説明

薬剤散布装置

【課題】部品点数の増加を抑制しながら、薬剤の散布量を適量とすることが可能な無人ヘリコプターの飛行速度の範囲を拡大して、その飛行速度に連動して薬液を均一に散布することができる薬剤散布装置を提供する。
【解決手段】無人ヘリコプター1に装着されて、薬剤を空中散布する薬剤散布装置5であって、薬剤を貯溜するタンク51L・51Rと、前記タンク51L・51R内の薬剤を圧送するポンプ52L・52Rと、前記ポンプ52L・52Rにより圧送された薬剤をミスト状に噴霧するミストノズル55C・55L・55Rと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人ヘリコプターに装着されて、薬剤を空中散布する薬剤散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無人ヘリコプターに装着されて、薬剤(薬液)を空中散布する薬剤散布装置の技術は公知となっている。このような薬剤散布装置としては、ノズルを用いて薬液を散布するノズル方式の薬剤散布装置(例えば、特許文献1参照)と、アトマイザーを用いて薬液を散布するアトマイザー方式の薬剤散布装置(例えば、特許文献2参照)とが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−198495号公報
【特許文献2】特開平11−138071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のノズル方式の薬剤散布装置は、タンク内の薬液をポンプにより単数または複数のノズルへ圧送して、各ノズルから吐出するように構成されていた。これにより、無人ヘリコプターの飛行時に、薬液が霧状となって薬剤散布装置から散布されるようになっていた。作業者は、ノズル方式の薬剤散布装置を用いて散布作業を行う場合、薬液を均一に散布するためには、作業時間短縮などの理由で無人ヘリコプターの飛行速度を速くしたときには、ポンプからの吐出圧力を高くして薬液の吐出量を増し、無人ヘリコプターの圃場端への接近などで当該無人ヘリコプターの飛行速度を遅くしたときには、ポンプからの吐出圧力を低くして薬液の吐出量を減らすように対処しなければならない。
【0005】
しかしながら、無人ヘリコプターはそのエンジン回転数を変更することにより飛行速度を変速する構成であり、ノズル方式の薬剤散布装置は圧力調整弁またはポンプ軸の回転数を調節することによりポンプからの吐出圧力を変更する構成であるため、無人ヘリコプターの飛行速度とポンプの吐出圧力の調整手段が異なり、作業者が薬液の散布量を無人ヘリコプターの飛行速度に連動させて適量に増減させることは困難であった。つまり、薬液の散布量を適量とすることが可能な無人ヘリコプターの飛行速度の範囲が狭く、作業者は無人ヘリコプターの飛行速度を略一定とした状態でしか薬液の散布作業を行うことができなかった。
【0006】
また、作業者が、仮に、前述のように無人ヘリコプターの飛行速度を遅くしたときに、ポンプからの吐出圧力を低くして薬液の吐出量を減らすように対処することができたとしても、これだけでは薬液の散布領域が狭くなり、また薬液のノズルから吐出される際の粒径も大きくなるため、薬液を均一に散布することができなかった。
【0007】
一方、従来のアトマイザー方式の薬剤散布装置は、ディスクを高速回転させ、該ディスク上に薬液を吐出させて、薬液を細かい霧状にしてから噴霧するように構成されていた。そのため、無人ヘリコプターの飛行時に、霧状の薬液が薬剤散布装置から散布されるようになっていた。作業者は、アトマイザー方式の薬剤散布装置を用いて散布作業を行う場合、薬液をディスクへ向けて吐出するためのポンプを低圧で作動させることが可能なため、薬液の吐出量の調整範囲を広くして、無人ヘリコプターの飛行速度を遅くしたとき、薬液の吐出量を少なくしながらも、薬液を広い領域で均一に散布させることができる。つまり、薬液の散布量を適量とすることが可能な無人ヘリコプターの飛行速度の範囲がノズル方式に比べて広く、作業者は無人ヘリコプターの飛行速度を任意に変速して薬液の散布作業を行うことができた。
【0008】
しかしながら、アトマイザー方式の薬剤散布装置には、ディスクを駆動するためのモータや複数のディスク等が含まれるため、薬剤散布装置における部品点数が多くなり、コストが増大するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は係る課題に鑑み、部品点数の増加を抑制しながら、薬剤の散布量を適量とすることが可能な無人ヘリコプターの飛行速度の範囲を拡大して、その範囲内で飛行速度に連動して薬液を均一に散布することができる薬剤散布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、無人ヘリコプターに装着されて、薬剤を空中散布する薬剤散布装置であって、薬剤を貯溜するタンクと、前記タンク内の薬剤を圧送するポンプと、前記ポンプにより圧送された薬剤をミスト状に噴霧するミストノズルと、を具備するものである。
【0012】
請求項2においては、前記ミストノズルは、筒状のノズル本体と、前記ノズル本体に挿通されて、前記ポンプからの薬剤を流通させる配管と、前記ノズル本体内にその一方の開口を臨むように配置されて、前記配管と接続される噴口部材と、前記ノズル本体の他方の開口側に設けられて、風を当該ノズル本体内を通じて前記一方の開口に向かって送る送風機と、を具備し、前記配管を経て前記噴口部材から噴出した薬剤を、前記送風機からの送風により分散微粒化させたうえで、前記ノズル本体の一方の開口から噴霧するものである。
【0013】
請求項3においては、前記ミストノズルは、前記無人ヘリコプターの機体の鉛直下方に配置されるものである。
【0014】
請求項4においては、前記無人ヘリコプターの機体から左右外側方へ延出された左右のブームを具備し、前記ミストノズルは、前記各ブームに取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0016】
請求項1の発明によれば、部品点数の増加を抑制しながら、薬剤の散布量を適量とすることが可能な無人ヘリコプターの飛行速度の範囲を拡大して、その範囲内で飛行速度に連動して薬液を均一に散布することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、ミストノズルを簡素な構造として、その部品点数の低減化を図ることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、ポンプからの吐出圧力が変更されて、薬剤の吐出量が変更された場合であっても、中央のミストノズルから吐出される薬剤の粒径が変更されなくなる。また、中央のミストノズルが無人ヘリコプターのメインロータの風の影響を受けにくくなる。したがって、薬剤を所望の領域に均一に散布することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、ポンプからの吐出圧力が変更されて、薬剤の吐出量が変更された場合であっても、左右のミストノズルから吐出される薬剤の粒径が変更されなくなる。したがって、薬剤をより広い領域に均一に散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】無人ヘリコプターの左側面図。
【図2】無人ヘリコプターの正面図。
【図3】薬剤散布装置の正面図。
【図4】ミストノズルの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の一実施形態に係る薬剤散布装置5を装着した無人ヘリコプター1の全体構成について、図1、図2を用いて説明する。
【0022】
図1、図2に示すように、無人ヘリコプター1においては、メインロータ3が、機体の上部に設けられて、機体に搭載されたエンジンにより回転駆動可能とされる。メインロータ3は、その回転速度、および、メインロータ3の翼面とメインロータ3の回転軸3aとが成す傾き(以下、「ピッチ角」という)を変更することができるように構成されている。
【0023】
このメインロータ3は、ピッチ角を変化させることにより、機体に与えられる揚力の大きさを増減させて、機体の高度及び飛行速度を変化させる。また、メインロータ3は、ピッチ角を周期的に最大から最小へと変化させることにより、メインロータ3の回転面を前後方向または左右方向に傾け、機体に与えられる揚力の方向を変化させて、機体を前後方向または左右方向に移動させる。
【0024】
また、テールロータ4が、機体後部に設けられて、前記エンジンにより回転駆動可能とされる。テールロータ4は、その回転速度、および、テールロータ4の翼面とテールロータ4の回転軸とが成す傾きを変更することができるように構成されている。
【0025】
このテールロータ4は、メインロータ3の回転により機体に作用する反動トルク(機体をメインロータ3が回転する方向の逆方向に回転させようとする力)を打ち消す力の大きさを変化させて、機体を右旋回または左旋回させる、あるいは機首の方向を略一定の方向に保持する。
【0026】
そして、本発明の一実施形態に係る薬剤散布装置5が、機体の左右両側部および下部に設けられている。薬剤散布装置5は、飛行中の無人ヘリコプター1から圃場等に向けて液体状の薬剤(以下、「薬液」という)を空中散布するための装置である。
【0027】
以下では、薬剤散布装置5の構成について、図1から図3を用いて説明する。
【0028】
図3に示すように、薬剤散布装置5は、左右一対のタンク51L・51R、左右一対のポンプ52L・52R、フレーム53、左右一対のブーム54L・54R、中央のミストノズル55C、左右一対のミストノズル55L・55R、分配管56、左右一対の配管57L・57R、左右一対の配管58L・58R、左右一対の配管59L・59Rを備えている。
【0029】
フレーム53は、薬剤散布装置5を構成する他の部品を機体に固定する部材である。フレーム53は、機体の前後中央下部から機体の左側部および右側部にかけて配置され、機体に着脱可能に取り付けられている。
【0030】
左右のタンク51L・51Rは、薬液を貯溜する容器である。左右のタンク51L・51Rは、それぞれ機体の左側部と右側部に近接して配置され、機体にフレーム53を介して着脱可能に取り付けられている。
【0031】
左右のポンプ52L・52Rは、それぞれ左右の各タンク51L・51Rに貯溜されている薬液を圧送するものである。本実施形態においては、ポンプ52L・52Rは、モータ33L・33Rと接続され、このモータ33L・33Rにより駆動可能とされている。このモータ33L・33Rは、コントローラ31と接続されている。
【0032】
左右の各タンク51L・51Rの底部には、左右の配管57L・57Rの一端がそれぞれ接続されている。一方、左右の配管57L・57Rの他端がそれぞれ左右の各ポンプ52L・52Rの吸入ポートに接続されている。
【0033】
左右の各ポンプ52L・52Rの吐出ポートには、左右の配管58L・58Rの一端がそれぞれ接続されている。一方、左右の配管58L・58Rの他端ががそれぞれ分配管56の上流側に接続されている。
【0034】
分配管56は、合流配管56bと、この合流配管56bに連通する供給側配管56aおよび吐出側配管56cとを有する略H型の配管である。合流配管56bの一端は供給側配管56aの中途部(合流点)と接続され、合流配管56bの他端は吐出側配管56cの中途部(分流点)と接続されている。
【0035】
供給側配管56aの両端には、それぞれ前記左右の配管58L・58Rの他端がそれぞれ接続されている。また、吐出側配管56cの両端には、左右の配管59L・59Rの一端がそれぞれ接続されている。左右の配管59L・59Rは、それぞれ左右の各ブーム54L・54Rに取り付けられている。
【0036】
左右のブーム54L・54Rは、それぞれ機体下部のフレーム53から左右方向に略機体水平に延出されて、機体外側に張り出すように設けられている。左右の各ブーム54L・54Rは、その長手方向中途部に回動角度調節部50L・50Rを備え、この回動角度調節部50L・50Rにより先端部(機体外側端部)を水平状態の基部(機体内側端部)に対して上下方向に回動することができるように構成されている。
【0037】
左右のブーム54L・54Rは、たとえば、無人ヘリコプター1が飛行して薬剤散布装置5により薬液の空中散布が行われるときは、機体左右外側に張り出した姿勢とされ、非散布時で無人ヘリコプター1が搬送されるとき、機体上方向に回動して機体側面に沿った状態の収納姿勢とされる。
【0038】
中央のミストノズル55Cは、フレーム53の左右中央下部(機体の鉛直下方)に取り付けられている。中央のミストノズル55Cは吐出側配管56cの中途部と接続されている。ここで、吐出側配管56cはフレーム53の長手方向に沿って配置されている。
【0039】
左右のミストノズル55L・55Rは、それぞれ左右の各ブーム54L・54Rの先端部(機体外側端部)に取り付けられている。ここで、左右の配管59L・59Rがそれぞれ左右のブーム54L・54Rの長手方向に沿って配置されて、左右の配管59L・59Rの他端がそれぞれ左右のミストノズル55L・55Rに接続されている。
【0040】
中央のミストノズル55C及び左右のミストノズル55L・55Rは、送風機72・72・72を備えている(図4参照)。送風機72・72・72にはモータ34・34・34が設けられ、このモータ34・34・34により駆動可能とされる。モータ34・34・34は、コントローラ31に接続されている。なお、左右のミストノズル55L・55Rの数は、本実施形態に限定するものではなく、それぞれ左右に複数個ずつ設けてもよい。
【0041】
コントローラ31には、前述したポンプ52L・52Rのモータ33L・33R、中央のミストノズル55C・左右のミストノズル55L・55Rの送風機72・72・72に設けられたモータ34・34・34に加えて、受信機32、エンジン回転数やメインロータ3やテールロータ4の制御手段36が接続されている。
【0042】
散布作業者(操縦者)が無人ヘリコプター1および薬剤散布装置5を遠隔操作する場合に、散布作業者が携帯する送信機37から操作信号が電波として送信されると、受信機32がその電波を受信し、操作信号に変換してコントローラ31に送信する。コントローラ31は、操作信号に基づいてモータ33L・33Rまたはモータ34・34・34または制御手段36に制御信号を送信して、それぞれの制御を行う。
【0043】
薬液の散布量(吐出量)は、具体的には、散布作業者が送信機37を用いて、ポンプ52L・52Rのモータ33L・33Rの回転数を調整することにより、適量に変更することが可能となっている。なお、モータ33L・33Rの回転数は、コントローラ31により無人ヘリコプター1のエンジン回転数に応じて変更するように制御することも可能である。つまり、無人ヘリコプター1の飛行速度に合わせて薬液の散布量を適量に調節することが可能である。こうして、薬剤散布装置5は、薬液の散布量を手動または自動で適量として、薬液を均一に散布できるようになっている。
【0044】
また、中央のミストノズル55C・左右のミストノズル55L・55Rから噴霧される薬液の粒径と散布領域が、送風機72・72・72のモータ34・34・34の回転数を調整することにより、任意に変更することが可能となっている。
【0045】
以下では、中央のミストノズル55Cの詳細構成について、図4を用いて説明する。なお、左右のミストノズル55L・55Rについては、その構成が中央のミストノズル55Cと同様であるため、説明は省略する。
【0046】
図4に示すように、中央のミストノズル55Cは、ノズル本体71、送風機72、噴口部材73、配管74を備えている。送風機72、噴口部材73、配管74の一部は、ノズル本体71に収容されている。
【0047】
ノズル本体71は、軸心方向を上下方向とした略円筒形状の部材である。ノズル本体71は、下部が上部に比べて絞られて、上下方向中途部より下側に向かって徐々に内径が短くなり、下側の開口が上側の開口よりも口径が小さくなるように形成されている。
【0048】
送風機72は、モータ34と羽根35とを有し、モータ34の駆動により羽根35を回転させて、風を送ることができるように構成されている。本実施形態では、送風機72は、モータ34と羽根35とを一体として構成されている。送風機72は、ノズル本体71の上端内側に配置されて、当該ノズル本体71に取り付けられている。
【0049】
噴口部材73は、薬液を微細な粒子にして吐出する部材である。噴口部材73は、薬液を吐出する吐出部が下方を向いてノズル本体71の下側の開口に臨むように、ノズル本体71の下端内側で軸心部(中央部)に配置されて、当該ノズル本体71に支持されている。
【0050】
配管74は、ホースまたは鋼管等で構成されている。配管74は、ノズル本体71の側面中途部に形成された開孔部に挿通され、一側が開孔部からノズル本体71外で上方に向かって延出されるとともに、他側がノズル本体71内で下方に向かって延出されている。そして、配管74の一端が吐出側配管56cの略左右中央下部と接続され、他端が噴口部材73と接続されている。配管74の噴口部材73との接続部は支持体75を介してノズル本体71の内面に、噴口部材73の軸心がノズル本体71の軸心に一致するように固定されている。
【0051】
以下では、薬剤散布装置5の動作態様について説明する。
【0052】
散布作業者が送信機37を用いて薬液を散布するために薬剤散布装置5を遠隔操作した場合、コントローラ31がポンプ52L・52Rのモータ33L・33Rおよび送風機72・72・72のモータ34・34・34を駆動させる。
【0053】
モータ33L・33Rが駆動すると、左右のタンク51L・51R内に貯溜された薬液が、左右の各ポンプ52L・52Rにより左右の各配管57L・57Rを通じて吸入される。そして、薬液は左右の各ポンプ52L・52Rにより左右の各配管58L・58Rを通じて分配管56に向かって圧送される。
【0054】
左右の各配管58L・58Rを通じて分配管56に圧送されてきた薬液は、この分配管56の合流点にて一度合流した後、吐出側配管56cの略左右中央下部に取り付けられた中央のミストノズル55Cに供給されるとともに、分流点にて再び左右の配管59L・59Rに分流され、各配管59L・59Rを通じて機体左側のブーム54Lの先端部に取り付けられた左のミストノズル55Lと、機体右側のブーム54Rの先端部に取り付けられた右のミストノズル55Rに供給される。
【0055】
中央のミストノズル55Cにおいて吐出側配管56cを経て圧送されてきた薬液、及び左右のミストノズル55L・55Rにおいて配管59L・59Rを経て圧送されてきた薬液は、配管74・74・74を通じて噴口部材73・73・73まで流れ、この噴口部材73・73・73から外部へ噴出する。このとき、送風機72・72・72のモータ34・34・34が駆動して羽根35・35・35が回転することにより発生した風が、ノズル本体71・71・71内でその上側から下側、即ち噴口部材73・73・73がある側に向かって流れ、噴口部材73・73・73の脇を通ってノズル本体71・71・71の下側の開口から外部へ流出する。
【0056】
よって、薬液は、噴口部材73・73・73からの吐出と、送風機72・72・72から送られる風により、霧状に微粒化されて、ノズル本体71・71・71の下側の開口から外部へ噴霧されることとなる。その結果、薬液は、中央のミストノズル55C・左右のミストノズル55L・55Rにより霧状に微粒化されうえで、飛行中の無人ヘリコプター1に装着された薬剤散布装置5から下方の圃場に向かって散布されることとなる。
【0057】
ここでは、前述のようにノズル本体71・71・71の下部を絞り、送風機72・72・72から送られる風の流路の流路面積を下流側が上流側に比べて小さくなるように設定することによって、送風時に高速気流を発生させることが可能となっている。これにより、噴口部材73・73・73の外周部分で乱気流を発生させて、薬液の微粒子化を促進させることができるようになっている。
【0058】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る薬剤散布装置5は、無人ヘリコプター1に装着されて、薬液(薬剤)を空中散布する薬剤散布装置5であって、薬液を貯溜するタンク51L・51Rと、前記タンク51L・51R内の薬液を圧送するポンプ52L・52Rと、前記ポンプ52L・52Rにより圧送された薬液をミスト状に噴霧するミストノズル55C・55L・55Rと、を具備するものである。
【0059】
このように構成することにより、薬液がミストノズル55C・55L・55Rにより霧状にされてから散布されることとなり、その散布された薬液が従来のノズル方式の薬剤散布装置から散布された薬液よりも細かく霧化する。さらに、ポンプ52L・52Rからの吐出圧力を低下させることが可能となる。したがって、例えば、無人ヘリコプター1の飛行速度を遅くしたとき、薬液の吐出量を少なくしながらも、薬液を広い領域で均一に散布させることができる。つまり、従来のノズル方式の薬剤散布装置に比べて、薬液の散布量を適量とすることが可能な無人ヘリコプター1の飛行速度の範囲を拡大して、その範囲内で飛行速度に連動して薬液を均一に散布することができる。
【0060】
そのうえ、従来のアトマイザー方式の薬剤散布装置に比べて、部品点数を少なくすることができる。すなわち、薬剤散布装置5は、部品点数の増加を抑制しながら、薬液の散布量を適量とすることが可能な無人ヘリコプター1の飛行速度の範囲を拡大して、その範囲内で飛行速度に連動して薬液を均一に散布することができる。その結果、薬液の散布量を無人ヘリコプター1の飛行速度に連動して適量に容易に調整することが可能となり、散布作業者は散布状況に応じて無人ヘリコプター1をより広い範囲で変速させて、薬剤散布時の作業性の向上を図ることができる。
【0061】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る薬剤散布装置5は、前記ミストノズル55C・55L・55Rは、筒状のノズル本体71と、前記ノズル本体71に挿通されて、前記ポンプ52L・52Rからの薬液を流通させる配管74と、前記ノズル本体71内にその一方の開口を臨むように配置されて、前記配管74と接続される噴口部材73と、前記ノズル本体71の他方の開口側に設けられて、風を当該ノズル本体71内を通じて前記一方の開口に向かって送る送風機72と、を具備し、前記配管74を経て前記噴口部材73から噴出した薬液を、前記送風機72からの送風により分散微粒化させたうえで、前記ノズル本体71の一方の開口から噴霧するものである。
【0062】
このように構成することにより、ミストノズル55C・55L・55Rを簡素な構造として、その部品点数の低減化を図ることができる。
【0063】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る薬剤散布装置5は、前記ミストノズル55Cが、前記無人ヘリコプター1の機体の鉛直下方に配置されるものである。
【0064】
このように構成することにより、ポンプ52L・52Rからの吐出圧力が変更されて、薬剤の吐出量が変更された場合であっても、中央のミストノズル55Cから吐出される薬剤の粒径が変更されなくなる。また、中央のミストノズル55Cが無人ヘリコプター1のメインロータ3の風の影響を受けにくくなる。したがって、薬剤を所望の領域に均一に散布することができる。
【0065】
以上の如く、本発明の一実施形態に係る薬剤散布装置5は、前記無人ヘリコプター1の機体から左右外側方へ延出された左右のブーム54L・54Rを具備し、前記ミストノズル55L・55Rが、前記各ブーム54L・54Rに取り付けられるものである。
【0066】
このように構成することにより、ポンプ52L・52Rからの吐出圧力が変更されて、薬剤の吐出量が変更された場合であっても、左右のミストノズル55L・55Rから吐出される薬剤の粒径が変更されなくなる。したがって、薬剤をより広い領域に均一に散布することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 無人ヘリコプター
5 薬剤散布装置
51L・51R タンク
52L・52R ポンプ
54L・54R ブーム
55C・55L・55R ミストノズル
71 ノズル本体
72 送風機
73 噴口部材
74 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人ヘリコプターに装着されて、薬剤を空中散布する薬剤散布装置であって、
薬剤を貯溜するタンクと、
前記タンク内の薬剤を圧送するポンプと、
前記ポンプにより圧送された薬剤をミスト状に噴霧するミストノズルと、を具備する、
ことを特徴とする薬剤散布装置。
【請求項2】
前記ミストノズルは、
筒状のノズル本体と、
前記ノズル本体に挿通されて、前記ポンプからの薬剤を流通させる配管と、
前記ノズル本体内にその一方の開口を臨むように配置されて、前記配管と接続される噴口部材と、
前記ノズル本体の他方の開口側に設けられて、風を当該ノズル本体内を通じて前記一方の開口に向かって送る送風機と、を具備し、
前記配管を経て前記噴口部材から噴出した薬剤を、前記送風機からの送風により分散微粒化させたうえで、前記ノズル本体の一方の開口から噴霧する、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤散布装置。
【請求項3】
前記ミストノズルは、
前記無人ヘリコプターの機体の鉛直下方に配置される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬剤散布装置。
【請求項4】
前記無人ヘリコプターの機体から左右外側方へ延出された左右のブームを具備し、
前記ミストノズルは、
前記各ブームに取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の薬剤散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−126216(P2012−126216A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278486(P2010−278486)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(390029621)ニューデルタ工業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】