説明

薬液注入器具

【課題】針管の針先がカバー部材から不本意に突出するのを確実に防止することができるとともに、薬液が針管を介して不本意に流出するのを確実に防止することができる薬液注入器具を提供すること。
【解決手段】薬液注入器具1Aは、針管5と、外筒2と、先端が針管5内と連通し、基端が外筒2内と連通し得る流路を有する支持部材6Aと、支持部材6Aを回転操作して、針管5内と外筒2内とが流路を介して連通する連通状態と、連通状態を遮断する遮断状態とを選択する操作を行なう操作機構と、針先51が露出するのを防止する露出防止手段とを備え、操作機構は、針管5を針先51まで覆う第1の位置と、針先51が露出する第2の位置とに変位可能に支持されたカバー部材7Aと、外筒2に着脱自在に装着され、その装着状態で支持部材6Aを回転可能に連結され、かつ、針管5を針先51まで覆うキャップ9の2つの部材のうちの少なくとも一方で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入器具に関する。
【背景技術】
【0002】
予め薬液を収納したプレフィルドシリンジが知られている。このプレフィルドシリンジは、先端に排出口が設けられた外筒と、この外筒内に挿入されたガスケットと、このガスケットに連結されたプランジャ(押子)とを備え、外筒とガスケットとで囲まれる空間に、薬液が収納されている。
【0003】
このプレフィルドシリンジを用いて薬液を例えば生体内に注入する際には、外筒の排出口に、中空針を有する針組立体を装着して、この装着状態で当該プレフィルドシリンジを用いる(例えば、特許文献1参照)。また、装着状態では、外筒の内部と中空針の内部とが連通する。特許文献1に記載の針組立体(保護スリーブ)は、中空針と、中空針の外周側に配置され、中空針の基端部を支持固定する筒状の外側部材(外側スリーブ部材)と、外側部材と中空針との間に外側部材と同心的に配置され、外側部材の軸方向に沿って移動可能な筒状の内側部材(内側スリーブ部材)と、内側部材を先端方向へ付勢するコイルバネとを有している。このような構成の針組立体では、内側部材は、外側部材に対してその軸方向に沿って移動することにより、針体をその針先まで覆う第1の状態と、針先を露出させる第2の状態とを取り得る。また、コイルバネの付勢力により、内側部材が第1の状態を維持することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の針組立体では、コイルバネの付勢力に抗して、第1の状態の内側部材を基端方向に押圧しさえすれば、当該内側部材が第2の状態となるため、このような押圧力が不本意に内側部材に作用した場合でも当該内側部材が第2の状態となり、内側部材から露出した針先によって、手指等を誤って穿刺してしまうおそれがある。また、特許文献1に記載の針組立体では、針先が内側部材から突出しているか否かに関わらず、プランジャを押圧操作しさえすれば、中空針を介して薬液が流出してしまう。このため、プランジャを不本意に押圧操作した場合、薬液が無駄に流出してしまい(浪費され)、所定量の薬液の注入が不可能となるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2872318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、針管の針先が不本意に露出するのを確実に防止することができるとともに、薬液が針管を介して不本意に流出するのを確実に防止することができる薬液注入器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(14)の本発明により達成される。
(1) 先端に鋭利な針先を有する針管と、
前記針管の基端側に位置し、内部が前記針管内と連通可能な有底筒状をなす外筒と、
前記外筒内を摺動し得るガスケットと、
前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間内に充填される薬液と、
前記針管を支持し、先端が該針管内と連通し、基端が前記外筒内と連通し得る流路を有する支持部材と、
前記針管の少なくとも前記針先を囲った状態で固定され、かつ、前記支持部材を回転操作して、前記針管内と前記外筒内とが前記流路を介して連通する連通状態と、該連通状態を遮断する遮断状態とを選択する操作を行なう操作機構と、
前記針先が露出するのを防止する露出防止手段とを備え、
前記操作機構は、前記支持部材に、前記針管を前記針先まで覆う第1の位置と、該第1の位置から基端方向に移動して、前記針先が露出する第2の位置とに変位可能に支持されたカバー部材と、前記外筒に着脱自在に装着され、その装着状態で前記支持部材を回転可能に連結され、かつ、前記針管を前記針先まで覆うキャップの2つの部材のうちの少なくとも一方で構成されていることを特徴とする薬液注入器具。
【0008】
(2) 先端に鋭利な針先を有する針管と、
前記針管の基端側に位置し、内部が前記針管内と連通可能な有底筒状をなす外筒と、
前記外筒内を摺動し得るガスケットと、
前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間内に充填される薬液と、
前記針管を支持し、先端が該針管内と連通し、基端が前記外筒内と連通し得る流路を有する支持部材と、
前記針管の少なくとも前記針先を囲った状態で固定され、かつ、前記支持部材を回転操作して、前記針管内と前記外筒内とが前記流路を介して連通する連通状態と、該連通状態を遮断する遮断状態とを選択する操作を行なう操作機構と、
前記針先が露出するのを防止する露出防止手段とを備え、
前記操作機構は、前記支持部材に、前記針管を前記針先まで覆う第1の位置と、該第1の位置から基端方向に移動して、前記針先が露出する第2の位置とに変位可能に支持されたカバー部材と、前記外筒に着脱自在に装着され、その装着状態で前記支持部材を回転可能に連結され、かつ、前記カバー部材の全体を収納するキャップとで構成されていることを特徴とする薬液注入器具。
【0009】
(3) 前記支持部材は、前記キャップを前記外筒の軸回りに回動可能に支持し、前記外筒の軸方向に沿って移動可能に支持するものであり、
前記流路の基端が前記外筒の底部によって塞がれて前記遮断状態となっており、該遮断状態から前記キャップを前記外筒の軸回りに回動することにより、前記流路の基端が前記外筒内に臨んで前記連通状態となり、この状態で前記キャップが先端方向に移動して離脱可能となる上記(1)または(2)に記載の薬液注入器具。
【0010】
(4) 前記キャップは、筒状をなす部分を有し、その内周部に前記外筒の外周部が嵌合する嵌合構造をなすものであり、
前記キャップの内周部および前記外筒の外周部のうちの一方には、少なくともその軸方向に沿って形成されたカム溝が設けられ、他方には、前記カム溝に係合して案内される突部が設けられている上記(3)に記載の薬液注入器具。
【0011】
(5) 前記装着状態で、前記キャップは、前記露出防止手段の一部を構成している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の薬液注入器具。
【0012】
(6) 前記キャップが離脱した離脱状態では、前記カバー部材に対する移動操作が可能となる上記(5)に記載の薬液注入器具。
【0013】
(7) 前記支持部材および前記キャップは、それぞれ、筒状をなす部分を有し、前記キャップの内周部に前記支持部材の外周部が嵌合する嵌合構造をなすものであり、
前記キャップの内周部および前記支持部材の外周部のうちの一方には、前記外筒の軸方向に沿った凸条が形成され、他方には、前記凸条が挿入される溝が形成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の薬液注入器具。
【0014】
(8) 前記操作機構は、前記カバー部材を先端方向に付勢する付勢部材を有する上記(2)に記載の薬液注入器具。
【0015】
(9) 前記キャップは、前記付勢部材の付勢力によって、先端方向に向かって付勢されたカバー部材が当接する当接部を有する上記(8)に記載の薬液注入器具。
【0016】
(10) 前記キャップは、前記装着状態で前記カバー部材を介して、前記付勢部材の付勢力によって先端方向に向かって付勢されており、該付勢力は、前記キャップが離脱する際にその離脱を補助する上記(9)に記載の薬液注入器具。
【0017】
(11) 前記カバー部材は、有底筒状をなし、その底部に前記針管が挿通可能な貫通孔が形成されている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の薬液注入器具。
【0018】
(12) 前記針管は、前記カバー部材が前記第2の位置から前記第1の位置へ移動した際、該第1の位置の前記カバー部材によって再度前記針先まで覆われる上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の薬液注入器具。
【0019】
(13) 前記カバー部材に対して一旦出没した前記針先が再度前記カバー部材から突出するのを防止する再突出防止手段を有する上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の薬液注入器具。
【0020】
(14) 前記再突出防止手段は、前記支持部材に対して離脱可能に装着され、該支持部材から離脱した際に前記支持部材と前記カバー部材との間に挟まれて、該カバー部材の前記第2の位置への再移動を阻止する阻止部材と、該阻止部材を先端方向に付勢する付勢部材と、前記カバー部材に設けられ、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記阻止部材を係止する係止部とを有し、
前記カバー部材が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動した際、前記阻止部材は、前記係止部による係止が解除され、前記付勢部材の付勢力によって前記支持部材から離脱可能となるよう構成されている上記(13)に記載の薬液注入器具。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、薬液注入器具(第1実施形態)の使用状態を順に示す斜視図である。
【図2】図2は、薬液注入器具(第1実施形態)の使用状態を順に示す斜視図である。
【図3】図3は、薬液注入器具(第1実施形態)の使用状態を順に示す斜視図である。
【図4】図4は、薬液注入器具(第1実施形態)の使用状態を順に示す斜視図である。
【図5】図5は、薬液注入器具(第1実施形態)の使用状態を順に示す斜視図である。
【図6】図6は、図1に示す薬液注入器具の分解斜視図である。
【図7】図7は、図1に示す薬液注入器具の縦断面図である。
【図8】図8は、図2に示す薬液注入器具の縦断面図である。
【図9】図9は、図3に示す薬液注入器具の縦断面図である。
【図10】図10は、図4に示す薬液注入器具の縦断面図である。
【図11】図11は、図5に示す薬液注入器具の縦断面図である。
【図12】図12は、本発明の薬液注入器具(第2実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図13】図13は、本発明の薬液注入器具(第2実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図14】図14は、本発明の薬液注入器具(第2実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図15】図15は、本発明の薬液注入器具(第2実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図16】図16は、本発明の薬液注入器具(第2実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図17】図17は、本発明の薬液注入器具(第2実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図18】図18は、図12(図13〜図17も同様)に示す薬液注入器具におけるキャップの基端部付近の斜視図である。
【図19】図19は、本発明の薬液注入器具においてキャップが離脱している状態を示す平面図(図14に相当する平面図)である。
【図20】図20は、本発明の薬液注入器具(第3実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図21】図21は、本発明の薬液注入器具(第3実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【図22】図22は、本発明の薬液注入器具(第3実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の薬液注入器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1〜図5は、それぞれ、薬液注入器具(第1実施形態)の使用状態を順に示す斜視図、図6は、図1に示す薬液注入器具の分解斜視図、図7は、図1に示す薬液注入器具の縦断面図、図8は、図2に示す薬液注入器具の縦断面図、図9は、図3に示す薬液注入器具の縦断面図、図10は、図4に示す薬液注入器具の縦断面図、図11は、図5に示す薬液注入器具の縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図5中の右上側を「基端」、左下側を「先端」と言い、図6〜図11中(図12〜図22についても同様)の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0024】
各図に示す薬液注入器具1は、薬液Qが予め充填されたシリンジであり、その薬液Qを生体に注入する(投与する)際に用いられるものである。この薬液注入器具1は、有底筒状をなす外筒(シリンジ外筒)2と、外筒2内を摺動し得るガスケット3と、ガスケット3の基端部に連結された押し子(プランジャ)4と、外筒2の先端側に位置する針管5と、外筒2と針管5とを連結する支持部材(連結部材)6と、支持部材6を介して外筒2の外周側に支持されたカバー部材7と、針管5の針先51の再突出を防止する再突出防止手段8としての阻止部材81およびコイルバネ(付勢部材(阻止部材付勢用部材))82とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0025】
なお、薬液注入器具1内に充填される薬液Qとしては、その使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、造血剤、ワクチン、ホルモン製剤、抗リウマチ剤、抗ガン剤、麻酔剤、血液凝固防止剤等、主に皮下注射される薬液が挙げられる。
【0026】
図7〜図11に示すように、外筒2は、底部211を有する有底筒状の部材で構成されている。
【0027】
外筒2の基端外周には、板状のフランジ25が一体的に形成されている。押し子4を外筒2に対し相対的に移動操作する際などには、このフランジ25に指を掛けて操作を行うことができる。
【0028】
外筒2の底部211には、その先端側の部分に、弾性材料で構成されたパッキン(封止部材)22が固定されている。このパッキン22は、円板状をなし、外筒2に対して嵌合により固定されている。
【0029】
また、パッキン22の基端部には、その中心から偏心した位置に、凹部221が形成されている(例えば、図8参照)。この凹部221には、外筒2の底部211の当該凹部221に対応する部分に突出形成された凸部212が挿入される。凹部221に凸部212が挿入されることにより、パッキン22が外筒2に対してより確実に固定され、よって、パッキン22と外筒2との相対的な回動を防止することができる。
【0030】
図8(図9〜図11も同様)に示すように、外筒2には、底部211およびパッキン22を一括して貫通する流路23が形成されている。この流路23は、外筒2の内腔部(空間24)と連通している。これにより、空間24に充填された薬液Qが流路23を通過することができる。
【0031】
図7(図1〜図5も同様)に示すように、外筒2の胴部(外筒本体21)の外周部213の先端側の部分には、一対の突部(移動規制手段(露出防止手段))27a、27bが突出形成されている。これらの突部27aおよび27bは、カバー部材7の不本意な移動を規制するものである。カバー部材7の基端方向への移動が規制されことにより、針先51がカバー部材7から不本意に露出するのを防止することができる。また、これらの突部27aおよび27bは、外筒2の軸を介して対向配置されている。
【0032】
突部27aおよび27bの構成は、ほぼ同一であるため、以下、突部27aについて代表的に説明する。
【0033】
図1に示すように、突部27aは、外筒2の周方向に沿った長尺状をなしている。この突部27aの縁部、すなわち、長手方向の両端部には、爪部271、272がそれぞれ一体的に形成さている。各爪部271、272は、それぞれ、先端方向に向かって突出形成されている。
【0034】
外筒2および後述する押し子4の構成材料としては、それぞれ、例えば、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であるという点で、環状ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンのような樹脂が挙げられる。なお、外筒2の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【0035】
また、外筒2の外周部213(外周面)には、目盛り(図示せず)が付されているのが好ましい。これにより、薬液注入器具1内に収納された薬液Qの液量を把握することができる。
【0036】
このような外筒2内には、弾性材料で構成されたガスケット3が収納されている。ガスケット3の外周部には、2つのリング状の突部31、32が軸方向に沿って、所定間隔をおいて形成されている。この突部31、32が外筒2の内周面20に対し密着しつつ摺動することにより、気密性(液密性)を確実に保持するとともに、摺動性の向上を図ることができる。また、このガスケット3と外筒2とで囲まれる空間24内には、薬液Qを充填することができる。
【0037】
ガスケット3およびパッキン22の構成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、塩化ビニル樹脂のような比較的柔軟な樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
ガスケット3の基端部には、押し子4が接続されている。この押し子4は、ガスケット3を外筒2内でその軸方向に沿って移動操作するものである。なお、ガスケット3に対する押し子4の接続方法としては、特に限定されないが、例えば、螺合による方法、嵌合による方法等が挙げられる。
【0039】
この押し子4は、主に、横断面が十文字状の板片で構成される本体部40を有し、その基端にはフランジ状(板状)の指当て部42が本体部40と一体的に形成されている。この指当て部42を指等で押圧することにより押し子4を先端方向へ移動操作する。
【0040】
外筒2の先端側には、中空の針管5が外筒2の軸方向に沿って配置されている。この針管5は、支持部材6に固定されており、内腔52が支持部材6に形成された中継流路(流路)61に連通している。また、針管5の内腔52は、中継流路61(支持部材6)の位置に応じて、当該中継流路61を介して外筒2の空間24(流路23)と連通したり(図6中の二点鎖線で示す中継流路61、図8〜図10参照)、その連通が遮断されたりする(図6中の実線で示す中継流路61、図7参照)。
【0041】
針管5の先端には、鋭利な針先51が形成されている。この針先51の形状は、特に限定されず、本実施形態では、針管5の軸線に対し所定角度傾斜した刃面を有する形状をなしている。
【0042】
針管5は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金のような金属材料で構成されている。
【0043】
針管5の支持部材6に対する固着(固定)方法としては、例えば、嵌合、カシメ、融着、接着剤による接着等の方法、あるいはこれらを併用した方法が挙げられる。
【0044】
図7〜図8に示すように、針管5は、支持部材6を介して、外筒2と連結されている。この支持部材6は、円筒状をなす筒状部62と、筒状部62の内側に配置された円柱状の柱状部63と、筒状部62と柱状部63とを連結する連結部64とを有している。
【0045】
筒状部62の内径は、外筒2の外形とほぼ同等の大きさに設定されている。これにより、筒状部62の基端内周部621に外筒2(外筒本体21)の先端外周部214を嵌合させることができる。これにより、支持部材6は、筒状部62によって、嵌合構造をなすとなっている。この嵌合構造により、筒状部62の基端内周部621と外筒2の先端外周部214とが相対的に摺動することができ、よって、支持部材6(筒状部62)を外筒2の軸回りに確実に回動させることができる。
【0046】
また、筒状部62の基端内周部621には、その周方向に沿ってリング状の凸部622が形成されている。この凸部622は、外筒2の先端外周部214にその周方向に沿って形成された凹部215に挿入される。これにより、支持部材6が外筒2から不本意に離脱するのが確実に防止される。
【0047】
図6に示すように、筒状部62の外周部には、その長手方向に沿って一対のガイド溝(溝)624が形成されている。これらのガイド溝624は、筒状部62の軸を介して、対向配置されている。各ガイド溝624には、それぞれ、後述するカバー部材7の各凸条71が挿入される。
【0048】
筒状部62の内側には、間隙65を介して、柱状部63が配置されている。この柱状部63は、その全長(高さ)が筒状部62の全長よりも短く設定されている。柱状部63は、筒状部62の先端側に位置し、その基端部632が連結部64を介して、筒状部62の中央部623付近に連結されている。
【0049】
また、柱状部63の先端部中央には、前述した針管5が固定されている。柱状部63には、針管5の内腔52に連通する中継流路61が形成されている。この中継流路61は、柱状部63を貫通するものであり、縦断面視(側面視)で「L」字状をなすように形成されている(図7参照)。このため、中継流路61は、柱状部63の軸方向に沿って形成された第1の流路611と、第1の流路611と直行する方向に形成された第2の流路612とに分けることができる。
【0050】
第1の流路611の先端は、針管5の基端に接続され、当該第1の流路611の先端を介して、中継流路61が針管5の内腔52と連通している。
【0051】
図6に示すように、第2の流路612は、柱状部63の基端面に開口する長尺な凹部で構成されている。この第2の流路612は、支持部材6の軸回りの位置に応じて、外筒2のパッキン22に塞がれた状態(図7に示す状態)と、外筒2の流路23に向かって開放され、当該流路23と連通する状態(図8〜図11に示す状態)とを取り得る。図6に示す構成では、第2の流路612は、支持部材6を反時計回りに90°回転することにより、外筒2のパッキン22に塞がれた状態から、流路23と連通する状態へと変位する。
【0052】
なお、支持部材6の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、外筒2について説明した材料と同様のものを用いることができる。
【0053】
このような支持部材6によって、カバー部材7が支持されている。カバー部材7は、針管5を覆い(囲い)得るものである。このカバー部材7は、針管5をその針先51まで覆う第1の位置(図1、図2、図5、図7、図8および図11参照)と、第1の位置から外筒2の軸方向に沿って移動して、針先51を露出させる第2の位置(図3、図4、図9および図10参照)とに変位することができる。
【0054】
図1に示すように、カバー部材7は、有底筒状をなす本体部72と、本体部72の基端721に突出形成された一対の舌片73a、73bとを有している。舌片73aと舌片73bとは、本体部72(外筒2)の軸を介して対向配置されている。
【0055】
本体部72の内径は、支持部材6の筒状部62の外形とほぼ同等に設定されている。これにより、本体部72は、筒状部62に確実に嵌合する。
【0056】
また、カバー部材7の内周部には、本体部72から各舌片73a、73bに渡って、一対の凸条71が本体部72(外筒2)の軸方向に沿って形成されている。2本の凸条71のうち、一方の凸条71は、舌片73a側に配置され、他方の凸条71は、舌片73b側に配置されている。すなわち、2本の凸条71は、カバー部材7の軸を介して対向配置されている。
【0057】
各凸条71は、それぞれ、支持部材6のガイド溝624に挿入される。これにより、カバー部材7を第1の位置と第2の位置との間を移動させる際、各凸条71がそれぞれガイド溝624に案内され(摺動し)、よって、このカバー部材7の移動操作を円滑に行なうことができる(図3参照)。また、このような挿入により、カバー部材7と支持部材6との相対的な回動が規制される(禁止される)。これにより、カバー部材7を外筒2の軸回りに回転操作した際、カバー部材7が支持部材6とともに外筒2に対して回転することとなり、よって、その回転操作を円滑に行なうことができる(図2参照)。
【0058】
本体部72の底部(先端壁部)722の中央部には、針管5が挿通可能(通過可能)な貫通孔723が形成されている。カバー部材7が第2の位置に変位した際、針管5の針先51は、貫通孔723を介して、カバー部材7から先端方向に突出することができる。この状態で、針管5の針先51によって生体表面(目的部位)200を穿刺することができる(図9、図10参照)。
【0059】
本体部72の基端721には、基端方向に突出した一対の舌片73a、73bが形成されている。各舌片73a、73bは、それぞれ、その横断面形状が支持部材6の筒状部62の周方向に沿った円弧状をなす長尺体である。
【0060】
また、各舌片73a、73bの内周部には、支持部材6の筒状部62の基端625に係合する係合部732がそれぞれ突出形成されている。各係合部732が支持部材6の筒状部62の基端625に係合することにより、カバー部材7が支持部材6から先端方向に向かって離脱するのを防止することができる。
【0061】
図1および図7に示すように、薬液注入器具1が初期状態(未使用状態)では、カバー部材7は、第1の位置にある。このとき、舌片73aの基端部731が外筒2の突部27aの先端部273に当接し、舌片73bの基端部731が外筒2の突部27bの先端部273に当接している。これにより、カバー部材7の基端方向への移動、すなわち、第1の位置から第2の位置への移動が規制される(以下、この規制を「移動規制」と言う)。この移動規制を解除する操作をしない限り、カバー部材7は、第2の位置へ変位することができず、よって、カバー部材7に基端方向への不本意な外力が付与されたとしても、当該カバー部材7から針管5の針先51が不本意に突出するのが確実に防止される。これにより、不本意に突出した針先51によって、手指等が誤って穿刺されるのを確実に防止することができる。
【0062】
また、図1に示すように、外筒2の突部27aに当接している舌片73aは、当該突部27aの爪部271と爪部272との間に挟持されている。これは、外筒2の突部27bに当接している舌片73bについても同様である。このような挟持により、カバー部材7の不本意な回動が規制され、よって、突部27aおよび27bによるカバー部材7に対する移動規制が不本意に解除されるのを確実に防止することができる。これにより、カバー部材7が不本意に第1の位置から第2の位置へ移動するのが防止され、よって、当該カバー部材7から針管5の針先51が不本意に突出するのが確実に防止される。
【0063】
なお、図7に示すように、薬液注入器具1が初期状態では、支持部材6の中継流路61(第2の流路612)が外筒2のパッキン22で封止されているため、中継流路61を介しての外筒2の空間24と針管5の内腔との連通が遮断されている。
【0064】
図1に示す状態からカバー部材7を図2中の矢印方向に回転操作した際には、舌片73aが外筒2の突部27aの爪部271を乗り越えて、当該突部27aが舌片73aと舌片73bとの間に形成された切り込み部76に入り込み(位置し)、これと同様に、突部27bも前記切り込み部76と反対側の切り込み部76に入り込む。これにより、移動規制が解除される(図2および図8参照)。薬液注入器具1では、カバー部材7に対する図1に示す状態から図2中の矢印方向への回転操作を「移動規制解除操作」と言うことができる。
【0065】
このように移動規制が解除されることにより、カバー部材7を基端方向へ移動操作することができ、よって、カバー部材7は、第1の位置から第2の位置へ移動することができる(図3参照)。
【0066】
なお、図8に示すように、カバー部材7を回転操作した際には、当該カバー部材7の回転に伴って、支持部材6の中継流路61(第2の流路612)が外筒2の流路23に対応する位置に変位する。この中継流路61を介して、外筒2の空間24と針管5の内腔52とが連通する。
【0067】
また、図2に示すように、移動規制が解除された際、突部27a(突部27bも同様)は、舌片73aと舌片73bとの間に位置する。このとき、突部27aの爪部271(縁部)には、舌片73aの側部(縁部)733が当接し、爪部272(縁部)には、舌片73bの側部733が当接する。これにより、カバー部材7がさらに回転する(回動する)のが規制され(防止され)、よって、支持部材6の中継流路61が外筒2の流路23から離間して、外筒2のパッキン22で再度封止されるのを防止することができる。
【0068】
図2に示す状態からカバー部材7を図3中の矢印方向へ移動操作する際には、突部27a(突部27bも同様)の爪部271を舌片73aの側部733が摺動し、突部27a(突部27bも同様)の爪部272を舌片73bの側部733が摺動する。これにより、カバー部材7が基端方向へ移動している際に、当該カバー部材7が不本意に回動するのが規制される(防止される)。よって、前述したように、支持部材6の中継流路61が外筒2の流路23から離間して、外筒2のパッキン22で再度封止されるのを防止することができる。
【0069】
図3および図4に示すように、第2の位置にカバー部材7が移動した際、当該カバー部材7の貫通孔723からは、針管5の針先51が突出する。
【0070】
また、薬液注入器具1では、図4に示す状態からカバー部材7を図5中矢印方向へ移動操作して、当該カバー部材7を第2の位置から第1の位置へ再度移動させることができる。この第1の位置に戻ったカバー部材7によって、針管5を再度針先51まで覆うことができる。
【0071】
なお、カバー部材7の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、外筒2について説明した材料と同様のものを用いることができる。また、カバー部材7の構成材料は、視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。これにより、図9に示すように、カバー部材7を生体表面200の穿刺部位に押し当てる際、当該穿刺部位をカバー部材7を介して確認しつつ、その押し当て操作を行なうことができる。これにより、針先51によって、穿刺部位に対して確実に穿刺を行なうことができる。
【0072】
次に、再突出防止手段8について説明する。
前述したように、針管5は、カバー部材7に対して出没自在に構成されている。再突出防止手段8は、このようにカバー部材7に対して一旦出没した針管5(針先51)が再度カバー部材7から突出するのを防止するものである。再突出防止手段8は、支持部材6に対して離脱可能に装着された阻止部材81と、阻止部材81を先端方向に付勢するコイルバネ82とを有している。
【0073】
阻止部材81は、有底筒状をなすものである。この阻止部材81の底部(先端壁部)811の中央部には、針管5が挿通する貫通孔812が形成されている。また、底部811の外周には、外形が拡径したフランジ813が形成されている。
【0074】
図7に示すように、薬液注入器具1が初期状態では、阻止部材81は、その側壁814の一部(基端部)が支持部材6の間隙65内に挿入されている。また、コイルバネ82は、圧縮した状態で先端821が阻止部材81の底部811に当接し、基端822が支持部材の柱状部63の先端面631に当接して、阻止部材81内に収納されている。これにより、阻止部材81は、コイルバネ82の付勢力により、先端方向へ向かって付勢される。
【0075】
また、この状態で、フランジ813は、カバー部材7(本体部72)の内周部に隆起して形成された係止部74に当接して(係止されて)いる。係止部74は、カバー部材7の内周に沿ってリング状に形成されたものである。このような係止部74により、阻止部材81は、コイルバネ82の付勢力に抗して、カバー部材7に対して係止されている。従って、カバー部材7が第1の位置にあるとき、係止部74は、その阻止部材81に対する係止力が、コイルバネ82の付勢力を上回っている。
【0076】
図7に示す状態からカバー部材7を外筒2に対して回転させると、移動規制が解除される(図8参照)。
【0077】
そして、図9に示すように、カバー部材7を第2の位置へ移動操作すると、このカバー部材7の移動に伴って、係止部74は、コイルバネ82の付勢力に抗して、阻止部材81を基端方向へ押圧する。これにより、阻止部材81の側壁814が間隙65内を摺動する。この阻止部材81の移動により、コイルバネ82は、さらに圧縮され、遂には、付勢力が、係止部74による係止力を上回ることとなり、フランジ813が係止部74を乗り越えて、フランジ813に対する係止が解除される。このとき、阻止部材81は、コイルバネ82の付勢力によって先端方向に移動しようとするが、カバー部材7の底部722に一体的に突出形成された突起75に突き当たり、先端方向への移動が規制される。
【0078】
また、前述したように、カバー部材7が第2の位置へ移動した際には、当該カバー部材7の貫通孔723を介して、針管5の針先51が突出している。また、この状態では、押し子4を操作することができる(図10参照)。
【0079】
図11に示すように、カバー部材7を第2の位置へ移動操作する操作力(押圧力)を解除すると、コイルバネ82は、自身の弾性力(復元力)により復元する。これにより、阻止部材81は、先端方向へ移動して、側壁814が支持部材6の間隙65から抜け出す、すなわち、離脱する。また、この阻止部材81は、カバー部材7の突起75を介して、当該カバー部材7を先端方向へ押圧する。これにより、カバー部材7が第1の位置へ戻り、針管5の全体がカバー部材7内に再度収納される。
【0080】
また、支持部材6から離脱した阻止部材81は、支持部材6の先端面631と、第1の位置に戻ったカバー部材7の底部722との間に挟まれる。さらに、阻止部材81は、コイルバネ82の付勢力により、カバー部材7の突起75を回転中心として、図11中時計回りに回転し、当該阻止部材81の軸がカバー部材7の軸に対して傾斜した姿勢となる。これにより、阻止部材81は、その側壁814が再度支持部材6の間隙65に挿入されて、当該間隙65内を摺動するが不可能となる。
【0081】
図11に示す状態で、カバー部材7を再度基端方向へ移動操作しようとした場合、阻止部材81によって、その移動操作が禁止される(阻止される)。
【0082】
なお、「係止部74の阻止部材81に対する係止力」と「コイルバネ82の付勢力」との大小関係の設定方法としては、例えば、係止部74のカバー部材7の内周部に対する傾斜角度や、コイルバネ82のバネ定数を変更することによって、行なうことができる。
【0083】
また、薬液注入器具1では、カバー部材7に形成された係止部74および突起75は、再突出防止手段8の一部を構成するものであると言うことができる。
【0084】
また、阻止部材81の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、外筒2について説明した材料と同様のものを用いることができる。また、コイルバネ82の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料を用いることができる。
【0085】
次に、薬液注入器具1の使用方法の一例について説明する。
[1] まず、生体に投与するのに十分な液量の薬液Qが予め充填された薬液注入器具1を用意する(図1、図7参照)。この薬液注入器具1は、未使用状態のものであり、カバー部材7が第1の位置にある。これにより、針管5がその針先51まで覆われ、よって、針先51による誤穿刺が確実に防止されている。さらに、薬液注入器具1では、外筒2の27aおよび27bによって、カバー部材7に対する移動規制がなされている。これにより、カバー部材7の基端方向への不本意な移動して、針管5の針先51がカバー部材7の貫通孔723から突出するのを確実に防止することができる。よって、針先51による誤穿刺がより確実に防止されている。
【0086】
また、この薬液注入器具1では、前述したように、中継流路61の第2の流路612が外筒2のパッキン22によって塞がれているため、中継流路61を介した外筒2の空間24と針管5の内腔52との連通が遮断されている。これにより、押し子4にそれを押圧する力が不本意に付与されたとしても、薬液Qが針管5を介して不本意に流出するのが確実に防止され、よって、薬液Qが無駄に損なわれるのを防止することができる。また、外筒2の空間24内の液密性が保持されるため、薬液Qの無菌状態が維持される。
【0087】
[2] 次に、カバー部材7を把持して、図1に示す状態から図2中矢印方向に回転することにより、カバー部材7に対する移動規制が解除される(図2参照)。このとき、前述したように、中継流路61の第2の流路612が外筒2の流路23に向かって開放する位置に変位するため、中継流路61を介して外筒2の空間24と針管5の内腔52とが連通する。この連通状態は、薬液Qが生体に投与されるまで維持される(図8参照)。
【0088】
このように、薬液注入器具1では、カバー部材7は、外筒2の空間24と針管5の内腔52とが連通した連通状態と、この連通状態を遮断する遮断状態とを選択する(切り替える)操作を行なう操作部材(操作機構)とも言うことができる。また、カバー部材7は、その本体部72の外周部が支持部材6を操作する(切り替え操作する)際に把持される把持部として機能する。
【0089】
[3] 次に、外筒2を把持して、図2(図8も同様)に示す状態からカバー部材7の底部722を、コイルバネ82の付勢力に抗して、生体表面200の穿刺部位(目的部位)に押し付けて、カバー部材7を第2の位置へ移動させる(図3参照)。これにより、カバー部材7に覆われていた針管5の針先51が、当該カバー部材7の貫通孔723を介して、先端方向に突出して、生体表面200を穿刺する(図9参照)。
【0090】
[4] 次に、図3(図9も同様)に示す状態から、外筒2を把持していた手の人差し指および中指を外筒2のフランジ25の縁部に掛け、親指を押し子4の指当て部42に掛ける。そして、親指で指当て部42を先端方向へ押圧する(図4、図10参照)。この操作により、ガスケット3が先端方向へ移動して、よって、外筒2の空間24内の薬液Qは、外筒2の流路23、支持部材6の中継流路61、針管の内腔52を順に通過して、生体に対して確実に投与される(注入される)。
【0091】
[5] 薬液Qの投与後、薬液注入器具1(カバー部材7)を生体表面200から離間させる。このとき、前述したように、カバー部材7は、コイルバネ82の復元力により、阻止部材81を介して先端方向へ押圧されて、第1の位置へ戻る(図5、図11参照)。これにより、針管5は、針先51まで再度覆われる。よって、針先51に付着した血液の飛散や、血液が付着した針先51による誤穿刺が防止され、その血液による感染を防止することができる。
【0092】
また、この薬液注入器具1では、前述したように、阻止部材81は、コイルバネ82の復元力により、支持部材6から離脱して、支持部材6の先端面631とカバー部材7の底部722との間に、傾斜した姿勢で位置する(図11参照)。この状態で、カバー部材7を再度基端方向へ移動操作しようとした場合、阻止部材81によって、その移動操作が禁止される。これにより、使用済の薬液注入器具1を誤って使用する、すなわち、針管5を突出させて、当該針管5を介して薬液Qを生体に投与するのを確実に防止することができる。
【0093】
また、支持部材6およびカバー部材7のうち、本実施形態では支持部材6にガイド溝624が形成され、カバー部材7に凸条71が形成されているが、これに限定されず、カバー部材7にガイド溝624のようなガイド溝が形成され、支持部材6に凸条71のような凸条が形成されていてもよい。
【0094】
また、各舌片73a、73bは、有底筒状をなす本体部72の基端から突出して形成されたものでもよく、また、本体部72の基端部から切欠きを形成し、残った部分を舌片73a、73bとしてもよい。
【0095】
<第2実施形態>
図12〜図17は、それぞれ、本発明の薬液注入器具(第2実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図、図18は、図12(図13〜図17も同様)に示す薬液注入器具におけるキャップの基端部付近の斜視図、図19は、本発明の薬液注入器具においてキャップが離脱している状態を示す平面図(図14に相当する平面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図12〜図19中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0096】
以下、これらの図を参照して本発明の薬液注入器具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0097】
本実施形態は、操作機構の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0098】
図12〜図17に示す薬液注入器具1Aでは、支持部材6Aを回転操作する操作機構は、カバー部材7Aと、カバー部材7Aを先端方向に付勢するコイルバネ(付勢部材(カバー部材付勢用部材))10と、外筒2に着脱自在に装着されるキャップ9とで構成されている。
【0099】
支持部材6Aは、カバー部材7Aと付勢部材10とを移動可能に支持する補助部66をさらに有している。この補助部66は、筒状部62の連結部64よりも先端側の部分に固定された第1の部材67と、筒状部62と柱状部63との間の間隙65に挿入された第2の部材68とで構成されている。
【0100】
第1の部材67は、筒体で構成されている。この第1の部材67は、その基端部671が筒状部62に固定されている。この固定方法としては、特に限定されないが、例えば、嵌合、係合、接着(接着剤や溶媒による接着)、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)等の方法が挙げられる。また、第1の部材67の先端付近には、内径が縮径した縮径部672が形成されている。この縮径部672の内径は、カバー部材7Aの本体部72の外径より若干大きくなっている。これにより、カバー部材7Aは、本体部72が縮径部672を挿通することができる(図12〜図18参照)。また、縮径部672は、後述するカバー部材7Aのフランジ部724に当接して、当該カバー部材7Aが第1の部材67(補助部66)から離脱するのを防止することができる(例えば図12参照)。
【0101】
第2の部材68は、筒体で構成されている。この第2の部材68は、その基端部に外径が拡径したフランジ部681が形成されている。このフランジ部681は、コイルバネ10の基端が当接する(支持する)座部(当接部)として機能する。また、フランジ部681は、コイルバネ10の付勢力によって基端方向へ付勢されて、連結部64に当接している。本実施形態では、第1の部材67の先端面と第2の部材68の先端面とは、軸方向の位置がほぼ同じとなっている。
【0102】
第1の部材67および第2の部材68の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前記第1実施形態で記載した支持部材6の構成材料と同様ものを用いることができる。
【0103】
カバー部材7Aは、図12(図13、図14、図17も同様)に示す第1の位置と、図15(図16も同様)に示す第2の位置とに移動することができる。このカバー部材7Aは、本体部72の基端部に外径が拡径したフランジ部724が形成されている。前述したように、フランジ部724は、カバー部材7Aが第1の位置にあるとき、第1の部材67(補助部66)の縮径部672に当接する。
【0104】
また、カバー部材7Aは、第1の位置と第2の位置との間を移動する際、フランジ部724が補助部66の第1の部材67の内周部673に摺動し、カバー部材7A(本体部72)の内周部725が第2の部材68の外周部682に摺動する。これにより、カバー部材7Aが安定して移動することができる。
【0105】
コイルバネ10は、第1の部材67の内周部673と第2の部材68の外周部682との間に配置されている。このコイルバネ10は、その先端がカバー部材7Aのフランジ部724に当接し、基端が第2の部材68のフランジ部681に当接している。図15に示すように、キャップ9を取り外した状態(以下この状態を「離脱状態」と言う)で、第1の位置にあるカバー部材7Aを基端方向に押圧すると、当該カバー部材7Aは、コイルバネ10の付勢力に抗して基端方向(第2の位置)へ移動する。そして、カバー部材7Aに対する押圧力を解除すると、第2の位置にあるカバー部材7Aは、コイルバネ10の付勢力によって、先端方向へ移動して、再度第1の位置に戻る(図17参照)。このように、離脱状態では、針先51による生体への穿刺を行なうことができる、すなわち、薬液注入器具1Aを使用することができる。
【0106】
なお、コイルバネ10は、カバー部材7Aが第1の位置にあるとき、カバー部材7Aのフランジ部724と第2の部材68のフランジ部681との間で圧縮された状態(圧縮状態)であってもよいし、外力が付されない自然状態(自然長)であってもよい。
【0107】
また、コイルバネ10の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料を用いることができる。
【0108】
図12に示すように、キャップ9は、有底筒状をなす部材で構成されており、その基端部が外筒2に装着されて、その装着状態でカバー部材7Aの全体を収納する(覆う)。これにより、装着状態では、カバー部材7Aに対して不本意に押圧力を加えるのが確実に防止される。よって、カバー部材7Aが不本意に第1の位置から第2の位置に移動して針先51が露出するのを確実に防止することができ、針先51による誤穿刺が確実に防止される。このように、キャップ9は、装着状態で、針先51が不本意に露出するのを阻止する露出防止手段としての機能を有している。
【0109】
図12に示すように、外筒2の外周部213には、リング部材28が一体的または連結して設けられている。このリング部材28の外周部281は、装着状態でキャップ9の基端内周部91に嵌合する。このような嵌合構造により、装着状態が確実に維持される、すなわち、キャップ9が外筒2から容易に離脱するのを確実に防止することができる。
【0110】
図19に示すように、リング部材28の外周部281には、平面視でL字状をなすカム溝282が形成されている。このカム溝282は、リング部材28の外周部281の周方向に沿って形成された第1の溝283と、軸方向に沿って形成された第2の溝284とに分けることができる。第1の溝283と第2の溝284とは、互いに連通している。
【0111】
図18に示すように、キャップ9の基端内周部91には、突部(カムフォロア)92が突出形成されている。装着状態では、この突部92がカム溝282に係合する。突部92がカム溝282の第1の溝283に案内されることにより、キャップ9は、軸方向に沿った移動が規制され、軸回りの回動のみ可能となる。また、突部92が第1の溝283から第2の溝284に入り、当該第2の溝284に案内されることにより、キャップ9は、軸回りの回動が規制され、軸方向に沿った(先端方向への)移動のみ可能となる。
【0112】
図12に示すように、装着状態では、キャップ9の基端内周部91に支持部材6Aの筒状部62の基端外周部626が嵌合する。この嵌合構造により、装着状態でキャップ9が支持部材6Aを回転可能に連結される(支持される)。さらに、支持部材6Aの基端外周部626には、軸方向に沿った凸条627が形成されている(図19参照)。キャップ9の基端内周部91には、軸方向に沿った溝93が形成されている(図18、図19参照)。この溝93には、凸条627が挿入される。これにより、装着状態でキャップ9が支持部材6Aを確実に回転可能に連結される。
【0113】
このような連結により、キャップ9を回転操作することにより、その回転力が溝95から凸条627を介して支持部材6Aに伝達されて、当該支持部材6Aが回転する。これにより、連通状態と遮断状態とを確実に選択することができる。
【0114】
薬液注入器具1Aでは、装着状態のキャップ9の突部92がカム溝282の第1の溝283を移動している間は、前述したように支持部材6Aは回転するが、中継流路61の第2の流路612が外筒2の流路23に臨むに至らず、遮断状態が維持される。そして、突部92が第1の溝283から第2の溝284へ入り込んだときに、支持部材6Aがさらに回転して、中継流路61の第2の流路612が外筒2の流路23に臨む、すなわち、連通状態となる。このような構成となるように、中継流路61、流路23、カム溝282、突部92がそれぞれ形成さている。
【0115】
また、突部92が第2の溝284へ入り込むと(連通状態となると)、キャップ9を先端方向へ移動することができ、当該キャップ9を離脱することができる。このとき、キャップ9は、突部92が第2の溝284に案内され、溝93が支持部材6Aの凸条627に案内される。これにより、キャップ9が円滑に移動することができ、離脱操作を容易に行なうことができる。
【0116】
なお、支持部材7Aを回転操作する際には、当該キャップ9の外周部を把持することにより、その操作を容易に行なうことができる。このようにキャップ9の外周部は、把持部として機能する。
【0117】
キャップ9の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、前記第1実施形態で外筒2について説明した材料と同様のものを用いることができる。
【0118】
次に、薬液注入器具1Aの使用方法の一例について説明する。
【0119】
[1] まず、生体に投与するのに十分な液量の薬液Qが予め充填された薬液注入器具1Aを用意する(図12参照)。この薬液注入器具1Aは、未使用状態のものであり、カバー部材7Aが第1の位置にある。また、キャップ9が装着されており、このキャップ9によってカバー部材7Aに対する移動操作を行なうのが防止されている。これにより、針先51が露出するのが確実に防止され、よって、針先51による誤穿刺が確実に防止されている。
【0120】
また、この薬液注入器具1Aでは、前述したように、中継流路61の第2の流路612が外筒2のパッキン22によって塞がれているため、中継流路61を介した外筒2の空間24と針管5の内腔52との連通が遮断されている。これにより、押し子4にそれを押圧する力が不本意に付与されたとしても、薬液Qが針管5を介して不本意に流出するのが確実に防止され、よって、薬液Qが無駄に損なわれるのを防止することができる。また、外筒2の空間24ないの液密性が保持されるため、薬液Qの無菌状態が維持される。
【0121】
また、キャップ9の突部92は、外筒2の第1の溝283の第2の溝284と反対側(図19中下側)の端部283aに位置している。
【0122】
[2] 次に、キャップ9を把持して、図12に示す状態から図13中矢印方向に回転する。この回転操作は、前述したようにキャップ9の突部92が外筒2の第1の溝283内を摺動することにより、円滑に行なわれる。また、この回転操作中にたとえキャップ9を先端方向に向かって引張ろうとしても、キャップ9の突部92が外筒2の第1の溝283の縁部に当接するため、引張り操作を防止することができる。これにより、キャップ9が不本意に取り外されるのが防止される。また、前述したように、回転操作中は、遮断状態が維持される。
【0123】
そして、キャップ9の突部92が外筒2の第1の溝283から第2の溝284に達する(入り込む)とともに、中継流路61の第2の流路612が外筒2の流路23に向かって開放する位置に変位し、中継流路61を介して外筒2の空間24と針管5の内腔52とが連通する。この連通状態は、薬液Qが生体に投与されるまで維持される(図13参照)。このように、薬液注入器具1Aでは、キャップ9の突部92が外筒2の第1の溝283から第2の溝284に達すると、キャップ9の回転操作が規制されるため、当該薬液注入器具1Aが連通状態となったことを把握することができる。
【0124】
[3] 次に、図14に示すように、キャップ9を図中矢印方向へ引張る。これにより、キャップ9を取り外すことができる。この取り外し操作は、前述したようにキャップ9の突部92が外筒2の第2の溝284内を摺動することにより、円滑に行なわれる。
【0125】
[4] 次に、外筒2を把持して、カバー部材7Aの底部722を、コイルバネ10の付勢力に抗して、生体表面200の穿刺部位(目的部位)に押し付けて、カバー部材7Aを第2の位置へ移動させる(図15参照)。これにより、カバー部材7Aに覆われていた針管5の針先51が、当該カバー部材7Aの貫通孔723を介して、先端方向に突出して、生体表面200を穿刺する(図15参照)。
【0126】
[5] 次に、図15に示す状態と維持しつつ、外筒2を把持していた手の人差し指および中指を外筒2のフランジ25の縁部に掛け、親指を押し子4の指当て部42に掛ける。そして、親指で指当て部42を先端方向へ押圧する(図16参照)。この操作により、ガスケット3が先端方向へ移動して、よって、外筒2の空間24内の薬液Qは、外筒2の流路23、支持部材6Aの中継流路61、針管の内腔52を順に通過して、生体に対して確実に投与される(注入される)。
【0127】
[6] 薬液Qの投与後、薬液注入器具1A(カバー部材7A)を生体表面200から離間させる。このとき、カバー部材7Aは、コイルバネ10の復元力により、先端方向へ押圧されて、第1の位置へ戻る(図17参照)。これにより、針管5は、針先51まで再度覆われる。よって、針先51に付着した血液の飛散や、血液が付着した針先51による誤穿刺が防止され、その血液による感染を防止することができる。
【0128】
なお、薬液注入器具1A(操作機構)では、カバー部材7Aおよびキャップ9のうちの一方を省略することができる。
【0129】
また、キャップ9の基端内周部91およびリング部材28(外筒2)の外周部281のうち、本実施形態ではリング部材28の外周部281にカム溝282が形成され、キャップ9の基端内周部91に突部92が形成されているが、これに限定されず、リング部材28の外周部281に突部92のような突部が形成さえ、キャップ9の基端内周部91にカム溝282のようなカム溝が形成されていてもよい。
【0130】
また、キャップ9の基端内周部91および支持部材6Aの基端外周部626のうち、支持部材6Aの基端外周部626に凸条627が形成され、キャップ9の基端内周部91に溝93が形成されているが、これに限定されず、支持部材6Aの基端外周部626に溝93のような溝が形成され、キャップ9の基端内周部91に凸条627のような凸条が形成されていてもよい。
【0131】
<第3実施形態>
図20〜図22は、それぞれ、本発明の薬液注入器具(第3実施形態)の使用状態を順に示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図20〜図22中の右側を「基端」、左側を「先端」と言う。
【0132】
以下、これらの図を参照して本発明の薬液注入器具の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0133】
本実施形態は、キャップの長さが異なること以外は前記第2実施形態と同様である。
【0134】
図20〜図22に示す薬液注入器具1Bでは、キャップ9Aは、その長さが前記第2実施形態の薬液注入器具1Aのキャップ9よりも短いものとなっている。これにより、薬液注入器具1Bの全長を薬液注入器具1Aよりも短くすることができ、よって、薬液注入器具1Bを小型化することができる。
【0135】
また、キャップ9Aの長さが短くなっているため、装着状態では、キャップ9Aは、その頂部(先端壁部(当接部))94が、コイルバネ10の付勢力によって先端方向に向かって付勢されたカバー部材7Aの底部722に当接している(図20参照)。このカバー部材7Aを介して、キャップ9Aもコイルバネ10の付勢力によって先端方向に向かって付勢されている。
【0136】
このような状態(図20に示す状態)の薬液注入器具1Bでは、キャップ9Aを把持して、図21中矢印方向に回転すると、前述したように連通状態(図21に示す状態)となる。また、連通状態となったときに、キャップ9の突部92が外筒2の第2の溝284に位置しているため、キャップ9に対する先端方向への移動の規制が解除され、当該キャップ9Aは、瞬時に、カバー部材7Aを介して、コイルバネ10の付勢力によって先端方向に向かって付勢される(押し出される)(図22参照)。これにより、キャップ9Aを容易に取り外すことができる(図22中の二点鎖線で示すキャップ9A参照)。このように、薬液注入器具1Bでは、コイルバネ10の付勢力は、キャップ9Aを取り外す際にその取り外し操作を補助する力として機能する。
【0137】
以上、本発明の薬液注入器具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、薬液注入器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0138】
また、本発明の薬液注入器具は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0139】
例えば、前記第2実施形態や前記第3実施形態に記載の薬液注入器具は、前記第1実施形態の薬液注入器具が有するような再突出防止手段を有していてもよい。
【0140】
また、支持部材の回動角度は、本実施形態では90°に設定されているが、これに限定されず、例えば、30°、45°、180°に設定されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の薬液注入器具は、先端に鋭利な針先を有する針管と、前記針管の基端側に位置し、内部が前記針管内と連通可能な有底筒状をなす外筒と、前記外筒内を摺動し得るガスケットと、前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間内に充填される薬液と、前記針管を支持し、先端が該針管内と連通し、基端が前記外筒内と連通し得る流路を有する支持部材と、前記針管の少なくとも前記針先を囲った状態で固定され、かつ、前記支持部材を回転操作して、前記針管内と前記外筒内とが前記流路を介して連通する連通状態と、該連通状態を遮断する遮断状態とを選択する操作を行なう操作機構と、前記針先が露出するのを防止する露出防止手段とを備え、前記操作機構は、前記支持部材に、前記針管を前記針先まで覆う第1の位置と、該第1の位置から基端方向に移動して、前記針先が露出する第2の位置とに変位可能に支持されたカバー部材と、前記外筒に着脱自在に装着され、その装着状態で前記支持部材を回転可能に連結され、かつ、前記針管を前記針先まで覆うキャップの2つの部材のうちの少なくとも一方で構成されている。そのため、針管の針先がカバー部材から不本意に突出するのを確実に防止することができるとともに、薬液が針管を介して不本意に流出するのを確実に防止することができる。従って、本発明の薬液注入器具は、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0142】
1、1A、1B 薬液注入器具
2 外筒(シリンジ外筒)
20 内周面
21 外筒本体
211 底部
212 凸部
213 外周部
214 先端外周部
215 凹部
22 パッキン(封止部材)
221 凹部
23 流路
24 空間
25 フランジ
27a、27b 突部(移動規制手段)
271、272 爪部
273 先端部
28 リング部材
281 外周部
282 カム溝
283 第1の溝
283a 端部
284 第2の溝
3 ガスケット
31、32 突部
4 押し子(プランジャ)
40 本体部
42 指当て部
5 針管
51 針先
52 内腔
6、6A 支持部材(連結部材)
61 中継流路(流路)
611 第1の流路
612 第2の流路
62 筒状部
621 基端内周部
622 凸部
623 中央部
624 ガイド溝(溝)
625 基端
626 基端外周部
627 凸条
63 柱状部
631 先端面
632 基端部
64 連結部
65 間隙
66 補助部
67 第1の部材
671 基端部
672 縮径部
673 内周部
68 第2の部材
681 フランジ部
682 外周部
7、7A カバー部材
71 凸条
72 本体部
721 基端
722 底部(先端壁部)
723 貫通孔
724 フランジ部
725 内周部
73a、73b 舌片
731 基端部
732 係合部
733 側部(縁部)
74 係止部
75 突起
76 切り込み部
8 再突出防止手段
81 阻止部材
811 底部(先端壁部)
812 貫通孔
813 フランジ
814 側壁
82 コイルバネ(付勢部材(阻止部材付勢用部材))
821 先端
822 基端
9、9A キャップ
91 基端内周部
92 突部(カムフォロア)
93 溝
94 頂部(先端壁部(当接部))
10 コイルバネ(付勢部材(カバー部材付勢用部材))
200 生体表面(目的部位)
Q 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に鋭利な針先を有する針管と、
前記針管の基端側に位置し、内部が前記針管内と連通可能な有底筒状をなす外筒と、
前記外筒内を摺動し得るガスケットと、
前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間内に充填される薬液と、
前記針管を支持し、先端が該針管内と連通し、基端が前記外筒内と連通し得る流路を有する支持部材と、
前記針管の少なくとも前記針先を囲った状態で固定され、かつ、前記支持部材を回転操作して、前記針管内と前記外筒内とが前記流路を介して連通する連通状態と、該連通状態を遮断する遮断状態とを選択する操作を行なう操作機構と、
前記針先が露出するのを防止する露出防止手段とを備え、
前記操作機構は、前記支持部材に、前記針管を前記針先まで覆う第1の位置と、該第1の位置から基端方向に移動して、前記針先が露出する第2の位置とに変位可能に支持されたカバー部材と、前記外筒に着脱自在に装着され、その装着状態で前記支持部材を回転可能に連結され、かつ、前記針管を前記針先まで覆うキャップの2つの部材のうちの少なくとも一方で構成されていることを特徴とする薬液注入器具。
【請求項2】
先端に鋭利な針先を有する針管と、
前記針管の基端側に位置し、内部が前記針管内と連通可能な有底筒状をなす外筒と、
前記外筒内を摺動し得るガスケットと、
前記外筒と前記ガスケットとで囲まれる空間内に充填される薬液と、
前記針管を支持し、先端が該針管内と連通し、基端が前記外筒内と連通し得る流路を有する支持部材と、
前記針管の少なくとも前記針先を囲った状態で固定され、かつ、前記支持部材を回転操作して、前記針管内と前記外筒内とが前記流路を介して連通する連通状態と、該連通状態を遮断する遮断状態とを選択する操作を行なう操作機構と、
前記針先が露出するのを防止する露出防止手段とを備え、
前記操作機構は、前記支持部材に、前記針管を前記針先まで覆う第1の位置と、該第1の位置から基端方向に移動して、前記針先が露出する第2の位置とに変位可能に支持されたカバー部材と、前記外筒に着脱自在に装着され、その装着状態で前記支持部材を回転可能に連結され、かつ、前記カバー部材の全体を収納するキャップとで構成されていることを特徴とする薬液注入器具。
【請求項3】
前記支持部材は、前記キャップを前記外筒の軸回りに回動可能に支持し、前記外筒の軸方向に沿って移動可能に支持するものであり、
前記流路の基端が前記外筒の底部によって塞がれて前記遮断状態となっており、該遮断状態から前記キャップを前記外筒の軸回りに回動することにより、前記流路の基端が前記外筒内に臨んで前記連通状態となり、この状態で前記キャップが先端方向に移動して離脱可能となる請求項1または2に記載の薬液注入器具。
【請求項4】
前記キャップは、筒状をなす部分を有し、その内周部に前記外筒の外周部が嵌合する嵌合構造をなすものであり、
前記キャップの内周部および前記外筒の外周部のうちの一方には、少なくともその軸方向に沿って形成されたカム溝が設けられ、他方には、前記カム溝に係合して案内される突部が設けられている請求項3に記載の薬液注入器具。
【請求項5】
前記装着状態で、前記キャップは、前記露出防止手段の一部を構成している請求項1ないし4のいずれかに記載の薬液注入器具。
【請求項6】
前記キャップが離脱した離脱状態では、前記カバー部材に対する移動操作が可能となる請求項5に記載の薬液注入器具。
【請求項7】
前記支持部材および前記キャップは、それぞれ、筒状をなす部分を有し、前記キャップの内周部に前記支持部材の外周部が嵌合する嵌合構造をなすものであり、
前記キャップの内周部および前記支持部材の外周部のうちの一方には、前記外筒の軸方向に沿った凸条が形成され、他方には、前記凸条が挿入される溝が形成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の薬液注入器具。
【請求項8】
前記操作機構は、前記カバー部材を先端方向に付勢する付勢部材を有する請求項2に記載の薬液注入器具。
【請求項9】
前記キャップは、前記付勢部材の付勢力によって、先端方向に向かって付勢されたカバー部材が当接する当接部を有する請求項8に記載の薬液注入器具。
【請求項10】
前記キャップは、前記装着状態で前記カバー部材を介して、前記付勢部材の付勢力によって先端方向に向かって付勢されており、該付勢力は、前記キャップが離脱する際にその離脱を補助する請求項9に記載の薬液注入器具。
【請求項11】
前記カバー部材は、有底筒状をなし、その底部に前記針管が挿通可能な貫通孔が形成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の薬液注入器具。
【請求項12】
前記針管は、前記カバー部材が前記第2の位置から前記第1の位置へ移動した際、該第1の位置の前記カバー部材によって再度前記針先まで覆われる請求項1ないし11のいずれかに記載の薬液注入器具。
【請求項13】
前記カバー部材に対して一旦出没した前記針先が再度前記カバー部材から突出するのを防止する再突出防止手段を有する請求項1ないし12のいずれかに記載の薬液注入器具。
【請求項14】
前記再突出防止手段は、前記支持部材に対して離脱可能に装着され、該支持部材から離脱した際に前記支持部材と前記カバー部材との間に挟まれて、該カバー部材の前記第2の位置への再移動を阻止する阻止部材と、該阻止部材を先端方向に付勢する付勢部材と、前記カバー部材に設けられ、前記付勢部材の付勢力に抗して、前記阻止部材を係止する係止部とを有し、
前記カバー部材が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動した際、前記阻止部材は、前記係止部による係止が解除され、前記付勢部材の付勢力によって前記支持部材から離脱可能となるよう構成されている請求項13に記載の薬液注入器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2012−232219(P2012−232219A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197651(P2012−197651)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2009−524368(P2009−524368)の分割
【原出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】