説明

薬剤復元または希釈のための塩化ナトリウム溶液

本発明は、注射後に、製剤が赤血球凝集反応、溶血反応、および/または細胞収縮を引き起こさないような、注射用医薬製剤を調製する方法を提供する。凝集反応を防止するためには、すぐに注射できる医薬製剤は、十分なイオン強度を有する必要がある。溶血反応または細胞収縮を防止するためには、すぐに注射できる医薬製剤は、血漿に関してほぼ等張である必要がある。本発明は、凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有し、かつ顕著な溶血反応あるいは細胞脱水または収縮を防止するために必要な等張性を有する注射用医薬製剤を調製する方法を提供する。本発明は、凍結乾燥ケーキ(または他の非液体医薬製剤)を溶液に復元するため、または医薬製剤溶液を希釈するための、約25mMから約150mMの塩化ナトリウム溶液の使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年11月1日に出願された米国特許番号60/732,221(その全体において本発明の一部として参照される)の優先権を主張する。
【0002】
本明細書において記載される全ての特許、特許出願および刊行物は、全体として本発明の一部として参照される。これらの刊行物の開示は、本明細書において記載され、主張される発明の日付において当業者に公知の先端技術をより完全に記載するために、全体として本出願の一部として参照される。
【0003】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護される要素を含む。著作権所有者は、特許庁包袋または記録においてみられるような特許文書または特許開示のいずれかによる複製に異議はないが、それ以外はどんなものであれ全ての著作権を留保する。
【背景技術】
【0004】
IV注射剤の投与中に全血が、例えば、静脈内(IV)ラインなどの薬剤溶液と混合される場合、薬剤溶液が十分なイオン強度を含有しないならば、連銭または赤血球集合(erythrocyte aggregation)(赤血球凝集反応(red blood cell agglutination)とも呼ばれる)が起こり得る。赤血球集合は、例えば、5%水中デキストロース(通常の大容積非経口溶液)および低イオン強度を有する多くの医薬品に関して起こる。
【0005】
医薬品はしばしば凍結乾燥され、従って、非経口注射前に溶液で復元する必要がある。しかしながら、凍結乾燥製品が低イオン強度溶液で復元される場合、得られる製剤は赤血球集合も引き起こし得る。凍結乾燥ケーキを注射用滅菌水(sWFI)ではなく生理食塩水(0.9% NaCl)で復元すると、さらなるイオン強度が得られるが、得られる薬剤溶液は高張であり、注射後に望ましくない副作用を有し得る。
【特許文献1】米国特許番号60/732,221明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、凍結乾燥ケーキを復元するか、または医薬溶液を希釈して、血漿に関して等張であり、赤血球集合を引き起こさないために十分なイオン強度を有するようにするために使用できる溶液が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、赤血球凝集反応が、血液と接触するようになる低イオン強度溶液により引き起こされることを見出した。従って、医薬製剤が低イオン強度溶液、例えば、5%デキストロース、3%デキストラン、またはsWFI中での復元または希釈により静脈注射用に調製される場合、得られる製剤は血液に関してほぼ等張であるために必要なオスモル濃度を有するが、しばしば凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有さない。一方、医薬製剤が高イオン強度溶液、例えば、塩溶液(0.9%NaClまたは154mM NaCl)での復元または希釈により静脈注射用に調製される場合、得られる製剤は、凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有し得るが、血液に関して高張であるオスモル濃度を有し、その結果、反復注射が頻繁または慢性的であるならば、赤血球(RBC)の脱水、静脈炎、および/またはおそらくは静脈血栓症を引き起こし得る。
【0008】
一つの態様において、本発明は静脈注射用医薬製剤を調製する方法であって、約25mMから約150mM塩化ナトリウム溶液を医薬製剤に添加し、その結果、静脈注射用に調製された製剤を得ることを含む方法を提供し、ここで、調製された製剤は血漿に関してほぼ等張であるか、または血漿に関して若干低張または若干高張であり、調製された製剤は、赤血球凝集反応(または赤血球集合)を防止するために十分なイオン強度を有する。
【0009】
調製された製剤は、例えば、約270mOsm/Lから約330mOsm/Lのオスモル濃度を有する場合に、血漿に関してほぼ等張である。調製された製剤は、例えば、約220mOsm/Lから約270mOsm/Lのオスモル濃度を有する場合に、血漿に関して若干低張である。調製された製剤は、たとえば、約330mOsm/Lから約600mOsm/Lのオスモル濃度を有する場合に、血漿に関して若干高張である。
【0010】
一つの態様において、調製された製剤は、例えば、少なくとも約25mEq/LのNaおよびClイオンを有する場合に.赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。もう一つ別の態様において、調製された製剤は、例えば、少なくとも約40mEq/LのNaおよびClイオンを有する場合、赤血球凝集反応を予防するために十分なイオン強度を有する。もう一つ別の態様において、調製された製剤は、例えば、少なくとも約40mEq/LのNaおよびClイオン、約150mEq/L未満のNaおよびClイオンを有する場合、赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。もう一つ別の態様において、調製された製剤は、例えば、伝導率で測定して、少なくとも約2.5mS/cmのイオン強度を有する場合、赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。もう一つ別の態様において、調製された製剤は、例えば、伝導率で測定して、少なくとも約4.0mS/cmのイオン強度を有する場合、赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。
【0011】
注射用に調製される医薬製剤は、例えば、非液体製剤であってもよいし、あるいは溶液製剤であってもよい。非液体製剤は、従って、約25−150mM、25−100mM、25−80mM、25−40mM、25−35mM、25−30mM、または約40mMの塩かナトリウム濃度を有する塩化ナトリウム溶液により溶液に復元することができる。液体または溶液製剤は、従って、約25−150mM、25−100mM、25−80mM、25−40mM、25−35mM、25−30mM、または約40mMの塩化ナトリウム濃度を有する塩化ナトリウム溶液により希釈することができる。非液体製剤は、例えば、凍結乾燥製剤であり得る。
【0012】
一つの態様において、添加される塩化ナトリウム溶液は、約40mMから約150mM塩化ナトリウムを含む。一つの態様において、添加される塩化ナトリウム溶液は、本質的に 、約40mMから約150mM塩化ナトリウムからなる。一つの態様において、添加される塩化ナトリウム溶液は、約40mM塩化ナトリウムを含む。一つの態様において、添加される塩化ナトリウム溶液は、本質的に40mM塩化ナトリウム溶液からなる。一つの態様において、添加される塩化ナトリウム溶液は、本質的に、約40mM±10mM塩化ナトリウムである塩化ナトリウム溶液を有する溶液からなる。
【0013】
塩化ナトリウム溶液の添加前の一つの態様において、医薬製剤は相当量のイオン化塩を含有しない。イオン化塩の相当量とは、例えば、約5mMより多い量であり得る。もう一つ別の態様において、イオン化塩の相当量とは、例えば、約25mMより多い量であり得る。医薬製剤が凍結乾燥製剤であるならば、これは、凍結乾燥製剤が水中で復元される場合、例えば、5mMまたは25mMより多いイオン化塩を含有しないならば、相当量のイオン化塩を含有しない。
【0014】
塩化ナトリウム溶液を添加する前の一つの態様において、医薬製剤は、ヒスチジン、グリシン、シュークロース、およびポリソルベートを含む。塩化ナトリウム溶液を添加する前の塩化ナトリウム溶液の添加前のもう一つ別の態様において、医薬製剤はヒスチジン、グリシン、シュークロース、ポリソルベート、および治療用タンパク質を含む。ここで、治療用タンパク質は、例えば、凝固障害を治療するため、または止血のために使用されるタンパク質、例えば、これに限定されないが、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、抗体、その関連する類似体、およびその誘導体である。塩化ナトリウム溶液を添加する前のもう一つ別の態様において、医薬製剤は、ヒスチジン、グリシン、シュークロース、ポリソルベート、および第IX因子(組み換え第IX因子(rFIX)を包含する)を含む。本明細書において用いられる場合、第IX因子は例えば、PEG化第IX因子を包含する第IX因子、第IX因子を含むタンパク質融合物、例えば、アルブミン−第IX因子または免疫グロブリン(全体またはその領域)−第IX因子、およびグリコシル化第IX因子の修飾体を含み得る。
【0015】
医薬製剤が凍結乾燥製剤である一つの態様において、塩化ナトリウム溶液の添加前に、製剤は、水中で復元されたかのように測定すると(フィル体積(fill volume)と同じ容積、即ち、凍結乾燥前の製剤の容積):(a)約5mMから約30mMのヒスチジン;(b)約0.1Mから約0.3Mのグリシン;(c)約0.5から約2パーセントのシュークロース;および(d)約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート(または約0.005から約0.05パーセント)を含む。一つの態様において、製剤は、水中で復元されたかのように測定すると、(e)約0.1mg/mLから約100mg/mLまたはそれ以上の治療用タンパク質、あるいは約10、50、100、200、300、400、500、1000、2000IU/mL(国際単位/mL)またはそれ以上の治療用タンパク質をさらに含む。一つの態様において、製剤は、水中で復元さえたかのように測定すると(e)約0.1mg/mLから約100mg/mLまたはそれ以上の第IX因子、または約0.4mg/mLから約20mg/mLの第IX因子、または約10、50、100、200、300、400、500、1000、2000IU/mL(国際単位/mL)またはそれ以上の第IX因子をさらに含み得る。
【0016】
一つの態様において、本発明は、静脈注射により引き起こされる赤血球凝集反応を防止する方法であって、復元または希釈された医薬製剤が静脈注射により対象に投与される場合に、復元または希釈された医薬製剤が赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有するように、医薬製剤を約25mMから約150mM塩化ナトリウム溶液で復元または希釈することを含む方法を提供する。
【0017】
一つの態様において、本発明は、静脈注射用凍結乾燥医薬製剤を調製する方法であって、復元後に、赤血球凝集反応を予防するために十分なイオン強度および製剤がほぼ等張(または若干高張または若干低張)であるオスモル濃度を有するように、約25mMから約150mM塩化ナトリウム溶液で凍結乾燥医薬製剤を復元することを含む方法を提供する。
【0018】
一つの態様において、凍結乾燥製剤は塩化ナトリウム溶液で復元され、ここで、復元に使用される塩化ナトリウム溶液の体積は、凍結乾燥前の製剤の体積(即ち、フィル体積)よりも少ない。このように、本発明は、注射される製剤の体積を減じる方法を提供する。
【0019】
一つの態様において、凍結乾燥製剤は塩化ナトリウム溶液で復元され、ここで、復元に使用される塩化ナトリウム溶液の体積は、凍結乾燥前の製剤の体積(即ち、フィル体積)よりも大きい。このように、本発明は、注射される製剤の等張性を維持する方法を提供する。
【0020】
例えば、凍結乾燥製剤は、5mLの塩化ナトリウムでの復元(ここで、凍結乾燥前の製剤体積は4mLである)など、凍結乾燥前の製剤の体積よりも大きい体積の塩化ナトリウムで復元することができる。例えば、4mLの水中で復元された、凍結乾燥された4mLの製剤は、10mMヒスチジン、260mMグリシン、1%シュークロース、0.005%ポリソルベートを含有する等張溶液を含有する等張溶液(約300mOsm/L)である。しかし、凍結乾燥製剤が4mLの40mM NaCl(80mOsm/L)溶液で復元されるならば、得られる製剤は若干高張溶液(300mOsm/L+80mOsm/L=380mOsm/L)を有する。しかし、凍結乾燥製剤が5mLの40mMのNaCl溶液で復元されるならば、得られる溶液は約8mM(8mOsm/L)ヒスチジン、208mM(208mOsm/L)グリシン、0.8%(24mOsm/L)シュークロース、0.004%(無視できるオスモル濃度)ポリソルベート、および40mM(80mOsm/L)NaClであり、これは約320mOsm/Lである。従って、フィル体積よりも大きな体積の塩化ナトリウム溶液でほぼ等張である凍結乾燥前製剤を復元することにより、本発明は、依然としてほぼ等張である溶液を提供することができる。言い換えると、フィル体積よりも少ないか、あるいはほぼ同じ体積の塩化ナトリウム溶液でほぼ等張である凍結乾燥前製剤を復元することにより、若干低張である溶液が生じ得る。これを回避するために、本発明は、凍結乾燥前製剤の体積よりも大きな体積の塩化ナトリウムで凍結乾燥製剤を復元することにより等張性を維持するための方法を提供する。
【0021】
一つの態様において、本発明は、復元後に凍結乾燥剤の等張性を維持する方法であって、凍結乾燥前製剤の体積よりも少なくとも20%大きな体積の凍結乾燥製剤を復元することを含む方法を提供し、ここで、凍結乾燥前製剤はほぼ等張であるので、復元された製剤はほぼ等張であり、赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。その凍結乾燥前体積よりも大きな体積の凍結乾燥製剤を復元することにより、凍結乾燥ケーキのオスモル濃度に対する寄与は、凍結乾燥前と比較して、復元からの体積の増加と正比例して減少する。例えば、300mOsm/Lの等張性を有する体積Xの凍結乾燥前製剤は、体積Xよりも20%大きい体積Yの溶液中で復元されるならば、300mOsm/Lは体積Y中240mOsm/Lである(体積が20%増加するために浸透圧が20%減少する)。体積Yの溶液が塩化ナトリウム溶液であるならば、この塩化ナトリウム溶液の張性に対する寄与は溶液中の塩化ナトリウム濃度の2倍である。例えば、体積Yの溶液が40mMであるならば、復元された溶液は240mOsm/L+80mOsm/Lの張性を有し、これはほぼ等張であり、赤血球集合を防止するために十分なイオン強度を有する。
【0022】
一つの態様において、本発明は、静脈注射用の凍結乾燥された第IX因子製剤を調製する方法であって、約25mMから約150mM塩化ナトリウム溶液を凍結乾燥された第IX因子製剤に添加して、静脈注射用に調製された製剤を得ることを含む方法を提供し、ここで、調製された製剤は血漿に関してほぼ等張であるか、あるいは血漿に関して若干低張または若干高張であり、調製された製剤は赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。一つの態様において、凍結乾燥された第IX因子製剤は、水中で復元されたかのように測定される場合、(a)約5mMから約30mMのヒスチジン;(b)約0.1Mから約0.3Mのグリシン;(c)約0.5から約2パーセントのシュークロース;(d)約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート;および(e)約0.4mg/mLから約20mg/mLの第IX因子、または約0.1mg/mLから約100mg/mLまたは他の可溶性量の第IX因子、または約10IU/mLから約500IU/mLの第IX因子、または約10IU/mLから約5000IU/mLの第IX因子を含む。一つの態様において、約40mM塩化ナトリウム溶液が凍結乾燥された第IX因子製剤に添加される。一つの態様において、約5mLの約40mM塩化ナトリウム溶液が凍結乾燥された第IX因子製剤に添加される。一つの態様において、凍結乾燥された第IX因子製剤は、水中で復元されたかのように測定されるならば、約10mMのヒスチジン、約0.26Mのグリシン、約1%のシュークロース、および約0.005%のポリソルベートを含む。
【0023】
一つの態様において、本発明は:(a)凍結乾燥されたケーキを含むバイアル(ここで、凍結乾燥されたケーキが約5mLの水で復元されるならば、溶液は:(i)約5mMから約30mMのヒスチジン;(ii)約0.1Mから約0.3Mグリシン;(iii)約0.5から約2パーセントのシュークロース;(iv)約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート;および(v)約0.4mg/mLから約20mg/mLの第IX因子、または約0.1mg/mLから約100 mg/mLまたは他の可溶性量の第IX因子、または約50IU/mLから約500IU/mLの第IX因子、または約10IU/mLから約5000IU/mLの第IX因子を含む);(b)25mMから約150mMの塩化ナトリウム溶液;および(c)得られる溶液がほぼ等張であり、静脈注射後の赤血球集合を防止するために十分なイオン強度を有するように、凍結乾燥されたケーキを塩化ナトリウム溶液で復元するための使用説明書を含む医薬キットを提供する。
【0024】
一つの態様において、本発明は:(a)凍結乾燥されたケーキを含むバイアル(ここで、凍結乾燥されたケーキが約4mLの水で復元されるならば、溶液は:(i)約10mMのヒスチジン;(ii)約0.26Mのグリシン;(iii)約1パーセントのシュークロース;(iv)約0.005パーセントのポリソルベート80;および(v)約50IU/mLから約5000IU/mLの第IX因子を含む);(b)約40mM塩化ナトリウム溶液;および(c)復元後に、得られる溶液が:(i) 約7または8から約10mMのヒスチジン;(ii)約200から約210mMのグリシン;(iii)約0.7%から約0.9%のシュークロース;(iv)約0.004%のポリソルベート80;(v)約50IU/mLから約5000IU/mLの第IX因子;および(vi)約40mMのNaClを含むように、バイアル中の凍結乾燥されたケーキを約5mLの約40mM塩化ナトリウム溶液で復元するための使用説明書を含む医薬キットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、注射用医薬製剤(特に、すぐに静脈注射できる製剤)を調製する方法であって赤血球凝集反応、溶血反応、および/または細胞収縮を起こさない方法を提供する。凝集反応を防止するためには、すぐに注射できる医薬製剤は、十分なイオン強度を有する必要がある。溶血反応または細胞収縮を防止するためには、すぐに注射できる医薬製剤は血漿に関してほぼ等張である必要がある。本発明は、凝集を防止するために十分なイオン強度および顕著な溶血反応もしくは細胞脱水または収縮を防止するために必要な等張性の両方を有する注射用医薬製剤を調製する方法を提供する。本発明の方法は、凍結乾燥されたケーキ(または他の非液体医薬製剤)を溶液に復元するか、または医薬製剤溶液を希釈するために、約25mMから約150mMの塩化ナトリウム溶液の使用を含む。塩化ナトリウム溶液が復元のために使用されるか、希釈のために使用されるかいずれにせよ、特定の塩化ナトリウム溶液の添加の結果、血漿または血液に関してほぼ等張であり、注射後、特に静脈注射後の赤血球集合を防止するために十分なイオン強度を有する医薬製剤が得られる。
【0026】
用語
【0027】
本明細書において用いられる場合、溶液の「重量モル濃度」は、溶媒1キログラムあたりの溶質のモル数である。
【0028】
本明細書において用いられる場合、溶液の「モル濃度」は、溶液1リットルあたりの溶質のモル数である。
【0029】
本明細書において用いられる場合、「オスモル」は、理想溶液中、溶媒の凝固点を1.86K降下させる粒子数(アボガドロ数)を生じる物質の量である。
【0030】
本明細書において用いられる場合、溶液の「オスモル濃度」は、溶媒1キログラムあたりのオスモル数である。オスモル濃度は、溶液中に存在する粒子数の尺度であり、粒子のサイズまたは重量に無関係である。これは、粒子濃度にのみ依存する溶液の性質の使用によってのみ測定できる。これらの性質は、蒸気圧降下、凝固点降下、沸点上昇、および浸透圧であり、まとめて束一性と呼ばれる。
【0031】
本明細書において用いられる場合、溶液の「オスモル濃度」は、溶液1リットルあたりのオスモル数である。
【0032】
本明細書において用いられる場合、注射用にすぐ使用できるか、または注射用に調製された「医薬製剤」は対象に投与されることを意図した任意の医薬であり得る。例えば、医薬製剤は凍結乾燥されたケーキ、溶液、粉末、または固体であり得る。製剤は、液体形態でなくても、本発明のNaCl溶液で溶液に復元される。製剤が液体形態であるならば、製剤は本発明のNaCl溶液で希釈されるか、または本発明のNaCl溶液と混合される。
【0033】
イオン強度
【0034】
イオン強度は電解質溶液(正電荷および負電荷を有するイオンが溶解した液体)の特徴である。これは典型的には、電解質のイオン間での平均静電相互作用として表される。電解質のイオン強度は、各イオンの重量モル濃度(溶媒の単位質量あたりの物質の量)にその価数の二乗をかけることにより得られる合計の半分である。
【0035】
イオン強度は電解質の濃度に密接に関連し、特定のイオン上の電荷がどれほど有効に電解質中の他のイオン(いわゆる、イオン雰囲気)により遮蔽または安定化されるかを示す。イオン強度と電解質濃度間の主な違いは、イオンの一部がより高度に荷電しているならば前者の方がより高いことである。例えば、完全に解離した(分解した)硫酸マグネシウム(Mg2+SO2−)の溶液は、同じ濃度の塩化ナトリウム(NaCl)の溶液よりも4倍高いイオン強度を有する。2つの間の別の違いは、どれほど多くの塩が溶液に添加されたかだけではなく、遊離イオンの濃度をイオン強度が反映することである。塩は溶解する場合もあるが、それぞれの塩は依然として対になって結合し、溶液中の荷電していない分子と類似している。この場合、イオン強度は塩濃度よりもかなり低い。
【0036】
本発明に関して、医薬製剤は等張であるだけでなく、RBC凝集反応を防止するために十分なイオン強度も有するように注射用に調製される。注射にすぐ使用できる製剤(即ち、本発明のNaClで復元された凍結乾燥されたケーキ、または本発明のNaCl溶液で希釈された医薬溶液)の十分なイオン強度は、例えば、少なくとも約25ミリ当量/リットル(mEq/L)のNaおよびClイオンを有し得る。一つの実施形態において、十分なイオン強度は少なくとも約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または少なくとも約40mEq/LのNaおよびClイオンである。
【0037】
イオン強度は、溶液の伝導率で記載することもできる。伝導率は物質または溶液の電流を伝導する能力である。装置が伝導率を測定する原則は簡単である。即ち、2つのプレートをサンプル中に設置し、プレート全体に電位(通常、正弦波電圧)を加え、電流を測定する。伝導率(G)、すなわち、抵抗率(R)の逆数は、オームの法則に従って、電圧および電流から決定される。G=I/R=I(アンペア)/E(ボルト)。
【0038】
溶液中のイオン上の電荷は電流の伝導性を促進するので、溶液の伝導率はそのイオン強度に比例する。しかしながら、ある状況においては、伝導率は濃度に直接相関しない。しかしながら、塩化ナトリウム溶液に関して、伝導率はイオン濃度に正比例する。伝導率の基本単位はジーメンス(S)であり、以前はモーと呼ばれた。試験サンプルの形状は伝導率値に影響を及ぼすので、標準化された測定値は、電極寸法における変動を相殺するために比伝導率単位(S/cm)で表される。比伝導率(C)は単に測定された伝導率(G)および電極セル定数(L/A)の積であり、ここで、Lは電極間の液体のカラムの長さであり、Aは電極の面積である。C=Gx(L/A)。セル定数が1cm−1であるならば、比伝導率は溶液の測定された伝導率と同じである。電極形状は変わるが、電極は常に同等の理論的セルにより表される。
【0039】
したがって、一つの実施形態において、すぐに注射できる製剤のイオン強度は、例えば、少なくとも約4mS/cmまたはそれ以上の伝導率を有し得る。もう一つ別の実施形態において、すぐに注射できる溶液の十分なイオン強度は、少なくとも約2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、または少なくとも約3.9mS/cmである。
【0040】
溶液が赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有するかどうかの操作上の定義は、「十分なイオン強度」なる用語を説明するためにも使用できる。例えば、これは、試験溶液を全血に添加する実験および赤血球沈降(実施例2参照;変更されたWestergren法を適用)の移動量を観察することに基づく。一つの実施形態において、試験溶液が全血と4:1の比で混合される場合、60分で約10mM(例えば、実施例2、図1および2参照)未満の赤血球沈降が生じ、試験溶液は赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。もう一つ別の実施形態において、試験溶液が全血と4:1の比で混合される場合に60分で約5mM未満の赤血球沈降を引き起こすならば、試験溶液は赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する。
【0041】
溶液オスモル濃度
【0042】
本発明の方法は、血液に関してほぼ等張である注射用医薬製剤を提供する。医薬製剤が血液に関してほぼ等張であるかどうかを決定するために、希釈剤を含む溶液の全化学成分についてのオスモル濃度を計算する。注射用医薬製剤(非経口溶液)の浸透圧濃度は、ヒトの身体の血球および血管に対して悪影響を及ぼし得る。張性は液体および溶解または希釈された薬剤について計算することができ、液体1リットルあたりのミリオスモルの数値(mOsm/L)で表される。この値はオスモル濃度とも呼ばれる。血液のオスモル濃度は285から310mOsm/Lの範囲である。低張または高張溶液は血液中に注入され、液体は細胞中または細胞から移動し、これは様々な悪影響を引き起こし得る。
【0043】
溶液オスモル濃度は一部には浸透作用および浸透圧の概念に基づく。浸透作用は溶質(溶解した粒子)の拡散あるいは血管または細胞膜などの半透膜を通した液体の移動である。膜を横断する分子の輸送を促進する浸透圧は、オスモル濃度で表され、血液または血漿などの生体液と比較した場合に、低浸透圧(低張)、等浸透圧(等張)、または高浸透圧(高張)と呼ばれる。「張性」および「浸透圧」なる用語はしばしば同義と見なされる。
【0044】
浸透圧は、「浸透勾配」(即ち、膜の両面上の異なる粒子濃度)に応答して半透膜を通る水の動きに対抗するために必要な静水圧(または水圧)である。血清オスモル濃度は、浸透圧計の使用により測定できるか、または溶液中に存在する溶質の濃度の合計として計算できる。実験室において測定される値は、通常、オスモル濃度と呼ばれる。溶質濃度から計算される値は、実験室によりオスモル濃度として報告される。オスモルギャップは、これらの2つの値の差である。
【0045】
本明細書において、張性および浸透圧は同義と見なされ、広義に理解されるべきである。張性は有効なオスモル濃度を意味し、細胞膜をはじめとする膜全体に浸透力を及ぼす能力を有する溶液中の溶質の濃度の合計に等しい。厳密に言うと、オスモル濃度は特定の溶液の特性であり、膜と無関係である。張性は特定の膜に関連した溶液の特性である。しかしながら、本発明は、血液または血漿などの生体液に関して溶液が等張であることを意味し、このことは、特定の溶液が、血液または血漿または他の生体液中の細胞膜に関して血液または血漿と等張であるという意味を包含する。
【0046】
張性の操作上の定義は、この用語を説明するために使用できる。これは、全血に試験溶液を添加し、結果を観察する実験に基づき得る。全血中のRBCが膨張し、破裂するならば、試験溶液は正常な血漿と比較して低張であると言われる。RBCが収縮し、円鋸歯状になるならば、試験溶液は正常な血漿と比較して高張であると言われる。RBCが同じ状態のままであるならば、試験溶液は血漿と等張であると言われる。RBC細胞膜は参考膜である。例えば、生理食塩水(即ち、0.9%塩化ナトリウム)中に入れられた全血は膨潤せず、従って、生理食塩水は等張であると言われる。
【0047】
等張溶液の特性
【0048】
本発明は、対象に注入するための医薬製剤を調製または準備する方法を提供し、ここで、前記製剤は、(1)血液(または血漿または他の生体液)に関してほぼ等張であるか、もしくは顕著な溶血反応、血栓症、または血管刺激を引き起こすほど高張または低張でなく、(2)赤血球集合を防止するために十分なイオン強度を有する溶液に調製される。
【0049】
一つの実施形態において、すぐに注射できる(血液に関して)等張な医薬製剤は、約270mOsm/Lより高く、約330mOsm/Lより低い張性またはオスモル濃度を有する。一つの実施形態において、すぐに注射できる等張医薬製剤は、約270mOsm/Lより高く、約328mOsm/Lより低い張性または浸透圧を有する。
【0050】
0.9%塩化ナトリウムおよび5%デキストロースなどの溶液は等張であるが、これらが多くの医薬製剤を復元または希釈するために使用される場合、得られる溶液は、赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有さない(5%デキストロースに関して)またはイオン強度が高すぎるので、得られる溶液は高張である。従って、本発明の方法は、(a)赤血球集合を軽減するために十分なイオン強度、および(b)溶血反応を防止するために十分な張性を提供するための最低濃度の塩化ナトリウム、および(c)高張溶液であるほど高くない張性を提供するための最大濃度の塩化ナトリウムを含有する希釈または復元のための溶液を使用する。さらに、本発明の方法は、医薬製剤の実際的な注入体積も維持しつつ、血液に関して十分なイオン強度および等張性を提供できる、希釈または復元用溶液を使用する。
【0051】
低張溶液の特性
【0052】
本発明は対象に注入される医薬製剤を調製する方法を提供し、ここで、製剤は、血液に関して低張でないか、または顕著な溶血反応を引き起こすほど低張でない(即ち、血液に関して若干低張である)溶液に調製される。一つの実施形態において、血液に関して若干低張であるとみなされる、すぐに注射できる医薬製剤は、約270mOsm/Lより低く、約240mOsm/Lより高い張性またはオスモル濃度を有し得る。一つの実施形態において、血液に関して若干低張であると見なされる、すぐに注射できる医薬製剤は、約270mOsm/Lより低く、約220mOsm/Lより高い張性または浸透圧を有し得る。
【0053】
低張溶液の例は、滅菌水で注射用に準備された多くの医薬製剤を包含する。低張溶液が注射される場合、体液移動が起こり、水が血管の内皮細胞および血球中に移動する。非常に多くの水を吸収する細胞は破裂し、従って低張溶液の注射は、刺激、静脈炎、および溶血反応を引き起こし得る。
【0054】
高張溶液の特性
【0055】
本発明は対象に注射される医薬製剤を調製する方法を提供し、ここで、製剤は、血液に関して高張でないか、または顕著な血栓症および/または血管刺激を引き起こすほど高張でない(即ち、若干高張である)溶液に調製される。一つの実施形態において、若干高張であると見なされる、すぐに注射できる医薬製剤は、約340mOsm/Lより高く、約600mOsm/Lより低い張性またはオスモル濃度を有し得る。一つの実施形態において、若干高張であると見なされる、すぐに注射できる医薬製剤は、約340mOsm/Lより高く、約375、400、425、450、475、500、または約575mOsm/Lより低い張性またはオスモル濃度を有し得る。一般に、高張溶液は約340mOsm/Lより高い張性を示す。約600mOsm/Lより高いオスモル濃度を有する溶液は注射において注意して使用すべきである。
【0056】
望ましくない高張溶液の例は、10%デキストロースを有する注射用に準備された多くの医薬製剤、またはオスモル濃度に影響を及ぼす複数の添加剤を有する製剤を包含する。高張溶液が注射される場合、体液移動が起こり、血管の内皮細胞および血球から水が抜かれる。非常に多くの水を失った細胞は収縮し、従って、高張溶液は血管刺激、静脈炎、および血栓症を引き起こし得る。
【0057】
pH
【0058】
血液のpHは約7.35から約7.45の範囲であり、これは中性と見なされる。pH値が7より低い製剤は酸性薬物と見なされ、4.1より低いpH値を有するものは非常に酸性と見なされる。7.5より高いpH値を有する薬剤は塩基性またはアルカリ性薬剤と見なされ、9.0より高いpH値を有するものは非常に塩基性またはアルカリ性と見なされる。非常に酸性または非常にアルカリ性の薬剤溶液は静脈炎および血栓症を引き起こし得る。したがって、一つの実施形態において、本発明は静脈注射用にこれらの製剤を準備するために、凍結乾燥された薬剤製剤を復元するか、または液体薬剤製剤を希釈するための塩化ナトリウム溶液を提供し、ここで、注射用に準備された製剤は(1)4.1より低いか、または9.0より高いpHを有さず、(2)赤血球凝集を防止するために十分なイオン強度を有し、(3)血液に関してほぼ等張(もしくは若干高張または低張)であるので、RBCに対して溶血反応または円鋸歯状形成は起こらない。しかしながら、溶液のpHは、溶液が赤血球凝集を防止するために十分なイオン強度を有するかどうかに関して考慮すべき事項でない。言い換えると、凍結乾燥製剤が水で復元される場合に4.1より低いか、または9.0より高いpHを有するならば、このことは、赤血球凝集反応を防止するために、復元に塩化ナトリウムを使用することを妨げない。
【0059】
オスモル濃度の計算
【0060】
任意の製剤の浸透圧は次式を用いることにより計算できる:浸透圧=(物質の重量(g)を物質の分子量で割ったもの(g/L))×種の数×1000(ミリオスモル濃度)。「種」なる用語は、溶解が起こる場合に形成されるイオンまたは化学種の数を意味する。
【0061】
注射用に準備または調製された医薬製剤
【0062】
本発明は、対象に注射するための製剤を調製するために、凍結乾燥された製剤を溶液に復元するための方法を提供する。復元された製剤は、十分なイオン強度および血液に関してほぼ等張である張性を有することにより、注射用に準備される。
【0063】
本発明の方法はまた、対象に注射される薬剤溶液を調製するために、薬剤溶液を希釈することにも関する。希釈された薬剤溶液は、十分なイオン強度を有し、血液に関してほぼ等張であることにより、注射用に準備される。
【0064】
一つの実施形態において、凍結乾燥または乾燥製剤/処方は、水中で復元されるならば、約100mOsm/Lから約360mOsm/Lのオスモル濃度を有する。本発明は約25mMから約150mMの塩化ナトリウム溶液を用いた復元法を提供するので、実施者は、塩化ナトリウム溶液に復元される凍結乾燥製剤の予想される合計オスモル濃度に基づいて特定の塩化ナトリウム溶液を使用すべきである。従って、例えば、凍結乾燥製剤が水中で復元される場合、約300mOsm/Lのオスモル濃度を有するならば、復元用のNaCl溶液は約25mMから約30mMであるべきである。もう一つ別の例において、凍結乾燥製剤が水中で復元される場合、約100mOsm/Lのオスモル濃度を有するならば、復元用のNaCl溶液は約25mMから約130mMであるべきである。
【0065】
一つの実施形態において、本発明の方法により注射用に調製される製剤(凍結乾燥されているか、または溶液であるか、いずれにせよ)はHES(ヒドロキシエチルデンプン)を含有しない。HES含有製剤は、イオン強度のためにNaCl溶液で復元または希釈されるにもかかわらず、インビトロ実験において赤血球沈降および凝集反応を引き起こし得る。もう一つ別の実施形態において、本発明の方法により注射用に調製される製剤はデキストランを含有せず、これは、適合修飾Westergren法(実施例2参照)が、NaClの添加は、デキストランが引き起こし得る向上された沈降の効果に対抗しないことを示すためである。
【0066】
一つの実施形態において、本発明は静脈注射用の製剤を調製する方法を提供し、ここで、製剤は第一増量剤を含む凍結乾燥されたケーキである。第一増量剤は、例えば、大部分は非イオン化である。非イオン化増量剤は、これに限定されないが、マンニトール、グリシン、シュークロース、ラクトース、他の二糖類、治療用タンパク質または製剤自体の活性成分、または当該分野において公知の増量剤を包含する。非イオン化増量剤の濃度は、溶液が凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有するかどうかに顕著な影響を及ぼさない。しかしながら、その濃度はオスモル濃度に影響を及ぼし、従って、その濃度は張性に影響を及ぼし得る。グリシンの濃度は、例えば、オスモル濃度に対するその寄与に等しく、従って、10mMグリシンは10mOsm/Lに等しい。
【0067】
活性成分を包含する製剤中のタンパク質成分は、溶液のイオン強度または溶液の浸透圧に著しい影響を及ぼさない。例えば、タンパク質について、50,000の分子量を前提とし、1〜2mL溶液中2.5mgのタンパク質が注射されると仮定する。これは、0.05mMに等しく、従って、タンパク質はオスモル濃度にはっきりとは寄与しない。
【0068】
製剤はしばしば界面活性剤、例えば、ポリソルベート−80も含有する。ポリソルベート−80および他の界面活性剤は高分子量分子であり、従って、製剤中に通常存在する量、例えば、0.001%〜0.01%は、オスモル濃度またはイオン強度に明らかに寄与するには小さすぎる。他の界面活性剤は、Brij(登録商標)35、Brij(登録商標)30、Lubrol−px(商標)、Triton X−10、Pluronic(登録商標)F127、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を包含する。
【0069】
医薬製剤中に少量で存在し得る他の高分子量分子であって、はっきりとは浸透圧またはイオン性に寄与しないものは、硫酸デキストランのような塩でない性質を備えたポリマーである。ポリマーの例は、デキストラン、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリビニルピロリドン(PVP)を包含する。
【0070】
医薬製剤はしばしばシュークロースまたは他の糖またはポリオールを、しばしば0−2、0−5、または0−10%またはそれ以上の量で含有する。例えば、製剤が増量剤を含まない場合、5−10%シュークロースを使用できる。一般に、製剤が凍結乾燥され、製剤の量が本明細書においてパーセンテージまたはオスモル濃度量で特定される場合、これは凍結乾燥前の溶液のパーセンテージまたはモル濃度量(即ち、フィル量)に関連する。従って、溶液が1%シュークロースを有する場合、これは29.2mMに等しい。シュークロースは明らかには溶液中でイオン化または解離しないので、29mMのシュークロースは29mOsm/Lに等しい。溶液中で明らかにイオン化または解離しない他の糖またはポリマールとしては、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール(増量剤としても使用できる)、グルコース、イノシトール、ラフィノース、マルトトリオース、ラクトース、およびトレハロースが挙げられる。
【0071】
医薬製剤はまた緩衝剤も含有し得る。緩衝剤としては、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、グリシン、ヒスチジン、リン酸塩(ナトリウムまたはカリウム)、ジエタノールアミンおよびisが挙げられる。緩衝剤は、溶液pHを許容できる範囲内に維持する薬剤を包含する。緩衝剤、例えば、グリシン、ヒスチジン、およびジエタノールアミンはほとんど非イオン化であり、従って、その濃度はオスモル濃度に等しく、すぐに注射できる製剤がほぼ等張であるかどうかを考慮する場合に留意すべきである。緩衝剤、例えば、酢酸塩およびクエン酸塩は通常、塩であり、従ってイオン化し、その濃度は、溶液のオスモル濃度に対するその寄与の計算に関して増大する。
【0072】
医薬製剤は本質的に、タンパク質、核酸、ウイルス、および化合物をはじめとする任意の活性成分を含み得る。これらの分子はほとんど注射される溶液のイオン強度または浸透圧に明らかには影響を及ぼさない。これらの分子が塩であるならば、小分子化合物は医薬塩であることが多いので、これらはイオン強度および/またはオスモル濃度に明らかに影響を及ぼし得る。
【0073】
あるアミノ酸もいくつかの製剤においては見出され、抗凍結剤、抗凍結乾燥剤および/または増量剤として使用される。いくつかのアミノ酸、例えば、ヒスチジンはたいてい非イオン化であり、従って、製剤中のアミン酸の濃度は、すぐに注射できる製剤が血液に関してほぼ等張であるように溶液の浸透圧を計算する場合に留意すべきである。
【0074】
BeneFIX(登録商標)
【0075】
BeneFIX(登録商標)は、広く特徴づけられ、感染体がないことが証明された、遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系により製造される。貯蔵された細胞バンクは、血液製剤または血漿製剤がない。CHO細胞系は、組み換え第IX因子(rFIX)を、動物またはヒト起源のタンパク質を含有しない規定の細胞培地中に分泌し、組み換え第IX因子は、モノクローナル抗体段階を必要とせず、高純度活性生成物を産するクロマトグラフィー精製プロセスにより精製される。みかけの分子量>70000を有する分子(例えば、大タンパク質およびウイルス粒子)を保持する能力を有する膜濾過段階が、さらなるウイルス安全性のために含められる。BeneFIX(登録商標)は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動評価によると、主に単一成分である。効力(国際単位、I.U.(IU))は、世界保健機構(WHO)の第IX因子濃縮物についての国際基準に対してインビトロ一段階凝固分析を用いて決定される。1国際単位は、1mLのプールされた正常ヒト血漿中に存在する第IX因子活性の量である。BeneFIX(登録商標)の比活性は、タンパク質1ミリグラムあたり180IU以上である。BeneFIX(登録商標)はヒト血液由来でなく、保存料または追加された動物またはヒト成分を含有しない。
【0076】
BeneFIX(登録商標)は無菌、非発熱性の凍結乾燥粉末製剤として処方される。BeneFIX(登録商標)は静脈内(IV)注射に提供することが意図される。これは、表示された量の第IX因子活性(国際単位(IU)で表示)を含有する使い捨てバイアル中で入手可能である。各バイアルは、例えば、通常、250、500、または1000IU(またはそれ以上、たとえば、2000IU)の凝固第IX因子(組み換え体)を含有する。凍結乾燥された製剤を滅菌水で復元した後、500および1000IU用量強度(dosage strength)中の賦形剤の濃度は、10mM L−ヒスチジン、1%シュークロース、260mMグリシン、0.005%ポリソルベート80である。250IU用量強度中での復元後の濃度は、他の2つの用量強度のものの半分である。500および1000IU用量強度は復元後に等張であり、250IU用量強度は、復元後の他の2用量強度の半分の張性を有する。すべての用量強度は、復元後に無色透明の溶液を生成する。
【0077】
一つの実施形態において、本発明は対象に注射されるBeneFIX(登録商標)を調製する方法を提供し、ここで、BeneFIX(登録商標)は塩化ナトリウム溶液中に復元され、塩化ナトリウム溶液は約約25mMより高く、約150mMより低い。一つの実施形態において、BeneFIX(登録商標)を復元するために使用される塩化ナトリウム溶液は約40mMである。一つの実施形態において、凍結乾燥BeneFIX(登録商標)の1バイアルは、約4−5mLの25mM−150mM塩化ナトリウム溶液中に復元される。
【0078】
改質されたBeneFix(登録商標)(BeneFix(登録商標)−R)
【0079】
水中で復元されたBeneFIX(登録商標)の低いイオン強度のために、様々な改質がなされた(改質BeneFIX(登録商標)(BeneFIX(登録商標)−R))。RBC凝集の可能性を軽減するためにBeneFIX(登録商標)製剤に十分なイオン強度を加えることが目的であった。BeneFIX(登録商標)のイオン強度を増大させるために、sWFIを復元溶液として置換することにより復元された生成物に塩化ナトリウムを組み入れることができる。別法として、BeneFIX(登録商標)はNaClを凍結乾燥前製剤に添加することにより改質することができ、水で復元を達成できるが、凍結乾燥塩溶液はさらに困難であり、凍結乾燥されたケーキをNaCl溶液で単に復元することがより実際的である。これはまた、凝集反応を防止するためにsWFIで復元される場合、十分なイオン強度を有さない凍結乾燥された他の製剤についても当てはまる。
【0080】
一つの実施形態において、BeneFIX(登録商標)−RはBeneFIX(登録商標)と同じ処方(10mM L−ヒスチジン、260mMグリシン、1%シュークロース、0.005%ポリソルベート80)において凍結乾燥でき、rFIX濃度のみが異なる。BeneFIX(登録商標)−Rバルク製剤を次に、例えば、4mL/バイアルで、10mM L−ヒスチジン、260mM グリシン、1% シュークロース、0.005% ポリソルベート80とともに充填し、凍結乾燥できる。BeneFIX(登録商標)−Rを5mL/バイアルに25−150mMのNaCl溶液、例えば、40mM NaClで復元して、賦形剤の濃度を、凍結乾燥前の最新のBeneFIX(登録商標)製剤と比較した場合、20%減少させる。この方法の結果、(1)等張であり、(2)RBC凝集反応の可能性を減少させるために十分なイオン強度を有し、(3)高用量のrFIXの注射容積を減少させる製剤が得られる。例えば、バイアル用量強度あたり250、500、1000、および2000IUのrFIXのBeneFIX(登録商標)−Rを提供できる。従って、5mLの25−150mM NaCl溶液で復元した後、得られるBeneFIX(登録商標)−R製剤溶液は、約7から約9mM ヒスチジン;約188から約220mMグリシン;約0.7%から約0.9%シュークロース;および約0.004%ポリソルベート80であり得る。バイアル中のrFIXの量、例えば、250、500、1000、または2000IUに応じて、5mLのNaCl溶液中での復元の結果、それぞれ約50、100、200、または400IU/mLのrFIX濃度が得られる。5mLの40mM NaCl溶液中で復元されたBeneFIX(登録商標)−R製剤のオスモル濃度は、約320mOsm/Lである。
【0081】
注射用に調製される製剤の例
【0082】
組み換え第IX因子は、米国特許第6,372,716号(全ての目的に関して、本発明の一部として参照される)において記載される製剤、例えば本明細書に記載されている製剤において凍結乾燥することもできる。この特許において記載される製剤は、本発明に関して使用でき、ここで、製剤はrFIXを活性成分として有することに限定されない。従って、例えば、注射用に調製するために25mM−150mM塩化ナトリウム溶液で復元できる凍結乾燥製剤は、グリシン、ポリソルベート、シュークロース、ヒスチジン、および活性成分を含む製剤を包含する。活性成分は、本質的に、例えばタンパク質、ウイルス、核酸、または化合物であり得る。グリシンは、例えば、約0.1Mから0.3Mの濃度を有し得る。ポリソルベートは、例えば、約0.001から約0.05%の濃度を有し得る。シュークロースは、例えば、約0.5%から約2%の濃度を有し得る。ヒスチジンは、例えば、約5mMから約30mMの濃度を有し得る。
【0083】
一つの実施形態において、25−150mM塩化ナトリウム溶液で復元される凍結乾燥製剤は、約0.1から0.3Mグリシン、約0.5から2%シュークロース、0.001から約0.05%ポリソルベート、約5から約30mMヒスチジン、および約0.1から約20mg/mLの活性成分を含む。活性成分は、例えば、rFIXである。もう一つ別の実施形態において、25−150mM塩化ナトリウム溶液で復元されるrFIX凍結乾燥剤は、約0.13から約3mg/mlのrFIXまたは約50から約600IU/mLのrFIX、約0.26Mグリシン、約10mMヒスチジン、約1%シュークロース、および約0.005%ポリソルベートを含む。
[実施例]
【0084】
以下に記載する実施例は、本発明の態様を説明するために提供され、本発明を制限する目的ではない。
【実施例1】
【0085】
抗凝固剤および製剤成分のBeneFIX(登録商標)関連性RBC凝集反応に対する影響
バタフライカテーテルラインおよびシリンジにおけるBeneFIX(登録商標)関連性RBC凝集反応が時折報告されている。血友病のイヌからの血液における最近の研究により、処方緩衝液中で組み換えヒトFIXの不在下で凝集反応が起こることが証明されている。従って、この研究は、標準的抗凝固剤、様々なBeneFIX(登録商標)成分、およびイオン強度がBeneFIX(登録商標)関連性凝集減少に影響を及ぼすかどうかを調べた。
【0086】
血液を匿名のヒトボランティアのプールから入手し、標準的抗凝固剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸ナトリウム、またはヘパリンを含有するVacutainer試験管(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)中に集めた。
【0087】
凝集反応を試験するために、Vacutainer試験管中の血液サンプルをまずnutator上で連続して混合した。血液(12.5μL)を48ウェル細胞培養プレート中87.5μLの試験溶液中で希釈し、室温で2分間インキュベートした後、逆位相差顕微鏡(倍率400x)下で観察した。各ウェルをビデオ録画して、下記の表1に記載される基準に従ってRBC凝集反応を採点するための静止画像を得た。
【表1】

【0088】
RBC凝集に対する標準的抗凝固剤の効果:第一の実験は、3人のドナーからの血液サンプルの分析を含んでいた。血液を各ドナーについてEDTA、ヘパリン、およびクエン酸ナトリウムVacutainer試験管中に集めた。試験品は、BeneFIX(登録商標)、100 IU/mLを含み、次のNaCl濃度で復元された:0mM(sWFI)、20mM、40mM、60mM、および77mM NaCl。加えて、デキストロース(水中5%)(D5W)を正の対照として含めた。サンプルを血液対BeneFIX(登録商標)または血液対D5W比1:8で希釈した。画像を取得し、デジタル保存し、マスクし、凝集反応に関して採点した。血液をsWFIで復元されたBeneFIX(登録商標)に添加した2分後、使用された抗凝固剤の種類に関係なく3人のドナー全てからのサンプルにおいて凝集反応が見られた。濃度が増加するNaClを使用したので、凝集応答は弱められた。血液がD5Wに添加された場合、著しい凝集が見られた。
【0089】
スクリーン前のドナーにおけるRBC凝集に対するNaClの効果:ドナーサンプルをヘパリン化Vacutainer試験管中に集めた。いくつかの先のサンプルにおいて自発的凝集反応が観察されたので、154mM NaClを用いて全てのドナーを最初にスクリーンした。凝集反応が観察されたならば、サンプルをさらなる分析からはずした。各ドナーからの残りのサンプルを1:8で次の2つの製剤のうちの1つに希釈した:(1)sWFIで復元された100IU/mL BeneFIX(登録商標)、および(2)154mM NaClで復元された100IU/mL BeneFIX(登録商標)。画像を取得し、デジタル保存し、マスクし、凝集について採点した。sWFIで復元されたBeneFIX(登録商標)に関して凝集反応が見られ、一方、154mM NaClでの復元は、凝集反応を軽減または排除した(得点については表2を参照)。
【表2】

【実施例2】
【0090】
製剤成分およびBeneFIX(登録商標)濃度の効果:BeneFIX(登録商標)のいくつかの製剤を、RBC凝集反応に対する異なる成分の影響を究明するために評価した。8の異なる混合物を(154mM NaClを含むか、または含まない)を、合計16混合物について調製した(表3)。12人のドナーを自発的凝集についてスクリーンし、2人をさらなる研究に不適格とした。10人の残りのドナーのうち5人からの血液サンプルを最初の8製剤(サンプル1−Aから1−H)について使用し、他の5人のドナーのサンプルを第二の8製剤(サンプル2−Iから2−P)について使用した。サンプルを前記のように1:8に希釈し、画像を取得し、すでに記載したように採点した。
【表3−1】



【表3−2】

【0091】
表3において提示された実験の凝集得点を下記の表4Aおよび4Bに示す。活性成分または賦形剤であるかどうかによらず、BeneFIX(登録商標)製剤の特定の成分は凝集反応と関係しない。予想されるように、グリシンの除去は、溶液の低張性のためにRBC溶解を引き起こした。しかしながら、154mM NaClでの復元は、インビトロ凝集および溶解を軽減または排除した。
【表4−1】


【表4−2】

【0092】
スクリーン前のドナーにおけるRBC凝集反応に対する低濃度NaClの効果:ドナーサンプルをヘパリン化Vacutainer試験管中に集めた。凝集がいくつかの先のサンプルにおいて観察されたので、全てのドナーをまず154mM NaClでスクリーンした。凝集反応が観察されたならば、サンプルをさらなる分析からはずした。各ドナーからの残りのサンプルを前記のように1:8に希釈して3つの製剤にした:(1)100IU/mL BeneFIX(登録商標)+sWFI;(2)100IU/mL BeneFIX(登録商標)+40mM NaCl;または(3)100IU/mL BeneFIX(登録商標)+77mM NaCl。前記のように、画像を取得し、集め、採点した。結果を下記の表5に示す。水で復元されたBeneFIX(登録商標)に関して、5つのサンプル全てにおいて凝集反応が見られたが、BeneFIX(登録商標)の40mMまたは77mM NaClでの復元は、凝集反応を軽減または排除した。
【表5】

【0093】
分析:BeneFIX(登録商標)と、血液対復元されたBeneFIX(登録商標)の体積比1:8で混合された場合に、ヘパリン、EDTA、またはクエン酸ナトリウムで抗凝固処理された血液中でRBC凝集反応が起こった。凝集反応に対して抗凝固剤の種類の影響は見られず;従って、ヘパリンは物質評価において抗凝固剤として使用された。いくつかのサンプルにおいて、凝集は、0.9%NaCl単独の存在下において起こった(凝集反応についての負の対照)。従って、その後の評価は、0.9%NaCl対照に関して凝集反応を示さないサンプルのみを用いて行った。
【0094】
BeneFIX(登録商標)の3つの濃度(100、300、または600IU/mL)およびBeneFIX(登録商標)の各成分(sWFIまたはNaCl溶液中で復元)を次に、ヘパリン抗凝固処理血液と、血液対BeneFIX(登録商標)体積比1:8で混合した場合にRBC凝集反応について評価した。組み換えヒトFIXタンパク質を包含する任意の特定の成分の排除は凝集反応に影響を及ぼさなかった。これは、広範囲の異なる医薬製剤を、静脈注射用にNaCl溶液を用いて準備(復元または希釈)できることを示す。グリシンの除去の結果、RBC溶解が起こった。しかしながら、復元についての、40mM(0.234%NaCl、注射可能)、77mM(0.45%NaCl、注射可能)または154mM NaCl(0.9%NaCl、注射可能)の使用は、凝集反応および溶解を軽減または排除した。
【0095】
従って、これらの結果は、BeneFIX(登録商標)製剤の特定の成分は観察される凝集反応に関係ないことを示す。BeneFIX(登録商標)製剤からのグリシンの除去および水での復元の結果、溶解を引き起こす低張溶液が得られるが、オスモル濃度および張性は、イオン強度および凝集と異なる懸案事項である。結果は、凝集反応がsWFI中で復元された組み換え第IX因子(rFIX)の低イオン強度と関連し、NaClでの復元は、凝集反応を弱めるか、または排除することを示す。従って、他の医薬製剤のNaCl溶液での復元、さらには154mMより低い濃度を有するNaCl溶液での復元は、静脈注射後の凝集および溶解をどちらも防止することができる。
【実施例3】
【0096】
医薬品または医薬製剤により誘発される赤血球凝集を評価するための赤血球沈降速度測定の修飾Westergren法の適用
現在市販されているBeneFIX(登録商標)製剤は非イオン性製剤である。sWFI中で復元されたBeneFIX(登録商標)製剤の投与の間、患者の血液が復元されたBeneFIX(登録商標)と例えば静脈内チュービング中で混合された場合に赤血球集合(即ち、凝集反応)はほとんど観察されない。本発明は、赤血球集合がrFIXではなく製剤と関連し、少なくとも約40mMのNaClを含有する希釈剤を用いることにより防止されることを見出した。少なくとも約40mMのNaClを含有するカスタム希釈剤の設計を補助するために、インビトロの赤血球集合を評価するための確立された方法である、赤血球沈降を測定するために使用できる定量化可能な分析を設計した。血液が生理食塩水中4:5で希釈される修飾Westergren法を、塩溶液または試験溶液(即ち、カスタム希釈剤)で1:4または1:8に希釈された血液中の凝集を評価するために適応させた。
【0097】
ヒト血液を健常成人ボランティアから入手し、EDTAを含有する試験管中に集めた。沈降実験のための血液サンプルの適合性を証明するために、臨床的に定義された赤血球沈降速度ESR60を修飾Westergren法により測定した。簡単に言うと、十分に混合された血液を154mM NaClで4:5に希釈し、次いでカスタム10試験管ラック中に入れた自己ゼロ点調節Westergren試験管上に直ちにロードした。60分後に試験管の最上部のゼロ点から血漿:赤血球界面までの距離(mm)を測定し、記録した。ESR60結果を確立された標準値と比較した(Morris、M.W. et al.、Basic examination of blood、in Henry、J.B.、ed.、Clinical Diagnosis and Management by Laboratory Methods、Philadelphia、PA、WB Saunders、2001:479−519)。
【0098】
医薬製剤と関連する赤血球集合を評価するために適応された修飾Westergren 法の適合性を示すために2つの実験を行った。ヒト血液サンプルは、すべて通常範囲内のESR60値を有するので3つの分析における使用に適していた。これらのサンプルを第一実験において1:4に希釈し、第二実験において1:8に希釈した。
【0099】
第一実験において、赤血球沈降は、5%デキストラン70もしくはsWFIまたは10mM NaClで復元されたBeneFIX(登録商標)により向上された。5分以内に、3%デキストラン70またはsWFI中で復元されたBeneFIX(登録商標)のいずれかで希釈された血液をロードされた試験管内で凝集物が見られた。60分までに、これらの試験管中の赤血球沈降は、塩溶液対照と比較した場合、著しく向上された(表6)。90分までに、10mM NaCl中で復元されたBeneFIX(登録商標)中で希釈された1人のドナーからの血液は、ゼロ点から8mmの位置にある透明な赤血球:血漿界面ならびにゼロ点から149mmに位置する密に充填された赤血球とあまり密に充填されていない赤血球の間の別の界面を有する二相沈降パターンを有していた。
【表6】


NaCl濃度はBeneFIX(登録商標)を復元するために使用されるものである。
【0100】
第二の実験において、赤血球沈降は、5%デキストロース、「MFR−927」(rFIXが欠損したBeneFIX(登録商標)の処方緩衝液)、および10mM NaClで復元されたBeneFIX(登録商標)により向上された(表7)。第一実験と異なり、これらの試験管中の沈降は急速で、15から30分までに最大またはほぼ最大沈降に達した。
【表7】

NaCl濃度はBeneFIX(登録商標)を復元するために使用されるものである;MFR−927はrFIXが欠損したBeneFIX(登録商標)の処方緩衝液である。
【0101】
これらの実験の結果は、赤血球沈降を測定するために使用される修飾Westergren法が製剤または処方により誘発される赤血球集合を評価するために適応させることができることを示す。例えば、試験溶液で1:4に希釈された血液をロードした60分後、Westergren試験管中の赤血球沈降の測定は、凝集を向上させる薬剤(即ち、5%デキストロース、3%デキストラン70、MFR−927、およびsWFI中で復元されたBeneFIX(登録商標))を向上させないもの(即ち、塩溶液および約25mMまたはそれ以上のNaClを含有する希釈剤中で復元されたBeneFIX(登録商標))から区別するために十分である。
【実施例4】
【0102】
希釈液中40mM NaClの製剤に関連する赤血球凝集を改善するための改質されたBeneFIX(登録商標)の適性
現在市販されているBeneFIX(登録商標)の非イオン性製剤は、患者血液が静脈内チュービング中でBeneFIX(登録商標)と混合された場合に、投与の間に起こり得るインビトロ赤血球凝集と関連する。本発明は、赤血球集合が組み換え第IX因子でなく、製剤と関連し、凝集はBeneFIX(登録商標)を、少なくとも40mM NaClを含有する希釈剤で復元することにより防止できることを見出した。
【0103】
この実施例の目標は、改質されたBeneFIX(登録商標)(BeneFIX(登録商標)−R)製剤を復元するための40mM希釈剤のロバスト性(robustness)を試験することである。特に、実験は、40mMから10%も逸脱したNaCl濃度が、赤血球沈降速度(ESR)を測定するための適応させた修飾Westergren法により評価される、製剤に関連する赤血球集合を防止するために十分であるかどうかを決定するために設計された。加えて、NaCl濃度の背血球沈降に対するロバスト性は、BeneFIX(登録商標)−Rの高用量(即ち、2000IU)および低用量(即ち、250IU)バイアルの両方において評価された。
【0104】
BeneFIX(登録商標)−R製剤、MFR−927、および3%デキストラン70の赤血球沈降に対する効果を、実施例2において記載される修飾Westergren法の適応を用いて室温で測定した。研究デザインの概略を表8に記載する。
【表8】

【0105】
実験当日に、高用量(〜2000IUのrFIXを含有する凍結乾燥されたBeneFIX(登録商標)−Rのバイアル)および低容量バイアルのBeneFIX(登録商標)−R(〜250IUのrFIXを含有する凍結乾燥されたBeneFIX(登録商標)−Rのバイアル)の両方を、使用直前に5mLの36mM、40mM、または44mM NaClで復元した。正の対照溶液3%(w/v)デキストラン70を無菌Dulbecco修飾無カルシウムおよび無マグネシウムリン酸塩緩衝溶液(PBS−CMF;pH7.4)中で調製した。ヒト血液をドナーから入手し、EDTAを含有するVacutainer試験管中に集めた。血液サンプルを集めた3時間以内に赤血球沈降実験のために使用した。
【0106】
全血を試験溶液中で1:4に希釈(即ち、400μLの全血を1.2mLの試験溶液に添加)し、よく混合し、次に、専用カスタムラック中の確実に垂直に保持された自己ゼロ調節使い捨てガラスWestergren試験管中にロードした。60分後の赤血球沈降(試験管の最上部の0点から血漿−赤血球界面までの距離(mm))を測定し、記録した。
【0107】
全12人のドナーからの結果は類似していた。現在市販されているBeneFIX(登録商標)処方緩衝液であって、rFIX(MFR−927)および3%デキストラン70が欠損したもの(標準的な正の対照溶液)は、NaCl試験溶液と混合された血液と比較して向上した赤血球沈降を示した(図1参照)。緩衝液中のNaCl濃度(36mM、40mM、または44mM)または生成物中のrFIX濃度と関係なく、BeneFIX(登録商標)−Rは、NaCl希釈剤で復元される限り、赤血球沈降を向上させなかった。
【0108】
この研究からの結果は、BeneFIX(登録商標)−R希釈剤中40mMより10%高いか、または低いNaCl濃度は、赤血球沈降または集合(凝集反応)を防止するために十分であることを示す。結果はさらに、製剤に関連する赤血球集合の改善効果は、活性成分(即ち、rFIX)の濃度により影響を受けなかったことを示す。
【実施例5】
【0109】
RBC凝集反応を引き起こす際にBeneFIX(登録商標)を復元するための緩衝液中のイオン強度の役割
ヒト血液を4人の異なるドナーから静脈穿刺により、標準的ヘパリン化集合管中に集めた。2.6mLの緩衝液または復元されたBeneFIX(登録商標)タンパク質をシリンジ中に抜き取り、続いて0.6mLのヘパリン添加血液を抜き取ることによりRBC凝集物の形成を試験した。凝集物の混合/沈降挙動がこれらのシリンジにおいて長時間にわたって観察され、デジタルカメラを用いて写真に記録した。
【0110】
凍結乾燥前の最新のBeneFIX(登録商標)製剤の組成は、rFIX、約10mM ヒスチジン、約260mMグリシン、約1%シュークロース、および約0.005% ポリソルベート−80、pH6.8である。BeneFIX(登録商標)製剤は凍結乾燥され、注射前に、sWFI中で復元される。当初、シュークロースが凝集反応の原因であると考えられた。従って、試験緩衝液は1%、0.5%、または0%シュークロースを用いて処方された。各シュークロース試験緩衝液をシリンジ中に抜き取り、続いて少量のヘパリン添加血液を抜き取った。RBCの凝集反応およびその後の急速な沈降は、3つの緩衝液について同じであることが見出され、このことは、BeneFIX(登録商標)製剤のシュークロース含量が観察される凝集反応の原因ではなかったことを示唆する。滅菌水中ではなく、生理食塩水中で復元されたBeneFIX(登録商標)は、凝集反応を引き起こさなかった。これらのデータは、BeneFIX(登録商標)製剤のイオン強度は、BeneFIX(登録商標)が水中で復元された場合に凝集を防止するために十分でないことを示す。
【0111】
凝集反応を排除するために必要な最小イオン強度を決定するために、BeneFIX(登録商標)を様々なNaCl濃度(0、10、15、20、25、30、35、40、50、75、100、および137mM)を有する溶液で復元した(あるいはBeneFIX(登録商標)の凍結乾燥前製剤を、塩化ナトリウムを含むように変更することができるが、塩化ナトリウム製剤を凍結乾燥する方法は、塩化ナトリウムを有さない製剤の凍結乾燥と比較して、より困難である)。BeneFIX(登録商標)はまた、154mM NaClを含有する生理食塩水中でも復元した。RBC凝集反応および沈降挙動を3つの溶液全てにおいて調べた。表9は、これらの溶液のいくつかのオスモル濃度およびイオン強度(伝導率で表す)を他の一般的な静脈内溶液とともに示す。塩化ナトリウムをBeneFIX(登録商標)製剤に添加すると、凍結乾燥前の直接添加によるか、または凍結乾燥物を塩化ナトリウムの溶液で復元するかに関わらず、NaClは、当濃度のNaおよびClイオンに完全に解離することが予想される。このように、処方緩衝液+NaClのイオン強度(NaおよびClのmEq/L(ミリ等量/L)で表す)は、処方緩衝液が他のイオンを含有しないならば、NaCl濃度と等しいと予想される。
【表9】

【0112】
血液がシリンジ中の表9における溶液と接触すると、RBC凝集反応が個々に観察され、その後、シリンジを穏やかに混合し、反転させて、血液沈降を観察した。凝集塊形成は少なくとも40mM NaClで復元されたBeneFIX(登録商標)の全ての製剤において観察されなかった(先の実施例において、約36mM NaClは凝集を防止するために十分であったことに注意)。少なくとも40mM NaClを含有するこれらの溶液中の血球の挙動は、生理食塩水におけるものと区別できなかった。
【0113】
血液沈降は、反転後に濃度が減少するNaCl(40mMから出発)中で15分間希釈(凍結乾燥前ならば)/復元(凍結乾燥されているならば)されたBeneFIX(登録商標)製剤を含有する一連のシリンジ中で試験した。凝集形成およびその後の沈降の速度に関する一貫した濃度依存性応答(緩衝液中のNaCl濃度が減少するにつれて凝集が増大し、沈降が速くなる)が存在していた。≦25mM NaClを含有する緩衝液中の血液サンプルおよび≦30mM NaClを含有する緩衝液中の別の血液サンプルに関して、明らかな凝集反応が見られた。≧40mM NaClを有する全ての緩衝液調製物において、血球の挙動は、生理食塩水または生理食塩水中で復元されたBeneFIX(登録商標)におけるものと区別できなかった。40mM NaClで復元されたBeneFIX(登録商標)は4mS/cmの伝導率計算値に相当する。
【0114】
5%デキストロース注射溶液(1mLにつき、注射用水中50mg含水デキストロースUSPを含有する)は、オスモル濃度の計算値が250mOsm/Lであり、イオン強度の計算値が0mS/cmである。この溶液は、通常、静脈内投与されるが、これも、水中で復元されたBeneFIX(登録商標)製剤に関して観察されるのと同様に、RBC凝集反応および非常に迅速な血液沈降を引き起こした。
【0115】
従って、これらの結果は、水中で復元されたBeneFIX(登録商標)により引き起こされるRBC凝集反応は、BeneFIX(登録商標)製剤の低いイオン強度(0mEq/L イオン強度計算値、<0.2mS/cm伝導率測定値)によるものであることを示す。この問題は、≧40mM NaClを有するNaCl溶液中で復元することにより修正でき、注射用の復元された溶液は、イオン強度計算値が約40mEq/L(凝集を防止するために十分なイオン強度は、約4mS/cm以上の伝導率としても計算できる)またはそれ以上になる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】実施例3において記載される実験から得られる赤血球沈降結果を示す図である。赤血球沈降は、変更されたウェスタン法(実施例2参照)を適用して60分で測定し、ここで、EDTA中に集められたヒト血液を1:4で試験溶液と混合した。60分後、0点と赤血球:血漿界面間の距離(mm)を測定した。水平線は平均を表し、垂直線は合計12人のドナーからの標準偏差を包含する。そのそれぞれが3人のドナーからの血液を評価する4の独立した実験からの結果を合わせた。
【0117】
【図2】NaCl溶液で復元されたBeneFIX(登録商標)製剤に関する赤血球沈降評価を示す図である。40mM NaCl溶液は、現在市販されているBeneFIX(登録商標)製品またはBeneFIX(登録商標)の新規製剤(凍結乾燥前のフィル溶液が4mLであり、10mMヒスチジン、260mMグリシン、1%シュークロース、0.005%ポリソルベート80の濃度を有し;凍結乾燥後に、BeneFIX(登録商標)−Rが、40mM NaCl、8mM ヒスチジン、208mMグリシン、0.8%シュークロース、および0.004%ポリソルベートを含むように、5mLの40mM塩化ナトリウム中で復元される)のいずれかを復元するために使用される場合、赤血球凝集反応を防止するために十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈注射用医薬製剤を調製する方法であって、約25mMから約150mMの塩化ナトリウム溶液を医薬製剤に添加し、それにより静脈注射用に調製された製剤を得ることを含み、ここで調製された製剤が血漿に関してほぼ等張であるか、または血漿に関して若干低張または若干高張であり、その調製された製剤が赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
調製された製剤が血漿に関してほぼ等張であり、約270mOsm/Lから約330mOsm/Lのオスモル濃度を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
調製された製剤が血漿に関して若干低張であり、約220mOsm/Lから約270mOsm/Lのオスモル濃度を有する請求項1記載の方法。
【請求項4】
調製された製剤が血漿に関して若干高張であり、約330mOsm/Lから約600mOsm/Lのオスモル濃度を有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
調製された製剤が少なくとも約25mEq/LのNaおよびClイオンのイオン強度を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
調製された製剤が少なくとも約30mEq/LのNaおよびClイオンのイオン強度を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
調製された製剤が少なくとも約36mEq/LのNaおよびClイオンのイオン強度を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
調製された製剤が少なくとも約40mEq/LのNaおよびClイオンであるイオン強度を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
調製された製剤が少なくとも約40mEq/LのNaおよびClイオンであり、約150mEq/L未満のNaおよびClイオンであるイオン強度を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
調製された製剤が、伝導率で測定すると少なくとも2.5mS/cmであるイオン強度を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
調製された製剤が、伝導率で測定すると少なくとも4.0mS/cmであるイオン強度を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
注射用に調製される医薬製剤が凍結乾燥製剤である請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
注射用に調製される医薬製剤が溶液である請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
塩化ナトリウム溶液が約40mMから約150mMである請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
塩化ナトリウム溶液が約36mMから約44mMである請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
塩化ナトリウム溶液が約40mMである請求項1〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
塩化ナトリウム溶液の添加前に、医薬製剤が相当量のイオン化塩を含有しない請求項1〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
凍結乾燥製剤が、水中で復元されるならば、5mMより多いイオン化塩を含有しない請求項10記載の方法。
【請求項19】
凍結乾燥製剤が、水中で復元されるならば、25mMより多いイオン化塩を含有しない請求項10記載の方法。
【請求項20】
塩化ナトリウム溶液添加前に、医薬製剤がヒスチジン、グリシン、シュークロース、およびポリソルベートを含む請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
塩化ナトリウム溶液の添加前に、医薬製剤がヒスチジン、グリシン、シュークロース、ポリソルベート、および治療用タンパク質を含む請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
塩化ナトリウム溶液の添加前に、医薬製剤がヒスチジン、グリシン、シュークロース、ポリソルベート、および第IX因子を含む請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
塩化ナトリウム溶液の添加前に、医薬製剤が、水中で復元されるならば:
(a)約5mMから約30mMのヒスチジン;
(b)約0.1Mから約0.3Mのグリシン;
(c)約0.5から約2パーセントのシュークロース;および
(d)約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート
を含む請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
塩化ナトリウム溶液の添加前に、医薬製剤が、水中で復元されるならば:
(e)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子をさらに含む請求項23記載の方法。
【請求項25】
静脈注射用凍結乾燥第IX因子製剤を調製する方法であって、約25mMから約150mMの塩化ナトリウム溶液を凍結乾燥された第IX因子製剤に添加し、これにより静脈注射用に調製された製剤を得ることを含み、ここで調製された製剤が、血漿に関してほぼ等張であるか、または血漿に関して若干低張または若干高張であり、調製された製剤が赤血球凝集反応を防止するために十分なイオン強度を有する、方法。
【請求項26】
凍結乾燥第IX因子製剤が、水中で復元されるならば:
(a)約5mMから約30mMのヒスチジン;
(b)約0.1Mから約0.3Mのグリシン;
(c)約0.5から約2パーセントのシュークロース;および
(d)約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート
を含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
約40mM塩化ナトリウム溶液が凍結乾燥された第IX因子製剤に添加される請求項26記載の方法。
【請求項28】
約5mLの約40mM塩化ナトリウム溶液が凍結乾燥された第IX因子製剤に添加される請求項27記載の方法。
【請求項29】
第IX因子製剤の凍結乾燥前体積が約4mLである請求項28記載の方法。
【請求項30】
凍結乾燥された第IX因子製剤が、水中で復元されるならば、約10mMヒスチジン、0.26Mグリシン、1%シュークロース、0.005%ポリソルベート、および第IX因子を含む請求項26記載の方法。
【請求項31】
(a)凍結乾燥ケーキが5mLの水中で復元されるならば、溶液が:
(i)約5mMから約30mMのヒスチジン;
(ii) 約0.1Mから約0.3Mのグリシン;
(iii)約0.5から約2パーセントのシュークロース;
(iv) 約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート;および
(v)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子
を含むような、凍結乾燥ケーキを含有するバイアル;
(b)25mMから約150mMの塩化ナトリウム溶液;および
(c)復元後、得られた溶液が、ほぼ等張であり、静脈注射に際して赤血球凝集を防止するために十分なイオン強度を有するように、凍結乾燥ケーキを塩化ナトリウム溶液で復元するための使用説明書を含む医薬キット。
【請求項32】
(a)凍結乾燥ケーキが4mLの水中で復元されるならば、溶液が:
(i)約10mMのヒスチジン;
(ii)約0.26Mのグリシン;
(iii)約1パーセントのシュークロース;
(iv) 約0.005パーセントのポリソルベート80;および
(v)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子
を含むような、凍結乾燥ケーキを含有するバイアル;
(b)40mMの塩化ナトリウム溶液;および
(c)復元後に、得られる溶液が:
(i)約7から約9mMのヒスチジン;
(ii) 約200から約210mMのグリシン;
(iii)約0.7%から約0.9%のシュークロース;
(iv) 約0.004%のポリソルベート80;
(v)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子;
(vi)約40mMのNaCl
を含むように、バイアル中の凍結乾燥ケーキを約5mL塩化ナトリウム溶液で復元するための使用説明書を含む医薬キット。
【請求項33】
凍結乾燥ケーキが5mLの水中で復元されるならば、溶液が:
(i)約5mMから約30mMのヒスチジン;
(ii) 約0.1Mから約0.3Mのグリシン;
(iii)約0.5から約2パーセントのシュークロース;
(iv) 約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート;および
(v)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子
を含む、凍結乾燥ケーキ。
【請求項34】
凍結乾燥ケーキが4mLの水中で復元されるならば、溶液が:
(i)約10mMのヒスチジン;
(ii) 約0.26Mのグリシン;
(iii)約1パーセントのシュークロース;
(iv) 約0.005パーセントのポリソルベート80;および
(v)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子
を含む、凍結乾燥ケーキ。
【請求項35】
凍結乾燥ケーキが5mLの水中で復元されるならば、溶液が:
(i)約5mMから約30mMのヒスチジン;
(ii) 約0.1Mから約0.3Mのグリシン;
(iii)約0.5から約2パーセントのシュークロース;
(iv) 約0.001から約0.05パーセントのポリソルベート;および
(v)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子
を含む、凍結乾燥ケーキを含有するバイアル。
【請求項36】
凍結乾燥ケーキが4mLの水中で復元されるならば、溶液が:
(i)約10mMのヒスチジン;
(ii) 約0.26Mのグリシン;
(iii)約1パーセントのシュークロース;
(iv) 約0.005パーセントのポリソルベート80;および
(v)約50IU/mLから約2000IU/mLの第IX因子
を含む、凍結乾燥ケーキを含有するバイアル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−513705(P2009−513705A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538945(P2008−538945)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/042258
【国際公開番号】WO2007/053533
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】