説明

薬害軽減した安定懸濁製剤

【課題】 貯蔵安定性に優れ且つ稲体に対する薬害が少ない水田の懸濁製剤を提供すること。
【解決手段】 (a)20℃における水溶解度が少なくとも100ppmである除草活性成分 0.1〜60重量%、(b)界面活性剤 0.01〜1重量%、(c)増粘剤 0.01〜5重量%、(d)結晶析出防止剤 5〜20重量%、および(e)水 20〜90重量%を含んでなり、2号ロータの回転数が12rpmの時の20℃における粘度が800〜1400mPa・sの範囲内にあることを特徴とする薬害軽減した安定懸濁製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、20℃における水溶解度が少なくとも100ppmである除草活性成分を含んでなる、貯蔵安定性および稲体に対する接触薬害が改善された水田用の薬害軽減した安定懸濁製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
除草活性成分を水に懸濁分散させた水田直接散布用水性懸濁製剤として、例えば、水溶解度が100ppm(25℃)以下である除草活性成分を界面活性剤で水に懸濁分散させてなる水性懸濁製剤(特許文献1、2、3参照)、10μm以下に微粉砕した水難溶性除草活性成分を水に懸濁させてなる粘度が180〜500mPa・s(25℃)の物理特性を有する水性懸濁製剤(特許文献4参照)、平均粒子径が0.5〜5.0μmで且つ水溶解度が100ppm(25℃)以下である除草活性成分を界面活性剤で水に懸濁分散させてなる水性懸濁製剤(特許文献5参照)、農薬活性成分および結晶セルロースを界面活性剤で水に懸濁分散させてなる水性懸濁製剤(特許文献6参照)などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特公平7−47521号公報
【特許文献2】特開平10−316503号公報
【特許文献3】特開2004−26485号公報
【特許文献4】特開昭62−87501号公報
【特許文献5】特公平7−47522号公報
【特許文献6】特開2006−169167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水を分散媒体とした水田直接散布用水性懸濁製剤は、散布時に水で希釈することなく容器から直接水田に散布することができるため、安全性、経済性、省力化などの点で優れた剤型である。しかしながら、20℃における水溶解度が少なくとも100ppmである除草活性成分は、上記の如き従来技術を使用して直接散布用水性懸濁製剤に調製した場合、貯蔵中に分散質の沈降および結晶の析出が生じることがあり、さらに水田圃場に散布すると薬剤が稲体に付着し易いために薬害が発生するなどの欠点がある。
【0005】
本発明の目的は、貯蔵中の製剤安定性に優れ且つ水田に使用した場合に稲体に対する薬害が少なく、十分な除草効果を発揮させることができる、20℃における水溶解度が少なくとも100ppmである易溶解性の除草活性成分を含有する水性懸濁製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の如き目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、今回、20℃における水溶解度が少なくとも100ppmである除草活性成分を、界面活性剤、増粘剤、結晶析出防止剤および水とともに、特定の粘度となるようにして水性懸濁製剤化すると、貯蔵安定性に優れ且つ稲体に対して薬害のない安定な水性懸濁製剤が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして、本発明は、
(a)20℃における水溶解度が少なくとも100ppmである除草活性成分 0.1〜60重量%、
(b)界面活性剤 0.01〜1重量%、
(c)増粘剤 0.01〜5重量%、
(d)結晶析出防止剤 5〜20重量%、および
(e)水 20〜90重量%
を含んでなり、2号ロータの回転数が12rpmの時の20℃における粘度が800〜1400mPa・sの範囲内にあることを特徴とする薬害軽減した安定懸濁製剤を提供するものである。
【0008】
以下、本願発明の薬害軽減した安定懸濁製剤について、さらに詳細に説明する。
【発明の実施の形態】
【0009】
除草活性成分(a)
本発明において使用される除草活性成分(a)には、除草剤および植物成長調節剤などの一般に望ましくない植物を枯殺または抑制する能力を有する化合物が包含され、本発明では、このうち、20℃における水溶解度が少なくとも100ppm、好ましくは少なくとも200ppmである水に易溶解性の除草活性成分が対象となる。
【0010】
除草活性成分(a)として、具体的には、例えば、テフリルトリオン、ペノキススラム、シメトリン、ベンタゾン、アジムスルフロン、ベンフレセート、モリネートなどが挙げられ、特にテフリルトリオンが好適である。
【0011】
本発明の除草活性成分(a)は、上記のものに限られるものではなく、例えば、「農薬ハンドブック2005年版」(財団法人 日本植物防疫協会 2005年10月発行)、「The Pesticide Manual Fourteenth Edition」(British Crop Protection Council 2006年発行)などの文献に記載されている、20℃における水に対する溶解度が少なくとも100ppmである除草活性成分はいずれも使用することができる。これらの除草活性成分はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0012】
除草活性成分(a)の本発明の懸濁製剤中における含有量は、厳密に制限されるものではなく、除草活性成分の種類などに応じて適宜変えることができるが、懸濁製剤の重量を基準にして、一般に0.1〜60重量%、特に0.3〜40重量%、さらに特に0.5〜20重量%の範囲内が好適である。
【0013】
界面活性剤(b)
本発明の懸濁製剤において使用することができる界面活性剤(b)としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホサクシネ−ト、リグニンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、アルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルホスフェートアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテルホスフェート塩、脂肪酸塩、イソブチレン−マレイン酸共重合体塩、スチレン−マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩などの陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルスルホサクシネートなどの陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンスチルフェニルエ−テル、ポリオキシエチレンスチルフェニルエ−テルポリマー、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックホリマー、
ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの非イオン界面活性;シリコ−ン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
本発明の懸濁製剤におけるこれらの界面活性剤(b)の含有量は、特に制限されないが、懸濁製剤の重量を基準にして、通常0.01〜1重量%、特に0.05〜0.9重量%、さらに特に0.1〜0.8重量%の範囲内が好適である。
【0015】
増粘剤(c)
本発明の懸濁製剤において使用することができる増粘剤(c)としては、農薬製剤において通常使用されるもの、例えば、キサンタンガム、トラガントガム、カゼイン、デキストリン、カルボキシメチルセルロ−ス、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、コロイド性ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどが挙げられる。これらの増粘剤はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明の懸濁製剤におけるこれらの増粘剤(c)の含有量は、特に制限されないが、懸濁製剤の重量を基準にして、通常0.01〜5重量%、特に0.05〜3重量%、さらに特に0.1〜1重量%の範囲内が好適である。
【0017】
結晶析出防止剤(d)
本発明の懸濁製剤において使用することができる結晶析出防止剤(d)としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。これらの結晶析出防止剤はそれぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明の懸濁製剤におけるこれらの結晶析出防止剤(d)の含有量は、特に制限されないが、懸濁製剤の重量を基準にして、通常5〜20重量%、特に6.5〜18重量%、さらに特に8〜16重量%の範囲内が好適である。
【0019】
水(e)
本発明の懸濁製剤において使用することができる水(e)としては、例えば、水道水などの飲料用および工業用の水などが挙げられる。
【0020】
本発明の懸濁製剤における水(e)の含有量は、特に制限されないが、懸濁製剤の重量を基準にして、通常20〜90重量%、特に25〜80重量%、さらに特に30〜70重量%の範囲内が好適である。
【0021】
本発明における懸濁製剤には、以上に述べた成分以外に、任意成分として、例えば、除草効果を向上させおよび/または除草対象とする雑草の種類を広くするなどの目的で、さらに、本発明の懸濁製剤を製剤化する際の製剤性を向上させおよび/または除草活性成分を製剤中で安定に保つなどの目的で、必要に応じて、他の除草活性成分、他の添加剤(例えば、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)などを適宜含有せしめることができる。
【0022】
上記他の除草活性成分としては、20℃における水溶解度が100ppmより小さく、好ましくは50ppm以下である除草活性成分を使用することができ、例えば、ピラクロニル、メフェナセット、フェントラザミド、ピリブチカルブ、HOK−201、オキサジクロメホン、プレチラクロール、ブタクロール、テニルクロール、ベンフレセート、カフェンストロール、インダノファン、シハロホップブチル、ピリミノバックメチル、エスプロカルブ、エトベンザニド、ペントキサゾン、ピリフタリドなどの除草剤を挙げることが
できる。
【0023】
上記他の添加剤としては、例えば、シリコン系、脂肪酸系物質などの消泡剤;1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸カリウム、p−クロロ−メタキシレノ−ル、p−オキシ安息香酸ブチルなどの防腐剤;トリフェニルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビスなどの酸化防止剤;サリチル酸フェニル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどの紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0024】
上記任意成分は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができ、本発明の懸濁製剤におけるそれらの含有量は、特に制限されないが、懸濁製剤の重量を基準にして、合計で、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.3〜40重量%、さらに好ましくは0.5〜30重量%の範囲内とすることができる。
【0025】
本発明の薬害軽減した安定懸濁製剤は、農薬の製剤化において通常用いられる懸濁製剤化法によって調製することができる。具体的には、例えば、水に界面活性剤を溶解または分散させ、この中に除草活性成分および消泡剤を添加する。得られる混合溶液を粉砕用メディアとして直径1.0〜1.41mmのガラスビーズを用い、ダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、商品名)にて湿式粉砕する。次いで、この混合溶液に増粘剤、結晶析出防止剤および必要に応じて、その他の補助剤を添加し、水を加えて100重量%とし、スリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)を用いて混合することにより本発明の懸濁製剤を得ることができる。
【0026】
上記懸濁製剤化法で得られる本発明の薬害軽減した安定懸濁製剤は、2号ロータの回転数が12rpmである時の20℃における粘度が、通常800〜1400mPa・s、好ましくは850〜1300mPa・s、さらに好ましくは900〜1200mPa・sの範囲内にある。
【0027】
かくして調製される本発明の薬害軽減した安定懸濁製剤は、通常の水田用除草剤の懸濁製剤と同様に水田に施用することができる。例えば、この懸濁製剤を水で希釈することなく穴の空いた500mL容量のプラスチック容器に入れ、水田の中を手で左右に振りながら前進するか、あるいは原液または少量の水を用いて2〜10倍に希釈した高濃度液を滴下処理できる機械を備えた田植機を用いて水田に施用することができる。さらに、近年普及しているRCヘリコプターからの空中散布も可能であり、また、潅漑水の流入に際して水田の水の取り入れ口(水口)で流入水に滴下処理を行い、流入水と共に水田に流し込むこともできる。
【0028】
本発明の懸濁製剤の単位面積当たりの施用量は、特に限定されないが、10アール当たり、通常50〜1000ml、特に100〜500mlの範囲内で散布することが望ましい。
【0029】
本発明の懸濁製剤は、水田に散布された時、稲体への付着が少なく直ちに水面に落下し、有効成分が速やかに水中で拡散する。そのため、水田の稲への薬害が少なく、優れた除草効果を表わす。また、本製剤は長期間貯蔵しても、製剤中に分散質の沈降および有効成分の結晶析出が認められず、安定した品質を有する製剤として、極めて有用である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0031】
実施例1
ピラクロニル原体3.75重量%、テフリルトリオン原体6.29重量%、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルホスフェートアミン塩0.5重量%、シリコーンエマルジョン0.3重量%、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン0.2重量%および水63.96重量%をスリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で混合し、この混合溶液を粉砕用メディアとして直径1.0〜1.41mmのガラスビーズを用い、ダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、商品名)にて湿式粉砕する。この粉砕物にキサンタガムの2%水溶液15.0重量%およびプロピレングリコール10.0重量%を加えて、スリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で均一混合し、薬害軽減した安定懸濁製剤を得る。
【0032】
実施例2
メフェナセット原体18.54重量%、テフリルトリオン原体5.71重量%、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルホスフェートアミン塩0.5重量%、シリコーンエマルジョン0.3重量%、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン0.2重量%および水49.75重量%をスリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で混合し、この混合溶液を粉砕用メディアとして直径1.0〜1.41mmのガラスビーズを用い、ダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、商品名)にて湿式粉砕する。この粉砕物にキサンタガムの2%水溶液15.0重量%およびプロピレングリコール10重量%を加えて、スリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で均一混合し、薬害軽減した安定懸濁製剤を得る。
【0033】
実施例3
フェントラザミド原体5.85重量%、テフリルトリオン原体6.02重量%、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルホスフェートアミン塩0.5重量%、シリコーンエマルジョン0.3重量%、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン0.2重量%および水62.13重量%をスリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で混合し、この混合溶液を粉砕用メディアとして直径1.0〜1.41mmのガラスビーズを用い、ダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、商品名)にて湿式粉砕する。この粉砕物にキサンタガムの2%水溶液15.0重量%およびプロピレングリコール10重量%を加えて、スリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で均一混合し、薬害軽減した安定懸濁製剤を得る。
【0034】
比較例1
ピラクロニル原体3.75重量%、テフリルトリオン原体6.29重量%、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルホスフェートアミン塩2.0重量%、シリコーンエマルジョン0.3重量%、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン0.2重量%および水72.46重量%をスリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で混合し、この混合溶液を粉砕用メディアとして直径1.0〜1.41mmのガラスビーズを用い、ダイノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、商品名)にて湿式粉砕する。この粉砕物にキサンタガムの2%水溶液10.0重量%およびプロピレングリコール5重量%を加えて、スリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で均一混合し、水性懸濁製剤を得る。
【0035】
比較例2
ピラクロニル原体3.75重量%、テフリルトリオン原体6.29重量%、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルサルホスフェートアミン塩5.0重量%、シリコーンエマルジョン0.3重量%、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン0.2重量%および水69.46重量%をスリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で混合し、この混合溶液を粉砕用メディアとして直径1.0〜1.41mmのガラスビーズを用い、ダイ
ノミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、商品名)にて湿式粉砕する。この粉砕物にキサンタガムの2%水溶液10.0重量%およびプロピレングリコール5重量%を加えて、スリーワンモータ(新東科学株式会社製、商品名)で均一混合し、水性懸濁製剤を得る。
【0036】
次に、以上の実施例1〜3で得られる薬害軽減した安定懸濁製剤および比較例1〜2で得られる水性懸濁製剤について、以下の試験例1および2によりその効果を評価した。
【0037】
試験例1(貯蔵安定性試験)
実施例1〜3ならびに比較例1および2の懸濁製剤各50mlを容量50mlのサンプルビンに入れ、密栓し、40℃の恒温室に3ヶ月間静置した。サンプルビン中における製剤は分離状態(下層に沈降する懸濁層と全層との割合)を観察し、サンプルビン中の上層に生じた水層(上スキ層)と全製剤層の高さ(全層の高さ)を測定し、下記の式を用いて製剤の懸濁安定性を算出した。
【0038】
懸濁安定性(%)=(X−Y/X)×100
X:全層の高さ(cm)
Y:上スキ層(cm)
また、−15℃の恒温室に3日間静置し、その後20℃の恒温室に1日静置したサンプルビンについて、結晶析出の有無を目視で観察した。その結果を表1に示す。
【0039】
試験例2(薬害試験)
1/5000アールのワグネルポットに水田土壌を充填し、2.5葉期の水稲苗(コシヒカリ)をポットあたり2本移植した。水稲移植5日後に、試験例1と同様の懸濁製剤各50μlをマイクロシリンジで1cmの高さから稲の第2葉の葉身中央部に滴下し、5日後に以下の基準により水稲に対する薬害程度を調査した。試験は各処理3反復で実施した。その結果を表1に示す。
【0040】
薬害程度
0:薬害なし
1:付着部に薬痕が残る
2:付着葉の1/4未満が褐変
3:付着葉の1/4以上〜1/2未満が褐変
4:付着葉の1/2以上〜3/4未満が褐変
5:付着葉の3/4以上が褐変
【0041】
【表1】

【0042】
上記表1から明らかなように、本発明に従う実施例1〜3の懸濁製剤は、比較例1および2の懸濁製剤に比べて、懸濁安定性に優れ、結晶の析出の心配がなく、さらに水稲に対して薬害が認められない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)20℃における水溶解度が少なくとも100ppmである除草活性成分 0.1〜60重量%、
(b)界面活性剤 0.01〜1重量%、
(c)増粘剤 0.01〜5重量%、
(d)結晶析出防止剤 5〜20重量%、および
(e)水 20〜90重量%
を含んでなり、2号ロータの回転数が12rpmの時の20℃における粘度が800〜1400mPa・sの範囲内にあることを特徴とする薬害軽減した安定懸濁製剤。
【請求項2】
除草活性成分(a)がテフリルトリオン、ペノキススラム、シメトリン、ベンタゾン、アジムスルフロン、ベンフレセートおよびモリネートより選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の安定懸濁製剤。
【請求項3】
結晶析出防止剤(d)がプロピレングリコール、エチレングリコールおよびグリセリンより選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の安定懸濁製剤。
【請求項4】
水田に施用するための請求項1〜3のいずれかに記載の安定懸濁製剤。

【公開番号】特開2009−167125(P2009−167125A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6990(P2008−6990)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000234890)協友アグリ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】