説明

薬剤シート

【課題】別途の電池を用いることなく、電解質や非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤を用いた湿式の薬剤シートの薬剤成分の吸収効率を高めることである。
【解決手段】標準電極電位が低いアルミニウムで形成した第1の電極板2と、これよりも標準電極電位が高いステンレス鋼で形成した第2の電極板3の間に絶縁板4を介在させて、第1の電極板2を薬剤面に向けて、第2の電極板3の表面を反対側に向けて薬剤面に貼付し、第2の電極板を皮膚Sに当接させることにより、第1および第2の電極板2、3間の電位差によって、これらの間に皮膚Sを経由する電流を生じさせ、この電流によってイオン化する電解質の薬剤成分を皮膚Sから体内に吸収させるようにし、別途の電池を用いることなく、電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤Aを用いた湿式の薬剤シートの薬剤成分の吸収効率を高めることができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に貼付される薬剤面に電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤が含浸または塗布された湿式の薬剤シートに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に貼付される薬剤面に電解質の薬剤成分、または溶剤に溶解もしくは分散した非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤を含浸または塗布し、その薬剤成分を皮膚から体内に吸収させる湿式の薬剤シートは、簡便な治療手段として神経痛や肩こり等の治療に幅広く使用されている。しかしながら、従来の薬剤シートは、薬剤成分の高々20〜30%程度しか皮膚から吸収されず、薬剤成分の吸収効率が低いことが知られている。
【0003】
本発明者の一人は、皮膚を経由して流れる電流による薬剤成分のイオン浸透効果を利用した電気治療器として、まず、扁平な小型電池の一方の面の電極の外表面と電池の周側面を所要の間隙を介して外包材で覆い、他方の電極を一方の電極と絶縁材で絶縁して、前記間隙に電導性を付加した流動性の治療用薬剤を充填し、間隙の周側開放部分を剥離可能なシートで密閉して、使用するときにシートを剥がした他方の電極面を皮膚に当接させるものを開発し(特許文献1参照)、つぎに、薬剤面にイオン化する電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤を含浸または塗布した薬剤シートに貼付するのみで使用でき、薬剤シートの薬剤成分の吸収効率を著しく高める電気治療器として、薬剤シートの薬剤面に貼付される正電極板と、皮膚に当接される負電極板との間に電解液を介在させて電池を形成し、これらの両電極板間の外周部を絶縁性の環状シール部材でシールした電気治療器を開発した(特許文献2参照)。
【0004】
さらに、最近では、溶剤に溶解もしくは分散した非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤を用いた薬剤シートであっても、特許文献2に記載されたような電気治療器を用いることにより、皮膚に電流を流すことで起こる水の対流によって、薬剤成分の吸収が促進されることが報告されている(非特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特公平3−69545号公報
【特許文献2】特開2005−192848号公報
【非特許文献1】肥後成人,「Transdermal Drug Delivery Systemの最近の開発動向について」,YAKUGAKU ZASSHI,The Pharmaceutical Society of Japan,2007年,Vol.127,No.4,p.655−662
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の電気治療器は、湿式の薬剤シートの薬剤面に貼付するのみで、電解質や非電解質の薬剤成分の吸収効率を高めることができるが、電池を内蔵しているので、使用後の薬剤シートを廃棄処理する際に、電池を内蔵する電気治療器を分別回収する必要がある。また、電気治療器を貼付した薬剤シートが高価になる問題もある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、別途の電池を用いることなく、電解質や非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤を用いた湿式の薬剤シートの薬剤成分の吸収効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤、または溶剤に溶解もしくは分散した非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤が含浸または塗布された薬剤面を皮膚に当接させて貼付される湿式の薬剤シートにおいて、標準電極電位が互いに異なる2種類の金属で形成するか金属めっきを施すかした2枚の電極板の間に絶縁板を介在させて、一方の第1の電極板を前記薬剤面に向けて、他方の第2の電極板を前記薬剤面と反対側に向けて薬剤面に貼付し、第2の電極板を皮膚に当接させる構成を採用した。
【0009】
すなわち、標準電極電位が互いに異なる2種類の金属で形成するか金属めっきを施すかした2枚の電極板の間に絶縁板を介在させて、一方の第1の電極板を薬剤面に向けて、他方の第2の電極板を薬剤面と反対側に向けて薬剤面に貼付し、第2の電極板を皮膚に当接させることにより、2種類の金属で形成または金属めっきを施した2枚の電極板間の電位差によって、これらの間に皮膚を経由する電流を生じさせ、別途の電池を用いることなく、電解質や非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤を用いた湿式の薬剤シートの薬剤成分の吸収効率を高めることができるようにした。
【0010】
なお、電解質の薬剤成分には、陽イオン化するものと陰イオン化するものとがあるが、陽イオン化するものは電流と同じ方向へ、陰イオン化するものは電流と逆方向へ移動するので、陽イオン化するものの場合は、第1の電極板を標準電極電位が高いものとして、電流が第1の電極板から第2の電極板へ流れるようにし、陰イオン化するものの場合は、第2の電極板を標準電極電位が高いものとして、電流が第2の電極板から第1の電極板へ流れるようにし、薬剤成分を薬剤面から皮膚側へ移動させるようにするとよい。
【0011】
前記第2の電極板を前記絶縁板の外周側へ張り出させて、この絶縁板の外周側へ張り出す張り出し部を前記薬剤面に当接させることもできる。
【0012】
前記第2の電極板の中央部に孔を設け、この孔の中に前記第1の電極板を配置することにより、第1および第2の電極板の重なり合い部をなくし、全体の薬剤シートを薄くすることができる。
【0013】
前記第1の電極板を前記絶縁板の外周側へ張り出させ、この絶縁板の外周側へ張り出す張り出し部を皮膚に当接させることもできる。
【0014】
前記第1の電極板の中央部に孔を設け、この孔の中に前記第2の電極板を配置することにより、第1および第2の電極板の重なり合い部をなくし、全体の薬剤シートを薄くすることができる。
【0015】
前記第1または第2の電極板の張り出し部に多数の小孔を設けることにより、薬剤面の薬剤成分をこれらの小孔を通して皮膚側に導き、皮膚に吸収させることができる。
【0016】
前記皮膚に当接される第2の電極板、または前記第1の電極板の張り出し部の表面に、微細な剣山状の突起を設けることにより、剣山状の突起を皮膚に差し込んで、これらの突起に沿わせて薬剤成分を皮膚から注入し、薬剤成分の吸収効率をさらに高めることができる。なお、電極板を金属で形成する場合は、エッチング等によって剣山状の突起を形成することができ、例えば、樹脂で形成して金属めっきを施す場合は、射出成形等によって剣山状の突起を形成することができる。
【0017】
前記剣山状の突起の高さは10〜150μm、好ましくは50〜120μmとするとよい。皮膚は、表面側から角質層、生きた細胞からなる表皮、さらに毛細血管や神経のある真皮で形成されており、角質層の厚みは10〜15μm、真皮の厚みは50〜100μmである。針状突起の突出高さを10μm以上としたのは、その先端を表皮まで到達させて、生きた細胞に薬剤成分を注入するためであり、好ましくは50μm以上とするのがよい。また、針状突起の突出高さを150μm以下としたのは、その先端が真皮の中へあまり深く到達すると、真皮の毛細血管からの感染の恐れがあるからであり、好ましくは120μm以下とするのがよい。
【0018】
前記第1および第2の電極板の少なくとも一方に、その外周に連なる少なくとも1つのスリットを設けることにより、電極板を撓みやすくして、指等の曲率が大きい皮膚面に密着させて沿わせることができる。第1または第2の電極板に張り出し部を設けた場合は、スリットを通して薬剤面の薬剤成分を皮膚側に導くこともできる。
【0019】
前記スリットに湾曲部を設けることにより、曲率の大きい皮膚面に電極板をより密着させて沿わせることができる。
【0020】
前記皮膚に当接される第2の電極板、または前記第1の電極板の張り出し部の外周に表面側への立ち上がり部を設け、この立ち上がり部の内周側に薬剤を充填することにより、薬剤シートの治療用薬剤と異なる薬剤を皮膚に当接させて吸収させることができる。これらの表面に剣山状の突起を設けた場合は、充填した薬剤を皮膚に注入することもできる。
【0021】
前記外周の立ち上がり部の高さは50〜200μm、好ましくは100〜150μmとするとよい。立ち上がり部の高さが50μm未満では十分な薬剤を充填することができず、200μmを越えると、皮膚に痛みを生じさせる恐れがあるからである。
【0022】
前記第1および第2の電極板の少なくとも一方を樹脂で形成して、前記金属めっきを施したものとすることにより、電極板に柔軟性を持たせて、皮膚に沿わせやすくすることができる。また、剣山状の突起を設ける場合は、剣山状の突起を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の薬剤シートは、標準電極電位が互いに異なる2種類の金属で形成するか金属めっきを施すかした2枚の電極板の間に絶縁板を介在させて、一方の第1の電極板を薬剤面に向けて、他方の第2の電極板を薬剤面と反対側に向けて薬剤面に貼付し、第2の電極板を皮膚に当接させることにより、2種類の金属で形成または金属めっきを施した2枚の電極板間の電位差によって、これらの間に皮膚を経由する電流を生じさせるようにしたので、別途の電池を用いることなく、電解質や非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤を用いた湿式の薬剤シートの薬剤成分の吸収効率を高めることができる。
【0024】
前記第2の電極板を絶縁板の外周側へ張り出させる場合は、第2の電極板の中央部に孔を設け、この孔の中に第1の電極板を配置することにより、第1および第2の電極板の重なり合い部をなくし、全体の薬剤シートを薄くすることができる。
【0025】
前記第1の電極板を絶縁板の外周側へ張り出させる場合は、第1の電極板の中央部に孔を設け、この孔の中に第2の電極板を配置することにより、第1および第2の電極板の重なり合い部をなくし、全体の薬剤シートを薄くすることができる。
【0026】
前記第1または第2の電極板の張り出し部に多数の小孔を設けることにより、薬剤面の薬剤成分をこれらの小孔を通して皮膚側に導き、皮膚に吸収させることができる。
【0027】
前記皮膚に当接される第2の電極板、または第1の電極板の張り出し部の表面に、微細な剣山状の突起を設けることにより、剣山状の突起を皮膚に差し込んで、これらの突起に沿わせて薬剤成分を皮膚から注入し、薬剤成分の吸収効率をさらに高めることができる。
【0028】
前記第1および第2の電極板の少なくとも一方に、その外周に連なる少なくとも1つのスリットを設けることにより、電極板を撓みやすくして、指等の曲率が大きい皮膚面に密着させて沿わせることができる。第1または第2の電極板に張り出し部を設けた場合は、スリットを通して薬剤面の薬剤成分を皮膚側に導くこともできる。
【0029】
前記スリットに湾曲部を設けることにより、曲率の大きい皮膚面に電極板をより密着させて沿わせることができる。
【0030】
前記皮膚に当接される第2の電極板、または第1の電極板の張り出し部の外周に表面側への立ち上がり部を設け、この立ち上がり部の内周側に薬剤を充填することにより、薬剤シートの治療用薬剤と異なる薬剤を皮膚に当接させて吸収させることができる。これらの表面に剣山状の突起を設けた場合は、充填した薬剤を皮膚に注入することもできる。
【0031】
前記第1および第2の電極板の少なくとも一方を樹脂で形成して、前記金属めっきを施したものとすることにより、電極板に柔軟性を持たせて、皮膚に沿わせやすくすることができる。また、剣山状の突起を設ける場合は、剣山状の突起を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1および図2は、第1の実施形態を示す。この薬剤シートは、皮膚Sに貼付される基布1の薬剤面に陰イオン化する電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤Aが塗布された湿式のものであり、標準電極電位が低いアルミニウムで形成された第1の電極板2と、これよりも標準電極電位が高いステンレス鋼で形成された第2の電極板3の間に、樹脂フィルムで形成された絶縁板4を介在させて、第1の電極板2を薬剤面に向けて、第2の電極板3を反対側の皮膚Sに向けて薬剤面に貼付したものである。第1および第2の電極板2、3と絶縁板4はいずれも円形とされ、絶縁板4と第2の電極板3が第1の電極板2の外周側へ張り出している。また、第1の電極板2と絶縁板4の厚みは30μmとされ、第2の電極板3の厚みは50μmとされている。
【0033】
前記薬剤シートは、図1に矢印で示すように、標準電極電位が高い第2の電極板3から標準電極電位が低い第1の電極板2へ、皮膚Sと薬剤面の治療用薬剤Aを経由して電流が流れ、治療用薬剤Aの陰イオン化する薬剤成分が、この電流の流れと逆向きに薬剤面から皮膚S側へ移動し、体内に吸収される。
【0034】
また、前記第2の電極板3は、外周に表面側への立ち上がり部5を有する盆状とされ、立ち上がり部5の内周側に別の薬剤Bが充填されるとともに、表面に微細な剣山状の突起6が設けられている。したがって、盆状の電極板3の表面側に充填された薬剤Bが、皮膚Sに差し込まれる剣山状の突起6に沿って皮下に注入される。なお、立ち上がり部5の高さは150μm、剣山状の突起6の高さは100〜120μmとされている。
【0035】
図3および図4は、第2の実施形態を示す。この薬剤シートは基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、前記第2の電極板3が絶縁板4の外周側へ大きく張り出し、この張り出し部が薬剤面に当接されて、多数の小孔7が設けられている点が異なる。各小孔7の直径は1.2mmとされている。その他の部分は、第1の実施形態と同じであり、盆状とされた第2の電極板3の表面側には薬剤Bが充填され、表面に微細な剣山状の突起6が設けられている。
【0036】
この実施形態では、小孔7を通して薬剤面から電極板3の表面側に導かれる治療用薬剤Aの薬剤成分も、薬剤Bと一緒に剣山状の突起6に沿って皮下に注入される。また、図3に矢印で示すように、標準電極電位が高い第2の電極板3から標準電極電位が低い第1の電極板2へ、皮膚Sと薬剤面の治療用薬剤Aを経由して電流が流れ、治療用薬剤Aの陰イオン化する薬剤成分が薬剤面から皮膚S側へ移動して体内に吸収される。
【0037】
図5は、第3の実施形態を示す。この薬剤シートも基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、前記第2の電極板3が絶縁板4の外周側へ大きく張り出すとともに、外周に連なる複数のスリット8が設けられている点が異なる。各スリット8は、恰も花びらを形成するように、湾曲して放射状に設けられている。したがって、この実施形態では、面積の広い第2の電極板3が撓みやすくなり、指等の曲率が大きい皮膚面に薬剤シートを貼付するときに、電極板3を皮膚Sに密着させて沿わせることができる。また、第2の電極板3の張り出し部のスリット8を通して、薬剤面の薬剤成分を皮膚S側に導くこともできる。
【0038】
図6は、第4の実施形態を示す。この薬剤シートも基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、前記第2の電極板3の中央部に孔9が設けられ、この孔9の中に第1の電極板2が配置されている点と、第2の電極板3が樹脂で形成され、標準電極電位が高い銀めっきを施されている点が異なる。したがって、この実施形態では、第1の電極板2と第2の電極板3の重なり合い部をなくし、全体の薬剤シートを薄くすることができるとともに、第2の電極板3に柔軟性を持たせて、皮膚Sに沿わせやすくすることができる。
【0039】
図7および図8は、第5の実施形態を示す。この薬剤シートは、皮膚Sに貼付される基布1の薬剤面に陽イオン化する電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤Aが塗布されたものであり、第1の実施形態のものとは逆に、薬剤面に向けられた第1の電極板2が標準電極電位の高いステンレス鋼で形成され、皮膚Sに向けられた第2の電極板3が標準電極電位の低いアルミニウムで形成されている。この実施形態では、第1の電極板2が樹脂フィルムで形成された絶縁板4の外周側へ大きく張り出し、この張り出し部が皮膚Sに当接されるようになっており、第1の電極板2の厚みが50μm、第2の電極板3と絶縁板4の厚みが30μmとされている。なお、この実施形態でも、第1および第2の電極板2、3と絶縁板4はいずれも円形とされている。
【0040】
この実施形態では、図7に矢印で示すように、標準電極電位が高い第1の電極板2から標準電極電位が低い第2の電極板3へ、薬剤面の治療用薬剤Aと皮膚Sを経由して電流が流れ、治療用薬剤Aの陽イオン化する薬剤成分が、この電流の流れと同じ向きに薬剤面から皮膚S側へ移動し、体内に吸収される。
【0041】
また、前記第1の電極板2の張り出し部の外周には、表面側への立ち上がり部5が設けられ、立ち上がり部5の内周側に別の薬剤Bが充填されており、張り出し部に多数の小孔7が設けられるとともに、表面に微細な剣山状の突起6が設けられている。したがって、小孔7を通して薬剤面から張り出し部の表面側に導かれる治療用薬剤Aの薬剤成分と、張り出し部の表面側に充填された薬剤Bが、皮膚Sに差し込まれる剣山状の突起6に沿って皮下に注入される。なお、立ち上がり部5の高さは150μm、剣山状の突起6の高さは100〜120μmとされ、各小孔7の直径は1.2mmとされている。
【0042】
図9は、第6の実施形態を示す。この薬剤シートは、基本的な構成は第5の実施形態のものと同じであり、前記第1の電極板2が絶縁板4の外周側へ大きく張り出すとともに、外周に連なる複数の湾曲したスリット8が放射状に設けられている点が異なる。したがって、この実施形態では、面積の広い第1の電極板2が撓みやすくなり、皮膚Sに密着させて沿わせることができるとともに、張り出し部のスリット8を通して、薬剤面の薬剤成分を皮膚S側に導くことができる。
【0043】
図10は、第7の実施形態を示す。この薬剤シートも基本的な構成は第5の実施形態のものと同じであり、前記第1の電極板2の中央部に孔9が設けられ、この孔9の中に第2の電極板3が配置されている点が異なる。したがって、この実施形態では、第1の電極板2と第2の電極板3の重なり合い部をなくし、全体の薬剤シートを薄くすることができる。
【0044】
上述した各実施形態では、薬剤成分が電解質のものとして、第1および第2の電極板の標準電極電位が異なる金属の組み合わせを、標準電極電位の高いステンレス鋼または銀と、標準電極電位の低いアルミニウムとしたが、本発明に係る薬剤シートは、薬剤成分が非電解質のものにも適用することができ、第1および第2の電極板の金属の組み合わせも実施形態のものに限定されることはなく、例えば、マグネシウムと金との組み合わせ等とすることもできる。
【0045】
また、上述した各実施形態では、第1および第2の電極板および絶縁板の形状を円形としたが、これらの形状は円形に限定されることはなく、これらの一部または全部を多角形や楕円形等とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】第1の実施形態の薬剤シートを示す縦断側面図
【図2】図1のII−II線に沿った横断平面図
【図3】第2の実施形態の薬剤シートを示す縦断側面図
【図4】図3のIV−IV線に沿った横断平面図
【図5】第3の実施形態の薬剤シートを示す横断平面図
【図6】第4の実施形態の薬剤シートを示す縦断側面図
【図7】第5の実施形態の薬剤シートを示す縦断側面図
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った横断平面図
【図9】第6の実施形態の薬剤シートを示す横断平面図
【図10】第7の実施形態の薬剤シートを示す縦断側面図
【符号の説明】
【0047】
A、B 薬剤
1 基布
2、3 電極板
4 絶縁板
5 立ち上がり部
6 突起
7 小孔
8 スリット
9 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤、または溶剤に溶解もしくは分散した非電解質の薬剤成分を含む治療用薬剤が含浸または塗布された薬剤面を皮膚に当接させて貼付される湿式の薬剤シートにおいて、標準電極電位が互いに異なる2種類の金属で形成するか金属めっきを施すかした2枚の電極板の間に絶縁板を介在させて、一方の第1の電極板を前記薬剤面に向けて、他方の第2の電極板を前記薬剤面と反対側に向けて薬剤面に貼付し、第2の電極板を皮膚に当接させるようにしたことを特徴とする薬剤シート。
【請求項2】
前記第2の電極板を前記絶縁板の外周側へ張り出させて、この絶縁板の外周側へ張り出す張り出し部を前記薬剤面に当接させた請求項1に記載の薬剤シート。
【請求項3】
前記第2の電極板の中央部に孔を設け、この孔の中に前記第1の電極板を配置した請求項2に記載の薬剤シート。
【請求項4】
前記第1の電極板を前記絶縁板の外周側へ張り出させ、この絶縁板の外周側へ張り出す張り出し部を皮膚に当接させるようにした請求項1に記載の薬剤シート。
【請求項5】
前記第1の電極板の中央部に孔を設け、この孔の中に前記第2の電極板を配置した請求項4に記載の薬剤シート。
【請求項6】
前記第1または第2の電極板の張り出し部に多数の小孔を設けた請求項2乃至5のいずれかに記載の薬剤シート。
【請求項7】
前記皮膚に当接される第2の電極板、または前記第1の電極板の張り出し部の表面に、微細な剣山状の突起を設けた請求項1乃至6のいずれかに記載の薬剤シート。
【請求項8】
前記剣山状の突起の高さを10〜150μmとした請求項7に記載の薬剤シート。
【請求項9】
前記第1および第2の電極板の少なくとも一方に、その外周に連なる少なくとも1つのスリットを設けた請求項1乃至8のいずれかに記載の薬剤シート。
【請求項10】
前記スリットに湾曲部を設けた請求項9に記載の薬剤シート。
【請求項11】
前記皮膚に当接される第2の電極板、または前記第1の電極板の張り出し部の外周に表面側への立ち上がり部を設け、この立ち上がり部の内周側に薬剤を充填した請求項1乃至10のいずれかに記載の薬剤シート。
【請求項12】
前記外周の立ち上がり部の高さを50〜200μmとした請求項11に記載の薬剤シート。
【請求項13】
前記第1および第2の電極板の少なくとも一方を樹脂で形成して、前記金属めっきを施したものとした請求項1乃至12のいずれかに記載の薬剤シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−136383(P2009−136383A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313604(P2007−313604)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(504011564)
【出願人】(504011586)
【出願人】(500219571)株式会社エーアンドエー研究所 (18)
【Fターム(参考)】