説明

薬液噴霧装置

【課題】確実に高電圧リークを防ぐことができ、薬液散布を連続して好適に行うことのできる薬液噴霧装置を提供する。
【解決手段】薬液供給パイプ16の先端部に噴霧ノズル12が取り付けられ、噴霧ノズル12に、絶縁部材からなるホルダー20を介して噴霧ノズル12の前方に位置して環状電極22が取り付けられ、環状電極22に高電圧発生装置40から高電圧が印加されることにより、噴霧ノズル12から噴出され、環状電極22内を通過する液滴に帯電させる薬液噴霧装置10において、ホルダー20に、ホルダー20に液滴が付着しないようにホルダー20を覆うカバー38を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
園芸等で殺菌剤や除草剤等の薬液を散布する際には、薬液噴霧装置により薬液を霧状の液滴にして散布するようにしている。一般的な薬液噴霧装置は、薬液タンク、加圧ポンプ、薬液供給パイプおよび噴霧ノズルを有している。また、噴霧される液滴を植物の葉に良好に付着させるために、噴霧ノズルの前方に、絶縁部材からなるホルダーにより支持して環状電極を配置し、この環状電極に高電圧を印加して、環状電極内を通過する液滴に帯電させるようにした静電式の薬液噴霧装置(静電噴霧装置)が知られている。
【0003】
ところで、環状電極を支持するホルダーに薬液が滞留すると環状電極がリークし、噴霧される液滴が帯電しなくなるおそれがある。
この課題を解決するため、特許文献1には、ホルダーに開口または切欠を設けて、噴霧ノズルと環状電極との間に滞留する薬液を外へ逃がすように工夫している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−122091
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の薬液噴霧装置によれば、噴霧薬液が環状電極と噴霧ノズルの間に溜まらないので、通常の薬液にあっては高電圧リークの発生を防止することができる。
しかしながら、発明者が検討したところ、この従来の薬液噴霧装置では、展着剤のように界面活性剤を含み、濡れ性の高い薬液の場合には、ホルダーに単に開口や切欠を設けた程度では、濡れ性が良いため、ホルダーに連続した液膜となって付着し、これによって高電圧リークが発生しやすいという課題が生じた。
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、薬液が展着剤のような濡れ性の高いものであっても、確実に高電圧リークを防ぐことができ、薬液散布を連続して好適に行うことのできる薬液噴霧装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る薬液噴霧装置は、薬液供給パイプの先端部に噴霧ノズルが取り付けられ、該噴霧ノズルに、絶縁部材からなるホルダーを介して噴霧ノズルの前方に位置して環状電極が取り付けられ、該環状電極に高電圧発生装置から高電圧が印加されることにより、前記噴霧ノズルから噴出され、前記環状電極内を通過する液滴に帯電させる薬液噴霧装置において、前記ホルダーに、該ホルダーに液滴が付着しないようにホルダーを覆うカバーを取り付けたことを特徴とする。
【0007】
前記カバーが、ホルダーの側方を包み込むように覆うフード状をなすことを特徴とする。
あるいは前記カバーが、ホルダーから鍔状に外方に突出して、作業者へ液滴が飛散するのを防止するカバーを兼ねることを特徴とする。
また、前記カバーが透明材料で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カバーにより、ホルダーを覆うようにしたので、ホルダーが濡れず、展着剤のような濡れ性の大きな薬液の場合であっても、高電圧リークを完全に阻止でき、中断することなく連続して薬液の散布を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は薬液噴霧装置10の正面図、図2はその噴霧ノズル12の部分を示す一部切欠拡大図である。
薬液噴霧装置10は、薬液タンク(図示せず)、加圧ポンプ(図示せず)、加圧ポンプ駆動電源のバッテリ(図示せず)、薬液供給パイプ14および噴霧ノズル12等の公知の機構を有している。薬液タンクは背負式のもの、定置式のものいずれでもよい。加圧ポンプは、薬液タンクからホース17を通じて薬液供給パイプ14に薬液を加圧して送液する。
【0010】
薬液供給パイプ14は比較的長尺に形成され、中途部上には把持部15が設けられている。
噴霧ノズル12は、薬液供給パイプ14の先端に着脱自在に取り付けられ、公知の機構により薬液を霧状に前方に向けて噴出可能となっている。薬液供給パイプ14の後端側には、噴霧ノズル12のノズル口(図示せず)の開度を調節して、薬液の噴出角度や気泡の混入度を調整する開口度調整部16が設けられている。この開口度調整部16も公知の機構を採用しているので、詳細な説明は省略する。
【0011】
噴霧ノズル12の前方の所定位置には、絶縁部材からなるホルダー20を介して金属板からなる環状電極22が取り付けられている。
ホルダー20は、噴霧ノズル12の基部側に固定ネジ(図示せず)等によって固定されるリング状の取付基部23と、取付基部23にネジ24によって固定される支持台25と、この支持台25に環状電極22を押圧して固定する押圧ネジ26等を有する。
【0012】
支持台25は、噴霧ノズル12の先端部側の周囲に等間隔で位置する3本の脚27(2本を図示)を有し、また脚27の先端部を連結するリング状の支持部28を有する。脚27には雌ねじ孔が形成され、取付基部23側からネジ24によりネジ止めすることにより支持台25が取付基部23に固定される。
上記リング状の支持部28の、先端部内壁には雌ネジ29が形成され、雌ネジ29の奥側には、内方にリング状に突出する受けリング30が形成されている。
【0013】
受けリング30上に環状電極22が配置される。環状電極22はその内側の縁が、受けリング30のリング穴内に僅かに突出する程度の大きさに形成されている。
押圧ネジ26は、雌ねじ29に螺合する雄ネジ32を有し、この雄ネジ32の端部に、押圧ネジ26が支持部28にネジ込まれた際、受けリング30との間で環状電極22を押圧して挟み込む押圧リング33を有する。これにより環状電極22が固定される。押圧リング33は環状電極22とほぼ同じ大きさとなっている。
また、押圧ネジ26の反対側の端部は、外方に鍔状に突出する突出部34が形成され、この突出部34の外端からは軸方向に延びる取付筒35が形成されている。
【0014】
38は本発明にしたがってホルダー20に取り付けられるカバーである。カバー38は、塩化ビニル等の透明樹脂材料で筒状のフードに形成され、噴霧ノズル12、ホルダー20、さらには薬液供給パイプ14の先端側をも覆うようにして、その一端側でホルダー20の押圧ネジ26の上記取付筒35上または支持部28上に、公知の締付バンド39によって取外し自在に固定されている。
【0015】
次に、図1において、40は高電圧発生装置であり、電池を内蔵し、公知のDC−DCコンバータ機構により高電圧を発生させるものである。この高電圧発生装置40は、薬液供給パイプ14に沿わせて引き回したケーブル42により、噴霧ノズル12の前方に配置した前記環状電極22に電気的に接続される。
すなわち、ケーブル42は、複数個の支持板43によって薬液供給パイプ14に沿うよう支持されると共に、先端側では、ホルダー20の、取付基部23、さらには受けリング30を貫通し、その芯線44が環状電極22に接触し、電気的に接続されるのである。
【0016】
なお、ケーブル42は、把持部15に設けられたスイッチ45によって断続され、スイッチ45がオンされることによって高電圧が発生するようになっている。高電圧が発生すると把持部15に設けたランプ46が点灯し、高電圧発生状況を確認できるようになっている。また、スイッチ45は、薬液供給パイプ14を開閉する電磁弁(把持部15内に配設されている)を開閉するスイッチとしても機能する。
【0017】
すなわち、スイッチ45をオンすると、図示しない電磁弁が開き、加圧ポンプによって加圧された薬液が噴霧ノズル12から霧状に噴出される。またこれと同時に、高電圧発生装置40が動作し、高電圧が環状電極22に印加され、環状電極22内を通過する液滴に帯電させるのである。なお、噴霧ノズル12側は接地されており、環状電極22内を通過する液滴は負に帯電する。負に帯電した液滴は、静電効果により植物の葉に付着しやすくなる。
上記、薬液供給パイプ14の開閉弁は電磁弁ではなく、レバーの作用により機械的に開閉される弁機構であってもよい。
【0018】
本実施の形態に係る薬液噴霧装置10は上記のように構成されている。
上記のように、スイッチ45をオンして、負に帯電した薬液を植物に向けて散布することができる。スイッチ45をオンすると高電圧発生装置40が動作し、環状電極22内を通過する液滴を負に帯電させるが、同時に環状電極22側のホルダー20やカバー38は環状電極22と同電位、すなわち正電位となるので、噴霧ノズル12から前方に噴霧され、風等の何らかの原因でノズル12側に跳ね返された液滴はカバー38に付着する。
【0019】
カバー38が存在しないと、跳ね返された液滴はホルダー20に付着する。しかし、ホルダー20は、噴霧ノズル12の周囲に3本の脚27が存在するだけで大きく開放されているので、液滴の付着量はそれほど多くはない。しかも通常の薬液の場合には、脚27等に付着したとしても、表面張力によって玉状となって弾かれ、落下してしまうので、高電圧がリークすることがなく、薬液散布を好適に継続できる。
【0020】
しかしながら、前記したように、薬液が展着剤のような濡れ性の大きなものにあっては、脚27から取付基部23を通り、噴霧ノズル12および薬液供給パイプ14の負電位の部分にまで液膜が形成されやすく、高電圧リークが生じやすかった。
本実施の形態では、カバー38により、ホルダー20や、薬液供給パイプ14の先端側までを覆うようにしたので、ホルダー20が濡れず、展着剤のような濡れ性の大きな薬液の場合であっても、高電圧リークを完全に阻止でき、中断することなく連続して薬液の散布を行うことができるのである。
【0021】
図3は薬液噴霧装置10の他の実施の形態を示す正面図である。図1に示す薬液噴霧装置10と同一の部材は同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態におけるカバー38はフード状のものではなく、透明樹脂製で比較的剛性の有する鍔状のカバー38に形成している。この鍔状のカバー38をホルダー20の前記取付筒35に取り付けるには、例えば、カバー38の中央部に取付筒35が嵌入する孔を設けて、カバー38をこの取付筒35に嵌め込み、取付筒35外壁にリング状の締付ネジ(図示せず)を螺合するなどして取り付けることができる。この取付手段は特に限定されるものではない。
【0022】
本実施の形態では、カバー38によって、カバー後方(噴霧ノズル12側)を覆うことになるので、負に帯電し、風等により跳ね返った液滴はカバー38の前面側に付着し、やはりホルダー20を濡らすことがないので、高電圧リークを防止し、継続して薬液の散布を行える。また、カバー38は鍔状に外方に突出しているので、作業者へ液滴が飛散するのを防止することもできる。カバー38を透明部材で形成することによって、噴霧作業の妨げにもならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】薬液噴霧装置の一例を示す正面図である。
【図2】噴霧ノズル部の一部切欠拡大図である。
【図3】薬液噴霧装置の他の実施の形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 薬液噴霧装置
12 噴霧ノズル
14 薬液供給パイプ
15 把持部
16 開口度調整部
17 ホース
20 ホルダー
22 環状電極
23 取付基部
24 ネジ
25 支持台
26 押圧ネジ
27 脚
28 支持部
29 雌ネジ
30 受けリング
32 雄ネジ
33 押圧リング
35 取付筒
38 カバー
39 締付バンド
40 高電圧発生部
42 ケーブル
44 芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液供給パイプの先端部に噴霧ノズルが取り付けられ、該噴霧ノズルに、絶縁部材からなるホルダーを介して噴霧ノズルの前方に位置して環状電極が取り付けられ、該環状電極に高電圧発生装置から高電圧が印加されることにより、前記噴霧ノズルから噴出され、前記環状電極内を通過する液滴に帯電させる薬液噴霧装置において、
前記ホルダーに、該ホルダーに液滴が付着しないようにホルダーを覆うカバーを取り付けたことを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項2】
前記カバーが、ホルダーの側方を包み込むように覆うフード状をなすことを特徴とする請求項1記載の薬液噴霧装置。
【請求項3】
前記カバーが、ホルダーから鍔状に外方に突出して、作業者への液滴飛散防止カバーを兼ねることを特徴とする請求項1記載の薬液噴霧装置。
【請求項4】
前記カバーが透明材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の薬液噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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