説明

薬剤供給装置

【課題】扉パネルの煩雑な取付微調整作業を行う必要がなく、引き出しの出し入れ操作に伴い自動的に扉パネルの水平及び垂直方向の間隔の微調整を行えるようにして、使い勝手を向上させた薬剤供給装置を提供する。
【解決手段】本体2と、該本体に対して出し入れ可能に取り付けられた引き出し5とを備え、前記引き出し5の前面に取り付けた扉パネル11は引出本体に対して動くように取り付けられており、引き出し5の出し入れ操作に伴い適正位置に微調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や調剤薬局などにおいて、タブレットケースに収納された薬剤を処方箋により指定された剤種や数量だけ包装袋に供給する薬剤供給装置、特に、本体に対して引き出し可能に取り付けられた引き出しと、該引き出しに着脱可能に取り付けられ薬剤を収納する複数のタブレットケースとを備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より病院や調剤薬局においては、例えば引用文献1に示されるように、薬剤供給装置(文献1では錠剤包装機と称している)を用いて、医師により処方された薬剤を患者に提供している。この方式では、処方箋に記載された種類及び数量の薬剤(錠剤、カプセル剤など)をタブレットケース内の排出ドラム(文献1では整列盤と称している)から一個ずつ排出し、シュートを経てホッパーにより集め、その後、包装紙にて包装する錠剤の抽出から包装までの作業がすべて自動化されたものであった。
【0003】
一方、引用文献2に示すように、タブレットケースの清掃や交換などのメンテナンス作業を極めて容易に行うことができるように、タブレットケースを、薬剤供給装置の本体から引き出し、且つ、着脱可能に取り付けたものがあった。
【特許文献1】実公昭57−5282号公報
【特許文献2】特開平2003−237702号公報 ところで、特許文献1に示すような薬剤供給装置にあっては、これらタブレットケースやシュート、ホッパーなどは、薬剤の落下による衝撃に伴い薬剤から生ずる微粉末などによって汚損され、これらの微粉末が誤って包装紙に封入されることがあった。しかしながら、従来の薬剤供給装置では、特にホッパーや充填装置などが本体内に固定された構造となっていたため、これら清掃や部品交換などのメンテナンスを行うことが極めて困難なものとなっていた。
【0004】
他方、特許文献2に示すような薬剤供給装置にあっては、薬剤を収容する複数のタブレットケースを引出自在の棚に併設するようにしているが、棚の前面に取付けられる扉しての機能を有する扉パネルをビス等で強固に固定しているため、扉パネルの取付時に適正位置からずれてビスを締め付けてしまうと、複数の引出しを押し込んだ通常状態にあって、扉パネル同士の位置関係がずれてしまい、薬剤供給装置として前面からの見栄えが悪くなってしまう不具合が生じ、この位置関係の修復のために、再び扉パネルの取付微調整作業を行わなければならなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような薬剤供給装置にあって、扉パネルの煩雑な取付微調整作業を行う必要がなく、引き出しの出し入れ操作に伴い自動的に扉パネルの水平位置及び垂直位置の微調整を行えるようにして、使い勝手を向上させた薬剤供給装置を提供することを目的とする。また、これに加えて、本発明は、扉パネルの裏側に各引き出しに収納されるタブレットケースからの信号を受ける回路基板を配置して、引き出し毎に基板を分離させた薬剤供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の薬剤供給装置(1)は、本体(2)と、該本体に対して出し入れ可能に取り付けられた複数の引き出し(5)とを備えた薬剤供給装置(1)であって、前記引き出し(5)は、引出本体(15)と該引出本体の前面(16)に取付板(18)を介して取り付けられた扉パネル(11)とを備え、前記取付板(18)を引出本体(15)に対して動くように取り付けるとともに、隣り合う前記扉パネル(11)の間隔の半分に等しい高さを有する突部(33)を前記扉パネル(11)の外周に相対向して設け、前記引き出し(5)の出し入れ操作に伴って前記相対向する突部(33)が互いに接触して隣り合う扉パネル(11)の間隔を調整することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、引き出し(5)の出し入れ操作を行うたびに、隣り合う扉パネル(11)の間隔が自動的に調整されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。図1は本発明の薬剤供給装置のある引き出しを引き出した状態の斜視図、図2は薬剤供給装置の引き出しの前部における分解状態の斜視図、図3は薬剤供給装置の引き出しの前部の断面図、図4は薬剤供給装置の扉パネルの上下左右の位置関係を説明する正面図である。
【0009】
本発明の薬剤供給装置1は、病院や調剤薬局などに設置されるものであり、処方箋に記載された種類及び数量の薬剤(錠剤、カプセル剤など)をタブレットケース内の排出口から一個ずつ排出し、薬剤の重量を利用して自然落下させる通路にあたるシュートを経てホッパーにより一個所に集め、その後、包装紙にて包装するという、錠剤の抽出から包装までの作業がすべて一連の機構の中で為され、全てが自動化されたものである。図1に示されるように、この薬剤供給装置1は、縦長矩形状の本体2と制御用のパソコン(図示せず)から構成される。
【0010】
本体2は、相互に分離可能な上部構造体3と下部構造体4とから構成されており、下部構造体4上に上部構造体3が積層されて連結された構造とされている。そして、この上部構造体3内には後述するタブレットケース6を収納するために前方並びに上下が開放したケース収納部が構成され、このケース収納部の天面は着脱可能な天板3Aにて閉塞されている。
【0011】
上部構造体3のケース収納部内には、左右4列、上下5段(合わせて20個)の引き出しとしての棚5……が引き出し自在に架設されている。各棚5の前端には扉パネル11がそれぞれ取り付けられており、全ての棚5……がケース収納部内に収納された状態で各扉パネル11が上部構造体3の前面開口を閉塞する。棚5の中央には上下に開放した通路12が前後に渡って形成されており、その棚の上に位置する棚5のタブレットケース6から排出された薬剤の下方への落下通路となるものである。この通路12の左右両側に、タブレットケース6の駆動ベース13が前後に8個ずつ(左右合計で16個)前後方向に並設して取り付けられている(全部は図示していない)。尚、タブレットケース6は、この駆動ベース13とその上に連結される収納容器とから構成される。
【0012】
また、下部構造体4は前面及び上面が開放しており、上面において上部構造体3と連通する。そして、この下部構造体4内には後述する充填装置としての包装機等(図示せず)が収納設置されると共に、前面の開口は観音開き式の下パネル8、8によって開閉自在に閉塞されている。
【0013】
次に、図2乃至図3に基づき、各棚5の前部の構造、即ち、引き出し(棚5)の扉パネル11が、回動自在に保持され、棚5の出し入れ操作に伴い当該扉パネル11を適正位置に微調整する構造について説明する。まず最初に、扉パネル11の取付構造を説明し、続いて、扉パネル11に設けた微調整手段について説明する。
【0014】
各棚5は、複数個(ここでは16個)のタブレットケース6を着脱自在に取り付ける引出本体15と、該引出本体15の前面板16に回動自在に保持される扉パネル11とからなり、引出本体の前面板16と扉パネル11との間に回路基板17を配置している。扉パネル11は、引出本体15の前面板16に対して取付板18を介して回動自在に保持される。この取付板18に、樹脂製の絶縁シート19を介して絶縁して回路基板17が取付けられる。取付板18は、扉パネル11を固定する金属製のパネル取付体21と、回路基板17を固定する金属製の基板取付体22とからなる。
【0015】
取付板18は、引出本体15の前面板16に対して、ビス23と金属製のスペーサ24により回動自在に保持される。スペーサ24の厚さT1を取付板18(詳しくは基板取付板21)の厚さT2よりも大きくしたものである。本実施例では、基板取付板21の厚さT2を1.5mmとし、スペーサの厚さT1を2.5mmとして、その寸法差(T1−T2)を0.9mm確保している。また、このスペーサ24を樹脂ではなく金属で構成することにより、先の寸法差があるため、ビス23の締め付け操作時において、寸法差を越えて締め付ける事態があっても、金属の剛性により変形することを抑止すると共に、仮に変形されてもこの寸法差にて吸収できるようにしている。本実施例では、ビス23、スペーサ24ともに4個ずつ取付けている。
【0016】
パネル取付体22は、ビス23の頭部の外径R1よりも小さく、スペーサの外径よりも大きい内径R2の逃し穴27を備え、該逃し穴27の内径R2とスペーサの外径との寸法差が、スペーサの厚さT1と取付板18の厚さT2との寸法差(T1−T2)よりも大きいものである。ここで、逃し穴27の内径R2を8mm、スペーサ23の外径を5.5mmに設定しており、この寸法差は2.5mmであり、先の寸法差(T1−T2=0.9mm)よりも大きく設定されている。寸法差を確保したことで、扉パネル11を引き出し5(詳しくは引出本体15)に対して回動自在に保持することが可能となっている。26は、パネル取付板21に形成したビス23の逃げ用の穴であり、その内径はビス23の外径R1よりもおおきくなっている。29は、回路基板17を基板取付板22に固定するためのビスである。
【0017】
次に、扉パネル側11に設けた微調整手段であるが、微調整手段は、扉パネル11の外周に設けた隣り合う扉パネルと対峙する微調整用の突部32、33である。突部32は、扉パネル11の上面に左右2つ形成され、上下に隣り合う扉パネルとの間隔3aに等しい適正寸法3aの高さに設定してある。突部33は、扉パネル11の左右両側面中央に設けられ、左右に隣り合う扉パネルとの間隔4aの半分に等しい適正寸法2aの高さに設定してある。
【0018】
31は、扉パネル11の下部に凹凸を利用して形成した把手であり、34は回路基板17に設けたタブレットケースに関する情報表示用のLED(表示手段)36に対応する位置に設けた表示用透明部である。39は、引出本体15の前面板16に設けられ8個分のタブレットケース6からの信号線(図示せず)を通過させるための配線穴であり、各信号線は取付基板17に設けた接続部に接続される。これらの構成により、タブレットケース6からの信号を各引き出し5毎に分離して配置した各回路基板17で受信することができるため、引き出し5毎に独立した回路を構成することが可能となる。
【0019】
本発明の第一の実施形態における引き出し(即ち棚)5によれば、スペーサ24により扉パネル11が回動自在に保持されるため、その保持構造を簡素化でき、スペーサ24の厚さT1が取付板(詳しくはパネル取付体21の厚さT2よりも大きいので、ビス23を適正締め付け位置よりも締め付け過ぎるような事態が発生したとしても、この寸法差によって染め付き過ぎる距離を吸収することができ、このスペーサ24が金属であるため、ビス23を適正締め付け位置よりも締め付け過ぎたとしても、扉パネル11あるいはスペーサ24の締付力による破損を抑制・防止することができる。
【0020】
取付板18が、扉パネル11を固定するパネル取付体21と、回路基板17を固定する基板取付体22とからなるため、両取付体21,22間に形成される隙間を利用して各固定用のビス23,29の脚を逃がすことができ、パネル取付体21は、ビスの頭部の外径R1よりも小さく、スペーサの外径よりも大きい内径R2の逃し穴27を備え、該逃し穴の内径R2と前記スペーサの外径との寸法差が、スペーサの厚さと前記取付板の厚さとの寸法差(T1−T2)よりも大きいので、この寸法差を利用して、扉パネル11を引き出し5に対して回動自在に保持することが可能となる。
【0021】
扉パネル11の外周に、隣り合う扉パネルと対峙する微調整用の突部32,33を設けたことにより、この突部32,33が引き出し5の出し入れ操作のたびに、隣り合う扉パネル11の隣り合う面とそれぞれ接触することで、回動自在な扉パネル11が自由に回動し、上下若しくは左右に隣り合う扉パネルの隙間を自動的に一定間隔3a,4aに適宜調整し、扉パネル11の微調整を行うことができる。
【0022】
詳述すると、突部32を、扉パネル11の上面に左右2つ形成し、上下に隣り合う扉パネルとの間隔3aに等しい適正寸法3aとすることにより、引き出し5の出し入れ操作のたびに、この突部32が上下に隣り合う扉パネル11の隣り合う面と接触することで、回動自在な扉パネル11が自由に回動し、両扉パネルの隙間3aを自動的に一定間隔3aに調整することが可能となる。
【0023】
一方、突部33を、扉パネル11の左右両側面中央に設け、左右に隣り合う扉パネルとの間隔4aの半分に等しい適正寸法2aとすることにより、引き出し5の出し入れ操作のたびに、この突部33が左右に隣り合う扉パネル11の隣り合う面と接触することで、回動自在な扉パネル11が自由に回動し、両扉パネルの隙間4aを自動的に一定間隔4aに調整することが可能となる。
【0024】
引き出し5の引き出し操作を行うたびに、扉パネル11の適正位置への微調整作業を行うことができるため、引き出しと扉パネルとの締付力・固定力を軽減することができる。扉パネル11を取付板18により回動自在に保持するため、引き出し5の出し入れ操作による扉パネル11の微調整が可能となる。パネル取付体21に取付けられた扉パネル11と、基板取付体22に取り付けられた回路基板17とが、引き出し5の出し入れ操作に伴い一体的に回動するため、基板17とパネル11との位置関係を常に良好に保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の薬剤供給装置のある引き出しを引き出した状態の斜視図である。
【図2】本発明の薬剤供給装置の引き出しの前部における分解状態の斜視図である。
【図3】本発明の薬剤供給装置の引き出しの前部の断面図である。
【図4】本発明の薬剤供給装置の扉パネルの上下左右の位置関係を説明する正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 薬剤供給装置
2 本体
3 上部構造体
4 下部構造体
5 引き出し(棚)
6 タブレットケース
11 扉パネル
12 通路
13 駆動ベース
15 引出本体
16 前面板
17 回路基板
18 取付板
21 パネル取付体
22 基板取付体
23 ビス
24 スペーサ
27 逃し穴
32 突部(上面)
33 突部(左右側面)
34 透明部
36 LED(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体に対して出し入れ可能に取り付けられた複数の引き出しとを備えた薬剤供給装置であって、前記引き出しは、引出本体と該引出本体の前面に取付板を介して取り付けられた扉パネルとを備え、前記取付板を引出本体に対して動くように取り付けるとともに、隣り合う前記扉パネルの間隔の半分に等しい高さを有する突部を前記扉パネルの外周に相対向して設け、前記引き出しの出し入れ操作に伴って前記相対向する突部が互いに接触して隣り合う扉パネルの間隔を調整することを特徴とする薬剤供給装置。
【請求項2】
本体と、該本体に対して出し入れ可能に取り付けられた複数の引き出しとを備えた薬剤供給装置であって、前記引き出しは、引出本体と該引出本体の前面に取付板を介して取り付けられた扉パネルとを備え、前記取付板を引出本体に対して動くように取り付けるとともに、隣り合う前記扉パネルの間隔に等しい高さを有する突部を前記扉パネルの外周に設け、前記引き出しの出し入れ操作に伴って前記突部が隣り合う扉パネルの対向する面に接触することにより隣り合う扉パネルの間隔を調整することを特徴とする薬剤供給装置。
【請求項3】
前記突部を前記扉パネルの左右両側面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤供給装置。
【請求項4】
前記突部を前記扉パネルの上面に設けたことを特徴とする請求項2に記載の薬剤供給装置。
【請求項5】
前記取付板は、前記引出本体に対してビスとスペーサにより取り付けられ、前記スペーサは前記取付板の厚さよりも大きい厚さを備え、前記取付板は前記ビスの頭部の外径よりも小さく前記スペーサの外径よりも大きい内径の逃し穴を備え、前記スペーサの厚さと前記取付板の厚さとの寸法差よりも、前記逃し穴の内径と前記スペーサの外径との寸法差を大きくして、前記逃し穴の内径と前記スペーサの外径との寸法差により前記取付板を動くようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の薬剤供給装置。
【請求項6】
前記引出本体と前記扉パネルとの間に回路基板を配置し、前記取付板は、前記扉パネルを固定するパネル取付体と、前記回路基板を固定する基板取付体とから成ることを特徴とする請求項5に記載の薬剤供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−46511(P2010−46511A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246565(P2009−246565)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【分割の表示】特願2003−401211(P2003−401211)の分割
【原出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】