説明

薬液噴霧装置

【課題】生体の内部に薬液を容易に導入して、生体内の所定の部位に薬液を確実に投与することができる薬液噴霧装置を提供する。
【解決手段】薬液Dを生体内部の目的部位に噴霧投与するための薬液噴霧装置1であって、目的部位に対して位置決めされた状態で保持される保持部材2と、保持部材に設けられ、薬液を保持部材の一方の端部から他方の端部へ導く供給用孔25と、供給用孔に取り付けられ、薬液を供給用孔に供給する薬液供給部4と、供給用孔に供給された薬液を噴霧する噴霧口9と、薬液に電圧を印加する電圧印加部5と、を備え、電圧印加部により薬液を帯電させた状態で、噴霧口における薬液の電位と異なる生体内の部位に向けて噴霧口から霧状に噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者等の所定の部位に薬剤を含む薬液を噴霧するための薬液噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被験者(生体)の患部等の所定部位に薬液等を投与することが行われてきた。この場合において、薬液等を安定させて所定部位に投与することは困難であり、薬液等を塗布する部位が口腔や鼻孔等の穴部の内部の部位である場合には、薬液等の投与作業をより困難なものにしていた。
一方で、特許文献1に示すように、薬液を体内の標的部位にデリバリーするカテーテルを備えるカテーテルアセンブリーが知られている。このカテーテルアセンブリーにおける付勢機構としては、例えば加圧ガス、真空、求心力、プランジャー、電位の傾き等を用いたものが採用可能である。付勢機構として電位の傾きを利用する場合、カテーテルは、全長にわたる内腔と、活性電極を含む近位端と、対極とノズルとを含む遠位端と、電気エネルギー源としての電池またはパルス発生器等を有する構成をとる。そして、当該電気エネルギー源に活性電極と対極が接続されている。
そして、帯電した治療薬は、2つの電極間の電位の傾きにより移動し、ノズル部を通って標的部位に至るとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−527023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示すカテーテルアセンブリーでは、近位端の電極と遠位端の電極との間に電位差が設けられているに過ぎないので、ノズル部から放出された微粒子状の治療薬には、主に重力だけが作用することとなり、電位の傾きの作用を受けない。したがって、放出された薬液は方向性を失いやすくなって目的部位に付着しないことがある結果、薬液の投与が不十分になりやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、生体の内部に薬液を容易に導入して、生体内の所定の部位に薬液を確実に投与することができる薬液噴霧装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の薬液噴霧装置は、薬液を生体内部の目的部位に噴霧投与するための薬液噴霧装置であって、前記目的部位に対して位置決めされた状態で保持される保持部材と、前記保持部材に設けられ、前記薬液を前記保持部材の一方の端部から他方の端部へ導く供給用孔と、前記供給用孔に取り付けられ、前記薬液を前記供給用孔に供給する薬液供給部と、前記供給用孔に供給された前記薬液を噴霧する噴霧口と、前記薬液に電圧を印加する電圧印加部と、を備え、前記電圧印加部により前記薬液を帯電させた状態で、前記噴霧口における前記薬液の電位と異なる前記生体内の部位に向けて前記噴霧口から霧状に噴霧することを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、薬液供給部により供給される薬液は、電圧印加部により電圧を印加された状態で、保持部材に設けられた供給用孔を介して噴霧口に導かれる。ここで、保持部材は、生体内部に位置決めされた状態で保持されるので、薬液供給部により供給される薬液は、供給用孔を通過することで生体の内部に導かれる。また、噴霧口における薬液は、生体との間で所定の電位差を有しているので、帯電した状態で霧状に噴霧されて、薬液の微粒子として生体内の部位に確実に付着する。この結果、生体の内部に薬液を容易に導入して、生体内の所定の部位に薬液を確実に投与することができる。
【0008】
また、上記の薬液噴霧装置において、前記薬液を充填するシリンダ部材と、前記シリンダ部材にスライド自在に挿入されたピストン部材と、を有するシリンジと、先端部に前記噴霧口を有し、前記供給用孔に挿通され、前記シリンジから前記噴霧口に前記薬液を導く第1チューブ体と、を備えることとしてもよい。
この発明によれば、第1チューブ体を供給用孔に挿通した状態でピストン部材を押し込むことにより、シリンダ部材に充填された薬液は、第1チューブ体を経て噴霧口に導かれるとともに、供給用孔を通過する。供給用孔が設けられた保持部材は、生体内部に位置決めされた状態で保持されるので、供給用孔を通過した薬液は、生体の内部に導かれる。これにより、噴霧口に導かれた薬液を、生体内の所定の部位に向けて確実に噴霧させることができる。
【0009】
また、上記の薬液噴霧装置において、前記第1チューブ体は、前記供給用孔に挿通させたときに前記噴霧口が前記他方の端部よりも前記目的部位側に突出するような長さを有することとしてもよい。
この発明によれば、生体内部の目的部位に対して噴霧口をより近づけ、薬液を投与する範囲を狭めることが可能となる。
【0010】
また、上記の薬液噴霧装置において、前記第1チューブ体は弾性を有する材料で形成され、前記第1チューブ体の先端側には、該第1チューブ体の軸線に対して一定の角度で曲げられた曲がり癖部が形成されていることとしてもよい。
この発明によれば、薬液を投与する方向を、先端側において第1チューブ体の軸線に対して曲げることができる。このため、例えば、目的部位が人体の咽喉部である場合のように、口腔において保持される第1チューブ体の軸線上に薬液を投与する目的部位が配置されていない場合であっても、薬液を目的部位に確実に投与することができる。
【0011】
また、上記の薬液噴霧装置において、前記供給用孔の前記他方の端部には、前記噴霧口が形成され、前記薬液を充填するシリンダ部材と、前記シリンダ部材にスライド自在に挿入されたピストン部材と、を有するシリンジと、前記供給用孔に挿通され、前記シリンジから前記供給用孔に前記薬液を導く第2チューブ体と、を備えることとしてもよい。
この発明によれば、ピストン部材を押し込むことにより、シリンダ部材に充填された薬液は、第2チューブ体及び供給用孔を経て、供給用孔の他方の端部に形成された噴霧口に導かれる。噴霧口が形成された保持部材は、生体内部に位置決めされた状態で保持されるので、噴霧口を通過した薬液は、生体の内部に導かれる。これにより、噴霧口に導かれた薬液を、生体内の所定の部位に向けて確実に噴霧させることができる。
【0012】
また、上記の薬液噴霧装置において、前記電圧印加部は、前記保持部材の一方の端部側に配置されていることとしてもよい。
この発明によれば、保持部材の他方の端部側に保持される目的部位と電圧印加部とを離間させて配置することができる。
【0013】
また、上記の薬液噴霧装置において、前記薬液供給部の少なくとも一部を収容するケース体を有し、前記薬液供給部は、該ケース体に着脱自在に取り付けられていることとしてもよい。
この発明によれば、薬液供給部をケース体に着脱自在に取り付けられるように構成するとともに薬液供給部を使い捨てることで、一の薬液が付着した薬液供給部に他の薬液が混入することを防止することができる。
【0014】
また、上記の薬液噴霧装置において、前記保持部材には、内視鏡の挿入部を挿通して該挿入部を前記生体の穴部に案内する挿入用孔が形成されていることとしてもよい。
この発明によれば、挿入用孔を通して内視鏡の挿入部を穴部内に挿入することにより、穴部内に薬液を噴霧するとともに、穴部内を内視鏡で観察することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の薬液噴霧装置によれば、生体の内部に薬液を容易に導入して、生体内の所定の部位に薬液を確実に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例を説明するための咽喉部の麻酔薬投与位置を示す被験者の頭部の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の薬液噴霧装置を口部に適用したときの断面図である。
【図3】同薬液噴霧装置の装置本体の断面図である。
【図4】図4(a)は同薬液噴霧装置のマウスピースの断面図であり、図4(b)は図4(a)におけるA1方向矢視図である。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例の薬液噴霧装置を口部に適用したときの断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の薬液噴霧装置を口部に適用したときの断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態の薬液噴霧装置を口部に適用したときの断面図である。
【図8】図8(a)は同薬液噴霧装置のマウスピースの断面図であり、図8(b)は図8(a)におけるA2方向矢視図であり、図8(c)は図8(a)におけるA3方向矢視図である。
【図9】本発明の実施形態の変形例の薬液噴霧装置を耳部に適用したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る薬液噴霧装置の第1実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。
この薬液噴霧装置は、帯電した薬液(薬剤)を霧状にして、被験者(生体)に形成された口腔、鼻孔又は耳孔等の穴部内の所定部位(目的部位)に噴霧する装置である。
本実施形態の薬液噴霧装置は、例えば、扁桃腺、口蓋垂、鼻腔又は耳道等が炎症を起こした場合に、薬液を投与するために用いられる。以下の実施形態では、薬液噴霧装置により口腔内の咽喉部(所定部位)に液状の麻酔薬を投与した後で、咽喉部を内視鏡で観察することを例にとって説明する。なお、使用する薬液(薬剤)としては麻酔薬に限ることなく、治療薬等のような薬液として調製可能な薬剤であれば各種の薬剤を適用可能である。
【0018】
図1に示すように、内視鏡と接触することにより負担を感じる部位は口腔内の奥、咽喉部Tの範囲R1に多く集中しており、咽喉部Tを内視鏡で観察するときには、この範囲R1を麻酔薬により麻酔することが望まれている。
【0019】
図2に示すように、薬液噴霧装置1は、略円柱状のマウスピース(保持部材)2と、マウスピース2に装着して用いられる装置本体3とを備えている。そして、マウスピース2は、口部(開口)H1において、上下の歯H2で噛むことにより保持されるように構成されている。これにより、マウスピース2は、生体内の所定部位(目的部位)に対して位置決めされた状態で保持される。
図3に示すように、装置本体3は、麻酔薬Dを供給する薬液供給部4と、麻酔薬Dに電圧を印加する電圧印加部5と、を有している。そして本実施形態では、装置本体3は、薬液供給部4の一部及び電圧印加部5を収容する箱状のケース体6を有している。
【0020】
薬液供給部4は、先端部に麻酔薬Dを霧状に噴霧する噴霧口9が形成された噴霧ノズル(第1チューブ体)10と、噴霧ノズル10の基端部に接続されたシリンジ11と、を有する。なお、シリンジ11の先端部には、円管形状の電圧印加電極12が設けられている。
【0021】
噴霧ノズル10は、例えば、非導電性材料の四フッ化エチレン樹脂製で柔軟な可撓性を有する管状の部材である。また、噴霧口9は、噴霧ノズル10の先端部に接合固定することにより設けられた樹脂キャップ13に形成されている。樹脂キャップ13の外径は、噴霧ノズル10の外径と略同一となるように設定されている。なお、噴霧ノズル10の外径、内径、長さ、及び噴霧口9の内径等は、薬液の種類や生体内の目的部位等に応じて、適宜設定される。本実施形態では、噴霧ノズル10の外径、内径、長さは、それぞれ1mm、0.7mm、100mmの細管状に設定され、噴霧口9の内径は、0.1mmに設定されている。
シリンジ11は、電圧印加電極12の基端部に接続され、麻酔薬Dを充填するシリンダ部材14と、シリンダ部材14にスライド自在に挿入されたピストン部材15と、を有している。
【0022】
噴霧ノズル10の基端部は、ケース体6の側面6aに形成された孔部6bを挿通してケース体6内に取付けられている。電圧印加電極12は、後述する電極コンタクト部材20と着脱自在となっている。
そして、噴霧ノズル10、シリンジ11及び電圧印加電極12は、ケース体6に、不図示の蓋体で覆われた不図示の開口部を通してそれぞれ着脱自在に取付けられていて、ディスポザブル部品として、症例に応じて使用後廃棄される。
ケース体6において、孔部6bに対向する位置には孔部6cが形成され、ピストン部材15の基端側が孔部6cから露出している。このため、シリンダ部材14に対してピストン部材15を押込むことで、シリンダ部材14内に充填された麻酔薬Dを、電圧印加電極12及び噴霧ノズル10を通して噴霧口9に送液することが可能となっている。
【0023】
電圧印加部5は、電池等の電源18と、電源18の電圧を昇圧する電圧発生回路19と、電極コンタクト部材20と、電圧印加電極12と、電圧発生回路19の運転/停止状態を切替える動作スイッチ21と、を備えている。電圧発生回路19は、電源18、電極コンタクト部材20及び動作スイッチ21とそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
電圧発生回路19は、電源18の電圧を高圧トランス(圧電方式又は巻線方式)より昇圧し、例えば約5kVの印加電圧である高電圧を発生させ、発生させた高電圧を電極コンタクト部材20を介して電圧印加電極12に供給する。
電圧発生回路19は、動作スイッチ21等によって動作を制御され、高電圧の発生を制御される。また、電圧発生回路19には、電圧の大きさを調整したり極性を変更したりするスイッチが別に設けられていても良い。
【0025】
電極コンタクト部材20は、電圧印加電極12における高電圧の印加を集中させるために、印加方向に先細な針形状を有している。電圧印加電極12としては、例えばステンレス製の電極を用いることが好適である。なお、電極コンタクト部材20は、一般的な電気接触子の金メッキされたコンタクトプローブなどでもよい。
また、電圧発生回路19からは、被験者等の生体の一部と接触する0V電位となるグランド線22が外部に引き出されている。この生体の一部は、例えば指である。これにより麻酔薬Dが投与される咽喉部Tの電位はグランドとなる。つまり、口腔内の咽喉部Tは、高電圧が印加する部位である、例えば噴霧口9における麻酔薬Dの電位とは異なる電位となる。
【0026】
また、電圧発生回路19の内部には、高電圧の安全性対策として、図示しない例えば高抵抗回路や過電流検出回路等が組み込まれている。高抵抗回路として、電極コンタクト部材20には、スパークや生体への電撃を防止する保護用の高抵抗が直列に配置されている。また、過電流検出回路は、電圧発生回路19が電圧印加電極12に高電圧を供給した際に流れる電流を検出し、電流値が予め設定された設定値以上になったときに、電圧発生回路19を停止させ、高電圧の発生を停止させる。なお、被験者等の生体への安全性を加味すると、過電流検出回路における設定値は、約100μA以下、または少なくとも約10μA以下に設定されることが好適である。
なお、高電圧の安全性対策として上記に限定する必要はなく、例えば電圧発生回路19は、シリンジ11内の麻酔薬Dがなくなると高電圧の発生を停止する図示しない検出センサを設けても良い。言い換えると電圧発生回路19は、麻酔薬Dを噴霧ノズル10に送液中のときにのみ、高電圧を発生させて供給するとしても良い。
【0027】
電圧印加電極12は、電圧発生回路19から電極コンタクト部材20を介して供給された高電圧を噴霧ノズル10内の麻酔薬Dに印加する電極である。詳細には、電圧印加電極12は、噴霧ノズル10の内径と略同一の内径を有する円管形状をなし、内部に麻酔薬Dを送液するための貫通穴12aが形成されている。これにより、電圧印加電極12は、麻酔薬Dに電気的に接触するように構成されている。また、電圧印加電極12の各端部は、例えば図示しない接着剤等によりシリンダ部材14の先端部と噴霧ノズル10の基端部に、水密を確保するようにそれぞれ強固に接合されている。電圧印加電極12を形成する材料としては、導電性の金属、導電性樹脂、導電性膜が形成された樹脂等を使用することができ、例えば耐蝕性ステンレス等を好適に採用することができる。
【0028】
電圧印加電極12は、噴霧ノズル10内の麻酔薬Dが貫通穴12aに接触することで、噴霧ノズル10内の麻酔薬Dを介して噴霧口9付近の麻酔薬Dに高電圧を印加する。これにより麻酔薬Dは、帯電され且つ霧化状の微粒子(液体微粒子)として噴霧口9から噴霧される。その際、高電圧が+側極性の場合は、液体微粒子は+側極性に帯電し、高電圧が−側極性の場合は、液体微粒子は−側極性に帯電する。一般に被験者等の生体は0V近傍になっており、また本実施形態ではグランド線22によって生体は0Vになっているため、生体と噴霧口9における麻酔薬D(帯電している液体微粒子)は電位が異なる。よって+側極性、又は一側極性に帯電している液体微粒子は、積極的に噴霧口9における麻酔薬Dとは電位の異なる部位である口腔内の咽喉部Tに付着する。
【0029】
上述したように、シリンダ部材14内には麻酔薬Dが充填され、電圧印加部5における電圧発生回路19は高電圧を発生させ、電圧印加電極20は高電圧を麻酔薬Dに印加する。これにより高電圧が印加された麻酔薬Dは、帯電された液体微粒子として噴霧される。このようにシリンダ部材14と電圧印加部5は、高電圧が印加された麻酔薬Dから帯電された液体微粒子を生成する生成部でもある。
【0030】
図4に示すように、マウスピース2は、楕円形形状をこの楕円形形状に直交する方向に延ばした形状のマウスピース本体部2aと、マウスピース本体部2aの軸線方向の両端部から径方向外側に突出するようにそれぞれ形成された鍔状の位置決め部2b、2cと、で構成されている。
マウスピース本体部2aには、薬液供給部4により供給された薬液を、一方の端部に設けられた一方の開口25aから他方の端部に設けられた他方の開口25bへ導く供給用孔25が形成されている。また、本実施形態においては、マウスピース2には、図2に示すように、内視鏡E1の挿入部E2を挿通して挿入部E2を被験者の口腔内に案内する挿入用孔26が形成されている。この内視鏡E1の挿入部E2が挿入用孔26を挿通するときには、挿入部E2は挿入用孔26の内周面に摺接し、挿入用孔26の内周面に沿う状態でガイドされて口腔内に送り込まれることとなる。
図4に戻って、供給用孔25及び挿入用孔26は、マウスピース本体部2aの軸線に沿うようにそれぞれ形成されている。そして図4(b)に示すように、マウスピース本体部2aの位置決め部2b側の側面において、比較的大きな孔である挿入用孔26の開口が略中央部に、比較的小さな孔である供給用孔25の一方の開口25aが周辺部にそれぞれ位置するように構成されている。
そして、供給用孔25の内径は、噴霧ノズル10の外径とほぼ等しくなるように設定されている。これにより、噴霧ノズル10が、供給用孔25に挿通して取り付けられるようになっている。
【0031】
マウスピース2の材質は軽量化のために樹脂とされ、被験者の歯の噛み締めに耐える剛性を有する材質、例えば、耐薬品性のある医療用プラスチック(ポリサルフォン、ポリメチルペンテン、TPX等)の材質で形成されている。
そして、図2に示すように、マウスピース2を被験者の口部H1に保持して、噴霧ノズル10を供給用孔25に挿通させた状態でケース体6の側面6aを供給用孔25の一方の開口25aの周縁部に当接させたときに、噴霧口9が供給用孔25の他方の開口25bの位置に配される。これにより、マウスピース2及び口腔内の咽喉部Tに対して噴霧口9が位置決めされるとともに、噴霧口9が口腔内の咽喉部Tに対向する位置に配置されるように構成されている。
なお、前述の電圧印加部5は、この供給用孔25の一方の開口25a側に配置されている。
【0032】
次に、以上のように薬液噴霧装置1の使用方法について説明する。
なお、薬液噴霧装置1の使用を開始する前には、動作スイッチ21を停止状態になっている。
まず、所望する量の麻酔薬Dを、噴霧ノズル10、電圧印加電極12及びシリンダ部材14が一体となったもののうちのシリンダ部材14内に充填し、ピストン部材15をシリンダ部材14に取付ける。そして、噴霧ノズル10、電圧印加電極12及びシリンジ11を一体にして、不図示の蓋体を開いて不図示の開口部からケース体6に取付ける。
次に、被験者の口部H1にマウスピース2を保持する。そして、噴霧ノズル10を供給用孔25に挿通させるとともに、ケース体6の側面6aを供給用孔25の一方の開口25aの周縁部に当接させる。このとき、噴霧口9は口腔内の咽喉部Tに対向する位置に配置される。
次に、シリンダ部材14に対してピストン部材15を押込むことで、シリンダ部材14内に充填された麻酔薬Dを、電圧印加電極12及び噴霧ノズル10を通して噴霧口9に送液して供給する。
【0033】
ピストン部材15を押込む際に、動作スイッチ21を運転状態にすると、電圧発生回路19から発生した高電圧が、電極コンタクト部材20を介して電圧印加電極12に供給される。この高電圧は、電圧印加電極12によって噴霧ノズル10内の麻酔薬Dに印加される。つまり、噴霧ノズル10内の麻酔薬Dには、高電圧が印加される。
【0034】
噴霧口9における麻酔薬Dは、外部の空気との間に液体と気体における界面を形成している。この界面に電圧が作用すると、界面は麻酔薬Dの表面に働く静電気力によって電気流体力学的に不安定になり、不安定点が発生する。この不安定点から帯電した霧化状態の液体微粒子が噴霧される。また界面に高電圧が作用し、噴霧口9における界面の電荷密度が臨界値に達すると、麻酔薬Dの表面から細い液糸が引き出され、さらに液糸が伸縮する。
このとき、液糸の先端から麻酔薬Dが、多数の液体微粒子として、細い液糸から分裂する。さらに、高電圧の値が大きくなると、細い液糸における界面はさらに不安定になり、多数の不安定点が同時に発生する。麻酔薬Dは、これら不安定点から、帯電した完全な霧化状態の液体微粒子として噴霧口9から多数噴霧される。
【0035】
上述したように高電圧が麻酔薬Dに印加された際、噴霧口9における麻酔薬Dと口腔内の咽喉部Tの間には、電位差が生じる。つまり電圧発生回路19は、高電圧を発生させて、高電圧を麻酔薬Dに印加させることで、噴霧口9における麻酔薬Dと口腔内の咽喉部Tの間に電位差を生じさせる。このとき噴霧口9から口腔内の咽喉部Tに向かって図2に示す電気力線Lが形成される。
噴霧され、帯電している上述した液体微粒子は、噴霧口9からこの電気力線Lに従って、噴霧口9における麻酔薬Dとは電位の異なる部位であり、電気力線が形成された範囲内の口腔内の咽喉部Tに向けて選択的に投与される。その際、帯電している液体微粒子は、電位が0Vである口腔内の咽喉部Tに付着する。つまり麻酔薬Dは、液体微粒子として噴霧口9における麻酔薬Dとは電位の異なる部位である口腔内の咽喉部T内、言い換えると目的部位にのみ、選択的に投与される。
【0036】
なお、電圧発生回路19が印加する電圧の大きさを変えると、麻酔薬Dの液体微粒子の径を変化させることができる。
次に、マウスピース2の挿入用孔26から内視鏡E1の挿入部E2を挿通し、口腔内の咽喉部Tを観察する。
【0037】
こうして、本発明の第1実施形態の薬液噴霧装置1によれば、マウスピース2は、被験者等の生体の口部H1に保持されるとともに、噴霧口9の位置はマウスピース2に対して位置決めされているので、噴霧口9の位置は口部H1に対して位置決めされる。
また、薬液供給部4から供給されて霧状に噴霧される麻酔薬Dは、電圧印加部5により帯電した状態にされているので、口腔内の咽喉部Tと麻酔薬Dとの電位差により形成される電気力線Lに従って、帯電した霧状の麻酔薬Dを口腔内の咽喉部Tに案内して付着させることが可能となる。
このため、ばらつきを低減させて咽喉部Tに麻酔薬Dを確実に投与させることができる。
また、噴霧ノズル10を供給用孔25に挿通させた状態でケース体6の側面6aを供給用孔25の一方の開口25aの周縁部に当接させることで、噴霧口9はマウスピース2に対して位置決めされる。また、マウスピース2は口部H1に保持されているので、噴霧ノズル10の先端部に形成された噴霧口9を被験者の口部H1に対して位置決めすることができる。
そして、シリンダ部材14に充填した麻酔薬Dをピストン部材15で噴霧ノズル10側に押出すことにより、噴霧口9から麻酔薬Dを霧状に噴霧することができる。
【0038】
また、マウスピース2を被験者の口部H1に保持することによって、供給用孔25が咽喉部T方向を規定するため(咽喉部の中央方向に規定するため)、挿通される噴霧ノズル10は咽喉部Tに必ず対向配置することができる。つまり、噴霧ノズル10をマウスピース2の供給用孔25に挿通することにより、被験者の口腔内に麻酔薬Dを容易に導入することができる。また、噴霧ノズル10の口腔内での位置を気にする必要が無く、投与位置のバラツキを抑制することもできる。
さらに、本実施形態ではマウスピース2の供給用孔25の一方の開口25aの周縁部とケース体6の側面6aが当接することにより、噴霧ノズル10の噴霧口9の口腔内位置を規定することができる。噴霧ノズル10の噴霧口9の位置は、口腔内で一定となり、噴霧口9と投与すべき咽喉部Tの間隔は一定に維持される。このことは、噴霧口9付近と咽喉部Tの間で形成される電気力線の形成形状(広がり形状)を一定に近づけることに寄与し、咽喉部Tでの電気力線形成領域、言い換えると、麻酔薬投与領域を一定の面積にすることができる。
よって、常に、咽喉部Tを狙って、一定の領域の表面に麻酔薬Dを噴霧でき、操作者による投与すべき位置のばらつきを極力低減することができる。言い換えると、麻酔が必要とされる部位に、操作者に関わらず、毎回、同じ場所に噴霧することができる。
【0039】
このように本実施形態は、気体圧力によらず口腔内の咽喉部Tにばらつきが少なく、常に安定して麻酔薬Dを投与することができる。また本実施形態は、液体微粒子を帯電させているため、液体微粒子を舞い上がらせることなく口腔内の咽喉部Tにのみに確実に付着させることができる。これにより本実施形態は、内視鏡E1の挿入部E2が生体と接触する咽喉部Tに確実に麻酔薬Dを投与でき、被験者に与える負担を軽減させて穴部内を内視鏡E1で観察することができる。
【0040】
また、本実施形態は、麻酔薬Dをシリンダ部材14内や噴霧ノズル10内部にて霧化させず、あるいは、麻酔薬Dを霧化した状態で噴霧口9まで送気せず、また麻酔薬Dの咽喉部Tへの投与に気体圧力を用いていない。
本実施形態は、噴霧ノズル10内に麻酔薬Dを充填し、麻酔薬Dを噴霧口9にて霧化し、電気力線Lに従って咽喉部Tに投与する。よって本実施形態では、気体圧力によって麻酔薬Dが拡散して咽喉部Tに投与される麻酔薬Dの量が減少することを防止できる。また、本実施形態は、噴霧口9から麻酔薬Dが垂れて咽喉部T以外の部位に付着することも防止できる。よって本実施形態は、口腔内の咽喉部Tに選択的に麻酔薬Dを投与することができる。
【0041】
なお麻酔薬Dには、乾燥後固形化する成分などが含有されていることもある。例えば、ネブライザーなどに使用される超音波霧化原理において、固形化物は超音波の伝播を阻害するため、しばしば霧化が停止してしまう。また超音波霧化原理には、液体微粒子を微細化するために、数μmの穴径を有する例えばメッシュが用いられる。しかし固形化した成分を含む麻酔薬は霧化する際に、メッシュがつまると、霧化が停止してしまう。しかしながら、本実施形態は、超音波やメッシュを用いずに高電圧を用いるため、多少の大きさの固形成分であれば、容易に帯電した完全な霧化状態の液体微粒子を噴霧できる。
【0042】
また、麻酔薬Dの導電率は一般に70〜150μS/cm程度であり、電圧発生部である電圧発生回路19によって、印加電圧の大きさを変えることにより、液体微粒子の径を可変とすることができる。例えば本実施形態は、電圧発生回路19による印加電圧を大きくすることで、液体微粒子の径を小さくすることができる。
これにより本実施形態は、最適な液体微粒子の径を選択することができる。咽喉部Tに投与する場合、肺内への流入を低減するためにも比較的大きな液体微粒子径が望ましいと考えられ、例えば、噴霧口9の直径が略0.1mm、印加電圧が略+5kVの場合、略50μm以上の径を有する液体微粒子を咽喉部Tに選択的に投与にすることができる。肺内への流入を懸念する場合、10μm以下の液体微粒子径は生成されないほうが良いと考えられる。
【0043】
また本実施形態は、シリンジ11からの麻酔薬Dの送液量を大きくさせることで、単位時間当りの麻酔薬Dの投与量を増加させることができることは言うまでも無い。
【0044】
また、例えば液体微粒子が帯電していない場合、液体微粒子には、液体微粒子の表面張力により球状形状を維持しようとする力が働く。この力は、液体微粒子の径が小さいほど強く作用する。そのため液体微粒子が帯電していないと、液体微粒子は口腔内の咽喉部T表面に付着せずに舞い上がるドライフォグ現象が発生しやすく、口腔内を浮遊し、呼気と共にマウスピース2に形成された開口穴より体外に排出される。麻酔薬Dを投与する場合、投与量はなるべく正確に管理すべき項目である。そのため本実施形態では、液体微粒子を帯電させており、呼気に打ち勝って、咽喉部Tの表面に電気的に、積極的に付着するようにしている。これにより本実施形態は、咽喉部Tに選択的に麻酔薬Dを投与することができ、咽喉部Tへの投与量を管理しやすい。
【0045】
また本実施形態は、噴霧ノズル10の噴霧口9を咽喉部Tに近づけることで麻酔薬Dの投与面積を小さくでき、噴霧ノズル10を挿入方向に沿って後退させて噴霧口9を咽喉部Tから離すことで麻酔薬Dの投与面積を大きくすることができる。
【0046】
また、薬液供給部4をケース体6に着脱自在に取付けられるように構成するとともに薬液供給部4を使い捨てることで、一の麻酔薬Dが付着した薬液供給部4に他の麻酔薬Dが混入することを防止することができる。
より詳しくは、本実施形態では、2種類以上の麻酔薬Dと色素薬液等が投与される場合においても、マウスピース2を口部H1に保持した状態で、各種薬液が充填されているシリンジ11と電圧印加電極12と噴霧ノズル10のみを交換し、異なる麻酔薬D等の薬液を選択して咽喉部Tに投与することができる。
より詳しくは、2種類以上の麻酔薬Dと色素薬液等が投与される場合、本実施形態は、マウスピース2を口部H1に保持した状態で、各種薬液が充填されているシリンジ11と電圧印加電極12と噴霧ノズル10のみを交換し、異なる麻酔薬D等の薬液を選択し、投与することができる。
【0047】
また本実施形態は、グランド線22によって電圧発生回路19と指を接触させ、口腔内の咽喉部Tを0Vの電位とし、噴霧口9における麻酔薬Dと電位の異なる部位にしている。これにより本実施形態は、帯電した液体微粒子を確実に咽喉部Tに付着させることができるため、咽喉部Tに選択的に麻酔薬Dをより容易に投与することができる。また本実施形態は、グランド線22によって生体が帯電した液体微粒子を受け取ることによる+極性側電位、または一極性側電位になることを防止でき、安全性を向上させることができる。
【0048】
また、マウスピース2の供給用孔25の他方の開口25b側に配置された口腔に対して、電圧印加部5を供給用孔の一方の開口25a側に配置することにより、電圧印加部5と口腔とを離間させて配置することができる。従って、電圧印加部5を生体から遠ざけることができるため、安全である。
また、噴霧ノズル10は非導電材料で形成されていて、生体に電圧が作用することがないため安全である。
【0049】
一般的に、塗装等に使用される静電噴霧ノズルは、金属製でノズル自身が電圧印加電極となり、噴霧口に電圧を作用させる。本実施形態は、生体に適用するために、静電噴霧ノズルの代わりに非導電性材料で形成されている噴霧ノズル10を用い、電圧印加電極12と噴霧ノズル10の噴霧口9を異なる位置に配置しているにもかかわらず、噴霧口9から帯電した液体微粒子を噴霧でき、また電圧印加電極12を生体から遠ざけることができ、生体に電圧が作用することがないため安全である。
また本実施形態は、噴霧口9からの噴霧に電界を用いているために、液体微粒子を付着させるための電源18の消費電力を少なくできる。さらには、高電圧を直流成分として麻酔薬Dに印加せず、短いパルス状に複数印加する(例えば、パルス幅1msec、10Hzにて印加する)ことにより、さらに、電源18における電力の消耗を低下させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、図5の変形例に示すように、噴霧ノズル10は、供給用孔25に挿通させたときに、噴霧口9が供給用孔25の他方の開口25bよりも口腔内の咽喉部T側に突出するような長さを有することとしても良い。また、この場合に、噴霧ノズル10を供給用孔25に挿通させた状態で、ケース体6の側面6aを供給用孔25の一方の開口25aの周縁部に当接させることにより、噴霧口9を口腔内の咽喉部Tに対して位置決めするように構成しても良い。このとき、噴霧ノズル10のうち他方の開口25bよりも先端側に突出した部分は、自身の重さ及び送液される麻酔薬Dにより変形しないように設定されている。
【0051】
このように構成することで、口腔内の咽喉部Tに対して噴霧口9をより接近した状態に配置させることができる。また、噴霧ノズル10の噴霧口9を供給用孔25の他方の開口25bの近傍に配置させる場合と比べて、麻酔薬Dを投与する範囲を狭めることが可能となる。
また、噴霧ノズル10の長さを最適化し、成人用や子供用の噴霧ノズルや、又は口と咽喉部Tの奥行き距離に応じて、長さを変えた噴霧ノズル10を数種シリーズ化することにより、麻酔薬投与領域面積を可変して、調整することもできる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態の変形例と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図6に示すように、本実施形態の薬液噴霧装置31は、噴霧ノズル(第1チューブ体)32は弾性を有する材料で形成され、噴霧ノズル32の先端側には、噴霧ノズル32の軸線Cに対して一定の角度θで曲げられた曲がり癖部33が形成されている。
噴霧ノズル32は噴霧口9の近傍がへの字形状に整形されており、口腔内の咽喉部Tの下部(喉方向)を向くように配置されている。なお、角度θは、10°以上90°以下であることが好ましい。
そして、噴霧ノズル32は第1実施形態の変形例と同様な材質にて形成されているため、マウスピース2の供給用孔25を挿通するときには曲がり癖部33は弾性変形して直線状となって挿入され、供給用孔25から先端側に突出したときには曲がり癖部33が弾性復帰してへの字形状に整形される。なお、噴霧ノズル32を供給用孔25から引抜くときにも、曲がり癖部33は引き抜き動作を妨害するものではない。
【0053】
このように構成された薬液噴霧装置31によれば、霧状の麻酔薬Dが噴霧される方向を噴霧ノズル10の軸線Cに対して曲げることがでる。このため、例えば、被験者等の生体の咽喉部Tのように、口腔に保持される噴霧ノズル32の軸線Cに対して麻酔薬Dを投与する位置がずれている場合にも、麻酔薬Dを確実に投与することができる。
【0054】
図1に示したように、内視鏡の挿入時の負担を感じる点は喉、気管H3の入口周辺にも点在しており、その部位に対して、より麻酔薬Dを投与しやすいように噴霧ノズル32の先端(噴霧口9近傍)がへの字形状を成し、麻酔薬Dの液体微粒子を気管H3の入口周辺の表面に付着しやすくしている。
また、第1実施形態で示したように、薬液供給部4と電圧印加電極12はケース体6から脱着可能である。よって、第1実施形態の噴霧ノズル10により咽喉部T全体を麻酔後、第2実施形態の噴霧ノズル32に変更し、気管H3の入口周辺を積極的に麻酔することも可能となり、被験者の負担をより低減することができる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7及び図8に示すように、本実施形態の薬液噴霧装置41において、マウスピース42の供給用孔25の他方の開口25bには、麻酔薬Dを霧状に噴霧する噴霧口44が形成され、薬液供給部45は、供給用孔25に薬液を導く噴霧ノズル(第2チューブ体)46と、噴霧ノズル46の基端部に接続されたシリンジ11と、を有する。
供給用孔25の内径は約1mmで、噴霧口44の内径は約0.1mmとなっている。そして、供給用孔25の一方の開口25aには、基端側に向かうに従って内径が大きくなるテーパー部47が形成されている。
噴霧ノズル46の先端部にはコネクタ48が設置されており、このコネクタ48がテーパー部47に圧入され、そしてコネクタ48がテーパー部47から取外されることにより、噴霧ノズル46がマウスピース42に着脱自在となっている。
このように、本実施形態における供給用孔25は、上記実施形態の噴霧ノズルの一部の役割を果たすことになる。
【0056】
このように構成された薬液噴霧装置41によれば、供給用孔25の他方の開口25bに噴霧口44が形成されているので、麻酔薬Dを噴霧する位置を口部H1に対して位置決めすることができる。
そして、電圧印加部19により帯電した状態にされた麻酔薬Dを霧状に噴霧することにより、口腔内の咽喉部Tと麻酔薬Dとの電位差により形成される電気力線Lに従って、ばらつきを低減させて咽喉部Tに麻酔薬Dを確実に投与させることができる。
【0057】
また、この噴霧ノズル46により、被験者の姿勢によらず被験者から電圧印加部5と薬液供給部45をさらに離すことができる。
このように、噴霧口44と電圧印加電極12とがさらに離れても、麻酔薬Dが高電圧を伝達する電気伝達導線の役割を果たし、噴霧口44に高電圧を作用させ、咽喉部Tに対して電気力線Lを形成し、麻酔薬Dを液体微粒子として噴霧させることができる。
よって、咽喉部Tに確実に麻酔薬Dを投与でき、内視鏡E1の挿入時の負担を低減させることが可能となる。
【0058】
以上、本発明の第1実施形態から第3実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
例えば、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置は、口部H1に保持して口腔内に麻酔薬Dを投与するものとした。しかし、図9に示す薬液噴霧装置51ように、筒状の保持部材52を鼻孔H6の開口に取付け、保持部材52に形成された供給用孔52aに装置本体3の噴霧ノズル10を挿通しても良い。また、保持部材を耳孔に保持して、装置本体の噴霧ノズルを挿通しても良い。
また、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置では、供給用孔25と挿入用孔26とはマウスピース本体部2aにおいて互いに連通していても良いし、挿入用孔26の一部に供給用孔25が形成されていても良い。
【0059】
また、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置では、噴霧口9は、噴霧ノズル10の先端部に取り付けられているとしたが、これに代えて、供給用孔25の他方の開口25b側に設けられていても良い。ここで、噴霧ノズル10の先端部は、供給用孔25から突出せずに、その内部に配置されるか、供給用孔25の一方の開口25aに接続されることとすれば良い。この場合、麻酔薬D等の薬液は、供給用孔25の他方の開口25bから噴霧されることとなる。
また、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置では、電圧印加部5は、この供給用孔25の一方の開口25a側に配置されているとした。しかし、電圧印加部5に十分な安全装置が備えられている場合には、電圧印加部5は他方の開口25b側に配置されていても良い。
また、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置では、薬液噴霧装置自身が使い捨てられることとなっている場合には、薬液供給部は装置本体に着脱自在となっていなくても良い。
また、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置では、マウスピース2には挿入用孔26が形成されていた。しかし、内視鏡E1の挿入部E2を挿通せず単に麻酔薬Dを投与するだけの場合には、この挿入用孔26は形成されなくても良い。
また、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置では、ケース体6は配されなくても良い。
また、上記第1実施形態及から第3実施形態の薬液噴霧装置は、生体として動物に適用されることとしても良い。
【符号の説明】
【0060】
1、31、41、51 薬液噴霧装置
2、42 マウスピース(保持部材)
3 装置本体
4、45 薬液供給部
5 電圧印加部
6 ケース体
9、44 噴霧口
10、32 噴霧ノズル(第1チューブ体)
11 シリンジ
14 シリンダ部材
15 ピストン部材
25、52a 供給用孔
25a 一方の開口
25b 他方の開口
33 曲がり癖部
46 噴霧ノズル(第2チューブ体)
52 保持部材
D 麻酔薬(薬液)
E1 内視鏡
E2 挿入部
H1 口部(開口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を生体内部の目的部位に噴霧投与するための薬液噴霧装置であって、
前記目的部位に対して位置決めされた状態で保持される保持部材と、
前記保持部材に設けられ、前記薬液を前記保持部材の一方の端部から他方の端部へ導く供給用孔と、
前記供給用孔に取り付けられ、前記薬液を前記供給用孔に供給する薬液供給部と、
前記供給用孔に供給された前記薬液を噴霧する噴霧口と、
前記薬液に電圧を印加する電圧印加部と、
を備え、
前記電圧印加部により前記薬液を帯電させた状態で、前記噴霧口における前記薬液の電位と異なる前記生体内の部位に向けて前記噴霧口から霧状に噴霧することを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬液噴霧装置において、
前記薬液供給部は、
前記薬液を充填するシリンダ部材と、前記シリンダ部材にスライド自在に挿入されたピストン部材と、を有するシリンジと、
先端部に前記噴霧口を有し、前記供給用孔に挿通され、前記シリンジから前記噴霧口に前記薬液を導く第1チューブ体と、
を備えることを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項3】
請求項2に記載の薬液噴霧装置において、
前記第1チューブ体は、前記供給用孔に挿通させたときに前記噴霧口が前記他方の端部
よりも前記目的部位側に突出するような長さを有することを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の薬液噴霧装置において、
前記第1チューブ体は弾性を有する材料で形成され、
前記第1チューブ体の先端側には、該第1チューブ体の軸線に対して一定の角度で曲げられた曲がり癖部が形成されていることを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項5】
請求項1に記載の薬液噴霧装置において、
前記供給用孔の前記他方の端部には、前記噴霧口が形成され、
前記薬液を充填するシリンダ部材と、前記シリンダ部材にスライド自在に挿入されたピストン部材と、を有するシリンジと、
前記供給用孔に挿通され、前記シリンジから前記供給用孔に前記薬液を導く第2チューブ体と、
を備えることを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の薬液噴霧装置において、
前記電圧印加部は、前記保持部材の一方の端部側に配置されていることを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の薬液噴霧装置において、
前記薬液供給部の少なくとも一部を収容するケース体を有し、
前記薬液供給部は、該ケース体に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする薬液噴霧装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の薬液噴霧装置において、
前記保持部材には、内視鏡の挿入部を挿通して該挿入部を前記生体の穴部に案内する挿入用孔が形成されていることを特徴とする薬液噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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