説明

薬剤投与具

【課題】注射器と薬剤容器を弾性栓体を備えたアダプタを介して接続し、混合操作が容易であり、また溶解液単独での誤投与を防止することのできる薬剤投与具を提供する。
【解決手段】注射器2と薬剤容器4とアダプタ3とを備え、アダプタ3は、注射器2のノズル部11のノズル装着部31と、弾性栓体収容部32と、薬剤容器接続部33と、中空穿刺針部34とを備え、アダプタ3にノズル部11を封止し、ノズル部の押し込みにより連通機構が開かれる封止部を有する弾性栓体5を備え、アダプタ3の中空穿刺針部34を薬剤容器の4のシール部42に刺通させ、ノズル部11の押し込みにより弾性栓体5の封止部が連通状態となり注射器のノズル部と薬剤容器とが連通される薬剤投与具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用液体を収納した注射器と粉体の薬剤を収納された薬剤容器をアダプタにより接続し、粉体の薬剤と医療用液体を混合する薬剤投与具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液凝固因子製剤、ホルモン製剤、インターフェロン製剤等の、化学的に不安定で、溶液の状態にしておくと、急激にその効力を失う薬剤は、穿刺可能なゴム栓等の栓体を備えたバイアル等の容器に粉末、顆粒、凍結乾燥製剤として収納した形で与えられ、使用時に、注射用水、生理食塩液、ブドウ糖注射液等の溶解液と混合して溶解し、液状薬剤を調製することが行われている。
このような用時溶解を行うために、従来、針付きの注射器や両端に中空の穿刺針を有する両頭針という器具等が使用されている。すなわち、針付き注射器を使用する場合には、先ず、一定量の溶解液を注射器に採取し、その針をバイアルの口部ゴム栓に刺入してバイアル内に溶解液を注入する。そして、刺入した状態を維持して、バイアルを震盪して薬剤を溶解し、次いで薬液の一定量を注射器に採取して直接投与し、あるいはこれをブドウ糖注射液や生食などの入った輸液バッグに移して、輸液セットなどを用いて間接投与している。また、両頭針を使用する場合には、両頭針の両端の穿刺針をそれぞれ薬剤の入ったバイアルのゴム栓および溶解液容器又は注射器のゴム栓に刺入して両者を連通させ、溶解液をバイアル内に移送して薬剤を溶解し、バイアルから溶解液容器又は注射器に溶解された薬剤を戻した後、輸液セット又は注射針を使用して直接投与し、あるいは採取した薬液をブドウ糖注射液や生食などの入った輸液バッグに移して、輸液セットなどを用いて間接投与している。しかしながら、このような注射器などを用いた混合操作(投与準備作業)は、煩雑で手間がかかる。
また、投与準備作業は、医療従事者だけでなく自己注射を必要とする患者自身によって行われる場合がある。特に患者による投与準備は、汚染が危惧される環境や不安定な場所で行われる可能性が少なくない。また、予め医療用液体を収納した注射器すなわちプレフィルドシリンジも使用されているが、粉末製剤の溶解作業を失念し、プレフィルドシリンジ内の溶解液のみの投与、液漏れや接続部の外れなどを引き起こすおそれがある。
【0003】
特許第3475414号公報(特許文献1)の混注用アダプター1は、特許文献1の図1に示されるように、円板状のハブ11の同軸上反対側にそれぞれ中空の穿刺針12と管状のチップ装着部13が設けられており、ハブ11の外縁にはそれぞれ、穿刺針12の先端を超えてこれと同心状に延びる筒状のバイアル装着部14と、チップ装着部13の先端を超えてこれと同心状に延びる筒状のシリンジ装着部15が設けられている。また、穿刺針12が、チップ装着部13と連通しかつ刃先121に開口する薬液通路122と、ハブ11に隣接してバイアル装着部14に設けられた除菌フィルター17付き通気口16に開口しかつ穿刺針12の刃先121に開口する気体通路123を有するものとされている。
そして、チップ装着部13に溶解液を充填したシリンジを取り付け、その穿刺針12をバイアルのゴム栓に刺通してシリンジとバイアルを連通させるだけで、シリンジ内の溶解液とバイアル内の粉末製剤とを容易に震盪混合することができる。
【0004】
特許第3303289号公報(特許文献2)の2成分混合用溶解充填注射器は、特許文献2の図1、図3及び図7に示されるように、両頭針3とアダプタ2の間には連通順序制御手段が備えられており、連通順序制御手段は、ハブ33の周縁の軸方向に設けられた複数の可撓性係合枝34と、アダプタ2の内壁にバイアル装着部21に近接して設けられた、係合枝34をスライド可能に支持する複数の縦溝25と、縦溝25の所定位置に形成された係合解除部26からなり、注射器外筒1をバイアル装着部21方向に移動させた時に、両頭針3が注射器外筒1とともにアダプタ2の内壁を移動して、バイアルのゴム栓が上部穿刺針31によって刺通された後に初めて係合枝34が係合解除部26に到達して、アダプタ2の縦溝25と両頭針3の係合枝34の係合が解除されるように構成され、ゴム栓からの溶出が少なく、液漏れのおそれがないとするものである。
【0005】
特開2004−81819号公報(特許文献3)の連通手段付き薬液容器は、先端に注射針接続部11を有する薬液容器10と、薬液容器10の先端に設けられた中空の連通手段20を含み、連通手段20は、バイアルの口部をスライド自在に挿着可能な有底筒状のガイド部21と、ガイド部の底面中央部に底面22を貫通して設けられた中空の穿刺針部23を含み、穿刺針部材23は、底面より先端側の穿刺針23aと底面より基端側の接続部23bを有し、接続部23bが注射針接続部11に接続されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3475414号公報
【特許文献2】特許第3303289号公報
【特許文献3】特開2004−81819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている混注用アダプタでは、薬剤の混合操作の前後において、混注用アダプタの外観上の差異がないため、注射器に収納されている溶解液を薬剤と混合する前に誤投与してしまう恐れがあった。同様に、特許文献2に記載されている2成分混合用溶解液充填注射器でも、あらかじめ注射器内に充填された溶解液を薬剤と混合する前にアダプタ部材を外してしまうと、溶解液を薬剤と混合する前に誤投与してしまう恐れがあった。
また、特許文献3では、連通手段には内部に薬液容器の薬液を封止する封止手段がなく、連通手段の穿刺針が別体のゴムや熱可塑性エラストマーで形成されたキャップで液密又は気密に密封される。薬液容器と連通手段とを接続し、穿刺針に被せたキャップを外し、シリンジを移動させ連通手段のガイド部に沿ってバイアルの口部をスライドさせ、穿刺針でバイアルのゴム栓体を刺通するもので、キャップを外し、バイアルに刺し通す作業が必要で不便であり、その穿刺針で操作者が怪我をする恐れがある。また、キャップを外してバイアルのゴム栓体に刺し通すときに液漏れを生じる恐れがあり使い勝手が悪い。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決しようとするものであり、混合操作が容易であり、また溶解液単独での誤投与を防止することのできる薬剤投与具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 先端に開口したノズル部を有する外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、該ガスケットに取付けられもしくは接続可能に形成されるプランジャと、前記外筒内に収納された医療用液体とからなる医療用液体収納済注射器と、開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部を封止するシール部と、内部に収納された薬剤とからなる薬剤容器と、前記注射器の前記ノズル部に離脱可能に装着され、かつ前記ノズル部を封止し、さらに、前記薬剤容器と接続可能なアダプタとを備えた薬剤投与具であって、
前記アダプタは、前記注射器のノズル部を押し込み可能かつ着脱可能に装着するノズル装着部と、前記ノズル部を封止するとともに、軸方向に伸縮可能である弾性栓体と、該弾性栓体を収納する弾性栓体収容部と、前記薬剤容器のシール部側に接続するための薬剤容器接続部と、該薬剤容器接続部内に設けられ、前記弾性栓体内と連通し、かつ前記薬剤容器のシール部を刺通可能な中空穿刺針部とを備え、さらに、前記アダプタは、前記ノズル部の押し込みによる前記弾性栓体の圧縮時に前記ノズル部内と前記中空穿刺針部内とを連通させる連通機構を備えており、
前記薬剤投与具は、前記注射器のノズル部に装着された前記アダプタの薬剤容器接続部を薬剤容器のシール部側に接続することにより、前記アダプタの前記中空穿刺針部が前記薬剤容器の前記シール部を刺通可能であり、次いで、前記中空穿刺針部が前記薬剤容器の前記シール部を刺通した状態にて、刺通操作とは非連続的なものとする操作を介して前記注射器を前記アダプタ内に押し込むことにより、前記ノズル部内と前記薬剤容器内部とが、前記アダプタの連通機構および前記中空穿刺針部により連通状態となるものである薬剤投与具。
【0010】
(2) 前記弾性栓体は、一端側に前記ノズル部を封止する封止部を有する伸縮可能な筒状体であり、前記連通機構は、前記封止部に設けられ、通常時閉塞し、かつ前記注射器の前記ノズル部により押圧されることにより開く開閉口により構成されている上記(1)に記載の薬剤投与具。
(3) 前記弾性栓体は、一端側に前記ノズル部を封止する封止部を有する伸縮可能な筒状体であり、前記連通機構は、前記アダプタに設けられ、前記中空穿刺針部と連通し、前記注射器の前記ノズル部による前記弾性栓体の押圧時に、前記封止部を刺通可能な弾性栓体刺通用中空穿刺針部により構成されている上記(1)に記載の薬剤投与具。
(4) 前記アダプタの前記薬剤容器接続部は、接続された前記薬剤容器の離脱を抑制する係合部を有している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の薬剤投与具。
(5) 前記注射器は、ガイド用突起を有し、前記アダプタは、前記ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、該ガイド溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の薬剤投与具。
(6) 前記注射器は、前記ノズル部の外面に設けられたガイド用突起を有し、前記アダプタは、前記ノズル装着部の内壁に設けられた前記ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、該ガイド溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の薬剤投与具。
(7) 前記注射器は、前記ノズル部を被包するように設けられたカラー部と、該カラー部の内面に設けられたガイド用突起を有し、前記アダプタは、前記ノズル装着部の外面に設けられた前記ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、前記ガイド溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備えている上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の薬剤投与具。
(8) 前記アダプタの前記ガイド溝は、一端から前記ノズル部のガイド用突起を挿入して装着するための軸方向の挿入溝と、前記ガイド用突起を係合するための係合溝と、前記ガイド用突起を軸方向に摺動するための摺動溝と、突起を抜くための抜出溝とを備え、かつ前記係合溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする前記逆止爪を備え、前記摺動溝は、前記ノズル部が前記弾性栓体を圧縮する状態を保持するための保持用逆止爪を備えている上記(5)ないし(7)のいずれかに記載の薬剤投与具。
【発明の効果】
【0011】
本発明の薬剤投与具は、ノズル部を有する外筒と、外筒に収納された医療用液体とからなる医療用液体収納済注射器と、開口部がシール部で封止された薬剤容器と、外筒のノズル部に接続可能であり、かつ薬剤容器の開口部に接続可能なアダプタとを有する薬剤投与具である。アダプタは、注射器のノズル部を押し込み可能かつ着脱可能に装着するノズル装着部と、ノズル部を封止するとともに、軸方向に伸縮可能である弾性栓体と、弾性栓体を収納する弾性栓体収容部と、薬剤容器のシール部側に接続するための薬剤容器接続部と、薬剤容器接続部内に設けられ、弾性栓体内と連通し、かつ薬剤容器のシール部を刺通可能な中空穿刺針部とを備え、注射器のノズル部に装着されたアダプタの薬剤容器接続部を薬剤容器のシール部側に接続することにより、アダプタの中空穿刺針部が薬剤容器のシール部を刺通して開口し、注射器をアダプタ内に押し込むことにより、ノズル部内と薬剤容器内部とが、アダプタの連通機構および中空穿刺針部により連通状態となる。この薬剤投与具では、注射器に薬剤容器と接続されるアダプタが装着されているため、注射器をアダプタより離脱させる前に、薬剤容器内の薬剤との混合が必要であることを操作者が確実に認識するため、医療用液体を薬剤容器の薬剤と混合することなく投与することを防止することができる。
【0012】
また、本発明の薬剤投与具では、弾性栓体は、注射器のノズル部を封止する封止部を有する伸縮可能な筒状体であり、連通機構は、封止部に設けられ、通常時閉塞し、かつ注射器のノズル部により押圧されることにより開く開閉口により構成されているものであれば、注射器をアダプタ内に押し込み筒状体を圧縮することにより開閉口が開かれ、中空穿刺針部内と注射器の外筒内部とを連通状態とすることができる。
【0013】
また、本発明の薬剤投与具では、弾性栓体は、注射器のノズル部を封止する封止部を有する伸縮可能な筒状体であり、連通機構は、アダプタに設けられ、中空穿刺針部と連通し、注射器のノズル部による弾性栓体の押圧時に、封止部を刺通可能な弾性栓体刺通用中空穿刺針部により構成されているものであれば、注射器をアダプタ内に押し込み筒状体を圧縮することにより弾性栓体刺通用中空穿刺針部により封止部を刺通されて、中空穿刺針部内と注射器の外筒内部とを連通状態とすることができる。
【0014】
アダプタの薬剤容器接続部は、接続された薬剤容器の脱離を抑制する係合部を有しているものであれば、薬剤容器から脱離不能に固定できる。したがって、注射器に収納されている医療用液体を薬剤容器の薬剤と混合する前に使用することは不可能となる。
【0015】
注射器は、ノズル部に設けられたガイド用突起を有し、アダプタは、ノズル装着部の内壁に設けられたガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、ガイド溝には、ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備え、ガイド用突起を逆止爪に係止し、弾性栓体の封止部と薬剤容器のシール部を連通状態とした後のアダプタから注射器を取外し可能としたものであれば、注射器のガイド用突起をアダプタにガイド溝に沿って移動し、ガイド用突起がガイド溝の逆止爪によりノズル部を封止部に封止する状態に係止し、またノズル部で弾性栓体を押し込み中空穿刺針部で薬剤容器のシール部を刺通した状態で係止できるので、注射器とアダプタを封止状態で保持でき、またアダプタと薬剤容器を接続状態で保持でき、操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の薬剤投与具を示す外観図である。
【図2】図2は、本発明の薬剤投与具における注射器接続済みアダプタに薬剤容器を装着した状態の部分拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の薬剤投与具のアダプタの中空穿刺針部が薬剤容器のシール部に刺通し、押し込まれた注射器により弾性栓体の開閉口が開いた状態を示す一部破断正面図である。
【図4】図4は、本発明の薬剤投与具のアダプタの中空穿刺針部が薬剤容器のシール部に刺通し、押し込まれた注射器により弾性栓体の開閉口が開いた状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の薬剤投与具に用いられる注射器、アダプタ、薬剤容器を示す正面図である。
【図6】図6は、注射器の要部断面と底面およびアダプタの断面を示す図である。
【図7】図7は、図2にて示したアダプタの拡大断面図である。
【図8】図8は、図2にて示したアダプタの拡大平面図である。
【図9】図9は、注射器のノズル部をアダプタに装着した状態を説明するための説明図である。
【図10】図10は、本発明の薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例の薬剤投与具におけるアダプタと薬剤容器を装着した状態の要部拡大断面図である。
【図12】図12は、図11に示した薬剤投与具のアダプタの拡大断面図である。
【図13】図13は、図11に示した実施例の薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図14】図14は、図11に示した実施例の薬剤投与具の作用を説明するための説明図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施例の薬剤投与具を説明するための説明図である。
【図16】図16は、本発明の他の実施例の薬剤投与具のアダプタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の薬剤投与具を図面に示す実施例を用いて説明する。
本発明の薬剤投与具1は、先端に開口したノズル部11を有する外筒10と、外筒10内に摺動可能に収納されたガスケット12と、ガスケット12に取付けられもしくは接続可能に形成されるプランジャ13と、外筒10内に収納された医療用液体Aとからなる医療用液体収納済注射器2と、開口部41を有する容器本体40と、容器本体40の開口部41を封止するシール部42と、内部に収納された薬剤Bとからなる薬剤容器4と、注射器のノズル部11に離脱可能に装着され、かつノズル部11を封止し、さらに、薬剤容器4と接続可能なアダプタ3とを備える。
アダプタ3は、注射器2のノズル部11を押し込み可能かつ着脱可能に装着するノズル装着部31と、ノズル部11を封止するとともに、軸方向に伸縮可能である弾性栓体5と、弾性栓体5を収納する弾性栓体収容部32と、薬剤容器4のシール部側に接続するための薬剤容器接続部33と、薬剤容器接続部33内に設けられ、弾性栓体5内と連通し、かつ薬剤容器4のシール部42を刺通可能な中空穿刺針部34とを備える。さらに、アダプタ3は、ノズル部11の押し込みによる弾性栓体5の圧縮時にノズル部11内と中空穿刺針部34内とを連通させる連通機構を備えている。
薬剤投与具1は、注射器のノズル部11に装着されたアダプタ3の薬剤容器接続部33を薬剤容器4のシール部側に接続することにより、アダプタ3の中空穿刺針部34が薬剤容器4のシール部42を刺通可能であり、次いで、中空穿刺針部34が薬剤容器4のシール部42を刺通した状態での刺通操作と非連続的な操作である注射器2のアダプタ3内への押し込みにより(言い換えれば、刺通操作とは非連続的なものとする操作を介して注射器2をアダプタ3内に押し込むことにより)、ノズル部11内と薬剤容器4の内部とが、アダプタ3の連通機構および中空穿刺針部34により連通状態となるものである。
特に、図1ないし図10の実施例の薬剤投与具では、弾性栓体5は、一端側にノズル部11を封止する封止部51を有する伸縮可能な筒状体であり、連通機構は、封止部51に設けられ、通常時閉塞し、かつ注射器のノズル部により押圧されることにより開く開閉口52により構成されている。
また、図11ないし図14の実施例の薬剤投与具では、弾性栓体5は、一端側にノズル部11を封止する封止部61を有する伸縮可能な筒状体であり、連通機構は、アダプタ3に設けられ、中空穿刺針部34と連通し、注射器のノズル部11による弾性栓体5の押圧時に、封止部61を刺通可能な弾性栓体刺通用中空穿刺針部38により構成されている。
【0018】
図1は、本発明の薬剤投与具の提供される状態の外観図である。
本発明の薬剤投与具1は、医療用液体収納済注射器2と、薬剤容器4と、アダプタ3とを備える。
最初に、医療用液体収納済注射器2について、図1および図5を用いて説明する。
医療用液体収納済注射器2は、外筒10と、外筒10内に収納されたガスケット12と、ガスケット12に取付けられもしくは接続可能に形成されるプランジャ13と、外筒10内に収納(充填)された医療用液体Aとからなる。
外筒10は、図1ないし図5に示すように、本体部と、ノズル部11とを備える。
外筒10は、図1ないし図5に示すように、先端部に設けられたノズル部11と、後端部にフランジ部10bを有するものである。
そして、注射器2は、ガイド用突起を有し、アダプタ3は、ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、さらに、ガイド溝には、ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備え、ガイド用突起を逆止爪に係止し、弾性栓体の封止部と薬剤容器のシール部を連通状態とした後のアダプタから注射器を取外し可能とするものであることが好ましい。
図1ないし図5に示すものでは、ノズル部11は、外筒10の本体部の先端に設けられており、外筒内の薬液等を排出するための先端開口部10aを備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。そして、ノズル部11には、両側にアダプタ3に装着時係合させるガイド用突起11aが形成されている。
ガイド用突起11aは、アダプタ3のノズル装着部31に設けたガイド溝315に移動可能に挿入されるものである。
実施形態のガイド溝315は断面形状が四角形であり、ノズル部11のガイド用突起11aも同様に四角形状としてあるが、これに限られるものではなく、ガイド溝を円弧状とし、ガイド用突起を断面円弧状など他の断面形状とすることができる。
【0019】
外筒10は、透明もしくは半透明材料により、必要に応じて、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成される筒状体である。
外筒10の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
外筒の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【0020】
ガスケット12の形成材料としては、特に限定されないが、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマー、SEPSエラストマー等のスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体エラストマー等のオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
本発明における注射器の外筒10に収納される医療用液体としては、注射用蒸留水、生理食塩水などの薬剤溶解液、さらには、薬剤(例えば、ビタミン剤、ミネラル類)を含有するとともに、薬剤容器内の粉末製剤の溶解が可能な薬液でもあってもよい。
薬剤容器4は、内部に薬剤Bを収納し、開口部41にシール部42を設けるものである。このシール部42は、例えば各種ゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性体よりなる膜または栓体で構成され、後述の中空穿刺針部で刺通可能なものであり、かつそれ自体気密性を有するものである。
【0021】
本発明における薬剤容器4に収納される薬理学的に有効な物質としては、血液凝固因子製剤、ホルモン製剤、インターフェロン製剤、人免疫グロブリン製剤、ワクチン製剤、抗体医薬品、抗生物質、制癌剤、その他用時医療用液体を添加して溶液を調製し、投与する薬剤などが挙げられる。血液凝固因子製剤の例としては、乾燥濃縮ヒト血液凝固第8因子製剤、遺伝子組み換え(リコンビナント)第8因子製剤、乾燥ヒト血液凝固第9因子製剤、乾燥ヒト血液凝固因子抗体迂回活性複合体、遺伝子組み換え型活性化第7因子製剤、トロンビン、アンチトロンビン、乾燥フィブリノーゲンが挙げられる。インターフェロン製剤の例としては、インターフェロンアルファ類、インターフェロンベータ類、インターフェロンガンマ類が挙げられる。ワクチン製剤の例としては、乾燥BCGワクチン、乾燥ヘモフィルスb型ワクチン、乾燥組織培養不活化A型肝炎ワクチン、乾燥弱毒性おたふくかぜワクチン、乾燥弱毒性麻しんワクチン、乾燥弱毒性水痘ワクチン、乾燥弱毒性風しんワクチン、乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチンが挙げられる。抗体医薬品の例としては、バシリキシマブが挙げられる。その他、粉末製剤、顆粒製剤、細粒製剤、凍結乾燥製剤などであれば、どのようなものにでも好適に使用できる。
【0022】
図3および図4において、アダプタ3は、合成樹脂製であり、注射器2のノズル部11を押し込み可能かつ着脱可能に装着するノズル装着部31と、ノズル部11を封止するとともに、軸方向に伸縮可能である弾性栓体5と、弾性栓体5を収納する弾性栓体収容部32と、薬剤容器4のシール部側に接続するための薬剤容器接続部33と、弾性栓体内と連通し、かつ薬剤容器4のシール部42を刺通可能な中空穿刺針部34とを備える。また、この実施例では、アダプタ3は、中空穿刺針部34と反対方向に延び、かつ中空穿刺針部34内と連通する筒状突出部54を備えている。
アダプタ3は、上部のノズル装着部31の下部と薬剤容器接続部33の上壁部331との間に弾性栓体5を収容する円筒状弾性栓体収容部32が形成され、かつ薬剤容器接続部33には、薬剤容器4のシール部42に被せる円筒状接続部330と、上壁部331の下面には、薬剤容器4のシール部42を刺通する中空穿刺針部34が備えられる。
【0023】
薬剤容器接続部33は、薬剤容器4のシール部42に被せる筒体(円筒状接続部)330と、筒体330の上部に設けた上壁部331には、中央下部に薬剤容器4のシール部42を刺通する中空穿刺針部34が備えられている。中空穿刺針部34は、薬剤容器4のシール部42を貫通可能な刃先部を有する中空針状部材であり、上壁部331の中央に形成され、内部に設けられた貫通した通路35を備える。中空穿刺針部34は、アダプタ3に一体に形成してあるが、これに限られるものではなく、中空穿刺針部34を別に設けて、中空穿刺針部34をアダプタ3の上壁部331の中央に固着する構造としても良い。
アダプタ3の薬剤容器接続部33は、接続された薬剤容器の脱離を抑制する係合部37を有している。係合部37は、薬剤容器接続部33の内周面の複数個所に内側に突出して形成される固定爪としてある。
薬剤容器接続部33は、薬剤容器4への装着時に、固定爪37が薬剤容器4の開口部の周縁部端部を乗り越えて下面と係合するものとなっており、アダプタ3を薬剤容器4に固定する。したがって、アダプタ3を薬液容器に装着(嵌合)後は取り外し困難なものとなっており、注射器2は、アダプタ3より取り外し可能である。
【0024】
図7および図8に示す実施例の薬剤投与具では、弾性栓体5は、一端側にノズル部11を封止する封止部を有する伸縮可能な筒状体であり、連通機構は、封止部に設けられ、通常時閉塞し、かつ注射器のノズル部により押圧されることにより開く開閉口52により構成されている。
弾性栓体5は、実施例では、一端が封止部により封止された蛇腹状筒体である。弾性栓体5は、封止部51が円盤状の頭部であり、筒体53が蛇腹状で伸縮する。これにより、弾性栓体5は、その全体が変形し易くなっており、開閉口を確実に開かせることができる。また、図7に示すように、封止部51は、肉厚部を備えており、この肉厚部が、図2に示すように、注射器のノズル部11の開口部に進入し、ノズル部を液密に封止している。
開閉口52は、例えば、弾性栓体5の封止部の中央部に、封止部51を貫通して形成された一文字状のスリット(切り込み)で構成されている。
開閉口52は、弾性栓体5が注射器2のノズル部11により押圧されていない状態にあるときは、弾性栓体5自体の弾性により閉塞されており、一方、注射器2のノズル部11により軸方向に押圧されたとき、封止部51およびその近傍が変形することにより開くようになっている。特に、この実施例では、アダプタ3は、中空穿刺針部34と反対方向に延び、かつ中空穿刺針部34内と連通する筒状突出部54を備えており、開閉口52は、弾性栓体5の封止部の一方の面が、ノズル部11の先端により押圧され、他方の面が筒状突出部54の先端により押圧されることにより、変形し、開口するものとなっている。
【0025】
弾性栓体5は、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料よりなる栓体で構成され、中空穿刺針部で刺通可能なものであり、かつそれ自体気密性を有するものである。
上記構造は、アダプタ3内に備えた弾性栓体5が注射器2の封止部を兼ねている構成であり、アダプタ3の薬剤容器接続部33を薬剤容器4のシール部42に装着して中空穿刺針部34で薬剤容器4のシール部42を刺通し、注射器2のノズル部11を押し込むことにより弾性栓体5の封止部51の開閉口52を開いて連通させ、注射器2の医療用液体Aをアダプタ3を通じて薬剤容器4に収納された薬剤Bと混合し調製できる。
図11および図12に示す実施例の薬剤投与具では、弾性栓体5の封止部に開閉口を設けないで、弾性栓体5は、一端側にノズル部11を封止する封止部61を有する伸縮可能な筒状体であり、連通機構は、アダプタ3に設けられ、中空穿刺針部34と連通し、注射器のノズル部11による弾性栓体5の押圧時に、封止部61を刺通可能な弾性栓体刺通用中空穿刺針部38により構成される。中空穿刺針部34の通路35と弾性栓体刺通用中空穿刺針部38の通路39は連通している。
弾性栓体刺通用中空穿刺針部38は、弾性栓体5の封止部61を貫通可能な刃先を有する中空針状部材であり、中空穿刺針部34と弾性栓体刺通用中空穿刺針部38は、上壁部331の上下中央に反対方向に延びるように形成されている。また、この実施例では、中空穿刺針部34と弾性栓体刺通用中空穿刺針部38が同一軸線上となるように設けられている。
【0026】
弾性栓体刺通用中空穿刺針部38は注射器2のノズル部11により軸方向に押圧されたとき、筒状部63が変形することにより封止部61が押し下げられ、弾性栓体刺通用中空穿刺針部38により封止部61が刺通されて中空穿刺針部38の内部の通路39が連通通路となり注射器の外筒のノズル部内と連通する。
弾性栓体5の封止部61は閉塞しており、注射器のノズル部11の押し込みにより弾性栓体5が圧縮されることにより、封止部61が、薬剤容器接続部33の弾性栓体刺通用中空穿刺針部38の針先方向に進行し、やがて、弾性栓体刺通用中空穿刺針部38が弾性栓体5の封止部61を刺通することにより、ノズル部11内と薬剤容器4の内部とが連通する。
また、この実施例では、薬剤容器接続部33の弾性栓体刺通用中空穿刺針部38は、アダプタ3の中心位置にあり、ノズル部11は円形の開口であり、ノズル部11の押し込み時、弾性栓体刺通用中空穿刺針部38が封止部61より突出してもノズル部に当接せず、ノズル部内に進入可能となっている。また、弾性栓体刺通用中空穿刺針部38の先端(刃先)は、弾性栓体5の封止部61に近接するものとなっている。
【0027】
図12において、アダプタ3は、注射器2のノズル部11を挿入するノズル装着部31の下部と薬剤容器接続部33の上壁部331との間に弾性栓体5を収容する弾性栓体収容部32が形成される。この弾性栓体収容部32内で、薬剤容器接続部33の上壁部331の上部に注射器2のノズル部11の開口を塞ぎ、かつ液漏れがないように弾性栓体5が備えられる。弾性栓体5の頭部の封止部61は、開閉口を持たない密閉型となっている。また、この実施例の弾性栓体5は、封止部61と、筒状部63とを有し、その全体が弾性材料により構成されている。弾性栓体5の筒状部62の外周面には、上述した実施例と同様に、蛇腹状筒状部とし、薄肉となっている。
そして、上述した実施例の薬剤投与具では、図7に示すように、アダプタ3は、ノズル装着部31の内周壁に注射器のノズル部に設置したガイド用突起11aを移動するためのガイド溝315を有し、ガイド溝315には、ガイド用突起11aを一方向にしか移動できないようにする逆止爪が設けられている。
ガイド用突起11aを逆止爪317に保持時、弾性栓体5の封止部と薬剤容器のシール部を連通状態とし、弾性栓体の封止部と薬剤容器のシール部を連通状態とした後アダプタから注射器を取外し可能とするものである。
【0028】
図7に示すように、アダプタ3のノズル装着部31の内周壁のガイド溝315は、一端からノズル部11のガイド用突起11aを挿入して装着するための軸方向の挿入溝315aと、ガイド用突起を係合するための係合溝315bと、ガイド用突起を軸方向に摺動するための摺動溝315cと、突起を抜くための抜出溝315dとが形成され、かつ係合溝315bにはノズル部11を弾性栓体5の封止部51に当てて装着するため一方向に通過可能な逆止爪316と、摺動溝315cにはノズル部11を押し込み弾性栓体5を圧縮した位置に保持するため一方向に通過可能な逆止爪317が備えられている。
このガイド溝315は可撓性の逆止爪316及び逆止爪317を備え、この爪316及び317により突起11aをそれぞれ注射器2のノズル部11の口部を閉塞している位置(図2の状態)及び注射器2と薬剤容器4が連通状態になる位置(図4の状態)に固定することができる。
この逆止爪316及び317は可撓性であり、突起11aを進めることはできるが逆方向に動かすことはできない構造である。そのため、薬剤容器4と接続して混合操作を行い、その後に初めて注射器2からアダプタ3を取り外すことができるようになる。これより、薬剤を溶解させる前に医療用液体を誤投与することを防止できる。
【0029】
また、本発明の薬剤投与具としては、図15に示すようなタイプのものであってもよい。
この実施例の薬剤投与具においても、注射器2aは、ガイド用突起を有し、アダプタ3aは、ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、さらに、ガイド溝には、ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備え、ガイド用突起を逆止爪に係止し、弾性栓体の封止部と薬剤容器のシール部を連通状態とした後のアダプタから注射器を取外し可能とするものである。
そして、図15に示すものでは、注射器2aは、ノズル部11を被包するように設けられたカラー部18と、カラー部の内面に設けられたガイド用突起18aを有している。ガイド用突起18aは、向かい合うように2つ設けられている。そして、アダプタ3aは、ノズル装着部31の外面に設けられたガイド用突起をガイドするためのガイド溝415を有する。ガイド溝415には、ガイド用突起18aを一方向にしか移動できないようにする逆止爪416を備え、ガイド用突起18aを逆止爪416に係止し、弾性栓体の封止部と薬剤容器のシール部を連通状態とした後のアダプタ3aから注射器2aを取外し可能としている。
具体的には、図15に示すように、アダプタ3aのノズル装着部31の外面(外内周壁)のガイド溝415は、一端からカラー部18のガイド用突起18aを挿入して装着するための軸方向の挿入溝415aと、ガイド用突起を係合するための係合溝415bと、ガイド用突起を軸方向に摺動するための摺動溝415cと、突起を抜くための抜出溝415dとが形成されている。そして、そして係合溝415bの端部(言い換えれば、挿入溝415aと係合溝415bの境界部)には、ノズル部11を弾性栓体5の封止部51に当てて装着するため一方向に通過可能な逆止爪416が設けられている。また、摺動溝415cには、ノズル部11を押し込み弾性栓体5を圧縮した位置に保持するため一方向に通過可能な保持用逆止爪417が設けられている。
このガイド溝415は可撓性の逆止爪416及び逆止爪417を備え、この爪416及び417により突起18aをそれぞれ注射器2aのノズル部11の口部を閉塞している位置及び注射器2aと薬剤容器4が連通状態になる位置に固定することができる。
この逆止爪416及び417は可撓性であり、突起18aを進めることはできるが逆方向に動かすことはできない構造である。そのため、薬剤容器4と接続して混合操作を行い、その後に初めて注射器2aから接続アダプタ3aを取り外すことができるようになる。これより、薬剤を溶解させる前に医療用液体を誤投与することを防止できる。
【0030】
また、上述したすべての実施例において、アダプタは、図16に示すようなものであってもよい。
図16に示す実施例のアダプタ3bは、薬剤容器4のシール部42を刺通可能な中空穿刺針部70に設けられ、中空穿刺針部70の薬剤容器4のシール部42の刺通により、薬剤容器4内部と外気との連通を可能とするための空気流通用通路72を持ち、空気流通路72には、菌不透過性通気性フィルタ73が設けられている。このような空気流通路を備えることにより、外筒10への薬剤溶解済医療用液体の再吸引操作が容易となる。
図16に示すものでは、中空穿刺針部70は、外管74と中空針状部75とを備え、中空針状部と外管間により、空気流通用通路72が形成されている。また、外管の基端において、空気流通用通路は閉塞しており、接続される外筒のノズル部の内部とは連通しないものとなっている。そして、アダプタには、空気流通路72の一部を形成する通路72が設けられており、通路72の一端は、外管の側壁に形成された開口により、外管内の空気流通路と連通している。また、通路72の他端には、菌不透過性通気性フィルタ73が設けられている。よって、この実施例のアダプタは、外管74の先端より、中空針状部75の外面、アダプタの通路72を通り、菌不透過性通気性フィルタ73に至る空気流通路を備えている。このような空気流通路を備えることにより、外筒10への薬剤溶解済医療用液体の再吸引操作が容易となる。
【0031】
次に、図1ないし図10に示した本発明の薬剤投与具の作用を図面を用いて説明する。
この実施例の薬剤投与具1では、注射器2の押圧力で弾性栓体5の開閉口を開口させて、注射器2内に充填されている医療用液体Aを薬剤容器4の薬剤Bへ流入させて、混合調製し、混合調整された薬液Cを注射器2内に再充填させるものとなっている。
図1に示すように、この実施例の薬剤投与具1では、医療用液体充填済み注射器2が、アダプタ3のノズル装着部31に装着された状態となっている。また、薬剤容器4は、アダプタ3に装着されていないものとなっている。
そして、アダプタ3に装着された状態の注射器2のノズル部11をアダプタ3の装着部31に挿入し、ノズル部11のガイド用突起11aをアダプタ3の内壁のガイド溝315に挿入し、そしてガイド用突起11aをガイド溝315aより挿入して係合溝315bに沿って回し逆止爪316を越えた位置で止めた状態となっており、この状態において、ノズル部11aの口部は、弾性栓体5の封止部51により液密に封止されている。
そして、他方の手で、薬剤容器4を保持し、薬剤容器4のシール部側をアダプタ3の薬剤容器装着部に近接させ、その後、アダプタ3の薬剤容器装着部を薬剤容器4のシール部側に押しつけるとともに、注射器2を押圧する。これにより、注射器2は、アダプタ3のガイド溝315cに沿い前進し、弾性栓体5が注射器2のノズル部11に押圧されることにより、開閉口52が開口すると同時、もしくは若干遅れて、薬剤容器用中空穿刺針部34が薬剤容器4のシール部42を刺通し、薬剤容器接続部33の係合部37が薬剤容器4の開口部と係合する。これにより、薬剤容器4内と注射器2内とが連通状態となる。そして、薬剤容器4の内部が減圧されている場合には、薬剤容器内の減圧による吸引力により、注射器内の医療用液体は、薬剤容器内に流入する。また、薬剤容器4の内部が減圧されていない場合には、注射器のプランジャを押圧することにより、注射器内の医療用液体を薬剤容器内に流入させる。このようにして、薬剤容器4の薬剤Bと注射器内の液体Aが混合されて薬液Cが調製される。
そして、図10に示すように、薬剤容器4側が上方となるようにした後、プランジャを引き、薬剤容器4内の調整された薬液を注射器2に吸引し、その後、注射器2を接続アダプタ3のノズル装着部31より取り外すことにより、投与準備が完了する。
【0032】
次に、図11ないし図14に示した本発明の他の実施例の薬剤投与具の作用を図面を用いて説明する。
この実施例の薬剤投与具の操作は、上述した薬剤投与具と同じである。
この実施例の薬剤投与具においても、医療用液体充填済み注射器2が、アダプタ3のノズル装着部31に装着された状態となっている。また、薬剤容器4は、アダプタ3に装着されていないものとなっている。
そして、アダプタ3に装着された状態の注射器2は、ノズル部11をアダプタ3の装着部31に挿入し、ノズル部11のガイド用突起11aをアダプタ3の内壁のガイド溝315に挿入し、そしてガイド用突起11aをガイド溝315aより挿入して315bに沿って回し逆止爪316を越えた位置で止めた状態となっており、この状態において、ノズル部11aの口部は、弾性栓体5の封止部61により液密に封止されている。
そして、他方の手で、薬剤容器4を保持し、薬剤容器4のシール部側をアダプタ3の薬剤容器装着部に近接させ、その後、アダプタ3の薬剤容器装着部を薬剤容器4のシール部側に押しつけるとともに、注射器2を押圧する。これにより、注射器2は、アダプタ3のガイド溝315cに沿い前進し、弾性栓体5が注射器2のノズル部11に押圧されることにより、弾性栓体5の封止部61が、アダプタ3の弾性栓体側中空穿刺針部により刺通されると同時、もしくは若干遅れて、薬剤容器用中空穿刺針部34が薬剤容器4のシール部42を刺通し、薬剤容器接続部33の係合部37が薬剤容器4の開口部と係合する。これにより、薬剤容器4内と注射器2内とが連通状態となる。そして、薬剤容器4の内部が減圧されている場合には、薬剤容器内の減圧による吸引力により、注射器内の医療用液体は、薬剤容器内に流入する。また、薬剤容器4の内部が減圧されていない場合には、注射器のプランジャを押圧することにより、注射器内の医療用液体を薬剤容器内に流入させる。このようにして、薬剤容器4の薬剤Bと注射器内の液体Aが混合されて薬液Cが調製される。
そして、薬剤容器4側が上方となるようにした後、プランジャを引き、薬剤容器4内の調整された薬液を注射器2に吸引し、その後、注射器2を接続アダプタ3のノズル装着部31より取り外すことにより、投与準備が完了する。
以上、本発明の薬剤投与具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、薬剤投与具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 薬剤投与具
2 医療用液体収納済注射器
3 アダプタ
4 薬剤容器
5 弾性栓体
10 外筒
11 ノズル部
11a ガイド用突起
22 シール部
31 ノズル装着部
315 ガイド溝
316 逆止爪
317 逆止爪
32 弾性栓体収容部
33 薬剤容器接続部
34 中空穿刺針部
35 通路
37 係合部
38 弾性栓体刺通用中空穿刺針部
39 通路
51 封止部
52 開閉口
61 封止部
A 医療用液体
B 薬剤
C 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に開口したノズル部を有する外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、該ガスケットに取付けられもしくは接続可能に形成されるプランジャと、前記外筒内に収納された医療用液体とからなる医療用液体収納済注射器と、開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部を封止するシール部と、内部に収納された薬剤とからなる薬剤容器と、前記注射器の前記ノズル部に離脱可能に装着され、かつ前記ノズル部を封止し、さらに、前記薬剤容器と接続可能なアダプタとを備えた薬剤投与具であって、
前記アダプタは、前記注射器のノズル部を押し込み可能かつ着脱可能に装着するノズル装着部と、前記ノズル部を封止するとともに、軸方向に伸縮可能である弾性栓体と、該弾性栓体を収納する弾性栓体収容部と、前記薬剤容器のシール部側に接続するための薬剤容器接続部と、該薬剤容器接続部内に設けられ、前記弾性栓体内と連通し、かつ前記薬剤容器のシール部を刺通可能な中空穿刺針部とを備え、さらに、前記アダプタは、前記ノズル部の押し込みによる前記弾性栓体の圧縮時に前記ノズル部内と前記中空穿刺針部内とを連通させる連通機構を備えており、
前記薬剤投与具は、前記注射器のノズル部に装着された前記アダプタの薬剤容器接続部を薬剤容器のシール部側に接続することにより、前記アダプタの前記中空穿刺針部が前記薬剤容器の前記シール部を刺通可能であり、次いで、前記中空穿刺針部が前記薬剤容器の前記シール部を刺通した状態にて、刺通操作とは非連続的なものとする操作を介して前記注射器を前記アダプタ内に押し込むことにより、前記ノズル部内と前記薬剤容器内部とが、前記アダプタの連通機構および前記中空穿刺針部により連通状態となるものであることを特徴とする薬剤投与具。
【請求項2】
前記弾性栓体は、一端側に前記ノズル部を封止する封止部を有する伸縮可能な筒状体であり、前記連通機構は、前記封止部に設けられ、通常時閉塞し、かつ前記注射器の前記ノズル部により押圧されることにより開く開閉口により構成されている請求項1に記載の薬剤投与具。
【請求項3】
前記弾性栓体は、一端側に前記ノズル部を封止する封止部を有する伸縮可能な筒状体であり、前記連通機構は、前記アダプタに設けられ、前記中空穿刺針部と連通し、前記注射器の前記ノズル部による前記弾性栓体の押圧時に、前記封止部を刺通可能な弾性栓体刺通用中空穿刺針部により構成されている請求項1に記載の薬剤投与具。
【請求項4】
前記アダプタの前記薬剤容器接続部は、接続された前記薬剤容器の離脱を抑制する係合部を有している請求項1ないし3のいずれかに記載の薬剤投与具。
【請求項5】
前記注射器は、ガイド用突起を有し、前記アダプタは、前記ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、該ガイド溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の薬剤投与具。
【請求項6】
前記注射器は、前記ノズル部の外面に設けられたガイド用突起を有し、前記アダプタは、前記ノズル装着部の内壁に設けられた前記ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、該ガイド溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の薬剤投与具。
【請求項7】
前記注射器は、前記ノズル部を被包するように設けられたカラー部と、該カラー部の内面に設けられたガイド用突起を有し、前記アダプタは、前記ノズル装着部の外面に設けられた前記ガイド用突起をガイドするためのガイド溝を有し、前記ガイド溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする逆止爪を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の薬剤投与具。
【請求項8】
前記アダプタの前記ガイド溝は、一端から前記ノズル部のガイド用突起を挿入して装着するための軸方向の挿入溝と、前記ガイド用突起を係合するための係合溝と、前記ガイド用突起を軸方向に摺動するための摺動溝と、突起を抜くための抜出溝とを備え、かつ前記係合溝は、前記ガイド用突起を一方向にしか移動できないようにする前記逆止爪を備え、前記摺動溝は、前記ノズル部が前記弾性栓体を圧縮する状態を保持するための保持用逆止爪を備えている請求項5ないし7のいずれかに記載の薬剤投与具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−212361(P2011−212361A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84871(P2010−84871)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】