説明

薬剤揮散装置

【課題】薬剤揮散装置において、物流時や廃棄時に体積がかさばらない容器で揮散性薬剤成分を含む粒状のゲル状もしくは固体状薬剤ビーズを供給できるようにする。
【解決手段】薬剤揮散装置1は、揮散室10と、揮散室10のビーズ受け入れ口15にビーズ出口22が接続されるビーズ供給容器20により構成される。ビーズ供給容器20はラミネートフィルム製パウチからなる。ビーズ受け入れ口15は上を向き、倒立状態にしたビーズ供給容器20のビーズ出口22がビーズ受け入れ口15に差し込まれる。ビーズ供給容器20には揮散性薬剤成分を含む粒状のゲル状もしくは固体状薬剤ビーズ27が多数収容されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に室内で使用する薬剤揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香剤や消臭剤のような薬剤を揮散し徐放する装置として、これまでにも様々なタイプのものが提案されている。例えば特許文献1には、倒立型の容器に入れた液体芳香剤を液供給小孔を通じ揮散紙に供給し、揮散紙より空中に芳香成分を徐放する装置が記載されている。特許文献2には、揮散性薬剤を含むゲル状の芳香剤、消臭剤を倒立型の薬剤収容容器に入れ、ゲルの下端を薬剤収容容器より露出させて空中に薬剤成分を揮散する装置が記載されている。
【特許文献1】特開平9−253185号公報
【特許文献2】特開2006−110142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
芳香剤や消臭剤のような薬剤の容器としては、特許文献1、2記載の例でもそうであるが、合成樹脂の成型品(多くの場合はブロー成型品)が用いられており、嵩高であるため、廃棄物としての処理が厄介である他、物流コストの押し上げ要因ともなるという問題があった。
【0004】
また特許文献1記載のもののように、液体状の揮散性薬剤を入れた容器を倒立させる方式では、容器、多孔質材の揮散体、樹脂射出成型物等からなる供給体、台座、カバー、容器を支持するキャップといった具合に多くの部品を要し、組立工数も増え、コスト高となる。部品の管理も煩雑である。
【0005】
特許文献2記載のもののように、ゲル状の揮散性薬剤を入れた容器を倒立させる方式では、時間が経過して揮散性薬剤の露出部が収縮・減少するに伴い、容器内の揮散性薬剤が自重で降下して新たな箇所が露出する。しかしながら揮散性薬剤は単一のゲルであり、薬剤の揮散によるゲルの収縮は気温や気流によって左右されるところから、自重で降下して新たな箇所が露出するという動きが一定レートで生じることはなく、全使用期間を通じて揮散効果を一定に保つことは難しい。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、揮散性薬剤の形態を、粒状のゲル状もしくは固体状薬剤ビーズとすることにより、薬剤の安定供給・自動供給を可能とするという倒立型容器のメリットを享受しつつ、揮散性薬剤が液体状あるいは単一のゲル状である場合の不具合を克服したものである。そして、組立が簡単で、かつ、全使用期間を通じて一定の薬剤揮散効果が得られる薬剤揮散装置を提供し、同時に、物流時や廃棄時に体積がかさばらない容器で揮散性薬剤を供給できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明では、揮散性薬剤成分を含む粒状のゲル状もしくは固体状薬剤ビーズを収容したビーズ供給容器と、このビーズ供給容器のビーズ出口が接続されるビーズ受け入れ口及び前記揮散性薬剤成分を揮散させる通風口を有する揮散室とを備えた薬剤揮散装置において、前記ビーズ供給容器がラミネートフィルム製パウチからなることを特徴としている。
【0008】
この構成によると、揮散性薬剤成分を粒状のゲル状もしくは固体状薬剤ビーズの形態で供給するものであるから、液体や単一のゲルの形で供給するものに比べ、取り扱いが容易で、揮散分の補充もスムーズに行える。従って、全使用期間を通じて一定の薬剤揮散効果を得ることができる。揮散装置の組立も簡単になる。さらに、ビーズ供給容器がパウチ形態であるから、カートンケースに詰め込みやすく、物流コストの切り下げが可能となる。また薬剤ビーズを使い切って廃棄するときはつぶすか丸めるかしてビーズ供給容器の体積を縮小できるので、扱いが楽である。
【0009】
本発明は、上記構成の薬剤揮散装置において、前記ビーズ受け入れ口は上を向き、倒立状態にした前記ビーズ供給容器のビーズ出口が前記ビーズ受け入れ口に差し込まれることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、薬剤ビーズをスムーズに揮散室に移すことができ、またビーズ供給容器の薬剤ビーズを残さず使い切ることが容易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、薬剤揮散装置において、薬剤ビーズを供給する容器をパウチ形態としたことにより、カートンケースに詰め込みやすく、廃棄するときはつぶすか丸めるかして体積を縮小できるなどのハンドリング上のメリットを享受できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る薬剤揮散装置の第1実施形態を図1、2に基づき説明する。図1はビーズ供給容器をセットした薬剤揮散装置の模型的垂直断面図、図2はビーズ供給容器の斜視図である。
【0013】
薬剤揮散装置1は、揮散室10及びこれに接続されるビーズ供給容器20により構成される。揮散室10を構成するのは平面形状円形の受け皿11と、それに覆い被さるドーム形状の蓋12である。受け皿11の縁からは環状周壁13が立ち上がる。環状周壁13は上部が少しすぼまった形になっており、そのすぼまり箇所に蓋12の下端が外側から被さって印籠嵌合を形成している。
【0014】
蓋12には周囲全周にわたり格子状の通風口14が形成されている。通風口14は揮散性薬剤成分を揮散させるためのものであり、それを構成する個々の開口は、後述する薬剤ビーズが通り抜けられない大きさとなっている。
【0015】
蓋12の中心にはビーズ受け入れ口15が形成される。ビーズ受け入れ口15は真上に向かって突き出した筒状の部分であり、上端の内面には雌ねじ部16が形成されている。
【0016】
ビーズ供給容器20を構成するのはラミネートフィルム製のパウチ21である。パウチ21は、アルミニウム箔や合成樹脂層を数層積層してガスバリア性を高めたラミネートフィルムを素材とするものであり、図2に示すマチ付きの形状に仕上げられる。パウチ21の上部中央、内容物の出入り口となる部分には、合成樹脂の射出成型品である筒状のビーズ出口22が挿入され、パウチ21とビーズ出口22は気密に溶着される。ビーズ出口22には、外面の中ほどに外フランジ23が形成され、先端には雄ねじ部24が形成されている。
【0017】
外フランジ23はパウチ21へのビーズ出口22の挿入深さを規制し、またパウチ21を持ち上げる際のつまみともなる。雄ねじ部24にはねじキャップ25(図2参照)が螺合する。ねじキャップ25を取り外した後の雄ねじ部24は、ビーズ受け入れ口15の雌ねじ部16に螺合される。
【0018】
パウチ21はビーズ出口22のある側及びその反対側にシール部を有している。ビーズ出口22の反対側のシール部には、中央に貫通穴26が形成される。
【0019】
ビーズ供給容器20には揮散性薬剤成分を含む粒状のゲル状もしくは固体状の薬剤ビーズ27が多数充填される。薬剤ビーズ27は、芳香剤、消臭剤、防虫剤等の揮発性薬剤成分を含むゲルや粉末原料を小球体の形にしたものである。ビーズ供給容器20に所定量の薬剤ビーズ27を充填した後、ビーズ出口22の先端を図示しないシール部材でシールし、雄ねじ部24にねじキャップ25を螺合し、最後に全体をシュリンク包装して完成形態とする。
【0020】
未使用のビーズ供給容器20を使い始めるときは、シュリンク包装を剥がし、ねじキャップ25を取り外し、前記図示しないシール部材をビーズ出口22から剥がした上で、ビーズ供給容器20を倒立させ、ビーズ出口22をビーズ受け入れ口15に差し込む。そして雄ねじ部24を雌ねじ部16に螺合させる。するとビーズ出口22を通じて揮散室10に薬剤ビーズ27が流れ込む。揮散室10に入った薬剤ビーズ27は空中に薬剤成分を揮散する。薬剤成分を含んだ空気は通風口14から流れ出し、室内に拡散される。
【0021】
薬剤ビーズ27は、薬剤成分が揮散するにつれて体積が小さくなって行く。揮散室10内の薬剤ビーズ27の量的減少は、新たな薬剤ビーズ27がビーズ供給容器20から降りてくることにより補填される。薬剤ビーズ27の降下がスムーズに進行するよう、実験を通じ薬剤ビーズ27の直径とビーズ出口22の口径との最適関係を求めるのが良い。
【0022】
ビーズ供給容器20の中の薬剤ビーズ27を使い切ったら、使用済みのビーズ供給容器20を取り外して未使用のものに交換する。使用済みのビーズ供給容器20はつぶすか丸めるかして体積を小さくした上で廃棄することができる。
【0023】
本発明の第2実施形態を図3に示す。図3は図1と同様の模型的垂直断面図である。
【0024】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、ビーズ出口22とビーズ受け入れ口15の結合の仕方である。すなわち第1実施形態ではねじ結合であったが、第2実施形態では弾性的嵌合による結合とした。これを実現するため、ビーズ出口22の先端に高さの低い外フランジ28を形成し、ビーズ受け入れ口15の内面には外フランジ27を弾性的に係合させる溝29を形成した。
【0025】
本発明の第3実施形態を図4に示す。図4は図1と同様の模型的垂直断面図である。
【0026】
第3実施形態が第1実施形態と異なる点は、ビーズ供給容器20を最後まで倒れないように倒立状態で吊り下げ支持するパウチスタンド30を組み合わせたことである。パウチスタンド30は、揮散室10を載置する台座31と、台座31の側面から水平に突き出した後、上方に直角に曲がり、所定高さで再び水平に曲がる、コ字形の支持ロッド32により構成される。支持ロッド32の先端はフック部33となっており、貫通孔26をフック部33に嵌合させてビーズ供給容器20を吊り下げる。
【0027】
以上本発明の各実施形態につき説明したが、この他、発明の主旨から逸脱しない範囲で種々の改変を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、薬剤揮散装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ビーズ供給容器をセットした薬剤揮散装置の模型的垂直断面図
【図2】ビーズ供給容器の斜視図
【図3】第2実施形態に係る、ビーズ供給容器をセットした薬剤揮散装置の模型的垂直断面図
【図4】第3実施形態に係る、ビーズ供給容器をセットした薬剤揮散装置の模型的垂直断面図
【符号の説明】
【0030】
1 薬剤揮散装置
10 揮散室
11 受け皿
12 蓋
14 通風口
15 ビーズ受け入れ口
20 ビーズ供給容器
21 パウチ
22 ビーズ出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散性薬剤成分を含む粒状のゲル状もしくは固体状薬剤ビーズを収容したビーズ供給容器と、このビーズ供給容器のビーズ出口が接続されるビーズ受け入れ口及び前記揮散性薬剤成分を揮散させる通風口を有する揮散室とを備えた薬剤揮散装置において、
前記ビーズ供給容器がラミネートフィルム製パウチからなることを特徴とする薬剤揮散装置。
【請求項2】
前記ビーズ受け入れ口は上を向き、倒立状態にした前記ビーズ供給容器のビーズ出口が前記ビーズ受け入れ口に差し込まれることを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−82248(P2009−82248A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252866(P2007−252866)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】