説明

薬剤散布装置

【課題】薬剤供給対象領域にバラツキの少ない状態で薬剤を散布供給することが可能となる薬剤散布装置を提供する。
【解決手段】貯留部24に貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段25と、その繰出し手段25から繰り出されて案内通路26を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式拡散手段27とが備えられ、回転式拡散手段27が、横向き姿勢の受止め面51Aを備えるとともに縦向きの回転軸芯Y周りで駆動回転される受止め体51と、受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52とを備えて構成され、受止め面51Aにおける外端縁よりも回転軸芯Y側に寄った箇所に、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qが形成され、案内通路26が受止め体51における羽根無し領域Qに薬剤を案内するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部に貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段と、その繰出し手段から繰り出されて案内通路を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式拡散手段とが備えられ、前記回転式拡散手段が、横向き姿勢の受止め面を備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体と、その受止め体の前記受止め面に立設された拡散用羽根体とを備えて構成されている薬剤散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記薬剤散布装置において、従来では、例えば特許文献1に記載されるように、円板状に形成される受止め体の受止め面に複数の拡散用羽根体が立設される状態で備えられ、案内通路が拡散用羽根体に対応する箇所に薬剤を案内するように形成されたものがあった。つまり、受止め体が回転するに伴って拡散用羽根体が通過する箇所に、案内通路を通して薬剤が落下供給されるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−252046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、受止め体が回転するに伴って拡散用羽根体が通過する箇所に薬剤を落下供給するように構成されているから、案内通路から落下供給された薬剤は、受止め体の受止め面に落下して受止められるものに比べて、回転している拡散用羽根体によってそのまま打撃を受けて直接外方に拡散される割合が多くなる。
【0005】
従って、上記従来構成によれば、回転している拡散用羽根体によって薬剤を拡散させる機能を発揮することができるものの、案内通路から落下供給されて拡散用羽根体によってそのまま打撃を受けて放出される薬剤は常に同じ方向に放出されるので、特定の方向に向けて放出される薬剤の割合が多くなり、その他の方向には放出される薬剤の割合が少なくなって薬剤の放出方向に偏りが生じて、圃場の薬剤供給対象領域内での薬剤の散布量のバラツキが大きくなるという不利があった。
【0006】
本発明の目的は、薬剤供給対象領域にバラツキの少ない状態で薬剤を散布供給することが可能となる薬剤散布装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る薬剤散布装置は、貯留部に貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段と、その繰出し手段から繰り出されて案内通路を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式拡散手段とが備えられ、前記回転式拡散手段が、横向き姿勢の受止め面を備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体と、その受止め体の前記受止め面に立設された拡散用羽根体とを備えて構成されているものであって、その第1特徴構成は、前記受止め体の前記受止め面における外端縁よりも前記回転軸芯側に寄った箇所に、周方向全域にわたって前記拡散用羽根体が存在しない羽根無し領域が形成され、前記案内通路が前記受止め体における前記羽根無し領域に薬剤を案内するように形成されている点にある。
【0008】
第1特徴構成によれば、繰出し手段から繰り出された薬剤は案内通路を通して回転式拡散手段により案内されるが、そのとき、薬剤は受止め体の受止め面における羽根無し領域に案内されて落下供給される。
【0009】
前記羽根無し領域は周方向全域にわたって拡散用羽根体が存在しないものであるから、受止め体上に落下供給される薬剤は、落下途中にて回転する拡散用羽根体によって打撃を受けてそのまま外方に向けて拡散放出されることがなく、受止め体の受止め面にて一旦受止められることになる。
【0010】
又、前記羽根無し領域は、受止め体の受止め面における外端縁よりも回転軸芯側に寄った箇所に形成されるものであるから、受止め面上に一旦落下した薬剤は、受止め体の回転に伴って均される状態で周方向に移動するとともに、受止め体の回転に伴う遠心力によって径方向外方側に移動するように案内される。そして、このように周方向に均された状態で径方向外方側に移動する薬剤は、その羽根無し領域よりも径方向外方側に位置する拡散用羽根体によって拡散放出される。
【0011】
つまり、受止め体にて落下供給された薬剤がその落下供給された箇所から周方向に均された状態で拡散用羽根体によって外方に向けて拡散放出されるから、特定の方向にのみ多くの薬剤が放出されてその他の方向へは薬剤の放出量が少なくなるといった不利がなく、周方向に極力均等に分散させた状態で薬剤供給対象領域に薬剤を散布することができる。
【0012】
従って、薬剤供給対象領域にバラツキの少ない状態で薬剤を散布供給することが可能となる薬剤散布装置を提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記拡散用羽根体が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ前記受止め体における前記回転軸芯から径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられ、前記受止め体における前記回転軸芯を含むその周囲の領域が前記羽根無し領域として形成されている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、受止め体における羽根無し領域として形成された回転軸芯を含むその周囲の領域に薬剤が落下供給され、周方向に均された状態で径方向外方側に移動する。そして、複数の拡散用羽根体によって外方に向けて拡散放出されるが、拡散用羽根体は、周方向に沿って分散配置される状態で且つ回転軸芯から径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられるから、羽根無し領域にて周方向に分散された状態で径方向外方側に移動する薬剤が、周方向に沿って分散配置された複数の拡散用羽根体の夫々によって周方向に分散された状態のまま外方に拡散放出されることになる。
【0015】
従って、周方向に分散させて偏りの少ない状態で拡散用羽根体によって薬剤を放出させることができ、薬剤供給対象領域にバラツキの少ない状態で薬剤を散布供給することを的確に行えるものとなる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記受止め面が前記回転軸芯側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている点にある。
【0017】
第3特徴構成によれば、受止め面が回転軸芯側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されているから、受止め面上に落下した薬剤は、傾斜面による案内作用により回転軸芯側に向けて移動するような力、すなわち、受止め体の回転に伴う遠心力とは反対方向の力が作用する。つまり、落下した薬剤は中凹み状の傾斜面により径方向内方側に向けて移動するような案内作用があるから、受止め面に落下した薬剤に作用する径方向外方側に向かう遠心力を弱めることになり、受止め面に落下した直後は拡散用羽根体側に移動し難いものとなって、受止め面に落下した薬剤を周方向へ均す機能を向上させることができる。
【0018】
その結果、受止め面に落下した薬剤を周方向に分散させることをより一層的確に行い易いものになって、薬剤供給対象領域にバラツキの少ない状態で薬剤を散布供給することが可能となる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記案内通路が、前記繰出し手段側の開口面積を出口側の開口面積より大にする形態で形成されている点にある。
【0020】
第4特徴構成によれば、案内通路の繰出し手段側の開口面積が出口側の開口面積より大であるから、出口側の開口面積を小さくして薬剤を受止め体における羽根無し領域に的確に落下供給することができるようにしながら、繰出し手段側の開口面積を大きくすることで、繰出し手段からの薬剤の繰出し供給を詰まりなく円滑に行えるようにすることができる。
【0021】
又、繰出し手段側の開口面積を大きくすることで、例えば、繰出し手段として、シャッター式の繰出し手段を備える場合に、繰出し手段における薬剤繰出し用の開口を、その開口面積を出口側の開口面積に対応して充分に大きなものにしながらも、開閉操作が行い易い横長状にすることができる等、繰出し手段の構成上の制約を受け難いものにできる利点がある。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記受止め体の下方が開放された状態となっている点にある。
【0023】
第5特徴構成によれば、受止め体の下方が開放されているので、泥土や塵埃の付着堆積により受止め体の回転が阻害される等のおそれがなく、円滑な作動を継続して行えるものとなる。
【0024】
本発明の第6特徴構成は、第1特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記受止め体を縦軸芯周りで回転駆動する回転操作用のアクチュエータが、前記受止め体の上方に位置する状態で備えられ、前記繰出し手段に備えられた繰出し操作用のアクチュエータが、前記回転操作用のアクチュエータの横側箇所に位置する状態で備えられている点にある。
【0025】
第6特徴構成によれば、受止め体は、回転操作用のアクチュエータによって縦軸芯周りで回転駆動するように操作され、繰出し手段は、繰出し操作用のアクチュエータによって薬剤を設定量ずつ繰り出すように操作される。
【0026】
回転操作用のアクチュエータと繰出し操作用のアクチュエータとを上下方向に位置を異ならせて備えるようにすると、装置全体の上下方向の寸法が大型化する不利があるが、第6特徴構成によれば、回転操作用のアクチュエータが受止め体の上方に位置する状態で備えられ、繰出し操作用のアクチュエータが回転操作用のアクチュエータの横側箇所に位置する状態で備えられているから、装置全体の上下方向の寸法を小形化してコンパクト化を図ることができる。
【0027】
本発明の第7特徴構成は、第1特徴構成〜第6特徴構成のいずれかに加えて、前記受止め体における周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁が備えられ、且つ、この規制用縦壁の両側部の夫々に、前記受止め体における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する調整板が備えられ、前記各調整板のうち前記規制用縦壁の回転方向上手側端部に備えられる調整板が他方の調整板よりも長尺に形成されている点にある。
【0028】
第7特徴構成によれば、受止め体における周方向の一部の領域では規制用縦壁によって薬剤が外方に拡散放出されることが規制され、受止め体における周方向の他の領域から拡散用羽根体によって薬剤が外方に拡散放出される。
【0029】
そして、規制用縦壁の両側部の夫々に備えられた調整板により外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向が調整されるが、規制用縦壁の回転方向上手側端部に備えられる調整板が他方の調整板よりも長尺に形成されているから、前記他の領域から放出される領域(薬剤供給対象領域)において偏りの少ない状態で薬剤を放出させることができる。
【0030】
説明を加えると、例えば、規制用縦壁の両側部の夫々に備えられた調整板が長さが同じであれば、縦軸芯周りで回転される拡散用羽根体によって薬剤が拡散放出される場合、拡散用羽根体の回転軌跡に対する接線方向に薬剤が放出されるので、前記他の領域内では、周方向上手側の外方箇所よりも周方向下手側の外方箇所に多くの薬剤が偏った状態で拡散放出され易いものとなる。
それに対して、第7特徴構成によれば、規制用縦壁の回転方向上手側端部に備えられる調整板が他方の調整板よりも長尺に形成されているから、多めに偏った状態で拡散放出され易い前記他の領域の周方向下手側、言い換えると、規制用縦壁の回転方向上手側端部に備えられる調整板が作用する箇所では、長尺状の調整板により放出される薬剤を受止めて多めに偏った状態で拡散放出されることを抑制することができ、薬剤の偏りをできるだけ解消して偏りの少ない状態にすることが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】薬剤散布装置の背面図である。
【図4】薬剤散布装置の縦断側面図である。
【図5】薬剤散布装置の底面図である。
【図6】拡散放出機構の横断平面図である。
【図7】繰出し機構の縦断側面図である。
【図8】繰出し機構の横断平面図である。
【図9】繰出し機構の縦断正面図である。
【図10】繰出し機構の分解斜視図である。
【図11】薬剤散布装置の電気回路図である。
【図12】別実施形態の繰出し機構の縦断側面図である。
【図13】(a)は別実施形態の繰出し機構の横断平面図、(b)は繰出し機構の分解斜視図である。
【図14】別実施形態の繰出し機構の縦断側面図である。
【図15】(a)は別実施形態の繰出し機構の横断平面図、(b)は繰出し機構の分解斜視図である。
【図16】別実施形態の拡散放出機構の横断平面図である。
【図17】別実施形態の受止め体の平面図である。
【図18】別実施形態の受止め体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて、本発明に係る薬剤散布装置を乗用型田植機に装備した場合について説明する。
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付装置12が連結され、その苗植付装置12の後方に、例えば除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0033】
図1及び図2に示すように、苗植付装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、2個の伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18がクランク機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0034】
そして、フィードケース14に伝達される動力が伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0035】
次に、薬剤散布装置13について説明する。
図1〜図3に示すように、薬剤散布装置13は、苗植付け状態において田面から設定距離上方に位置する状態で、2個の伝動ケース15から固定立設した支柱23に支持される構成となっている。そして、図4及び図5に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー24と、その貯留ホッパー24の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための電気制御ユニット28とを備えて構成されている。
【0036】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。図5に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0037】
図7〜図10に示すように、繰出し機構25は、薬剤通過用の開口31が形成された金属製の開口形成板32と、薬剤通過用の開口31を閉塞する閉状態と薬剤通過用の開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0038】
開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された薬剤通過用の開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が薬剤通過用の開口31を開放する位置までスライドすると、薬剤通過用の開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、薬剤通過用の開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
この構成では、薬剤通過用の開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0039】
薬剤通過用の開口31は、図10に示すように、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動方向に沿う方向での開口幅L1が移動方向と直交する方向での開口幅L2よりも小になるように横長の長方形状に形成され、開口面積を充分大きくしながらも、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動操作量を短くすることができるようにしている。
【0040】
開口形成板32には、薬剤通過用の開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。
【0041】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0042】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34の操作ロッド37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図7及び図10に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0043】
図4に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するためのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ41を収納するためのモータ収納室42が形成されている。
ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、薬剤通過用の開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0044】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を拡散放出機構27に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図7参照。)。
【0045】
シャッター部材33は、ソレノイド34に内装されるコイルバネ49が座金50を介して連結ピン38に作用することにより閉位置(薬剤通過用の開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ49の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(薬剤通過用の開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0046】
図4及び図6に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体51と、その受止め体51の受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41とを備えて構成されている。
【0047】
受止め体51は縦軸芯周りで回転する状態で板面が横向き姿勢となるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられている。従って、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されている。
【0048】
具体的には、図6に示すように、拡散用羽根体52は、周方向に沿って約60度ずつ等間隔をあけて分散配置される状態で6個備えられており、各拡散用羽根体52は、受止め体51の半径の約半分の距離に相当する横幅を有し、且つ、横幅の略半分の距離に相当する高さを有する状態で、受止め体51の径方向外方側に寄った位置に立設される構成となっている。
【0049】
拡散用羽根体52の径方向での内端縁は径方向外方側ほど高くなる傾斜縁52Aに形成されている。拡散用羽根体52の上端縁は水平に形成され、拡散用羽根体52の上下高さが受止め体51の受止め面51Aの傾斜の分、径方向外方側ほど低くなるように形成されている。
【0050】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51には、電動モータ41の駆動軸53に外嵌する筒軸部80も一体形成されており、筒軸部80は、電動モータ41の駆動軸53に外嵌装着されてそれに横向きに装着されたビスbiを駆動軸53に圧接して受止め体51が駆動軸53と一体回転するように連結されている。
【0051】
図4に示すように、ケーシング29により一体形成された筒部30により構成される案内通路26が、受止め体51における羽根無し領域Qに薬剤を案内するように形成されている。
説明を加えると、上述したように、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されるが、図6に示すように、案内通路26の下端の出口54が平面視で羽根無し領域Qに対応する位置に設けられている。さらに説明すると、案内通路26の下端の出口54は、羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側に位置する箇所に対応する位置に設けられている。
【0052】
羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側箇所に薬剤を落下供給することで、落下した薬剤を周方向に均すようにしながら、極力迅速に拡散用羽根体52による拡散放出作用を行えるようにしている。ちなみに、回転軸芯Yに近い位置に落下することもできるが、そうすると、薬剤を周方向に均す機能は発揮し易いが、滞留時間が長くなって拡散用羽根体52による拡散放出作用が遅れて薬剤の拡散放出タイミングが遅れるおそれがある。
【0053】
図4に示すように、円板形状の受止め体51は中央部が下向きに突出する形状となっており、受止め体51の上部側の位置する受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている。このように構成することで薬剤を周方向に均す機能をより発揮させ易いようにしている。
【0054】
案内通路26が、繰出し機構25側の開口面積を出口54側の開口面積より大にする形態で形成されている。説明を加えると、この案内通路26は、平面視で横断面形状が略四角形状に形成されており、この案内通路26を形成する4つの内面のうち径方向外方側に位置する内面55(図4参照)の上下途中箇所に、出口54側に向かうほど径方向に沿う方向での案内通路26の幅が順次幅狭になるように傾斜面56が形成されている。但し、受止め体51の径方向内方側に位置する内面57は上下方向に沿って平坦面に形成されている。
【0055】
このような構成により、繰出し機構25から繰り出されて下方に案内される薬剤は、傾斜面56により径方向内方側に向けて流下案内されるので、拡散用羽根体52の通過箇所に向けて案内されることを回避して、羽根無し領域Qに落下供給させ易いものとなる。
【0056】
受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41が、受止め体51の上方に位置する状態で備えられ、繰出し機構25に備えられたソレノイド34が、電動モータ41の横側箇所に位置する状態で備えられている。このように電動モータ41とソレノイド34とを横方向に並ぶ状態で配備することで、薬剤散布装置13の上下方向の外形寸法をコンパクト化することができる。
【0057】
そして、受止め体51における上方側には上部側を仕切る天井壁部58Aが設けられ、又、受止め体51の外周側には、周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁58Bが備えられ、且つ、この規制用縦壁58Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する拡散方向調整板59,60が備えられている。
【0058】
拡散方向調整板59,60は、ボルトBoにより天井壁部58Aに取り付けられており、ボルトBoを緩めて、左右回動位置を変更させて再度締め付けることで薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整することが可能なように構成されている。
薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整するにあたって、ボルトBoの緩み操作により位置調整する構成に代えて、拡散方向調整板59,60を、天井壁部58Aに対して縦軸芯周りで回動自在に且つ摩擦により位置保持する状態で取り付け、手動操作にて摩擦保持力に抗して位置変更可能に構成するものでもよい。
【0059】
規制用縦壁58Bは、ケーシング29に一体成形される状態で設けられ、受止め体51の外周縁の近傍に、周方向に沿って約半周にわたり受止め体51の外周部を覆うように、所定の上下幅を有する状態で且つ外周縁に沿うように平面視で半円弧状に形成されている。
【0060】
又、規制用縦壁58Bの両側端部に、規制用縦壁58Bの上下幅と略同じ上下幅を有し、且つ、前後方向に延びる状態で拡散方向調整板59,60が取り付けられている。この調整板59,60は、規制用縦壁58Bの内面に連なる状態で設けられ、受止め体51の回転に伴って遠心力が作用する薬剤を案内して拡散放出方向を調整することができるように構成されている。ちなみに、図6に示すものでは、左右の拡散方向調整板59,60の長さは略同じ長さに設定されている。
【0061】
この乗用型田植機の走行機体3には充電式のバッテリーが搭載されておらず、エンジン4によって駆動される発電機61(例えば、前照灯等を点灯させるために設けられる発電機等)にて発電された電力が薬剤散布装置13における電気制御ユニット28に供給されるように構成されている。ちなみに、バッテリーが搭載されていないので、エンジン4はリコイル式の始動装置(図示せず)により始動される構成となっている。
【0062】
図11に示すように、電気制御ユニット28は、電源入切スイッチ62を介して供給される発電機61からの交流電力を整流回路63により整流したのち第1レギュレータ回路64により直流12Vに電圧調整して、その直流12Vの電力を電動モータ41及びソレノイド34の駆動用の電力として利用するように構成され、さらに、第1レギュレータ回路64の出力を第2レギュレータ回路65により直流5Vに電圧調整して制御手段としての制御装置66の駆動用電力として利用するように回路が構成されている。尚、直流12Vの電力は、制御装置66によりオンオフ制御されるスイッチングトランジスタ67を介してソレノイド34に供給されるように構成されている。
【0063】
又、圃場における単位面積当たりの薬剤の散布量をおおまかに大側の調整範囲と小側の調整範囲との2段に切り換える散布量切換スイッチ68と、各段において散布量を微調節可能なポテンショメータ式の散布量調整器69とが備えられ、これらの出力が制御装置66に入力され、制御装置66が、散布量切換スイッチ68及び散布量調整器69の出力に基づいてシャッター部材33を開状態に切り換える開作動用の設定時間を設定するように構成されている。ちなみに、開作動用の設定時間は、予め設定されている最大時間を越えない範囲で散布量切換スイッチ68と散布量調整器69とにより設定される散布量に相当する時間が設定される。
【0064】
第1レギュレータ回路64により出力される直流12Vの端子とソレノイド34の入力端子とを、スイッチングトランジスタ67を迂回して直接接続する状態に切り換えて強制的にソレノイド34を開作動させるための強制排出スイッチ81が備えられている。この強制排出スイッチ81は押し操作によりオン状態となり、手を離すとオフ状態に戻るように復帰付勢される構成となっている。
【0065】
図5に示すように、電源入切スイッチ62、散布量切換スイッチ68、散布量調整器69、及び、強制排出スイッチ81は夫々、ケーシング29の外部から手動操作可能に設けられている。
【0066】
そして、苗植付装置12における縦送り装置21が送り作動したことを検出する縦送り検出センサ82が備えられ、この縦送り検出センサ82の出力が制御装置66に入力されており、制御装置66は、縦送り検出センサ82にて検出される縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを検出する毎に、散布量切換スイッチ68と散布量調整器69とにより設定される散布量に相当する設定時間が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換え、その後閉状態に戻すようにソレノイド34の作動を制御するように構成されている。尚、電動モータ41は所定の回転速度で受止め体51を回転駆動する。
【0067】
縦送り装置21の送り作動が設定回数行われると、走行機体3が設定距離走行することになるので、上述したような散布動作を実行することで、乗用型田植機が苗植付け作動を実行しながら走行を行っているときに、走行機体3が設定距離走行する毎に、4条分の既植苗が存在する領域(薬剤供給対象領域)に薬剤を散布供給することができ、圃場の単位面積当たりに目標値(設定量)の薬剤を供給することができるのである。
【0068】
圃場内で苗植付け作業が終了したのちに、貯留ホッパー24に薬剤が残っているような場合には、貯留ホッパー24に備えられた合成樹脂材からなる蓋体85を取り外して、排出口86を開放した薬剤を排出させることができるが、排出口86から排出することができない貯留ホッパー24の底部や薬剤散布装置13の内部に残っている薬剤を排出させるときは、強制排出スイッチ70をオン状態にしてソレノイド34を開状態に切り換えることにより薬剤を排出することができる。このとき、受止め体51は回転しているが、落下する薬剤を受止め体51を覆うように設けられた図示しない回収袋により回収することになる。
【0069】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、開口形成板32とシャッター部材33とにより、薬剤通過用の開口31を開閉させる構成としたが、このような構成に代えて、次の〈a〉〈b〉に記載するような構成としてもよい。
【0070】
〈a〉図12及び図13に示すように、薬剤通過用の開口31が形成された開口形成板32、ソレノイド34によってスライド移動自在なシャッター部材33、このシャッター部材33を下方側から弾性的に押し操作する板バネ式の押圧部材70の夫々を上下に重ね合わせた三層構造としてもよい。
【0071】
この構成では、開口形成板32と押圧部材70は、ケーシング29の筒部30の内壁に水平方向に嵌め込む構造となっており、押圧部材70は、薬剤供給用の開口31を迂回するとともに、シャッター部材33を上方に押圧する押圧片71が中央に形成される構成となっている。そして、シャッター部材33における開口遮蔽箇所33Aの先端部には、スライド移動方向と直交する方向に対して傾斜する状態で傾斜面33Bが形成されている。
【0072】
このように構成することで、シャッター部材33が開状態から閉状態にスライド移動するときに、シャッター部材33の先端部により押されて、シャッター部材33の先端部、開口形成板32、押圧部材70、及び、筒部30の内壁で囲まれた箇所に挟み込まれた薬剤を、前記傾斜面33Bによりスライド移動方向と直交する方向に押し出して、その箇所で堆積するのを防止するようにしている。
【0073】
〈b〉図14及び図15に示すように、薬剤通過用の開口31が形成された開口形成板32と、ソレノイド34によってスライド移動自在なシャッター部材33と、このシャッター部材33を下方側から弾性的に押し操作するように小型の押圧片72が一対形成された板バネ式の押圧部材70とを上下に重ね合わせた三層構造とする点は、上記〈a〉と同じであるが、開口形成板32は、シャッター板33のスライド方向の両側部にケーシング29の端縁に係止する係止片32eが形成され、スライド方向への連れ動きを規制してある。
【0074】
そして、この構成では、シャッター部材33が閉状態になったときに、シャッター部材33と筒部30の内壁との間に隙間Wが形成されて、それらの間に薬剤が挟み込まれるのを防止するようにしている。
【0075】
(2)上記実施形態では、規制用縦壁58Bの両側部に備えられる左右の拡散方向調整板59,60の長さが略同じ長さに設定される構成としたが、このような構成に代えて、図16に示すように、左右の拡散方向調整板59,60のうち規制用縦壁58Bの回転方向上手側端部に備えられる拡散方向調整板60を他方の拡散方向調整板59よりも長尺に形成するように構成してもよい。図16に示す例では、受止め体51が反時計周りで駆動回転されるようになっており、左右の調整板59,60のうち左側に位置する調整板60が右側に位置する調整板59より長尺状に形成されている。
例えば左右の拡散方向調整板が同じ長さであれば、反時計周りで駆動回転される拡散用羽根体52によって左側の方が右側より多くの薬剤が外方に放出され易く偏りが発生するおそれがあるが、左側に位置する拡散方向調整板60を長尺にすることで、左側に放出される薬剤の量を少なめに抑制して薬剤の偏りを少なくすることができる。
【0076】
(3)上記実施形態では、受止め体51が平面視で一定の外径の円径の板状に形成されていたが、受止め体51の形状を図17に示すように、周方向に沿って受止め面51Aの外径が順次異なるように形成するものでもよい。このように構成することで、薬剤が外方に放出されるときの下方に落下するタイミングを周方向に異ならせることができ、薬剤を走行機体3の前後方向に対しても極力均等にさせる状態で散布させることが可能となる。
又、散布面積を異ならせるために、圃場条件が異なる毎に、受止め体51の外形が異なるものを用いるようにしてもよい。
【0077】
(4)上記実施形態では、複数の拡散用羽根体52が夫々径方向に沿う状態で備えられる構成としたが、薬剤散布方向や散布面積を異ならせるために、複数の拡散用羽根体52の形状を異ならせる構成としてもよい。例えば、図18に示すように、複数の拡散用羽根体52の取り付け姿勢を受止め体51の径方向に対して異なる傾斜角で回転方向下手側に傾斜させる構成としてもよい。又、このような構成に代えて、あるいは、このような構成に加えて、複数の拡散用羽根体52の径方向の幅を夫々異ならせるようにしてもよい。
【0078】
(5)上記実施形態では、受止め面51Aが回転軸芯側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されているものを示したが、受止め面51Aが平坦面に形成されるものでもよく、又、受止め面51Aにおける複数の拡散用羽根体52が形成される領域が中凹み状の傾斜面に形成され、羽根無し領域Qが平坦面に形成されるものや、受止め面51Aにおける複数の拡散用羽根体52が形成される領域が平坦面に形成され、羽根無し領域Qが中凹み状の傾斜面に形成されるものでもよい。
【0079】
(6)上記実施形態では、複数の拡散用羽根体52が同一形状であり6個備える構成としたが、拡散用羽根体52の形状や数量は異なるものであってもよく、例えば、拡散用羽根体52の形状を四角形や三角形等の形状としたり、拡散用羽根体52の数量を5個以下、又は7個以上にしてもよい。
【0080】
(7)上記実施形態では、案内通路26が、繰出し機構25側の開口面積を出口側の開口面積より大にする形態で形成されているものを示したが、繰出し機構25側の開口面積を出口側の開口面積とを同じにしてもよく、繰出し機構25側の開口面積を出口側の開口面積より小にしてもよい。
又、上記実施形態では、案内通路26が、薬剤を落下供給するように縦向きに形成されるものを示したが、例えば、斜め方向に沿って薬剤を滑らせて供給するような形状の案内通路であってもよい。
【0081】
(8)上記実施形態では、電動モータ41が受止め体51の上方に位置する状態で備えられ、ソレノイド34が電動モータ41の横側箇所に位置する状態で備えられているものを示したが、電動モータ41とソレノイド34とが上下方向に位置をずらせて配備されるものでもよい。
【0082】
(9)上記実施形態では、繰出し機構25としてソレノイド34によりスライド操作板を往復移動操作する構成としたが、このような構成に代えて、例えば、植付アーム18の上下揺動運転を利用して、植付アーム18と連動ロッド(図示せず)を介して連動連係される往復操作機構によりスライド操作板を往復移動操作する構成とする等、種々の構成の繰出し機構25を用いることができる。
【0083】
(10)上記実施形態では、縦送り装置21の送り作動が設定回数行われたことを検出する毎に、散布量切換スイッチ68と散布量調整器69とにより設定される散布量に相当する設定時間が経過する間だけ、シャッター部材33を開状態に切り換えるようにソレノイド34を制御する構成とし、電動モータ41は所定の回転速度で受止め体51を回転駆動する構成としたが、例えば、走行機体3の走行速度に応じてソレノイド34の開閉動作を変更させたり、電動モータ41の回転速度を変更するように、それらの作動を制御装置66により制御する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、薬剤を設定量ずつ繰り出して拡散放出させるように構成された薬剤散布装置に適用できる。
【符号の説明】
【0085】
24 貯留部
25 繰出し手段
26 案内通路
27 回転式拡散手段
34 繰出し操作用のアクチュエータ
41 回転操作用のアクチュエータ
51 受止め体
51A 受止め面
52 拡散用羽根体
54 出口
58B 規制用縦壁
59,60 調整板
Q 羽根無し領域
Y 回転軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留部に貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段と、その繰出し手段から繰り出されて案内通路を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式拡散手段とが備えられ、
前記回転式拡散手段が、横向き姿勢の受止め面を備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体と、その受止め体の前記受止め面に立設された拡散用羽根体とを備えて構成されている薬剤散布装置であって、
前記受止め体の前記受止め面における外端縁よりも前記回転軸芯側に寄った箇所に、周方向全域にわたって前記拡散用羽根体が存在しない羽根無し領域が形成され、
前記案内通路が前記受止め体における前記羽根無し領域に薬剤を案内するように形成されている薬剤散布装置。
【請求項2】
前記拡散用羽根体が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ前記受止め体における前記回転軸芯から径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられ、
前記受止め体における前記回転軸芯を含むその周囲の領域が前記羽根無し領域として形成されている請求項1記載の薬剤散布装置。
【請求項3】
前記受止め面が前記回転軸芯側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている請求項1又は2記載の薬剤散布装置。
【請求項4】
前記案内通路が、前記繰出し手段側の開口面積を出口側の開口面積より大にする形態で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤散布装置。
【請求項5】
前記受止め体の下方が開放された状態となっている請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬剤散布装置。
【請求項6】
前記受止め体を縦軸芯周りで回転駆動する回転操作用のアクチュエータが、前記受止め体の上方に位置する状態で備えられ、
前記繰出し手段に備えられた繰出し操作用のアクチュエータが、前記回転操作用のアクチュエータの横側箇所に位置する状態で備えられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬剤散布装置。
【請求項7】
前記受止め体における周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁が備えられ、且つ、
この規制用縦壁の両側部の夫々に、前記受止め体における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する調整板が備えられ、
前記各調整板のうち前記規制用縦壁の回転方向上手側端部に備えられる調整板が他方の調整板よりも長尺に形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬剤散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−100606(P2012−100606A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253191(P2010−253191)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】