説明

薬注入のための挿入体

【課題】公知のタイプの挿入体に関連して述べられた問題を少なくとも部分的に解決することである。
【解決手段】本発明は薬の注入のための挿入体(20)に関する。該挿入体(20)は、バイアル(18)、そして好ましくは体外循環回路(16)または輸液ラインへの接続に適している。さらに該挿入体は、本体(22)、弾性要素(24)および刺通突起体(26)を備えている。該刺通突起体は軸Xを有し、第1チャネル(261)および第2チャネル(262)を画定し、そして軸Xに沿って第1の閉じられた位置Aと第2の開かれた位置Bとの間で本体に対して移動可能である。さらに、弾性要素は、外力が施与されていないときは第1の閉じられた位置Aに維持するように刺通突起体を押し付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアルからの液体の移動、例えば回路または輸液ラインへの薬の注入のための挿入体に関する。本発明に関して、回路は、好ましくは体外循環回路、最も好ましくは血液透析回路である。特に本発明は、薬を含有しているバイアルを係合されて受取るのに適した挿入体に関する。
【背景技術】
【0002】
バイアル(小瓶)から別の回路への液体の移動が要求されるような環境が幾つか存在する。そのような環境は、例えば、静脈内療法のような治療的処置において、または液体がバイアルから別の容器へ移動させられる必要があるときに生じうる。以下の記載においては、液体がバイアルから回路へ移動される必要のある別の非常に重要な分野、すなわち体外循環回路、特に血液透析回路によって実行された治療的処置の分野が具体的に言及される。そのような言及は何ら限定する意図を持つものではない。なぜなら本発明はそれ以外の分野にも効果的に使用されうるからである。
【0003】
体外循環回路を必要とする治療的処置中に、様々な薬を患者に投与することがしばしば必要になる。体外循環回路が在るために、患者に直接行われる注射によって薬を投与する必要は、好都合にも回避される。
【0004】
例として血液透析療法が以下で考察されるが、本発明の範囲がこの特定の応用に限定されることはない。
【0005】
血液透析中に、様々な薬または治療用の物質、例えば、鉄分、ヘパリン、エリスロポエチンおよびビタミンを投与することが頻繁に必要になる。そのような物質を体外循環回路内へ注入することは、今のところ従来の注射器によって行われている。該物質は、それが製造者によってその中に供給されるところのバイアルから取り出され、そして次に、該回路に沿って備えられかつ刺通可能なキャップを装備された特別の挿入体の中へ注入される。したがって物質の2回の移動は、1回目はバイアルから注射器へ、そして次に注射器から体外循環回路へ行われる。
【0006】
この操作はそれ故に、単にバイアルから体外循環回路内へ物質を移動させるために、使い捨ての品、例えば個別針の注射器の使用を必要とする。さらに、注射針の使用は、作業スタッフが刺されるという危険性を常に含んでいる。
【0007】
さらに、既述の物質のいくつかは、数分間に渡ってゆっくりと投与されなければならない。したがって、様々な物質を複数の患者へ投与することは、血液透析療法に責任を負う看護スタッフにとって、いかに多量の作業量を意味するかが容易に理解できよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
物質を体外循環回路へ注入するためのアセンブリは、例えば欧州特許第0172836号公報および欧州特許第0713409号公報に詳細に記載されている。したがって、本発明の目的は、この公知のタイプの注入挿入体に関連して述べられた問題を少なくとも部分的に解決することである。
【0009】
本発明の1つの課題は、薬が供給されているところのバイアルとの直接的な係合を可能にするところの挿入体を提供することであり、そしてその結果、物質の2回の移動を回避することである。
【0010】
本発明の別の課題は、従来の注射器とこれに関連した注射針の使用を回避する挿入体を提供することである。
【0011】
本発明の別の課題は、バイアルがこの挿入体に接続されるときにのみ体外循環回路を開き、かつ一方、該バイアルを外すと体外循環回路を再度閉じる挿入体を提供することである。
【0012】
本発明の別の課題は、操作スタッフの積極的な関与を必要としないで、物質のゆっくりとした投与を可能にする挿入体を提供することである。
【0013】
本発明の別の課題は、汚染を回避しかつ体外循環回路全体の無菌性を向上するように適合された挿入体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的および課題は、請求項1に従う点滴挿入体によって達成される。
【0015】
本発明の特徴的な事柄および一層の利点は、添付された図面への参照と共に、限定的でない例のために純粋に提供された、実施態様の数多くの例の、以下に提供される記載から浮かび上がるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】治療的処置において使用される体外循環回路の概略図である。
【図2】図1の2で示された、従来技術に従う刺通可能なキャップと物質投与のための注射器との図式的な詳細図である。
【図3.a】本発明に従う物質注入のための挿入体とそれ自体は公知のバイアルとの図式的な詳細図である。
【図3.b】本発明に従う物質の注入のための別の挿入体の図式的な詳細図である。
【図4】本発明に従う挿入体の第1の閉じられた構成における図式的な斜視図である。
【図5】挿入体の幾つかの部分が半透明状で示されている図4に類似の図式的な斜視図である。
【図6】本発明に従う挿入体およびそれに係合したバイアルの図式的な側面図である。
【図7】図6の線7−7に沿う断面図である。
【図8】本発明に従う挿入体は第1の閉じられた構成である、図7に類似の断面図である。
【図9】本発明に従う挿入体は第2の開かれた構成である、図7に類似の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、薬を注入するための挿入体(20)に関する。挿入体(20)は、バイアル(18)および好ましくは体外循環回路(16)または輸液ラインに接続するのに適している。さらに挿入体(20)は、本体(22)、弾性要素(24)および刺通突起体(26)を備えている。
【0018】
刺通突起体(26)は、軸Xを有し、かつ第1チャネル(261)と第2チャネル(262)とを画定し、かつ軸Xに沿って第1の閉じられた位置Aと第2の開かれた位置Bとの間で本体(22)に対して移動しうる。さらに弾性要素(24)は、外力が印加されていないとき、第1の閉じられた位置Aに刺通突起体(26)を保持するように刺通突起体(26)対して作用する。
【0019】
本発明の記載において、その正確な稼働を可能にする挿入体(20)の空間的な配置が言及されるであろう。挿入体(20)の稼働中、特に或る実施態様においては、実のところ重力が決定的な役割を演じている。特に重力は、図3〜9でベクトルgによって示されたように方向付けられていることが、以下仮定される。ベクトルgは、したがって垂直方向を画定し、そして上部から下向きに方向付けられている。上記の観点では、表現「上部」「上方」などは、以下では地面から比較的離れている位置を指すために使用され、そして、他方、表現「下部」「下方」などは、地面に比較的近い位置を指すために使用される。
【0020】
好ましくは、標準のバイアル(18)、すなわち、所定の直径dと高さhの円柱状ヘッド(180)を有するところのバイアル(18)(図3参照)が、以下で考察される。一方、バイアルの本体(181)は、任意の形状または大きさのものでよい。例えば、バイアル(18)は、好ましくは以下、標準DIN/ISO 8362−1、より好ましくは2Rまたは4Rタイプに従うと考えられる。
【0021】
非標準バイアル(18)(図示されない)は、また本発明に従う挿入体(20)と接続して使用されうる。この点に関して、本体(22)(以下に詳細に開示される)によって画定された座部(227)は、非標準バイアル(18)のヘッド(180)にぴったり合わなければならないことに注目すべきである。換言すれば、非標準バイアル(18)は、バイアル(18)の非標準ヘッド(180)の特定のタイプに合わせるために、座部(227)が、その大きさおよび形状に関して具体的に設計されているところの挿入体(20)に接続して使用されうる。好ましくは、バイアルヘッド(180)の直径dは13mmである。
【0022】
刺通突起体(26)は、剛性であり、かつその上端で尖っている。このように、刺通突起体(26)は、治療に使うための物質を入れている標準バイアルに通常配置されるストッパー(182)に容易に穴を開けるのに適している。刺通突起体(26)は、主として軸Xに沿って延在するが、好ましくは、また、軸Xに垂直な平面内に延在するフランジ(263)を備えている。添付される図面に示された実施態様に従うと、半径方向突起(265)がフランジ(263)から延在している。
【0023】
第1チャネル(261)および第2チャネル(262)は、刺通突起体(26)に沿って、好ましくは相互にかつ軸Xに平行に延在している。添付図面に示された実施態様に従うと、チャネル(261、262)は刺通突起体(26)の上部に始まり、軸方向にその長さの大部分にわたって延在し、そして刺通突起体(26)の下部で、半径方向への進行を伴って終わる。さらに、チャネル(261、262)の端部の直下で、刺通突起体(26)は膨らみ部(267)を備えうる。刺通突起体(26)は、下方にかつチャネル(261、262)の端部を超えて、かつ末端部すなわち中子(264)を画定するように膨らみ部(267)を超えて延在している。
【0024】
1実施態様に従うと、刺通突起体(26)は、剛性材料で作られ、好ましくは、剛性のポリマーで作られる。そのような使用に適したポリマーは、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリブチレン・テレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)およびコポリエステルである。
【0025】
添付図面に示された実施態様に従うと、弾性要素(24)は、刺通突起体(26)の下部部分を受け取り、該下部部分は該刺通突起体(26)がその中でわずかの締めしろをもって着座させられているところの座部(246)を画定している。刺通突起体(26)は、座部(246)の内側で摺動することが可能であり、閉じられた位置Aから開かれた位置Bへ及び/又はその逆に移動する。
【0026】
添付図面に示された実施態様に従うと、弾性要素(24)はまた、刺通突起体(26)を軸方向に、特に閉じられた位置Aの方向に押し出すことができる弾性押出し面(244)を画定する。言い換えれば、弾性押出し面(244)は、上向き方向の力で中子(264)を押す。
【0027】
添付図面に示された実施態様に従うと、弾性要素(24)はまた、第1チャネル(241)および第2チャネル(242)を内部で画定している。該チャネル(241、242)は、座部(246)を挿入体(20)の外側へ接続し且つ刺通突起体(26)によって画定された第1チャネル(261)および第2チャネル(262)の個々の延長を画定することが意図されている。弾性要素(24)は、刺通突起体(26)の膨らみ部(267)を着座させるのに適した空洞部(247)をも画定している。
【0028】
1の実施態様に従うと、弾性要素(24)は、弾性材料、好ましくはエラストマーで作られる。そのような使用に適したエラストマーは、例えば、シリコーンゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン(SEPS)、スチレン・イソプレン・スチレン(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)、ポリウレタン(PU)、天然ゴム(NR)およびラテックスである。
【0029】
添付図面に示された実施態様に従うと、本体(22)は、弾性要素(24)、刺通突起体(26)およびバイアル(18)のヘッド(180)のために座部を画定している。本体(22)は、刺通突起体(26)のための上部の移動端停止部を画定するための上部停止部(223)備えており、一方、刺通突起体(26)のための下部の移動端停止部は、弾性要素(24)への接触によって画定されている。特に、上部停止部は閉じられた位置Aを画定し、一方、下部停止部は開かれた位置Bを画定している。
【0030】
本体(22)は、弾性要素(24)のための座部を画定し、かつ弾性要素(24)の該第1チャネル(241)と第2チャネル(242)とを夫々延長するのに適した第1チャネル(221)と第2チャネル(222)とを備えている。
【0031】
上述したように、本体(22)はまた、バイアル(18)のヘッド(180)を着座させるのに適した座部(227)を画定している。特に、図示された実施態様においては、座部(227)は、挿入体(20)の本体(22)とバイアル(18)のヘッド(180)との間のスナップ係合接続を与える歯部(228)を備えている。
【0032】
1の実施態様に従うと、本体(22)は、剛性の材料、好ましくは剛性のポリマーで作られている。そのような使用に適しているポリマーは、例えば、刺通突起体(26)に関して上に列記されたものである。
【0033】
本発明の1の実施態様に従うと、本体(22)および弾性要素(24)は、2成分射出成形によって製造される。2成分射出成形に従うと、それ自体公知の仕方で、第1の溶融物(重合のあと剛性のポリマーをもたらすことが意図された)と第2の溶融物(重合のあとエラストマーをもたらすことが意図された)とが、1つの単一の金型内へ、順次または同時に供給される。
【0034】
添付の図面を参照して、本発明に従う挿入体(20)の作動原理が以下に記載される。
【0035】
図8は、刺通突起体(26)が閉じられた位置Aにある場合の本発明に従う挿入体(20)を示している。この構成においては、刺通突起体(26)のチャネル(261、262)は、刺通突起体(26)がその中で摺動するところの座部(246)の壁によって遮断される。さらに、弾性要素(24)のチャネル(241、242)は、刺通突起体(26)の本体によって、すなわち、より具体的には膨らみ部(267)によって遮断される。さらに、閉じられた構成Aにおいては、弾性押出し面(244)によって中子(264)に及ぼされた力は、刺通突起体(26)を本体(22)によって画定された上部停止部(223)と接触するように保つ。
【0036】
図9は、刺通突起体(26)が開かれた位置Bにある場合の本発明に従う挿入体(20)を示している。この構成においては、刺通突起体(26)のチャネル(261、262)は、弾性要素(24)のチャネル(241、242)と連絡している。さらに、開かれた構成Bにおいては、弾性押出し面(244)によって中子(264)に及ぼされた力は、刺通突起体(26)を弾性要素(24)との底面接触から引き離し、かつ本体(22)によって画定された上部停止部(223)と接触するようにそれを戻す傾向にある。
【0037】
閉じられた構成Aから開かれた構成Bへの遷移は、挿入体(20)上へのバイアル(18)の係合によって一般に得られる。特に、ユーザーがバイアル(18)のストッパー(182)を刺通突起体(26)に押し付けると、ストッパー(182)自身が孔を開けられる。このようにして、刺通突起体(26)は、バイアル(18)の内部に貫通し、それとチャネル(261、262)とを接続する。この段階の間、刺通突起体(26)は、弾性押出し面(244)によって中子(264)に及ぼされた力および座部(246)と刺通突起体(26)の本体との間の摩擦のおかげで、軸Xに沿って移動しない。したがって、これらの力は、刺通突起体(26)が閉じられた位置Aに留まることを確実にする。この位置においては、突起体のチャネル(261、262)および弾性要素のチャネル(241、242)は閉じられている。
【0038】
刺通突起体(26)の上部が、バイアル(18)の内部に貫通しているとき、バイアルのストッパー(182)は、フランジ(263)と接触するようになる。この点から、軸Xの方向に沿ってユーザーによってバイアル(18)に及ぼされるさらなる圧力は、バイアル(18)と刺通突起体(26)との累積的な変位を生み出す。この変位の間、ユーザーによって及ぼされた力は、弾性押出し面(244)および座部(246)によって与えられた抵抗に打ち勝たねばならない。この変位の終わりで、バイアル(18)のヘッド(180)は、その座部(227)の内部に位置しており、歯部(228)は、その位置を保つようにスナップ係合している。したがって、歯部(228)は、弾性押出し面(244)によって及ぼされた力に対する反作用を生み出す。この構成においては、刺通突起体(26)は、開かれた位置Bに置かれている。刺通突起体(26)の第1チャネル(261)は、弾性要素(24)の第1チャネル(241)および本体の第1チャネル(221)に接続される。同様に、刺通突起体(26)の第2チャネル(262)は、弾性要素(24)の第2チャネル(242)および本体の第2チャネル(222)に接続される。このような仕方で、バイアル(18)の内部は、2つの別の導管によって外部と接続される。
【0039】
特に、挿入体(20)が、これに係合されたバイアル(18)を伴う開かれた構成であるとき、液体はバイアル(18)の内部から外部へ、典型的には体外循環回路(16)または輸液ラインへと流れることができる。同時に、空気は外部からバイアル(18)の内部へと流れることもできる。このような仕方で、供給された液体量は、バイアル(18)の内部で圧力平衡を保つように同一量の空気によって置き換えられる。
【0040】
最後に、バイアル(18)が挿入体(20)から外されるとき、刺通突起体(26)は、弾性押出し面(244)によって中子(264)に及ぼされた押出し力のおかげで、軸Xに沿って動いている間はバイアル(18)に追随する。このような仕方で、刺通突起体(26)は、ユーザー側のいかなる特別の動作も必要としないで、閉じられた位置Aに自動的に戻される。
【0041】
挿入体(20)がいかにして、上記したこの構造のおかげで、バイアル(18)が存在し挿入体に接続されるときのみ、開かれた構成をとることが一般にできるのか、そしてバイアル(18)が除かれたときに、閉じられた構成に戻ることができるのかに注目すべきである。したがって、バイアル(18)が装着されないときは、刺通突起体(26)が閉じられた位置へ自動的に戻されるので、本発明に従う挿入体(20)は、汚染を避けるように、そして回路(16)の無菌性を高めるように適合される。
【0042】
この観点から、取手(265)(これはユーザーが手動で挿入体(20)の構成を調節することを可能にするものである)を備える選択肢は、設計段階で注意深く考えられなければならない。
【0043】
本発明に従う挿入体(20)は、図3.bに示された解決策の通りに、好ましくは点滴室(161)と連絡のある体外循環回路(16)へ接続される。点滴室(161)は、体外循環回路(16)の内部を流れ且つ患者へ点滴しなければならない液体を空気貯蔵室(162)を通して滴らせる容器である。この点滴作用は、この液体から患者に危険であるかも知れないいかなる気体泡をも除去することが意図されている。
【0044】
本実施態様に従うと、本体(22)の2つのチャネル(221、222)は、点滴室(161)の内部に出現する。このようにして、一度バイアル(18)が挿入体(20)へ接続され、そして刺通突起体(26)が開かれた位置Bへもたらされると、液体はバイアル(18)から点滴室(161)へ、2つのチャネルの1つの内部を流れ、一方、もう1つのチャネルの内部を空気が空気貯蔵室(162)からバイアル(18)へ流れる。
【0045】
この動作配置は特に都合がよい。事実、体外循環回路(16)内に存在する同じ圧力が、チャネルおよびバイアル(18)内で確立される。それ故に、液体の供給は、体外循環回路の内部と外部環境との間のいかなる圧力差によっても影響されない。さらに、体外循環回路(16)からバイアル(18)の内部に入る空気は無菌であり、したがってバイアル(18)から引き続き供給されるべき液体を汚染する危険性は全くない。
【0046】
バイアル(18)から点滴室(161)へ直接に治療上の物質を運ぶための装置を使用することは、2009年11月4日出願日で同一出願人による欧州特許出願第09/175001.8号明細書に開示されている。ここで、点滴室における薬剤配分の動作原理と利点との両面における詳細な記載についての、この以前の出願が参照される。
【0047】
別の実施態様に従うと、本発明に従う挿入体(20)は、図3.aに従う解決策に示されたように、任意のパイプ(160)に沿う体外循環回路(16)へ接続されてもよい。本実施態様に従うと、本体(22)の2つのチャネルの1つ、例えば第1チャネル(221)は、体外循環回路(16)のパイプ(160)へ進み、一方、2つのチャネルのもう1つ、例えば第2チャネル(222)は、外部環境へと進む。このような仕方で、一度バイアル(18)が挿入体(20)へ接続され且つ刺通突起体(26)が開かれた位置Bへもたらされると、液体はバイアル(18)からパイプ(160)へと第1チャネルの内部を流れ、一方、第2チャネルの内部では、空気が外部環境からバイアル(18)へ流れる。
【0048】
この動作配置は、上に記載した配置と比較して多数の追加の特徴を必要とする。事実、圧力平衡がチャネルおよびバイアル(18)内で確立されることを、予め保証することは不可能である。事実、体外循環回路(16)内の圧力が、外部環境に存在する大気圧と正確に同じであることを、予め保証することは不可能である。言い換えれば、液体の供給は、体外循環回路の内部と外部環境との間の何らかの圧力差によって影響されうるであろう。さらに、外部環境からバイアル(18)内部に入る空気は、一般には無菌ではなく、したがってバイアル(18)から引き続き供給される液体を汚染する危険性がありうる。この問題は、公知の仕方で、すなわち外部環境へ接続されたチャネルの端に配置された半透過性膜によって解決されうる。膜は、空気のみが通過することを可能にし、且つどのような汚染物質の通過をも阻止する。
【0049】
本発明の1実施態様に従うと、バイアル(18)からの液体流を調整するための手段が備えられ得る。特に、医療用液体の注入に関係する部門においてそれ自体知られているような、バイアル(18)から体外循環回路(16)へ液体を運ぶチャネルの流れ断面積を変えることができる手段を想定することは可能である。このような手段の幾つかが、例えば、米国特許第4270725号明細書、欧州特許第1731185号公報に記載されている。
【0050】
上述のような本発明に従う挿入体(20)および体外循環回路(16)の実施態様に関しては、当業者は、特定の要件を満たすために、添付している請求の範囲からそれにより逸脱しないで、修正をおこない及び/又は記載された部分を等価な部分で置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0051】
16 体外循環回路
161 点滴室
162 空気貯蔵室
18 バイアル
180 バイアルの円柱状ヘッド
181 バイアルの本体
182 ストッパー
20 挿入体
22 本体
221 第1チャネル
222 第2チャネル
223 上部停止部
227 座部
228 歯部
24 弾性要素
241 第1チャネル
242 第2チャネル
244 弾性押出し面
246 座部
247 空洞部
26 刺通突起体
261 第1チャネル
262 第2チャネル
263 フランジ
264 中子
265 半径方向突起
267 膨らみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアル(18)への接続に適した薬の注入のための挿入体(20)であって、該挿入体(20)は、本体(22)、弾性要素(24)および刺通突起体(26)を備えており、
該刺通突起体(26)は、軸Xを有し、かつ第1チャネル(261)および第2チャネル(262)を画定し、かつ該軸Xに沿って第1の閉じられた位置(A)と第2の開かれた位置(B)との間で本体(22)に対して移動可能であり、および、
該弾性要素(24)は、外力が施与されていないときには、該第1の閉じられた位置に該刺通突起体(26)を保持するように該刺通突起体(26)を押圧する、
前記挿入体(20)。
【請求項2】
該挿入体(20)は、体外循環回路または輸液ラインへの追加的な接続に適している、請求項1に記載の挿入体(20)。
【請求項3】
該刺通突起体(26)は、主として該軸Xに沿って延在し、かつ該軸Xに垂直な平面内に延在しているフランジ(263)を備えている、請求項1に記載の挿入体(20)。
【請求項4】
該弾性要素(24)は、座部(246)を画定し、該座部(246)の内で該刺通突起体(26)がわずかの締めしろをもって着座させられ、かつ該内で該刺通突起体(26)が該閉じられた位置(A)から該開かれた位置(B)まで、及び/又はその逆に、摺動しうる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項5】
該弾性要素(24)は、該刺通突起体(26)を軸方向に該閉じられた位置(A)まで押すことができる弾性押出し面(244)を画定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項6】
該弾性要素(24)は、第1チャネル(241)と第2チャネル(242
)を内部に画定し、該チャネル(241、242)は、座部(246)を該挿入体(20)の外部へ接続する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項7】
該弾性要素(24)によって画定された該第1チャネル(241)および該第2チャネル(242)は、該刺通突起体(26)によって画定された該第1チャネル(261)および該第2チャネル(262)の夫々の延長を画定するのに適している、請求項6に記載の挿入体(20)。
【請求項8】
該刺通突起体(26)が該閉じられた構成(A)であるとき、該刺通突起体(26)の該複数チャネル(261、262)は、その内で該刺通突起体(26)が摺動するところの座部(246)の壁によって遮断され、かつ弾性要素(24)のチャネル(241、242)は、該刺通突起体(26)の本体によって遮断される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項9】
該刺通突起体(26)が該開かれた構成(B)であるとき、該刺通突起体(26)の該チャネル(261、262)は、該弾性要素(24)の該チャネル(241、242)と連絡している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項10】
本体(22)は、該弾性要素(24)のための座部、該刺通突起体(26)のための座部、およびバイアル(18)のヘッド(180)のための座部(227)を画定している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項11】
該座部(227)は、該挿入体(20)の本体(22)と該バイアル(18)の該ヘッド(180)との間にスナップ係合接続を与えるための歯部(228)を備えている、請求項10に記載の挿入体(20)。
【請求項12】
該弾性押出し面(244)によって該刺通突起体(26)に及ぼされた力および座部(246)と該刺通突起体(26)の本体との間の摩擦は、バイアル(18)のストッパー(182)が該刺通突起体(26)に押し付けられるとき、ストッパー(182)自身が穴を開けられ、そして該刺通突起体(26)が軸Xに沿って移動しないで閉じられた位置Aに留まることを確実にする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項13】
該ストッパー(182)が該刺通突起体(26)によって刺通され且つさらにそれに押し付けられるとき、該フランジ(263)は該ストッパー(182)に接触するようになるのに適しており、従って軸Xの方向に沿って該バイアル(18)へ働く更なる圧力は、該バイアル(18)と該刺通突起体(26)との累積的な変位を、その開かれた位置Bの方向へ生み出す、請求項1〜12のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項14】
該本体(22)と該弾性要素(24)は、2成分射出成形手段によって製造される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項15】
歯部(228)は、バイアル(18)をその位置に保つようにバイアル(18)のヘッド(180)とスナップ係合し、該弾性押出し面(224)によって該刺通突起体(26)に及ぼされた力に対する反作用を生み出す、バイアル(18)と結合している請求項1〜14のいずれか1項に記載の挿入体(20)。
【請求項16】
バイアル(18)の内側は、液体がバイアル(18)の内側から外側に流れ出ることが出来るように、かつ同時に空気が外側からバイアル(18)の内側へ流れることができるように、2つの別の導管によって外部へ接続されている、請求項15に記載の挿入体(20)とバイアル(18)。
【請求項17】
ヘッド(180)が、その大きさと形状に関して、請求項10〜14のいずれか1項に記載の挿入体(20)によって画定された該座部(227)に適合するように適している、該ヘッド(180)を備えたバイアル(18)。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の挿入体(20)が、点滴室(161)へ接続されている、点滴室(161)を備えた体外循環回路(16)。
【請求項19】
バイアル(18)が、該挿入体(20)へ接続されて、該2つのチャネルの1つの内部では、液体が該バイアル(18)から該点滴室(161)へ流れ、一方、他のチャネルの内部では、空気が該点滴室(161)から該バイアル(18)へ流れる、請求項18に記載の体外循環回路(16)。


【図1】
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【図2】
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【図3.a】
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【図3.b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−517862(P2013−517862A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550385(P2012−550385)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050517
【国際公開番号】WO2011/092068
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512194765)フレセニアス メディカル ケア ドイチュランド ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】