説明

薬剤包装装置

【課題】断面円弧状の環状溝に供給した散薬を内側に掻き出すようにした構成であっても、薬剤の搬送性及び清掃性に優れた構成とする。
【解決手段】散薬掻出手段4を、散薬待機手段2の内径側の支持部20aから延びるアーム部20と、アーム部20の、支持部20aとは反対側の端部に取り付けられ、薬剤待機手段2の環状溝10から内側に散薬を掻き出す掻出部21とで構成する。薬剤回収手段5は、案内部材31と、収集部材32とで構成する。案内部材31は、錠剤供給手段6から供給された錠剤が通過する錠剤案内通路41と、散薬掻出手段4によって掻き出された散薬が通過する散薬案内通路40とを備える。収集部材32は、案内部材31からの薬剤を包装手段7へと導く。案内部材31は、収集部材32に対して着脱可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤包装装置、特に、清掃性に優れた薬剤包装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤包装装置として、ドーナツ状の円盤に形成した断面円弧状の環状溝に散薬を供給し、散薬掻出装置により、1包分ずつ円盤の内側に配設したホッパーへと掻き出し、このホッパーによって回収された散薬を包装装置にて包装するようにし、小型化を図ったものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−85502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の薬剤包装装置では、円盤の内側から延びるアームの先端に、環状溝から散薬を掻き出すための構成が設けられている。このため、環状溝からその近傍に飛散した散薬を清掃する場合、アームが邪魔となり、ホッパーやその周辺部分を清掃しづらいという問題がある。
【0005】
また、ホッパーを、錠剤の供給通路に兼用する場合、前記アームを避けるようにしてホッパーへと錠剤を供給しなければならず、錠剤がホッパーを構成する内面に衝突して跳ね返り、ホッパーの外部へとこぼれ落ちる恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、断面円弧状の環状溝に供給した散薬を内側に掻き出すようにした構成であっても、薬剤の搬送性及び清掃性に優れた機能を備えた薬剤包装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
ドーナツ状で、断面円弧状の環状溝を有する散薬待機手段と、
前記散薬待機手段を回転駆動させる駆動手段と、
前記環状溝に散薬を供給する散薬供給手段と、
前記環状溝から内径側に散薬を掻き出す散薬掻出手段と、
前記散薬掻出手段によって掻き出された散薬を回収する薬剤回収手段と、
前記薬剤回収手段に錠剤を供給する錠剤供給手段と、
前記薬剤回収手段によって回収された散薬及び/又は錠剤を包装する包装手段と、
を備えた薬剤包装装置であって、
前記散薬掻出手段は、
前記散薬待機手段の内径側の支持部から延びるアーム部と、
前記アーム部の、前記支持部とは反対側の端部に取り付けられ、前記薬剤待機手段の環状溝から内側に散薬を掻き出す掻出部と、
からなり、
前記薬剤回収手段は、案内部材と、収集部材とからなり、
前記案内部材は、
前記錠剤供給手段から供給された錠剤が通過する錠剤案内通路と、
前記散薬掻出手段によって掻き出された散薬が通過する散薬案内通路と、
を備え、
前記収集部材は、案内部材からの薬剤を前記包装手段へと導き、
前記案内部材は、前記収集部材に対して着脱可能としたものである。
【0008】
この構成により、散薬案内通路及び錠剤案内通路を備えた案内部材は、収集部材に対して着脱可能に設けられているので、収集部材から案内部材を取り外して簡単に清掃することが可能である。また、錠剤の供給には予め形成した錠剤案内通路を利用するので、散薬の供給位置を確保した状態で、錠剤をスムーズに収集部材で収集させることができる。
【0009】
前記散薬掻出手段は、前記薬剤待機手段の支持部を中心として、掻出部によって掻き出した散薬を薬剤回収手段に回収可能な回収位置と、アーム部が薬剤回収手段から退避する退避位置との間を旋回可能に設けるのが好ましい。
【0010】
この構成により、清掃時には、アーム部を退避位置に旋回させることにより、簡単に収集部材から案内部材を取り外すことができるだけでなく、散薬が飛散した箇所での清掃も容易に行うことができる。
【0011】
前記薬剤回収手段の案内部材は、
手撒き錠剤供給部から供給される錠剤を案内する第1案内部と、
前記第1案内部によって案内された錠剤を前記収集部材へと案内する第2案内部とからなり、
前記第1案内部に、自動錠剤供給部から供給される錠剤の投入部を形成するのが好ましい。
【0012】
この構成により、錠剤を手巻き錠剤供給装置と自動錠剤供給部のいずれからであっても第1案内部に供給することができ、さらにこの第1案内部から第2案内部へとスムーズに移送することができる。
【0013】
前記第2案内部は、同一方向にのみ回転可能で、180°回転する毎に停止する仕切部材を備え、
前記仕切部材の停止位置で、前記第1案内部から案内された錠剤が一時的に貯留される第1空間と、該第1収容部に貯留された錠剤を前記収集部材へと導く通路を備えた第2空間とに区画されるようにするのが好ましい。
【0014】
この構成により、仕切部材の動作を半回転の制御容易なものとすることができ、モータ等を使用しても故障しにくくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、散薬案内通路及び錠剤案内通路を備えた案内部材を、収集部材に対して着脱可能に設けたので、清掃作業を簡単かつ確実に行うことができる。しかも、錠剤の供給には予め形成した錠剤案内通路を利用するので、散薬の供給位置を確保した状態で、錠剤をスムーズに収集部材で収集でき、薬剤の搬送性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る薬剤包装装置の外観を示す斜視図である。この薬剤包装装置は、図2〜図5に示すように、装置本体1に、散薬待機部材2、散薬供給部材3、散薬掻出部材4、薬剤回収部材5、錠剤供給部材6、包装部材7、及び、制御部材8を備える。
【0018】
散薬待機部材2は、図2及び図3に示すように、ドーナツ状の円盤9に、環状溝10を形成したものである。環状溝10は、断面円弧状で、外周縁が、その円弧の中心を通る水平面とほぼ同じ位置に、内周縁が水平面よりも下方側で、後述する掻出部21によって内周側に掻き出し容易な位置にそれぞれ形成されている。円盤9の下方には回転テーブル11が一体化されている。回転テーブル11は、装置本体1に固定された基台12上にローラ13を介して回転自在に支持されている。回転テーブル11の外周縁には従動ギア14が形成されている。基台12にはモータM1(例えば、サーボモータやステッピングモータ)が固定され、その回転軸に設けた駆動ギア15が前記従動ギア14に噛合している。これにより、モータM1を駆動すると、駆動ギア15、従動ギア14を介して回転テーブル11すなわち円盤9が回転する。
【0019】
散薬供給部材3は、図2及び図3に示すように、一対の散薬供給フィーダ16で構成されている。各散薬供給フィーダ16は、投入ホッパー17内に投入された散薬を、振動しながら後述する散薬待機部の環状溝10へと均等に供給するように構成されている(詳しくは、特開2000−85719号公報等参照)。投入ホッパー17の上方開口部は、装置本体1の前方側上面の両側2箇所に開口し、その開口は蓋体18で開閉可能となっている。蓋体18は、投入ホッパー17の上方開口部を閉鎖する閉鎖位置(図1中、右側に示す。)と、手前側に回動して乳鉢19を載置可能な開放位置(図1中、左側に示す。)とにそれぞれ回動可能となっている。なお、乳鉢19は、錠剤を粉末にする場合や、混合薬を作成する場合に使用する。乳鉢19を開放位置の蓋体18に載置することにより、前記作業を効率良く行うことができ、しかも、閉鎖位置で投入ホッパー17からの散薬の飛散を防止することができる。
【0020】
散薬掻出部材4は、図2及び図3に示すように、アーム部20の先端に掻出部21を設けたものである。
【0021】
アーム部20は、前記円盤9の回転中心に設けた支持テーブル22に、円盤9の周方向、及び、支軸20aを中心とする上下方向に、それぞれ旋回可能に取り付けられている。支持テーブル22の外周には切欠部23が形成されている。切欠部23の各ガイド縁には、前記基台12から突設したストッパ24が当接するようになっている。これにより、支持テーブル22の回転範囲が、図3に実線で示す掻出位置と、2点鎖線で示す退避位置の間に制限される。また、ストッパ24にはロック爪25が形成され、支持テーブル22の一方のガイド縁にはロック爪25が係脱する係止受部26が形成されている。ロック爪25は、支持テーブル22が掻出位置に位置することにより係止受部26に係止し、環状溝10からの散薬の掻出動作中に散薬掻出部材4が回転方向に位置ずれすることを防止する。なお、係止受部26にセンサを設け、ロック爪25を検出するようにすれば、支持テーブル22が掻出位置に位置決めされていない限り、散薬掻出部材4の駆動を停止させ、誤動作を防止することが可能である。
【0022】
掻出部21は、掻寄板27に掻出板28を一体化したもので、従来周知の方法で、円盤9を回転させることにより、掻寄板27で環状溝10内の散薬を掻き寄せ、モータ(図示せず)の駆動により掻出板28を回転させ、掻き寄せた1包分の散薬を環状溝10から掻き出す(詳しくは、特開2004−305721号公報参照)。
【0023】
錠剤供給部材6は、図1及び図4に示す手撒き錠剤供給部29と、図示しない自動錠剤供給部を備える。
【0024】
手撒き錠剤供給部29は、半錠等、自動錠剤供給部によって自動供給できない処方の場合の錠剤の供給に利用されるもので、格子状に仕切られた錠剤収容室30を備える。各錠剤収容室30には、予め薬剤師によって1包分ずつ該当する錠剤が手撒きにより収容される。そして、全体が水平移動することにより、順次、各錠剤収容室30の底板が開放し、収容した錠剤が落下して供給できるようになっている(したがって、処方に合わせて底板の開放順に各錠剤収容室30へと錠剤を収容しておく必要がある。)。
【0025】
自動錠剤供給部は、図示しないが、複数の錠剤カセットを備える。各錠剤カセットには種類別に錠剤がそれぞれ収容され、処方データ等に基づいて所定数が自動的に払い出されるようになっている。
【0026】
薬剤回収部材5は、図2〜図4に示すように、案内部材31と収集部材32とで構成されている。
【0027】
案内部材31は、図4に示すように、錠剤供給部材6から供給された錠剤を案内する第1案内部33と、この第1案内部33によって案内された錠剤を収集部材32へと案内する第2案内部34とからなる。
【0028】
第1案内部33は、平面視略矩形状で、上面が開口し、手撒き錠剤供給部29から供給される錠剤を回収できるようになっている。また、第1案内部33には、一端側の側壁に切欠部23aが形成され、そこには自動錠剤供給部から供給される錠剤が通過するダクト23bが接続されている。さらに、第1案内部33の底面は、一端側(前記切欠部23が形成される側)に向かって徐々に下方に向かって傾斜し、排出口を介して第2案内部34へと錠剤を移送できるようになっている。
【0029】
第2案内部34は、平面視略円形状で、上面が蓋体34a(図5参照)によって覆われ、支軸35aを中心として回転可能に設けた仕切部材35によって内部空間が第1空間36と第2空間37とに分割されている。第1空間36には、前記第1案内部33から排出される錠剤が収容される。第2空間37には排出口が形成され、そこから延びるダクト41(錠剤案内通路)が、後述する収集部材32に接続されている。仕切部材35は支軸35aを中心として回転可能に設けられ、サーボモータM2によりギア35bを介して回転し、180°毎に停止するように構成されている。サーボモータM2は、仕切部材35を180°毎に停止するように駆動するだけでよいので、制御が簡単で故障しにくい。
【0030】
収集部材32は、図2に示すように、基台側に固定された収集ホッパー38と、この収集ホッパー38に対して着脱可能に設けた案内ホッパー39とで構成されている。
【0031】
収集ホッパー38は、上方に向かうに従って徐々に断面積が大きくなるように形成されている。収集ホッパー38の下端開口部は、包装部材7へと延びている。
【0032】
案内ホッパー39は、平面視略矩形の筒状で、4つの側壁のうち、1箇所が大きく切り欠かれ、前記円盤9の環状溝10から掻き出された散薬をスムーズに回収できるようになっている(切欠き部分と4つの側壁によって散薬案内通路40が構成されている。)。また、残る3つの側壁のうち、1箇所には前記錠剤供給部材6から供給される錠剤が通過するダクト41が接続されている。
【0033】
包装部材7は、図2に示すように、従来周知の構成で、ロール42から巻き戻され、2つ折りにされた帯状の分包紙43に印刷部44にて印刷し、斜め下方に向かう位置で、前記収集ホッパー38から薬剤を供給し、1包分ずつ周囲(3辺)をシールするようにしたものである。
【0034】
制御部材8には、図1に示すように、ノートパソコンが使用されており、キーボードから直接入力されたり、図示しないホストコンピュータから入力されたりした処方データ(処方箋に記載された患者情報や薬剤情報等)に基づいて、散薬供給部材3、錠剤供給部材6等を駆動制御する。
【0035】
次に、前記構成の薬剤包装装置の動作について、図6及び図7のフローチャートに従って説明する。
【0036】
処方データの入力があれば(ステップS1)、散薬供給部材3や錠剤供給部材6を駆動制御する薬剤供給処理を実行する(ステップS2)。
【0037】
薬剤供給処理では、処方データに含まれる薬剤の種類を判断する(ステップS11)。
【0038】
処方データに散薬が含まれている場合、投入ホッパー17に供給する散薬の種類と分量を指示する(ステップS12:例えば、制御部材8のディスプレイに表示させる。)。ユーザ(薬剤師)は、その指示に従って該当する散薬を指示された分量だけ投入する。このとき、円盤9を回転駆動させ(ステップS13)、投入ホッパー17を振動させる(ステップS14)。これにより、投入ホッパー17から円盤9の環状溝10内に散薬が落下し、環状溝10内に均等に収容される。環状溝10に散薬が収容されれば、散薬掻出部材4を駆動し(ステップS15)、掻寄板27で環状溝10内の散薬を仕切り、円盤9を所定ピッチだけ回転させる(ステップS16)。そして、掻出板28を回転させると(ステップS17)、1包分の散薬が環状溝10から薬剤回収部材5の収集部材32へと掻き出される。収集部材32では、散薬は切欠部分から案内ホッパー39内へと落下し、さらに収集ホッパー38で収集される。
【0039】
処方データに錠剤が含まれている場合、その錠剤を自動供給できるか否かを判断する(ステップS18)。自動供給できない場合、手撒き錠剤供給部29を駆動し(ステップS19)、自動供給できる場合、自動錠剤供給部を駆動する(ステップS20)。
【0040】
手撒き錠剤供給部29から錠剤が供給される場合、その錠剤は、案内部材31の第1案内部33の上方開口部より落下する。自動錠剤供給部から錠剤が供給される場合、その錠剤は第1案内部33へと落下する。第1案内部33に落下した錠剤は、さらに第2案内部34の第1空間36へと移動する。第1空間36に錠剤が収容されると、仕切部材35を回転駆動し、収容された錠剤を第2空間37へと移送し、ダクト41を介して案内ホッパー39へと導く。
【0041】
このように、案内ホッパー39では錠剤案内通路であるダクト41を介して錠剤が供給されるように構成されている。このため、散薬掻出部材4のアーム部20が内側に延びている構成であるにも拘わらず、予め供給する錠剤とアーム部20との衝突を回避することができる。
【0042】
その後、1包分として包装する他の薬剤があるか否かを判断し(ステップS21)、あれば前記ステップS11に戻って前述の処理を繰り返し、なければ、ステップS3に移行する。
【0043】
また、前記薬剤供給処理に合わせて包装部材7では分包紙43に印刷を行い(ステップS3)、落下してきた薬剤を分包紙43に包装する包装処理を実行する(ステップS4)。
【0044】
前記薬剤包装装置では、散薬供給部材3により散薬を供給する際、供給した散薬が周囲に飛散することもあり、定期的に清掃することが必要である。この場合、収集ホッパー38から案内ホッパー39を取り外すことができる。つまり、従来清掃が困難な部分を案内ホッパー39として取り外して清掃することができるので、清掃しやすいばかりか、散薬の残留を確実に防止することが可能となる。この場合、支軸20aを中心としてアーム部20を回動させることにより散薬掻出部材4を上方に移動させれば、案内ホッパー39の取り外し作業自体を容易に行うことができる。また、散薬掻出部材4を周方向に回転させることにより退避位置まで移動させれば、より一層容易に案内ホッパー39を取り外すことができるだけでなく、案内ホッパー39の周囲をも清掃することができ、清掃性を格段に向上させることが可能となる。
【0045】
なお、前記散薬掻出部材4、特に、その掻出部21は、図8〜図11に示すような構成とすることにより、掻き出す散薬の掻出量の誤差をさらに小さく抑えることが可能となる。
【0046】
すなわち、図9に示すように、掻寄板27に一体化した掻出板28は、掻寄板27の片面に直交して一体化された起立部45と、この起立部45から直交して掻寄板27と平行に延びる、先端縁が円弧状に形成された仕切部46とで構成されている。起立部45と仕切部46の先端縁にはシリコンラバー等の弾性変形可能な高摩擦材料がライニング(焼き付け)加工により一体化され、それぞれ掻出片47及び仕切片48を構成している。掻出片47は、起立部45の掻出面45aと面一の掻出面47aと、この掻出面47aに直交して回転逆方向に延びる平坦面47bと、さらにこの平坦面47bから回転逆方向に傾斜して突出する傾斜面47cとを備える。そして、傾斜面47cが形成される突出部49は弾性変形可能となっている。掻出片47は、円盤9の環状溝10内に供給された散薬を掻き出す際、環状溝10の断面円弧状の表面に密着した状態で、円弧方向に摺接する。また、仕切片48は、起立部45及び掻出片47で環状溝10から散薬を掻き出す際、環状溝10の表面に密着(圧接状態で摺接)し、これから掻き出そうとする散薬と、環状溝10内に残留させる散薬とを分離する。
【0047】
また、掻寄板27の外周縁には、図10に示すように、シリコンラバー等の高摩擦材料からなる掻寄片50が一体化されている。掻寄片50の掻寄逆面50a(散薬を掻かき寄せる側の面とは反対側の面)の外周縁にはテーパ面50bが形成されている。また、掻寄片50には、掻寄面50aに面一となるように、ステンレス鋼等の低摩擦材料からなるドーナツ状の板材で形成された付着抑制部51がライニング(焼き付け)加工により一体化されている。付着抑制部51は、掻寄板27や掻寄片50に比べて摩擦係数が小さく、散薬が付着しにくくなっている。これは、掻寄片50を、掻寄面50c側では散薬との接触面積ができるだけ小さくなるように必要最小限の範囲に抑える一方、掻寄逆面50a側では、掻寄片50を掻寄板27に確実に一体化できるように十分な領域を確保するため、掻寄逆面50a側での散薬の付着範囲が広がることによる弊害を防止するためである。また、付着抑制部51を一体化した掻寄片50の内径領域には凹所52が形成されている。
【0048】
なお、図8に示す符号53は、前記掻出部21による環状溝10から内径側への散薬の掻出動作によって外径側に散薬が飛散することを防止するための飛散防止カバーである。
【0049】
前記構成の散薬掻出部材3の掻出部21では、円盤9の環状溝10から、順次、1包分の散薬を掻き出す場合、前記同様、アーム部20を回動させることにより、環状溝10内に掻寄板27を位置決めする。
【0050】
このとき、掻寄板27の外周縁に一体化した掻寄片50によって環状溝10内の散薬が、これから掻き出そうとする散薬と、そうでない散薬とに完全に分離される。また、掻出板28は、図11(a)に示す初期定位置に位置決めしておく。この初期定位置は、掻出開始位置の手前近傍の位置、すなわち、掻出片47及び仕切片48が環状溝10に至る直前の位置である。この初期定位置であれば、掻出板28に散薬が接触することがなく、従って散薬が付着することがない。特に、1包目の掻出動作で、環状溝10内に掻寄板27を位置させた場合、掻寄板27の回転により、最終包に相当する掻寄逆面50aに散薬が摺接することがないので、1包目及び最終包の掻出量を正確に所望の値とすることができる点で好ましい。
【0051】
そして、円盤9を所定ピッチだけ回転させ、1包分の散薬を掻出可能な状態とする。続いて、図11(b)に示すように、図示しないモータを駆動することにより、掻出部21を回転させる。この掻出部21の回転では、まず、掻出板28の仕切部46に一体化した仕切片48が環状溝10内の散薬を1包分に分離する。仕切片48はシリコンラバー等で形成されており、弾性変形することにより環状溝10の表面に密着する。したがって、散薬を確実に分離することができ、正確に1包分だけに仕切ることができる。次に、図11(c)に示すように、掻出板28の掻出部21に一体化した掻出片47が環状溝10内の散薬を、円盤9の内径側へと掻き出す。掻出片47は、前述の通り、環状溝10の表面に密着しながら移動するので、環状溝10内に散薬を残留させることなく、確実に1包分を掻き出すことができる。
【0052】
前記一連の1包分の掻出動作では、まず、環状溝10内に掻寄板27を位置させても、掻寄片50には低摩擦材料からなる付着抑制部51が形成されている。したがって、この部分に散薬は殆ど付着しない。また、掻寄及び掻出動作を行う場合、掻出板29を初期定位置に位置決めしている。さらに、環状溝10の表面に、掻寄片50、仕切片48、及び、掻出片47を圧接して散薬の残留を防止している。したがって、1包分の掻出量を正確なものとすることが可能となる。また、付着や残留によるコンタミ(異種薬剤の混合)等を防止することができる。
【0053】
なお、1包分の掻出動作が完了すれば、掻出部21をさらに回転させて、初期定位置へと位置決めし、前記動作を繰り返す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態に係る薬剤包装装置の斜視図である。
【図2】図1の薬剤包装装置が備える散薬供給部材の正面断面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図1の薬剤包装装置が備える、一部の部品を省略した案内部材と、散薬待機部材の一部を示す斜視図である。
【図5】図4の案内部材を、部品を省略することなく示した斜視図である。
【図6】本実施形態に係る包装処理を示すフローチャートである。
【図7】図6の薬剤供給処理を示すフローチャートである。
【図8】他の実施形態に係る散薬掻出部材を示す斜視図である。
【図9】図8の掻出部を異なる角度から見た斜視図である。
【図10】(a)は図9の掻出部の正面図、(b)は平面図、(c)は(b)の外周側の部分断面図である。
【図11】図8の掻出部による一連の掻出動作を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1…装置本体
2…散薬待機部材
3…散薬供給部材
4…散薬掻出部材
5…薬剤回収部材
6…錠剤供給部材
7…包装部材
8…制御部材
9…円盤
10…環状溝
11…回転テーブル
12…基台
13…ローラ
14…従動ギア
15…駆動ギア
16…散薬供給フィーダ
17…投入ホッパー
18…蓋体
19…乳鉢
20…アーム部
21…掻出部
22…支持テーブル
23…切欠部
24…ストッパ
25…ロック爪
26…係止受部
27…掻寄板
28…掻出板
29…手撒き錠剤供給部
30…錠剤収容室
31…案内部材
32…収集部材
33…第1案内部
34…第2案内部
35…仕切部材
36…第1空間
37…第2空間
38…収集ホッパー
39…案内ホッパー
40…散薬案内通路
41…錠剤案内通路
42…ロール
43…分包紙
44…印刷部
45…起立部
46…仕切部
47…掻出片
48…仕切片
49…突出部
50…掻寄片
51…付着抑制部
52…凹所
53…飛散防止カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーナツ状で、断面円弧状の環状溝を有する散薬待機手段と、
前記散薬待機手段を回転駆動させる駆動手段と、
前記環状溝に散薬を供給する散薬供給手段と、
前記環状溝から内径側に散薬を掻き出す散薬掻出手段と、
前記散薬掻出手段によって掻き出された散薬を回収する薬剤回収手段と、
前記薬剤回収手段に錠剤を供給する錠剤供給手段と、
前記薬剤回収手段によって回収された散薬及び/又は錠剤を包装する包装手段と、
を備えた薬剤包装装置であって、
前記散薬掻出手段は、
前記散薬待機手段の内径側の支持部から延びるアーム部と、
前記アーム部の、前記支持部とは反対側の端部に取り付けられ、前記薬剤待機手段の環状溝から内側に散薬を掻き出す掻出部と、
からなり、
前記薬剤回収手段は、案内部材と、収集部材とからなり、
前記案内部材は、
前記錠剤供給手段から供給された錠剤が通過する錠剤案内通路と、
前記散薬掻出手段によって掻き出された散薬が通過する散薬案内通路と、
を備え、
前記収集部材は、案内部材からの薬剤を前記包装手段へと導き、
前記案内部材は、前記収集部材に対して着脱可能であることを特徴とする薬剤包装装置。
【請求項2】
前記散薬掻出手段は、前記薬剤待機手段の支持部を中心として、掻出部によって掻き出した散薬を薬剤回収手段に回収可能な回収位置と、アーム部が薬剤回収手段から退避する退避位置との間を旋回可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の薬剤包装装置。
【請求項3】
前記薬剤回収手段の案内部材は、
手撒き錠剤供給部から供給される錠剤を案内する第1案内部と、
前記第1案内部によって案内された錠剤を前記収集部材へと案内する第2案内部とからなり、
前記第1案内部に、自動錠剤供給部から供給される錠剤の投入部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤包装装置。
【請求項4】
前記第2案内部は、同一方向にのみ回転可能で、180°回転する毎に停止する仕切部材を備え、
前記仕切部材の停止位置で、前記第1案内部から案内された錠剤が一時的に貯留される第1空間と、該第1収容部に貯留された錠剤を前記収集部材へと導く通路を備えた第2空間とに区画されるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の薬剤包装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−29510(P2009−29510A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286387(P2007−286387)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】