説明

薬液投与器具、薬液投与器具の製造方法および薬液投与方法

【課題】視認性をよくするとともに薬液を容易に投与する。
【解決手段】軸方向へ延在するコア11と、コア11を囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔13a〜13dが周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッド12と、を備えたホーリーファイバ(光ファイバ)2を備え、複数の空孔13a〜13dうちの1つ空孔13aに薬液が注入されて、空孔13aの軸方向先端部から吐出された薬液を生体組織へ投与している。ホーリーファイバ2には、薬液が注入される空孔13aを露出させる切欠部14がクラッド12の外周面に形成されているとともに、クラッド12の外周面を囲繞して切欠部14を覆う中空管3が装着されている。中空管3には、内周側と外周側との間を貫通する貫通孔4が形成され、貫通孔4および切欠部14を介して中空管3の外側から空孔13aへ薬液が供給可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織に対して薬液を投与する薬液投与器具、薬液投与器具の製造方法および薬液投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生体組織に対して薬液等を局所的に投与する薬液投与方法として、ガラス微小管や、ゴムやシリコン樹脂などで形成されたカテーテルなどを用いた圧力注入法が知られている(例えば、非特許文献1)。
圧力注入法では、生体組織に装着されたガラス微小管やカテーテルに圧力を加えることにより、ガラス微小管やカテーテル内の薬液等を先端から押し出して放出させている。このような圧力注入法は、生体組織に薬液を投与することが比較的容易で、生体組織に確実に薬物を投与することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】フアン・M・J・ラモス(Juan M. J. Ramos)著, 「トレーニング・メソッド・ドラマティカリィ・アフェクツ・ディ・アクイジション・オブ ア・プレイス・レスポンス・イン・ラッツ・ウィズ・ニュートロジック・リージョンズ オブ・ザ・ヒッポカンパス (Training Method Dramatically Affects the Acquisition of a Place Response in Rats with Neurotoxic Lesions of the Hippocampus)」,ニューロバイオロジー・オブ・ラーニング・アンド・メモリー77(Neurobiology of Learning and Memory 77),(米国),2002年,p.109−118.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のガラス微小管やカテーテルは、視認性がよくないという問題がある。このため、ガラス微小管やカテーテルそのものの位置、また薬液を投与している箇所が判別しづらい場合がある。
また、1本のガラス微小管やカテーテルには、1つの空孔しか形成されていないため、数種類の薬液を混合せずにそれぞれ生体組織に投与する場合には、ガラス微小管やカテーテルを入れかえたり複数使用したりする必要がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、視認性がよいとともに薬液を効率よく投与することができる薬液投与器具、薬液投与器具の製造方法および薬液投与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る薬液投与器具は、軸方向へ延在するコアと、該コアを囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔が周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッドと、を備えた光ファイバを備え、前記複数の空孔の1つ以上に薬液が注入されて、該薬液が注入された前記空孔の軸方向先端部から吐出された前記薬液を生体組織へ投与する薬液投与器具であって、前記光ファイバには、前記薬液が注入される前記空孔を露出させる切欠部が前記クラッドの外周面に形成されているとともに、前記クラッドの外周面を囲繞して前記切欠部を覆う中空管が装着されていて、該中空管には、内周面と外周面との間を貫通し、前記中空管の外側と前記切欠部とを連通する貫通孔が形成され、前記貫通孔および前記切欠部を介して前記中空管の外側から前記空孔へ前記薬液が供給可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、光ファイバの空孔から薬液を投与することにより、該光ファイバのコアに可視光を通し、その漏れ光を確認することで、薬液を投与している光ファイバそのものの位置および薬液を投与している箇所の視認性を高めることができる。
また、光ファイバには、複数の空孔が形成されていることにより、異なる空孔に異なる薬液を注入すれば、1本の光ファイバで、複数種類の薬液を混合せずにそれぞれ個別に生体組織に投与することができる。これにより、圧力注入法やイオン電気泳動法によって、1本の光ファイバを用いて複数種類の薬液を同時に投与することが可能となる。
【0008】
また、光ファイバには、光ファイバには、薬液が注入される空孔を露出させる切欠部が外周面に形成されているとともに光ファイバを囲繞して切欠部を覆う中空管が装着されていて、中空管には、径方向に貫通し切欠部と連通する貫通孔が形成され、貫通孔および切欠部を介して中空管の外側から空孔へ薬液が供給されることにより、空孔と貫通孔とを直接接続する必要がなく、簡易な構成で容易かつ確実に光ファイバの空孔へ薬液を注入することができ、薬液投与を容易かつ確実に行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る薬液投与器具では、前記光ファイバには、前記複数の空孔をそれぞれ露出させる複数の切欠部が形成されていて、前記複数の切欠部は連設していてもよい。
このように、光ファイバには、複数の空孔をそれぞれ露出させる複数の切欠部が形成されていて、複数の切欠部は連設していることにより、複数の切欠部を介して複数の空孔へ同時に薬液を注入することができる。
【0010】
また、本発明に係る薬液投与器具では、前記光ファイバには、異なる空孔を露出させる複数の切欠部が互いに軸方向の位置が異なるように形成されていて、前記中空管が前記複数の切欠部をそれぞれ覆うように装着されていてもよい。
このように、光ファイバには、異なる空孔を露出させる複数の切欠部が互いに軸方向の位置が異なるように形成されていて、中空管が複数の切欠部を覆うように装着されていることにより、複数の空孔にそれぞれ異なる薬液を注入することができ、同一の薬液投与器具を使用して異なる薬液を同時に投与することができる。
【0011】
本発明に係る薬液投与器具の製造方法は、軸方向へ延在するコアと、該コアを囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔が周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッドと、を備える光ファイバを有し、前記複数の空孔の1つ以上に薬液が注入されて、該薬液が注入された前記空孔の軸方向の先端部から吐出された前記薬液を生体組織へ投与する薬液投与器具の製造方法であって、前記光ファイバを所定の位置で折り曲げて、クラッドを空孔が露出するまで研磨して切欠部を形成する工程と、前記光ファイバを復元させた後に該切欠部を覆うように中空管を取り付ける工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明では、光ファイバを所定の位置で折り曲げて、クラッドを空孔が露出するまで研磨して切欠部を形成する工程と、前記光ファイバを復元させた後に該切欠部を覆うように中空管を取り付ける工程と、を備えることにより、容易に切欠部を形成することができるとともに、切欠部を覆う中空管を取り付けるだけの簡便な方法で薬液投与器具を製造することができる。
【0013】
本発明に係る薬液投与方法は、生体組織に薬液を投与する薬液投与方法であって、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬液投与器具を用いることを特徴とする。
【0014】
本発明では、光ファイバの空孔から薬液を投与することにより、光ファイバのコアに可視光を通し、その漏れ光を確認することで、薬液を投与している光ファイバおよび薬液を投与している箇所の視認性を高めることができ、確実に薬液を投与することができる。
また、光ファイバには、複数の空孔が形成されているため、異なる空孔に異なる薬液を注入することにより、1本の光ファイバで、複数種類の薬液を混合せずにそれぞれ個別に生体組織に投与することができる。これにより、圧力注入法やイオン電気泳動法によって、1本の光ファイバを用いて複数種類の薬液投与が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る薬液投与器具および薬液投与方法によれば、薬液を投与している光ファイバおよび薬液を投与している箇所の視認性を高めることができるとともに、光ファイバへの薬液の注入が容易かつ確実にできて、薬液の投与を容易に行うことができる。
また、本発明に係る薬液投与器具の製造方法によれば、容易に切欠部を形成することができるとともに、切欠部を覆う中空管を取り付けるだけの簡便な方法で薬液投与器具を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による薬液投与器具の一例を示す図である。
【図2】(a)は図1に示す薬液投与器具のホーリーファイバの側面図、(b)は(a)におけるA方向矢視図、(c)は(a)におけるB方向矢視図である。
【図3】(a)は中空管の上面図、(b)は(a)におけるC方向矢視図、(c)は(a)におけるD方向矢視図を示す図である。
【図4】(a)は切欠部が形成される前の折り曲げられた状態のホーリーファイバを説明する側面図、(b)切欠部が形成され復元される前のホーリーファイバを切欠部が形成された側から見た図、(c)は(b)におけるE方向矢視図、(d)は(b)におけるF方向矢視図である。
【図5】(a)はラットの冠動脈に刺入されたホーリーファイバにより蛍光色素注入している様子の蛍光像を示す図、(b)は蛍光色素によって標識された冠動脈の蛍光像を示す図、(c)は(b)と同じ領域を撮影した明視野像を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による薬液投与器具の一例を示す図である。
【図7】(a)は本発明の第3実施形態による薬液投与器具の一例を示す図、(b)は(a)に示す薬液投与器具のホーリーファイバの上面図、(c)は(b)におけるG方向矢視図、(d)は(b)におけるH方向矢視図である。
【図8】(a)は本発明の第4実施形態による薬液投与器具の一例を示す図、(b)は(a)に示す薬液投与器具のホーリーファイバの上面図、(c)は(b)におけるI方向矢視図、(d)は(b)におけるJ方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による薬液投与器具について、図1乃至図5に基づいて説明する。
図1に示す第1実施形態による薬液投与器具1Aは、生体組織へ薬液(不図示)を局所的に投与する器具で、薬液を生体組織へ導くホーリーファイバ(光ファイバ)2と、ホーリーファイバ2に装着されるとともに外部から薬液が供給されてこの薬液をホーリーファイバ2の空孔13(後に詳述する。)へガイドする中空管3と、を備えている。
【0018】
図1および図2(a),(b)に示すように、ホーリーファイバ2は、可撓性を有し、軸方向へ延在するコア11と、コア11の周囲を囲繞するクラッド12、とを備え、クラッド12に軸方向へ延在する複数の空孔13が形成された公知の構造のもので、この空孔13に薬液が注入されるように構成されている。
本実施形態のホーリーファイバ2では、4つの空孔13a〜13dが互いに周方向に間隔をあけてコア11を囲むように形成されている。
なお、本実施形態では、空孔13の数は4つとしているが、4つに限定されず2つや3つ以上としてもよい。
【0019】
ホーリーファイバ2は、軸方向の一方の端部2a側近傍から薬液が注入され、他方の端部2bから薬液を吐出するように構成されている。ここで、この一方の端部2aを基端部2aとし、他方の端部2bを先端部2bとして以下説明する。
図2に示すように、ホーリーファイバ2の外周面2cには、ホーリーファイバ2の基端部2aからやや先端部2b側へ向かった位置に、クラッド12の一部が切除されることで切欠部14が形成されている。
【0020】
切欠部14は、ホーリーファイバ2の外周面2cから空孔13aに達する深さに形成されている。なお、切欠部14は、コア11に達しない深さに形成されている。
また、切欠部14は、この空孔13a以外の空孔13b〜13dとは干渉しない形状に形成されている。
ホーリーファイバ2に切欠部14が形成されていることよって、空孔13aは基端側空孔13aAと先端側空孔13aBとに分断され、それぞれが切欠部14の切欠面14aに露出している。そして、この先端側空孔13aBには薬液が注入されるように構成されている。一方、基端側空孔13aAは、例えば樹脂などが封入されて薬液が流入しないように塞がれている。なお、基端側空孔13aAに封入される材料は、粘性の高いものであることが好ましい。
【0021】
図1および図3(a)〜(c)に示すように、中空管3は、その内径D(図3参照)がホーリーファイバ2(図1参照)の外径よりもわずかに大きく形成されており、内部にホーリーファイバ2が挿通されている。中空管3の内周面3aとホーリーファイバ2の外周面2cとは当接している。
また、中空管3には、内周側と外周側との間を貫通する貫通孔4が1つ形成されている。この貫通孔4には、薬液を供給するチューブ5(図1参照)が接続されている。
【0022】
中空管3は、クラッド12を囲繞して切欠部14を覆うようにホーリーファイバ2に装着されている。このとき、切欠部14の切欠面14aは、中空管3の内周面3aとは離間している。このため、切欠面14aと中空管3の内周面3aとの間に空洞部15が形成されている。
また、中空管3は、貫通孔4が切欠部14と対向する位置に配されるように装着されている。これにより、貫通孔4と先端側空孔13aBとが空洞部15を介して連通し、チューブ5から供給された薬液を先端側空孔13aBへ注入可能となっている。
【0023】
このとき、貫通孔4と、切欠部14に形成された先端側空孔13aBの端部とが対向することが好ましいが、貫通孔4と先端側空孔13aBとが空洞部15を介して連通しているため、先端側空孔13aBの端部と貫通孔4との位置が多少ずれても、先端側空孔13aBへ薬液を容易に注入することが可能となる。
【0024】
また、中空管3の内周面3aとホーリーファイバ2の外周面2cとの間には、切欠面14a以外に樹脂が塗布されて、ホーリーファイバ2に中空管3が固定されている。
中空管3は、切欠部14を覆うようにホーリーファイバ2に装着されているため、切欠部14が形成されたことによって機械的強度が低下したホーリーファイバ2を補強することができ、薬液投与器具1Aの機械的強度を確保することができる。
【0025】
(薬液投与器具の製造方法)
次に、薬液投与器具1Aの製造過程において、切欠部14および空洞部15を形成する方法について説明する。
まず、図4(a)に示すように、ホーリーファイバ2を切欠部14が形成される位置で切欠部14が形成される側(空孔13a側)が外側となるように折り曲げ、治具などを利用してホーリーファイバ2を折り曲げられた状態に保持する。
続いて、図4(b)〜(d)に示すように、ホーリーファイバ2の折り曲げられた部分の外側(切欠部14が形成される側)のクラッド12を、空孔13aが分断されて露出するように、例えば、ルーター機械などで研磨する。なお、ホーリーファイバ2のコア11に光を電播させる場合、クラッド12を研磨する深さは、コア11まで達しないようにすることが好ましい。
このようにして、空孔13aが、基端側空孔13aAと先端側空孔13aBとに分断される。そして、研磨が完了した後に、折り曲げられたホーリーファイバ2を元の状態に戻すことで、ホーリーファイバ2に図2(a),(b)に示すような切欠部14が形成される。
続いて、基端側空孔13aAに樹脂を封入して塞ぎ、基端側空孔13aAに薬液が流れないようにする。
【0026】
続いて、図1に示すように、切欠部14を覆うようにホーリーファイバ2に中空管3を装着して、切欠面14aを除くホーリーファイバ2の外周面2cと中空管3の内周面3aとの間に樹脂を塗布し、中空管3をホーリーファイバ2に固定する。
このようにして、中空管3の内周面3aと切欠面14aとの間に空洞部15が形成される。
【0027】
(薬液投与方法)
上述した薬液投与器具1Aを用いた薬液投与方法について説明する。
まず、ホーリーファイバ2の先端部2bを、薬液を投与する所定の部位へ装着する。
続いて、チューブ5から中空管3内へ薬液を供給し、薬液はチューブ5から空洞部15へ注入される。空洞部15に注入された薬液は、切欠面14aに形成された先端側空孔13aBに導かれる。(そして、圧力注入法やイオン電気泳動法などによって薬液をホーリーファイバ2の先端部2b側へ流す。これにより、先端側空孔13aBを流れた薬液は、先端部2bから吐出して所定の部位へ投与される。
【0028】
このとき、ホーリーファイバ2のコア11に可視光を通すことにより、ホーリーファイバ2の視認性を高めることができる。また、薬液を投与している箇所が可視光により照射されるので、薬液を投与している箇所の視認性も高めることができる。なお、可視光の代わりに紫外線や赤外線などの他波長の電磁波を通し、紫外線/赤外線カメラなどで観察してもよい。この場合も、ホーリーファイバ2そのものの位置および薬液を投与している箇所の視認性を高めることができる。
また、ホーリーファイバ2の先端部2bから薬液が投与されるので、ホーリーファイバ2に通しておく光により薬液の光化学反応を加速したり、逆に、投与した薬液が発する発光現象をホーリーファイバ2により観察したりすることも可能となる。
【0029】
第1実施形態による薬液投与器具1Aによれば、ホーリーファイバ2および薬液を投与している箇所の視認性を高めることができるとともに、先端側空孔13aBへ容易に薬液を注入することができる効果を奏する。
【0030】
ここで、図5(a)〜(c)に、本実施形態の薬液投与器具1Aを用いて薬液を実際に生体組織に投与した例を示す。
図5(a)に示すように、本例では、ラットの冠動脈にホーリーファイバ2を刺入し、薬液として蛍光色素(Alexa Fluor(登録商標)488)を注入している。
図5(b)は、蛍光色素によって標識された冠動脈Hの蛍光像である。図5(c)は図5(b)と同じ領域を撮影した明視野像である。図5(a)〜(c)より、薬液投与器具1Aを用いて、薬液を生体組織(ラット)に確実に投与することができることがわかる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図6に示すように、第2実施形態による薬液投与器具1Bでは、中空管21に内周側と外周側との間を貫通する2つの貫通孔22,23が形成されていて、この2つの貫通孔22,23がホーリーファイバ2の切欠部14に対向するように中空管21がホーリーファイバ2に装着されている。本実施形態では、2つの貫通孔22,23は近接している。そして、2つの貫通孔22,23には、それぞれチューブ25,26が接続されている。
この2つのチューブ25,26からは、異なる種類の薬液が注入されている。なお、2つのチューブ25,26から同じ種類の薬液が注入されてもよい。
【0032】
第2実施形態による薬液投与器具1Bでは、第1実施形態による薬液投与器具1Aと同様の効果を奏する。また、チューブ25,26から異なる種類の薬液を投与すれば、切欠部14(空洞部15)でこれらの薬液が混合されるため、異なる薬液を混合して同時に投与することができる。
【0033】
(第3実施形態)
図7(a)に示す第3実施形態による薬液投与器具1Cでは、図7(b)に示すように、ホーリーファイバ31の中空管3が装着される部分の外周部に、各空孔13a〜13dが露出するように4つの切欠部32a〜32dが形成されている。4つの切欠部32a〜32dは、連続して設けられいて1つの空洞部33を形成している。
各切欠部32a〜32dによって切断された4つの空孔13a〜13dのそれぞれ基端部側には樹脂などが封入され、先端部側に薬液が注入される。
また、4つの切欠部32a〜32dは、ホーリーファイバ31の軸方向の同じ位置に形成されていて、1つの中空管3によって覆われている。
【0034】
第3実施形態による薬液投与器具1Cの製造方法における、各切欠部32a〜32dを形成する方法は、図3に示す第1実施形態による薬液投与器具1Aの製造方法における切欠部14を形成する方法と同様に行う。即ち、本実施形態では、1つのホーリーファイバ31に対して4回の研磨工程を繰り返し、4つの切欠部32a〜32dを形成する。
そして、形成された4つの切欠部32a〜32dを覆うように、ホーリーファイバ31に中空管3を装着する。
【0035】
上述した第3実施形態による薬液投与器具1Cでは、第1実施形態による薬液投与器具1Aと同様の効果を奏する。また、1本のチューブ5でホーリーファイバ2の空孔13a〜13d全てに対し薬液の注入が可能となるので、薬液の流量を増加させることが可能となる。
【0036】
なお、本実施形態において、全ての空孔13a〜13d内が薬液で満たされるため、空孔内の屈折率は1.0から1.33程度に増加するが、通常のファイバガラスの屈折率は1.5であることから、ホーリーファイバ2の特性(急峻に曲げても光損失が起こらずに伝搬すること)は維持していることになる。即ち、空孔13a〜13d内の屈折率はクラッド12の屈折率より小さいことから、通常の光ファイバよりは曲げ特性および曲げ損失特性が優れている。
さらに、薬液注入する時に、ホーリーファイバ2を急峻に曲げることは想定されないため、薬液による空孔13a〜13dの屈折率変化は、実用上、問題を生じないと考えられる。
【0037】
(第4実施形態)
図8に示すように、第4実施形態による薬液投与器具1Dでは、4つの空孔13a〜13dを有するホーリーファイバ41の2つの空孔13a,13dに対しそれぞれ異なる種類の薬液が注入されている。このため、ホーリーファイバ41には、2つの空孔13a,13dをそれぞれ分断する切欠部42,43が形成されると共に、この2つの切欠部42,43をそれぞれ覆う中空管44,45が装着されている。そして、2つの中空管44,45にはそれぞれチューブ46,47が接続されていて、2つのチューブ46,47にはそれぞれ異なる種類の薬液が注入される。
一方の切欠部42と他方の切欠部43とは、ホーリーファイバ41の軸方向に異なる位置に形成されている。また、一方の中空管44と他方の中空管45もホーリーファイバ41の軸方向に異なる位置に装着されている。
【0038】
第4実施形態による薬液投与器具1Dの製造方法における、各切欠部42,43を形成する方法は、図3に示す第1実施形態による薬液投与器具1Aの製造方法における切欠部14を形成する方法と同様に行う。即ち、本実施形態では、1つのホーリーファイバ41に対して2回の研磨工程を繰り返し、2つの切欠部42,43を形成する。
そして、切欠部42を覆うように、ホーリーファイバ41に中空管44を装着し、切欠部43を覆うように、ホーリーファイバ41に中空管45を装着する。
【0039】
なお、本実施形態では、互いに隣接する空孔13aおよび空孔13dを露出させるように切欠部42および切欠部43を形成したが、隣接していない空孔をそれぞれ露出させるように切欠部を形成してもよい。また、3つまたは4つの空孔をそれぞれ露出させるように、それぞれ軸方向に異なる位置に切欠部を形成してもよい。
また、切欠部42と切欠部43とは、ホーリーファイバ41の軸方向に異なる位置に形成され連続して形成されていないため、1つの中空管で切欠部42と切欠部43とを覆い、この中空管に各切欠部42,43へ連通する貫通孔をそれぞれ形成し、各貫通孔へチューブを取り付ける構成としてもよい。
【0040】
第4実施形態による薬液投与器具1Dによれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、複数の空孔にそれぞれ異なる種類の薬液を混合せずに注入することができる。
【0041】
以上、本発明による薬液投与器具の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態では、ホーリーファイバ2,31,41に4つの空孔が形成されているが、4つ以外の複数の空孔が形成されていてもよい。
また、上述した第2実施形態では、中空管21に2つのチューブ25,26が接続されているが、3つ以上のチューブが接続されていてもよい。
また、上述した第3実施形態では、全ての空孔13a〜13dに薬液を注入しているが、任意の2つや3つの空孔に対して互いに連設する切欠部を形成し、これらの空孔へ薬液を注入する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1A〜1D 薬液投与器具
2,31,41 ホーリーファイバ(光ファイバ)
3,21,44,45 中空管
4,22,23 貫通孔
5,25,26,46,47 チューブ
11 コア
12 クラッド
13,13a〜13d 空孔
14,32a〜32d,42,43 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向へ延在するコアと、該コアを囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔が周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッドと、を備えた光ファイバを備え、
前記複数の空孔の1つ以上に薬液が注入されて、該薬液が注入された前記空孔の軸方向先端部から吐出された前記薬液を生体組織へ投与する薬液投与器具であって、
前記光ファイバには、前記薬液が注入される前記空孔を露出させる切欠部が前記クラッドの外周面に形成されているとともに、前記クラッドの外周面を囲繞して前記切欠部を覆う中空管が装着されていて、
該中空管には、内周面と外周面との間を貫通し、前記中空管の外側と前記切欠部とを連通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔および前記切欠部を介して前記中空管の外側から前記空孔へ前記薬液が供給可能に構成されていることを特徴とする薬液投与器具。
【請求項2】
前記光ファイバには、前記複数の空孔をそれぞれ露出させる複数の切欠部が形成されていて、前記複数の切欠部は連設していることを特徴とする請求項1に記載の薬液投与器具。
【請求項3】
前記光ファイバには、異なる空孔を露出させる複数の切欠部が互いに軸方向の位置が異なるように形成されていて、前記中空管が前記複数の切欠部をそれぞれ覆うように装着されていることを特徴とする請求項1に記載の薬液投与器具。
【請求項4】
軸方向へ延在するコアと、該コアを囲繞するとともに軸方向へ貫通する複数の空孔が周方向へ互いに間隔をあけるように形成されたクラッドと、を備える光ファイバを有し、前記複数の空孔の1つ以上に薬液が注入されて、該薬液が注入された前記空孔の軸方向の先端部から吐出された前記薬液を生体組織へ投与する薬液投与器具の製造方法であって、
前記光ファイバを所定の位置で折り曲げて、クラッドを空孔が露出するまで研磨して切欠部を形成する工程と、
前記光ファイバを復元させた後に、該切欠部を覆うように中空管を取り付ける工程と、を備えることを特徴とする薬液投与器具の製造方法。
【請求項5】
生体組織に薬液を投与する薬液投与方法であって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の薬液投与器具を用いることを特徴とする薬液投与方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65902(P2012−65902A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214086(P2010−214086)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】