成鉱物粉末(例えば、高度分散性珪酸及びシリケート)、糖(例えば、ショ糖、ラクトース及びグルコース)のような担体、乳化剤(例えば、リグニン、亜硫酸パルプ廃液、メチルセルロース、デンプン及びポリビニルピロリドン)及び潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸及びラウリル硫酸ナトリウム)を含む。
【0032】
製剤は通常の方法によって投与され、喘息及びCOPDの治療の場合には吸入による投与が好ましい。経口投与のための錠剤は勿論、上述の担体以外に、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム及びリン酸ニカルシウムのような添加剤を、デンプン、好ましくはジャガイモデンプン、ゼラチン等のような種々の添加物と一緒に含むことができる。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクのような潤滑剤を、錠剤化加工時に用いることができる。水性懸濁液の場合には、有効成分は上述の賦形剤に加えて、種々の風味増強剤又は着色料と混合されてもよい。
本発明によると、化合物の服用量は当然のことながら、投与経路と治療対象の病気に大きく依存する。吸入により投与された場合、式1の化合物は、用量がマイクログラム範囲であっても高い効力によって特徴付けられる。式1の化合物は前記マイクログラム程度でも効果的に用いることができる。また、服用量は、例えばグラム範囲内であってもよい。吸入以外の方法によって投与される場合には特に、本発明による前記化合物は多めの用量(例えば1〜1000 mgの範囲、しかし、この値はどんな限定も意味しない)で与えられてもよい。
以下の組成例は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明を具体的に説明するものである。
医薬組成例
【0033】
(表1)
A)
錠剤 1錠あたり
有効成分 100 mg
ラクトース 140 mg
コーンスターチ 240 mg
ポリビニルピロリドン 15 mg
ステアリン酸マグネシウム 5 mg
500 mg
細かく粉砕した有効成分、ラクトース、及びコーンスターチの一部を一緒に混合する。この混合物をふるいにかけた後、ポリビニルピロリドン水溶液で湿らせ、練って、湿った顆粒状にして乾燥する。この顆粒、残りのコーンスターチ及びステアリン酸マグネシウムをふるいにかけ、一緒に混合する。この混合物を加圧して、適切な形及びサイズの錠剤を製造する。
【0034】
(表2)
B)
錠剤 1錠あたり
有効成分 80 mg
ラクトース 55 mg
コーンスターチ 190 mg
マイクロクリスタリンセルロース 35 mg
ポリビニルピロリドン 15 mg
カルボキシメチルナトリウムスターチ 23 mg
ステアリン酸マグネシウム 2 mg
400 mg
細かく粉砕した有効成分、コーンスターチの一部、ラクトース、マイクロクリスタリンセルロース、及びポリビニルピロリドンを一緒に混合し、ふるいにかけた後、残りのコーンスターチ及び水を用いて顆粒状にする。これを乾燥した後、ふるいにかける。これに、カルボキシメチルナトリウムスターチ、ステアリン酸マグネシウムを加えて混合した後、この混合物を加圧して、適切なサイズの錠剤を形作る。
【0035】
(表3)
C)
アンプル溶液
有効成分 50 mg
塩化ナトリウム 50 mg
水(注射用の) 5 mg
有効成分を水に溶解し、そのままのpH又はpH5.5〜6.5にしてもよく、塩化ナトリムを加えて等張にする。得られた溶液を濾過してパイロジェンを取り除いた後、この濾液を無菌状態下でアンプルに移し、殺菌して融着で密閉する。前記アンプルには5 mg、25 mg、及び50 mgの有効成分を含む。
【0036】
(表4)
D)
調量エーロゾル
有効成分 0.005
ソルビタントリオレート 0.1
モノフルオロトリクロロメタン:ジフルオロジクロロメタンが
2:3の割合の混合物 100になるように添加
これらの懸濁液を、従来型のエーロゾル容器に計量バルブで移す。1回あたりの噴霧で50 μlの懸濁液が提供されるのが好ましい。必要に応じて、有効成分は前記用量より多く調量することもできる(例えば、0.02質量%)。
【0037】
(表5)
E)
溶剤(mg/100 ml中)
有効成分 333.3 mg
フォルモテロールフマレート 333.3 mg
ベンザルコニウムクロリド 10.0 mg
EDTA 50.0 mg
HCl (1N) pH3.4になるまで添加
この溶液は通常の方法で調製することができる。
(表6)
F)
吸入用粉末
有効成分 6 μg
フォルモテロールフマレート 6 μg
ラクトースモノヒドレート 25 mgになるように添加
この吸入用粉末は、個々の成分を一緒に混合する通常の方法で作られる。
(表7)
G)
吸入用粉末
有効成分 10 μg
ラクトースモノヒドレート 5 mgになるように添加
この吸入用粉末は、個々の成分を一緒に混合する通常の方法で作られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1の化合物、光学異性体、各鏡像異性体の混合物又はラセミ化合物の形態である前記化合物。
【化1】

(式中、
Aは以下より選択される二重結合基を表し;
【化2】

X-はクロリド、ブロミド、メチルスルフェート、4-トルエンスルホネート及びメタンスルホネートより選択される一価の陰電荷を有するアニオンを表し;
R1及びR2はメチル、エチル、n-プロピル及びiso-プロピルより選択される基を表し、同一又は異なってもよく、ヒドロキシ又はフッ素で置換されていてもよく;
R3、R4、R5及びR6は水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、ヒドロキシ、フッ素、塩素、臭素、CN、CF3又はNO2を表し、同一又は異なってもよく

R7はメチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、-CH2-F、-CH2-CH2-F、-O-CH2-F、-O-CH2-CH2-F、-CH2-OH、-CH2-CH2-OH、CF3、-CH2-OMe、-CH2-CH2-OMe、-CH2-OEt、-CH2-CH
2-OEt、-O-COMe、-O-COEt、-O-COCF3、フッ素、塩素又は臭素
を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の一般式1の化合物、光学異性体、各鏡像異性体の混合物又はラセミ化合物の形態である前記化合物。
(式中、
Aが以下より選択される二重結合基を表し;
【化3】

X-がクロリド、ブロミド及びメタンスルホネートより選択される一価の陰電荷を有するアニオンを表し;
R1及びR2がメチル又はエチルより選択される基を表し、同一又は異なってもよく、ヒドロキシ又はフッ素で置換されていてもよく;
R3、R4、R5及びR6が水素、メチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、ヒドロキシ、フッ素、塩素又は臭素を表し、同一又は異なってもよく;
R7がメチル、エチル、メチルオキシ、エチルオキシ、CF3又はフッ素を表す。)
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項に記載の一般式1の化合物、光学異性体、各鏡像異性体の混合物又はラセミ化合物の形態である前記化合物。
(式中、
Aが以下より選択される二重結合基を表し;
【化4】

X-がブロミドを表し;
R1及びR2がメチル及びエチルより選択される基を表し、同一又は異なってもよく;
R3、R4、R5及びR6が水素、メチル、メチルオキシ、塩素又はフッ素を表し、同一又は異なってもよく;
R7がメチル又はフッ素を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の一般式1の化合物、光学異性体、各鏡像異性体の混合物又はラセミ化合物の形態である前記化合物。
(式中、
Aが以下より選択される二重結合を表し;
【化5】

X-がブロミドを表し;
R1及びR2がメチル又はエチルを表し、同一又は異なってもよく;
R3、R4、R5及びR6が水素又はフッ素を表し、同一又は異なってもよく;
R7がメチル又はフッ素を表す。)
【請求項5】
医薬組成物を調製するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式1の化合物の使用。
【請求項6】
喘息、COPD、迷走神経誘導性の洞性徐脈、心律動疾患、消化管の痙攣、尿路の痙攣又は月経不順の治療用医薬組成物を調製するための、請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式1の化合物の使用。
【請求項7】
喘息又はCOPDの治療用医薬組成物を調製するための、請求項6記載の一般式1の化合物の使用。
【請求項8】
有効成分として一つ以上の請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式1の化合物又はその生理学的に許容される塩を含み、これに組み合わせて任意で通常の賦形剤及び/又は担体を含んでもよい、医薬製剤。
【請求項9】
一つ以上の式1の化合物に加えて、β様物質、抗アレルギー薬、PAFアンタゴニスト、ロイコトリエン・アンタゴニスト及びステロイドより選択される少なくとも一つ以上の有効成分を含む、請求項8記載の医薬製剤。
【請求項10】
一般式1の化合物を調製する方法であって、
【化6】

(式中、A、X-及びR1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7の基は請求項1〜4で与えられた意味を持つ。)
第1段階において、一般式3の化合物を
【化7】

(式中、R3、R4、R5、R6及びR7の基は請求項1〜4で与えられた意味を持ち、Rは塩素又はC1-C4-アルキルオキシを表す。)
2の化合物と反応させて、
【化8】

(式中、A及びR1は請求項1〜4で与えられた意味を持つ。)
4の化合物を得、
【化9】

(式中、A及びR1、R3、R4、R5、R6及びR7の基は請求項1〜4で与えられた意味を持つ)これを化合物R2-Xと反応させることにより第四級化して、
(式中、R2及びXは請求項1〜4で与えられた意味を持つ。)
1の化合物を得ることを特徴とする前記方法。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の一般式1の化合物を含む、喘息、COPD、迷走神経誘導性の洞性徐脈、心律動疾患、消化管の痙攣、尿路の痙攣又は月経不順の治療医薬製剤。

【公開番号】特開2008−120834(P2008−120834A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33492(P2008−33492)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【分割の表示】特願2002−536281(P2002−536281)の分割
【原出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】