説明

薬剤収容容器

【課題】 薬剤を確実に一定時間間隔で下方に供給させ、円滑な分包動作を実現し得る薬剤収容容器の提供。
【解決手段】 薬剤収容部に縦軸線回りに回転するロータが配置され、ロータの下部に薬剤を載置保持するための薬剤載置部が設けられ、薬剤載置部の外周部に、上下方向に亙る薬剤収容路が周方向に所定間隔で形成されるとともに薬剤が周方向に並ぶよう保持する保持面が形成され、ロータの回転に伴って保持面に保持された薬剤が薬剤収容路に収容され、薬剤収容路に収容された薬剤が所定個数ずつ下方に落下するよう構成され、薬剤載置部に、薬剤載置部に載置された薬剤と接触可能で、縦軸線回りのロータの回転に相対回転可能な環状部材が非駆動に設けられている薬剤収容容器の構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤収容容器に関し、特に、処方箋に指示された薬剤としての錠剤を患者に供給するための薬剤分包装置に用いられる薬剤収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や薬局等では、医師の処方箋に指示された薬剤を患者に供給するために、薬剤分包装置を用いる場合がある。
この薬剤分包装置には、薬剤収容容器(「薬剤カセッタ」とも称する)が着脱自在に設けられているものがあり、該薬剤分包装置および薬剤収容容器として、例えば、下記特許文献1に示す技術が提案されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された薬剤収容容器は、容器本体の上部に薬剤収容部を有している。また、外周部に上下方向に沿って形成した薬剤収容路を有して縦軸線回りに回転することで薬剤を周方向へ搬送するロータを、薬剤収容部に配置している。
【0004】
上記従来の薬剤収容容器において、薬剤収容部に薬剤(錠剤)を投入し、ロータを縦軸線回りに回転させると、薬剤がロータの外周面と薬剤収容部の内周面との間の環状の隙間空間に薬剤が周方向に並び、また薬剤収容路に薬剤が順次入って、これが所定個数ずつ下方へ落下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−188078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の薬剤収容容器では、ロータが回転することで環状の隙間空間に薬剤が周方向に並ぶが、薬剤の形状によっては、ロータがさらに回転すると、薬剤どうしが周方向に並びつつ重なる状態になる場合があった。そうなると、薬剤とロータの外周面との干渉部分が多くなり(摩擦力が大きくなり)、ロータが円滑に回転しにくくなったり、薬剤整列路に薬剤が円滑にはいらなかったりして、薬剤が一定時間間隔で下方に供給されず、円滑な分包動作ができなるという現象生じる。
【0007】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、薬剤を確実に一定時間間隔で下方に供給させ、円滑な分包動作を実現し得る薬剤収容容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の薬剤収容容器は、薬剤収容部に縦軸線回りに回転するロータが配置され、該ロータの下部に薬剤を載置保持するための薬剤載置部が設けられ、該薬剤載置部の外周部に、上下方向に亙る薬剤収容路が周方向に所定間隔で形成されるとともに薬剤が周方向に並ぶよう保持する保持面が形成され、前記ロータの回転に伴って保持面に保持された薬剤が薬剤収容路に収容され、薬剤収容路に収容された薬剤が所定個数ずつ下方に落下するよう構成され、前記薬剤載置部に、該薬剤載置部に載置された薬剤と接触可能で、ロータに対して前記縦軸線回りに回転可能な環状部材が設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記構成において、薬剤収容部に薬剤を容れてロータを縦軸線回りに回転すると、薬剤が、ロータの外周部と薬剤収容部の内周面との間の環状の空間において薬剤載置部に周方向に並ぶようにされ、ロータの回転に伴って薬剤が薬剤載置部と薬剤収容部の内周面との間で摩擦力を受け、薬剤がロータの回転速度に遅れて周方向に移動して薬剤収容路に落ちるようにして収容され、薬剤収容路に収容された薬剤は、ロータがさらに周方向に回転することにより薬剤が下方に落下供給される。
【0010】
薬剤が薬剤載置部と薬剤収容部の内周面との間で摩擦力を受けた状態でロータが回転したとき、薬剤載置部には、薬剤と接触可能でロータに対して縦軸線回りに回転可能な環状部材が設けられているから、薬剤の一部どうしがロータの径方向で重なって、薬剤が薬剤載置部と薬剤収容部の内周面との間で大きな摩擦力を受けると、その摩擦力の一部が環状部材に働く(負荷される)からロータの回転に支障がなく、ロータが回転して薬剤収容路が移動すると、薬剤載置部の保持面に保持された薬剤が薬剤収容路に落ちるようにして収容される。
【0011】
本発明の薬剤収容容器では、ロータは上部回転部と下部回転部とを有して、上部回転部と下部回転部とが縦軸線回りに相対駆動回転可能とされ、前記上部回転部の径は前記下部回転部の径に比べて小径に形成され、前記下部回転部の外周部に薬剤収容路が形成され、下部回転部における薬剤収容路の間の上面は薬剤が載置される環状の載置面とされ、上部回転部と下部回転部との間に環状部材が配置され、該環状部材は上部回転部と同径に形成されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成において、薬剤が載置面に載置した状態でその側部が環状部材に接触し、薬剤が薬剤載置部と薬剤収容部の内周面との間で大きな摩擦力を受けると、その摩擦力の一部が環状部材に働くから、ロータの回転に支障がなく、ロータが回転して薬剤収容路が移動すると、薬剤載置部の載置面に載置している薬剤が薬剤収容路に落ちるようにして収容される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の薬剤収容容器では、薬剤載置部に、薬剤と接触可能でロータに対して縦軸線回りに回転可能な環状部材が設けられているから、薬剤の一部どうしがロータの径方向で重なって、薬剤が薬剤載置部と薬剤収容部の内周面との間で大きな摩擦力を受けると、その摩擦力の一部が環状部材に働くからロータの回転に支障がなく、ロータが回転して薬剤収容路が移動すると、薬剤載置部の保持面に保持された薬剤が薬剤収容路に落ちるようにして収容され、さらにロータが回転することにより、薬剤収容路内の薬剤を一定のタイミングで下方に落下供給させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す薬剤分包装置の一部を拡大した側面図
【図2】同じく多数の薬剤収容容器を薬剤分包装置の躯体に装着した状態の斜視図
【図3】同じく薬剤収容容器を上方から観た単体斜視図
【図4】同じく薬剤収容容器を上方から観た組立斜視図
【図5】同じく薬剤収容容器を側面視した半断面図
【図6】同じく薬剤収容容器を側面視した全体断面図
【図7】同じく一部の錠剤を保持面に保持された状態の平面図
【図8】同じく側面断面図
【図9】別の実施形態の薬剤収容容器を側面視した全体断面図
【図10】別の実施形態の薬剤収容容器を側面視した全体断面図
【図11】別の実施形態の薬剤収容容器を側面視した全体断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る薬剤分包装置を図面に基づいて説明する。図1は薬剤分包装置の一部を拡大した側面図、図2は多数の薬剤収容容器を薬剤分包装置の躯体に装着した状態の斜視図、図3は薬剤収容容器を上方から観た単体斜視図、図4は薬剤収容容器を上方から観た組立斜視図、図5は薬剤収容容器を側面視した半断面図、図6は薬剤収容容器を側面視した全体断面図、図7は一部の錠剤を保持面に保持された状態の平面図、図8は同じく側面断面図である。なお、図7および図8は、それぞれ多数の錠剤のうちの幾つか(三個)の錠剤のみを表示している。
【0016】
図1および図2に示すように、薬剤分包装置1は、円柱状の躯体2と、躯体2から放射状に多数水平方向に突設された扇状の支持体3と、各支持体3上に、躯体2に対してその前後方向に移動させることにより、上下の支持体3間に着脱自在に収容される薬剤収容容器(「薬剤カセッタ」とも称する)4とから構成されている。
【0017】
各支持体3は板状に形成され、その板面には、躯体2の下部に向けて薬剤としての錠剤5(例えば、図7,図8参照)を落下させるための不図示の錠剤通過孔が穿設され、該錠剤通過孔の内面には、錠剤5の通過を検出する検出手段として、例えば不図示のセンサーを有している。
【0018】
次に、薬剤収容容器4の構成を、図3ないし図8を主にして説明する。
これらの図に示すように、薬剤収容容器4は、容器本体6と、縦軸線(上下方向軸線)7回りに回転可能なロータ8と、錠剤5を一錠ずつ躯体2の下部に落下させるべく設けられた仕切体10と、ロータ8の回転中心部材である回転中心軸の突出部(下端部)に装着されたギヤ(平ギヤが用いられている)と、薬剤収容容器4を支持体3に着脱する際にこれを案内するための案内ローラ11とを備える。
【0019】
容器本体6は底壁部12と、底壁部12における底壁板13の上面13aに一体的に形成された薬剤収容部14とを備える。
底壁部12は、平面視して扇状の底壁板13と、底壁板13の周方向両側端辺に前後方向に沿うよう一体的に形成された横フレーム15と、底壁板13の前端辺に周方向に沿うよう一体的に形成された前フレーム16とを有する。
横フレーム15および前フレーム16は同一の所定の高さを有し、容器本体6を支持体3の上面に装着した際に、底壁板13は横フレーム15および前フレーム16の高さ分だけ支持体3の上面から浮いた状態として保持される。
【0020】
薬剤収容部14は、その底壁板13の上面13aから垂直方向上方に立ち上がってロータ8を内周面側に配置可能とする、下部収容部9を構成する円筒部(外壁部)17と、円筒部17の上部に配置され、平面視して扇形状の上部収容部18とを一体的に有する。上部収容部18の底面は、円筒部17の上端部に向けて下傾斜する傾斜壁20とされて、下部収容部から大きく広がった形状になっている。
円筒部17の前方には、薬剤収容容器4を着脱する際に把持される把持部21が組込まれている(図1参照)。
【0021】
底壁板13の周方向中心の後部寄りには、前記錠剤通過孔と上下方向で対向する平面視して矩形形状の薬剤排出開口22が形成されている。
薬剤排出開口22の前方で円筒部17の中心位置に、前記回転中心軸が上方から挿通される円筒状膨出部23が上方に突出するよう一体的に形成されている。
【0022】
薬剤排出開口22は、平面視して矩形形状に穿たれており、薬剤排出開口22を形成する前壁面50と後壁面51とは前後方向で対向し、両側壁面(符号省略)は左右方向で対向している。
前壁面50は垂直面であり、前壁面50は、ロータ8の回転中心である縦軸線7を中心として、後述の薬剤収容路24の径方向内面24bどうしを連続するよう描いた仮想円に対して、中心側(縦軸線7側)に位置ずれしている。
後壁面51は垂直面であり、ロータ8の回転中心である縦軸線7を中心として円筒部17の外周面42に対してさらに後方に位置ずれしている。このずれ量は、特に定めてはおらないが、扱われる錠剤5の形状、直径、サイズ等の条件に基づいて適宜設定することが好ましい。
なお、両側壁面は何れも垂直面であり、左右方向への離間距離は薬剤収容路24の周方向幅に比べて大きく設定されている。
【0023】
仕切体10は長手方向が左右方向の板状に形成されており、図ではその位置のみ符号10として示している。円筒部17の後部側の壁面部にその周方向を長手方向として形成された挿通孔25に後方から前方に向けて挿入されて、円筒部17内に露出している。仕切体10の上下方向位置は、後述するロータ8において錠剤5を載置する載置面24aよりもわずかに上方に配置されており、左右方向位置は薬剤排出開口22に対応する位置に設定される。
【0024】
次に、ロータ8の構成を説明する。ロータ8は、下部回転部32と、上部回転部33と、薬剤を載置支持する薬剤載置部とを有する。該薬剤載置部は、下部回転部32と上部回転部33とに挟持される環状部材55(後に詳述する)を有する。
下部回転部32の上面32bおよび上部回転部33の下面33bは環状に形成されており、該上面32bおよび下面33bは平滑面とされている。
【0025】
前記回転中心軸は下部回転部32に設けられた外軸34と、上部回転部33に設けられた内軸35とを有した二軸構造である。このように二軸構造とすることにより、上部回転部33と下部回転部32とが縦軸線7回りに相対回転可能(異なる速度で回転可能)に構成されている。
上部回転部33と下部回転部32とが相対回転することにより、ロータ8は上部収容部18に収容された多数個の錠剤5を、高い撹拌性をもって撹拌する撹拌部材としての機能を有する。
【0026】
前記外軸34は円筒状に形成されており、外軸34は下部回転部32に一体に設けられて、前記円筒状膨出部23に上方から内嵌し、また、底壁板13を貫通して下方に突出する外突出部43を有する。内軸35は、上部回転部33に一体的に設けられ、外軸34に上方から内嵌し、また、底壁板13の下方に突出する内突出部44を有している。
内突出部44は外突出部43に比べてさらに下方に突出しており、内突出部44の外周面には雄ネジを形成した雄ネジ46が所定の長さ分だけ上下領域に形成されている。
【0027】
下部回転部32は、円板状に形成された円板部32Aを有し、その上面は平滑面とされている。下部回転部32の直径は、円筒部17の内周面36の内径に対してわずかに小さく設定されている。円板部32Aの底面32aは環状の平滑面とされ、周方向に等間隔置きに突起29が配置されている。底面32aは、円板部32Aの中心部に凹部32Bを形成することで、環状に形成されている。
【0028】
下部回転部32の径方向中心には、上方に向けて突出して上部回転部33の裏面中心部に形成した下面凹部38に内嵌する膨出部40が形成されている。前記外軸34は膨出部40の径方向内方側から下方に向けて一体的に形成されている。
【0029】
下部回転部32の外周面からその径方向内方部分の環状の領域を薬剤収容路形成部分とし、下部回転部32の外周面を周方向等間隔置きに径方向内方に後退させることで、上下方向に亙って沿って前記薬剤収容路24が複数形成されている。この薬剤収容路24の周方向幅および高さは、錠剤5を一つだけ収容し得るよう設定されている。
下部回転部32において薬剤収容路24間の上面は薬剤収容部14に収容された錠剤5を載置保持する載置面24aとされている。
【0030】
ロータ8を上方に付勢する弾性体として、コイルバネ48(圧縮バネ)が設けられている。
円筒状膨出部23の下端部には、薄板環状の敷座部材65が遊嵌されており、この敷座部材65が弾性体の一例としての前記コイルバネ48の下端部でのバネ座となっている。
膨出部40の裏面47には、コイルバネ48の上端面を周方向で係止するための係止部(図示せず)が形成されている。この係止部は、裏面47に縦軸線7を中心とする径方向に放射状に複数本形成されている。係止部の、裏面47からの下方への突出量はわずかであって、コイルバネ48の上端部は係止部の下面をバネ座としている。
【0031】
このコイルバネ48の弾性によって、ロータ8、すなわち上部回転部33は、底壁板13の上面13aから浮く方向に付勢されている。また、収容される錠剤5の量に起因する重さに応じてコイルバネ48は伸縮し、少なくとも錠剤5がロータ8上にない場合では、ロータ8の下面は底壁板13の上面13aからわずかな浮量をもって浮いている。特に、突起29を設けたことにより、突起29の高さ分だけ円板部32Aの底面32aは上方に位置するよう設定されている。
また、少なくとも錠剤5がロータ8上にない場合では、前記突起29も底壁板13の上面13aから離れている。
【0032】
これら突起29は、ロータ8の径方向について薬剤収容路24と同じ位置(薬剤収容路24に対応する位置)に配置している。
この実施形態では、突起29は90°間隔で薬剤収容路24と薬剤収容路24との中間位置に配置されて、何れの突起29も底面32aの最外端位置に配置されている。
【0033】
また各突起29の、円板部32Aの底面32aからの突出量はわずかであるが、下部回転部32に錠剤5の重さがかかってコイルバネ48が縮んだとしても、あるいは薬剤収容容器4の組立て誤差によるガタつき等で、ロータ8(下部回転部32)が縦軸線7に対して傾いたとしても、突起29以外では円板部32Aの底面32aと底壁板13の上面13aとが当接せず、突起29が底壁板13の上面13aに当接するよう構成されている。
なお、これらの突起29は下方を凸とする略半球形状に形成されており、合成樹脂によって円板部32Aに一体的に形成されている。合成樹脂として自己潤滑性に優れた材料が用いられている。
【0034】
上部回転部33は、円筒部17の内周面36に対して錠剤5が落下できる隙間19を介して設けられている。換言すれば、上部回転部33の径は下部回転部32の径に比べて小径に形成され、上部回転部33の外周面33aは隙間19を介して円筒部17の内周面36と径方向内外方向で対向している。隙間19の径方向幅は、薬剤収容路24の径方向幅にほぼ一致している。
【0035】
このような上部回転部33の構成により、上部回転部33の傾斜上面に錠剤5が載ると、錠剤5は該傾斜上面に沿って斜め下方に滑り落ち、薬剤収容路24に収容され、あるいは下部回転部32の載置面24aに載置される。
【0036】
ここで前記環状部材55、およびその周辺の構造について説明する。環状部材55は偏平な形状に形成されており、上部回転部33の下面と下部回転部32の上面の間に挟持されている。
環状部材55の内径は下部回転部32の膨出部40の外径に比べて大きく設定されている。環状部材55の外径は上部回転部33の外径と同径に形成されている。環状部材55の上面55aおよび下面55bは平滑な環状平面に形成されており、外周面55cは上下方向に沿う環状面に形成されている。
このような環状部材55を載置するための環状凹部56が下部回転部32の円板部32Aに形成されている。この環状凹部56は円板部32Aの上面外周端部に形成されており、環状凹部56の形状は環状部材55の形状に実質的に一致している。
【0037】
この構成により、環状部材55を環状凹部56に嵌合した状態で、環状部材55の内周面55dと環状凹部56の外周面56aとが径方向内外で対向して、環状部材55の内周面55dが環状凹部56の外周面56aに対して、周方向に摺動自在となる。
また、環状部材55を環状凹部56に嵌合した状態で、環状部材55の外周面55cと薬剤収容路24の径方向内面24bとは上下方向でほぼ面一となる。
なお、環状凹部56の外周面56aは上角部が面取りされて、その分だけ環状部材55の内周面55dとの接触面積を少なくしている。
【0038】
また、環状部材55を環状凹部56に嵌合した状態で、上部回転部33を上方から組合せると、環状部材55の外周面55cと上部回転部33の外周面33aとは上下方向で面一となる。
この構成により、環状部材55の外周面55cと上部回転部33の外周面33aとは、錠剤5が接触可能な面となって、錠剤5を保持するべく所定の高さを有する保持面としての機能を有する。
薬剤載置部は下部回転部32の載置面24aと、上部回転部33の外周面33aおよび環状部材55の外周面55cとからなる保持面から構成される。
【0039】
環状部材55は非駆動である。すなわち環状部材55そのものを直接的に駆動させる手段を有さず、したがって上部回転部33または下部回転部32の駆動によって接触面では摩擦力を受けるものの、上部回転部33または下部回転部32の駆動に全く支配されてしまうといった構成ではない。
環状部材55は、下部回転部32および上部回転部33で挟持されて下部回転部32の上面および上部回転部33の下面に接していることにより摩擦力が環状部材55に働いた状態で、下部回転部32および上部回転部33の回転の双方に対して縦軸線7回りに異なる速度で回転、あるいは停止可能、すなわち相対回転可能(フリー回転)できるようになっている。
【0040】
外軸34の外突出部43には、大径従動ギヤ41が外嵌装着されている。大径従動ギヤ41は、外突出部43に、縦軸線7方向に摺動自在で且つ一体的に回転するよう外嵌装着されている。符号60はスリーブ状に形成した上下の軸受(すべり軸受)を示しており、内軸35と外軸34との相対回転を円滑にし、内軸35と外軸34との相対的なガタを防止する。
なお、大径従動ギヤ41の歯には、下部回転部32の不測の回転を阻止すべく、不図示の板バネの係止部が側方から係止されている。
【0041】
内軸35の内突出部44の雄ネジ46には、大径従動ギヤ41よりも小径の小径従動ギヤ(ナットギヤに相当する)45が螺合されている(符号は図8参照)。この小径従動ギヤ45の下面45bには、上方へ凹となる環状の凹部45cが形成されている。
内突出部44には、小径従動ギヤ45に下方から重なるように固定用ナット部材61が螺合されている。この固定用ナット部材61は凹部45cに収納される形態とされており、固定用ナット部材61の締付けにより雄ネジ46と小径従動ギヤ45の雌ネジのネジ山どうしが縦軸線方向で圧着されて、小径従動ギヤ45(符号は図8参照)が内突出部44に強固に固定されている。
【0042】
小径従動ギヤ45の下面45bには、上方へ凹となる環状の凹部45cが形成されており、凹部45cに固定用ナット部材61が収納されているので、その分だけ装置の高さ方向が嵩張らない構成となっている。
【0043】
外軸34と内軸35には、それぞれ径の異なるギヤが装着されていることにより、薬剤収容容器4を支持体3上に装着して、不図示の駆動ギヤを駆動させることで各ギヤを回転させた際に、上部回転部33と下部回転部32とは異なる速度で縦軸線7回りに回転する構成となっている。
【0044】
上記構成の薬剤分包装置1では、薬剤収容容器4の蓋4Aを開けて上部収容部18から錠剤5を容器本体6内に投入し、蓋4Aを閉じる。
このとき、コイルバネ48の弾性により、下部回転部32は、底壁板13の上面13aから浮いており、突起29も底壁板13の上面13aから離れている。
錠剤5の重さがロータ8に働くことで、仮に突起29が底壁板13の上面13aに当接したとして、この場合、突起29は半球形状であるから、底壁板13の上面13aと突起29とは点接触する。
【0045】
薬剤収容容器4を支持体3に対して押込むようにして装着すると、支持体3の上面後部に立設された押圧壁の前端部によって前記板バネの先端部が押圧される。そうすると、板バネがその基端部回りに撓んで大径従動ギヤ41の歯に係止している板バネの係止部が、該歯から外れて係止が解除される。そして不図示の駆動ギヤと、小径従動ギヤ45および大径従動ギヤ41がそれぞれ噛合し、小径従動ギヤ45および大径従動ギヤ41が縦軸線7回りに回転可能となる。
【0046】
このような状態において、駆動ギヤを回転駆動させると、小径従動ギヤ45および大径従動ギヤ41が互いに異なる速度で外軸34、内軸35回りにそれぞれ回転し、その結果、ロータ8の下部回転部32、上部回転部33が異なる速度をもって外軸34、内軸35とともに縦軸線7回りに回転する。
このようにロータ8の下部回転部32、上部回転部33が異なる速度をもって回転することにより、投入されている錠剤5が充分に撹拌されながら、薬剤収容路24に所定の個数(この場合、一錠)の錠剤5が収容される。また、薬剤収容路24に収容された錠剤5の上に別の錠剤5が重なる。さらに、錠剤5が載置面24a上に、一列で周方向に並ぶように載置される。
また、膨出部40の裏面47に係止部が形成されていて、コイルバネ48の上端面は係止部に係止されているから、ロータ8の回転に伴ってコイルバネ48も縦軸線7回りに回転する。
【0047】
薬剤収容路24に対して上下で錠剤5が重なっていれば、ロータ8の回転により、上にある錠剤5は仕切体10によって仕切られ、下にある(薬剤収容路24内にある)錠剤5と分離される。そして、ロータ8が縦軸線7回りに回転して、錠剤5が収容された薬剤収容路24が、薬剤排出開口22と上下方向で対向すると、その錠剤5のみが薬剤収容路24から薬剤排出開口22に落下する。
【0048】
ロータ8に錠剤5の重さがかかって沈み、ロータ8が縦軸線7回りに回転しても、ロータ8と底壁板13の上面13aとは突起29のみで接触するだけであるので、下部回転部32の底面32aが底壁板13の上面13aに接触する場合に比べて、摩擦力が極めて小さくなる。このため、ロータ8が極めて円滑に縦軸線7回りに回転することができる。
【0049】
ところで、ロータ8が縦軸線7回りに回転すると、錠剤5の形状やサイズによっては、載置面24a上に、周方向に並んだ錠剤5の一部どうしがロータ8の径方向で重なって、円筒部17の内周面36と保持面(環状部材55の外周面55cと上部回転部33の外周面33a)との間に噛込むような状態が発生することが想定される。
しかしながら、この実施形態では、下部回転部32と上部回転部33とに環状部材55が非駆動(下部回転部32、上部回転部33の駆動に対して回転自由)に挟持されている。
そしてこの環状部材55の外周面55cには錠剤5が接触しているから、錠剤5が円筒部17の内周面36と保持面との間に噛込んで、噛込みの力を受けた環状部材55は、その回転速度が下部回転部32や上部回転部33の回転速度に対して遅延し、あるいは場合によっては回転が停止する。そうなることで、前記噛込みの力による下部回転部32や上部回転部33の回転速度が遅延したり、あるいは停止したりする状態を回避させることができる。つまり、下部回転部32や上部回転部33の回転速度を遅延させることなく、所定の速度で回転させることができる。
このように、下部回転部32や上部回転部33の回転速度(特に下部回転部32の回転速度)が一定に維持されると、薬剤排出開口22に対して薬剤収容路24が順次到達するタイミングが一定になり、したがって薬剤収容路24からの錠剤5の落下のタイミングも一定になるよう維持することができる。
【0050】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。図9ないし図11に、環状部材55の変形例を示す。
図9に示す環状部材55は、径方向内側外の端部に、上下に突出する環状突条部66,67が一体的に形成されている。環状部材55の上下方向の厚みは図1ないし図8で示した実施形態と同様であり、内外の環状突条部66,67の間が、上記実施形態と比べて薄肉の環状板形状に形成された薄肉部68とされている。環状突条部66,67の上面および下面は平面に形成されている。
他の構成は図1ないし図8で示した実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
上記のように、内外の環状突条部66,67の間の部分が薄肉部68とされている構成によれば、下部回転部32の上面32bおよび上部回転部33の下面33bと、環状部材55とが接触する面積が少なくなるから、下部回転部32や上部回転部33に対する環状部材55の相対回転の動作がいっそう円滑になる。
このため、下部回転部32や上部回転部33の回転駆動力がいっそう円滑になる。
【0052】
図10に示す環状部材55が、図9に示す環状部材55と異なる部分は、内側の環状突条部67を省略し、外側の環状突条部66のみを形成した点である。他の構成は同様である。
環状部材55をこのように形成することにより、内側の環状突条部66を省略した分だけ、下部回転部32の上面32bおよび上部回転部33の下面33bと、環状部材55とが接触する面積がさらに少なくなるから、下部回転部32や上部回転部33に対する環状部材55の相対回転の動作がいっそう円滑になる。
【0053】
図11に示す環状部材55が、図10に示す環状部材55と異なる部分は、外側の環状突条部66の上面および下面は平面に形成されているのに対して、この実施形態では環状突条部66の上面および下面は、それぞれ上方および下方に凸となる曲面に形成されている。
この構成によって下部回転部32の上面32bおよび上部回転部33の下面33bと、環状部材55とが接触する面積がいっそう少なくなり、下部回転部32および上部回転部33の回転駆動力に不要な負荷を与えない。
【符号の説明】
【0054】
1…薬剤分包装置、5…錠剤、7…縦軸線、8…ロータ、24…薬剤収容路、24a…載置面、32…下部回転部、33…上部回転部、33a…外周面、33b…下面、36…内周面、55…環状部材、55a…上面、55b…下面、55c…外周面、55d…内周面、56…環状凹部、56a…外周面、66…環状突条部、67…環状突条部、68…薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤収容部に縦軸線回りに回転するロータが配置され、該ロータの下部に薬剤を載置保持するための薬剤載置部が設けられ、該薬剤載置部の外周部に、上下方向に亙る薬剤収容路が周方向に所定間隔で形成されるとともに薬剤が周方向に並ぶよう保持する保持面が形成され、前記ロータの回転に伴って保持面に保持された薬剤が薬剤収容路に収容され、薬剤収容路に収容された薬剤が所定個数ずつ下方に落下するよう構成された薬剤収容容器であって、
前記薬剤載置部に、該薬剤載置部に載置された薬剤と接触可能で、ロータに対して前記縦軸線回りに回転可能な環状部材が設けられていることを特徴とする薬剤収容容器。
【請求項2】
ロータは上部回転部と下部回転部とを有して、上部回転部と下部回転部とが縦軸線回りに相対駆動回転可能とされ、
前記上部回転部の径は前記下部回転部の径に比べて小径に形成され、前記下部回転部の外周部に薬剤収容路が形成され、下部回転部における薬剤収容路の間の上面は薬剤が載置される環状の載置面とされ、上部回転部と下部回転部との間に環状部材が配置され、該環状部材は上部回転部と同径に形成されていることを特徴とする請求項1記載の薬剤収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−235181(P2010−235181A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87118(P2009−87118)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】