説明

薬剤拡散装置

【課題】薬剤保持体の着脱作業を容易かつ安全に行えるようにし、かつ部品の破損や紛失を防止できるようにする。
【解決手段】薬剤拡散装置は、本体30と、本体30の背面側開口に開閉可能に取り付けられ、内面側に薬剤保持体60を保持可能とされた蓋40,50とを備える。蓋40,50は下端側が本体30に回動可能に軸支されて上端側が所定の角度開く構造とされる。蓋40は上端側に本体30に向って突出する係止片43を有し、係止片43と係合し、蓋40,50を閉状態とするフック74が本体30に配置される。フック74はコイルバネ76により付勢されており、コイルバネ76の付勢力に抗してフック74を押圧し、前記係合を解除するレバー75が本体30に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は薬剤保持体を収納し、その薬剤保持体に保持されている薬剤を雰囲気中に拡散させる薬剤拡散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図18はこの種の薬剤拡散装置の従来例として特許文献1に記載されている気流拡散装置の構成を示したものである。気流拡散装置は前面ケース12と後面ケース13とからなる気流拡散装置本体11とファン14と薬剤を保持するための薬剤保持体15とを備えて構成されている。
【0003】
前面ケース12の中央部には排気口16が設けられ、排気口16の前方には排気口16を覆うように遮蔽板17が取り付けられている。後面ケース13には円弧形状をなす4個の吸気口18が円周方向に等間隔に形成されている。また、前面ケース12と後面ケース13とを合体・閉塞させるときに使用する可撓係止片19が吸気口18の下側に設けられている。
【0004】
ファン14は直流ブラシモータ21と旋回翼22からなり、直流ブラシモータ21の回転軸21aに旋回翼22が固定されている。風洞部23は隔壁24の中央部に形成されており、後面ケース13の吸気口18から導入された気流を前面ケース12の排気口16に流通させるための開口として機能する。
【0005】
直流ブラシモータ21はモータ装着部25に装着され、これによりファン14が排気口16と吸気口18とを接続する気流の経路の途中に配設される。薬剤保持体15はファン14の背面側において隔壁24に設けられている薬剤保持体取付部26に取り付けられている。なお、気流拡散装置本体11内には図示を省略しているが、電池ケースが配置されている。
【0006】
後面ケース13の上端部には前面ケース12の係合部27に係止される係止突部28が形成されており、前面ケース12の下端部には後面ケース13の可撓係止片19が係止される係合部29が形成されている。これにより、前面ケース12の係合部27に後面ケース13の係止突部28を係止させてから、後面ケース13を前面ケース12に合体させ、後面ケース13の可撓係止片19を前面ケース12の係合部29に係止させることで、後面ケース13と前面ケース12とが合体・閉塞されるものとなっている。
【0007】
上記のような構成とされた気流拡散装置ではファン14により吸気口18から気流を導入し、導入された気流が薬剤保持体15の担体15a内を通過し、薬剤を含んで排気口16から拡散されるものとなっており、この際、遮蔽板17によって放射状に拡散されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−172361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、この種の薬剤拡散装置では薬剤保持体は消耗品であるため、薬剤保持体をある頻度で交換する必要がある。図18に示した従来の構成では薬剤保持体15の交換作業(着脱作業)を行う際、後面ケース13を取り外す必要があるため、この際、例えば後面ケース13の破損や紛失が生じる恐れがある。
【0010】
また、後面ケース13を取り外す際には可撓係止片19の係止の解除が必要となるが、可撓係止片19は装置下部に設けられているため、係止解除作業を行うためには装置を持ち上げた方がやり易く、つまり装置がテーブル等の上に設置されている状態のままで、後面ケース13の取り付け・取り外し作業を行いづらいものとなっていた。
【0011】
さらに、後面ケース13及び薬剤保持体15を取り外した状態では、ファン14等が内蔵されている前面ケース12の内部が大きく露出するため、内部構造物に触れることができ、内部構造物の破損や怪我等が生じる危険があった。
【0012】
この発明の目的は上述した問題に鑑み、薬剤保持体の着脱作業を容易かつ安全に行えるようにし、かつ部品の破損や紛失を防止できるようにし、これらの点で使い勝手が良い薬剤拡散装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明によれば、薬剤保持体を収納し、その薬剤保持体に保持されている薬剤を拡散させる薬剤拡散装置は、本体と、本体の背面側開口に開閉可能に取り付けられ、内面側に薬剤保持体を保持可能とされた蓋とを備え、蓋は下端側が本体に回動可能に軸支されて上端側が所定の角度開く構造とされ、蓋は上端側に本体に向って突出する係止片を有し、係止片と係合し、蓋を閉状態とするフックが本体に配置され、フックはコイルバネにより付勢されており、コイルバネの付勢力に抗してフックを押圧し、前記係合を解除するレバーが本体に取り付けられているものとされる。
【0014】
請求項2の発明では請求項1の発明において、薬剤保持体に嵌合部が突出形成され、前記嵌合部と嵌合して薬剤保持体を保持する保持部が蓋に突出形成されているものとされる。
【0015】
請求項3の発明では請求項2の発明において、蓋は内蓋と外蓋とよりなり、それら内蓋と外蓋はそれぞれ本体に回動可能に軸支され、前記係止片は外蓋に形成され、前記保持部は内蓋に形成され、内蓋には外蓋側に突出するバネ片が一体形成されており、内蓋と外蓋は上端側において互いに回動可能に係合されると共に、前記バネ片のバネ力により互いに反対方向に回動付勢されているものとされる。
【0016】
請求項4の発明では請求項3の発明において、内蓋は板部と、その板部から突出形成されて本体に軸支される軸支部とを有し、板部から曲げ起こされて前記バネ片が形成され、前記保持部は板部の上半部側において板部の側壁に形成され、側壁の根元部分には複数のスリットが貫通形成されているものとされる。
【0017】
請求項5の発明では請求項2乃至4のいずれかの発明において、前記閉状態において蓋に保持された薬剤保持体を前記嵌合部と前記保持部の嵌合方向に押圧するバネが本体に取り付けられているものとされる。
【0018】
請求項6の発明では請求項5の発明において、薬剤保持体は前記嵌合方向の前端面に一対の電極を備え、前記電極と弾接する一対の電気接点が本体に配置され、一対の電極間には薬剤保持体識別用の抵抗体が配置されているものとされる。
【0019】
請求項7の発明では請求項1乃至6のいずれかの発明において、薬剤を拡散させるファンが本体内に収納されているものとされる。
【0020】
請求項8の発明では請求項7の発明において、本体の側面の周縁に、排気口をなす隙間が形成され、本体の側面において蓋との間に吸気口をなす隙間が構成されているものとされる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、蓋は本体に回動可能に軸支されて取り付けられて本体と一体となっているため、蓋を紛失する恐れがなく、また取り外して扱われることがないため、蓋を破損するといった状況も生じにくいものとなっている。
【0022】
さらに、レバーの操作により蓋を簡単に開くことができ、蓋開閉時に薬剤拡散装置を持ち上げるといった作業は不要となるため、薬剤保持体の着脱作業を簡易に行うことができる。
【0023】
加えて、蓋は所定の角度開く構造とされ、蓋を開いた時、本体内部が大きく露出するといった状況は発生しないため、内部構造物の破損や怪我等が生じる危険も少なく、これらの点で極めて使い勝手の良い薬剤拡散装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明による薬剤拡散装置の一実施例の外観を示す斜視図。
【図2】図1に示した薬剤拡散装置の外蓋を開いた状態を示す斜視図。
【図3】図2の状態の部分断面図。
【図4】外蓋及び内蓋が取り付けられる前の本体を背面側から見た斜視図。
【図5】外蓋の形状を示す斜視図。
【図6】内蓋の形状を示す斜視図。
【図7】A,Bは薬剤保持体の構成を示す斜視図、Cは薬剤保持体の底面図、DはCにおける基板の平面図。
【図8】フックの形状を示す斜視図。
【図9】レバーの形状を示す斜視図。
【図10】フックとレバーとコイルバネの配置関係を示す斜視図。
【図11】レバーの本体への取り付けを説明するための図。
【図12】本体の収納部の側壁面に形成されている溝部分の構成を示す部分拡大斜視図。
【図13】外蓋を閉じる動作を説明するための図。
【図14】係止片とフックの係合状態を示す図。
【図15】内蓋への薬剤保持体の装着を説明するための図。
【図16】外蓋及び内蓋の軸支部分にねじりバネを配置した状態を示す図。
【図17】内蓋・外蓋の二重構造に替えて外蓋のみとした場合の外蓋の形状を示す斜視図。
【図18】薬剤拡散装置の従来例を示す図、Aは背面側から見た斜視図、Bは断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0026】
図1はこの発明による薬剤拡散装置の一実施例の外観を示したものであり、図1中、30は本体を示し、40は外蓋を示す。図2は外蓋40を開いた状態を示したものであり、図3は外蓋40を開いた状態の断面構造を示したものである。この例では薬剤拡散装置は本体30に外蓋40と内蓋50が取り付けられ、薬剤保持体60は内蓋50に保持される構造となっている。図4は外蓋40及び内蓋50が取り付けられる前の本体30を背面側から見た状態を示したものである。
【0027】
まず、外蓋40と内蓋50の形状について説明する。
【0028】
外蓋40は図5に示したように若干湾曲された略方形の板部41と、その板部41の板面から突出形成された一対の軸支部42及び一対の係止片43とよりなる。一対の軸支部42は外蓋40の下端において左右両端部に設けられており、各軸支部42には軸穴42aがそれぞれ形成されている。一対の係止片43は外蓋40の上端側において左右両端部に設けられており、その先端には係止爪43aが下向きに突出して形成されている。また、各係止片43には基端側から中央にかけて長円穴43bが形成されている。
【0029】
内蓋50は図6に示したように平板状の板部51を有しており、板部51の下端には一対の軸支部52が形成されている。一対の軸支部52は板部51の左右両端部において板部51に対して傾きを持って下方に突出されており、先端には軸穴52aがそれぞれ形成されている。また、先端の上面には本体30に取り付けられた際の本体30に対する回動を規制するための規制面52bが形成されている。
【0030】
板部51の下半部には一対のバネ片53が曲げ起こされて形成されている。バネ片53は上下方向に伸長して形成されており、上端が遊端とされている。バネ片53は板部51の背面51b側に突出するように形成されている。
【0031】
一方、板部51の上半部側の左右両端には側壁54が形成されている。側壁54は板部51の前面51a側に突出して形成されている。一対の側壁54には互いに内向きに突出してひさし状をなすように保持部55が形成されている。保持部55は側壁54の上下方向中間部から下端にかけて形成されている。側壁54の下端には板部51と側壁54と保持部55とで囲まれた部分を閉塞する閉塞部56が形成されている。
【0032】
一対の側壁54の上端部分には互いに外向きに突出する軸57が形成されており、軸57の先端部は下向きに突出して長円形をなすものとされ、この長円形部分によって抜け止め57aが形成されている。また、各側壁54の根元部分には板部51にまたがって複数のスリット58が上下方向に配列されて貫通形成されている。これらスリット58は通気孔として機能する。
【0033】
図7は内蓋50に保持される薬剤保持体60の構成を示したものであり、薬剤保持体60は方形状の枠体61内に薬剤を保持した担体62が収納固定されて構成されている。薬剤は例えば殺虫剤や防虫剤とされる。なお、薬剤は殺虫剤や防虫剤に限らず、芳香剤や消臭剤等であっても良く、用途に応じて選定される。
【0034】
枠体61には内蓋50に形成されている保持部55と嵌合する一対の嵌合部63が突出形成されている。嵌合部63は枠体61の対向二辺に、辺に沿って伸長して形成されており、断面L字状とされ、L字の一辺が互いに外向きになるように形成されている。なお、各嵌合部63の上端は閉塞部63aによって閉塞されている。
【0035】
枠体61の下面には図7Cに示したように基板64が配置されており、基板64には一対の電極65が図7Dに示したように形成されている。一対の電極65間には抵抗体66が接続配置されている。抵抗体66は薬剤保持体60を識別するために使用される。この点については後述する。
【0036】
次に、本体30側の構成について説明する。
【0037】
本体30の背面側には薬剤保持体60を収納する収納部31が図4に示したように形成されており、この収納部31によって大きな開口が構成されている。収納部31の内部底面にはこの例では風洞部32が開口しており、この風洞部32内にファン71が収納配置されている。
【0038】
本体30の背面の下端側には一対の支持部33が突出形成されており、各支持部33の左右両面にはそれぞれ軸33aが突出形成されている。なお、各支持部33の両側には開口33bが設けられている。
【0039】
収納部31の4つの内壁面のうち、底壁面31aには板バネ材よりなる一対の電気接点72が配置されている。また、収納部31の上壁面31bには一対のバネ73が取り付けられている。バネ73はこの例では板バネ材によって形成されている。
【0040】
一方、収納部31の両側壁面31c,31dにはそれぞれ上端側に溝34が形成されており、これら溝34が形成されている箇所にそれぞれフック74とレバー75とコイルバネ76が配置されている。
【0041】
図8及び図9は一方の側壁面31c側に配置されているフック74及びレバー75の形状を示したものであり、他方の側壁面31d側に配置されているフック74及びレバー75の形状はこれら図8及び図9に示した形状と面対称の形状とされる。
【0042】
フック74は水平板部74aと脚部74b,74cとよりなり、一方の脚部74bは水平板部74aの前端側に位置され、他方の脚部74cは水平板部74aの中間部に位置されている。これら脚部74b,74c間において水平板部74aには切り欠き74dが形成されており、この切り欠き74dより前端側に係合部74eが形成されている。係合部74eの前端側には傾斜面74fが形成されている。
【0043】
レバー75は垂直板部75aと、その一面側に突出形成された操作部75bと、反対面側に突出形成された3つの突起75c〜75eとよりなる。操作部75bは長円形をなして突出されており、その天面には細幅の複数の突条75fが配列形成されている。なお、垂直板部75aには長円穴75gが2箇所に形成されている。
【0044】
図10はフック74とレバー75とコイルバネ76の配置関係を示したものであり、レバー75の3つの突起75c〜75eはフック74の水平板部74a上に位置し、コイルバネ76はフック74の水平板部74aの下に位置する配置となる。
【0045】
フック74とレバー75とコイルバネ76は図10に示したような配置関係となるように本体30に取り付けられる。この際、レバー75の2つの長円穴75gには図11に示したように本体30に設けられている軸部35a,35bがそれぞれ係合されて位置され、これによりレバー75は軸部35a,35bによって案内されて本体30の上下方向に移動可能とされる。なお、レバー75の操作部75bは本体30の側板36に形成されている長円穴36aを介して外部に突出される。
【0046】
図12は本体30の収納部31の側壁面31cに形成されている溝34の部分を拡大して示したものであり、フック74はコイルバネ76(図12では隠れてわずかしか見えない)によって上方に付勢されており、レバー75はフック74を介してコイルバネ76により上方に付勢されている。これにより、レバー75の操作部75bは図4に示したように本体30の側板36の長円穴36aの上端に突き当たった状態となる。
【0047】
次に、本体30に対する内蓋50及び外蓋40の取り付けについて説明する。
【0048】
内蓋50及び外蓋40の本体30への取り付けに際しては、まず内蓋50と外蓋40が組み立てられる。内蓋50と外蓋40の組み立ては内蓋50の一対の軸57を外蓋40の係止片43の長円穴43bにそれぞれ挿入係合させることによって行われる。長円穴43bへの軸57の挿入は、軸57の先端に長円形をなして突出している抜け止め57aの長径方向を、長円穴43bの長径方向に一致させて嵌め込むことによって行われる。これにより、内蓋50は一対の軸57を介し、抜け止め57aによって抜け止めされて外蓋40の一対の係止片43間に支持される。内蓋50は長円穴43bの長さ分、移動可能とされ、かつ回動可能とされる。
【0049】
これら内蓋50及び外蓋40はそれぞれ本体30の一対の支持部33に取り付けられる。内蓋50の一対の軸支部52の軸穴52aは、一対の支持部33に互いに内向きに突設されている軸33aに係合され、外蓋40の一対の軸支部42の軸穴42aは、一対の支持部33に互いに外向きに突設されている軸33aに係合され、これにより内蓋50及び外蓋40は本体30に回動可能に軸支される。
【0050】
なお、内蓋50の一対の軸支部52の先端に設けられている規制面52bは、本体30の支持部33の脇に設けられている開口33bに挿入位置され、開口33bの上壁面に突き当たることにより、内蓋50及び内蓋50と一体化されている外蓋40の回動が規制される構造となっている。つまり、図2及び図3に示したように、内蓋50及び外蓋40は所定の角度しか開かない構造となっており、開いた状態では図2及び図3に示した状態となる。
【0051】
内蓋50及び外蓋40を閉じる際には、外蓋40の外面を図13に示したように矢印方向に押圧することによって行われる。外蓋40の一対の係止片43の係止爪43aは本体30に配置されているフック74の係合部74eを押圧し、コイルバネ76の付勢力に抗してフック74を押し下げ、係合部74eを乗り越える。図14はこの状態を示したものであり、係止片43の係止爪43aはフック74の係合部74eに係合して係止され、これにより外蓋40は閉状態となって本体30に固定される。係止片43とフック74の係合の解除は本体30の側板36に突出位置されているレバー75の操作部75bを押し下げることによって行われる。
【0052】
次に、薬剤保持体60の装着について説明する。薬剤保持体60の装着は図15に示したように薬剤保持体60を内蓋50の内面側(板部51の前面51a側)に矢印方向に挿入することによって行われる。この挿入により、薬剤保持体60に形成されている嵌合部63は内蓋50に形成されている保持部55に嵌合され、薬剤保持体60は内蓋50の内面側に図2及び図3に示したように保持される。
【0053】
薬剤保持体60を装着した後、外蓋40を閉じることによって薬剤保持体60は本体30の収納部31に収納される。内蓋50には外蓋40側に突出する一対のバネ片53が形成されており、内蓋50と外蓋40はバネ片53のバネ力により互いに反対方向に回動付勢されているため、外蓋40を閉じた際には、このバネ片53のバネ力によって内蓋50が薬剤保持体60を収納部31に向って押すことになり、これにより薬剤保持体60は収納部31の内部底面に押し付けられ、つまり風洞部32の開口を蓋するように配置される。
【0054】
一方、収納部31の上壁面31bに取り付けられている一対のバネ73は薬剤保持体60を内蓋50との嵌合方向に、つまり下方に押圧する。この押圧により薬剤保持体60の下面(嵌合方向の前端面)に設けられている一対の電極65は本体30側に配置されている電気接点72と弾接し、電極65と電気接点72は安定かつ良好に電気的に接続される。
【0055】
この接続により、薬剤保持体60の電極65間に配置されている抵抗体66の抵抗値を本体30側に設けた回路によって読み取ることが可能となる。薬剤保持体60には例えば有効使用期間(日数)の異なるものがあり、有効使用期間に応じて抵抗体66の抵抗値を変える。これにより、抵抗値を読み取ることで薬剤保持体60の有効使用期間を検知することができ、また薬剤保持体60の有無についても検知することができる。
【0056】
上記のようにして薬剤保持体60を収納し、ファン71を作動させれば、気流が薬剤保持体60の担体62内を通過し、薬剤を含んだ気流が拡散される。ファン71は本体30の前面に配置されている電源スイッチのボタン77(図1参照)を押すことにより作動する。なお、電源には電池を用いるものとなっており、本体30の底面側には図3に示したように電池78が収納されている。
【0057】
気流はこの例では図1に示したように本体30の側面の周縁に形成されている隙間37から排気され、即ち隙間37によって排気口が構成されている。また、本体30の側面において外蓋40と本体30との間にも隙間38が形成されており、この隙間38は吸気口として機能する。なお、薬剤保持体60を保持する内蓋50には前述したように多数のスリット58が形成されているため、吸気口から吸気された気流は薬剤保持体60の内蓋50との対向面側に良好に流入し、これにより担体62内を効率良く通過するものとなっている。
【0058】
以上説明したように、この例では外蓋40と内蓋50は本体30に回動可能に軸支され、本体30と一体となっているため、蓋(外蓋40,内蓋50)を紛失する恐れはない。また、蓋を単独で、つまり取り外して扱うといったことがないため、蓋の破損も生じにくく、破損に対しても有利な構成となっている。
【0059】
外蓋40及び内蓋50を開く際には本体30の側板36に配置されているレバー75の操作部75bを単に押し下げれば良く、これにより簡単に外蓋40及び内蓋50を開くことができる。レバー75の操作は薬剤拡散装置本体30がテーブル等の上に設置されたままの状態で行うことができ、よって蓋開閉時に薬剤拡散装置を持ち上げなくても良く、薬剤保持体60の着脱作業を簡易に行うことができる。
【0060】
また、外蓋40及び内蓋50は内蓋50の軸支部52に形成されている規制面52bが本体30に突き当たることにより、回動が規制され、所定の角度しか開かない構造となっているため、本体30の内部が大きく露出することはなく、よって内部構造物の破損や怪我等が生じる危険も少ない。
【0061】
なお、この例では蓋を二重蓋構造とし、内蓋50に形成したバネ片53により、内蓋50と外蓋40は互いに反対方向に、つまり離れる方向に回動付勢されているため、外蓋40を閉じた際には前述したように薬剤保持体60を本体30の収納部31に良好に格納することができる。一方、外蓋40及び内蓋50を開く際にはこのバネ片53のバネ力が蓋開きの補助をする。つまり、レバー75を操作して外蓋40の係止片43の係止を解除すれば、バネ片53のバネ力(弾性復帰力)により外蓋40及び内蓋50は開く方向に飛び出し、速やかに開くものとなっている。
【0062】
外蓋40及び内蓋50の開き動作がさらに迅速かつ良好に行われるようにするために、図16に示したように本体30の支持部33の軸33aにねじりバネ78を配置するようにしてもよい。
【0063】
図17は蓋を二重蓋構造ではなく、一つ(一重蓋)とした場合の構成を示したものである。この例では蓋40’は二重蓋構造の外蓋40に、薬剤保持体60を保持するための保持部45を設けた構造となっている。なお、図5と対応する部分には同一符号を付してある。蓋として二重蓋ではなく、このような蓋40’を採用してもよい。
【0064】
なお、上述した例では薬剤拡散装置はファン71を内蔵するものとなっているが、薬剤拡散装置はファンを内蔵しない自然蒸散型のものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
30 本体 31 収納部
33 支持部 33a 軸
34 溝 37,38 隙間
40 外蓋 43 係止片
43a 係止爪 50 内蓋
53 バネ片 55 保持部
57 軸 58 スリット
60 薬剤保持体 65 電極
66 抵抗体 72 電気接点
73 バネ 74 フック
74e 係合部 75 レバー
75b 操作部 76 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤保持体を収納し、その薬剤保持体に保持されている薬剤を拡散させる薬剤拡散装置であって、
本体と、
前記本体の背面側開口に開閉可能に取り付けられ、内面側に前記薬剤保持体を保持可能とされた蓋とを備え、
前記蓋は下端側が前記本体に回動可能に軸支されて上端側が所定の角度開く構造とされ、
前記蓋は前記上端側に前記本体に向って突出する係止片を有し、
前記係止片と係合し、前記蓋を閉状態とするフックが前記本体に配置され、
前記フックはコイルバネにより付勢されており、
前記コイルバネの付勢力に抗して前記フックを押圧し、前記係合を解除するレバーが前記本体に取り付けられていることを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項2】
請求項1記載の薬剤拡散装置において、
前記薬剤保持体に嵌合部が突出形成され、
前記嵌合部と嵌合して前記薬剤保持体を保持する保持部が前記蓋に突出形成されていることを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項3】
請求項2記載の薬剤拡散装置において、
前記蓋は内蓋と外蓋とよりなり、それら内蓋と外蓋はそれぞれ前記本体に回動可能に軸支され、
前記係止片は前記外蓋に形成され、前記保持部は前記内蓋に形成され、前記内蓋には前記外蓋側に突出するバネ片が一体形成されており、
前記内蓋と前記外蓋は前記上端側において互いに回動可能に係合されると共に、前記バネ片のバネ力により互いに反対方向に回動付勢されていることを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項4】
請求項3記載の薬剤拡散装置において、
前記内蓋は板部と、その板部から突出形成されて前記本体に軸支される軸支部とを有し、
前記板部から曲げ起こされて前記バネ片が形成され、
前記保持部は前記板部の上半部側において前記板部の側壁に形成され、
前記側壁の根元部分には複数のスリットが貫通形成されていることを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項5】
請求項2乃至4記載のいずれかの薬剤拡散装置において、
前記閉状態において前記蓋に保持された前記薬剤保持体を前記嵌合部と前記保持部の嵌合方向に押圧するバネが前記本体に取り付けられていることを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項6】
請求項5記載の薬剤拡散装置において、
前記薬剤保持体は前記嵌合方向の前端面に一対の電極を備え、
前記電極と弾接する一対の電気接点が前記本体に配置され、
前記一対の電極間には前記薬剤保持体識別用の抵抗体が配置されていることを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項7】
請求項1乃至6記載のいずれかの薬剤拡散装置において、
前記薬剤を拡散させるファンが前記本体内に収納されていることを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項8】
請求項7記載の薬剤拡散装置において、
前記本体の側面の周縁に、排気口をなす隙間が形成され、
前記本体の側面において前記蓋との間に吸気口をなす隙間が構成されていることを特徴とする薬剤拡散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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