薬物を経皮送達する方法及び装置
本発明は、皮膚表面上の又はその近くの開口部、例えば毛包、孔に及び/又は皮脂腺内に、薬物例えば治療剤を送達するための方法及び装置を対象にする。これは、1つ又はそれ以上のノズル又はスリットを経由して圧力下で開口部内に薬物を導く装置を使用することによって、達成できる。毛包内に存在する皮脂の一部は、治療剤を導入する前に、例えば、装置の下部表面に位置する低圧導管を使用して、随意に加熱され及び/又は除去される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年5月26日に出願された米国仮特許出願第61/181,228号の優先権を主張し、その開示は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、皮脂腺及び/又は毛包へ薬物、例えば、治療剤を送達する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、毛包構造100を示し、これは、毛包110、毛幹120、1つ又はそれ以上の付随した皮脂腺130を含んでいる。小さな間隙125が、一般に毛幹120と毛包110の側部との間に、皮膚表面115へ導く毛包構造100の上部に存在する。1つ又はそれ以上の皮脂腺130は、図1に示されるように、管135を経由してこの間隙に接続されることが多い。
【0004】
皮脂腺130は、皮脂140と呼ばれる油性物質を分泌し、それは、脂質と、腺130によって除かれる死細胞の懐死組織片との混合物である。皮脂140は、毛包110の上部(漏斗)内に堆積されて、最終的には皮膚表面115に現れることもある。皮脂140は、毛幹120を滑らかにし保護することができ、保湿剤として作用し、そして毛包開口125を外部物質から遮断することを助ける。
【0005】
皮脂蓄積及び/又は皮脂腺130と毛包110との間で皮脂140による管135の閉塞が、一般的な皮膚疾患尋常性座瘡(一般に「にきび」と称される)の主要な原因でありうる。皮脂閉塞は大きくなり、毛穴のブラックヘッド又はホワイトヘッドを形成する可能性がある。赤くなったり腫れたり感染したりすることもある。これらのにきび症状は、審美的に望ましくなく、社会的に非難されることがあり、美観を損なう瘢痕の形成へ導くこともありうる。
【0006】
にきび症状を緩和して、より深刻な合併症を回避するための現在のアプローチは、薬物の局所溶液、例えば、過酸化ベンゾイル(店頭販売又は処方箋によって入手可能)又はサリチル酸、或いは、処方抗生物質、例えばエリスロマイシン、クリンダマイシン又はテトラサイクリン誘導体の塗布を含む。局所レチノイドもまた、にきび症状を緩和するために塗布できる。レチノイドは、トレチノイン(商品名レチンA)、アダパレン、及びタザロテン、並びに非処方薬レチノール又は誘導体を含む。レチノイドは、毛包内膜の細胞に影響を与えるようであり、それは、閉塞を導く可能性があるこれらの細胞の過角化症の防止に役立つ。
【0007】
このような局所療法、特にレチノイドを含む溶液の効果は、一般に、毛包110内に及び皮脂腺130内に局所用液が深く浸透するそれ自身の能力によって制限されることがある。毛包110及び/又は皮脂腺130内に導く管135に皮脂140及び細胞の懐死組織片が蓄積することは、より効き目があってもよい毛包領域内に局所用液が浸透するのを抑制する可能性がある。
【0008】
レチノイドである、イソトレチノイン(アキュテイン、ソトレット、クララス等の商品名で入手可能)の経口摂取は、にきび症状又はその重篤度の長期的な減少をもたらすことが示されてきた。イソトレチノインは、重度の症例のにきびを治療するために非常に効果的でありうる。しかし、イソトレチノインの経口投与は、肝臓障害及び妊婦が使用した際の先天性欠損症を含む重大な副作用を引き起こすと考えられている。これらの理由のため、イソトレチノインの経口投与を使用するにきびの治療は一般に、治療サイクルの綿密なモニタリング及び特定のスケジュールを必要とする。
【0009】
様々な効果の程度でにきびを治療できる他の技術は、光線療法(例えば、光線力学療法(「PDT」)、又は、様々なレーザ又は超短パルス光源での治療)を含む。PDTは一般に、5−アミノレブリン酸(ALA)又は他の光増感剤前駆物質又は光増感剤を含む溶液の局所適用を含み、その後、光エネルギを照射して光増感剤を活性化し、光増感剤が存在する特定の組織に選択的に影響を与える。にきびを治療するためのPDT技術は、例えば特許文献1に記載されており、PDT手順によって光増感剤として使用できる様々な薬物は、例えば特許文献2に記載されている。
【0010】
毛孔性角化症は、毛包を閉塞し、発疹、腫れ、痛み及び/又は内方発育毛等の症状を生み出す可能性があるケラチンの過剰生成によって特徴づけられる一般的な疾患である。毛孔性角化症には公知の治療法がないが、症状は、ビタミンA又は過酸化ベンゾイルなどの薬物を局所適用することによって軽減できる。
【0011】
局所用溶液、ローション剤等はまた、育毛を促進し、脱毛の速度を減じる等のために、頭皮へ塗布するために市販されている。これらの溶液は、ミノキシジル、アゼライン酸(azealic acid)及び/又はジヒドロテストステロン(dyhydrotestosterone)(DHT)ブロッカー等の薬物を含むことができる。そのような溶液は、毛包領域又はその特定部分へより効果的に適用できるならば、より効果的であり得、及び/又はより低濃度で使用できる。PDT技術は、例えば特許文献3に記載されているように、脱毛を治療するために使用することもできる。そのようなPDT技術で使用される化合物を毛包内によりよく浸透させることは、そのような技術の効果を改善できる。
【0012】
このようにして、上述の欠陥を鑑みて、毛包内に及び随意に皮脂腺内に局所用薬物をより効果的に投与することによる、改善されたにきび治療及び他の皮膚疾患の治療用の方法及び装置が望ましい。そのような薬物をより効果的に送達することが、より低濃度で使用することを可能にし、効能を改善することができ、そしてイソトレチノインの経口適用等の、より危険な治療に対する代替物を提供することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,897,238号明細書
【特許文献2】米国特許第6,034,267号明細書
【特許文献3】米国特許第7,090,691号明細書
【特許文献4】米国特許第7,008,647号明細書
【特許文献5】米国特許第7,494,503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前述の必要性に合致し、特に上で検討され、そして主に先行技術にある欠陥に対処することを対象としている。発明の実施態様は、皮膚組織に位置する毛包領域、例えば、皮脂腺の近くに又はその中に、薬物、例えば、治療剤を送達するためのシステム、方法及び装置を提供する。これは、圧力下で毛包内に薬物を導くことによって達成できる。随意に、毛包に存在する皮脂の一部を、治療剤を導入する前に、例えば真空を使用して、加熱及び/又は除去してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの態様において、圧力下で皮膚の毛包領域、例えば、毛包開口及び/又は皮脂腺へ治療剤を適用するための装置が提供される。そのような適用は、ある特定の皮膚構造物内に薬物が浸透するのを改善でき、これは、その効能も改善できる。治療剤は、にきび、脱毛、毛孔性角化症を治療するために又は光線力学療法に使用できる局所用溶液又はローションを含むことができるが、それらに限定されない
【0016】
装置は、送達器具、及び圧力下で皮膚表面へ、その中に含まれる治療剤を送達するように構築された流出口を含むことができる。治療剤は、装置に設けられた貯留層又はカートリッジに収容でき、それは、流出口を通って皮膚内に治療剤を進入させるように構成されている加圧ガス源等に連通してもよい。あるいは、治療剤を、遠隔源から圧力下で装置の送達器具へ供給できる。
【0017】
流出口を、装置の下部表面を通る、丸いか、卵形か、又はスリットでありうる単一の開口部として、又は、複数のそのような開口部として、構成できる。開口部は、小さな寸法、例えば、穴直径又はスリット幅を有することができ、それは、高圧で皮膚内に薬物を導入することを容易にするほど小さい。例えば、穴直径又はスリット幅は、約1000μm未満、例えば、約500μm未満、又は、約50μmほどの小ささ、又は、随意に約50μm未満でよい。より高い圧力下で皮膚内に薬物を送達することが望ましい適用においてより小さな直径を使用できる。
【0018】
1つ又はそれ以上の真空導管を、少なくとも部分的に装置の下部表面に沿って設けることができ、治療剤(複数も)の投与中に下部表面と皮膚との間の物理的な接触を改善する。1つ又はそれ以上の圧力導管を、少なくとも部分的に装置の下部表面に沿って設けることもでき、加圧ガス源に連通して構成できる。圧力導管(複数も)は、例えば、装置の下部表面の真空導管と皮膚表面との間の吸引力を間歇的に中断することによって、装置が皮膚表面上を動くことを容易にする。
【0019】
本発明のさらなる実施態様において、装置は、加熱器具、例えば、抵抗ヒータ、光放射又は超音波の供給源等を含むこともできる。加熱器具は、皮膚に接触し及び/又は装置の下部表面の一部を加熱するように構成することができ、それによって、皮膚表面を加熱し、孔、毛包等に存在するかもしれない皮脂及び/又は他の懐死組織片を軟化する。皮膚は、加熱された組織に対する熱損傷が発生するのを回避するために65℃未満の温度に加熱することが好ましい。軟化した物質は次いで、下部表面の1つ又はそれ以上の真空導管が加熱された皮膚上を進むときに、皮膚から部分的に除去できる。収集器具は装置に設けるか又はそれに貼付することができ、真空導管(複数も)を通って皮膚から除去されたそのような物質を捕捉し、それによって、そのような物質が低圧源内に運ばれてそれを汚染するか塞ぐ可能性を防止する。
【0020】
さらなる実施態様において、装置は、ハウジングに機械的に連結されるか貼付される振動器具を含むことができる。振動器具は、ハウジングに振動を誘発するように構成することができ、使用の際に皮膚に接触するその下部表面を含む。そのような振動は、真空導管に低圧が存在するときに装置が皮膚表面を移動することを容易にして、及び/又は、孔、毛包等に存在するかもしれない皮脂及び/又は他の懐死組織片の軟化を容易にする。
【0021】
別の態様において、本発明の実施態様は、毛包、孔又は皮脂腺等の皮膚構造内に治療剤を導入するための方法を提供する。方法は、随意に皮膚領域を加熱し、皮膚表面近くに存在するかもしれない皮脂又は他の懐死組織片を軟化することを含む。次いで、低圧器具が加熱された皮膚組織上を進み、皮脂及び/又は残骸を軟化及び/又は部分的に除去できる。次いで、加圧された治療剤の供給源は皮膚表面上を進み、孔、毛包又は他の皮膚構造内に薬物の少なくとも一部を導くことができる。
【0022】
さらに別の実施態様において、本発明は、皮膚疾患を有する対象を治療するための方法を提供する。皮膚疾患は、にきび、脱毛、毛孔性角質増殖症等を含む。方法は、高い圧力下で基板の少なくとも1つの開口部を通って対象の皮膚組織上に治療有効量の薬物を送達することと、少なくとも1つの開口部の少なくとも一部に近い基板の下部表面に沿って少なくとも1つの低圧チャネルを提供することを含み、低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに皮膚組織の表面に近い基板の下部表面を維持するように構成され、それによって、対象の皮膚疾患を治療する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載された装置の様々な実施態様、及び本明細書に記載された本発明の方法にしたがって装置の様々な実施態様を使用するための指示書を含むキットを提供する。
【0024】
本発明のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、図面を併用して下記の詳細な説明から、より明らかになるだろう。
【0025】
本願が属する技術分野の当業者が、それをどのように作り使用するかをより容易に理解できるように、図面を参照されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、毛包構造の説明図である。
【図2a】図2aは、本発明の実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【図2b】図2bは、図2aに示された装置の下部表面の説明図である。
【図2c】図2cは、図2aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明図である。
【図2d】図2dは、図2aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明図である。
【図3a】図3aは、本発明の別の実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【図3b】図3bは、図3aに示された装置の下部表面の説明図である。
【図3c】図3cは、図3aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明図である。
【図4a】図4aは、本発明のさらに別の実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【図4b】図4bは、図4aに示された装置の下部表面の説明図である。
【図4c】図4cは、図4aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明(を例示する)図である。
【図4d】皮膚組織の領域から皮脂を除去し及びそこへ治療剤を適用するために使用されている図4aに示された装置の概略図である。
【図5】本発明のさらなる実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【0027】
本発明は次に図面を参照して詳細に記載されるが、それは例示的な実施態様に関連して行われるものであり、図面に例示された特定の実施態様に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
毛包へ及び随意に関連皮脂腺へ薬物を送達するために使用できる装置200の概略側面図が図2aに示されている。装置200は、ハウジング210、真空導管220、及び送達器具230を含む。装置200の下部表面260は、皮膚表面250に接触するように構成されている。ある特定の実施態様において、ハウジング210は、手で簡単に保持され、治療すべき皮膚250の領域上を横断するように形成できる。送達器具230は、貯留層、カートリッジ、チューブ、ダクト等、又はその組み合わせを含むことができ、それは、ハウジング210内に位置してもよく又はその一部として形成されてもよく、治療剤の一部を含むように構成されている。送達器具230内の治療剤は、送達チューブ235を通して加圧ガス等を提供できる外部加圧源を使用して加圧できる。送達器具230はまた、送達チューブ235を通して治療剤を供給するように構成されている治療剤の外部源又は貯留層(図示せず)に連通して設けることもできる。真空導管220は、真空チューブ225を通して真空又は低圧の供給源(図示せず)に連通して設けることができる。振動器具212もまた、ハウジング210に貼付されてもよく又はそれに機械的に接触して設けられてもよい。
【0029】
装置200の下部表面260の例示的な構成が、図2bに示されている。真空導管220の下部及び下部表面260は、低圧チャネル222を形成し、これは、下部表面260の周囲のほぼ近くにあってよい。送達器具230の流出口280が、下部表面260の中心領域に位置している。下部表面260の外径は、下部表面260が皮膚表面250の形状における局所振動に整合するように十分に小さく、そして皮膚250のより広い領域の治療を容易にするために十分に大きいことが好ましい。例えば、下部表面260の外径は、約1インチから約3インチの間であってもよいが、一定の実施態様では、より小さい直径又はより大きい直径を設けることができる。下部表面260の形状は、図2bに示されるように、実質的に円形でよい。さらなる実施態様において、下部表面260は、形状が卵形、楕円形又は多角形であってもよく、又は、特定の用途に適切な他のいずれの形状であってもよい。下部表面260は実質的に平らであってもよく、又は、治療すべき皮膚250の形状により密接に適合するために、わずかに凸状に、凹状に、又は別の方法で輪郭づけられていてもよい。
【0030】
使用の際に、装置200は皮膚250に対向して置くことができ、真空導管220に低圧又は真空が提供される。低圧又は真空は、例えば、従来のバルブ器具等を使用して、制御できる。真空導管220及び低圧チャネル222内の低圧は、装置200の下部表面260と皮膚表面250との間の密接な接触及び/又は接着を容易にする。治療剤は、例えば送達チューブ235を使用して、送達器具230に高圧下で提供できる。治療剤は、水溶液、別の種類の液体溶液、ローション、懸濁液又は乳濁液等の態様で提供できる。治療剤は次いで、送達器具230の流出口280の近くに位置する皮膚250の毛包領域内に送達できる。送達器具230に提供される高い圧力は、そのような送達を容易にする。ある特定の実施態様において、1つ又はそれ以上の低圧チャネル222及び/又は真空導管220を使用して、送達器具230によって送達されるが皮膚開口部内に吸収されない治療剤の一部を皮膚表面から回収できる。そのような回収を使用して、例えば、治療後に皮膚表面上に過剰な治療剤が存在することを排除できて、及び/又は、高価な治療剤又はその成分、例えば金ナノ粒子等を回収できる。
【0031】
ある特定の実施態様において、送達器具230内の圧力を、経時変動することができ、例えば、治療剤のパルス送達が提供できる。例えば、送達器具230を、高圧の間隔にさらすことができ、それは、規則正しい期間又は頻度であってもよく、又は、不規則なタイミングであってもよい。圧力の変動又はパルスは、毛包又は孔内などの皮膚組織の開口部への治療剤の導入を容易にする。間隔は短い持続時間、例えば、約1秒又はそれ以下のオーダーであってもよい。ある特定の実施態様において、高圧のより長い間隔が使用されてもよい。送達中に治療剤に加えられる圧力のそのような変動は、本明細書に記載された本発明の様々な実施態様のいずれにおいても使用できる。
【0032】
真空導管220及び低圧チャネル222に提供された低圧はまた、治療剤の一部が、圧力下で送達されるときに、装置200の下部表面260の側部からの漏れの防止に役立ち、一方、好ましくは、流出口280を通って皮膚内に導入された大量の治療剤が除去されない。低圧チャネル222のサイズ、形状及び/又は配置は、装置が合理的な/典型的な操作速度で皮膚上を進むときに、これらの異なる機能を最適化するように選択できる。例えば、流出口280を通って押し出されるが、皮膚表面250の毛包領域内に浸透しないか吸収されない治療剤の一部は、低圧チャネル222及び真空導管220を通って回収できる。
【0033】
装置は、皮膚のより大きな領域を治療するために皮膚表面250の上を移動できる。真空導管に低圧が存在することにより、皮膚表面250上を装置200が移動することを防止できる。しかし、送達器具230の流出口280に存在するような加圧された供給源を提供することにより、装置200の下部表面260の低圧チャネル222と皮膚表面との間に真空封入の間歇的な中断及び回復が提供されると認められている。このような作用は、装置200の振動として現れる可能性があり、装置200が皮膚表面250上を容易に動くことを促進する。
【0034】
さらなる実施態様において、装置200は、図2cに示されるように、装置200の下部表面260に真空導管220の少なくとも一部に近接するように構成された圧力導管270を含むことができる。圧力導管270は、図2aに示される低圧チャネル222のものにほぼ類似した形態を有することができる。加圧ガス、例えば、空気、窒素等の供給源を、ホース、チュービング等を使用して、圧力導管270へ提供できる。圧力導管270内の圧力は、従来のバルブ器具を使用して制御できる。使用の際に、低圧チャネル222は、上述のように、装置200と皮膚表面250との間に良好な接着を提供できる。圧力導管270の圧力は、送達器具230の流出口280を通って提供される加圧された治療剤とは実質的に無関係に、この接着を修正し装置200が皮膚250上を容易に横断できるように、制御され及び/又は調整されてもよい。
【0035】
ある特定の実施態様において、低圧チャネル222と圧力導管270との相対位置を、図2cに示されたものとは反対にすることができ、圧力導管270は、低圧チャネル222の外部、例えば、装置200の下部表面260の外側縁により近いように置かれる。さらなる実施態様において、低圧チャネル222及び/又は圧力導管270は、存在するならば、装置200の下部表面260に複数の開口部として設けられてよく、例えば、図2b及び2cに示されたもののような連続したチャネルではなく、複数の矩形の又は湾曲したスロットとして設けることができる。
【0036】
圧力導管270(存在するならば)及び/又は送達器具230に提供された圧力、及び、真空導管220及び低圧チャネル222内の真空は、個別に制御することができ、皮膚250に対して装置200の良好な接着を提供し、皮膚250へ治療剤の所望の送達を行い、一方、装置200の皮膚表面250上の移動も容易にする。例えば、これらの導管に加えられる圧力又は真空の量は、従来のバルブ器具及び/又は圧力コントローラを使用して、設定し又は変動できる。圧力及び/又は真空は、そのような動きを容易にするために、随意にパルス化されてもよい。
【0037】
送達器具230の流出口280は、図2bに示されたものに類似して、単一の開口部として設けることができる。あるいは、流出口280は、図2dに示されるように、複数のより小さな開口部又はノズルとして構成されてよい。流出口280のより小さな開口部を使用して、より高い局所圧力で治療剤を送達することができ、それは、そのような薬物の毛包領域内に及び随意に皮脂腺内への浸透を容易にする。例えば、流出孔は、約50μm〜約500μmの横方向サイズ又は直径を有してもよい。したがって、任意の開口部又はノズルを通って提供されてもよい治療剤の流れは、約1000μm未満のサイズ、例えば約500μm未満、又は、約50μmほどの大きさ、又は、随意に約50μm未満のサイズを有することができる。単数又は複数の送達の流れを使用して、少なくとも部分的に開いた脂腺内に溶液また薬物を押し出すことができる。
【0038】
振動器具212を随意に装置200に設けてもよい。振動器具212は、ハウジング210に機械的に連結できて、装置200が使用されるときに、ハウジング内で例えば下部表面260に振動を発生させるように構成できる。振動器具212は、例えば、回転シャフトに設けられた偏心分銅、圧電素子、又は、振動を生成するように構成されたいずれかの従来の装置を含むことができる。振動器具212によって発生した振動は、使用の際に、装置200が皮膚組織250上を平行移動することを容易にする。皮膚250の表面近くに存在してもよい皮脂及び/又は他の懐死組織片を、分解し、軟化し、及び/又は、除去することも助ける。皮脂及び/又は懐死組織片のそのような除去は、下記により詳細に記載される。
【0039】
振動器具212は、約50〜1000μmの又は約100〜500μmの振幅を有することができる。誘発される振動の周波数は、約1Hz〜約10kHzでよい。ある特定の実施態様では、他の振動パラメータを用いてもよい。特定の振動パラメータは、装置200の特性、例えば、装置200及び/又は下部表面260のサイズ、真空導管220及び/又は送達器具230のサイズ及び形状、これらの構造物に提供される圧力等、に基づいて選択できる。振動器具212は、振動の振幅及び/又は周波数を調整するように構成された電気回路を含むことができる。振動器具212は、随意に、本明細書に記載された本発明の他の実施態様に含まれてよい。
【0040】
さらなる実施態様において、図3aに示される装置300は、毛包へ及び随意に関連皮脂腺へ薬物を送達するために提供される。装置300は、図2aに示された装置200に類似して、ハウジング310、真空導管320、及び送達器具330を含む。ハンドル340をハウジング310に接着することができ、又は、ハウジング310の一部として形成することができ、装置300の操作を容易にする。送達器具330は、送達チューブ335を通して治療剤の供給源又は貯留層(図示せず)に連通して設けることができ、真空導管320及び低圧チャネル322は、真空チューブ325を通して真空又は低圧の供給源(図示せず)に連通して設けることができる。
【0041】
装置300の下部表面360の例示的な構成が、図3bに示されている。下部表面360は、図3bに示されるように、実質的に正方形又は長方形の形状を有してよく、また、他の形状を用いてもよい。真空導管320の下部及び下部表面360は、低圧チャネル322を形成し、これは、一般に下部表面360の周囲のほぼ近くにあってもよい。送達器具330の流出口380は、下部表面360を通って延出する細長いスリットとして構成できる。このようなスリットは、送達器具330を通って送達される治療剤のために高い送達圧力を提供できて、装置300の下部表面360が図3bに示される矢印の方向に皮膚表面上を横断するときに、皮膚の広い領域にわたる送達が容易に適用される。
【0042】
図3cに示されている、さらなる実施態様において、送達器具330の流出口380を、下部表面360を通って延出する複数の細長いスリットとして構成できる。スリットは、図3cに示されるように、1つ又はそれ以上の列に配列することができ、又は、他の構成を用いてもよい。このようなスリットもまた、送達器具330を通って送達される治療剤のために高い送達圧力を提供できる。
【0043】
別の実施態様において、装置300は、図2cに示されている圧力導管270に類似した圧力導管を含むことができる。この圧力導管を、装置300の下部表面360に低圧チャネル322の近くに設けることができ、圧力導管内のガス圧力は、流出口380を通って提供される加圧された治療剤とは実質的に無関係に、装置300が皮膚表面上を横断することを容易にするために制御及び/又は調整できる。
【0044】
毛包へ及び随意に関連皮脂腺へ薬物を送達するために使用できる装置400のさらなる実施態様が、図4aに概略的に示されている。装置400は、ハウジング410、真空導管420、及び送達器具430を含む。装置400の下部表面460は、例えば、ハウジング410に貼付することができ、又は、その一体的部分として形成できる。送達器具430に位置する物質が下部表面460を通って移動することを可能にする流出口480を設けることができる。真空導管420の下部及び下部表面460を、低圧チャネル422を形成する。ハウジング410は、装置400の操作を容易にし、例えば、治療すべき皮膚の領域上でそれを平行移動させるハンドル440を含むことができる。送達器具430は、送達チューブ435を通して治療剤の供給源又は貯留層(図示せず)に連通して設けることができる。
【0045】
真空導管420及び低圧チャネル422は、真空チューブ425を通して真空ポンプ又は低圧源(図示せず)に連通して設けることができる。低圧チャネル422内の圧力は、使用の際に、皮膚と装置400の下部表面460との間に良好な接触を実質的に維持するほど十分に低いことが好ましい。大気圧より低いいずれかの圧力を、真空導管420内に提供できる。圧力は、約11psiよりも大きい(例えば、約−0.8気圧よりも大きい)ことが好ましい。これよりも低い圧力に皮膚組織をさらすことは、点状出血及び/又は皮膚の挫傷を発生させることがある。しかし、そのような低圧にさらされた組織の領域の近くに加圧環境(例えば、大気圧より大きい圧力)を適用することにより、挫傷又は出血の可能性を減少することができる。そのようなより高い圧力は、例えば、図2cに示された加圧された導管270と同様に、導管480を通って及び/又は低圧チャネル422の近くに設けられた加圧された流出口によって、送達器具430から送達されている加圧された薬物によって、提供できる。
【0046】
装置400は、加熱器具490をさらに含む。加熱器具490は、従来の抵抗ヒータ又は他の加熱装置を含むことができ、オン/オフスイッチ及びコントローラ、例えば、自動温度調節コントローラ等を含むことが好ましい。加熱器具490は、表面に近い皮膚組織を加熱する接触エネルギ又は放射エネルギを提供できる。例えば、加熱器具490は、電気抵抗加熱、赤外線又は他の光加熱(例えば、複数のLED、レーザダイオード、ランプを使用する)、超音波、又は、皮膚及び/又は皮脂によって吸収される1つ又はそれ以上の波長でエネルギを発するように構成された他の供給源、相変化又は化学反応加熱(例えば、装置内のチャンバに1つ又はそれ以上の温反応薬物又は発熱反応薬物を提供する)、等を含む。
【0047】
加熱器具490のサイズ、持続時間、温度(導電性接触加熱のために)又は放射照度の露出パラメータ、波長、及び放射加熱用の露出時間は、装置400が合理的な/典型的な操作速度で皮膚上を動くときに皮脂及び懐死組織片が十分に加熱されそれらを軟化し及び/又はその除去を容易にするように、選択されることが好ましい。そのような速度は、例えば、約1cm/秒程度でありうるが、より高い速度又はより低い速度を使用することもできる。加熱器具490は、毛包領域内に蓄積した皮脂を加熱して軟化することによって、毛包領域内に及び随意に皮脂腺内に治療剤を導入することを容易にする。この皮脂の一部はまた、下記により詳細に記載されるように、装置400を使用して除去してもよい。
【0048】
装置400の下部表面460の例示的な構成は、図4bに示されている。送達器具430の流出口480は、下部表面460の中心領域に位置している。真空導管420の下部及び下部表面460は、下部表面460に低圧チャネル422を形成し、これは、下部表面460の周囲のほぼ近くにあってもよい。加熱器具490に近い低圧チャネル422の一部422aは、下記により詳細に記載されるように、皮膚の皮脂の除去を容易にするように、低圧チャネル422の他の部分より広くてもよい。ある特定の実施態様では、2つ又はそれ以上の低圧チャネル422が設けられてもよい。このようにして、例えば、図4bに示された低圧チャネル422のより広い部分422aを、低圧チャネル422のより狭い部分とは別の第2のチャネルとして随意に設けることができる。
【0049】
加熱器具490の表面は、下部表面460と実質的に同一平面上にあるように構成されることが好ましく、装置400の下部表面460が皮膚上に置かれるときにそれが皮膚表面と接触するようにする。別の実施態様では、加熱器具490は、下部表面460の一部より上に、例えばハウジング410内に位置させることができ、下部表面460の一部及び下部表面460の加熱された部分に接触する皮膚の領域を加熱するように構成できる。
【0050】
さらなる実施態様において、装置400は、図4cに示されるているように、装置400の下部表面460に低圧チャネル422の少なくとも一部の近くに圧力導管470を含むことができる。圧力導管470は、図2cに示されている加圧導管270と同様であってよく、低圧チャネル422に真空又は低圧が存在するときに装置400が皮膚表面上を平行移動することを容易にするために、及び/又は、低圧にさらされる皮膚の挫傷を減少又は防止するために、設けられてもよい。加圧ガス、例えば、空気、窒素等の供給源を、ホース、チュービング等を使用して、圧力導管470へ提供することができ、ガス圧力は従来のバルブ器具を使用して制御できる。圧力導管470に提供された圧力は、装置400の平行移動を容易にするために、随意にパルス化されてもよい。
【0051】
圧力導管470の配置及び真空導管420に対する位置は、図4cに示された構成から変動させてもよい。一般に、装置400の下部表面460を通って進む圧力導管470の部分を、低圧チャネル422の部分の近くに位置することが好ましい。例えば、圧力導管470を、下部表面460の低圧チャネル422の部分に実質的に平行に設けられる複数のチャネルとして構成してもよい。そのような近接により、上述のように低圧チャネル422と皮膚表面との間に形成され得る真空封入の間歇的な中断が容易になり、及び、真空導管420に低圧が存在するときに装置400が皮膚上をより容易に平行移動できるようにする。
【0052】
図4dは、皮膚450に位置する1つ又はそれ以上の皮脂腺495内に治療物質433を送達する装置400の例示的な使用を説明する。装置400は、皮膚450の表面に置かれる。低圧チャネル422は、真空導管420に低圧が提供されるときに装置400の下部表面460と皮膚450との間の良好な接触を促進する。装置400は、図4dの矢印によって示された方向に皮膚450の表面上を平行移動できる。
【0053】
装置の前方位置に設けられた加熱器具490は、皮膚450のターゲット領域に最初に接触し、ターゲット領域に位置する皮脂492及びいずれかの関連懐死組織片を加熱するように制御できる。そのような加熱により、例えば皮脂492のワックスエステルの粘性を溶融するか減少することによって、毛包開口部及び皮脂腺495へのアクセスを阻止する、皮脂腺495内に又はその近くに存在し得る皮脂492を軟化することができる。
【0054】
例えば、皮膚450のターゲット領域は、約37°C〜約47°Cの温度に加熱できる。皮膚組織450をより高い温度に加熱することもまた実施できる。加熱温度は、好ましくは、約35°Cより高くてもよく、これは、身体の中核体温よりわずかに低くてもよいが皮膚450の典型的な表面温度より高くてもよい。好ましくは、皮膚450のターゲット領域は、周囲の真皮組織に不可逆性熱損傷が発生する可能性を避けるために、約65°C未満である温度に加熱される。皮脂腺495は一般に、皮膚450の表面から約1〜2mmの深さに位置している。皮膚450を通る伝導による皮脂腺495のレベルへの熱伝達には、加熱されている特徴物の深さに依存して、数秒又はそれ以上を必要とするだろう。
【0055】
治療すべき皮膚450の予熱は、本明細書に記載された本発明の特定の実施態様にしたがって、装置を使用する前に随意に実施できる。例えば、加熱された皮膚450へ装置200、300、400を適用する前に、放射加熱又は例えば加熱されたパッド、蒸しタオル等を使用する接触加熱を皮膚450に実施できる。ある特定の実施態様において、そのような予熱は、例示的な装置400に加熱器具490を設ける代わりに、実施できる。あるいは、そのような予熱は、そのような加熱器具490を使用することに加えて、実施できる。
【0056】
装置400が皮膚450を移動するにつれて、低圧チャネル422の前方部分422a(随意に、低圧チャネル422の他の部分より広くてもよい)が加熱組織上を進み、低圧が、加熱された皮脂492及び/又は懐死組織片の一部を軟化し、及び/又は、皮脂腺495、毛包及び/又は皮膚450の孔から除去されることを容易にする。真空手順もまた、皮脂腺495及び/又は毛包の管に存在するかもしれない妨害物を除去することができ、それは、本明細書に記載された加熱器具490を含まない本発明の他の実施態様で達成されてもよい。
【0057】
毛包領域内の皮脂492及び/又は他の懐死組織片の除去は、例えば、側方向成分を有する毛包の近傍に(例えば、皮膚表面に平行に)力を加えることによって高めることができ、インフィディブラム(infidibulum)内の物質を絞り出すことができるようにする。そのような力は、装置が皮膚450を平行移動するときに装置400の下部表面460の縁によって加えられてもよい。低圧チャネル422の低圧により、装置が平行移動するときに、皮膚450を装置400の下部表面460に対して引き寄せることができ、これにより、そのような除去の効果が増大する。
【0058】
送達器具430の流出口480は、図4bに示されるように、低圧チャネル422の広い部分422aの後ろに(図4dの矢印に示される装置400の好適な平行移動方向に対して)位置付けることができる。流出口480の幅は、低圧チャネル422の広い部分422aの幅と同様であることが好ましく、例えば、図4bに示されるように、わずかに狭くてもよい。装置400は皮膚450上を移動し続けるので、送達器具430に圧力下で提供される治療剤433は、導管480を通ってターゲット領域の毛包領域内に、例えばそこから皮脂492及び懐死組織片が予め軟化されていてもよく及び/又は除去されていてもよい、皮脂腺495内に押し出すことができる。皮脂492の除去により、そのような治療剤433が毛包及び/又は皮脂腺495内により深く浸透するのを容易にする、より開いた経路を生成できる。
【0059】
治療剤433は、圧力下で送達器具430に提供されることが好ましい。ある特定の実施態様において、2つ又はそれ以上の異なる種類の治療剤433を送達するように構成される複数の送達器具430及び/又は流出口480を設けることができる。送達器具430は、貯留層、カートリッジ等を含んでもよく、それは、治療剤433を含むように構成されていて、ハウジング410内に位置してもよく、又は、その一部として形成されてもよい。治療剤433は、例えば手動ポンプ又は電気ポンプ等の圧力源、ピストン、又は送達器具433に連通して設けられた加圧ガスライン等を使用して、加圧できる。
【0060】
ある特定の実施態様において、流出口480は、治療剤433の1つ又はそれ以上の小さな流れを皮膚表面450にそして毛包領域及び/又は皮脂腺495内に導くように構成され、下部表面460を通る1つ又はそれ以上のより小さなノズル、オリフィス、ジェット又はスリットの形態で設けることができる。そのようなノズル又はジェットは、実質的に直線配列に(例えば、単一の列に)設けることができ、装置が皮膚表面上を移動するときに、皮膚表面の大きな部分を流れに露出させる。あるいは、ジェット又はノズルは、二次元配列に配置することができ(例えば、ノズル、ジェット、スリット等の2つ又はそれ以上の列)、装置400が皮膚表面450上を平行移動するときに、加圧された治療剤433の複数の流れに皮膚表面450をより大きく露出させる。
【0061】
さらなる例示的な実施態様において、装置400は、複数の低圧チャネル422及び/又は送達器具430及び流出口480を含むことができ、それは、装置400がその毛包又は孔上を平行移動するときに、特定の毛包又は孔が、加圧された薬物の低圧除去及び送達の1サイクル以上に露出されるように構成されてもよい。複数の加熱器具490を設けることもできる。このような例示的な構成は、皮膚加熱、皮脂の除去、及び/又は、治療物質の送達の効果を改善できる。あるいは、装置400(又は、本発明の実施態様にしたがったいずれの装置)は、加熱、皮脂除去、及び/又は、治療物質の送達の複数サイクルを発生させるために、複数回、治療すべき皮膚の領域上を平行移動してもよい。
【0062】
本発明にしたがった装置500のさらなる実施態様が図5に示されている。装置500は、ハウジング510、真空導管520、低圧チャネル522(随意に、広い部分522aを含む)、送達器具530、及び加熱器具590を含む。ハウジング510は、装置500の操作を容易にするハンドル540を含むことができる。装置500の下部表面560は、ハウジング510に貼付することができ、又は、その一体的な部分として形成できる。
【0063】
送達器具530は、治療剤533を保持するように適合された貯留層、カートリッジ、封入物等を含むことができる。送達器具530は、送達チューブ535を通して圧力源に連通して設けることができ、治療剤533を装置500の下部表面560に位置する流出口580から皮膚内に圧力下で送達できるようにする。制御導管538を、例えば図5に示されるように、送達器具530に連通して設けてもよい。制御導管538の遠位端が、装置500上の1つ又はそれ以上の場所で装置500の下部表面560を通って進むことができる。
【0064】
制御導管538は、送達器具530内の治療剤533を加圧するための制御弁として作用できる。例えば、装置500の下部表面560が皮膚表面に接触して置かれるときに、制御導管538の遠位端を封鎖することができ、送達チューブ535を通って提供された加圧ガスが治療剤533の幾分かを流出口580を通過することを可能にする。装置500の下部表面560が皮膚表面に接触しないときには、加圧ガスは制御導管538を通ってその妨げられていない遠位端からより容易に流れ、それによって、皮膚表面の近くにはないときに治療剤533が流出口580から押し出されることを防止する。制御導管538に加えて又はその代わりに手動スイッチ又は弁もまた設けられてよく、加圧された治療剤533が流出口580を通って治療すべき皮膚の領域内に送達されるのを制御する。制御導管538はまた、治療剤533の適用を制御するために、本明細書に記載された本発明の他の実施態様に設けることもできる。
【0065】
収集器具528が、真空チューブ525及び真空導管520に連通して設けられていてもよい。収集器具528は、治療されている皮膚から真空導管520を通って回収してもよい皮脂又は他の物質を捕捉して、一方、真空導管520及び低圧チャネル522へ低圧を提供する真空チューブ525を通って皮脂が進むことを妨害するように構成できる。収集器具528は、図5に示されているように、装置500のハウジング510内に又はハウジング510の外部に設けることができる。収集器具538はまた、本明細書に記載された本発明の他の実施態様に設けられてもよい。
【0066】
本願に記載された本発明の様々な実施態様にしたがって、皮膚の毛包、孔及び/又は皮脂腺へ薬物を送達するための装置は、使い捨て装置として提供できる。例えば、このような装置は、本明細書に記載されるように、1つ又はそれ以上の真空導管及び関連流出口を備えた送達器具を含むハウジングとして提供できる。装置は、それぞれ真空チューブ及び送達チューブを通して低圧又は真空の供給源及び圧力源に接着するように構成できる。ハウジングは、1つ又はそれ以上の治療物質を含む1つ又はそれ以上のカートリッジ、バイアル等を受け入れるように構成できる。ハウジングはまた、それに貼付される着脱自在及び再利用可能な加熱器具を受け入れるようにも構成できる。収集器具もまた、ハウジング内に含有できる。
【0067】
使用の際に、治療剤を含むカートリッジを、薬物が送達器具に連通するように装置に貼付できる。高圧源及び低圧源もまた、装置に接着できる。任意の加熱器具もまた、装置に貼付できる。装置は、次いで、本明細書に記載されているように、皮膚表面に適用できて、皮膚の孔及び/又は毛包領域内に治療剤を適用し、随意に、存在する皮脂の一部を軟化し及び/又は除去する。使用後に、カートリッジ及び加熱器具は装置から取り外すことができ、装置は低圧源及び高圧源から外すことができる。装置は次いで廃棄することができ、一方、加熱器具及び/又はカートリッジは、さらなる治療のために新しい装置とともに使用できる。
【0068】
毛包内及び/又は皮脂腺内に送達されるときに所望の効果を生み出すことができるいずれの治療剤(例えば、にきび治療に限定されない)が、本発明の実施態様に使用できる。そのような治療剤は、本明細書に記載された例示的な方法及び装置を使用して、従来の局所適用と比較して、より効果的に毛包内及び/又は皮脂腺内に浸透させることができる。
【0069】
例えば、使用できる1つの治療剤は、にきび疾患を治療するための局所レチノイド(例えば、トレチノイン)である。にきび治療、脱毛治療等用のPDTに使用されるALA又は他の化合物、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されたもの等もまた使用できる。ビタミンA又は過酸化ベンゾイルの局所用溶液を毛孔性角化症を治療するために使用できる。脱毛又は様々な皮膚病変の治療等の様々な使用のための局所用溶液として市販されている他の治療剤もまた、本発明の実施態様に使用できる。例えば、ミノキシジル、アゼライン酸及び/又はジヒドロテストステロン(dyhydrotestosterone)(DHT)ブロッカー等の薬物を含む脱毛治療用の溶液を使用できる。抗菌剤金属ナノ粒子、例えば、特許文献4に記載されたもの等を含む治療剤も使用できる。発色団、例えば、外因性発色団を含む治療剤、例えば、PDT処置に使用するために特許文献5に記載されたもの等もまた、本発明の実施態様で使用できる。そのような薬物及び/又はそのような薬物を使用する処置は、毛包領域又はその特定部分へより効果的に送達できるならば、より効果的でありうる。
【0070】
本明細書に記載されたいずれか又はその組み合わせを含む、様々な治療剤もまた、本発明の実施態様を使用して適用できる。したがって、そのように適用された治療剤の量及び/又は濃度を減少しても、依然として類似した効果を提供できる。このアプローチはまた、治療すべき毛包の領域内により特異的に治療剤を送達することもできるので、局所用溶液の効能を改善できて及び/又は望ましくない副作用の発生を減少することもできる。いくつかの適用において、十分な程度の予熱、真空及び加圧送達を使用して、若干量の治療剤を皮脂腺内に送達することが可能になる。
【0071】
前述は、本発明の本質の単なる説明にすぎない。記載された実施態様に対する様々な修正及び変更は、本明細書の教示を考慮して当業者には明らかであろう。よって、当業者は、本明細書に明白に記載されていないが、本発明の本質を具体化し、よって本発明の精神及び範囲内にある多数の技術を考案できることを認識されるだろう。本明細書に引用されたすべての特許及び刊行物は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2009年5月26日に出願された米国仮特許出願第61/181,228号の優先権を主張し、その開示は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、皮脂腺及び/又は毛包へ薬物、例えば、治療剤を送達する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
図1は、毛包構造100を示し、これは、毛包110、毛幹120、1つ又はそれ以上の付随した皮脂腺130を含んでいる。小さな間隙125が、一般に毛幹120と毛包110の側部との間に、皮膚表面115へ導く毛包構造100の上部に存在する。1つ又はそれ以上の皮脂腺130は、図1に示されるように、管135を経由してこの間隙に接続されることが多い。
【0004】
皮脂腺130は、皮脂140と呼ばれる油性物質を分泌し、それは、脂質と、腺130によって除かれる死細胞の懐死組織片との混合物である。皮脂140は、毛包110の上部(漏斗)内に堆積されて、最終的には皮膚表面115に現れることもある。皮脂140は、毛幹120を滑らかにし保護することができ、保湿剤として作用し、そして毛包開口125を外部物質から遮断することを助ける。
【0005】
皮脂蓄積及び/又は皮脂腺130と毛包110との間で皮脂140による管135の閉塞が、一般的な皮膚疾患尋常性座瘡(一般に「にきび」と称される)の主要な原因でありうる。皮脂閉塞は大きくなり、毛穴のブラックヘッド又はホワイトヘッドを形成する可能性がある。赤くなったり腫れたり感染したりすることもある。これらのにきび症状は、審美的に望ましくなく、社会的に非難されることがあり、美観を損なう瘢痕の形成へ導くこともありうる。
【0006】
にきび症状を緩和して、より深刻な合併症を回避するための現在のアプローチは、薬物の局所溶液、例えば、過酸化ベンゾイル(店頭販売又は処方箋によって入手可能)又はサリチル酸、或いは、処方抗生物質、例えばエリスロマイシン、クリンダマイシン又はテトラサイクリン誘導体の塗布を含む。局所レチノイドもまた、にきび症状を緩和するために塗布できる。レチノイドは、トレチノイン(商品名レチンA)、アダパレン、及びタザロテン、並びに非処方薬レチノール又は誘導体を含む。レチノイドは、毛包内膜の細胞に影響を与えるようであり、それは、閉塞を導く可能性があるこれらの細胞の過角化症の防止に役立つ。
【0007】
このような局所療法、特にレチノイドを含む溶液の効果は、一般に、毛包110内に及び皮脂腺130内に局所用液が深く浸透するそれ自身の能力によって制限されることがある。毛包110及び/又は皮脂腺130内に導く管135に皮脂140及び細胞の懐死組織片が蓄積することは、より効き目があってもよい毛包領域内に局所用液が浸透するのを抑制する可能性がある。
【0008】
レチノイドである、イソトレチノイン(アキュテイン、ソトレット、クララス等の商品名で入手可能)の経口摂取は、にきび症状又はその重篤度の長期的な減少をもたらすことが示されてきた。イソトレチノインは、重度の症例のにきびを治療するために非常に効果的でありうる。しかし、イソトレチノインの経口投与は、肝臓障害及び妊婦が使用した際の先天性欠損症を含む重大な副作用を引き起こすと考えられている。これらの理由のため、イソトレチノインの経口投与を使用するにきびの治療は一般に、治療サイクルの綿密なモニタリング及び特定のスケジュールを必要とする。
【0009】
様々な効果の程度でにきびを治療できる他の技術は、光線療法(例えば、光線力学療法(「PDT」)、又は、様々なレーザ又は超短パルス光源での治療)を含む。PDTは一般に、5−アミノレブリン酸(ALA)又は他の光増感剤前駆物質又は光増感剤を含む溶液の局所適用を含み、その後、光エネルギを照射して光増感剤を活性化し、光増感剤が存在する特定の組織に選択的に影響を与える。にきびを治療するためのPDT技術は、例えば特許文献1に記載されており、PDT手順によって光増感剤として使用できる様々な薬物は、例えば特許文献2に記載されている。
【0010】
毛孔性角化症は、毛包を閉塞し、発疹、腫れ、痛み及び/又は内方発育毛等の症状を生み出す可能性があるケラチンの過剰生成によって特徴づけられる一般的な疾患である。毛孔性角化症には公知の治療法がないが、症状は、ビタミンA又は過酸化ベンゾイルなどの薬物を局所適用することによって軽減できる。
【0011】
局所用溶液、ローション剤等はまた、育毛を促進し、脱毛の速度を減じる等のために、頭皮へ塗布するために市販されている。これらの溶液は、ミノキシジル、アゼライン酸(azealic acid)及び/又はジヒドロテストステロン(dyhydrotestosterone)(DHT)ブロッカー等の薬物を含むことができる。そのような溶液は、毛包領域又はその特定部分へより効果的に適用できるならば、より効果的であり得、及び/又はより低濃度で使用できる。PDT技術は、例えば特許文献3に記載されているように、脱毛を治療するために使用することもできる。そのようなPDT技術で使用される化合物を毛包内によりよく浸透させることは、そのような技術の効果を改善できる。
【0012】
このようにして、上述の欠陥を鑑みて、毛包内に及び随意に皮脂腺内に局所用薬物をより効果的に投与することによる、改善されたにきび治療及び他の皮膚疾患の治療用の方法及び装置が望ましい。そのような薬物をより効果的に送達することが、より低濃度で使用することを可能にし、効能を改善することができ、そしてイソトレチノインの経口適用等の、より危険な治療に対する代替物を提供することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,897,238号明細書
【特許文献2】米国特許第6,034,267号明細書
【特許文献3】米国特許第7,090,691号明細書
【特許文献4】米国特許第7,008,647号明細書
【特許文献5】米国特許第7,494,503号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前述の必要性に合致し、特に上で検討され、そして主に先行技術にある欠陥に対処することを対象としている。発明の実施態様は、皮膚組織に位置する毛包領域、例えば、皮脂腺の近くに又はその中に、薬物、例えば、治療剤を送達するためのシステム、方法及び装置を提供する。これは、圧力下で毛包内に薬物を導くことによって達成できる。随意に、毛包に存在する皮脂の一部を、治療剤を導入する前に、例えば真空を使用して、加熱及び/又は除去してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの態様において、圧力下で皮膚の毛包領域、例えば、毛包開口及び/又は皮脂腺へ治療剤を適用するための装置が提供される。そのような適用は、ある特定の皮膚構造物内に薬物が浸透するのを改善でき、これは、その効能も改善できる。治療剤は、にきび、脱毛、毛孔性角化症を治療するために又は光線力学療法に使用できる局所用溶液又はローションを含むことができるが、それらに限定されない
【0016】
装置は、送達器具、及び圧力下で皮膚表面へ、その中に含まれる治療剤を送達するように構築された流出口を含むことができる。治療剤は、装置に設けられた貯留層又はカートリッジに収容でき、それは、流出口を通って皮膚内に治療剤を進入させるように構成されている加圧ガス源等に連通してもよい。あるいは、治療剤を、遠隔源から圧力下で装置の送達器具へ供給できる。
【0017】
流出口を、装置の下部表面を通る、丸いか、卵形か、又はスリットでありうる単一の開口部として、又は、複数のそのような開口部として、構成できる。開口部は、小さな寸法、例えば、穴直径又はスリット幅を有することができ、それは、高圧で皮膚内に薬物を導入することを容易にするほど小さい。例えば、穴直径又はスリット幅は、約1000μm未満、例えば、約500μm未満、又は、約50μmほどの小ささ、又は、随意に約50μm未満でよい。より高い圧力下で皮膚内に薬物を送達することが望ましい適用においてより小さな直径を使用できる。
【0018】
1つ又はそれ以上の真空導管を、少なくとも部分的に装置の下部表面に沿って設けることができ、治療剤(複数も)の投与中に下部表面と皮膚との間の物理的な接触を改善する。1つ又はそれ以上の圧力導管を、少なくとも部分的に装置の下部表面に沿って設けることもでき、加圧ガス源に連通して構成できる。圧力導管(複数も)は、例えば、装置の下部表面の真空導管と皮膚表面との間の吸引力を間歇的に中断することによって、装置が皮膚表面上を動くことを容易にする。
【0019】
本発明のさらなる実施態様において、装置は、加熱器具、例えば、抵抗ヒータ、光放射又は超音波の供給源等を含むこともできる。加熱器具は、皮膚に接触し及び/又は装置の下部表面の一部を加熱するように構成することができ、それによって、皮膚表面を加熱し、孔、毛包等に存在するかもしれない皮脂及び/又は他の懐死組織片を軟化する。皮膚は、加熱された組織に対する熱損傷が発生するのを回避するために65℃未満の温度に加熱することが好ましい。軟化した物質は次いで、下部表面の1つ又はそれ以上の真空導管が加熱された皮膚上を進むときに、皮膚から部分的に除去できる。収集器具は装置に設けるか又はそれに貼付することができ、真空導管(複数も)を通って皮膚から除去されたそのような物質を捕捉し、それによって、そのような物質が低圧源内に運ばれてそれを汚染するか塞ぐ可能性を防止する。
【0020】
さらなる実施態様において、装置は、ハウジングに機械的に連結されるか貼付される振動器具を含むことができる。振動器具は、ハウジングに振動を誘発するように構成することができ、使用の際に皮膚に接触するその下部表面を含む。そのような振動は、真空導管に低圧が存在するときに装置が皮膚表面を移動することを容易にして、及び/又は、孔、毛包等に存在するかもしれない皮脂及び/又は他の懐死組織片の軟化を容易にする。
【0021】
別の態様において、本発明の実施態様は、毛包、孔又は皮脂腺等の皮膚構造内に治療剤を導入するための方法を提供する。方法は、随意に皮膚領域を加熱し、皮膚表面近くに存在するかもしれない皮脂又は他の懐死組織片を軟化することを含む。次いで、低圧器具が加熱された皮膚組織上を進み、皮脂及び/又は残骸を軟化及び/又は部分的に除去できる。次いで、加圧された治療剤の供給源は皮膚表面上を進み、孔、毛包又は他の皮膚構造内に薬物の少なくとも一部を導くことができる。
【0022】
さらに別の実施態様において、本発明は、皮膚疾患を有する対象を治療するための方法を提供する。皮膚疾患は、にきび、脱毛、毛孔性角質増殖症等を含む。方法は、高い圧力下で基板の少なくとも1つの開口部を通って対象の皮膚組織上に治療有効量の薬物を送達することと、少なくとも1つの開口部の少なくとも一部に近い基板の下部表面に沿って少なくとも1つの低圧チャネルを提供することを含み、低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに皮膚組織の表面に近い基板の下部表面を維持するように構成され、それによって、対象の皮膚疾患を治療する。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載された装置の様々な実施態様、及び本明細書に記載された本発明の方法にしたがって装置の様々な実施態様を使用するための指示書を含むキットを提供する。
【0024】
本発明のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、図面を併用して下記の詳細な説明から、より明らかになるだろう。
【0025】
本願が属する技術分野の当業者が、それをどのように作り使用するかをより容易に理解できるように、図面を参照されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、毛包構造の説明図である。
【図2a】図2aは、本発明の実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【図2b】図2bは、図2aに示された装置の下部表面の説明図である。
【図2c】図2cは、図2aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明図である。
【図2d】図2dは、図2aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明図である。
【図3a】図3aは、本発明の別の実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【図3b】図3bは、図3aに示された装置の下部表面の説明図である。
【図3c】図3cは、図3aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明図である。
【図4a】図4aは、本発明のさらに別の実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【図4b】図4bは、図4aに示された装置の下部表面の説明図である。
【図4c】図4cは、図4aに示された装置の下部表面のさらなる構成の説明(を例示する)図である。
【図4d】皮膚組織の領域から皮脂を除去し及びそこへ治療剤を適用するために使用されている図4aに示された装置の概略図である。
【図5】本発明のさらなる実施態様にしたがった例示的な装置の概略断面図である。
【0027】
本発明は次に図面を参照して詳細に記載されるが、それは例示的な実施態様に関連して行われるものであり、図面に例示された特定の実施態様に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
毛包へ及び随意に関連皮脂腺へ薬物を送達するために使用できる装置200の概略側面図が図2aに示されている。装置200は、ハウジング210、真空導管220、及び送達器具230を含む。装置200の下部表面260は、皮膚表面250に接触するように構成されている。ある特定の実施態様において、ハウジング210は、手で簡単に保持され、治療すべき皮膚250の領域上を横断するように形成できる。送達器具230は、貯留層、カートリッジ、チューブ、ダクト等、又はその組み合わせを含むことができ、それは、ハウジング210内に位置してもよく又はその一部として形成されてもよく、治療剤の一部を含むように構成されている。送達器具230内の治療剤は、送達チューブ235を通して加圧ガス等を提供できる外部加圧源を使用して加圧できる。送達器具230はまた、送達チューブ235を通して治療剤を供給するように構成されている治療剤の外部源又は貯留層(図示せず)に連通して設けることもできる。真空導管220は、真空チューブ225を通して真空又は低圧の供給源(図示せず)に連通して設けることができる。振動器具212もまた、ハウジング210に貼付されてもよく又はそれに機械的に接触して設けられてもよい。
【0029】
装置200の下部表面260の例示的な構成が、図2bに示されている。真空導管220の下部及び下部表面260は、低圧チャネル222を形成し、これは、下部表面260の周囲のほぼ近くにあってよい。送達器具230の流出口280が、下部表面260の中心領域に位置している。下部表面260の外径は、下部表面260が皮膚表面250の形状における局所振動に整合するように十分に小さく、そして皮膚250のより広い領域の治療を容易にするために十分に大きいことが好ましい。例えば、下部表面260の外径は、約1インチから約3インチの間であってもよいが、一定の実施態様では、より小さい直径又はより大きい直径を設けることができる。下部表面260の形状は、図2bに示されるように、実質的に円形でよい。さらなる実施態様において、下部表面260は、形状が卵形、楕円形又は多角形であってもよく、又は、特定の用途に適切な他のいずれの形状であってもよい。下部表面260は実質的に平らであってもよく、又は、治療すべき皮膚250の形状により密接に適合するために、わずかに凸状に、凹状に、又は別の方法で輪郭づけられていてもよい。
【0030】
使用の際に、装置200は皮膚250に対向して置くことができ、真空導管220に低圧又は真空が提供される。低圧又は真空は、例えば、従来のバルブ器具等を使用して、制御できる。真空導管220及び低圧チャネル222内の低圧は、装置200の下部表面260と皮膚表面250との間の密接な接触及び/又は接着を容易にする。治療剤は、例えば送達チューブ235を使用して、送達器具230に高圧下で提供できる。治療剤は、水溶液、別の種類の液体溶液、ローション、懸濁液又は乳濁液等の態様で提供できる。治療剤は次いで、送達器具230の流出口280の近くに位置する皮膚250の毛包領域内に送達できる。送達器具230に提供される高い圧力は、そのような送達を容易にする。ある特定の実施態様において、1つ又はそれ以上の低圧チャネル222及び/又は真空導管220を使用して、送達器具230によって送達されるが皮膚開口部内に吸収されない治療剤の一部を皮膚表面から回収できる。そのような回収を使用して、例えば、治療後に皮膚表面上に過剰な治療剤が存在することを排除できて、及び/又は、高価な治療剤又はその成分、例えば金ナノ粒子等を回収できる。
【0031】
ある特定の実施態様において、送達器具230内の圧力を、経時変動することができ、例えば、治療剤のパルス送達が提供できる。例えば、送達器具230を、高圧の間隔にさらすことができ、それは、規則正しい期間又は頻度であってもよく、又は、不規則なタイミングであってもよい。圧力の変動又はパルスは、毛包又は孔内などの皮膚組織の開口部への治療剤の導入を容易にする。間隔は短い持続時間、例えば、約1秒又はそれ以下のオーダーであってもよい。ある特定の実施態様において、高圧のより長い間隔が使用されてもよい。送達中に治療剤に加えられる圧力のそのような変動は、本明細書に記載された本発明の様々な実施態様のいずれにおいても使用できる。
【0032】
真空導管220及び低圧チャネル222に提供された低圧はまた、治療剤の一部が、圧力下で送達されるときに、装置200の下部表面260の側部からの漏れの防止に役立ち、一方、好ましくは、流出口280を通って皮膚内に導入された大量の治療剤が除去されない。低圧チャネル222のサイズ、形状及び/又は配置は、装置が合理的な/典型的な操作速度で皮膚上を進むときに、これらの異なる機能を最適化するように選択できる。例えば、流出口280を通って押し出されるが、皮膚表面250の毛包領域内に浸透しないか吸収されない治療剤の一部は、低圧チャネル222及び真空導管220を通って回収できる。
【0033】
装置は、皮膚のより大きな領域を治療するために皮膚表面250の上を移動できる。真空導管に低圧が存在することにより、皮膚表面250上を装置200が移動することを防止できる。しかし、送達器具230の流出口280に存在するような加圧された供給源を提供することにより、装置200の下部表面260の低圧チャネル222と皮膚表面との間に真空封入の間歇的な中断及び回復が提供されると認められている。このような作用は、装置200の振動として現れる可能性があり、装置200が皮膚表面250上を容易に動くことを促進する。
【0034】
さらなる実施態様において、装置200は、図2cに示されるように、装置200の下部表面260に真空導管220の少なくとも一部に近接するように構成された圧力導管270を含むことができる。圧力導管270は、図2aに示される低圧チャネル222のものにほぼ類似した形態を有することができる。加圧ガス、例えば、空気、窒素等の供給源を、ホース、チュービング等を使用して、圧力導管270へ提供できる。圧力導管270内の圧力は、従来のバルブ器具を使用して制御できる。使用の際に、低圧チャネル222は、上述のように、装置200と皮膚表面250との間に良好な接着を提供できる。圧力導管270の圧力は、送達器具230の流出口280を通って提供される加圧された治療剤とは実質的に無関係に、この接着を修正し装置200が皮膚250上を容易に横断できるように、制御され及び/又は調整されてもよい。
【0035】
ある特定の実施態様において、低圧チャネル222と圧力導管270との相対位置を、図2cに示されたものとは反対にすることができ、圧力導管270は、低圧チャネル222の外部、例えば、装置200の下部表面260の外側縁により近いように置かれる。さらなる実施態様において、低圧チャネル222及び/又は圧力導管270は、存在するならば、装置200の下部表面260に複数の開口部として設けられてよく、例えば、図2b及び2cに示されたもののような連続したチャネルではなく、複数の矩形の又は湾曲したスロットとして設けることができる。
【0036】
圧力導管270(存在するならば)及び/又は送達器具230に提供された圧力、及び、真空導管220及び低圧チャネル222内の真空は、個別に制御することができ、皮膚250に対して装置200の良好な接着を提供し、皮膚250へ治療剤の所望の送達を行い、一方、装置200の皮膚表面250上の移動も容易にする。例えば、これらの導管に加えられる圧力又は真空の量は、従来のバルブ器具及び/又は圧力コントローラを使用して、設定し又は変動できる。圧力及び/又は真空は、そのような動きを容易にするために、随意にパルス化されてもよい。
【0037】
送達器具230の流出口280は、図2bに示されたものに類似して、単一の開口部として設けることができる。あるいは、流出口280は、図2dに示されるように、複数のより小さな開口部又はノズルとして構成されてよい。流出口280のより小さな開口部を使用して、より高い局所圧力で治療剤を送達することができ、それは、そのような薬物の毛包領域内に及び随意に皮脂腺内への浸透を容易にする。例えば、流出孔は、約50μm〜約500μmの横方向サイズ又は直径を有してもよい。したがって、任意の開口部又はノズルを通って提供されてもよい治療剤の流れは、約1000μm未満のサイズ、例えば約500μm未満、又は、約50μmほどの大きさ、又は、随意に約50μm未満のサイズを有することができる。単数又は複数の送達の流れを使用して、少なくとも部分的に開いた脂腺内に溶液また薬物を押し出すことができる。
【0038】
振動器具212を随意に装置200に設けてもよい。振動器具212は、ハウジング210に機械的に連結できて、装置200が使用されるときに、ハウジング内で例えば下部表面260に振動を発生させるように構成できる。振動器具212は、例えば、回転シャフトに設けられた偏心分銅、圧電素子、又は、振動を生成するように構成されたいずれかの従来の装置を含むことができる。振動器具212によって発生した振動は、使用の際に、装置200が皮膚組織250上を平行移動することを容易にする。皮膚250の表面近くに存在してもよい皮脂及び/又は他の懐死組織片を、分解し、軟化し、及び/又は、除去することも助ける。皮脂及び/又は懐死組織片のそのような除去は、下記により詳細に記載される。
【0039】
振動器具212は、約50〜1000μmの又は約100〜500μmの振幅を有することができる。誘発される振動の周波数は、約1Hz〜約10kHzでよい。ある特定の実施態様では、他の振動パラメータを用いてもよい。特定の振動パラメータは、装置200の特性、例えば、装置200及び/又は下部表面260のサイズ、真空導管220及び/又は送達器具230のサイズ及び形状、これらの構造物に提供される圧力等、に基づいて選択できる。振動器具212は、振動の振幅及び/又は周波数を調整するように構成された電気回路を含むことができる。振動器具212は、随意に、本明細書に記載された本発明の他の実施態様に含まれてよい。
【0040】
さらなる実施態様において、図3aに示される装置300は、毛包へ及び随意に関連皮脂腺へ薬物を送達するために提供される。装置300は、図2aに示された装置200に類似して、ハウジング310、真空導管320、及び送達器具330を含む。ハンドル340をハウジング310に接着することができ、又は、ハウジング310の一部として形成することができ、装置300の操作を容易にする。送達器具330は、送達チューブ335を通して治療剤の供給源又は貯留層(図示せず)に連通して設けることができ、真空導管320及び低圧チャネル322は、真空チューブ325を通して真空又は低圧の供給源(図示せず)に連通して設けることができる。
【0041】
装置300の下部表面360の例示的な構成が、図3bに示されている。下部表面360は、図3bに示されるように、実質的に正方形又は長方形の形状を有してよく、また、他の形状を用いてもよい。真空導管320の下部及び下部表面360は、低圧チャネル322を形成し、これは、一般に下部表面360の周囲のほぼ近くにあってもよい。送達器具330の流出口380は、下部表面360を通って延出する細長いスリットとして構成できる。このようなスリットは、送達器具330を通って送達される治療剤のために高い送達圧力を提供できて、装置300の下部表面360が図3bに示される矢印の方向に皮膚表面上を横断するときに、皮膚の広い領域にわたる送達が容易に適用される。
【0042】
図3cに示されている、さらなる実施態様において、送達器具330の流出口380を、下部表面360を通って延出する複数の細長いスリットとして構成できる。スリットは、図3cに示されるように、1つ又はそれ以上の列に配列することができ、又は、他の構成を用いてもよい。このようなスリットもまた、送達器具330を通って送達される治療剤のために高い送達圧力を提供できる。
【0043】
別の実施態様において、装置300は、図2cに示されている圧力導管270に類似した圧力導管を含むことができる。この圧力導管を、装置300の下部表面360に低圧チャネル322の近くに設けることができ、圧力導管内のガス圧力は、流出口380を通って提供される加圧された治療剤とは実質的に無関係に、装置300が皮膚表面上を横断することを容易にするために制御及び/又は調整できる。
【0044】
毛包へ及び随意に関連皮脂腺へ薬物を送達するために使用できる装置400のさらなる実施態様が、図4aに概略的に示されている。装置400は、ハウジング410、真空導管420、及び送達器具430を含む。装置400の下部表面460は、例えば、ハウジング410に貼付することができ、又は、その一体的部分として形成できる。送達器具430に位置する物質が下部表面460を通って移動することを可能にする流出口480を設けることができる。真空導管420の下部及び下部表面460を、低圧チャネル422を形成する。ハウジング410は、装置400の操作を容易にし、例えば、治療すべき皮膚の領域上でそれを平行移動させるハンドル440を含むことができる。送達器具430は、送達チューブ435を通して治療剤の供給源又は貯留層(図示せず)に連通して設けることができる。
【0045】
真空導管420及び低圧チャネル422は、真空チューブ425を通して真空ポンプ又は低圧源(図示せず)に連通して設けることができる。低圧チャネル422内の圧力は、使用の際に、皮膚と装置400の下部表面460との間に良好な接触を実質的に維持するほど十分に低いことが好ましい。大気圧より低いいずれかの圧力を、真空導管420内に提供できる。圧力は、約11psiよりも大きい(例えば、約−0.8気圧よりも大きい)ことが好ましい。これよりも低い圧力に皮膚組織をさらすことは、点状出血及び/又は皮膚の挫傷を発生させることがある。しかし、そのような低圧にさらされた組織の領域の近くに加圧環境(例えば、大気圧より大きい圧力)を適用することにより、挫傷又は出血の可能性を減少することができる。そのようなより高い圧力は、例えば、図2cに示された加圧された導管270と同様に、導管480を通って及び/又は低圧チャネル422の近くに設けられた加圧された流出口によって、送達器具430から送達されている加圧された薬物によって、提供できる。
【0046】
装置400は、加熱器具490をさらに含む。加熱器具490は、従来の抵抗ヒータ又は他の加熱装置を含むことができ、オン/オフスイッチ及びコントローラ、例えば、自動温度調節コントローラ等を含むことが好ましい。加熱器具490は、表面に近い皮膚組織を加熱する接触エネルギ又は放射エネルギを提供できる。例えば、加熱器具490は、電気抵抗加熱、赤外線又は他の光加熱(例えば、複数のLED、レーザダイオード、ランプを使用する)、超音波、又は、皮膚及び/又は皮脂によって吸収される1つ又はそれ以上の波長でエネルギを発するように構成された他の供給源、相変化又は化学反応加熱(例えば、装置内のチャンバに1つ又はそれ以上の温反応薬物又は発熱反応薬物を提供する)、等を含む。
【0047】
加熱器具490のサイズ、持続時間、温度(導電性接触加熱のために)又は放射照度の露出パラメータ、波長、及び放射加熱用の露出時間は、装置400が合理的な/典型的な操作速度で皮膚上を動くときに皮脂及び懐死組織片が十分に加熱されそれらを軟化し及び/又はその除去を容易にするように、選択されることが好ましい。そのような速度は、例えば、約1cm/秒程度でありうるが、より高い速度又はより低い速度を使用することもできる。加熱器具490は、毛包領域内に蓄積した皮脂を加熱して軟化することによって、毛包領域内に及び随意に皮脂腺内に治療剤を導入することを容易にする。この皮脂の一部はまた、下記により詳細に記載されるように、装置400を使用して除去してもよい。
【0048】
装置400の下部表面460の例示的な構成は、図4bに示されている。送達器具430の流出口480は、下部表面460の中心領域に位置している。真空導管420の下部及び下部表面460は、下部表面460に低圧チャネル422を形成し、これは、下部表面460の周囲のほぼ近くにあってもよい。加熱器具490に近い低圧チャネル422の一部422aは、下記により詳細に記載されるように、皮膚の皮脂の除去を容易にするように、低圧チャネル422の他の部分より広くてもよい。ある特定の実施態様では、2つ又はそれ以上の低圧チャネル422が設けられてもよい。このようにして、例えば、図4bに示された低圧チャネル422のより広い部分422aを、低圧チャネル422のより狭い部分とは別の第2のチャネルとして随意に設けることができる。
【0049】
加熱器具490の表面は、下部表面460と実質的に同一平面上にあるように構成されることが好ましく、装置400の下部表面460が皮膚上に置かれるときにそれが皮膚表面と接触するようにする。別の実施態様では、加熱器具490は、下部表面460の一部より上に、例えばハウジング410内に位置させることができ、下部表面460の一部及び下部表面460の加熱された部分に接触する皮膚の領域を加熱するように構成できる。
【0050】
さらなる実施態様において、装置400は、図4cに示されるているように、装置400の下部表面460に低圧チャネル422の少なくとも一部の近くに圧力導管470を含むことができる。圧力導管470は、図2cに示されている加圧導管270と同様であってよく、低圧チャネル422に真空又は低圧が存在するときに装置400が皮膚表面上を平行移動することを容易にするために、及び/又は、低圧にさらされる皮膚の挫傷を減少又は防止するために、設けられてもよい。加圧ガス、例えば、空気、窒素等の供給源を、ホース、チュービング等を使用して、圧力導管470へ提供することができ、ガス圧力は従来のバルブ器具を使用して制御できる。圧力導管470に提供された圧力は、装置400の平行移動を容易にするために、随意にパルス化されてもよい。
【0051】
圧力導管470の配置及び真空導管420に対する位置は、図4cに示された構成から変動させてもよい。一般に、装置400の下部表面460を通って進む圧力導管470の部分を、低圧チャネル422の部分の近くに位置することが好ましい。例えば、圧力導管470を、下部表面460の低圧チャネル422の部分に実質的に平行に設けられる複数のチャネルとして構成してもよい。そのような近接により、上述のように低圧チャネル422と皮膚表面との間に形成され得る真空封入の間歇的な中断が容易になり、及び、真空導管420に低圧が存在するときに装置400が皮膚上をより容易に平行移動できるようにする。
【0052】
図4dは、皮膚450に位置する1つ又はそれ以上の皮脂腺495内に治療物質433を送達する装置400の例示的な使用を説明する。装置400は、皮膚450の表面に置かれる。低圧チャネル422は、真空導管420に低圧が提供されるときに装置400の下部表面460と皮膚450との間の良好な接触を促進する。装置400は、図4dの矢印によって示された方向に皮膚450の表面上を平行移動できる。
【0053】
装置の前方位置に設けられた加熱器具490は、皮膚450のターゲット領域に最初に接触し、ターゲット領域に位置する皮脂492及びいずれかの関連懐死組織片を加熱するように制御できる。そのような加熱により、例えば皮脂492のワックスエステルの粘性を溶融するか減少することによって、毛包開口部及び皮脂腺495へのアクセスを阻止する、皮脂腺495内に又はその近くに存在し得る皮脂492を軟化することができる。
【0054】
例えば、皮膚450のターゲット領域は、約37°C〜約47°Cの温度に加熱できる。皮膚組織450をより高い温度に加熱することもまた実施できる。加熱温度は、好ましくは、約35°Cより高くてもよく、これは、身体の中核体温よりわずかに低くてもよいが皮膚450の典型的な表面温度より高くてもよい。好ましくは、皮膚450のターゲット領域は、周囲の真皮組織に不可逆性熱損傷が発生する可能性を避けるために、約65°C未満である温度に加熱される。皮脂腺495は一般に、皮膚450の表面から約1〜2mmの深さに位置している。皮膚450を通る伝導による皮脂腺495のレベルへの熱伝達には、加熱されている特徴物の深さに依存して、数秒又はそれ以上を必要とするだろう。
【0055】
治療すべき皮膚450の予熱は、本明細書に記載された本発明の特定の実施態様にしたがって、装置を使用する前に随意に実施できる。例えば、加熱された皮膚450へ装置200、300、400を適用する前に、放射加熱又は例えば加熱されたパッド、蒸しタオル等を使用する接触加熱を皮膚450に実施できる。ある特定の実施態様において、そのような予熱は、例示的な装置400に加熱器具490を設ける代わりに、実施できる。あるいは、そのような予熱は、そのような加熱器具490を使用することに加えて、実施できる。
【0056】
装置400が皮膚450を移動するにつれて、低圧チャネル422の前方部分422a(随意に、低圧チャネル422の他の部分より広くてもよい)が加熱組織上を進み、低圧が、加熱された皮脂492及び/又は懐死組織片の一部を軟化し、及び/又は、皮脂腺495、毛包及び/又は皮膚450の孔から除去されることを容易にする。真空手順もまた、皮脂腺495及び/又は毛包の管に存在するかもしれない妨害物を除去することができ、それは、本明細書に記載された加熱器具490を含まない本発明の他の実施態様で達成されてもよい。
【0057】
毛包領域内の皮脂492及び/又は他の懐死組織片の除去は、例えば、側方向成分を有する毛包の近傍に(例えば、皮膚表面に平行に)力を加えることによって高めることができ、インフィディブラム(infidibulum)内の物質を絞り出すことができるようにする。そのような力は、装置が皮膚450を平行移動するときに装置400の下部表面460の縁によって加えられてもよい。低圧チャネル422の低圧により、装置が平行移動するときに、皮膚450を装置400の下部表面460に対して引き寄せることができ、これにより、そのような除去の効果が増大する。
【0058】
送達器具430の流出口480は、図4bに示されるように、低圧チャネル422の広い部分422aの後ろに(図4dの矢印に示される装置400の好適な平行移動方向に対して)位置付けることができる。流出口480の幅は、低圧チャネル422の広い部分422aの幅と同様であることが好ましく、例えば、図4bに示されるように、わずかに狭くてもよい。装置400は皮膚450上を移動し続けるので、送達器具430に圧力下で提供される治療剤433は、導管480を通ってターゲット領域の毛包領域内に、例えばそこから皮脂492及び懐死組織片が予め軟化されていてもよく及び/又は除去されていてもよい、皮脂腺495内に押し出すことができる。皮脂492の除去により、そのような治療剤433が毛包及び/又は皮脂腺495内により深く浸透するのを容易にする、より開いた経路を生成できる。
【0059】
治療剤433は、圧力下で送達器具430に提供されることが好ましい。ある特定の実施態様において、2つ又はそれ以上の異なる種類の治療剤433を送達するように構成される複数の送達器具430及び/又は流出口480を設けることができる。送達器具430は、貯留層、カートリッジ等を含んでもよく、それは、治療剤433を含むように構成されていて、ハウジング410内に位置してもよく、又は、その一部として形成されてもよい。治療剤433は、例えば手動ポンプ又は電気ポンプ等の圧力源、ピストン、又は送達器具433に連通して設けられた加圧ガスライン等を使用して、加圧できる。
【0060】
ある特定の実施態様において、流出口480は、治療剤433の1つ又はそれ以上の小さな流れを皮膚表面450にそして毛包領域及び/又は皮脂腺495内に導くように構成され、下部表面460を通る1つ又はそれ以上のより小さなノズル、オリフィス、ジェット又はスリットの形態で設けることができる。そのようなノズル又はジェットは、実質的に直線配列に(例えば、単一の列に)設けることができ、装置が皮膚表面上を移動するときに、皮膚表面の大きな部分を流れに露出させる。あるいは、ジェット又はノズルは、二次元配列に配置することができ(例えば、ノズル、ジェット、スリット等の2つ又はそれ以上の列)、装置400が皮膚表面450上を平行移動するときに、加圧された治療剤433の複数の流れに皮膚表面450をより大きく露出させる。
【0061】
さらなる例示的な実施態様において、装置400は、複数の低圧チャネル422及び/又は送達器具430及び流出口480を含むことができ、それは、装置400がその毛包又は孔上を平行移動するときに、特定の毛包又は孔が、加圧された薬物の低圧除去及び送達の1サイクル以上に露出されるように構成されてもよい。複数の加熱器具490を設けることもできる。このような例示的な構成は、皮膚加熱、皮脂の除去、及び/又は、治療物質の送達の効果を改善できる。あるいは、装置400(又は、本発明の実施態様にしたがったいずれの装置)は、加熱、皮脂除去、及び/又は、治療物質の送達の複数サイクルを発生させるために、複数回、治療すべき皮膚の領域上を平行移動してもよい。
【0062】
本発明にしたがった装置500のさらなる実施態様が図5に示されている。装置500は、ハウジング510、真空導管520、低圧チャネル522(随意に、広い部分522aを含む)、送達器具530、及び加熱器具590を含む。ハウジング510は、装置500の操作を容易にするハンドル540を含むことができる。装置500の下部表面560は、ハウジング510に貼付することができ、又は、その一体的な部分として形成できる。
【0063】
送達器具530は、治療剤533を保持するように適合された貯留層、カートリッジ、封入物等を含むことができる。送達器具530は、送達チューブ535を通して圧力源に連通して設けることができ、治療剤533を装置500の下部表面560に位置する流出口580から皮膚内に圧力下で送達できるようにする。制御導管538を、例えば図5に示されるように、送達器具530に連通して設けてもよい。制御導管538の遠位端が、装置500上の1つ又はそれ以上の場所で装置500の下部表面560を通って進むことができる。
【0064】
制御導管538は、送達器具530内の治療剤533を加圧するための制御弁として作用できる。例えば、装置500の下部表面560が皮膚表面に接触して置かれるときに、制御導管538の遠位端を封鎖することができ、送達チューブ535を通って提供された加圧ガスが治療剤533の幾分かを流出口580を通過することを可能にする。装置500の下部表面560が皮膚表面に接触しないときには、加圧ガスは制御導管538を通ってその妨げられていない遠位端からより容易に流れ、それによって、皮膚表面の近くにはないときに治療剤533が流出口580から押し出されることを防止する。制御導管538に加えて又はその代わりに手動スイッチ又は弁もまた設けられてよく、加圧された治療剤533が流出口580を通って治療すべき皮膚の領域内に送達されるのを制御する。制御導管538はまた、治療剤533の適用を制御するために、本明細書に記載された本発明の他の実施態様に設けることもできる。
【0065】
収集器具528が、真空チューブ525及び真空導管520に連通して設けられていてもよい。収集器具528は、治療されている皮膚から真空導管520を通って回収してもよい皮脂又は他の物質を捕捉して、一方、真空導管520及び低圧チャネル522へ低圧を提供する真空チューブ525を通って皮脂が進むことを妨害するように構成できる。収集器具528は、図5に示されているように、装置500のハウジング510内に又はハウジング510の外部に設けることができる。収集器具538はまた、本明細書に記載された本発明の他の実施態様に設けられてもよい。
【0066】
本願に記載された本発明の様々な実施態様にしたがって、皮膚の毛包、孔及び/又は皮脂腺へ薬物を送達するための装置は、使い捨て装置として提供できる。例えば、このような装置は、本明細書に記載されるように、1つ又はそれ以上の真空導管及び関連流出口を備えた送達器具を含むハウジングとして提供できる。装置は、それぞれ真空チューブ及び送達チューブを通して低圧又は真空の供給源及び圧力源に接着するように構成できる。ハウジングは、1つ又はそれ以上の治療物質を含む1つ又はそれ以上のカートリッジ、バイアル等を受け入れるように構成できる。ハウジングはまた、それに貼付される着脱自在及び再利用可能な加熱器具を受け入れるようにも構成できる。収集器具もまた、ハウジング内に含有できる。
【0067】
使用の際に、治療剤を含むカートリッジを、薬物が送達器具に連通するように装置に貼付できる。高圧源及び低圧源もまた、装置に接着できる。任意の加熱器具もまた、装置に貼付できる。装置は、次いで、本明細書に記載されているように、皮膚表面に適用できて、皮膚の孔及び/又は毛包領域内に治療剤を適用し、随意に、存在する皮脂の一部を軟化し及び/又は除去する。使用後に、カートリッジ及び加熱器具は装置から取り外すことができ、装置は低圧源及び高圧源から外すことができる。装置は次いで廃棄することができ、一方、加熱器具及び/又はカートリッジは、さらなる治療のために新しい装置とともに使用できる。
【0068】
毛包内及び/又は皮脂腺内に送達されるときに所望の効果を生み出すことができるいずれの治療剤(例えば、にきび治療に限定されない)が、本発明の実施態様に使用できる。そのような治療剤は、本明細書に記載された例示的な方法及び装置を使用して、従来の局所適用と比較して、より効果的に毛包内及び/又は皮脂腺内に浸透させることができる。
【0069】
例えば、使用できる1つの治療剤は、にきび疾患を治療するための局所レチノイド(例えば、トレチノイン)である。にきび治療、脱毛治療等用のPDTに使用されるALA又は他の化合物、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載されたもの等もまた使用できる。ビタミンA又は過酸化ベンゾイルの局所用溶液を毛孔性角化症を治療するために使用できる。脱毛又は様々な皮膚病変の治療等の様々な使用のための局所用溶液として市販されている他の治療剤もまた、本発明の実施態様に使用できる。例えば、ミノキシジル、アゼライン酸及び/又はジヒドロテストステロン(dyhydrotestosterone)(DHT)ブロッカー等の薬物を含む脱毛治療用の溶液を使用できる。抗菌剤金属ナノ粒子、例えば、特許文献4に記載されたもの等を含む治療剤も使用できる。発色団、例えば、外因性発色団を含む治療剤、例えば、PDT処置に使用するために特許文献5に記載されたもの等もまた、本発明の実施態様で使用できる。そのような薬物及び/又はそのような薬物を使用する処置は、毛包領域又はその特定部分へより効果的に送達できるならば、より効果的でありうる。
【0070】
本明細書に記載されたいずれか又はその組み合わせを含む、様々な治療剤もまた、本発明の実施態様を使用して適用できる。したがって、そのように適用された治療剤の量及び/又は濃度を減少しても、依然として類似した効果を提供できる。このアプローチはまた、治療すべき毛包の領域内により特異的に治療剤を送達することもできるので、局所用溶液の効能を改善できて及び/又は望ましくない副作用の発生を減少することもできる。いくつかの適用において、十分な程度の予熱、真空及び加圧送達を使用して、若干量の治療剤を皮脂腺内に送達することが可能になる。
【0071】
前述は、本発明の本質の単なる説明にすぎない。記載された実施態様に対する様々な修正及び変更は、本明細書の教示を考慮して当業者には明らかであろう。よって、当業者は、本明細書に明白に記載されていないが、本発明の本質を具体化し、よって本発明の精神及び範囲内にある多数の技術を考案できることを認識されるだろう。本明細書に引用されたすべての特許及び刊行物は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚組織の表面に接触するように構成されているハウジング;
ハウジングの下部表面に設けられた少なくとも1つの開口部;
高圧下で少なくとも1つの開口部を通って皮膚組織へ薬物を送達するように構成され、ハウジング内に設けられた送達器具;及び
少なくとも1つの開口部の少なくとも一部の近くの少なくとも1つの低圧チャネル:
を含有してなり、
そこでは低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されると、少なくとも1つの開口部を皮膚組織の表面に対して位置決めするように構成されている、
皮膚組織へ薬物を送達するための装置。
【請求項2】
装置が、皮膚組織の表面に沿って平行移動するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの低圧チャネルが、さらに皮膚組織に送達された薬物の一部を回収するように構成されている、請求項1又は2の何れか一項に記載の装置。
【請求項4】
装置の下部表面が皮膚組織の表面に接触していないときに、薬物の送達を防止するように構成されている送達制御器具をさらに含有してなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
下部表面に沿って低圧チャネルの少なくとも一部の近くに高圧チャネルをさらに含有してなり、そこでは高圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに、装置が皮膚上を平行移動することを容易にするように構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
高圧チャネル内の圧力が、変動されるか又はパルス化されるかの少なくとも一方であるように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
送達器具又は低圧チャネルの少なくとも一方の圧力が、変動されるか又はパルス化されるかの少なくとも一方であるよう構成されている、請求項1〜6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
下部表面の少なくとも一部に熱接触して設けられている加熱器具をさらに含有してなる、請求項1〜7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの低圧チャネルが、皮膚に存在する皮脂又は懐死組織片の少なくとも1つを除去するように構成されている、請求項1〜8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
ハウジングに機械的に連結された振動器具をさらに含有してなり、そこでは振動器具は、装置が皮膚表面上を平行移動することを容易にするか、又は皮膚に存在する皮脂及び/又は懐死組織片の除去を容易にするか、の少なくとも一方であるように構成されている、請求項1〜9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
薬物が、光線力学療法に使用できる光増感剤又は光増感剤前駆物質の少なくとも1つである、請求項1〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
薬物が、育毛に影響を与えることができる治療剤である、請求項1〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
薬物が、にきびを治療するために使用できる治療剤である、請求項1〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
高い圧力下で、基板の少なくとも1つの開口部を通って皮膚組織へ薬物を送達すること;及び
少なくとも1つの開口部の少なくとも一部の近くに基板の下部表面に沿って少なくとも1つの低圧チャネルを提供することを含有してなり、
そこでは低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに、皮膚組織の表面の近くに基板の下部表面を保持するように構成されている、
皮膚組織へ薬物を送達する方法。
【請求項15】
皮膚組織の表面で基板を平行移動することをさらに含有してなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基板の下部表面に沿って低圧チャネルの少なくとも一部の近くに少なくとも1つの高圧チャネルを提供することをさらに含有してなり、そこでは高圧チャネルは、皮膚組織の表面で前記基板を平行移動することを容易にするよう構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
薬物を送達する前に、皮膚組織の一部を加熱することをさらに含有してなる、請求項14〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
低圧チャネルを使用して、皮膚組織から皮脂又は懐死組織片の少なくとも1つを除去することをさらに含有してなる、請求項14〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
高い圧力又は低圧チャネルの圧力を変動すること又はパルス化することの少なくとも一方をさらに含有してなる、請求項14〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
薬物が、にきび、毛孔性角化症又は脱毛の少なくとも1つを治療するために使用できる治療化合物を包含している、請求項14〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
高い圧力下で基板の少なくとも1つの開口部を通って対象の皮膚組織へ治療有効量の薬物を送達すること;及び
少なくとも1つの開口部の少なくとも一部の近くに基板の下部表面に沿って少なくとも1つの低圧チャネルを提供することを含有してなり、そこでは低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに、皮膚組織の表面の近くに基板の下部表面を保持するように構成されていて、
それによって、対象の皮膚疾患を治療する、
皮膚疾患を有する対象を治療する方法。
【請求項22】
皮膚疾患が、にきび、毛孔性角化症、及び脱毛よりなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
薬物が、光線力学療法に使用できる、光増感剤又は光増感剤前駆物質の少なくとも1つである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
薬物が、育毛に影響を与えることができる治療剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
薬物が、にきびを治療するために使用できる治療剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
皮膚組織の表面で前記基板を平行移動することをさらに含有してなる、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
基板の下部表面に沿って低圧チャネルの少なくとも一部の近くに少なくとも1つの高圧チャネルを提供することをさらに含有してなり、
そこでは高圧チャネルは、皮膚組織の表面で基板が平行移動することを容易にするよう構成されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
薬物を送達する前に、皮膚組織の一部を加熱することをさらに含有してなる、請求項21〜27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
低圧チャネルを使用して、皮膚組織から皮脂又は懐死組織片の少なくと1つを除去することをさらに含有してなる、請求項21〜28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜13の何れか一項に記載の装置、及び請求項14〜29の何れか一項に記載の方法にしたがって使用するための指示書を含有してなる、キット。
【請求項1】
皮膚組織の表面に接触するように構成されているハウジング;
ハウジングの下部表面に設けられた少なくとも1つの開口部;
高圧下で少なくとも1つの開口部を通って皮膚組織へ薬物を送達するように構成され、ハウジング内に設けられた送達器具;及び
少なくとも1つの開口部の少なくとも一部の近くの少なくとも1つの低圧チャネル:
を含有してなり、
そこでは低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されると、少なくとも1つの開口部を皮膚組織の表面に対して位置決めするように構成されている、
皮膚組織へ薬物を送達するための装置。
【請求項2】
装置が、皮膚組織の表面に沿って平行移動するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1つの低圧チャネルが、さらに皮膚組織に送達された薬物の一部を回収するように構成されている、請求項1又は2の何れか一項に記載の装置。
【請求項4】
装置の下部表面が皮膚組織の表面に接触していないときに、薬物の送達を防止するように構成されている送達制御器具をさらに含有してなる、請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
下部表面に沿って低圧チャネルの少なくとも一部の近くに高圧チャネルをさらに含有してなり、そこでは高圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに、装置が皮膚上を平行移動することを容易にするように構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
高圧チャネル内の圧力が、変動されるか又はパルス化されるかの少なくとも一方であるように構成されている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
送達器具又は低圧チャネルの少なくとも一方の圧力が、変動されるか又はパルス化されるかの少なくとも一方であるよう構成されている、請求項1〜6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
下部表面の少なくとも一部に熱接触して設けられている加熱器具をさらに含有してなる、請求項1〜7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの低圧チャネルが、皮膚に存在する皮脂又は懐死組織片の少なくとも1つを除去するように構成されている、請求項1〜8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
ハウジングに機械的に連結された振動器具をさらに含有してなり、そこでは振動器具は、装置が皮膚表面上を平行移動することを容易にするか、又は皮膚に存在する皮脂及び/又は懐死組織片の除去を容易にするか、の少なくとも一方であるように構成されている、請求項1〜9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
薬物が、光線力学療法に使用できる光増感剤又は光増感剤前駆物質の少なくとも1つである、請求項1〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
薬物が、育毛に影響を与えることができる治療剤である、請求項1〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
薬物が、にきびを治療するために使用できる治療剤である、請求項1〜10の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
高い圧力下で、基板の少なくとも1つの開口部を通って皮膚組織へ薬物を送達すること;及び
少なくとも1つの開口部の少なくとも一部の近くに基板の下部表面に沿って少なくとも1つの低圧チャネルを提供することを含有してなり、
そこでは低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに、皮膚組織の表面の近くに基板の下部表面を保持するように構成されている、
皮膚組織へ薬物を送達する方法。
【請求項15】
皮膚組織の表面で基板を平行移動することをさらに含有してなる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基板の下部表面に沿って低圧チャネルの少なくとも一部の近くに少なくとも1つの高圧チャネルを提供することをさらに含有してなり、そこでは高圧チャネルは、皮膚組織の表面で前記基板を平行移動することを容易にするよう構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
薬物を送達する前に、皮膚組織の一部を加熱することをさらに含有してなる、請求項14〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
低圧チャネルを使用して、皮膚組織から皮脂又は懐死組織片の少なくとも1つを除去することをさらに含有してなる、請求項14〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
高い圧力又は低圧チャネルの圧力を変動すること又はパルス化することの少なくとも一方をさらに含有してなる、請求項14〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
薬物が、にきび、毛孔性角化症又は脱毛の少なくとも1つを治療するために使用できる治療化合物を包含している、請求項14〜19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
高い圧力下で基板の少なくとも1つの開口部を通って対象の皮膚組織へ治療有効量の薬物を送達すること;及び
少なくとも1つの開口部の少なくとも一部の近くに基板の下部表面に沿って少なくとも1つの低圧チャネルを提供することを含有してなり、そこでは低圧チャネルは、減少した圧力が低圧チャネルに提供されるときに、皮膚組織の表面の近くに基板の下部表面を保持するように構成されていて、
それによって、対象の皮膚疾患を治療する、
皮膚疾患を有する対象を治療する方法。
【請求項22】
皮膚疾患が、にきび、毛孔性角化症、及び脱毛よりなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
薬物が、光線力学療法に使用できる、光増感剤又は光増感剤前駆物質の少なくとも1つである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
薬物が、育毛に影響を与えることができる治療剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
薬物が、にきびを治療するために使用できる治療剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
皮膚組織の表面で前記基板を平行移動することをさらに含有してなる、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
基板の下部表面に沿って低圧チャネルの少なくとも一部の近くに少なくとも1つの高圧チャネルを提供することをさらに含有してなり、
そこでは高圧チャネルは、皮膚組織の表面で基板が平行移動することを容易にするよう構成されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
薬物を送達する前に、皮膚組織の一部を加熱することをさらに含有してなる、請求項21〜27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
低圧チャネルを使用して、皮膚組織から皮脂又は懐死組織片の少なくと1つを除去することをさらに含有してなる、請求項21〜28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜13の何れか一項に記載の装置、及び請求項14〜29の何れか一項に記載の方法にしたがって使用するための指示書を含有してなる、キット。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【公表番号】特表2012−527967(P2012−527967A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513193(P2012−513193)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036156
【国際公開番号】WO2010/144257
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/036156
【国際公開番号】WO2010/144257
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(506286973)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレーション (27)
【氏名又は名称原語表記】THE GENERAL HOSPITALCORPORATION
【住所又は居所原語表記】55 Fruit Street, Boston, MA02114 (US).
【Fターム(参考)】
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