説明

薬物を固定および制御放出するために有用な結晶性メソポーラス酸化物を基剤とする材料

【課題】低水溶性生物活性種の固形製剤化を可能にする、該生物活性種を固定または不動化するためのメソポーラス酸化物を基剤とする材料およびこれを用いた薬学的組成物を提供する。
【解決手段】生物活性種を固定または不動化するための実質的に規則的に配列されたメソポーラス酸化物を基剤とする材料の使用であって、該規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が単一レベルの多孔性および構造規則性を有する場合はそれがα−トコフェロールポリエチレングリコールエステル・テンプレート生体分子の不在下で入手されることを前提に、該規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が1つ以上のレベルの多孔性または構造規則性を有する使用、および、生物活性種と該メソポーラス酸化物を基剤とする材料とを含む薬学的組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規クラスの結晶性シリカであって、前記材料が2つのレベルの多孔性および構造規則性を有するシリカと、ならびに例えば薬物のような生物学的および化学的化合物を固定および放出するためのそれらの使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性無機固体には、産業上の用途のための触媒および分離媒体としての大きな有用性が見いだされている。それらの微細構造の開放性は、分子がこれらの材料の相当に大きな表面積へ接近することを可能にし、それらの触媒活性および収着活性を増強する。現在使用されている多孔性材料は、それらの微細構造の詳細を分類の基礎として使用して3つの広義のカテゴリーに分類することができる。これらのカテゴリーとは、非晶質および準結晶性支持体、結晶性モレキュラーシーブおよび修飾層状材料である。これらの材料の微細構造における詳細な差異は、材料の触媒および収着挙動における重要な差異、ならびに例えばそれらの表面積、孔径およびそれらのサイズの変動性、X線回折パターンの存在もしくは不在およびそのようなパターンにおける詳細、ならびにそれらの微細構造が透過型電子顕微鏡および電子線回折法によって調べられた場合の材料の外観などのそれらを特徴付けるために使用される様々な観察可能な特性における差異として現れる。
【0003】
非晶質および準結晶性材料は、産業上の用途において長年にわたって使用されてきた重要なクラスの多孔性無機固体を表している。これらの材料の典型的例は、触媒調製物において一般に使用される非晶質シリカおよび固形酸性触媒および石油改質触媒支持体とし使用される準結晶性遷移アルミナである。用語「非晶質」は、本明細書では長距離秩序を有していない材料を意味するために使用するが、ほとんどすべての材料は、少なくとも局所的規模ではある程度は結晶性である。これらの材料を記載するために使用されているまた別の用語は、「X−ray indifferent(X線で差が見られない)」である。シリカの微細構造は、粒子間の空隙の結果として生じる多孔性を備える粒径10〜25nmの、密な非晶質シリカの粒子からなる。これらの材料中には長距離秩序は存在しないので、孔径は相当に大きな範囲にわたって分布する傾向がある。この秩序の欠如は、通常は特徴のないX線回折パターンにも現れる。
【0004】
遷移アルミナなどの準結晶性材料もまた孔径の広い分布を有するが、より明確に規定されたX線回折パターンは通常は小数の幅広いピークから構成される。これらの材料の微細構造は凝縮されたアルミナ相の小さな結晶性領域から構成され、材料の多孔性はこれらの領域間の不規則な空隙の結果として生じる。いずれの材料の場合においても、材料内の孔径を制御する長距離秩序は存在しないので、孔径における変動性は、典型的には極めて高い。これらの材料における孔径は、メソポーラス範囲と呼ばれる約1.3nm〜約20nmの領域に含まれる。
【0005】
これらの構造的に明確に定義されていない固体とは明確に対照的に、正確に反復する材料の結晶性によって制御されるために孔径分布範囲が極めて狭い材料は、微細構造である。これらの材料は、「モレキュラーシーブ」と呼ばれており、それらの最も重要な例は、ゼオライトである。
【0006】
天然および合成両方のゼオライトは、これまでに様々なタイプの炭化水素変換に対して触媒特性を有することが証明されている。ある種のゼオライト材料は、X線回折によって決定される明確な結晶性構造を有する規則的に配列された多孔性の結晶性アルミノシリケートであり、その中には多数のさらに小さなチャネルもしくは孔によって相互連結されていてよい極めて多数の小腔がある。これらの腔および孔は、特定のゼオライト材料内ではサイズが一様である。これらの孔の寸法はそれより大きな寸法の吸着分子を拒絶しながら所定の寸法の吸着分子を受け入れることができるような寸法であるので、これらの物質は「モレキュラーシーブ」として知られており、これらの特性を活用して様々な方法に利用されている。
【0007】
天然および合成両方のそのようなモレキュラーシーブには、極めて広範囲の陽イオン含有結晶性シリケートが含まれる。これらのシリケートは、四面体が酸素原子の共有によって架橋され、それによって第IIIB族元素、例えばアルミニウムと第IVB元素、例えばシリコンの原子の総計対酸素原子との比率が1:2である、SiO4および周期律表第IIIB族元素酸化物、例えばAlO4の剛性三次元骨格であると記載できる。
【0008】
一般に、多孔性物質は孔径によって分けられ、例えば2nm未満の孔径はミクロポーラス物質と分類され、2〜50nmの孔径はメソポーラス物質と分類され、そして50nm超の孔径はマクロポーラス物質と分類される。これらの多孔性物質中、ゼオライトなどの一様なチャネルを有する物質はモレキュラーシーブであると定義され、これまでに数百種までのタイプの種が見いだされ、合成されている。ゼオライトは、選択的吸着性、酸性およびイオン互換性を含むそれらの特性によって現代の化学産業において触媒または担体として重要な役割を果たしている。しかし、触媒変換反応などにおいて利用できる反応物の分子サイズは、ゼオライトの孔径によって限定されるが、それはゼオライトがミクロポーラスモレキュラーシーブであるからである。例えば、ZSM−5ゼオライトが接触分解反応において適用される場合は、その反応性は反応物がn−アルカンからシクロアルカンそしてさらに分枝状アルカンへ変化するにつれて大きく低下する。したがって、ゼオライトの孔より大きな孔を有するモレキュラーシーブを合成するために世界中で非常に大きな努力が費やされてきた。その結果として、ゼオライトより大きな孔径を有するAlPO4、VPI−5、クローバーライト(Cloverlite)およびJDF−20が開発されてきた。しかし、これらのモレキュラーシーブはミクロポーラスの限界を超えることはできない。
【0009】
これまでに知られている固体物質の中では、多孔性結晶性ケイ酸アルミニウムおよび多孔性結晶性リン酸アルミニウム(AlPO4)のゼオライトなどの一様なチャネルを有する固体物質がモレキュラーシーブであると定義されているが、それはそれらがチャネル入口のサイズより小さな分子を選択的に吸着する、または分子がチャネルを通過するのを許容するためである。結晶学を考慮に入れると、ゼオライトおよびAlPO4は、原子およびチャネルが完全な規則性で配列されている完全に結晶性の物質である。これらの完全に結晶性のモレキュラーシーブは、天然で入手される、または熱水反応を通して合成される。これまでに入手または合成された完全に結晶性のモレキュラーシーブの数は、総計数百種に上る。それらは、選択的吸着性、酸性およびイオン互換性を含むそれらの特性によって現代の化学産業において触媒または支持体として重要な役割を果たしている。ゼオライトの特性を利用する現代の触媒工程の例には、ZSM−5を使用する石油分解反応および白金を含浸させたKL−ゼオライトを使用するパラフィンの芳香族変換反応が含まれる。完全に結晶性のモレキュラーシーブにとって重大な問題は、サイズが約1.3nmより大きな分子の反応には使用できないことにある。
【0010】
MCM−41およびMCM−48を含む一連のメソポーラスモレキュラーシーブは、米国特許第5,057,296号(特許文献1)および第5,102,643号(特許文献2)に報告されている。これらのモレキュラーシーブは、サイズが一様なメソポアが規則的に配列された構造を示す。MCM−41はハニカムなどの直線状メソポアの六角形配列を示す一様な構造を有しており、通常のBET法によって測定すると約1,000m2/gの比表面積を有する。
【0011】
現在のモレキュラーシーブはテンプレートとして無機もしくは有機カチオンを使用することによって製造されてきたが、他方メソポーラスモレキュラーシーブはテンプレートとして界面活性剤を使用することによって液晶テンプレート経路を通して合成される。これらのメソポーラスモレキュラーシーブは、製造工程中に使用される界面活性剤の種類または合成条件を制御することによって、それらの孔径を1.6〜10nmの範囲内で調整できるという長所を有する。
【0012】
SBA−1、−2および3と指定されたメソポーラスモレキュラーシーブは、Science(1995)268:1324(非特許文献1)において報告されている。それらのチャネルは規則的に配列されているが、構成原子は非晶質シリカの配列に類似する配列を示す。メソポーラスモレキュラーシーブは現行のゼオライトのチャネルより大きな規則的に配列されたチャネルを有しているので、したがってそれらを相当に大きな分子の吸着、分離または触媒変換反応に適用することが可能になる。
【0013】
米国特許第6,592,764号(特許文献3)は、酸性媒体中で両親媒性ブロックコポリマーを使用することによって、1ファミリーの高品質の、熱水的に安定で極端に大きな孔径のメソポーラスシリカを開示している。このファミリーの1メンバーであるSBA−15は、高度に規則的に配置された、二次元六角形(p6mm)ハニカム、六角形ケージ、または立方体ケージメソ構造を有する。500℃での焼成は、690〜1,040m2/gの高いBET表面積、ならびに2.5cm3/gまでの孔容積、7.45〜45nmの極大d(100)間隔、4.6〜50nmの孔径および3.1〜6.4nmのシリカ肉厚を備える多孔性構造を作り出す。SBA−15は、様々な市販で入手できる、トリブロックポリオキシアルキレンを含む非毒性および生体分解性両親媒性ブロックコポリマーを使用して低い温度(35〜80℃)で広範囲の比孔径および孔肉厚にわたって容易に調製できる。
【0014】
米国特許第6,630,170号(特許文献4)は、塩酸、ビタミンEおよびシリカ源を含む混合物から調製したメソポーラス組成物について開示しているが、このとき前記ビタミンEはテンプレート分子として機能し、そして前記メソポーラス組成物は一様な孔径を示す。
【0015】
米国特許第6,669,924号(特許文献5)は、2〜50nmの範囲にわたる径および少なくとも4nmの肉厚を有する壁を備える一様なサイズのメソポアならびにミクロポーラスナノ結晶構造の立体規則的配列を有するメソポーラスゼオライト材料を開示しており、前記メソポア壁は1.5nm未満の径を備える一様なサイズのミクロポアの立体規則的配列を有する。この特許は、さらにまたそのようなメソポーラスゼオライト材料を調製する方法であって:
a)2〜50nmの範囲にわたる径および少なくとも4nmの厚さを有する壁を有する一様なサイズのメソポアの立体規則的配列および非晶質構造を有するメソポーラスシリカを提供するステップと;
b)前記メソポーラスシリカにゼオライト・テンプレート化合物を含浸させるステップと;
c)ステップ(b)において入手された含浸したメソポーラスシリカに前記非晶質構造からミクロポーラスナノ結晶構造への変換を引き起こすために十分な温度および時間に渡って熱処理を受けさせ、それにより1.5nm未満の径を備える一様なサイズのミクロポアの立体規則的配列を有するメソポア壁を備えるメソポーラスゼオライト材料を入手するステップと、および
d)前記ゼオライト・テンプレート化合物をステップ(c)において入手されたメソポーラスゼオライト材料から除去するステップと、を含む方法を開示している。
【0016】
米国特許第6,669,924号の図5、9および15に示されたそのような材料のX線回折パターンは、3°(2θ=6°)を超える回折角で幾つかの特徴的ピークの存在を明確に示している。図14の孔分布曲線は、ステップ(c)においてより多くの変換が入手されるほど、メソポーラスレベルではより多くの構造規則性が失われることを示している;実際上、これはこの材料の再現性が結晶化時間の不正確な制御によって損なわれる可能性があることを意味している。図15もまた、ステップ(a)におけるメソポーラスレベルで入手される構造規則性が、ゼオライト構造が出現するとステップ(b)および(c)では失われることを明白に示している。
【0017】
制御された多孔性を備えるシリカモレキュラーシーブは、有機テンプレート分子の存在下でヒドロゲルから結晶化する。非晶質の壁を備えるパターン化されたメソポーラスシリカ材料は、構造を方向づける界面活性剤もしくはブロックコポリマーを用いて取得することができる。
【0018】
メソ構造材料における酸性および水熱安定性などのゼオライト特性の生成は、極めて大きな研究分野である。メソポーラス前駆物質の非晶質の壁の一部をゼオライト骨格内に変換する可能性は既に証明されたが、米国特許第6,669,924号によって証明されたように、変換が進行するにつれてメソ構造からのゼオライト相の分離は回避するのが困難である。
【0019】
そこで当技術分野においては、現存する材料に比して高い熱安定性および改良された水熱安定性ならびに改良された再現性を備えるメソポーラス酸化物を基剤とする材料を製造する必要がある。
【0020】
製薬産業にとってのまた別の困難な問題は、低い、もしくは極めて低い水溶性を有する薬物を固形製剤、特に即時放出が企図される調製物へ調製することである。この問題に対する解決策は、当技術分野においてはほとんど開示されていない。例えば、米国特許公開第2001/0048946号(特許文献6)は、難水溶性医薬物質の固形製剤、すなわちグリタゾンなどの25℃で10〜33μg/mLの水溶性を有する固形薬もしくは結晶薬を提供する。より詳細には、この文書は、例えばポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、もしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマーのマトリックスを通して分散した薬剤の固形微粒子分散剤の形状にある薬学的組成物を開示している。好ましい実施形態では、粒子状薬剤は、有効成分対ポリマーが約10%〜約90%対約90%〜約10%の重量比で水溶性ポリマー中に分散している。グリセリン、プロピレングリコール、トゥィーン(Tween)、ステアリン酸塩などの他の従来型賦形剤を添加することができる。
【0021】
米国特許公開第2001/0044409号(特許文献7)は、(a)薬物と担体を混合するステップと、(b)界面活性剤および可塑剤/可溶化剤を水に溶解させるステップと、(c)界面活性剤−可塑剤/可溶化剤溶液を流動床顆粒製造装置内の薬物/担体混合物上にスプレーするステップと、(d)結果として生じた顆粒を、少なくとも1つの加熱ゾーンを備える二軸スクリュー押出機に通して押し出すステップと、および(e)固体薬物分散剤の粉末塊へ押出物を粉砕するステップと、を含む固体分散剤中の難水溶性薬物を調製するための工程を開示している。この工程内で、担体は、ポリビニルピロリドン、高分子量ポリエチレングリコール、尿素、クエン酸、酢酸ビニルコポリマー、アクリルポリマー、コハク酸、糖およびそれらの混合物からなる群から選択できる;可塑剤/可溶化剤は、低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン、クエン酸トリエチル、糖アルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択できる、および前記界面活性剤はトゥィーン、スパン(Span)、プルロニック、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、モノジグリセリド、ポリオキシエチレン酸ポリオキシエチレンアルコールおよびそれらの混合物からなる群から選択できる。この工程には、二軸スクリュー押出機内に加熱ゾーンを提供しなければならず、結果として押出機の温度プロファイルを制御および監視しなければならないという欠点がある。
【0022】
しかし、上記の工程はいずれも、極めて低い水溶性、すなわち10μg/mLより低い、好ましくは5μg/mLより低い水溶性を有する薬物の固形製剤を調製することに成功するとは思われない。この問題は、例えば米国特許第6,211,185号(特許文献8)に記載されたようなジアミノピリミジンファミリーに属する薬物を含む極めて多数の薬物に適用される。
【0023】
米国特許第3,639,637号(特許文献9)は、動物の飼料上にスプレーできる安定性水性懸濁液を調製するためのエストロゲン組成物であって、(重量で)70〜95%の水分散性ゲル形成性微結晶性セルロースおよび5〜30%の微細ジエチルスチルベストロール(実質的に非水溶性である化合物)ならびに任意でさらに重量の3分の1までのカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウムおよびヒドロキシエチルセルロースナトリウムからなる群から選択される親水コロイドを含む組成物を開示している。後者2種のセルロース化合物は、つまり欧州特許出願公開第403,383号(特許文献10)から、延長された線形薬物放出速度に寄与することが知られている。
【0024】
PCT国際公開第99/12524号(特許文献11)は、相当に高速もしくは急速な治療作用の開始および相当に長期間にわたる治療上有効な血漿濃度の両方を備える薬物調製物の問題を、経口修飾放出マルチユニット組成物を提供することによって解決するが、このとき単位製剤は、少なくとも(i)所定の溶解方法の初期20分間以内に薬物の少なくとも50%を放出することができる第1分画と、そして(ii)薬物の遅延性放出および徐放性放出のための第2分画と、を含む。第1分画のマルチユニットは顆粒であってよい、または界面活性剤が調製物に添加されることを条件に、コーティングされた、もしくはコーティングされていないペレット剤であってよい。第1分画の調製は、特定の薬物に左右されるが、典型的には湿式顆粒化が含まれ、そして制酸剤様またはその他のアルカリ性物質は放出速度に顕著な増加作用を有することが見いだされた。
【0025】
米国特許第5,646,131号(特許文献12)は、テルフェナジン(0.01mg/mL未満の水溶性)、界面活性剤(トゥィーン80およびラウリル硫酸ナトリウム)、シクロデキストリン、アビセル(Avicel)PH 101(微結晶性セルロース)およびアビセルに対する10:72の重量比での錠剤分解剤/膨潤剤(Primojel(登録商標)、すなわちカルボキシメチルデンプンナトリウム)などの非水溶性もしくは難溶性薬物の顆粒状調製物を含有する迅速に溶解するカプセル剤(実施例4)を開示している。これらのカプセル剤は、45分間以内の90%薬物放出を示している図によって証明されたように、シクロデキストリンの存在に起因するより優れた薬剤吸収を提供する。
【0026】
米国特許第4,235,892号(特許文献13)は、フロルフェニコールとして知られる獣医学的目的のために有用な抗菌剤であるD−(トレオ)−1−p−メチルスルホニルフェニル−2−ジクロロアセトアミド−3−フルオロ−1−プロパノールを含む一連の1−アリール−2−アシルアミド−3−フルオロ−1−プロパノール抗菌剤を開示している。フロルフェニコールは、水(約1.3mg/mL)、ならびに1,2−プロパンジオール、グリセリン、およびベンジルアルコールなどの多数の薬学的に受容可能な有機溶媒中で低溶解性である。経口投与のために、これらの1−アリール−2−アシルアミド−3−フルオロ−1−プロパノールは錠剤形で合成できる、または動物用飼料と混合することさえできる。このため米国特許第4,235,892号は、前記1−アリール−2−アシルアミド−3−フルオロ−1−プロパノール(薬剤中で装填範囲は重量で8.3%〜41.7%)、ラクトース、微結晶性セルロース、デンプンおよびステアリン酸マグネシウムを含む組成物の顆粒を圧縮することによる錠剤の製造を開示している。
【0027】
Pharm. Res.(1995)12:413−420(非特許文献2)の中のG. Amidonらによる生物薬剤分類システム(以下ではBCSと呼ぶ)は、2つのクラスの難溶性薬物、すなわちクラスIIおよびクラスIVおよび1つのクラスの高度に溶解性の薬物、すなわちクラスIを提供している。Advanced Drug Delivery Reviews(2002)54:805−824(非特許文献3)の中のM. Marinezら、「獣医学医薬製品への生物薬剤分類システムの適用(パートI:生物薬剤および調製物に関する考察)(Applying the Biopharmaceutical Classification System to Veterinary Pharmaceutical Products(Part I:Biopharmaceutics and Formulation Consideration))」によると、薬剤物質は、最高用量濃度が1〜7.5のpH範囲にわたり多くとも250mLの水性媒体中に可溶性である場合には高溶解性であると分類すべきである。その水溶性(1.3mg/mL)およびブタに対する20mg/kgの最大用量を考慮に入れると、ブタに投与されたフロルフェニコールの最高用量濃度がクラスI BCS高溶解性薬物の定義にとって限度値を明確に超える量の水に可溶性であることが容易に計算できる。さらに、「獣医学の記録(The Veterinary Record)」(1999年10月)(非特許文献4)の中のJ. Voorspoelsらの論文から、フロルフェニコールが良好な経口バイオアベイラビリティを有することが知られているので、フロルフェニコールは、高溶解性薬物ではなく吸収問題を全く示さないので、クラスII化合物であると分類できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第5,057,296号
【特許文献2】米国特許第5,102,643号
【特許文献3】米国特許第6,592,764号
【特許文献4】米国特許第6,630,170号
【特許文献5】米国特許第6,669,924号
【特許文献6】米国特許公開第2001/0048946号
【特許文献7】米国特許公開第2001/0044409号
【特許文献8】米国特許第6,211,185号
【特許文献9】米国特許第3,639,637号
【特許文献10】欧州特許出願公開第403,383号
【特許文献11】PCT国際公開第99/12524号
【特許文献12】米国特許第5,646,131号
【特許文献13】米国特許第4,235,892号
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Science(1995)268:1324
【非特許文献2】Pharm. Res.(1995)12:413−420
【非特許文献3】Advanced Drug Delivery Reviews(2002)54:805−824
【非特許文献4】「獣医学の記録(The Veterinary Record)」(1999年10月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
そこで当技術分野においてはフロルフェニコール以下の水溶性を備える薬物の固形製剤を提供する特別な必要性がある。フロルフェニコールは、現在は注射溶液の形態でしか利用できない、天然型ウシ呼吸病を有する畜牛、ブタ、ヒツジ、ヤギおよび家禽類などの温血動物へ経口投与するための薬物である。今までは、当業者は、必要に応じて動物用飼料にさらに混合できる、フロルフェニコールのそのような固形製剤の設計に失敗してきた。そしてさらに、ヒト療法のための低溶解性薬物のための固形製剤に対する必要性もある。
【0031】
適切な方法ではまだ解決されていない類似の問題は、例えばイトラコナゾールおよびジアゼパムのような難溶性を備える治療薬の数が増加するに伴って発生する。そのような問題を解決することは、本発明のまた別の目的をなしている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、メソポーラス酸化物を基剤とする材料の再現性を改良する、および/または特に即時放出用の難溶性薬物を調製するという両方の問題が、ゼオライト骨格を有するナノメートルサイズの構造ユニットの組み立てによって入手される実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料を提供することであって、このとき前記組み立てが1種以上の両親媒性非アニオン性界面活性剤の存在下で進行し、前記実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料が2つ以上のレベルの多孔性および構造規則性を有し、そしてこのとき前記ナノメートルサイズの構造ユニットの内部構造が前記実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料の粉末X線回折パターンでブラッグ(Bragg)型の回折を生じさせないことによって同時に解決できるという予想外の発見に基づいている。そのような新規材料は、2ステップ手順で容易に製造することができ、適切なサイズの生物活性種、特に約200〜1,000(ダルトン)の範囲内の分子量を有する難溶性薬物を封入し、そして医薬製剤に調製されると前記薬物の即時放出を提供することができる。本発明は、さらにまたゼオライト骨格を有するナノメートルサイズの構造ユニットを組み立てるための、カチオン性界面活性剤およびポリ(アルキレンオキシド)トリブロックコポリマーなどの両親媒性非アニオン性分子の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】上部(a)では1.0〜5.0nmの格子面間隔でのX線回折パターン(1.0〜3.0nmの格子面間隔については拡大挿入図を参照)および下部(b)ではゼオタイル−1と称する本発明の1つの実施形態によるメソポーラスシリカ材料の高分解能電子顕微鏡(以下ではHREMと呼ぶ)画像を示している(左下の第1挿入図は10nmを表すスケールバー、および右上の第2挿入図はフーリエ変換を示す)。X線回折パターンは、HREM画像上で示されたように、ナノスラブ(2.6×2.0×4.0nm3)の六角形タイリングによって表示されている。
【図2】ゼオタイル−2と称する本発明のまた別の実施形態によるメソポーラスシリカ材料の0〜16°の回折角θ(0〜32°の2θ)でのX線回折パターンを示している。
【図3】ゼオタイル−4と称する本発明のまた別の実施形態によるメソポーラスシリカ材料の電子回折パターン挿入図(左下のフーリエ変換についての挿入図)とともに、HREM画像を示している(スケールバーは20nmを表す)。
【図4】20重量%のイトラコナゾールおよび80重量%の参照記号SBA−15(上方曲線)の下で知られるメソポーラスシリカ材料またはMCM−41(下方曲線)として知られるゼオライトから構成された固体分散剤からの模擬胃液中へのイトラコナゾールの放出を示している。
【図5】20重量%のイトラコナゾールおよび80重量%の、ゼオタイル−4と称する本発明の1つの実施形態によるメソポーラスシリカ材料から構成された固体分散剤からの模擬胃液中へのイトラコナゾールの放出を示している。
【図6】30重量%のジアゼパムおよび70重量%の、ゼオタイル−4と称する本発明の1つの実施形態によるメソポーラスシリカ材料から構成された固体分散剤からのジアゼパムの放出を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
第1態様では、本発明は新規クラスの結晶性酸化物材料、詳細にはシリカ材料について記載するが、前記材料は2つのレベルの多孔性および構造規則性を有する。第1レベルでは、構造ユニットは、例えばテトラプロピルアンモニウムテンプレートによって生成されたゼオライト骨格(例、シリカライト(Silicalite)−1)を有する実質的に一様なサイズのナノスラブである。第2構造レベルでは、ナノスラブは、カチオン性界面活性剤もしくはトリブロックコポリマー分子との相互作用によって付与されるパターンにしたがってそれらの角、稜線もしくは面を通して連結されている。理論によって限定せずとも、有機分子の排出後に、ナノスラブ内ではミクロ多孔性が入手され、ナノスラブ間の精密なメソ多孔性はゼオライトスラブのタイリングパターンに依存する。このため、ナノスラブへ組織を付与するためのカチオン性界面活性剤(好ましくは第四級アンモニウム塩)もしくはトリブロックコポリマー分子の使用は、本発明の第2の目的である。第1実施形態では、4つの相違するタイリングパターンを作製し、電子顕微鏡によって直接イメージングした。X線回折は、電子顕微鏡から引き出されたモザイク構造を確証する。適用分野は触媒作用および分子分離、金属イオンの吸着、生物活性種の固定、電気光学体および誘電体である。
【0035】
この第1態様では、本発明は、ゼオライト骨格を有するナノメートルサイズの構造ユニットの組み立てによって入手される結晶性のメソポーラスシリカ材料に関するが、前記結晶性のメソポーラスシリカ材料は2つ以上のレベルの多孔性および構造規則性を有しており、そしてこのとき前記ナノメートルサイズの構造ユニットの内部構造は前記結晶性のメソポーラスシリカ材料の粉末X線回折パターンにおいてブラッグ型の回折を生じさせない。例えば、前記構造ユニットはシリカライト−1のゼオライト骨格を有する実質的に一様なサイズのナノスラブであってよい。そのようなナノスラブは、例えばAngew. Chem. Int. Ed(2001)40:2637−2640の中でKirschhockらによって開示されたように、テトラプロピルアンモニウムイオン媒介によって生成することができる。この結晶性のメソポーラスシリカ材料中では、前記2つ以上のレベルの多孔性は通例はミクロ多孔性およびメソ多孔性、例えば少なくとも前記ナノスラブ内のミクロ多孔性および少なくとも前記ナノスラブ間のメソ多孔性を含んでいる。前記ナノスラブは、好ましくはカチオン性界面活性剤もしくはトリブロックコポリマー分子との相互作用によって付与されるパターンにしたがってそれらの角、稜線もしくは面を通して連結されている。典型的なカチオン性界面活性剤は臭化セチルトリメチルアンモニウムであり、そして典型的なトリブロックコポリマーはプルロニックP123トリブロックコポリマーEO20PO70EO20(式中、EOはエチレンオキシドを意味し、そしてPOはプロピレンオキシドを意味する)である。
【0036】
本発明のこの第1態様による結晶性のメソポーラスシリカ材料中では、ナノスラブを例えば約2〜4nmの範囲内のサイズを備える面共有二重ユニット内に押し込まれ、六角形対称パターンで連結することができる。本発明による結晶性のメソポーラスシリカ材料は、約1.3〜8.0nmの範囲内のサイズを有するナノスラブから、および/または六角形に見えるタイル内に配列されたステープル留めナノスラブから入手できる。
【0037】
本発明のこの第1態様による結晶性のメソポーラスシリカ材料は、例えば生物活性種ならびに電気光学体もしくは誘電体の固定のため、または触媒作用、分子分離もしくは金属イオンの吸着のためなどを含むがそれらに限定されない多数の産業上の用途において有用である。
【0038】
そこで、本発明はさらに、シリカライト−1のゼオライト骨格を有する実質的に一様なサイズのナノスラブを組み立てるためのカチオン性界面活性剤もしくはトリブロックコポリマー分子の新規の使用に関するが、例えばこのとき前記組み立ては、前記ナノスラブへの構造組織を付与しながら進行する。これは、前記ナノスラブがカチオン性界面活性剤もしくはトリブロックコポリマー分子との相互作用によって付与されるパターンにしたがってそれらの角、稜線もしくは面を通して連結される場合に特に有用である。前記カチオン性界面活性剤は臭化セチルトリメチルアンモニウムであってよく、そして前記トリブロックコポリマーはプルロニックP123トリブロックコポリマーEO20PO70EO20(上述した意味を有する)であってよい。
【0039】
本発明はさらに、上記に定義したような:(a)テトラプロピルアンモニウムイオン媒介によるゼオライト骨格を有するナノスラブを生成するステップと、および(b)カチオン性界面活性剤もしくはトリブロックコポリマー分子との相互作用を通して前記ナノスラブを組み立てるステップと、を含む新規の結晶性のメソポーラス酸化物材料、特にシリカ材料に関する。前記カチオン性界面活性剤は臭化セチルトリメチルアンモニウムであってよく、そして前記トリブロックコポリマーはプルロニックP123トリブロックコポリマーEO20PO70EO20(上述した意味を有する)であってよい。この工程は、任意でさらに前記テトラプロピルアンモニウムイオンおよび前記カチオン性界面活性剤もしくはトリブロックコポリマー分子を除去するステップを含むが、このとき前記除去は例えば酸化(例えば、硝酸などの強酸によって)および/または溶媒浸出(例えば、エタノールを用いて)および/または焼成によって実行することができる。
【0040】
結晶性のメソポーラス酸化物材料、例えば本発明のこの第1態様によるシリカ材料は、他のメソポーラスシリカ材料から容易に識別することができる。ナノメートルサイズの構造ユニットの内部構造からブラッグ型の回折が欠如していることは、例えば図1−aに示したように、約1.5nm未満の格子面間隔での粉末X線回折パターンにおけるピークの欠如によって明らかになる。約1.5nmを超える格子面間隔で配置された前記X線回折パターンのすべての特徴的なピークは、ナノスラブのタイリングパターンには関連しているが、それらの内部構造には関連していない。好ましくは、そのような特性付けのためには、粉末X線回折パターンは、そのような分子からの干渉ピークを回避するために、テトラプロピルアンモニウムイオンおよびカチオン性界面活性剤もしくはトリブロックコポリマー分子を除去した後に実施すべきである。
【0041】
類似であるがはるかに広い概念では、本発明は、ゼオライト骨格を有するナノメートルサイズの構造ユニットの組み立てによって入手される実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料に関するが、このとき前記組み立ては1種以上の両親媒性非アニオン性界面活性剤の存在下で進行し、前記結晶性のメソポーラスシリカ材料は2つ以上のレベルの多孔性および構造規則性を有しており、そしてこのとき前記ナノメートルサイズの構造ユニットの内部構造は前記実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料の粉末X線回折パターンにおいてブラッグ型の回折を生じさせない。そのような材料は、当業者によく知られている分析技術を使用して、当技術分野において知られている他のメソポーラス材料から容易に識別することができる。ナノメートルサイズの構造ユニットの内部構造からブラッグ型の回折が欠如していることは、約1.5nm未満の格子面間隔および/または約3°を超える回折角θ(約6°を超える2θ)での粉末X線回折パターンにおけるピークの欠如によって明らかになる。好ましくは、前記粉末X線回折パターンは、そのような分子からの干渉ピークを回避するために、前記1種以上の両親媒性非アニオン性界面活性剤を除去した後に実施すべきである。
【0042】
本発明による実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料では、前記酸化物を基剤とする材料は、シリカ、酸化ゲルマニウムおよび金属酸化物からなる群から選択される1種以上の酸化物を含んでいてよい。好ましい非金属酸化物はシリカである。金属酸化物は、周期律表の第4〜12族から選択されたいずれかの金属由来であってよい。好ましい金属は、アルミニウムおよび遷移金属である。
【0043】
代表的な金属酸化物は、好ましくは、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化マンガン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化錫、酸化ガリウム、酸化鉄、および酸化ハフニウムからなる群から選択される。本発明によるメソポーラス酸化物を基剤とする材料は、前記材料の用途によって選択されるであろう1種以上のそのような金属酸化物と組み合わせてシリカを含んでいてよい。例えば、広範囲の比率でのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアおよびそれらの混合物は、酸性触媒として使用するための考慮の対象となる。メソポーラス酸化タングステン材料は、重合、複分解、エポキシ化、ヒドロアミノ化、アジリジン化などを含む広範囲の化学反応のための多数のルテニウムを基剤とする触媒のための担体として使用できる。メソポーラス半導体酸化物材料は、燃料電池の構築などの産業上の用途のために使用できる。
【0044】
想定される適用分野および最も一般的な産業上の必要条件を考慮すると:
− 本発明による材料における構造ユニットのサイズ範囲は約1〜8nmにわたる、および/または
− 酸化物を基剤とする材料は各々が約2〜15nmの範囲にわたる平均サイズを備える1つ以上のタイプのメソポアを有する。本明細書で使用する用語「メソポアのタイプ」は、特に限定されない、そして例えば六角形、立方体、薄膜状などであってよい幾何学的形状を意味する、および/または
− 前記1つ以上のタイプのメソポアは各々が、例えば前記メソポーラス酸化物を基剤とする材料の窒素吸着/脱着等温線からのバレット・ジョイナー・ハレンダ(Barrett−Joyner−Halenda)(以下ではBJHと呼ぶ)分析による計算から明らかなように、狭い孔径分布、すなわちほぼ一様な孔径分布を有するのが好ましい。BJH分析は、一般にサイズ分布の推定を実施するためのこの技術分野において当業者によって使用されている。
【0045】
1つの実施形態によると、本発明の酸化物を基剤とする材料中に存在するナノメートルサイズの構造ユニットはシリカライト−1のゼオライト骨格などであるがそれに限定されないゼオライト骨格を有する好ましくは実質的に一様なサイズのナノスラブ(J. Phys. Chem.(1999)103:11021−11027の中でKirschhockらによって使用された用語による)と呼ぶことができる。
【0046】
本発明によると、ナノメートルサイズの構造ユニットは、好ましくはテトラアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオンおよびジェミニ(ダイマー)型テトラアルキルアンモニウムイオンからなる群から選択される媒介剤であって、このとき各アルキル基は独立して2〜4個の炭素原子を有する媒介剤によって生成される。より好ましくは、1種以上の前記アルキル基はプロピルである。本明細書を通して、特に界面活性剤に関して使用する用語「ジェミニ」は、スペーサによって一緒に化学結合した2つの好ましくは同一炭化水素分子からなる有機分子を意味する。2つの末端炭化水素末端は短くても長くてもよい;2つの極性頭基はカチオン性または非イオン性であってよい;スペーサは短くても長くてもよい。そのような化合物についてのより詳細な参考文献は、B.S. Sekhon, Resonance(March 2004)、第42−45頁の中に見いだすことができる。
【0047】
本発明の1つの実施形態によると、ナノメートルサイズの構造ユニットは、前記ナノメートルサイズの構造ユニットと前記1種以上の両親媒性非アニオン性界面活性剤との相互作用によって付与されたパターンにしたがってそれらの角、稜線もしくは面を通して連結することができる。前記1種以上の両親媒性非アニオン性界面活性剤は、好ましくは両親媒性非イオン性分子および両親媒性カチオン性分子もしくは物質からなる群から選択される。例えば、両親媒性非アニオン性物質は、両親媒性ブロックコポリマー、カチオン性ジェミニ(ダイマー)型界面活性剤およびC12-18アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物界面活性剤からなる群から選択されてよい。あらゆるハロゲン化物が適合するが、好ましくは臭化物および塩化物であってよい。両親媒性カチオン性物質、例えばハロゲン化物界面活性剤もしくはカチオン性ジェミニ(ダイマー)型界面活性剤が使用される場合は、生成効率にとっては炭化水素末端の長さが約12〜18個の炭素原子、好ましくは14〜16個の炭素原子であることが重要である。好ましい界面活性剤は、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTACl)、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTABr)、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム(TTABr)および臭化オクタオデシルトリメチルアンモニウム(OTABr)である。そのような状況下では、相互作用が塩基性条件下で進行すること、そしてさらにより特定の実施形態では、相互作用はアルミン酸塩、ホウ酸塩および周期律表上の第3d族遷移金属の酸塩からなる群から選択される1種以上の塩の存在下で進行することができる。Na+、K+およびNH4+などの一価カチオンに結合することができ、そして水に溶解できる好ましい有機塩もしくは無機塩は、NaCl、KCl、CH3COONa、NaBr、Na2SO4、NaNO3、NaClO4、NaClO3、エチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム塩、アジピン酸二ナトリウム塩、1,3−ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム塩またはニトリロ三酢酸ナトリウム塩である。そのような一価カチオンとの結合を形成できる水溶性有機塩もしくは無機塩は、好ましくはアルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物1モル当たり約1〜15モルの塩の量で使用される。
【0048】
1種以上の両親媒性非アニオン性物質が両親媒性ブロックコポリマーである場合は、相互作用が酸性条件下で進行するのが好ましい。適切な両親媒性非アニオン性物質は、アルキレンオキシド部分は、少なくとも3個の炭素原子、例えばプロピレンオキシドもしくはブチレンオキシド部分であるポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アルキレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマー)、より好ましくは各ブロックのエチレンオキシド部分の数は少なくとも5である、および/またはこのとき中央ブロック内のアルキレンオキシド部分の数は少なくとも30であるようなトリブロックコポリマーである。また別の適切な界面活性剤には、例えばアルキレンオキシド、典型的にはエチレンオキシドと脂肪アルコール、脂肪酸、アルキルフェノール(例えば、オクチルフェノールもしくはノニルフェノール)、アルキルアミンまたは少なくとも1つの活性水素原子を有する類似の化合物との反応生成物を含むがそれらに限定されない8から30の親水性−親油性バランス(HLB)を備えるいずれかの非イオン性界面活性剤が含まれる。好ましくは、そのような化合物の炭素鎖長は8〜18炭素原子でなければならない。市販で入手できるそれらの例は、商標名Mirj 52、Mirj 45(ステアリン酸ポリオキシエチレン)、プルロニック123などの下で知られている。
【0049】
本発明の実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料の好ましい特徴は、少なくとも1つのミクロ多孔性およびメソ多孔性、例えば前記ナノメートルサイズの構造ユニット内のミクロ多孔性および前記ナノメートルサイズの構造ユニット間の少なくとも1つのメソ多孔性を含む2つ以上のレベルの多孔性を有する点にある。例えば、前記構造ユニットは、六角形パターンで組み立てられて、または配列されていてよく、そして約1〜8nmの範囲にわたるサイズを有していてよい。また別の特徴は、約1〜4nmの肉厚を備えるメソポア壁を有することから構成されてよい。
【0050】
本発明による実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料は、例えば水処理、触媒支持などの多数の産業上の用途を有しており、生物活性種を固定もしくは不動化するために有用であるが、好ましくはこのとき前記生物活性種の分子量は約200〜1,000である。固定される活性種は原理的にはあらゆる種類の合成薬もしくは分子(農薬、殺虫剤、殺真菌剤などを含む)であってよいが、本発明は主として調製に関する問題が難水溶性に起因して解決するのが困難であるのが薬物の特性であるような状況において有用である。そこで、前記生物活性種は好ましくは生物薬剤分類システムのクラスIIもしくはクラスIVに属すると分類できるような難溶性治療薬であり、好ましくは約2.5mg/mL未満、0.1〜1mg/mLさえ(すなわち、米国薬局方において規定されているような「超難溶性」)、さらに0.1mg/mL未満さえ(すなわち米国薬局方において規定されているように「実際的に不溶性」)、さらに約5μg/mL未満さえの水溶性を有していてよく、そして室温および生理的pHで約0.2μg/mLという低い水溶性を有していてよい。そのような薬剤の非限定的例には、例えばクロロサイアザイド、ヒドロクロロサイアザイド、ニモジピン、フルフェナム酸、フロセミド、メフェナム酸、ベンドロフルメサイアザイド、ベンズサイアザイド、エタクリン酸、ニトレンジピン、イトラコナゾール、サペルコナゾール、トログリタゾン、プラゾシン、アトバコン、ダナゾール、グリベンクラミド、グリセオフルビン、ケトコナゾール、カルバマゼピン、スルファジアジン、フロルフェニコール、アセトヘキサミド、アジャマリン、ベンズブロマロン、安息香酸ベンジル、ベタメタゾン、クロラムフェニコール、クロルプロパミド、クロルタリドン、クロフィブレート、ジアゼパム、ジクマロール、ジギトキシン、エトトイン、グルテチミド、ヒドロコルチゾン、ヒドロフルメサイアザイド、ヒドロキニン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ケリン、ニトラゼパム、ニトロフラントイン、ノバルジン、オキサゼパム、パパベリン、フェニルブタゾン、フェニトイン、プレドニゾロン、プレドニゾン、レセルピン、スピノロラクトン、スルファベンズアミド、スルファジメトキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメトキシピリダジン、スクシニルスルファチアゾール、スルファメチゾール、スルファメドキサゾール(ドリメトプリムとの混合物中でも)、スルフェナゾール、スルファチアゾール、スルフィソキサゾール、スルピリド、テストステロンおよびジアミノピリミジンが含まれる。ジアミノピリミジンの適切な例には、限定なく、2,4−ジアミノ−5−(3,4,5−トリメトキシベンジル)ピリミジン(トリメトプリムとして知られる)、2,4−ジアミノ−5−(3,4−ジメトキシベンジル)ピリミジン(ジアベリジンとして知られる)、2,4−ジアミノ−5−(3,4,6−トリメトキシベンジル)ピリミジン、2,4−ジアミノ−5−(2−メチル−4,5−ジメトキシベンジル)ピリミジン(オルメトプリムとして知られる)、2,4−ジアミノ−5−(3,4−ジメトキシ−5−ブロモベンジル)ピリミジン、および2,4−ジアミノ−5−(4−クロロ−フェニル)−6−エチルピリミジン(ピリメタミンとして知られる)が含まれる。上述した薬物は、Pharm. Res.(1995)12:413−420の中のG. Amidonらによる生物薬剤分類システムのクラスII(難溶性、高透過性)またはクラスIV(難溶性、難透過性)に属することが知られている。当業者には理解されるように、これらの薬剤は、利尿薬、降圧薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬などを含む様々な治療クラスに属しており、ヒトまたは獣医学的使用単独には限定されない。好ましくは、前記生物活性種のサイズは、本発明の実質的に規則的に配列されたメソポーラス酸化物を基剤とする材料のメソポア内へ封入するために適合するはずである。
【0051】
本発明はさらに、ゼオライト骨格を有するナノメートルサイズの構造ユニットを組み立てるための両親媒性非アニオン性分子の使用に関するが、例えばこのとき前記組み立ては前記ナノメートルサイズの構造ユニットへ構造組織を付与しながら進行する。そのような使用の前記骨格内で、ナノメートルサイズの構造ユニットは、前記両親媒性非アニオン性分子との相互作用によって付与されたパターンにしたがってそれらの角、稜線もしくは面を通して連結することができる。適切な両親媒性非アニオン性分子は、既に上記に詳細に開示したとおりである。組み立てられるナノメートルサイズの構造ユニットは、典型的にはすべてが上述したようなシリカ、酸化ゲルマニウムおよび金属酸化物からなる群から選択される1種以上の酸化物を含んでおり、前記組み立ては好ましくは上述したような特徴(詳細には、それらの粉末X線回折パターンに関して)を有する実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料の形成を生じさせる。
【0052】
本発明は、さらに本明細書に記載したような実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料を製造するための工程であって、(a)テトラアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオンおよびジェミニ(ダイマー)型テトラアルキルアンモニウムイオンからなる群から選択される媒介剤であって、このときアルキル基が2〜4個の炭素原子を有する媒介剤によってゼオライト骨格を有するナノメートルサイズの構造ユニットを生成するステップと、および(b)メソポーラス酸化物を基剤とする材料を産生するために1種以上の両親媒性非アニオン性物質との相互作用を通して前記ナノメートルサイズの構造ユニットを組み立てるステップと、を含む工程を提供する。前記両親媒性非アニオン性物質は、好ましくは両親媒性イオン性分子および両親媒性カチオン性分子からなる群から選択される、より好ましくは両親媒性ブロックコポリマー、カチオン性ジェミニ(ダイマー)型界面活性剤およびC12-18アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物界面活性剤からなる群から選択される。本工程の特定の実施形態では、両親媒性非アニオン性物質はC12-18アルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物界面活性剤またはカチオン性ジェミニ(ダイマー)型界面活性剤であってよいが、そしてこのとき相互作用は塩基性条件下で、任意でアルミン酸塩、ホウ酸塩および周期律表上の第3d族遷移金属の酸塩からなる群から選択される1種以上の塩の存在下で進行する。本工程のまた別の特定実施形態では、両親媒性非アニオン性物質は8〜30のHLBを備える界面活性剤であり、両親媒性ブロックコポリマーであってよく、そしてこのとき相互作用は酸性条件下で進行する。そのような両親媒性ブロックコポリマーは、アルキレンオキシド部分が少なくとも3個の炭素原子を有するポリ(エチレンオキシド)−ポリ(アルキレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)トリブロックコポリマーであってよい。
【0053】
好ましくは、本発明の工程には、さらにまたステップ(a)および(b)において導入された有機種を実質的に除去するためにステップ(b)からメソポーラス酸化物を基剤とする材料の焼成、酸化もしくは溶媒抽出などの1つ以上のステップが含まれる。この追加のステップは、特にメソポーラス材料が、前記有機種がヒトもしくは動物の身体にとって、すなわち特に獣医学的または薬学的または農業的使用のために、毒性もしくは有害と見なされる用途を対象とする場合に有用である。
【0054】
前記規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が単一レベルの多孔性および構造規則性を有する場合はα−トコフェロールポリエチレングリコールエステル・テンプレート生体分子の不在下で入手されることを前提に、生物学的に活性種の固定または不動化のためには、本明細書に詳細に記載したメソポーラス材料だけではなく、1種以上のレベルの多孔性および構造規則性を有する、別の小数の規則的に配列されたメソポーラス酸化物を基剤とする材料も極めて注目に値する。単一規則性の酸化物を基剤とする材料の適切な例には、例えば米国特許第6,592,764号に開示されているようなSBA−15と称する材料、ならびに米国特許第6,669,924号に開示されている材料が含まれる。そのような物質は本発明の物質とは相違していて産業上の再現性が低いが、それらは前記生物活性種のサイズ(例えば、前記生物活性種の分子量は好ましくは約200〜1,000である)が前記実質的に規則的に配列されたメソポーラス酸化物を基剤とする材料のメソポア内に封入するために適合することを前提に、生物活性種、好ましくは難溶性治療合成薬(例えば生物薬剤分類システムのクラスIIまたはクラスIVに属すると分類できるような薬剤)の調製においてはほぼ同様の長所を提供することができる。代表的な生物活性種には、イトラコナゾールおよびジアゼパムが含まれる。
【0055】
上記で説明したように、実質的に規則的に配列されたメソポーラス酸化物を基剤とする材料は、好ましくはゼオライト骨格を有するナノメートルサイズの構造ユニットの組み立てによって入手される好ましくは2種以上のレベルの多孔性および構造規則性を有しており、このとき前記組み立ては1種以上の両親媒性非アニオン性界面活性剤の存在下で進行する。より好ましくは、前記ナノメートルサイズの構造ユニットの内部構造は、好ましくは前記1種以上の両親媒性非アニオン性界面活性剤を除去した後に、約1.5nm未満の格子面間隔および/または3°を超える回折角θ(6°を超える2θ)での粉末X線回折パターンにおけるピークの欠如によって証明されるように、前記実質的に結晶性のメソポーラス酸化物を基剤とする材料の粉末X線回折パターンにおけるブラッグ型の回折を生じさせない。
【0056】
上記の有用な発明は、生物活性種および実質的に規則的に配列された酸化物を基剤とする材料を含む薬学的組成物の形状を取ることができるが、このとき前記規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が単一レベルの多孔性および構造規則性を有する場合はそれがα−トコフェロールポリエチレングリコールエステル・テンプレート生体分子の不在下で入手されることを前提に、前記規則的に配列された酸化物を基剤とする材料は1つ以上のレベルの多孔性または構造規則性を有している。好ましくは、それは前記生物活性種(好ましくは難溶性薬物)の分子量が約200〜1,000である薬学的組成物である。この薬学的組成物は、(当技術分野における標準と同様に)1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含んでいてよく、そして前記生物活性種の即時のインビボ放出を提供するために特に適合する。
【0057】
本発明の即時放出型薬学的組成物は、1種以上の薬学的に受容可能な充填剤をさらに含んでいてよい。上記の薬学的に受容可能な充填剤は、例えば親水コロイド(キサンタンガムなど)、結合剤、流動促進剤、潤滑剤、界面活性剤および希釈剤から選択されてよい。本明細書で使用する用語「薬学的に受容可能な充填剤」は、それ自体は治療および/または予防作用を全く有していないが、調製される薬剤または薬学上の有効成分の治療または予防特性を有害に干渉しないという意味において不活性であるあらゆる材料を意味するものである。そのような充填剤の性質および量は、本発明にとって重要ではない。それらには、例えばデンプン、ゼラチン、グルコース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カルシウム、水溶性アクリル(コ)ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアミノ酸、エチレン酢酸ビニルコポリマーなどの結合剤;ヒュームド(コロイド状)シリカ(例えば商標アエロジル(Aerosil)(登録商標)の下で市販で入手できる)、タルクなどのケイ酸マグネシウム、珪藻土、カオリナイト、モンモリロナイトもしくはマイカなどのケイ酸アルミニウム、アタパルジャイトおよびバーミキュライトなどのケイ酸アルミニウム・マグネシウム、木炭などの炭素、硫黄および高分散性ケイ酸ポリマーなどの天然および合成鉱物充填剤もしくは流動促進剤;ラクトース、ソルビトールなどの水溶性希釈剤が含まれる。
【0058】
本発明の即時放出型薬学的組成物の他の賦形剤は、約300〜約5,000の重量数分子量を有するポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;グリセロール;プロピレングリコールおよびグリセリド(商標ゲルシレ(Gelucire)(登録商標)の下で市販で入手できるものを含む、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルのモノ−、ジ−およびトリグリセリドなど)からなる群から適切に選択することができる。後者の適切な例には、グリセリドに由来する部分およびポリエチレングリコールエステルに由来する部分の両方を有するものが含まれる。例えば、ポリグリコシル化グリセリドを使用するのが適合する。本明細書で使用する用語「ポリグリコシル化グリセリド」は、好ましくは約200〜約600の分子量を有し、任意でグリセロールおよび/または遊離PEGをさらに含むC8−C18脂肪酸のポリエチレングリコール(PEG)モノ−およびジエステルとのモノ−、ジ−およびトリグリセリドの混合物を意味しており、その親水性−親油性バランス(HLB)値はPEGの鎖長によって制御され、そしてその融点は脂肪酸、PEGの鎖長、および脂肪鎖の飽和度、したがって出発油によって制御される。同様に、本明細書で使用する表現「C8−C18脂肪酸」は、これらの酸が飽和している場合の様々な比率でのカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、および対応する不飽和酸を意味する。当業者にはよく知られているように、これらの脂肪酸の比率は出発油の関数として変動する可能性がある。後者の例には、商標名ラブラゾール(Labrasol)の下でガットフォセ・コーポレーション(Gattefosse Corporation)社によって販売されるPEG−8カプリル酸塩/カプリン酸グリセリドエステルなどの飽和ポリグリコール化C8−C10グリセリド;商標名ソフチゲン(Softigen)767の下でヒュルス・アクチエンゲゼルシャフト(Huls Aktiengesellschaft)社によって販売されるPEG−6カプリル酸/カプリン酸グリセリド;商標名クロボール(Crovol)M−70の下でクローダ(Croda)社によって販売されるPEG−60コーングリセリド;商標名エマルジン(Emulgin)B2の下でヘンケル・コーポレーション(Henkel Corporation)社によって販売されるセテアレス(Ceteareth)−20;商標名トランスキュトール(Transcutol)の下でガットフォセ・コーポレーション(Gattefosse Corporation)によって販売されるジエチレングリコールモノエチルエーテル;商標名ゲルシレ48/09、ゲルシレ44/14およびゲルシレ42/12の下でガットフォセ・コーポレーションによって販売されるような約42〜48℃の範囲内の融点および約8〜16の範囲内のHLBを有するC8−C18飽和ポリグリコシル化グリセリド;ならびに様々な比率でのそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。例えばポリエチレングリコールが使用された場合は、高分子量固体分画および低分子量液体分画を含んでいてよく、後者は可塑剤として機能する。
【0059】
本発明の1つの実施形態では、生物活性種は即時放出組成物中に組成物の約0.5重量%〜約50重量%、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%の量で存在していてよい。当業者には容易に理解されるように、即時もしくは高速放出は、薬剤毎に、そして1つの薬剤装填から他の装填へ有意に変動する可能性のある特徴である。本発明のためには、即時放出は生理的条件(pH、温度)下で、薬学的組成物の約5重量%〜40重量%、好ましくは10重量%〜30重量%の薬剤装填量に対して、長くとも30分間、好ましくは長くとも15分間、より好ましくは長くとも10分間以内での少なくとも60%の薬剤の放出を意味する。
【0060】
本発明によると、即時放出型薬学的組成物は任意で難水溶性を有する薬剤とは相違する、しかし特に併用薬療法が望ましい場合は、好ましくは同一治療薬クラスに属する1種以上の他の薬剤をさらに含むことができる。
【0061】
要約すると、本発明によると、難溶性薬物の高速放出は特定の多孔性および構造規則性を備えるシリカ担体物質上に薬剤分子を装填するステップによって達成できる。この高速放出を達成するためには、シリカ材料の最適孔径範囲が存在する。最適孔径は、約4〜14nm、より好ましくは5〜12nm、最も好ましくは約6〜10nmの範囲内にある。好ましいのは、この範囲内の平均孔径を備え、そして狭い孔径サイズ分布を有するシリカ担体である。
【0062】
高速薬物放出用途にとってのシリカ材料の適切性は、−196℃での窒素吸着等温線に基づいて評価できる。適切なシリカ材料は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)(Pure Appl. Chem.(1985)57(4):603の中のSingらを参照)の分類によると、一様な開放端を備える管状孔の狭い分布を備える吸着剤の特徴であるH1型ヒステリシスループを示す。H2型のヒステリシスループまたは明確に規定されていないヒステリシスループを生じさせるシリカ材料は、高速薬物放出のために不適切であると見なすべきである。
【0063】
本発明のメソポーラス材料(「ゼオライト」)は、ミクロポーラスおよびメソポーラスシリケート構造の長所を結合した、予想外に頑丈な材料である。それらは、空気中で数時間にわたり約400℃までの温度に耐えることができる。以下の実施例では薬物送達における、特に難溶性薬物の即時放出のための材料の構造的多様性およびその有用性を例示する。構造的観点からは、その他の組み合わせも同等に可能であり、本明細書の教示を使用しながら生成することができる。第1構造レベルでは、ナノスラブもしくは代替骨格タイプを備える構造ユニットを使用することができ、そしてヘテロ原子を組み込むことができる。第2構造レベルでは、タイリングパターンは、構造提供剤の性質および/またはナノスラブの濃度、ナノスラブの組成、構造提供剤の濃度、温度などの合成条件を変化させることによって、本発明の範囲から逸脱せずに変化させることができる。
【実施例1】
【0064】
ナノスラブは、攪拌しながら32.13gの水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液(濃度40重量%)中でテトラエチルオルソシリケート(37.32g、アクロス(Acros)社から市販で入手できる、純度98%)の加水分解を通して調製した。加水分解後、30.55gの水を添加し、24時間にわたり攪拌を持続した。ナノスラブのサイズ(本実施形態では1.3×2.0×4.0nm3の寸法)は、合成条件によって制御した。
【0065】
次に10重量%の臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液(アクロス社から市販で入手できる、純度99%)60gを20分間にわたり持続的に攪拌しながら80℃へ加熱し、20gのナノスラブ懸濁液と混合した。次に沈降物を濾過によって回収し、水で洗浄し、60℃で2日間にわたり乾燥した。有機テンプレート有機分子(水酸化テトラプロピルアンモニウムおよび臭化セチルトリメチルアンモニウム)は、1時間にわたり77℃で0.02モルの硝酸を含有する200mLのエタノール中に結果として生じた固体3gをスラリー化することによって除去した。固体を濾過によって回収し、エタノールを用いて洗浄した。硝酸を用いた酸化を2回繰り返した。サンプルを最終的に60℃で一晩かけて乾燥した。
【0066】
図1に示した粉末X線回折(XRD)および高分解能電子顕微鏡検査(HREM)を使用して、入手した超格子構造、すなわち入手した材料の構造規則性を特性付けた。図1−aに示したように、XRDスペクトルではナノスラブの内部情報は明らかにならず、すべての特徴的ピークが1.5〜4.0nmの格子面間隔で配置されている前記ナノスラブのタイリングパターンに関する情報しか明らかにならなかった。個々の分散したナノスラブは、おそらくそれらのサイズが小さいために、それらの内部構造に関連するブラッグ型の回折を生じさせなかった。この材料では、タイリングにおけるわずかなミスアライメントがこのブラッグ散乱の出現を妨害している。
【0067】
HREMでは、この構造の電子ビームによる損傷を最小限に抑えるために、低強度電子ビームおよび中程度の倍率を使用した。HREM画像(図1−b)は、画像が直接的に構造を表すオーバーフォーカス条件で撮影された;明るいドットはチャネルの投影に対応する。このHREM画像上では、略図による投影されたモザイク構造がスーパーインポーズされている。この試料には、本明細書ではゼオタイル(Zeotile)−1とよぶ第1超格子構造が存在する。ゼオタイル−1では、ナノスラブは、面を共有する、2.6×2.0×4.0nm3の寸法で六角形対称パターンで連結された二重ナノスラブユニット内に押し込まれる。HREM画像のフーリエ変換(図の右上の挿入図)はナノスラブのタイリングに関する情報しか示していない;ナノスラブ内部構造に関連する反射は検出されなかった。
【実施例2】
【0068】
10gのプルロニックP123トリブロックコポリマー(BASF社から市販で入手できる、化学式EO20PO70EO20)を攪拌しながら90gの水に溶解させた。この溶液24gを8gの5M HCl水溶液と混合した。1.3×8.0×4.0nm3の寸法を有する以外は実施例1の第1ステップと類似条件下で調製した18gのナノスラブ懸濁液(ナノスラブ懸濁液の酸性化により入手)を強力に攪拌しながらまた別の9gの5M HClと緩徐に混合し、そして最後に酸性トリブロックコポリマー溶液と混合した。この混合液を90℃で4日間にわたり静止条件下で加熱した。固体生成物を生成し、12,000rpmでの遠心により液体から分離した。この生成物をpHが3を超えるまで水で洗浄した。このサンプルを60℃で乾燥し、最後に温度を0.5℃/分ずつ上昇させながら350℃で焼成した。
【0069】
高分解能電子顕微鏡(HREM)を使用して、本明細書でゼオタイル−4と名付けた、入手した材料の構造規則性を特性付けた。図3に示したように、ゼオタイル−4は六角形に見えるタイルに配列したステープル留めした大きなナノスラブから形成されており、大きなナノスラブは画像内で明白に視認できる構造ユニットとして使用された。HREMでは、タイリングパターンはマイクロメートルサイズに達する個々のゼオタイル粒子全体に高い完成度を示している。HREM画像のフーリエ変換(図の左下の挿入図)はナノスラブのタイリングに関する情報しか示していない;ナノスラブ内部構造に関連する反射は検出されなかった。
【0070】
この材料中のシリカライト−1の構造ブロックの完全性は、タイリング工程中およびテンプレート有機種排出中に維持すべきナノスラブの独特のシリコン連続性を示している29Si MAS NMR(核磁気共鳴)を用いてさらに確証した。さらに、−196℃での窒素吸着等温線およびアルカン分離実験は、精密な直径(実施例2については9.4nm)を備えるメソポアの隣でシリカライト−1のミクロ多孔性の存在を確証した。
【実施例3】
【0071】
粉末中の6gの臭化セチルトリメチルアンモニウム(アクロス社から市販で入手できる、純度99%)を、強力に攪拌しながら実施例1によって調製した20gのナノスラブ懸濁液へ緩徐に添加し、次に60gの水を添加した。このスラリーを24時間攪拌し、引き続いて静止条件下で72時間にわたり100℃で加熱した。結果として生じた沈降物を次に実施例1と同一方法によって処理した。
【0072】
図2に示した粉末X線回折(XRD)および高分解能電子顕微鏡検査(HREM)を使用して、ゼオタイル−2と称した、入手した材料の構造規則性を特性付けた。図2に示したように、XRDスペクトルではナノスラブの内部情報を明らかにならず、すべての特徴的ピークが3°未満の角度θ(6°未満の2θ)で配置されている前記ナノスラブのタイリングパターンに関する情報しか明らかにならなかった。個々の分散したナノスラブは、おそらくそれらのサイズが小さいために、それらの内部構造に関連するブラッグ型の回折を生じさせなかった。
【0073】
電子回折(ED)およびHREM画像は、ゼオタイル−2がゼオタイル−1(実施例1)に極めて類似するユニットから構築されるが、体心立方格子対称を有することを証明した。
【実施例4】
【0074】
様々なゼオライト材料からの固体分散液を用いて、ヤンセン製薬(Janssen Pharmaceutica)(ベルギー国、ベールス)製のイトラコナゾールの放出を調査した。イトラコナゾールを塩化メチレン中に完全に溶解させた後、SBA−15(米国特許第6,592,764号によって製造された材料)またはMCM−41(市販で入手できるゼオライト)を懸濁させ、この混合液を20時間にわたり攪拌した。引き続いて、回転式蒸発またはスプレー乾燥によって溶媒を除去し、粉末をさらに40℃の減圧下で48時間にわたり乾燥した。この方法で、20重量%の薬剤装填量を有する固体分散液を調製した。薬剤物質の放出を調べるために、固体分散液を攪拌しながら37℃で模擬胃液(米国薬局方第XXV版によって規定されている)中に懸濁させた。特定の時間間隔で、溶解媒体中の薬剤物質の濃度を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。全実験は3回ずつ実施した。
【0075】
イトラコナゾールの濃度は、均一濃度HPLC法を用いて決定した。HPLCシステムは、全部がメルク(Merck)社(ドイツ国、ダルムシュタット)製の、ラクローム(Lachrome)(登録商標)L−7100 HPLCポンプ、100μLのループを装備したL−7200型オートサンプラー、257nmに設定したL−7420型UV検出器、およびD−7000型インターフェースから構成した。UVシグナルを監視し、D−7000 HSMソフトウエアを用いてピークを積分した。クロマトグラフィーによる分離は全部を室温で実施した。12.5×0.4cmカラムにリクロスフェア(LiChrospher)(登録商標)100RP−18(5μm)(同様にメルク社(ドイツ国、ダルムシュタット)製)を充填した。アセトニトリル/テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート0.01 N(55:45容積/容積)からなる移動相をメンブランフィルタ(0.45μm)に通して濾過し、使用前に超音波処理により排気させた。流量は総計1mL/分となった。
【0076】
図4は、模擬胃液中での20%の薬剤および80%のSBA−15もしくはMCM−41のいずれかから生成した固体分散液からのイトラコナゾールの溶解を示している。SBA−15の場合は、放出速度(10分後に約68%)ならびに溶解した薬剤の最大量がMCM−41の場合より有意に高かった。
【実施例5】
【0077】
使用したゼオライト材料が実施例3のゼオライト材料、すなわちゼオタイル−4であった以外は、実施例4の方法を繰り返した。図5は、模擬胃液中での20%の薬剤および80%のゼオタイル−4から生成した固体分散液からのイトラコナゾールの溶解を示している。図4との安定した比較から、ゼオタイル−4の場合における速度もしくは放出率(10分後に約63%の放出)はMCM−41(10分後に約20%)の場合より有意に高かった。
【実施例6】
【0078】
【数1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性種を固定または不動化するための実質的に規則的に配列されたメソポーラス酸化物を基剤とする材料の使用であって、前記規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が単一レベルの多孔性および構造規則性を有する場合はそれがα−トコフェロールポリエチレングリコールエステル・テンプレート生体分子の不在下で入手されることを前提に、前記規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が1つ以上のレベルの多孔性または構造規則性を有する使用。
【請求項2】
生物活性種および実質的に規則的に配列されたメソポーラス酸化物を基剤とする材料を含む薬学的組成物であって、前記規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が単一レベルの多孔性および構造規則性を有する場合はそれがα−トコフェロールポリエチレングリコールエステル・テンプレート生体分子の不在下で入手されることを前提に、前記規則的に配列された酸化物を基剤とする材料が1つ以上のレベルの多孔性または構造規則性を有する薬学的組成物。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63601(P2011−63601A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246173(P2010−246173)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【分割の表示】特願2006−515567(P2006−515567)の分割
【原出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(599098493)カー・イュー・ルーベン・リサーチ・アンド・ディベロップメント (83)
【氏名又は名称原語表記】K.U.LEUVEN RESEARCH & DEVELOPMENT
【Fターム(参考)】