説明

薬物及び発酵生成物の発見のための海洋放線菌分類群

【課題】放線菌目に属する海洋細菌の新規分類群の発見、ならびに医薬組成物、農薬、免疫調節因子、酵素及び酵素阻害物質として使用するためのタンパク質、二次代謝産物、及び生体分子を発見及び生成するための海洋放線菌分類群の提供。
【解決手段】海水(Na)を生長のための必須要件とするSalinosporaという新属名が付けられた放線菌の属、及び独特の16S rRNAサインヌクレオチドの発見。また、薬剤、農薬、免疫調節因子、酵素及び酵素阻害物質等の活性生体分子を生成及び発見するためのSalinospora属の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放線菌目に属する海洋細菌の新規分類群の発見、ならびに医薬組成物、農薬、免疫調節因子、酵素及び酵素阻害物質として使用するためのタンパク質、二次代謝産物、及び生体分子を発見及び生成するためのこの分類群の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
放線細菌綱に属する微生物(一般に放線菌と呼ばれる)は、分類学上はグラム陽性細菌に属しており、地球環境において広範囲に存在している。放線菌は、多様な生物学的に活性な代謝産物を多く生じる多産な原料である。これらは、食品産業から製紙業に至る様々な産業的用途で使用するための薬品、農薬、低分子量酵素阻害物質、免疫調節因子、及び酵素を含む多くの有用な生成物の原料であった。またこれらの微生物は、病原体からの保護及び生長促進のための手段として農業においても有用であった。過去60年の間に土壌放線菌から多くの有用な物質が発見されたが、一般的な土壌種は既に発見された代謝産物を生成することが多いので、新規生成物の収率は激減した。この理由により、有用な生成物の新しい原料を提供するような新しい放線菌分類群を発見するための多大な努力が行われてきた(Bullら,2000)。
【0003】
放線細菌は、数多くある細菌の綱の1つである。放線細菌綱はさらに6つの目(10の亜目に分類することができる放線菌目を含む)に細かく分類することができる。分類学的新規性を決定する古典的な方法は、形態学的特徴及び生理学的特徴、例えば色、菌糸体の有無、菌糸の枝分かれの特徴、胞子のパターン及び運動性、温度変化に対する耐性、塩度及びpH、ならびに様々な基質の利用能等を含む。これらの特徴は、今なお分類学的分析の重要な構成要素であるが、菌株の独自性を確立するための、新しいより信頼できる方法は16S rDNA配列分析であり、これは単離株についての進化論的情報も提供する(Stackebrandtら,1997)。
【0004】
放線細菌綱の中のある菌株の構成員は、ほぼ完全な16S rDNA配列を放線細菌綱の最も深く枝分かれしている一員と比較して測定した際に16S rDNA配列の類似性値が80%を超えること、及びサインヌクレオチドが存在することによって示される(Stackebrandt,1997)。ある分類群に特徴的なサインヌクレオチドは、その分類群のメンバーの95%を超えるメンバーにおいてそのヌクレオチドが存在することを基準に選択される。16Sサインヌクレオチド配列は、細菌目の定義から、科から属へのさらに細かい分類に至るまで、様々な分類レベルについて使用することができる。この方法は、細菌の進化の効果的な数学的モデル、及び分類体系の中の分類学的地位を細菌に割り当てるための、主観的ではなく客観的な法則を提供する。
【0005】
地表の70%を海が覆っているという事実にもかかわらず、これまでに発見された全ての既知の放線菌属は陸生のものであった。実際に、これまでに海洋放線菌はたった1種しか記載されておらず(Helmke及びWeyland,1984)、この種は周知の陸生属に属するものである。海洋堆積物から幾つかの放線菌が培養されたが、海洋単離株は、海に流出した休眠陸生胞子に由来するものと広く信じられている(Goodfellow及びHaynes,1984)。「流出(wash−in)」説が唱えられているのは、海洋単離株の生長に海水を必要とせず、陸生種と密接に関係しており、また陸から距離が離れるにつれて数が減少する傾向にあるからである(Goodfellow及びWilliams,1983)。多くの陸生放線菌は高い塩度及び圧力に耐えることができるため、またこれらの分布及び生理機能により、多くの放線菌が海中に洗い流され、これらが胞子として長期間生存することができる場所となる堆積物の中で回収されたと結論づけられた(Goodfellow及びHaynes,1984)。これらの形式の研究によって、海洋放線菌は陸上の放線菌とは大きな違いがなく、従って新規な産業製品の原料としての利用価値がほとんどないと一般的に信じられるようになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要約)
本発明は、新属名Salinosporaという名が提案されている最初の主要な偏性海洋放線菌分類群の、発見、単離及び特徴付けである。この属に属するメンバーは、以下に挙げる一連の主な特徴によって簡単に識別される:
1.ナトリウム(海水)を生長のための必須要件とすること;
2.5つの16S rRNAサインヌクレオチド(表3)のうち少なくとも4つが存在すること、及び16S rRNA系図法を用いるとSalinospora分岐群(クレード)と系統発生学的に密接な関連があること;
3.典型的には以下に挙げる形態学的特徴を含む特徴を有すること
a)コロニーの色がオレンジ色から褐色である、
b)気中菌糸体が全くもしくは殆どない、
c)コロニー表面を黒くする、拡散性のメラニン様色素及び胞子、
d)単独でまたは塊になって生成される胞子を有する、細かく分かれた断片化されていない菌糸;
4.2000年9月27日にATCC(American Type Culture Collection;12301 Parklawn Drive;Rockville,メリーランド 20852)の番号ATCC PTA−250とされた基準株に匹敵すること。
【発明の効果】
【0007】
Salinospora群の発見は、海洋環境における放線菌についてのこれまでの概念に異論を呈するものであり、独特な偏性海洋放線菌の主要な集団が海の堆積物の中に広く存在するという初めての決定的証拠を提供する。Salinospora群のメンバーの化学的研究により、新規化合物が単離され、また生物学的に活性な抽出物が例外的に高い収率で回収された。このことは、これらの微生物が薬物の発見及び他の産業的用途に利用できることを示している。
【0008】
本発明は、医薬組成物、農薬、免疫調節因子、酵素、及び酵素阻害物質において使用するためのタンパク質、二次代謝産物及び他の生物分子を発見ならびに作製するためのこの新規分類群の使用に関する。放線菌自体から活性分子を精製することもできるし、生育培地から代謝産物を精製してもよい。この属は、多くの薬理活性(例えば抗真菌性、抗菌性及び抗癌性)を示す活性生体分子を豊富に生ずる多産な原料である。抽出物及び生成物を当業者に周知である多くのアッセイで用いて、放線菌に由来する様々な化合物の活性を測定することができる。
【0009】
本発明は、内在性放線菌株環境において又は他の生物において生体分子を生成するための、上記分類群のゲノムの使用に関する。遺伝子は、構成的もしくは誘導的プロモーターの制御下で、単独で又は集団で発現させてもよい。本発明の遺伝子は、組換え株又は過剰生産株としての異種宿主内で発現させてもよい。また、転写を制御するために、異種状況においてこのゲノムの他の部分、例えば転写調節エレメント等を用いることもできる。このゲノムは野生型であっても突然変異型であってもよい。突然変異は、自然発生的なものであってもよいし、当業者に周知である方法によってランダムに又は部位特異的に作製してもよい。
【0010】
本発明は、異種生物から遺伝子産物を生成するための上記分類群の使用に関する。遺伝子を単独で又は集団で本発明の放線菌株の中に挿入して、タンパク質、二次代謝産物又は他の生体分子を発現させることができる。化合物は放線菌又は生長培地から単離することができる。
【0011】
本発明は、病原体及び害虫からの保護、殺虫剤、除草剤、殺菌剤、ならびに農業及び水産養殖における生長促進のための、上記分類群の使用である。本発明の放線菌は、植物環境において有害な微生物に対抗することができ、非毒性の植物保護手段を提供するものである。
【0012】
本発明は、添付の図面(図中において同じ参照番号は同じ部分を示す)を参照しながら、以下の発明の例示的な実施形態の詳細な説明を読むことにより、より深く理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(詳細な説明及び好適な実施形態)
Salinospora株は、海洋堆積物から一様に単離することができ、特徴的なサインヌクレオチド、生長のための海水(より厳密にはNa)の絶対的必要性、及び形態学的特徴によって区別される。大西洋、紅海、及びコルテス海から回収した熱帯及び亜熱帯の沿岸堆積物から5回の別々の機会にこの群に属する単離株を得た。このことは、これらの株が世界中に分布していることを示す。これらの研究で、合計147個の別々の堆積物サンプルを評価し、そのうち51個が合計182種類のSalinospora単離株を産生した。これらの単離株のうち7つについて、徹底的な生理学的及び系統発生的評価を行った(表1)。続いて、更なる回収物から1,000を超える株を得た。
【0014】
株の天然の所在地:Salinosporaの組織形態を有する1,000を超える株を代表する厳選された多様な単離株を用いて、徹底的な系統発生学的分析及び生理学的分析を行った。リストアップした全ての株について、ほぼ完全な(遺伝子全体の95%を超える)16S rDNA配列を得た。CNB394及びCNB512は、海洋由来Micromonospora(ミクロモノスポラ)単離株であり、分析を行ったところ、Salinospora属とMicromonospora属とでは基本的な違いがあることが分かった。
【表1】

【0015】
テストした182株のSalinospora全ては、海水を脱イオン水に置き替えた寒天培地上で増殖することができなかった。系統分類学上異なる7株をさらに特徴付けたところ、ナトリウムを生長のために必要とする(偏性海洋細菌の一般的な生理学的特徴である)ことが分かった(表2)。ナトリウムの必要性については、グラム陰性海洋細菌において広範囲な研究が行われており、高度に進化した海洋適応構造(例えば呼吸依存性ナトリウムイオンポンプ及び/又はナトリウム依存性膜輸送メカニズム等)が存在することを示す。海水(ナトリウム)を生長のために必要とするのは、グラム陽性細菌においては極めて稀であり、Rhodococcus marinonascensを例外とする他は(Helmke及びWeyland,1984)、放線菌についてはこれまで一度も報告されていない。
【0016】
ナトリウム依存性生長についてのアッセイ:Salinospora(太字)及び海洋由来Micromonospora単離株(CNB394、CNB512)における基本的な生長の差を示す生理学的生長分析を表2に示す。培地M1(この培地はSalinospora属及びMicromonospora属の生長及び維持に最適であることが分かった)上でテストを行った。単離株は、漬けこんだ無菌綿棒を用いて栄養菌糸を各分析培地に接種した後、この培地を25〜28℃にて6〜8週間インキュベートしてスクリーニングした。ライカ立体鏡を用いて倍率10−64Xで定期的に生長をチェックした。天然海水(NSW)または人工海水(ASW NA)の中で、全ての株は同じように良好に生長した。脱イオン水(DI)を用いて調製したM1上では、どのSalinospora単離株についても検出可能な生長は観察されなかった。2つのMicromonospora単離株CNB394及びCNB512は、海水ベースの培地に比べてM1 DI水でより良く生長した。生長のためのナトリウムの必要性を、調製した全てのナトリウム源を当モル量のカリウムで置換したASWで調製したM1(M1,ASW K+)上でテストした。塩度35の海水(この研究においてM1,NSW培地で使用)におけるナトリウム濃度は450mMである。塩化ナトリウム許容量の上限を決定するために、M1 DI水(塩化ナトリウムを加えて最終ナトリウム濃度を600mM及び1000mMとしたもの)上での株の生長についてテストした。Salinospora単離株は、これらの高いナトリウムレベルでは生長を示さなかったが、海洋由来MicromonosporaCNB394及びCNB512については、生長がはっきり表れた。
【表2】

【0017】
Salinospora単離株は、生物学的に活性な二次代謝産物の注目すべき原材料であることが分かっている。これまでのところ、調査した105株のうちの86%が有意な癌細胞に対する細胞障害性を有する培養抽出物を生成した(HCT−116ヒト結腸癌細胞系に対するIC50値は0.004〜16.4μg/mlの範囲である)。また、様々な条件下で育成した培養物の抽出物からは、有意な抗真菌活性及び抗菌活性も観察され、30%がアンホテリシン耐性であるCandida albicansに対して19.5μg/ml以下のMIC値を示し、35%がバンコマイシン耐性のEnterococcus faeciumに対して25μg/ml以下の抽出物最小阻害濃度(MIC)値を示した。
【0018】
薄層クロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィー/質量分析法ならびに反復遺伝子外回文ポリメラーゼ連鎖反応(REP−PCR)によると、株によって化学的及び遺伝的にかなりの多様性があることが分かった。1つの活性抽出物をバイオアッセイにより分画したところ、サリノスポラミドAと名付けられた強力な細胞毒を含む一連の新規な代謝産物が単離された(HCT−16ヒト結腸癌細胞系に対してIC50=10ng/ml)(図1)。この分子は、抗菌性生成物ラクタシスチンの加水分解により得られる中間生成物であるclasto−ラクタシスチンβ−ラクトン(オムラリドとも呼ばれる)と最も密接な関係がある。サリノスポラミドAは、融合型β−ラクトンγ−ラクトン2環式環を持つ極めて強力な抗癌物質であることが判明した最初の天然生成物である。
【0019】
Salinospora群は、はじめは、バハマへの遠征中に単離した堆積物から得た放線菌を系統発生論的に特徴付けた後に認められた。形態学的に異なる8つの株から得た部分的な16S rDNA遺伝子配列は、207位〜468位の間に4つのサインヌクレオチドが存在することを示した(大腸菌の付番方式;表3)。その後、これらのサインは、部分的に配列決定された45株のSalinospora全てにおいて発見された。最も高い系統発生的多様性を示す2株(CNH643及びCNH646)のほぼ全部を配列決定したところ(それぞれGenBank受託番号AY040619及びAY040620)、これもまたこのグループに特徴的である1つの更なるサインヌクレオチド(1456位)を有することが分かった(表3)。これらの株から得た配列を整列させて系統発生論的分析を行うと、これらがMicromonospora科の中で独特かつ一貫した分岐群を形成することが分かる(図2)。サインヌクレオチドはこの分岐群を1つにまとめ、及び高いブートストラップ値は、この科の中の現在記載されている9つの属とは明らかな別のものである、ということを支持する。
【0020】
16S rRNAサインヌクレオチド:Salinospora属及びMicromonospora科の中の現在承認されている9属の16S rRNAサインヌクレオチドを表3に表す。45個の異なるSalinospora単離株を部分的に配列決定したところ、207位〜468位に4つ全てのサインヌクレオチドを有することが確認された。続いて、幾つか(20個)のSalinospora単離株に由来する16S rRNA遺伝子の3'側を配列決定した後に、1456位のサインヌクレオチドが発見された。Kochら(1996)により過去に公表されたものに加え、これらは、Salinospora分岐群の一貫性を定義し、かつこの科の他のメンバーからSalinospora分岐群を区別する、この研究において観察された本来のサインである。リボソームデータベースプロジェクトの中のMicromonospora科の全ての既存メンバーを用いて、サインヌクレオチドを大腸菌の27〜1492位のヌクレオチドと整列させた。Salinospora属のメンバーは、この属の最も深い根にあたるメンバーであるMicromonospora olivasterosporaに最も近い相同性(97.1〜97.7%相同性)を示し、これと、過去に公表された12個のサインヌクレオチド位置のうち8個を共有する。したがって、Salinospora株は、最近記載されたVerrucosispora gifornensis(Micromonospora olivasterosporaと98.0%の類似性を示し、過去に公表された12個のサインヌクレオチドのうちの11個を共有する)に比べて、系統発生学上これらに最も近い近接株と、大きく異なっている。
【表3】

【0021】
Salinospora群の定常度を決定するために、バハマで追従研究を行った。4つのトランセクト(0〜30m)から収集した20個のサンプルから、355種類の放線菌が観察され、これらのうち90%以上が特徴的なSalinosporaの組織形態を示した。このことは、この群が、海洋堆積物中において優勢な数で存在する放線菌である可能性を示唆している。観察されたもののうち、100株を単離してさらに研究した。Salinosporaコロニー形成単位(cfu)の平均数は、1.2〜2.3×10cfu's/ml堆積物であった。50%を超えるSalinospora単離株が低栄養培地(M4)上で現れ、このことは、適当な単離技法を用いることの重要性を示している。8つの異なるコロニー形態型のうち代表的なもの13個を一部配列決定し、系統発生学上最も離れた単離株(CNH898)のほぼ全体を配列決定した(GenBank受託番号AY040622)。
【0022】
1989年にバハマで単離されたSalinosporaの形態学的特徴を有する30種の放線菌を調べたところ(Jensenら,1991)、これらの株のうち2株を除く全てが、海水(Na)を生長のために必須要件とすることが分かった。6つの異なる形態型を示す海水を必要とする10株を一部配列決定したところ、207〜468位の間に5つのSalinosporaサインヌクレオチドを有することが分かった(表3)。これらのうち2株(CNB440及びCNB536、それぞれGenBank受託番号AY040617及びAY040618)のほぼ完全な16S rDNA配列は、これらがSalinospora分岐群の異なるメンバーであることを示している(図2)。このように、11年間の間に3回の別々の機会にバハマ沿岸の堆積物からこの新しい分類群に属する株が単離された。このことは、これらが堆積物中の細菌集落の定常メンバーであることを示している。
【0023】
海水を生長のために必要としなかったにもかかわらず、Salinosporaに似たコロニー形態を示す2株(CNB394及びCNB512)は、表3のSalinosporaサインを持たないことが分かった。これらの株のほぼ完全な16S rDNA配列を分析したところ、Micromonospora aurantiaca W2b株と99.6〜99.9%の類似性を示し、Micromonospora属について以前公表されたサインヌクレオチド(Kochら,1996)の全てが存在することが分かった。進化系統樹は、CNB394及びCNB512が、Micromonospora属のメンバーであることを明らかに表している(図2)。深海サンプル(Weyland,1981)を含む海洋堆積物から単離されたMicromonospora単離株が報告されているが(Takizawaら,1993)、Salinosporaとは異なり、この属が陸の土壌から単離されたものであることは周知であり、海水を必要とする株は今までに報告されていない。
【0024】
バハマ(2000年の遠征)で作製した広範囲な潮上帯トランセクト(10ヶ所、30サンプル)から、1000を超える放線菌コロニー(Micromonospora科のメンバーを少数(約2%)含む)が観察されたが、これらはいずれも生長のために海水を必要としなかった。潮上帯サンプルからSalinospora株を回収できなかったことは、これらの細菌が海洋環境に限定されているという観察結果を支持するものである。
【0025】
Salinosporaのメンバーがより広い範囲に分布しているか否かを決定するために、紅海及びコルテス海から堆積物を回収した。42個の紅海堆積物サンプルから、Salinosporaの組織形態を有し、かつ海水を生長のための必須要件とする22個の単離株を得た。4つの主な形態型を示す6つの単離株を一部配列決定し、1株(CNH725、GenBank受託番号AY040621)のほぼ完全な16S rDNA配列を図2に表す。コルテス海から回収した36の堆積物から、海水と必要とする放線菌20株が単離され、これら全てはSalinosporaの形態学的特徴を有していた。5つの異なる形態型を示す8つの株を一部配列決定し、系統発生的に異なる単離株CNH964(GenBank受託番号AY040632)のほぼ全体を配列決定した(図2)。これらの結果は、Salinosporaのメンバーが海洋堆積物中に広く分布していることを明らかに示している。
【0026】
系統発生分析及び生理学的特徴は、Salinospora分岐群が、Micromonospora科の中の新しい属に該当することを示している。この研究ではこの属の中の多様性が明らかになったとは思えないが、この群の中における16S rDNA配列の類似性(98.6%)及び頑強な分岐群の形態は、この属が複数の種から構成されていることを示す(図2)。Micromonospora科の中におけるSalinospora属の位置は、科に特有な16S rDNAサインヌクレオチドの完全なセットの存在によって支持される(Stackelbrandt,1997)。
【0027】
放線菌を深海堆積物から回収することができるという証拠があるにもかかわらず、たった1種の海洋種しかこれまで記載されておらず(Helmke及びWeyland,1984)、この属を土着性海洋微生物相の中にこの群を含めることは広く受け入れられていなかった(Bullら,2000)。本発明者等のデータは、偏性海洋放線菌の独特の集団が海洋堆積物中に広範囲かつ定常的に発生するという初めての決定的な証拠を提供する。系統発生学的及び生理学的な証拠は、これらの放線菌が新しい分類群を構成し、Salinosporaという新しい属名が提案された。Salinospora属の株は、様々な用途に有用である生物学的に活性な二次代謝産物を多く生成する多産な原料である。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
サンプルの収集及び細菌の単離。SCUBAによって堆積物の上部1cmのサンプルを収集し、スタンピング法もしくは希釈/熱ショック法、またはその両方によって処理した。希釈/熱ショック法は、以下の通り行った:湿った堆積物1mlを滅菌海水4mlに加え、55℃にて6分間加熱し、勢い良く攪拌し、10−2〜10−4の希釈物を寒天培地(M1〜M4)上に接種した。スタンピング法の場合、湿った堆積物10mlを無菌環境で滅菌アルミニウム皿に入れ、層流フードの中で乾燥し(約24時間)、乳棒で軽くすりつぶし、滅菌発泡栓(直径14mm)の中に圧入し、時計回りに8〜9回スタンピングを行って連続希釈効果を与えながら、寒天培地(M1〜M4)に接種した。全ての単離培地は、100%濾過天然海水を用いて調製した。放線菌は、一般に、25〜28℃にて4〜6週間インキュベートした後に現れ、革様の質感を持つ、乾燥した、または折り畳まれた外観及び気中菌糸体を有するもしくは持たない分岐状糸状体を有するコロニーとしてみなされた。全ての単離培地に、オートクレーブ後に最終濃度100μg/mlシクロヘキシミド及び5μg/mlリファンピシンとなるよう添加した。
【0029】
培地は、当業者に周知である方法によって調製し、全ての培地は海水を含んでいた。培地の配合は以下の通りである:M1=澱粉(10g)、酵母エキス(4g)、ペプトン(2g)、寒天(18g)、天然海水(1L);M2=グリセロール(6ml)、アルギニン(1g)、KHPO(1g)、MgSO(0.5g)、寒天(18g)、天然海水(1L);M3=グルコース(6g)、可溶化キチン(2g)、寒天(18g)、天然海水(1L);M4=可溶化キチン(2g)、寒天(18g)、天然海水(1L);M5=寒天(18g)、天然海水(1L)。
【0030】
(実施例2)
DNAの精製、増幅、配列決定及び系統発生分析。ゲノムDNAを以下のように調製した:M1寒天上で25〜28℃にて2〜4週間増殖させた栄養菌糸(10mg)を液体に浸けこみ、標準法により作製した水性清澄化溶菌液を、0.7倍量のイソプロパノールを用いて沈殿させた。次に、得られたDNAペレットを70%エタノールで洗浄し、10mM Tris緩衝液(pH8.5)中に再懸濁して、最終濃度を100ng/mlとした。プライマーFC27(5'−AGAGTTTGATCCTGGCTCAG)(配列番号1)及びRC1492(5'−TACGGCTACCTTGTTACGACTT)(配列番号2)を用いたPCRにより、ゲノムDNA鋳型(10〜50ng)から16S rDNA配列決定用鋳型を増幅した。Qiagen QIAquick PCRクリーンアップキットを用い、この製造業者のプロトコールに従ってPCR産物を精製した。FC27プライマーを用いてヌクレオチド80〜480(大腸菌のナンバリングシステム)から形態学的に異なる複数の株の部分配列を得た。合計10個のプライマーを用いて、選択された16S rDNAアンプリコンの上側及び下側の鎖についてほぼ全体を配列決定した。次に10個のコンティグをアセンブルして、1479〜1483個の非曖昧ヌクレオチドからなる遺伝子配列を得た。16S rDNA配列の超可変領域を除外して、合計1408個のアラインメントされたヌクレオチドを得た。RDP類似性マトリックスのオンライン分析により16S rDNAの類似性値を計算し、RDPデータベースの中の3つの最も近接するメンバーと比較した。BioEditソフトウェア(Hall,1999)を用い、RDPの中のMicromonospora科のメンバーの二次構造(Maidakら,2001)に配列を整列させた。それぞれClustal Wソフトウェア及びPHYLIPソフトウェアパッケージ(Thompsonら,1994;Felsenstein,1993)の中の近接結合法及び節約ベースのアルゴリズムを用いて、系統発生分析を行った。Treeview 1.6.1(Page,1996)を用いて樹状図(図2)を描いた。
【0031】
(実施例3)
反復遺伝子外回文ポリメラーゼ連鎖反応(REP−PCR)による遺伝子分析。REP−PCR(Versalovicら,1991)を用いてSalinospora株の遺伝子の多様性を解析した。この技法は、Salinospora群に適用する場合、鋳型として全ゲノムDNAを、及びGC含量の高いグラム陽性細菌のゲノム中に存在する反復配列に特異的なPCRプライマーを用いる。任意の1株のPCR産物の長さは、ゲノム内における反復配列の位置に応じて異なり、様々な長さのアンプリコンの集団ができる。これらのアンプリコン集団をアガロースゲル上で分離すると、株に特有のバンドパターンが形成される。この出力の高い方法は、遺伝子的に異なる株の検出を可能とし、遺伝的多様性を評価する方法としての16S rRNA遺伝子分析よりも感度が高い。REP−PCRのバンドパターンを用いて、異なる遺伝子産物を生成できる別々の群へと株を選別する。REP−PCRのバンドパターンに基づく株のグループ分けは、二次代謝産物の生成に基づくグループと良く相関している。
【0032】
(実施例4)
有用な産物の生成及び単離。Salinospora株を、M1及びCKA(澱粉(5g)、魚類水溶性物質(4ml)、メンヘーデンミール(2g)、ケルプ粉(2g)、キトサン(2g)、海水(1L))を含む複数の海水ベースの培地中で培養した。吸着性樹脂(XAD−16)をこの発酵物に加えてから24時間後に収穫した(11日目)。濾過により樹脂を回収し、脱イオン水で濯ぎ、アセトンで溶出した。あるいは、濾過により細胞を回収し、凍結乾燥し、アセトンで抽出した。抽出物を回転蒸発により濃縮し、残渣をC−18フラッシュクロマトグラフィーにかけた後、HPLCにかけた。新規発酵生成物の構造を、1次元NMR、2次元NMR、及び質量分光分析法を含む様々な方法を用いて解明した。
【0033】
(実施例5)
抗細菌アッセイ。グラム陽性及びグラム陰性細菌に対する抗菌活性を示すために、標準法を用いて、培養したSalinospora株の抽出物をテストした。Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)に対する抗菌活性をテストするために用いた方法について以下に詳細に説明する。同様の方法を用いて、他の生物に対する抗微生物活性をテストする。抽出物を公知の抗生物質と比較し、相対的な活性レベルを測定した。強力な抗菌活性を有する抽出物をさらに分析して、新規代謝産物の存在について調べた。
【0034】
手短に言うと、S.aureusの培養物を、静止期になるまで1晩増殖させた。1mlあたりの細菌の数を算出し、均一数の細菌を、新鮮な培地を含む個々のウェルの中に入れた。既知の抗菌剤を含む対象化合物(例えばDMSO中のオキサシリン、0.04mg/mL)を1列のウェルに加え、この細菌を殺すのに必要な濃度を決定するために、そのプレートを連続希釈した。37℃にて一晩、プレートをインキュベートして、細胞を生長させた。自動プレート読取装置(600nm)でサンプルを読み、MIC濃度を測定した。
【0035】
(実施例6)
抗真菌アッセイ。Candida albicans(鵞口瘡カンジダ菌)に対する抗真菌活性を示すために、標準法を用いて、培養したSalinospora株から抽出物をテストした。抽出物を公知の抗生物質と比較し、それらの相対的な活性レベルを測定した。強力な抗真菌活性を有する抽出物をさらに分析して、新規代謝産物の存在について調べた。
【0036】
手短に言うと、C.albicansの培養物を、静止期になるまで1晩増殖させた。1mlあたりの細胞数を算出し、懸濁液を希釈し、96穴プレートの個々のウェルに加えた。生存率の指標として、アラマーブルーを各ウェルに加えた。テスト抽出物を1列のウェルに加え、この真菌細胞を殺傷するのに必要な濃度を決定するために、そのプレートを連続希釈した。アンホテリシン等の公知の抗真菌剤を対照として用いた。37℃にて12〜15時間、プレートをインキュベートした。自動プレート読取装置(600nm)を用いて細胞濃度を測定し、MIC濃度を測定した。
【0037】
(実施例7)
結腸癌細胞及び卵巣癌細胞の生長の阻害についてのインビトロアッセイ。MTSアッセイによって、ヒト結腸癌細胞系HCT116及びヒト卵巣癌細胞系A2780に対する細胞または細胞培地からの抽出物の細胞障害性についてインビトロで評価した。96穴マイクロリットルプレートに各ウェルあたり細胞4,000個の割合で細胞を入れ、24時間後に、抽出物(DMSO又は他の適当な溶剤中に溶解したもの)を加え、連続希釈を行った。これらの細胞を該化合物と一緒に37℃にて72時間インキュベートした後、テトラゾリウム染料MTSを最終濃度333μg/mlとなるよう加え、電子結合剤メタ硫酸フェナジンを最終濃度25μMとなるよう加えた。MTSは、還元されると非水溶性の青色結晶ホルマザンへと変換され、これをマイクロプレート読取装置で490nmの吸光度で読み取った。死細胞はMTSを還元することができないので、ホルマザンの量は生存細胞の数と相関関係を有する。効能の目安として、細胞の50%の増殖を阻害するのに必要な薬物濃度であるIC50を用いた。
【0038】
(実施例8)
抗単純ヘルペスウイルス(HSV−1)アッセイ。MTSアッセイを用いて、抗ウイルス活性を測定することもできる。2つの全く同じ96穴プレートにベロ細胞を載せ、ウイルス及び細胞障害性対照に感染させた。一方の細胞プレートをウイルスと一緒に37℃にて1時間インキュベートした。両方のプレートに一連の濃度の対象抽出物を塗布し、プレートを5日間インキュベートした。MTS溶液をプレートに加え、以下に記載するようにこれらのプレートを3時間インキュベートした。マイクロプレート読取装置で490nmの吸光度を読み取ったところ、抗ウイルス活性及び細胞障害性と相関関係があった。
【0039】
(実施例9)
過剰生産株を作成するためのSalinospora株の化学的突然変異誘発。Salinospora株の化学的突然変異誘発を行い、所望の生成物を過剰生成する株を作製することができる。例えば、低レベルで抗生物質を生成する株を、対数増殖期の中頃にエチルメチルスルホン酸(EMS)で処理する。突然変異誘発を行った培養物をプレート上に画線し、個々のクローンを単離させる。個々のクローンから、培養物を増殖させ、粗精製物として又は純粋な抗生物質を単離する。突然変異誘発を行った株により生成される対象化合物の相対的収率を元の株と比較して、過剰生産株を選択する。
【0040】
(実施例10)
異種遺伝子の発現。放線菌株は、他のより生長の遅い生物から二次代謝産物を生成するための宿主として有用であった(Tangら,2000)。遺伝子(単独又は集団の)を、Salinospora株の中で発現させて、タンパク質又は二次代謝産物を生成することができる。核酸を細菌の中に導入する方法は当業者に周知である。
【0041】
(実施例11)
遺伝子集団の単離及び発現。多くの放線菌抗生物質(例えばアクチノルホジン、フレノリシン、グラナチシン、グリセウシン、オクタテトラサイクリン、及びテトラセノマイシン等)は、密集したポリケチドシンテターゼ(PKS)遺伝子(Hopwood、1995)によって生成される。PKS遺伝子は、2つのタイプの大きな多機能性タンパク質に分類される。PKS I型遺伝子において、基質は、1つのタンパク質上の多くの活性部位を通って進む。PKS II型遺伝子において、多重タンパク質複合体が生成され、基質は、1つのタンパク質から次のタンパク質へと進行する。PKS II型遺伝子は、クローニングされ、(これらの本来のグループ分け又は新規の組み合わせにおいて)異種系の中で発現された。Salinosporaからの二次代謝産物を合成するための遺伝子を、他の放線菌に由来する遺伝子と組み合わせることにより、新規小分子の生成をもたらし得る生物学的に支援されたコンビナトリアル化学の新規方法を提供する。また、Salinospora生合成遺伝子を混ぜて異種宿主中で発現させ、新しい代謝産物を生成させることもできる。PKS遺伝子は、モジュールとして生じるものだけではない。例えば、非リボソームペプチドシンテターゼはモジュラーでもあり、放線菌の中に頻繁に存在する。この新規Salinospora群に由来する生合成遺伝子集団は、異種株の中で新規分子を発現させるため、または天然の及び組換型の遺伝子産物を過剰発現させるための、遺伝子供給原料として使用することができる。
【0042】
(実施例12)
抗炎症性作用についてのアッセイ。マウス耳アッセイでホルボール誘導型炎症(浮腫)の阻害を測定することによって、Salinospora培養物からの抽出物をテストする。これは、炎症を抑える際の化合物の有効性を示すものとして受け入れられている一般的なテストである。浮腫を引き起こす刺激原、即ちホルボール12−ミリスチン酸13−酢酸(PMA)を含む溶液中、該化合物をアセトン中で、マウスの耳の内側耳介に局所塗布する。PMAを単独で(1つの耳につき2μg)又は様々な量の抽出物と組み合わせて、左耳に適用し(1つの処理グループにつきマウス5匹)、アセトン(対照)を左耳に適用する。23℃にて3時間20分インキュベートを行った後、マウスを犠牲にし、耳を取り出し、内腔(bore)を取り出して重さを量る。左耳(処理)の重さから右耳(対照)の重さを引くことにより、浮腫を測定する。結果を、PMAと比べた浮腫の減少(阻害)%または増加(強化)%として記録する。
【0043】
(実施例13)
酵素阻害アッセイ。Salinospora株からの抽出物が酵素活性を阻害する能力についてテストすることができる。抽出物を上記のように調製し、酵素/基質混合物にこの抽出物の連続希釈液を加えて、この反応のIC50を決定することができる。
【0044】
(実施例14)
酵素活性アッセイ。対象基質(キチン、リグニン、セルロース及び他の難分解性生体高分子等を含むがこれらに限定されない)の存在下でSalinospora株を増殖させることによって、酵素活性をテストすることができる。基質によって、生成される生成物の量または残っている基質の量を決定するためのアッセイを行うことができる。
【0045】
(実施例15)
農業/水産養殖保護アッセイ。植物を病原体から保護するため、または一般的な生長を促進するためのアッセイは、標準的な温室試験で行うことができる。対象株を植物に直接適用したり、生育培地の中に組み込んだりすることができる。植物を病原体にさらして検証し、その生長を対照グループ(病原体のみで処理したもの、Salinospora株のみで処理したもの、または未処理もの)と比較することができる。生長率を比較して、所望の活性を有する株を選択することができる。
【0046】
本発明の例示的な実施形態について単に例として上記に記載したが、当業者であれば、特許請求の範囲により定義された本発明の範囲を逸脱することなく、開示された実施形態に変更を加えることができることは理解されるであろう。
【0047】
(参考文献)
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Tang,L.,Shah,S.,Chung,L.,Carney,J.,Katz,L., Khosla,C.,及びJulien,B.2000.エポシロン(epothilong)遺伝子群の単離と異種細菌での発現.Science.287:640−2.
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Weyland,H.1981.海底上の放線菌類分布.Actinomycetes, Zbl.Bakt.Suppl.11:185−193.
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1はSalinospora群から得た最初の新規な生物活性代謝産物であるサリノスポラミドAの構造。この化合物を単離することにより、Salinospora群が、独特な生物学活性代謝産物の資源であることを証明する。この生産株を海水ベースの培地中で培養し、一連のクロマトグラフィー工程に従って、純粋な形で該化合物を得た。サリノスポラミドAの構造は、1D及び2D核磁気共鳴及び高分解能質量スペクトルデータ解析を用いて解明した。
【図2】図2はMicromonospora科に公式に属する全ての属の代表的なものと一緒にSalinospora分岐群の7つの異なるメンバーを示す、近接結合法を用いて作製した進化系統樹(Kochら,1996)。距離を示すバーは、ヌクレオチド100個あたりヌクレオチド1個の置換があることを示す。Salinospora分岐群は括弧内に示されている。Salinospora株を示す記号の横の括弧内には、その単離株を得た遠征の場所及び日付を示す。現在までに見つかったSalinospora群は、400〜500単離株を含み、これらは主な特徴1及び3(「発明の背景」に記載)を示した。これらの株は、3回の遠征で得られたものであり、まず得られた場所及び日付によって分類した後に各グループの中で形態学的多様性によって分類されたものである。これらの亜群の各々から、ほぼ完全な(その遺伝子の95%を超える)16S rRNA遺伝子の配列決定を行うために単離株を選択した。Phylip and Clustal Wパッケージに含まれる系統発生学プログラムを用いて分析を行い、Treewiew1.6.1を用いて樹状図を描いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムを生長のための必須要件とし、かつ特徴的な16S rRNA配列が存在する放線菌目の属。
【請求項2】
ナトリウムを生長のための必須要件としかつ特徴的な16S rRNA配列を有する放線菌株を増殖させる工程、及び
生体分子を含む放線菌又は生育培地を回収する工程
を含む、生体分子の生成方法。
【請求項3】
生体分子が薬剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
薬剤が抗菌剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
薬剤が抗真菌剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
薬剤が抗癌剤である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
生体分子が異種生物に由来する遺伝子の産物である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
海水を生長のための必須要件とし、かつ特徴的な16S rRNA配列を有する放線菌株を増殖させる工程、
放線菌又は生育培地を回収する工程、及び
放線菌または生育培地の薬理活性を分析する工程
を含む、薬物発見方法。
【請求項9】
分析が抗菌作用についてのアッセイを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
分析が抗ウイルス作用についてのアッセイを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
分析が抗癌作用についてのアッセイを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
分析が抗真菌作用についてのアッセイを含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−119001(P2008−119001A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−314720(P2007−314720)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【分割の表示】特願2002−549186(P2002−549186)の分割
【原出願日】平成13年11月16日(2001.11.16)
【出願人】(500445295)ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア (28)
【Fターム(参考)】