説明

薬物送達システムおよびその調整方法と使用

薬物送達システムにおけるタンパク質-リン脂質分散体製剤が提供され、ここでタンパク質とリン脂質の重量比は1:300〜300:1であり、そして粒径は5nmと1000nmの間である。該製剤の製造工程は、タンパク質相とリン脂質の混合、および均質化工程を含む。該薬物送達システムは、多くの様々な医薬品に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物製剤分野、さらに具体的に、薬物送達システム及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬物治療の急速な発展にしたがい、「薬物使用の最適化」という概念が非常に注目される課題になってきた。これは、主に薬物治療の価値を合理的に発現させ、治療用薬物の安全性を保証するためである。
【0003】
薬物送達システム(drug delivery system(DDS)、ドラッグデリバリーシステム)とは、新たな技術及び方法により薬物の体内での動態変化を制御することによって、最適な治療効果を獲得することである。薬物送達システムの作用により、薬物の吸収を改善し、薬物の毒性副作用を低下させ、病的組織への薬物の分布量を向上させ、薬効増加、毒性減少という目的を達成することができる。
【0004】
薬剤学分野において、一般的にナノ粒子のサイズを1〜1000nmに限定し、該範囲は、サイズが100nm以上であるサブミクロン粒子を含む。薬剤学におけるナノ粒子は、ナノ担体及びナノ薬物の2種類に分けられている。ナノ担体とは、薬物を溶解又は分散させた各種のナノ粒子、例えばナノリポソーム、ポリマーナノカプセル、ナノスフェア、ポリマーミセルなどである。ナノ薬物とは、原料薬物を直接ナノ粒子に加工することであり、それは、実質的に微粉化技術、超微細粉技術のさらなる発展である。
【0005】
ナノ技術及びナノ材料を薬学分野に応用して、ナノ粒子(Nanoparticles、NP)、ナノスフェア(Nanospheres、NS)、ナノカプセル(Nanocapsules、NC)、ナノミセル(Nanomicelle、NM)、ナノリポソーム(Nano-liposomes、NL)及びナノ乳剤(Nano-emulsion、NE)などを含むナノ薬物送達システムが製造された。その中では、NPは、一般的に、天然又は合成の高分子材料から製造された、粒度がナノグレード(1〜1000nm)である固体コロイド微粒子であり、NCは、高分子材料で包まれたナノグレードの小胞であり、明らかなカプセルシェル相を有する。NP及びNCの調製方法は、主に乳化重合法、架橋重合法及び界面縮重合法などがある。近年、両親媒性ポリマー材料で自動的に重合(自己組織化と称される)して「芯-鞘」構造が形成されたナノ固体ミセルが注目されており、該ミセルは、親水性端が外方に、親油性端が内方に向けられ、核内には各種の薬物、酵素及び遺伝子などを装填することができる。
【0006】
20世紀70年代から、ナノ粒子が薬物担体として用いられ、30年以来、薬剤学分野で広範囲にわたって実用化された。現在、タンパク質ナノ製剤についての検討が多く、タンパク質は、非免疫原性、生分解性、良い生体適合性などの利点があり、タンパク質類高分子はいずれも代謝しやすく、相対的な非特異の形式で薬物を包埋することができるため、生物分解ナノ顆粒の調製に用いることができる。また、タンパク質分子中の多数の官能基(アミノ基やカルボキシルなど)は、薬物分子を特異的にナノ顆粒の表面に連接することに寄与し、複合物の調製に適している。表面修飾により適切な配位子を連接して、受容体仲介のアクティブターゲティングを達成する。タンパク質ナノ製剤は、薬物を標的に輸送する目的を実現するとともに、薬物の毒性副作用を低下させることができ、現在市販されているナノ製剤は、例えばパクリタキセルタンパク質ナノ粒子がある。例えば中国発明出願CN200380109606.9、CN97199720.9、CN20031023461.X、CN02811017.X、CN03108361.7、CN200610077006.4及び発明特許ZL01119258.5、ZL03108361.7は、いずれもタンパク質ナノ製剤に関するものである。しかしながら、これらの発明出願又は発明特許に関する製品及び技術は、ヒト血清アルブミン(HSA)を採用しており、かつ、使用される有機溶媒(例えばクロロホルム、塩化メチレンなど)の毒性が大きく、調製方法の周期が長く、プロセスが煩雑であるなどの欠点がある。特許出願CN20031023461.Xにおいて、実施例3では、Tween80(1%〜10%)又はそのほかの界面活性剤(F68/F127など)を加える場合に良好な分散系を得られないことが証明され、該分散系では間もなく薬物の結晶が析出してしまった。実施例4は、Tween80で単独に薬物のクロロホルム溶液を乳化するが、均一な分散系を得られないことが証明され、分散液には間もなく沈殿が析出してしまった。実施例12では、水と相容性を有する溶媒を単独に採用する場合、望ましい分散系を得られないことが証明され、粒度の分布が非常に広く、粒径が数μmに達するために、水と相容性を有する溶媒の単独使用を排除することが強調された。
【0007】
リポソーム(1iposomes)は指向性薬物担体であり、第四世代のターゲティング薬物送達システム(targeting drug delivery system)の新たな剤形に属する。リポソームは、最初、イギリスの学者BanghamとStandishがリン脂質を水に分散させ、電子顕微鏡で観察した際に発見したものである。リン脂質は水に分散し、自然に複数層の小胞を形成し、それぞれの層がいずれも脂質二重層であり、小胞の中央と各層との間に水相により隔てられており、二重層の厚みが約4nmである。それは、細胞膜と類似する構造を有し、二重層を構成するリポイドの親水性の頭部が膜の内面を形成し、親油性の尾部が膜の中間に位置する。リポソームのこのような膜と類似する構造によって、各種の親水性、疎水性及び両親媒性の物質を持つことができ、薬物は、リポソーム内部水相に包み込まれてもよく、リポイド二重層に挿入してもよく、またはリポソームの表面に吸着し連接してもよい。1971年、イギリスのRahmanらは、リポソームを薬物担体として、アミログルコシダーゼを包埋して糖原病の治療に用い、最初に成功を遂げた。リポソームを薬物担体とすることについて多くの検討が行われ、リポソームの調製、安定性及び標的性などにおいて、飛躍的に進歩した。
【0008】
現在、リポソームを調製するための材料は、天然リン脂質(卵黄レシチン、大豆レシチン)、半合成リン脂質(水素化リン脂質)及び合成リン脂質(例えばジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン)などがある。リポソームの作用は、主に以下の点において示される。(1)リポソームは生命体に対し無毒、又は毒性副作用が小さく、その二重層が生物膜と類似性及び組織相容性を有し、組織に吸収されやすく、薬物の吸収利用率を向上させること;(2)リポソームが薬物を包むことは物理過程であり、薬物の分子構造を変えることなく、薬物の成分を破壊せず、包まれている薬物が生体内の加水分解酵素により破壊されることが避けられること;(3)薬物が包まれていることによって、生命体の特定部位に対する毒性を低下させ、使用量を減らし、且つ徐放作用と放出制御作用を有すること;(4)ウイルス担体と異なり、リポソームは宿主体内で生分解でき、非免疫原性であること;(5)遺伝子治療において、遺伝子と複合しやすく、高い標的性を有し、特定細胞の治療を実現できること:(6)材料が安く、大量調製に便利であることである。
【0009】
リポソームは、そのように優れた利点を有するが、まだ解決されていない課題、例えば、(1)リポソーム薬物の安定性が高くないこと;(2)リポソームの封入率及び薬物装填容量が低く、特定の薬物に対し理想的なリポソームを調製するには、通常、大量のスクリーニングが必要であること;(3)リポソームに適合する薬物も限られていること;(4)一般的に、調製中に大量の毒性溶媒を使用すること;(5)普通リポソームは主に網状内皮細胞に富む器官に集中しており、血管内皮におけるカベオリンを識別することができないことも存在している。
【0010】
中国発明出願CN200610037609.1、CN02129204.3、CN02160028.7及び発明特許ZL94191101.2、ZL96190332.5において複数種のタンパク質とリン脂質の組成物が開示されているが、これらの出願は、本発明が解決しようとする技術課題及び提供される技術思想とは本質的に異なっており、それらは主に、タンパク質類薬物を含むリポソーム又はリン脂質を含む製剤を調製するものである。即ち、これらの出願において、タンパク質は有効な活性成分であり、調製中にタンパク質の活性をできるだけ保証し、それが治療の主体であるが、特殊の目的(例えばターゲティング、吸収増加)のために補助成分として検討されたシステムではない。例えば、中国発明出願CN200610037609.1では、逆相蒸発法により毒性有機溶媒(クロロホルム)を除去し、層層吸着技術を採用して、リン脂質の濃度及びタンパク質の濃度がいずれも0.1mg/ml〜1mg/mlであり、粒度が1000nmを超え(実施例1における粒度が10μm、実施例2における粒度が20μm、実施例3における粒度が40μmである)、そして、プロセスにおいて均質化せずに、タンパク質が単に吸着し、その濃度も低く、このタンパク質が治療の主体である。中国特許ZL96190332.5では、リン脂質によりタンパク質薬物を保護しており、これは本発明の目的と異なっている。中国発明出願CN02129204.3には、振動気泡圧(oscillation air-bubble pressure)方法により、タンパク質とリン脂質の複合膜を曲面調製し、薬物研究に用いることが開示されているが、該方法は複雑であり、調製された粒度も大きく、薬物担体として静脈注射、経口、肺部などの経路によって投与する価値を有していない。また、2007年4月12日に公開された米国発明特許出願US2007082838A1において、ドセタキセル(docetaxel)タンパク質ナノ製剤が開示されており、その実施例6においてリン脂質の価値が否定された。
【0011】
さらに、投与中に存在する副作用は、主に静脈刺激、静脈炎、疼痛、骨髄抑制、神経毒性、アレルギー、炎症、皮膚刺激などがあり、これらは、新たな薬物送達システムを検討し開発する際に解決しなければならない重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】CN200380109606.9
【特許文献2】CN97199720.9
【特許文献3】CN20031023461.X
【特許文献4】CN02811017.X
【特許文献5】CN03108361.7
【特許文献6】CN200610077006.4
【特許文献7】ZL01119258.5
【特許文献8】ZL03108361.7
【特許文献9】CN20031023461.X
【特許文献10】CN200610037609.1
【特許文献11】CN02129204.3
【特許文献12】CN02160028.7
【特許文献13】ZL94191101.2
【特許文献14】CN200610037609.1
【特許文献15】ZL96190332.5
【特許文献16】CN02129204.3
【特許文献17】US2007082838A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上によって、前記課題を有効に解決するために、本発明の目的は薬物送達システムを提供することである。また、本発明は該薬物送達システムの調製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は以下のような技術思想を提供する。
本発明の第一側面は、タンパク質-リン脂質分散体を含む薬物送達システムであって、前記タンパク質-リン脂質分散体においてタンパク質とリン脂質の重量比が1:300〜300:1であり、前記タンパク質-リン脂質分散体の粒径が5nm〜1000nmの間である薬物送達システムを提供する。タンパク質-リン脂質分散体において、リン脂質の表面又はリン脂質の表面と内部がタンパク質層により被覆され、またはリポソーム二重層の内外層がタンパク質により被覆され、またはリポソーム内の水相にタンパク質ナノ粒子を形成している。前記のように、タンパク質とリン脂質の重量比が1:300〜300:1であり、例えば1:200〜200:1であってもよく、1:100〜100:1であってもよく、1:50〜50:1と1:10〜10:1などであってもよい。タンパク質-リン脂質の粒径が20nm〜500nmの間であることが好ましい。リン脂質は、水に分散して、リポソームを形成してもよく、又は脂質ナノスフェアを形成してもよく、また、リン脂質が他の脂質成分とリポソーム/脂質ナノスフェア(乳剤を含む)を構成してもよい。本発明の分散体は、ナノ粒子の表面及び/又は内部がタンパク質層を包んで(被覆して)おり、このタンパク質層は、超音波、さらに重要なのは、均質化(例えばマイクロジェット)処理して、ジスルフィド結合を形成し、リポソーム/脂質ナノスフェア(乳剤を含む)とともに安定な薬物担体を構成することによって、新たな薬物送達システムが提供される。
【0015】
本発明の発明者は多くの実験研究によって、従来技術のタンパク質ナノ製剤を基に、タンパク質とリン脂質(その他の脂質成分を含んでもよい)を結合することにより、喜ばしいことに、新たな薬物送達システムを獲得したことを発見した。リン脂質の特別な分散能力/性質に基づき、長い間に利用されたタンパク質ナノ製剤技術をより実行的に、信頼的にさせ、より重要なことに、リン脂質(その他の脂質成分を含む)の加入によって、タンパク質ナノ粒子の薬物担載範囲が極めて広げられた。また、リン脂質の表面又はリン脂質の表面と内部がタンパク質層により被覆されているので、脂質ナノスフェア(乳剤を含む)/リポソームの安定性を極めて向上させる。ここで、リン脂質は、少なくとも、分散及び薬物を溶解(担載)するという二つの作用がある。リン脂質そのものは界面活性剤であり、リン脂質の加入によって、システム全体に他の各種の界面活性剤を添加でき、また、他の界面活性剤の加入によって、さらにリン脂質の作用を大きく増やし、リン脂質の薬物担載に寄与し、粒度をさらに低下させ、リン脂質の用量を減らすことができ、コストを下げるとともに、薬物送達システムの調製プロセスの簡単性、適用性を確保することができる。
【0016】
従来のタンパク質ナノ粒子技術(毒性の有機溶媒の添加又は採用が必要である)とは異なり、本発明の薬物送達システムは有機溶媒を使用せずに薬物を溶解、分散させることができる。有機溶媒が用いられていない薬物は、漢方薬或いは動植物揮発性油又は油脂、例えば、センキュウオイル、アンゼリカオイル、ガジュツウコン油(zedoary turmeric oil)、ニガキモドキ油、生姜油、レンギョウオイル、ガーリックオイル(Garlic Oil)、サイコオイル、エレメン、艾葉油、ユーカリ油(eucalyptus globulus)、ユーカリノキ油(Eucalyptus globulus Labill)、シネオール、安息香油、クロトン油、白蘭花油、白蘭花アブソリュートオイル、白蘭花葉油、ライムオイル、十倍ライムオイル、五倍ライムオイル、ホワイトカンファーオイル(White Camphor Oil)、タイムオイル、イトスギオイル、ペパーミント油、ハッカ油、メントール、ソウジュツ油、チャノキ油、プチグレン油、茶葉油、ネロリオイル、沈香油、オレンジピールオイル、ダイダイの花油、ダイダイの花葉油、アンゼリカオイル、スイートバジルオイル、丁香油、クローブバットオイル、ウィンターグリーンオイル、ウインターレモンオイル、アザレアオイル、レダムオイル、ガーリックオイル、芳樟油、ベルガモットオイル、甘松油、パチョリオイル、モクセイアブソリュートオイル、カシアオイル、オリーブ油、キャラウェーオイル、黒コショウオイル、紅花シードオイル、カラウェーオイル、エゴマオイル、キハダ果実油、サッサフラスオイル、アニスオイル、アネトール、ニンジンシードオイル、コショウオイル、アカシアアブソリュートオイル、堅果油、ペパーミントオイル、ネペタオイル、クルクマオイル、苦杏仁油、カナンガオイル、ラブダナムアブソリュートオイル、トウガラシオイル、生姜油、レモンオイル、マンダリンオイル、タンジェリンオイル、ヨクイニンオイル、スペアミントオイル、レンギョウオイル、霊芝胞子油、アロエオイル、ローマンカモミールオイル、スウィートバジルオイル、エストラゴンオイル、バラオイル、野生バラアブソリュートオイル、クリムゾン・グローリー・ローズアブソリュート、バイテックスオイル、没薬油、ローズマリーオイル、サンアントニオフラワーアブソリュートオイル(San Antonio Flower Absolute Oil)、レモンユーカリオイル、レモングラスオイル、レモンオイル、マヨラナ油、マージョラムオイル、楠葉油、グレープシードオイル(Grape Seed Oil)、セロリ種子油、セイコウ油、メースオイル、ザボンフラワーアブソリュートオイル、ザボンフラワーオイル、リッツァクベバエッセンシャルオイル、リッツァクベバオイル、山母子油(Pearly Everlasting Oil)、広葉杉油、蛇床子油、生姜油、セージオイル、フイリソシンカアブソリュートオイル、テレビン油、松実油(Pine Nut Oil)、松葉油、松シードオイル(Pinaster Seed Oil)、松かさオイル、イトスギオイル、ツバキオイル、ビャクダンオイル、オレンジオイル、オレンジテルペン、シネンサール、十倍オレンジオイル、五倍オレンジオイル、五味子油、甜杏仁油、ベチバーオイル、シトロネラオイル、ベルガモットハッカオイル、ゼラニウムオイル、香り紫蘇油、カルダモンオイル、セダー油、ウイキョウオイル、小さなジャスミンアブソリュートオイル、辛夷油、レッド・セダー油、ラベンダーオイル、カノコソウオイル、香儒エッセンシャルオイル、ヒマラヤスギオイル、煙花アブソリュートオイル、コリアンダーシードオイル、椰子油、野生バラ油、野紺菊アブソリュートオイル、インチン油、ザボンピールオイル、ドクダミ油、イリス・エッセンシャルオイル、月桂油、グレープフルーツオイル、イランイラン油、月見草油、混合樟脳油(Mixed Camphor Oil)、ラベンダー・インテルメディアオイル(lavandin oil)、クチナシフラワーオイル、アミリス油、紫蘇シードオイル、樟脳油又はジャコウ油;又は揮発性油の精製品、例えばガジュツウコン油から精製されたエレメン又はそのほかの揮発性油から精製されたエレメン、センキュウオイルから精製されたリグスチリド又はそのほかの揮発性油から精製されたリグスチリド、セロリ種子油から精製されたブチルフタリド(合成されたものであってもよい);または両者又は両者以上の揮発性油およびその精製品が任意の比率で混合された混合物を含む。ガーリックオイル、ガジュツウコン油又はエレメンが好ましい。また、有機溶媒が用いられていない薬物は、天然の、又は生物工学技術により抽出、合成されたタンパク質/ペプチド類薬物、例えばインスリン、チモシン、インターロイキン、インターフェロン、チモペンチン又はエリスロポエチンなどを含み、さらに、有機溶媒が用いられていない薬物はリン脂質と良好な溶解性能を有して互いに作用する薬物、例えばシリビニン(シリビン)なども含む。
【0017】
本発明の薬物送達システムにおける前記のタンパク質-リン脂質分散体はナノ液体製剤又はナノ固体製剤である。
本発明の薬物送達システムにおける前記タンパク質は、天然タンパク質、人工合成タンパク質及びその誘導体からなる群から選ばれる。好ましい形態において、前記タンパク質は、下記のヒト血清アルブミン、ウシ血清タンパク質、オボアルブミン、トウモロコシタンパク質、ヘモグロビン及びその誘導体又は関連タンパク質、アルブミン誘導体(例えばガラクトシル化アルブミン)、及び修飾ブタ血清アルブミン(例えばPEG修飾ブタ血清アルブミン)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるが、これらのものに限られない。
【0018】
本発明の薬物送達システムにおける前記リン脂質は天然、半合成、全合成リン脂質及びその誘導体からなる群から選ばれる。好ましい形態において、前記リン脂質は、下記の大豆レシチン、卵黄レシチン、グリセロりん酸(EPG)、ポリエンホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸セリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、水素化大豆レシチン(HSPC)、水素化卵黄レシチン(HEPC)、全合成リン脂質、例えばC3〜C30の各種の合成リン脂質、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩DPPG)、L-α-ジミリストイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩DMPG)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、ジオレオイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジラウロイルホスファチジルイノシトール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルコリン、1,2-ジヘキサノイルレシチン、1,2-ジラウロイルレシチン、1,2-ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、1,2-テトラデカノイルレシチン、1,2-テトラデカノイルホスファチジルエタノールアミン、1,2-テトラデシルレシチン、1,2-ジペンタデカノイルレシチン、1,2-ジパルミトイルレシチン、1-パルミトイル-2-オレオイル-レシチン、1,2-パルミトイルホスファチジルエタノールアミン、1-パルミトイル-2-リノレオイル-レシチン、1,2-ヘキサデシルレシチン、1,2-ヘキサデシルホスファチジルエタノールアミン、1,2-ヘキサデシルホスファチジルメチルエタノールアミン、1,2-ヘキサデシルホスファチジルジメチルエタノールアミン、1,2-ヘプタデカノイルレシチン、1,2-ジステアロイルレシチン、1,2-ジオレオイルレシチン、1,2-ジリノレオイルレシチン、1,2-ジリノレノイルレシチン、1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、1,2-ジノナデカノイルレシチン、1,2-ジアラキドイルレシチン、1,2-アラキドノイルレシチン、リゾレシチン、リゾセファリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロールエステル、リゾホスファチジルセリン、1,2-ドコシルホスファチジン酸、1-テトラデカノイル-2-ヒドロキシレシチン、1,2-テトラデカノイルホスファチジン酸、1-パルミトイル-2-ヒドロキシレシチン、1,2-ジパルミトイルホスファチジン酸、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジン酸、1,2-ジヘキサデシルホスファチジン酸(ナトリウム塩)、1-ステアロイル-2-ヒドロキシレシチン、1-オレオイル-2-ヒドロキシレシチン、1-リノレオイル-2-ヒドロキシレシチン、1,2-ジステアロイルホスファチジン酸、1,2-ジオレオイルホスファチジン酸、1,2-オクタコシルホスファチジン酸(ナトリウム塩)、1,2-テトラデカノイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩)、1,2-ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩)、1,2-ジステアロイルホスファチジルグリセロール(ナトリウム塩)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、テトラミリストイルカルジオリピン、テトララウロイルカルジオリピン、テトラパルミトイルカルジオリピン、及びテトラオレオイルカルジオリピンからなる群から選ばれる少なくとも1種であるが、これらのものに限られない。
【0019】
リン脂質の水又は油相への分散能力及びリン脂質の薬物溶解能力が限られているので、リン脂質含有相を調製するために又は薬物の溶解量を増やすために、本発明の薬物送達システムはさらに有機溶媒を含むことができる。従来開示された技術思想とは異なって、本発明の発明者が選択した有機溶媒は、毒性を大きく低下させ、これは薬物毒性の低下に対しより有利であり、そして、環境保全に対してもより有利であり、製造中の労働者の労働保護により便利である。前記有機溶媒は水と相溶性を有する溶媒であってもよい。本発明の好ましい形態において用いられる有機溶媒は、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール(n-ブタノール、t-ブタノールを含む)、アセトン、メチルピロリドン(N-メチルピロリドン又は1-メチル-2-ピロリドン)、酢酸エチル及びイソプロピルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましい形態において、前記有機溶媒がエタノール又はt-ブタノールである。
【0020】
リン脂質の薬物溶解の範囲を広める及びリン脂質相の分散速度を向上させるために、本発明の薬物送達システムは適当な油(脂)類物質又はそのほかの脂質類物質を加えることができ、それとリン脂質との重量比が1:0.1〜1:10である。本発明は、油相による粒度の影響及び異なる量のMCTで調製されたナノ粒子の凍結融解安定性について検討した。好ましい形態において、前記油類物質又はそのほかの脂質類物質は、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、構造化油(構造化脂肪、structured-triglyceride)、トコフェロール、酢酸トコフェロール、オレイン酸、オレイン酸エチル、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、オクタン酸及びそのエステル類、カプリン酸及びそのエステル類、ラウリン酸及びそのエステル類、パルミチン酸及びそのエステル類、リノール酸及びそのエステル類、リノレン酸及びそのエステル類、ドコサヘキサエン酸及びそのエステル類、深海魚油及び植物揮発性油からなる群から選ばれる少なくとも1種である。より好ましい形態において、油類物質がMCT、オレイン酸及びそのエステル類又は構造化油(構造化脂肪)からなる群から選ばれる。
【0021】
製剤の安定性を向上させるために、さらに製剤に酸化防止剤(水溶性と油溶性酸化防止剤を含み、さらに不活性ガスを含んでもよい)を加えることができる。好ましい形態において、水溶性酸化防止剤は、ビタミンC及びそのエステル類、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオクト酸、シスチン、システイン、ヒスチジン及びグリシンからなる群から選ばれる少なくとも1種である。好ましい形態において、油溶性酸化防止剤はBHA、BHT、トコフェロール又はチオクト酸などからなる群から選ばれる。
【0022】
本発明の具体的な実施形態の一つの好ましい実施例においては、油類にMCTが選択されており、それとリン脂質との重量比が1:1であり、その他の好ましい実施例においては、油類に構造化油が選択されており、それとリン脂質との重量比が1:1.7である。
【0023】
本発明の薬物送達システムは、さらにコレステロール及びその誘導体(例えばコレステロールヘミサクシネート)及び/又はシトステロールなどの他の脂質を含んでも良い。リン脂質相を調製する際に、コレステロール及び/又はシトステロールをリポソーム又は乳剤の添加剤成分として添加して、これらの脂質はリン脂質の親油性物質への担載に寄与する。
【0024】
本発明の具体的な実施形態の好ましい実施例において、コレステロールが添加されている。
本発明の薬物送達システムは、さらにリガンド及び/又は抗体を含んでもよい。前記リガンドは、ガラクトース誘導体、トランスフェリン誘導体、葉酸及びその誘導体、アミノグルコース誘導体又は各種のRGD及びその誘導体などからなる群から選択され、前記抗体は、各種のネズミ抗体、ヒト化抗体、組換えネズミ抗体又は組換えヒト化抗体からなる群から選択される。好ましいリガンドはガラクトースリガンド、トランスフェリン、葉酸又はRGD(トリペプチド構造のアルギニン-グリシン-アスパラギン酸)及びその誘導体からなる群から選択される。本発明の薬物送達システムにはリン脂質又はその他の脂質が含まれているため、これらの脂質成分により、親油性基を含むリガンド、抗体及びその誘導体を担載して、主動的に薬物を標的に伝達する目的を達成することができる。
【0025】
本発明の具体的な実施形態の好ましい実施例において、本願発明者が出願したCN200610121794.2における前記ガラクトースコレステロール誘導体が添加されている。
特殊な標的化又は細胞融合を実現し、遺伝子のトランスフェクション効率を向上させるために、本発明の薬物送達システムは、さらに正荷電性物質(カチオン性物質)、例えば脂肪アミン、ポリアミン、TC-Chol(ポリアミンカチオン性脂質)、DC-Chol、カチオン性カルジオリピン、キトサン又はオクタデシルアミン(水添タロー第一アミン)などを含んでも良い。
【0026】
薬物又は化合物の安定性を向上させ、製剤を合理的なpH値の範囲に保証するために、本発明の薬物送達システムは、さらにpH調整剤を含んでも良い。前記pH調整剤は、有機酸、有機アルカリ又は無機酸、無機アルカリからなる群から選択される。例えばクエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸、コハク酸、マレイン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、水酸化ナトリウム、アルギニン、リジンなどの少なくとも1種である。
【0027】
本発明の具体的な実施形態の好ましい実施例において、クエン酸が添加されている。
本発明の第二側面は、(1)リン脂質含有相を調製するステップ(リン脂質相は、直接リン脂質を使用すること、リン脂質を油などの成分と混合して溶解されること、又はリン脂質を他の成分と有機溶媒に溶解されることによって獲得される);(2)タンパク質含有水相を調製するステップ;(3)リン脂質含有相をタンパク質含有水相と混合して、温度0〜60℃、圧力400〜40000psi(pound/square inch、ポンド/平方インチ)の条件で、任意的な押し出しを行うステップを含み、その後に均質化処理する、薬物送達システムの調製方法を提供する。必要に応じて押し出しを行う場合に、押出機で所望粒度のリポソームを得るように押し出しを行い、且つサイクルの回数を低下させることができる。押し出しステップの採用は、特に熱感受性及び圧力感受性活性の物質の担載に適する。押し出しステップの後に、さらに均質化処理をする。
【0028】
従来技術とは異なって、本発明のリン脂質含有相の調製においては、有機溶媒を加えず、薬物をリン脂質、油脂と直接に混合し溶解する方法を採用することができる。
本発明の調製方法における前記タンパク質含有水相には0.005〜50%(w/v)タンパク質水溶液を用い、0.05%〜30%であることが好ましく、0.1%〜10%であることがより好ましい。本発明は、1〜5%HSA(ヒト血清アルブミン)含有水相による粒径の影響及び異なる濃度のHSAで調製されたナノ粒子の凍結融解安定性について、さらに説明した。結果は、図面1及び対応する実施例に示す。本発明の調製方法における前記タンパク質は、天然タンパク質又は人工合成タンパク質及びその誘導体からなる群から選択される。好ましい形態において、前記タンパク質は、ヒト血清アルブミン、ウシ血清タンパク質、オボアルブミン、ヘモグロビン及びその誘導体、アルブミン誘導体(例えばガラクトシル化アルブミン)及び修飾ブタ血清アルブミン(例えばPEG修飾ブタ血清アルブミン)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0029】
本発明のリン脂質含有相の調製における前記リン脂質は、天然、半合成、全合成リン脂質及びその誘導体からなる群から選ばれる。好ましい形態において、前記リン脂質は、下記の大豆レシチン、卵黄レシチン、グリセロりん酸(EPG)、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸セリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、水素化大豆レシチン、水素化卵黄レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、L-α-ジミリストイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、ジオレオイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジラウロイルホスファチジルイノシトール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルコリン、DSPE-PEG、DPPE-PEG、DMPE-PEGおよびDLPE-PEGからなる群から選択される少なくとも1種であるが、これらのものに限られない。その中で、前記DSPE-PEG、DPPE-PEG、DMPE-PEG、DLPE-PEGにおけるPEGの分子量は100〜10000である。また、そのほかの種類のPEG誘導体、例えばPEG-THS、PEG-CHS、PEG-CHMを含んでも良く、その構造式は図2に示す。
【0030】
本発明における前記均質化処理は、好ましい形態において、高圧均質化又はマイクロジェット均質化である。
その中で、高圧均質化処理のプロセスには、粗製乳剤を1,000〜40,000psiの圧力で高圧均質化して、さらに1-20のサイクルを繰り返し、理想的な乳剤を形成する。好ましい圧力が2,000〜20,000psiであり、より好ましい圧力が8,000〜16,000psiである。粗製乳剤はさらに1-15のサイクルを繰り返すことが好ましく、さらに1〜5のサイクルを繰り返すことがより好ましい。
【0031】
本発明者は、実施例において、プローブ超音波法を使用せずナノ粒子製剤を調製する原因を明示したと共に、リン脂質の重要性を確認した。これは、米国発明出願US2007082838A1においてリン脂質の作用が否定されているのとは、全く異なる。また、リン脂質に他の界面活性剤又は脂質類物質を加える合理性も証明され、これは、中国特許出願CN20031023461.Xにおいて界面活性剤の作用が否定されているのとも、全く異なる。
【0032】
本発明の具体的な実施形態の好ましい実施例において、高圧均質化処理又はマイクロジェット均質化処理をする。まず押し出しを行い、任意な所望の粒度を制御してから、均質化処理をしてもよい。
【0033】
本発明の調製方法はさらに凍結乾燥又は噴霧乾燥を含むことができる。得られた塊状物又は粉末はさらに他の所望の製剤類型に調製してもよい。その中で、凍結乾燥又は噴霧乾燥に用いられる賦形剤は、ショ糖、乳糖、グルコース、マンニトール、デキストラン、トレハロース、キシリトール、マルトース、フルクトース、タンパク質、キトサン、グリシン、クエン酸及び塩化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0034】
製剤の凍結乾燥中において、凍結乾燥保護剤(凍結乾燥賦形剤)の選択は重要なことである。それは、凍結乾燥製剤の骨格として作用するだけでなく、微粒子製剤の再分散を促進することができる。
【0035】
凍結乾燥は、昇華乾燥(第一段階の乾燥)及び脱離乾燥(第二段階の乾燥)の二つ段階に分ける。昇華乾燥の時間は製品の種類及びサブパッケージの厚みに関わる。第一段階の乾燥では水分全体の95%程度が除去される。第一段階の乾燥が完了した時に、昇華の界面が次第に容器の底部に移行してなくなることが見られる。第二段階の乾燥は、主に一部の結晶水及び固体物質の結晶格子の間隙に吸着する又は水素結合である極性基団に結合した結合水が除去され、この部分の結合水は、吸着エネルギーが高いので、十分なエネルギー(十分な温度及び真空度)を供給して脱離される必要がある。
【0036】
実験によって、第一段階の乾燥の時間が短すぎると、氷晶の昇華が不完全であり、凍結乾燥製品の外観に影響する。昇華乾燥の時間が12時間であり、そして2-3時間脱離乾燥を行うと、外観が整った、質感がルースな凍結乾燥製品が得られ、水を加えた後速やかに均一に分散させることができる。
【0037】
上記の検討によって、最終確定される凍結乾燥プロセスは、例えば以下のとおりである。-74℃で8時間プレ凍結する → -35℃で20分真空にして、最終に真空度が約15Paになる → 温度を-20℃に上昇して、12時間保持する(この段階でサンプル中の大部分の水分が除去される) → 温度を10℃に上昇して、2〜3時間保持する(この段階でサンプル中に残った水分が除去される)。
【0038】
本発明者は、好ましい実施例において、凍結乾燥保護剤の使用及び併用を検討した。具体的な結果は対応する実施例の説明内容に示す。
本発明の具体的な実施形態の一つの好ましい実施例において、凍結乾燥を含み、凍結乾燥には、凍結乾燥賦形剤として、ショ糖、トレハロース、乳糖、キシリトール、マルトースなどが用いられている。
【0039】
本発明の調製方法はさらに濾過滅菌を含んでもよい。本発明によるナノ粒子、乳剤は、微孔性濾過膜により非常に濾過滅菌しやすい。これに対し、米国発明特許出願US2007082838A1においては、ドセタキセルアルブミンナノ粒子を調製する際に、調製された粒度が均一ではない(本発明者が何度も反復して、この特許出願に関する方法ではこの問題があることを証明した)ので、それぞれ1μm、0.8μm、0.6μm、0.4μm、0.2μmの微孔性濾過膜により濾過し、段階的に大粒子を除去し、最後に0.2μm滅菌濾過の目的を達成する必要がある。該米国特許出願におけるプロセスでは、操作が複雑、時間がかかるばかりでなく、薬物含有量の損失、異なる製造ロットの間の変動、再現性なしなどの一連の問題を引き起こす。
【0040】
本発明の具体的な実施形態の好ましい実施例において、0.2μmの微孔性濾過膜による濾過滅菌を含む。
本発明より提供される薬物送達システムは、薬物の少なくとも1種の副作用を軽減するために用いられ、前記副作用は静脈刺激、静脈炎、疼痛、骨髓抑制、神経毒性、アレルギー、炎症、皮膚刺激などを含む。
【0041】
本発明の薬物送達システムは、注射(静脈、動脈、関節腔、皮下、皮内、筋肉注射などを含む)、経口(舌下、口腔粘膜)、腔(目、経鼻、耳道、気管、肺、直腸、膣、尿道などの座剤を含む)、皮膚などの経路を経て投与することを実現できる。膣投与に適する製剤は、膣座剤、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、泡又は噴霧剤製剤であっても良く、それは、活性成分以外、例えば本分野の公知の適切な担体を含む。
【0042】
本発明の薬物送達システムに設計される薬物(広義的に)は薬理的活性物質及びその薬学的に許容される賦形剤を含む。前記薬理的活性物質は薬物(狭義的に)、診断試薬及び栄養物を含み、この薬物は、抗癌薬物、麻酔類薬物、心血管類薬物、抗高血圧薬、抗炎症薬、抗関節炎薬、抗ぜんそく薬、鎮痛薬、免疫抑制剤、抗真菌薬、抗不整脈薬、抗生物質、ホルモン類薬物などからなる群から選択される。
【0043】
本発明の薬物送達システムにより設計される薬物は、鎮痛剤/解熱剤(例えば、アスピリン、パラ-アセトアミドフェノール、イブプロフェン、ナプロキセンナトリウム、塩酸ブプレノルフィン、塩酸プロポキシフェン、プロポキシフェンナプシレート、塩酸ペチジン、塩酸ヒドロモルホン、硫酸モルヒネ、塩酸オキシコドン、リン酸コデイン、酒石酸ジヒドロコデイン、塩酸ペンタゾシン、重酒石酸ヒドロコドン、酒石酸レボルファノール、ジフルニサル、トリエタノールアミン・サリチル酸、塩酸ナルブフィン、メフェナム酸、ブトルファノール酒石酸塩、サリチル酸コリン、ブタルビタール、クエン酸フェニルトルオキサミン、クエン酸ジフェンヒドラミン、メトトリメプラジン、塩酸エフェドリン、メプロバメートなど);麻酔剤(例えば、シクロプロパン、エンフルラン、ハロタン、イソフルラン、メトキシフルラン、一酸化窒素、プロポフォール(プロピルフェノール)など);抗喘息薬(例えば、アゼラスチン、ケトチフェン、トラキサノクス(Traxanox)など);抗生物質(例えば、ネオマイシン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、セファロスポリン、アンピシリン、ペニシリン、テトラサイクリンなど);抗うつ薬(例えば、ネホパム、オキシペルチン、塩酸ドキセピン、アモキサピン、塩酸トラゾドン、塩酸アミトリプチリン、マプロチリン塩酸塩、硫酸フェネルジン、塩酸デシプラミン、塩酸ノルトリプチリン、硫酸トラニルシプロミン、塩酸フルオキセチン、塩酸ドキセピン、塩酸イミプラミン、クロルイミプラミン塩酸塩、ノルトリプチリン、塩酸アミトリプチリン、イソカルボキサジド、塩酸デシプラミン、マレイン酸トリミプラミン、塩酸プロトリプチリンなど);抗糖尿病薬(例えば、ビグアナイド類、ホルモン、スルホニル尿素誘導体類など);抗真菌薬(例えば、グリセオフルビン、ケトコナゾール、アムホテリシンB、ナイスタチン、カンジシジンなど);降圧薬(例えば、プロプラノロール、プロパフェノン、オクスプレノロールン、ニフェジピン、レセルピン、トリメタファンカムシレート、塩酸フェノキシベンザミン、パルギリン塩酸塩、デセルピジン、ジアゾキシド、硫酸グアネチジン、ミノキシジル、レシナミン、ニトロプルシドナトリウム、アジマリン、アルサーオキシロン、メシル酸フェントラミン、レセルピンなど);抗炎症薬(例えば、[非ステロイド系]インドメタシン、ナプロキセン、イブプロフェン、ラミフェナゾン、ピロキシカム;[ステロイド系]コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、フルアザコルト、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾンなど);抗腫瘍薬(例えば、アントラサイクリン系抗生物質、塩酸ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、白金系薬物、例えばカルボプラチン、オキサリプラチン、エプタプラテン、酢酸白金、シスプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル-CCNU、エトポシド、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシン及びその各種の誘導体、フェネステリン、タキソール及びその誘導体、ドセタキセル及びその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン及びその誘導体、タモキシフェン、ピポスルファン、四環トリテルペン系化合物など);抗不安薬(例えば、ロラゼパム、塩酸ブスピロン、プラゼパム、塩酸クロルジアゼポキシド、オキサゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、ジアゼパム、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸ヒドロキシジン、アルプラゾラム、ドロペリドール、ハラゼパム、クロルメザノン、ダントロレンなど);免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビン、FK506(タクロリムス)など)、抗片頭痛薬(例えば、酒石酸エルゴタミン、塩酸プロプラノロール、イソメテプテンムケート、ジクロラルフェナゾンなど);鎮静剤/睡眠剤(例えば、バルビツール酸塩類[例えばペントバルビタール、ペントバルビタールナトリウム、セコバルビタールナトリウム];ベンゾジアゼピン類[例えばフルラゼパム塩酸塩、トリアゾラム、トマゼパルム、ミダゾラム塩酸塩など]);抗狭心症薬(例えば、β-アドレナリン受容体遮断薬;カルシウムチャネルブロッカー(例えば、ニフェジピン、塩酸ジルチアゼムなど);硝酸塩類[例えば、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、硝酸ペンタエリスリトール、四硝酸エリスリチルなど]);抗精神病薬(例えば、ハロペリドール、コハク酸ロキサピン、塩酸ロキサピン、チオリダジン、塩酸チオリダジン、チオチキセン、塩酸フルフェナジン、デカン酸フルフェナジン、フルフェナジンエナンテート、塩酸トリフロペラジン、塩酸クロルプロマジン、ペルフェナジン、クエン酸リチウム、プロクロルペラジンなど);抗躁薬(例えば、炭酸リチウム);抗不整脈薬(例えば、ブレチリウムトシレート、エスモロール塩酸塩、塩酸ベラパミル、アミオダロン、エンカイニド塩酸塩、ジゴキシン、ジギトキシン、塩酸メキシレチン、ジソピラミドリン酸塩、塩酸プロカインアミド、硫酸キニジン、グルコン酸キニジン、キニジンポリガラクツロ酸塩、酢酸フレカイニド、塩酸トカイニド、塩酸リドカインなど);抗関節炎薬(例えば、フェニルブタゾン、スリンダク、ペニシラミン、サルサラート、ピロキシカム、アザチオプリン、インドメタシン、メクロフェナム酸ナトリウム、チオリンゴ酸金ナトリウム、ケトプロフェン、オーラノフィン、オーロチオグルコース、トルメチンなど);抗痛風薬(例えば、コルヒチン、アロプリノールなど);抗凝固剤(例えば、ヘパリン、ヘパリンナトリウム、ワルファリンナトリウムなど);血栓溶解剤(例えば、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組換えプラスミノーゲン活性化因子など)、アルガトロバン;抗線溶剤(例えばアミノカプロン酸);血行動態学薬(例えばペントキシフィリン);抗血小板薬(例えば、アスピリン、エンピリン(empirin)、アスクリプチン(ascriptin)など);抗けいれん薬(例えば、バルプロ酸、ジバルプロエクスナトリウム、フェニトイン、フェニトインナトリウム、クロナゼパム、プリミドン、フェノバルビタール、フェノバルビタールナトリウム、カルバマゼピン、アモバルビタールナトリウム、メトスクシミド、メタルビタール、メホバルビタール、メフェニトイン、フェンスクシミド、パラメタジオン、エトトイン、フェナセミド、セコバルビタールナトリウム、クロラゼプ酸二カリウム、トリメタジオンなど);抗パーキンソン薬(例えば、アセトアミドなど);抗ヒスタミン薬/鎮痒剤(例えば、塩酸ヒドロキシジン、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニラミン、塩酸シプロヘプタジン、テルフェナジン、フマル酸クレマスチン、塩酸トリプロリジン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸ジフェニルピラリン、酒石酸フェニンダミン、マレイン酸アザタジン、トリペレナミン、マレイン酸デクスクロルフェニラミン、塩酸メトジラジン、酒石酸トリメプラジンなど);カルシウム調節に有用な薬(例えば、カルシトニン、副甲状腺ホルモンなど);抗菌薬(例えば、硫酸アミカシン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、塩酸シプロフロキサシン、塩酸クリンダマイシン、パルミチン酸クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、メトロニダゾール、塩酸メトロニダゾール、硫酸ゲンタマイシン、塩酸リンコマイシン、硫酸トブラマイシン、塩酸バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメタートナトリウム、硫酸コリスチンなど);抗ウイルス薬(例えば、インターフェロンγ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、エンテカビルなど);抗微生物薬(例えば、セファロスポリン(例えば、セファゾリンナトリウム、セフラジン、セファクロール、セファピリンナトリウム、セフチゾキシムナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォテタン二ナトリウム、セフトキシム、セフォタキシムナトリウム、セファドロキシル一水和物、セフタジジム、セファレキシン、セファロチンナトリウム、塩酸セファレキシン一水和物、セファマンドールナトリウム、セフォキシチンナトリウム、セフォニシドナトリウム、セフォラニド、セフトリアキソンナトリウム、セフタジジム、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシムナトリウムなど);ペニシリン類(例えば、アンピシリン、アモキシシリン、ペニシリンGベンザチン、クロキサシリン、アンピシリンナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンVカリウム、ピペラシリンナトリウム、オキサシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、クロキサシリンナトリウム、チカルシリンナトリウム、アズロシリンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、メチシリンナトリウム、ナフシリンナトリウムなど)、エリスロマイシン類(例えば、エチルコハク酸エリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロマイシンエストレート、エリスロマイシンラクトビオネート、エリスロマイシンステアレート、エチルコハク酸エリスロマイシンなど)、テトラサイクリン類(例えば、塩酸テトラサイクリン、塩酸ドキシサイクリン、塩酸ミノサイクリンなど)、など);抗感染剤(例えば、GM-CSF);気管支拡張剤(例えば、交感神経様作用類(例えば、塩酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、硫酸テルブタリン、イソエタリン、イソエタリンメシレート、塩酸イソエタリン、硫酸アルブテロール、アルブテロール、ビトルテロールメシレート、塩酸イソプロテレノール、硫酸テルブタリン、酒石酸エピネフリン、硫酸メタプロテレノール、エピネフリン、酒石酸エピネフリン);抗コリン作用性薬(例えば、臭化イプラトロピウム);キサンチン類(例えば、アミノフィリン、ジフィリン、硫酸メタプロテレノール、アミノフィリン);マスト細胞安定剤(例えば、クロモリンナトリウム)、;吸入コルチコステロイド類(例えば、フルニソリドベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン一水和物)、アルブテロール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)、臭化イプラトロピウム、サルブタモール、ケトチフェン、サルメテロール、キシナホ酸塩、硫酸テルブタリン、トリアムシノロン、アミノフィリン、ネドクロミルナトリウム、硫酸メタプロテレノール、アルブテロール、フルニソリドなど);ホルモン(例えば、アンドロゲン類(例えば、ダナゾール、テストステロンシピオネート、フルオキシメステロン、エチルテストステロン、テストステロンエナント酸エステル、メチルテストステロン、フルオキシメステロン、テストステロンシピオネート)、エストロゲン類(例えば、エストラジオール、エストロン、結合体化エストロゲン)、プロゲスチン類(例えば、酢酸メトキシプロゲスチン、酢酸ノルエチンドロン)、コルチコステロイド類(例えば、トリアムシノロン、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン懸濁液、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロンヘキサセトニド(triamcinolone hexacetonide)、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシピオネート、プレドニゾロン、酢酸フルオロコルチゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロンテブト酸エステル、酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウムなど)、甲状腺ホルモン類(例えば、レボチロキシンナトリウムなど)など);血糖降下薬(例えば、ヒトインスリン、精製ウシインスリン、精製ブタインスリン、グリブリド、クロルプロパミド、グリピジド、トルブタミド、トラザミドなど);抗高脂血症薬物(例えば、クロフィブレート、デキストロサイロキシンナトリウム、プロブコール、ロバスタチン、ナイアシンなど);タン
パク質(例えば、デオキシリボヌクレアーゼ、アルギナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、リパーゼなど);核酸(例えば、任意の治療用タンパク質(本明細書に記載されている任意のタンパク質を含む)をコードするセンス又はアンチセンス核酸など);赤血球生成の刺激に有用な薬物(例えば、エリスロポエチン);抗潰瘍/抗逆流薬(例えば、ファモチジン、シメチジン、塩酸ラニチジンなど);抗吐き気/制吐薬(例えば、塩酸メクリジン、ナビロン、プロクロルペラジン、ジメンヒドリネート、塩酸プロメタジン、チエチルペラジン、スコポラミンなど);脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、Kなど);カルシトニオール ;そのほか例えば、ミトタン、ニトロソウレア塩、メチルヒドロキシエリプチシン(酢酸エリプチニウム)など。さらに、ベルテポルフィン、ブホゲニン、ブファリン、トリプトライド、シドホビル、バイサイクロル及びその誘導体、ビフェニルジカルボキシラート(Biphenyldicarboxylate)及びその誘導体、グリチルリチン酸、マトリン、アムロジピン、レボチロキシンナトリウム、メタンスルホン酸ジヒドロエルゴトキシン、硝酸ブトコナゾール、メロキシカム、ルビテカン(rubitecan)、ペメトレキセド、monosialotetrahexosyl ganglioside GM1、プエラリン、ゲムシタビン、ヒューペルジンA、ブレイアコニチンA、リダマイシン、ナマコ抽出物、エゾアカガエル(Rana chensinensis)などからなる群から選択されるが、これらのものに限られない。
【0044】
従来の文献において、HSAを乳化剤として用い、クロロホルムなどの油相に対し乳化し、高剪断力によって、HSAのタンパク質がジスルフィド結合を介して架橋しタンパク質ナノ粒子が形成されるが、従来技術の問題は、安定、且つ粒度が小さいナノ粒子を調製しにくいことである。
【0045】
本発明の具体的な実施形態の好ましい実施例において、それぞれククルビタシン、ドセタキセル、10-ヒドロキシカンポテシン、アムホテリシンB、プロポフォール、エンテカビル(entecavir)及びタキソールなどの薬物が採用される。
【0046】
また、タンパク質-リン脂質製剤に存在するリポソーム構造を利用し、硫酸アンモニウム勾配、pH勾配、イオン勾配などの手段により薬物を担載しても良く、好ましい薬物はドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、トポテカン、ミトキサントロン、ビンクリスチン又はビノレルビンなどからなる群から選択されることができる。
【0047】
本発明の薬物送達システムは任意の適切な形式で人体又は動物に用いられることができる。好ましい形態において、本発明の薬物送達システムを含む薬物組成物を静脈内、動脈内、筋肉内、経口、肺まで吸入、気管内、皮下、点眼、膀胱内又は経皮を経て投与する。
【0048】
中国特許出願CN20031023461.Xに報告された方法を採用すると問題が存在するので、我々は懸命に努力したが、文献に指摘されているタンパク質ナノ粒子を調製できなかった。さらに、従来のプロセスには多量の有機溶媒、例えばクロロホルム、塩化メチレンなどが採用されているので、それらの毒性が大きいところ、環境保全及び労働者の労働保護の問題を考慮して、本発明者による構築した技術基盤によれば、毒性溶媒の使用を大きく減少させることができ、ひいては有毒な溶媒を使用しないことができる。さらに、発明にはリン脂質を用いるので、タンパク質ナノ粒子の薬物担載の範囲が大きく広くなり、粒度も低下させ、微孔性濾過膜により濾過滅菌することができる。また、処方にリン脂質又はその他の脂質が加えられているので、これらの脂質成分により親油性基団を含有するリガンド、抗体及びその誘導体を担載することができ、主動的に薬物を標的に伝達する目的を達成することができる。我々は、長期間の数多くの試験によって、リン脂質をタンパク質と結合し、驚くほどの結果が得られ、調製されたナノ製剤の安定性が大きく向上し、粒度が任意に調整され、さらに重要なことには、各種の方法によって各種のリガンド、抗体などの主動に識別する頭基をナノ製剤に挿入して、より価値と意味のある薬物送達システムを得られることを発見した。
【0049】
特に腫瘍に対して、HSAは血管内皮細胞膜におけるアルブミン受容体Gp60と結合して、カベオラ(caveolae)が媒介するアルブミン輸送を作動し、薬物を運んで血管内皮を透過することができる。通常、腫瘍組織においては、SPRAC(Secreted Protein Acidic and Rich in Cystein、システインに富む酸性分泌タンパク質)の発現が強められる。SPRACは、非構造の細胞骨格タンパク質であり、組織の形成、胚発生及び癌細胞の侵入と転移の過程や、細胞マトリックスの相互作用に関わる。SPRACは、Gp60と相同の配列を有し、アルブミンと結合することもできることによって、HSAナノ粒子が腫瘍組織に蓄積しやすく、薬物貯留庫を形成して、薬物の腫瘍細胞を殺傷する標的性を向上させる。インビトロの細胞培養試験によっても、HSAナノ粒子が薬物と腫瘍細胞との親和力を向上させることが証明された。
【0050】
さらに、本発明の薬物送達システムは、リン脂質の寄与により、単独で使用して水相に分散させることができ、溶媒の加入の必要がなく、ナノ分散を容易に実現することができる。
【0051】
本発明の具体的な実施形態の好ましい実施例において、それぞれヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清タンパク質、ブタ血清タンパク質、卵白アルブミン、トウモロコシタンパク質及びPEGブタ血清タンパク質などが用いられる。
【0052】
本発明の具体的な実施形態の一つの好ましい実施例において、卵黄レシチン(EPC)、もう一つの好ましい実施例において、大豆レシチン(SPC)、さらに一つの好ましい実施例において、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)及びジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、よりさらに一つの好ましい実施例においてHSPC及びDSPG、よりさらに一つの好ましい実施例においてレシチン及びDOPC、よりさらに一つの好ましい実施例において、レシチン、よりさらに一つの好ましい実施例において、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、よりさらに一つの好ましい実施例において、TPGS、PEG-CHSなどが、それぞれ用いられる。
【0053】
本発明の具体的な実施形態の一つの好ましい実施例においてエタノール、もう一つの好ましい実施例において、メチルピロリドン又はメチルピロリドン/メタノール混合溶媒、さらに一つの好ましい実施例においてメタノール、よりさらに一つの実施例においてt-ブタノール、よりさらに一つの好ましい実施例においてイソプロピルエーテルが、それぞれ用いられる。
【発明の効果】
【0054】
従来技術と比較して、本発明の利点は主に以下のとおりである。
1.リン脂質とタンパク質を併用することにより、製剤の製造の実行性を大きく向上させ、特に、有毒な、又は毒性が大きい有機溶媒を用いずに低毒性の有機溶媒を採用し、ひいては有機溶媒を使用しないことができる。
【0055】
2.リポソーム技術と組み合わせることにより、リポソーム表面又はリポソーム表面と内部にジスルフィド結合で架橋したタンパク質層が被覆され、リポソームの安定性を大きく向上させる。
【0056】
3.リポソームの特徴を利用し、従来のタンパク質ナノ粒子の薬物担載範囲を大きく広げ、例えば硫酸ビンクリスチン、ドキソルビシン、トポテカン、チモペンチン、インスリン、bFGFなど(従来の特許、例えばCN03108361.7A、US2007082838A1において、水難溶性薬物のみに適用される)が担載される。
【0057】
4.従来技術では、タンパク質を含有するナノ粒子を調製する際に、分散のサイクルの回数が多く、少なくとも高圧下で5回のサイクルが必要であり(例えば中国特許出願CN200310123461.X)、最も多い場合は15回以上になることによって、タンパク質の変性の機会が増え、コストを増加させてしまったが、本発明では、分散の回数を減少させることができ、最適な処方プロセスでは、1〜5のサイクルのみを繰り返す。
【0058】
5.分散圧力を低下させる。通常、従来のプロセスでは、20000psiを超える圧力が必要であるが、本発明の好ましいプロセスでは、20000psi未満の圧力で同一の、さらにはより小さい粒径の分散システムが得られる。
【0059】
6.リン脂質の良好な分散能力により、液体型のリン脂質-タンパク質を含む薬物送達システムを調製でき、かつ、安定性に優れ、従来プロセスの数時間から、数十時間、さらには、数十日に延長することができる。
【0060】
7.リン脂質そのものが界面活性剤であり、リン脂質の加入によって、システム全体にそのほかの各種の界面活性剤が添加され、かつ、他の界面活性剤の加入によって、さらに粒度を大きく低下させ、リン脂質の用量を減らし、コストも低くなり、薬物送達システムの調製しやすさ、適用性を確保する。
【0061】
8.リン脂質の価値を合理的に利用するため、外挿入方法により各種のリガンド及びその誘導体、抗体及びその誘導体を任意にナノ粒子に挿入して、標的性をさらに向上させる。
【0062】
9.リン脂質の価値を合理的に利用するため、予め油類含有ナノ粒子を調製し、又は押し出しプロセス技術と結合し、即ち、まず高圧下又は押し出しプロセスにより粒度を低下させ、任意に所望の粒度サイズを得、そして、タンパク質を外添し、高圧下分散を1〜2回繰り返せばよい。これは、タンパク質変性の可能性を低減し、タンパク質の活性を確保し、タンパク質の用量を大きく減少させることができる。
【0063】
10.リン脂質の価値を合理的に利用するため、リン脂質をタンパク質、添加物、薬物と混合し分散させ、特に、押し出しプロセスにより、マイルドな条件下で所望の粒度まで低下させ、最後に低圧で分散処理し、所望のタンパク質ナノ粒子(タンパク質ナノ小胞)(例えば、タンパク質含有水相を用いてリン脂質を水和し、押し出しを行い、任意の所望の粒度を制御してから、均質化処理をする)を調製することができる。これは、圧力及び/又は高熱感受性の薬物に非常に適している。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、本発明の異なる濃度のHSAによるCuB(ククルビタシンB)製剤粒度の凍結融解検討である図面である。
【図2】図2は、PEG-THS、PEG-CHS及びPEG-CHMの構造式を示す図面である。
【図3】図3は、本発明の「実施例12」のナノ製剤の粒径分布の図面である。
【図4】図4は、本発明の「実施例12」のナノ製剤の30日置いた後の粒径分布の図面である。
【図5】図5は、本発明の「実施例25」のナノ粒子径の写真図である。
【図6】図6は、本発明の「実施例32」のリポソーム写真図である。
【図7】図7は、本発明のククルビタシンB溶液のHep-2細胞(ヒト喉頭癌上皮細胞)の増殖抑制作用への影響を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明のCuB HSAナノ粒子、CuB/HSA溶液の異なる剤量によるHep2(ヒト喉頭癌上皮細胞)細胞の増殖抑制作用への影響を示す模式図である。
【図9】図9は、本発明CuB HSAナノ粒子、CuB/HSA溶液の異なる剤量によるA549(ヒト肺腺癌細胞)の増殖抑制作用への影響を示す模式図である。
【図10】図10は、本発明CuB HSAナノ粒子、CuB/HSA溶液の異なる剤量によるHepG2(ヒト肝癌細胞)の増殖抑制作用への影響を示す模式図である。
【図11】図11は、異なる腫瘍細胞に対する成長抑制作用において本発明のククルビタシンB HSAナノ粒子を乳剤、リポソームと比較することを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
次に、実施例を組み合わせて、さらに具体的に本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の内容を限定するものではなく、説明するためのものであり、いかなる形式上の変動及び/又は変更も、本発明の要旨に適応する限り、本発明の保護範囲に属するものであると理解されるべきである。
【実施例1】
【0066】
実施例1 プローブ超音波法によるククルビタシンHSAナノ粒子の調製における問題
ククルビタシンB 0.01g
HSA 4g
水 適量
ククルビタシンB(純度98%超え)を1mlエタノールで溶解し、用意しておいた。処方量のHSAを水で溶解し、4%(g/ml)の溶液に調製した。HSA溶液をククルビタシンBのエタノール溶液に加え、分散させた後、超音波装置に置いた。200W超音波処理してから、600W超音波で5分間分散させ、乳状液を得た。回転蒸発によって有機溶媒を除去した。得られたナノ粒子の平均粒径は282.2nmであり、分布が広くて、0.45μmの微孔性濾過膜を通過させることができず、20分置くと、沈殿が生じ、システムが不安定であった。凍結乾燥後の再分散性が悪く、凍結乾燥前の状態に回復し難く、再び溶ける後の粒度が400nmを超えた。
【実施例2】
【0067】
実施例2 リン脂質の添加によってプローブ超音波法によるククルビタシンHSAナノ粒子の調製における問題を解決する
ククルビタシンB 0.01g
HSA 4g
S100 1.5g
水 適量
ククルビタシンB(純度98%超え)及びS100(大豆レシチン、SPC、ドイツLIPOID社)を1mlエタノールで溶解し、用意しておいた。処方量のHSAを水で溶解し、4%の溶液に調製した。HSA溶液をククルビタシンB/リン脂質のエタノール溶液に加え、分散させた後、超音波装置に置いた。200W超音波処理してから、600W超音波で5分間分散させ、乳状液を得た。回転蒸発によって有機溶媒を除去した。得られたナノ粒子の平均粒径は156nmであり、分布が鋭く、0.4μm、0.3μmの微孔性濾過膜を通過させることができ、60分置くと、沈殿が生じず、システムの安定性が大きく向上した。凍結乾燥後の再分散性が良く、凍結乾燥前の状態に回復でき、再び溶ける後の粒度が166nmであった。
【実施例3】
【0068】
実施例3 t-ブタノールでリン脂質を溶解してククルビタシンHSAナノ粒子を調製する
ククルビタシンB 0.01g
HSA 4g
S100 1.5g
水 適量
ククルビタシンB(純度98%超え)及びS100(大豆レシチン、SPC、ドイツLIPOID)を5mlのt-ブタノールで溶解し、用意しておいた。処方量のHSAを水で溶解して4%の溶液に調製した。HSA溶液をククルビタシンB/リン脂質t-ブタノール溶液に加え、分散させた後、超音波装置に置いた。200W超音波処理してから、600W超音波で5分間分散させ、乳状液を得た。得られたナノ粒子の平均粒径は139nmであり、分布が鋭く、0.45μm、0.3μmの微孔性濾過膜を通過させることができ、60分置くと沈殿が生じず、システムの安定性が大きく向上した。凍結乾燥後の再分散性が良く、凍結乾燥前の状態に回復でき、再び溶ける後の粒度が157nmであった。
【0069】
t-ブタノールを用いるため、減圧で溶媒を除去する必要がなく、直接凍結乾燥をすればよく、プロセスがより簡単になる。
【実施例4】
【0070】
実施例4 マイクロジェット法によるCuB HSAナノ粒子を調製する場合の圧力の粒度に対する影響
ククルビタシンB 0.01g
HSA 4g
S100 1.5g
水 適量
ククルビタシンB(純度98%超え)及びS100(大豆レシチン、SPC、ドイツLIPOID)を1mlエタノールで溶解し、用意しておいた。処方量のHSAを水で溶解して4%の溶液に調製した。HSA溶液をククルビタシンB/リン脂質のエタノール溶液に加え、分散させた後、マイクロ流動化装置に置いて均質化して、圧力及びサイクルの回数による粒度の影響を検討した。その結果は表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
これによって、分散圧力が800psiから8000psiに上昇された後、ナノ粒子の粒径が著しく減小し、2回のサイクルでも100nm未満のナノ粒子が得られるが、8000psiにおいてサイクルの回数が多くなっても、粒径は、有意に低下されず、サイクルの回数が多過ぎる際にのみ、僅かに増加したことが分かる。
【実施例5】
【0073】
実施例5 異なる油相に対する検討
基本処方:
ククルビタシンB 0.05g
HSA 4g
S75 2g
油 2g
水 適量
リン脂質を含有し、リン脂質と油との比率が1:1であった。
【0074】
ククルビタシンB(純度98%超え)、油及びS75(大豆レシチン、SPC、ドイツLIPOID社)を加熱溶解した後、30ml水で分散させ、均質化機により処理して、200nm未満の平均粒度が得られ、用意しておいた。処方量のHSAを水で溶解して5%の溶液に調製した。HSA溶液をククルビタシンB乳液に加え、均一に混合した後、マイクロ流動化装置(10000psi、1回のサイクル)においてさらに均質化分散させた。その結果は下の表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
平均粒径が200nm未満であるナノ粒子が得られた。MCT、オレイン酸及び構造化油によって調製されたナノ粒子の平均粒度が最も小さかった。
【実施例6】
【0077】
実施例6 異なる量のMCTによって調製されたCuB HSAナノ粒子の凍結融解安定性
「実施例5」の処方及び方法にしたがって、異なる含有量のMCTのCuB HSAナノ粒子を調製して、一回の凍結融解(-30℃で一晩凍結、室温で再び融解)処理した後にその粒径変化を測定することにより検討した。その結果は表3に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
これによって、MCTの用量の増加に従い、調製されたCuB HSAナノ粒子の凍結融解後の粒径増加の幅が大きくなり、特にMCTは処方中における量が3%になる場合、ナノ粒子の凍結融解後の粒径増加がより著しかった(%の単位がg/mlである。)ことが分かる。
【実施例7】
【0080】
実施例7 異なる水相濃度のHSAによるナノ製剤の粒径の影響
基本処方:
ククルビタシンB 0.01g
HSA 適量
DLPC 2g

「実施例4」の基本プロセスにしたがって、圧力が12000psiであり、3回のサイクルを繰り返した。
【0081】
(1)水相中1%濃度のHSA:平均体積は、84.4nmで、0.22μm濾過後87.9nmになり、凍結融解後に粒度が246nmに増加した。
(2)水相中2%濃度のHSA:平均体積は91.5nmで、0.22μm濾過後88.8nmになり、凍結融解後に粒度が116nmになった。
【0082】
(3)水相中3%濃度のHSA:平均体積は90.3nmで、0.22μm濾過後90.6nmになり、凍結融解後に粒度が121nmになった。
(4)水相中4%濃度のHSA:平均体積は91.8nmで、0.22μm濾過後92.2nmになった。
【0083】
(5)水相中5%濃度のHSA:平均体積は93.6nmで、0.22μm濾過後93.8nmになった。
本発明において、HSAの濃度は、製剤の最終の粒度に対し有意な影響がないが、凍結融解後に影響を与えたことが分かる。1%、2%、3%HSAの結果は図面1に示す。
【実施例8】
【0084】
実施例8 単一の凍結乾燥保護剤のスクリーニング
基本処方:
ククルビタシンB 0.01g
HSA 3g
DMPC 3g
水 適量
「実施例4」の基本プロセスにしたがって、圧力が12000psiであり、3回のサイクルを繰り返した。得られたナノ粒子液体は以下のプロセスに従い凍結乾燥を行った。
【0085】
凍結乾燥プロセスは以下のとおりであった。-70℃で6時間プレ凍結し、真空度が15Pa以下(好ましいのは5Pa以下)になるまで真空にし、-35℃で6時間真空にしてから、真空の状態下、温度を-35℃から10℃まで線形上昇させ、10時間保持し、10℃で2時間保持した。
【0086】
ククルビタシンHSAナノ粒子の凍結乾燥保護剤として、それぞれ、トレハロース、乳糖、ショ糖、マンニトール、グルコースを用いた。試験結果は下表に示す。
1)凍結乾燥製剤の外観:表面が整い、白いケーキ状で、ふっくらしており、結晶がないのは(−)として;表面が整い、白いケーキ状で、ふっくらしており、微小な鱗状結晶があるのは(+)として;ふっくらしているが、長い針状結晶があるのは(++)として;凍結乾燥の製品がボトル壁から剥離し、全体的に針状結晶であるのは(+++)とした。
【0087】
2)凍結乾燥製剤の水和後の透光性:凍結乾燥前(半透明、明らかな乳白光)と同じであるのは(−)として、凍結乾燥前と比べ透明度が僅かに低下したが、依然に明らかな乳白光であるのは(+)として、殆ど不透明であり、僅かに乳白光であるのは(++)とした。その結果は表4に示す。
【0088】
【表4】

【0089】
保護剤が添加されたナノ粒子の凍結融解安定性は保護剤が添加されていない場合より優れ、保護剤が添加された製品は、水和後に得られたナノ粒子がいずれも24時間内に安定であり、その中でマンニトールが添加された製剤の外観が最も良く、水和時間について、トレハロース、乳糖、グルコースがマンニトール、ショ糖より優れたことが明らかなことである(%の単位がg/mlである。)。
【実施例9】
【0090】
実施例9 凍結乾燥保護剤の併用に対する検討
ナノ製剤の調製方法は実施例8と同じであり、その結果は下表5に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
凍結乾燥保護剤の併用によって、ナノ粒子の凍結融解安定性をさらに向上させ、10時間内に安定であり、その中で「6%マンニトール+3%乳糖」及び「7%マンニトール+3%トレハロース」を保護剤として用いた凍結乾燥製品の水和後の粒度は48時間内に変化しなかったことが分かる。
【実施例10】
【0093】
実施例10 ドセタキセルリポソーム
それぞれドセタキセル及びリン脂質(EPCS、ドイツLIPOID社)を量り取り、薬物と脂質の重量比を1:15、1:20、1:25、1:30、1:35(w/w)として、クラシックス薄膜法によりドセタキセルリポソームを調製した。その結果によって、薬物と脂質の比が1:15及び1:20である場合、6±2℃冷蔵庫に一晩置くと薬物の結晶が析出しており、薬物と脂質の比が1:25及び1:30である場合、6±2℃冷蔵庫内に5日間置くとリポソームが僅かに凝集し、沈殿が生じており、薬物と脂質との比が1:35である場合、リポソームの安定性が良好であり、15日間置いても沈殿が生じなかった。
【0094】
検討によると、ドセタキセル及びリン脂質の用量は直接リポソームの安定性に関連し、薬物と脂質との比が大きすぎると、リポソーム二重層の担載能力を超え、薬物が析出してしまい、ひいては性質安定なリポソームを形成できなかった。凍結乾燥技術により凍結乾燥処理をしても、得られた凍結乾燥製剤は凍結乾燥前の状態に回復しにくい。
【実施例11】
【0095】
実施例11 クロロホルム溶媒を用いるタンパク質ナノ粒子の調製における問題
処方:
ドセタキセル 60mg
クロロホルム 1ml
HSA 600mg
調製:処方量のドセタキセルを量り取り、1mlクロロホルムで溶解して得られた溶液を用意しておいた。市販HSA注射液(ヒト血清アルブミン注射液)を水で希釈して、2%濃度、即ち30mlの2%HSA溶液に調製した。2%HSA溶液を用いて、ドセタキセルのクロロホルム溶液を乳化し、20000psi下で分散させた。得られたナノ分散液に対し、減圧下クロロホルムを回収して、残った分散液体は0.8μm微孔性濾過膜を通過させにくかった。約3時間置くと、沈殿が生じた。
【実施例12】
【0096】
実施例12 リン脂質の重要性の説明
処方:
ドセタキセル 60mg
無水エタノール 1.5ml
大豆レシチン(SPC) 1500mg
HSA 600mg
調製:処方量のドセタキセル、リン脂質を量り取り、1.5ml無水エタノールで溶解して得られた溶液を用意しておいた。HSAを水で2%濃度、即ち30mlの2%HSA溶液に調製した。2%HSA溶液を薬物/リン脂質のエタノール溶液中に加え、撹拌し、20000psi下で分散させ、半透明の分散体を得た。この分散体は容易に0.22μm微孔性濾過膜を通過させることができ、滅菌濾過の目的を達成した。測定した結果、その粒度が31.8nmであった(図面3参照)。それを室温で約30時間置くと、沈殿が生じなかった。6±2℃冷蔵庫に30日間置いても、沈殿が生じなかった。粒度測定の結果によると、粒度が変化せず(図面4参照)、平均粒径が31.2nmであった。
【実施例13】
【0097】
実施例13 リン脂質-タンパク質を含むドセタキセルナノ粒子
一、処方:100ml
ヒト血清アルブミン(HSA) 2g
卵黄レシチン(EPC) 4g
無水エタノール 3ml
ドセタキセル(Doc) 0.2g
クエン酸 適量
蒸留水 100mlになるまで加える
二、以下のステップを含む方法にしたがって調製する
1、脂質相の調製
処方量のEPC、Docを精密に量り取り、ビーカに置いて、エタノール(特に限定されていない場合に、その濃度が95%であり、以下同様)4mlを加え、窒素ガス雰囲気で上述の物質を溶解し、均一に混合し、清澄溶液、即ち脂質相を得た。
【0098】
2、水相の調製
市販のヒト血清アルブミン(20%、w/v(g/ml))を滅菌注射用水で希釈し4%溶液に調製し、クエン酸でpH4に調節し、水相を得た。
【0099】
3、分散
水相を脂質相に加え、撹拌し分散させ、乳状の分散液体を得た。
4、均質化
上述の液体をマイクロ流動化装置に移送し、400〜12000psiでさらに5回均質化した。
【0100】
5、測定して、そのpHが5〜6であった。0.22μm微孔性濾過膜を通じて濾過し滅菌し、分割包装し、キャッピングした。粒度を測定したところ、その平均体積粒径が160nmであった。
【0101】
製剤の安定性が良好であり、調製後の液体を冷蔵庫(2-8℃)に1ヶ月間置くと、層間剥離、沈降が見られず、外観が依然として清澄で、透明であった。
また、必要に応じて、処方中に10%ショ糖を加え、-80℃で4時間プレ凍結し、10時間真空にし、30℃で5時間保持し、凍結乾燥製剤を得ることができる。
【0102】
上述のように得られた凍結乾燥製剤を水で水和した後、凍結乾燥前の状態に回復することができ、平均体積粒径が166nmであった。
実施例13-1
処方における配合比は実施例13と同じであり、また、卵黄レシチンの代わりにLipoid E80(ドイツLIPOID社)を用いる以外の具体的な操作も実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-2
処方における配合比は実施例13と同じであり、また、卵黄レシチンの代わりにLipoid S100(ドイツLIPOID社)を用いる以外の具体的な操作も実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-3
処方における配合比は実施例13と同じであり、また、卵黄レシチンの代わりにLipoid EPG(ドイツLIPOID社)を用いること以外の具体的な操作も実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-4
処方における配合比は実施例13と同じであり、また、卵黄レシチンの代わりにLipoid E DPPG(ドイツLIPOID社)を用いる以外の具体的な操作も実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-5
処方における配合比は実施例13と同じであり、また、卵黄レシチンの代わりにLipoid E DMPG(ドイツLIPOID社)を用いること以外の具体的な操作も実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-6
処方における配合比は実施例13と同じであり、また、卵黄レシチンの代わりにLipoid E DPPC(ドイツLIPOID社)を用いる以外の具体的な操作も実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-7
処方における配合比は実施例13と同じであり、また、卵黄レシチンの代わりにLipoid E DMPC(ドイツLIPOID社)を用いる以外の具体的な操作も実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-8
実施例13の処方において0.01gのTween80を加える以外の具体的な操作は実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-9
実施例13の処方において0.1gのTween80を加える以外の具体的な操作は実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
実施例13-10
実施例13の処方において0.01gのTPGSを加える以外の具体的な操作は実施例13と同様であった。試験結果は実施例13と類似した。
【実施例14】
【0103】
実施例14
処方:
10-ヒドロキシカンポテシン 10mg
DMPC 100mg
DMPG 200mg
無水エタノール 適量
HSA 3000mg
処方量の10-ヒドロキシカンポテシン、DMPC、DMPGを量り取りナシフラスコに置き、適量のエタノールを加え、加熱溶解した。得られた溶液を減圧回収して、薬物及びリン脂質はフラスコの底部に膜状構造を形成した。そして、50mlヒト血清アルブミン溶液(6%w/v)を加え、混合、水和した。得られた水和物を9000-40,000psiで乳化して、5回のサイクルを繰り返した。得られた製剤の平均粒度が116nmであった。該分散体は、さらに凍結乾燥して、ケーキ状の凍結乾燥製剤を得ることができる。滅菌水、グルコース注射液又はキシリトール注射液を加えることによって、元の分散体に再構成した。
【0104】
本実施例に用いられる薬物、溶媒、タンパク質の量、類型及び比率はいかなる形態に限られないものであると考えられる。
実施例14-1
カンプトテシン類薬物、例えばヒドロキシカンポテシン、カンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、7-エチル-10-ヒドロキシカンポテシンなどについて、アルカリ性物質(任意のアルカリ性物質、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、リジンなど)を加え、簡単にpHを調整し、pH値が7.4を超えるように薬物を溶解し、薬物の水溶液に調製してから、リン脂質と混合し、均質化機又は超音波分散により、粒径を任意な所望の粒径(例えば100nm未満、又は50nm未満)に調製することができる。薬物を含むリン脂質分散体を得た後、新たに酸性物質(任意の酸性物質、例えばクエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸など)を加え、pH値が7.4未満になるように調整してから、HSAと混合して、高圧又は高強度超音波により一回分散すればよい。よって、タンパク質が脂質ナノ粒子の表面又は内部にジスルフィド結合を形成し、安定にナノ粒子に分布することを確保できる。得られた製剤は注射、経口、外用してもよい。
【0105】
その他の操作は実施例14と同様であった。
【実施例15】
【0106】
実施例15
処方:
アムホテリシンB 50mg
HSPC 213mg
DSPG 84mg
コレステロール(CH) 52mg
メチルピロリドン/メタノール 適量
トコフェロール 0.64mg HSA 400mg
調製プロセス:
処方量のアムホテリシンB、HSPC、DSPG、CH、トコフェロールをメチルピロリドン/メタノール混合溶媒に溶解し、有機溶媒を減圧除去し、用意しておいた。400mg HSAを注射用水に溶解し、1%(w/v)HSA溶液に調製した。HSA溶液でアムホテリシンB混合物を分散させ得られた分散液体を8000-20,000psiで乳化し、少なくとも3回のサイクルを繰り返し、半透明の分散体を得、平均直径が110nmであった。通常の方法により凍結乾燥することができる。
【0107】
pH測定 5.0-6.0。
【実施例16】
【0108】
実施例16
処方:
カルシトリオール 0.001g
DPPC 0.1g
コレステロール 0.01g
HSA 1g
処方量のカルシトリオール、DPPC、コレステロールに対し、0.5mlメタノールを加え溶解させ、用意しておいた。処方量のHSAを取り、注射用水で溶解して、1%溶液に調製した。HSA溶液をカルシトリオール、DPPC、及びコレステロールのメタノール溶液に加え、撹拌、分散させ、顕微鏡観察によるとリポソームであった。このリポソームを60℃温度で押出機により造粒し、0.4、0.3、0.22、0.1、0.05、0.01μmの微孔性濾過膜をそれぞれ3回通過させ、分散系の粒径を30nm以下に低下させた。均質化機によりさらに分散させ、リポソームの表面及び内部の水相におけるHSAが均質化機による分散処理によってジスルフィド結合を形成して、架橋したタンパク質はリポソームに対し保護作用があり、リポソームの長期間の貯蔵安定性をさらに確保する。このシステムにおいて、カルシトリオールの濃度が1mg/100ml、即ち10μg/1mlであった。さらに注射用水を1000mlになるまで加えることができ、薬物の濃度が1μg/1mlになった。凍結乾燥が必要であれば、処方に5%グリシン(W/V)、即ち1000ml薬物液体に50gグリシンを加え、通常の方法により凍結乾燥すればよい。
【実施例17】
【0109】
実施例17
処方:
カルシトリオール 0.001g
カプリン酸 1g
DLPC 1g
HSA 10g
処方量のカルシトリオール、カプリン酸、DLPCを窒素ガス雰囲気下加熱溶解し、用意しておいた。処方量のHSAを取り、注射用水で溶解し、3%溶液に調製した。HSA溶液でカルシトリオール含有脂質相を水和し、撹拌、分散させ、顕微鏡観察によると乳剤であった。均質化機によりさらに分散させて、乳剤表面におけるHSAが均質化機による分散処理によってジスルフィド結合を形成して、架橋したタンパク質は乳剤に対し保護作用があり、乳剤の長期間の貯蔵安定性をさらに確保する。注射用水を1000mlになるまで加えることができ、薬物の濃度が1μg/1mlになった。凍結乾燥が必要であれば、処方に10%ショ糖(g/ml)、即ち1000ml薬物液体に100gショ糖を加え、通常の方法により凍結乾燥すればよい。
【実施例18】
【0110】
実施例18
処方:
アムホテリシンB 50mg
ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC) 34mg
ジオクタノイルホスファチジルグリセロール 60mg
クエン酸 5mg
ヒト血清アルブミン 300mg
調製:処方量のアムホテリシンB、DMPC、ジオクタノイルホスファチジルグリセロールを取り、適量のメタノールで溶解して、メタノールを減圧回収した。ヒト血清アルブミンを蒸留水で4%の溶液に調製し、クエン酸を加え溶解して得られた溶液を、アムホテリシンB-リン脂質複合物に加え、水和し、40℃温度下で順次に0.8、0.6、0.4、0.2、0.1、0.05μmの微孔性濾過膜を通過させ、得られた分散液体を超音波装置に置き超音波処理をする(600W超音波で1分間分散)ことによって、タンパク質がジスルフィド結合を形成する。
【0111】
処方においてクエン酸の代わりに、その他のいかなる酸、例えば乳酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などを用いることができ、同様な結果が得られる。
【実施例19】
【0112】
実施例19
処方:
プロポフォール 100mg
レシチン 100mg
DOPC 300mg
EDTA-2Na 5mg
ヒト血清アルブミン 300mg
調製方法:処方量のプロポフォール、レシチン、DOPCを量り取り、窒素ガス雰囲気下加熱溶解し、用意しておいた。ヒト血清アルブミンを蒸留水で4%の溶液に調製し、EDTA-2Naを加え溶解して得られた溶液をプロポフォール-リン脂質に加え水和し、40℃温度下で順次に0.8、0.6、0.4、0.2、0.1、0.05μmの微孔性濾過膜を通過させ、得られた分散液体を超音波装置に置き超音波処理して(まず200W超音波処理して、その後600W超音波で5分間分散させる)、乳状液を得た。平均粒径が69nmであった。
【0113】
製剤の安定性は良好であり、調製後の液体を冷蔵庫(2-8℃)に1ヶ月間置くと、層間剥離、沈降が見られず、外観が依然として清澄で、透明であった。
また、0.2%〜20%(w/v)DSPE-PEGを加え、外挿入方法により、PEG被覆タンパク質ナノ粒子が得られる。
【実施例20】
【0114】
実施例20 プロポフォールナノ製剤(100ml)
処方:
プロポフォール 1g
MCT 3g
SPC 1g
EDTA-2Na 0.005g
ヒト血清アルブミン(HSA) 3g
調製方法:処方量のプロポフォール、SPC、MCTを量り取り、窒素ガス雰囲気下加熱溶解し、用意しておいた。処方量のヒト血清清タンパク質(HSA)、EDTA-2Naを注射用水で5%HSA溶液に調製し、フィルタ(0.2μm)により濾過滅菌し、水相を得た。水相を油相に加え、10,000RPMで2分間分散させて、粗乳を得た。粗乳剤を28,000psiで高圧均質化し、さらに4℃で2回のサイクルを繰り返し、最終の乳剤を得た。注射用水を100mlになるまで追加し、均一に混合し、濾過(0.2μmのフィルタ)、分割包装、窒素ガス充填、密封した。粒径が200nm未満であった。
【実施例21】
【0115】
実施例21
処方:
プロポフォール 1g
構造化油 3g
DMPG 5g
ヒト血清アルブミン 10g
調製方法は「実施例20」と同様であった。
【0116】
また、0.2%〜20%(w/v)DPPE-PEGを加え、外挿入方法により、PEG被覆タンパク質ナノ粒子が得られる。
【実施例22】
【0117】
実施例22
処方:
プロポフォール 1g
構造化油 1g
TPGS 5g
ヒト血清アルブミン 3g
調製方法は「実施例20」と同様であった。
【0118】
また、0.2%〜2%(w/v)DPPE-PEGを加え、外挿入方法により、PEG被覆タンパク質ナノ粒子が得られる。
【実施例23】
【0119】
実施例23
処方:
エンテカビル 0.5g
DOPG 5g
HSA 5g
ショ糖 10g
水 100mlになるまで加える
調製:処方量のエンテカビル、DOPGを少量のメタノールで溶解して、得られた溶液は用意しておいた。10% HSA、20%ショ糖溶液を調製し上述の薬物リン脂質溶液に加え、分散させ、4000〜40000psiで均質化処理し、粒度が100nm未満である液体を得、水を100mlになるまで加え、均一に混合した。凍結又は噴霧乾燥により固体を調製することができる。
【0120】
製剤の安定性は良好であり、調製後の液体を冷蔵庫(2-8℃)に1ヶ月間置くと、層間剥離、沈降が見られず、外観は依然として半透明であった。
【実施例24】
【0121】
実施例24 ククルビタシンE(純度95%超え)
処方組成(100ml、ククルビタシンEの濃度0.1mg/ml)
ククルビタシンE 0.01g
油(MCT) 1g
リン脂質(S75) 0.1g
HSA 5g
マンニトール 6g
グルコース 1g
水 適量
調製:処方量のククルビタシンE、MCT、S75(Lipoid S 75、上海東尚実業有限公司)を加熱溶解し、用意しておいた。処方量のマンニトール、グルコースを取り、注射用水50mlを加え溶解させ、少量の活性炭を加え発熱物質を除去し、冷却後に25ml市販の20%HSAを加え、均一に混合して得られた溶液を濾過滅菌した。得られたHSA含有水溶液を油相に加え分散させて、さらに1000〜20,000psiで高圧均質化し、5回のサイクルを繰り返し、最終の乳剤を得た。濾過(0.2μmのフィルタ)、分割包装、凍結乾燥、窒素ガス充填、密封した。平均粒径が300nm未満であった。
【0122】
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-74℃、4h;真空にして乾燥した。第一段階乾燥:-30℃、60分間;第二段階乾燥:-20℃、12h;温度保持:15℃、5h。
実施例24-1
処方に通常量の酸化防止剤、例えばトコフェロール、ビタミンC又はEDTA-2Naを加える以外、実施例24と同様に操作した。
実施例24-2
処方においてククルビタシンEを、当量相当のククルビタシン抽出物(市販のククルビタシンBE原料を含む)、ククルビタシンA、ククルビタシンB、イソククルビタシンB、ジヒドロククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、イソククルビタシンD、ジヒドロククルビタシンD、イソククルビタシンE、ジヒドロククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンI、テトラヒドロククルビタシンI又はククルビタシンQに変更する以外、実施例24-1と同様に操作した。
【実施例25】
【0123】
実施例25 ククルビタシンI(純度95%超え)
処方組成(100ml、ククルビタシンIの濃度0.1mg/ml)
ククルビタシンI 0.01g
構造化油 1g
リン脂質(S75) 1g
トコフェロール 0.01g
HSA 5g
トレハロース 10g
水 適量
調製:処方量のククルビタシンI、構造化油、S75(Lipoid S 75、上海東尚実業有限公司)、トコフェロールを加熱溶解し、用意しておいた。処方量のトレハロースを取り、注射用水50mlを加え溶解させ、少量の活性炭を加え発熱物質を除去し、冷却した後、25ml市販の20%HSAを加え、均一に混合して、得られた溶液を濾過滅菌した。得られたHSAを含む水溶液に油相を加え分散させて、続いて1000〜20,000psiで高圧均質化し、3回のサイクルを繰り返し、最終の乳剤を得た。濾過(0.2μmのフィルタ)、分割包装、凍結乾燥をし、窒素ガスを充填し、密封した。平均粒径が200nm未満であった。図5参照。
【0124】
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-74℃、4h;真空にして乾燥した。第一段階乾燥:-30℃、30分間;第二段階乾燥:-20℃、12h;温度保持:15℃、5h。
処方においてククルビタシンEを、ククルビタシン抽出物(市販ククルビタシンBE原料を含む)、ククルビタシンA、ククルビタシンB、イソククルビタシンB、ジヒドロククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、イソククルビタシンD、ジヒドロククルビタシンD、イソククルビタシンE、ジヒドロククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンE、テトラヒドロククルビタシンI又はククルビタシンQに変更する以外、実施例24-1と同様に操作した。
実施例25-1
処方において通常量の酸化防止剤、例えばトコフェロール、ビタミンC又はEDTA-2Naを加える以外、実施例25と同様に操作した。
実施例25-2
処方においてククルビタシンIを、ククルビタシン抽出物、ククルビタシンA、ククルビタシンB、イソククルビタシンB、ジヒドロククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、イソククルビタシンD、ジヒドロククルビタシンD、イソククルビタシンE、ジヒドロククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンE、テトラヒドロククルビタシンI又はククルビタシンQに変更する以外、実施例25-1と同様に操作した。
【実施例26】
【0125】
実施例26 ククルビタシンQ(純度95%超)
処方組成(100ml、ククルビタシンQの濃度0.1mg/ml)
ククルビタシンE 0.01g
構造化油 0.1g
MCT 0.4g
リン脂質(S75) 5g
HSA 1g
トレハロース 10g
キシリトール 2g
水 適量
調製:処方量のククルビタシンQ、構造化油、MCT 、S75(Lipoid S 75、上海東尚実業有限公司)を加熱溶解し、用意しておいた。処方量のトレハロース、キシリトールを取り、注射用水50mlを加え溶解させ、少量の活性炭を加え発熱物質を除去し、冷却した後、5ml市販の20%HSAを加え、均一に混合して、得られた溶液を濾過滅菌した。得られたHSAを含む水溶液に油相を加え分散させ、続いて1000〜20,000psiで高圧均質化し、2回のサイクルを繰り返し、最終の乳剤を得た。濾過(0.2μmのフィルタ)、分割包装、凍結乾燥をし、窒素ガスを充填し、密封した。平均粒径は200nm未満であった。
【0126】
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-74℃、4h;真空にして乾燥した。第一段階乾燥:-30℃、90分間;第二段階乾燥:-20℃、12h;温度保持:20℃、5h。
実施例26-1
処方において通常量の酸化防止剤、例えばトコフェロール、ビタミンC又はEDTA-2Naを加える以外、実施例26と同様に操作した。
実施例26-2
処方においてククルビタシンQを、ククルビタシン抽出物、ククルビタシンA、ククルビタシンB、イソククルビタシンB、ジヒドロククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、イソククルビタシンD、ジヒドロククルビタシンD、イソククルビタシンE、ジヒドロククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンI、テトラヒドロククルビタシンI、ククルビタシンS又はククルビタシンEに変更する以外、実施例26-1と同様に操作した。
【実施例27】
【0127】
実施例27 酢酸デスモプレシン(デスモプレシンの等電点10.9)
処方組成:
酢酸デスモプレシン 400μg
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール 1g
テトララウロイルカルジオリピン 0.1g
HSA 5g
トレハロース 10g
水 適量
調製:処方量のジパルミトイルホスファチジルグリセロール及びテトララウロイルカルジオリピンを少量のt-ブタノールで溶解し、酢酸デスモプレシン水溶液を加え、分散、混合し(顕微鏡観察によるとリポソームであった)、TrisでpH7.4に調整し、トレハロース溶液を加え、押出法により、順次に双層800nm、300nm、200nm、100nm、50nm孔径の薄膜(Nucleopore)を押し出し、通過させ、用意しておいた。市販の20%HSAの25ml溶液を上述のリン脂質分散システム中に加え、均一に混合し、28000psi圧力で分散させ、1回のサイクルを繰り返し、所望粒度サイズのナノ粒子を調製した。平均粒径が100nm未満であった。タンパク質層はリポソームの外層に被覆した。
【0128】
凍結乾燥技術により固体を得ることができる。
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-40℃、4h;真空にして乾燥した。第一段階乾燥:-30℃、60分間;第二段階乾燥:-20℃、18h;温度保持:25℃、6h。
【実施例28】
【0129】
実施例28
処方:
オクトレオチド 1000μg
テトラパルミトイルカルジオリピン 1g
テトラオレオイルカルジオリピン 0.1g
HSA 5g
トレハロース 10g
水 適量
調製:処方量のテトラパルミトイルカルジオリピン及びテトラオレオイルカルジオリピンを少量のt-ブタノールで溶解し、酢酸デスモプレシン水溶液を加え、分散、混合して、TrisでpH7.4に調整する以外、「実施例27」と同様に操作した。
【実施例29】
【0130】
実施例29
処方:
ガジュツウコン油 1g
リン脂質 2g
HSA 1g
調製:ガジュツウコン油及びリン脂質を混合し、注射用水50mlを加え分散させ、マイクロ流動化装置又は均質化機により粒度をさらに100nm未満になるまで低下させ、濾過滅菌した。タンパク質を滅菌注射用水で2%濃度に調製し、前のステップで調製した乳剤と混合し、再びマイクロ流動化装置又は均質化機により分散させ、4000psiで1回のサイクルを繰り返すればよい。注射用水を100mlになるまで追加し、濾過、分割包装し、密封した。タンパク質層は外層を被覆した。平均粒径が150nm未満であった。
【実施例30】
【0131】
実施例30
処方:
ドキソルビシン 0.1g
テトラオレオイルカルジオリピン 1g
DMPC 5g
コレステロールヘミコハク酸エステル 0.1g
150mM硫酸アンモニウム 100ml
ショ糖 15g
ヒト血清アルブミン 0.02g
調製:処方量のテトラオレオイルカルジオリピン、DMPC、コレステロールヘミコハク酸エステルを量り取り、10mlエタノールを加え溶解させ、用意しておいた。150mM硫酸アンモニウム100mlを取り、15gショ糖を加え溶解した後、0.1ml市販の20%ヒト血清アルブミンを加え、均一に混合した混合液をリン脂質のエタノール溶液に加え、水和して得られたリポソームを、50°Cで圧搾器(Lipex Biomembranes, Inc., Vancouver, BC, Canada)により順次に双層800nm、300nm、200nm、100nm、50nm孔径の薄膜(Nucleopore)を押し出し、通過させ、最後に18000psi圧力で分散させて、2回のサイクルを繰り返し、所望粒度サイズのナノ粒子を調製した。ミニカラム遠心法により、Sephadex G-50を用いてリポソーム外の水相の硫酸アンモニウムを除去し、タンパク質を含むリポソームを得た。ドキソルビシンを0.9%塩化ナトリウム注射液で溶解し、10mg/mlに調製した。ドキソルビシン溶液及びブランクリポソームを混合し、50°C水浴に15分間保温しながら、連続に撹拌して、ドキソルビシンが担載されたタンパク質を含むリポソームを得た。封入率測定の結果によると、該方法で調製されたリポソームの封入率が90%を超えた。0.22μmのフィルタで濾過滅菌、分割包装し、密封した。2〜8°Cで保存しておいた。
【0132】
凍結乾燥技術により固体を得ることができる。
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-80℃、4h;-60℃、真空にして乾燥した。凍結乾燥カーブ:-60℃〜-50℃、2h;-50℃〜-30℃、10h;-30℃〜0℃、6h;0℃〜20℃、4h;温度保持:20℃、2h。
【0133】
刺激性試験及び毒性試験の結果によると、本発明の薬物送達システムは、活性薬物の静脈に対する刺激、静脈炎、静脈血栓形成、外方浸透及びその他の投与に関する副作用を低減することができた。
実施例30-1
薬物として、ダウノルビシン、エピルビシン、硫酸ビンクリスチン、ミトキサントロン、塩酸トポテカン、酒石酸ビノレルビン又はブレオマイシンを用いる以外、実施例30と同様に操作した。調製されたタンパク質を含むリポソームの封入率はいずれも85%を超えた。
【実施例31】
【0134】
実施例31
処方:
ドキソルビシン 0.2g
コレステロール 0.2g
テトラオレオイルカルジオリピン 1g
DMPC 5g
DSPE-PEG2000 0.5g
150mM硫酸アンモニウム 100ml
ショ糖 10g
ヒト血清アルブミン 0.02g
調製:「実施例30」に従って、ドキソルビシンが担載されたタンパク質を含むリポソームを調製した。その後、外挿入法により0.5g DSPE-PEG2000を調製されたリポソームに挿入して、PEG被覆したドキソルビシン含有タンパク質のリポソームを得た。封入率測定の結果によると、該方法で調製されたリポソームの封入率が90%を超えた。0.22μmのフィルムで濾過滅菌、分割包装し、密封した。2〜8°Cで保存しておいた。
【0135】
凍結乾燥技術により固体を得ることができる。
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-80℃、4h;-60℃、真空にして乾燥した。凍結乾燥カーブ:-60℃〜-50℃、1h;-50℃〜-30℃、8h;-30℃〜0℃、6h;0℃〜20℃、2h;温度保持:20℃、2h。
【0136】
検討によると、本発明の薬物送達システムは、活性薬物の静脈に対する刺激、静脈炎、静脈血栓形成、外方浸透及びその他の投与に関する副作用を低減することができた。
実施例31-1
薬物として、ダウノルビシン、エピルビシン、硫酸ビンクリスチン、ミトキサントロン、塩酸トポテカン、ビノレルビン又はブレオマイシンを用いる以外、実施例31と同様に操作した。調製されたタンパク質を含むリポソームの封入率はいずれも85%を超えた。
【実施例32】
【0137】
実施例32
処方:
ドキソルビシン 0.05g
テトラパルミトイルカルジオリピン 0.2g
DMPC 0.3g
300mMクエン酸 10ml
ショ糖 1g
ヒト血清アルブミン 0.02g
調製:処方量のテトラパルミトイルカルジオリピン、DMPCを量り取り、1mlエタノールを加え溶解させ、用意しておいた。
【0138】
300mMクエン酸(pH4.0)10mlを取り、1gショ糖を加え溶解した後、0.1ml市販の20%ヒト血清アルブミンを加え、均一に混合し、リン脂質のエタノール溶液に加え、水和、プローブ超音波処理して、半透明のリポソーム液体を調製した。
【0139】
ドキソルビシンを0.9%塩化ナトリウム注射液で溶解し、10mg/mlに調製した。ドキソルビシン溶液及びブランクリポソームを混合し、10mM水酸化ナトリウムでpH7.5に調整し、50°C水浴に15分間保温しながら、連続に撹拌して、ドキソルビシンが担載されたタンパク質を含むリポソームを得た。封入率測定の結果によると、該方法で調製されたリポソームの封入率が90%を超えた。0.22μmのフィルムで濾過滅菌、分割包装し、密封した。2〜8°Cで保存しておいた。
【0140】
凍結乾燥技術により固体を得ることができる。
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-80℃、4h;-60℃、真空にして乾燥した。凍結乾燥カーブ:-60℃〜-50℃、8h;-50℃〜-30℃、12h;-30℃〜0℃、16h;0℃〜15℃、4h;温度保持:15℃、4h。
【0141】
その結果、本発明の薬物送達システムは、薬物の静脈に対する刺激、静脈炎、静脈血栓形成、外方浸透及びその他の投与に関する副作用を低減することができた。
リポソームの写真は図面6に示す。
【0142】
マウス体内薬物動態検討の結果によると、ドキソルビシンの通常のリポソームのAUC0~10hが106mg/L・hで、タンパク質被覆ドキソルビシンリポソームのAUC0~10hが330mg/L・hであった。タンパク質で被覆されていない通常のリポソームと比べ、タンパク質で被覆されたリポソームは、薬物濃度-時間曲線下の面積を増加させ、薬物作用時間を延長することができた。
実施例32-1
薬物として、ダウノルビシン、エピルビシン、硫酸ビンクリスチン、ミトキサントロン、塩酸トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン、ヒューペルジンA、ブレイアコニチンA又はブレオマイシンを用いる以外、実施例32と同様に操作した。調製されたタンパク質を含むリポソームの封入率はいずれも85%を超えた。
実施例32-2
外挿入法により異なるPEG分子量のPEG脂質誘導体をリポソームに挿入し、タンパク質を含むPEG被覆リポソームを調製する以外、実施例32と同様に操作した。
【実施例33】
【0143】
実施例33
処方:
エレメン 1g
リン脂質 2g
TPGS 0.5g
HSA 1g
調製:エレメンをリン脂質、TPGSと混合し、注射用水50mlを加え分散させ、マイクロ流動化装置又は均質化機により粒度をさらに100nm未満になるまで低下させ、0.22μmのフィルタで濾過滅菌した。タンパク質を滅菌注射用水で2%濃度に調製し、前のステップで調製された乳剤と混合し、再びマイクロ流動化装置又は均質化機により分散させ、2000psiで1回のサイクルを繰り返しすればよい。界面活性剤TPGSの添加によって、分散に要する圧力を減少させ、コストが低くなる。
【0144】
製剤の安定性は良好であり、調製後の液体を冷蔵庫(2-8℃)に1ヶ月間置くと、層間剥離、沈降が見られず、外観は依然として清澄で、透明であった。
検討によると、本発明の薬物送達システムは、薬物の静脈に対する刺激、注射際の灼熱感及び疼痛、静脈炎、静脈血栓形成、外方浸透及びそのほかの投与に関する副作用を低減することができた。
【実施例34】
【0145】
実施例34
処方:
ニモジピン 0.1g
SPC 10g
トコフェロールヘミコハク酸エステル 0.1g
t-ブタノール 20ml
HSA 10g
ショ糖 15g
調製:処方量のニモジピン、SPC、トコフェロールヘミコハク酸エステル、t-ブタノールを取り、撹拌、溶解し、50%ショ糖溶液30mlを加え、均一に混合し、20%HSA溶液20mlを加え、均一に混合した。20000psiで高圧均質化処理を2回繰り返し、剰余の30mlの20%HSA溶液及び注射用水を250mlになるまで追加し、均一に混合し、0.22μmのフィルタで濾過滅菌し、粒度が50ナノ未満である脂質ナノ粒子を調製した。
【実施例35】
【0146】
実施例35 ナノ粒子への親油性基団を含むリガンドの挿入
「実施例25」のナノ粒子を用いて、本発明者の特許出願であるCN200610121794.2におけるガラクトースコレステロール誘導体を、リン脂質に占めるモル比が5%になる量で挿入した。トランスフェリン誘導体、葉酸及びその誘導体、アミノグルコース誘導体、各種のRGD及びその誘導体、各種のネズミ抗体、ヒト化抗体、組換えネズミ抗体、組換えヒト化抗体からなる群から選ばれる抗体を挿入し、主動的に薬物を標的に伝達する目的を達成してもよい。
【実施例36】
【0147】
実施例36 アルプロスタジルナノ粒子(5μg/ml)
処方:
アルプロスタジル 500μg
ヒト血清アルブミン 0.03g
リン脂質 3g
トレハロース 10g
水 適量(100mlになるまで加える)
調製:処方量のアルプロスタジル及びリン脂質を量り取り、3mlエタノールを加え溶解させ、用意しておいた。処方量のトレハロースを取り、注射用水70mlを加え溶解させ、少量の活性炭を加え発熱物質を除去し、冷却した後、薬物リン脂質液に加え、水和、分散させ、順次に0.8、0.6、0.4、0.2、0.1、0.05μm微孔性濾過膜を通過させ、透明分散液を得た。0.15ml市販の20%HSAを加え、均一に混合して、続いて1000〜10,000psiの低い圧力で均質化を1回繰り返し、注射用水を100mlになるまで加え、均一に混合して、最終のナノ粒子を得た。濾過(0.2μmのフィルタ)滅菌、分割包装し、窒素ガス充填、密封した。平均粒径が100nm未満であった。該ナノ粒子は液体として保存されてもよい。固体として保存する場合、さらに凍結乾燥し、窒素ガス充填、密封することができる。凍結乾燥製品は水を加え再び溶けると、その平均粒径が100nm未満であった。
実施例36-1 アルプロスタジルナノ粒子(50μg/ml)
処方:
アルプロスタジル 5000μg
ヒト血清アルブミン 0.3g
オクタン酸エチル 1g
リン脂質 3g
トレハロース 10g
水 適量(100mlになるまで加える)
調製:処方量のアルプロスタジル、オクタン酸エチル及びリン脂質を量り取り、3ml無水エタノールを加え溶解させ、用意しておいた。処方量のトレハロースを取り、注射用水70mlを加え溶解し、少量の活性炭を加え発熱物質を除去し、冷却した後薬物リン脂質液に加え、水和し、10,000〜40,000psiで分散させ、粒径100nm未満の分散液を得た。1.5ml市販の20%HSAを加え、均一に混合して、続いて1000〜10,000psiの低い圧力で均質化を1回繰り返し、注射用水を100mlになるまで加え、均一に混合して、最終のナノ粒子を得た。濾過(0.2μmのフィルタ)滅菌、分割包装し、窒素ガス充填、密封した。平均粒径が100nm未満であった。該ナノ粒子は液体として保存されてもよい。固体として保存する場合、さらに凍結乾燥し、窒素ガス充填、密封することができる。凍結乾燥製品は水を加え再び溶けると、その平均粒径が100nm未満であった。
【実施例37】
【0148】
実施例37 エンテカビル(entecavir)カプセル100剤量単位(0.5mg/カプセル)
処方:
卵白アルブミン 5g
SPC 0.1g
エンテカビル(entecavir) 0.05g
乳糖 20g
調製:処方量のエンテカビル、SPCを取り、適量のエタノールで溶解させ、用意しておいた。処方量の卵白アルブミンを取り、水を加え、20%溶液に調製し、エンテカビル/SPC溶液に加え、分散させ、均質化機(400〜4000 psi)により粒度が500nm〜1000nmとなるように調整し、乳糖を加え、噴霧乾燥して、エンテカビルを含むタンパク質ナノ粒子のパーティクルを得て、0.1%微粉シリカゲルを加え、均一に混合した後、カプセルに充填した(0.5mg/カプセル)。粉末をそのまま打錠技術により打錠してもよい。
実施例37-1
薬物としてエンテカビルの代わりに、フェニルプロパノール(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=300:1)、フェブプロール(卵白アルブミン濃度30%;卵白アルブミン:リン脂質=300:1)、ビタミンK1(卵白アルブミン濃度50%;卵白アルブミン:リン脂質=300:1)、コエンザイムQ10(卵白アルブミン濃度50%;卵白アルブミン:リン脂質=300:1)、シクロビロブキシン(卵白アルブミン濃度50%;卵白アルブミン:リン脂質=300:1)、クラテグット(卵白アルブミン濃度40%;卵白アルブミン:リン脂質=300:1)、ブレビスカピン(Breviscapine)(卵白アルブミン濃度40%;卵白アルブミン:リン脂質=200:1)、シーバックソーンフラボン(卵白アルブミン濃度40%;卵白アルブミン:リン脂質=200:1)、ニモジピン(卵白アルブミン濃度30%;卵白アルブミン:リン脂質=200:1)、ビタミンD(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=200:1)、タンシノンIIA(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、ブチルフタリド(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、リグスチリド(卵白アルブミン濃度5%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、アネトールトリチオン(スルファレム)(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、マロチラート(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、デメチルカンタリジン酸(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、カンタリジン(卵白アルブミン濃度0.1%;卵白アルブミン:リン脂質=50:1)、ルベスセンシンA(卵白アルブミン濃度0.5%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、ヒューペルジンA(卵白アルブミン濃度0.05%;卵白アルブミン:リン脂質=1:1)、ブレイアコニチンA(卵白アルブミン濃度1%;卵白アルブミン:リン脂質=50:1)、スタチン類減脂薬(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=100:1)、例えば「ロバスタチン」、「シンバスタチン」、アデホビルジピボキシル(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=50:1)、VEニコチン酸エステル(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=50:1)、ジドブジンパルミチン酸エステル(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=50:1)、ジドブジンミリスチン酸エステル(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、ジドブジンコレステロールエステル(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、ジドブジンコレステロールエステル(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、アサロン(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、フェノフィブラート(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、ウルソル酸(卵白アルブミン濃度5%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、23-ヒドロキシベツリン酸(卵白アルブミン濃度1%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、2α、23−ジヒドロキシウルソル酸(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、イトラコナゾール(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)、カルシトリオール(卵白アルブミン濃度0.005%;卵白アルブミン:リン脂質=1:1)又はカンデサルタン(卵白アルブミン濃度10%;卵白アルブミン:リン脂質=150:1)を用いる以外、実施例37と同様に操作した。
実施例37-2
卵白アルブミンをトウモロコシタンパク質に変更し、薬物、SPC、トウモロコシタンパク質を適量のエタノールで溶解してから、乳糖溶液で水和し、分散させる以外、実施例37と同様に操作した。薬物は、エンテカビル、フェニルプロパノール、フェブプロール、ビタミンK1、コエンザイムQ10、シクロビロブキシン、クラテグット、ブレビスカピン、シーバックソーンフラボン、ニモジピン、ビタミンD、タンシノンIIA、ブチルフタリド 、リグスチリド、アネトールトリチオン(スルファレム)、マロチラート、デメチルカンタリジン酸、カンタリジン、ルベスセンシンA、ヒューペルジンA、ブレイアコニチンA、ナマコ抽出物、スタチン類減脂薬、例えば「ロバスタチン」、「シンバスタチン」、アデホビルジピボキシル、VEニコチン酸エステル、ジドブジンパルミチン酸エステル、ジドブジンミリスチン酸エステル、ジドブジン棕コレステロールエステル、ジドブジンコレステロールエステル、アサロン、フェノフィブラート、ウルソル酸、23-ヒドロキシベツリン酸、2α、23−ジヒドロキシウルソル酸、イトラコナゾール又はカンデサルタンを用いた。
実施例37-3
卵白アルブミン 1g
EPC 10g
カロチン 0.05g
ビタミンE 0.5g
グリセロール 3g
調製:処方量のビタミンE、カロチン、EPCを取り、適量の無水エタノールで溶解し、用意しておいた。処方量の卵白アルブミン、グリセロールを取り、水を加え、2%の溶液に調製し、ビタミンE/カロチン/EPC溶液に加え、分散させ、均質化機(4000〜40000psi)により粒度500nm未満になるように制御して、蒸留水を100mlになるまで加え、ビタミンE及びカロチンを含むタンパク質ナノ分散液を得た。外用すると、保湿、肌を柔らかくする作用を有する。エゾアカガエル(Rana chensinensis)を加え分散させた後、外用のマスクが得られる。また、必要に応じて人参などの植物抽出物、ビタミンCパルミチン酸エステル、コエンザイムQ、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、各種のタンパク質加水分解物、各種のアミノ酸などを添加してもよい。
実施例37-4
卵白アルブミン 10g
EPC 1g
ビタミンCパルミチン酸エステル 0.1g
トコフェロール 0.1g
グリセロール 5g
調製:処方量のトコフェロール、ビタミンCパルミチン酸エステル、EPCを取り、適量の無水エタノールで溶解し、用意しておいた。処方量の卵白アルブミン、グリセロールを取り、水を加え、50%の溶液に調製し、トコフェロール/ビタミンCパルミチン酸エステル/EPC溶液中に加え、分散させ、均質化機(4000〜40000psi)により、粒度1000nm未満になるように制御し、蒸留水を50mlになるまで加え、トコフェロール及びビタミンCパルミチン酸エステルを含むタンパク質ナノ分散液を得た。外用すると、保湿、肌を柔らかくする作用を有する。エゾアカガエル(Rana chensinensis)を加え分散させた後、外用のマスクが得られる。また、必要に応じて人参などの植物抽出物、カロチン、コエンザイムQ、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、各種のタンパク質加水分解物、各種のアミノ酸などを添加してもよい。
【実施例38】
【0149】
実施例38 塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)(等電点9.6)
処方:
bFGF 500μg
ヒト血清アルブミン 10g
DMPG 0.07g
1,2-テトラデカノイルホスファチジン酸 0.03 g
トレハロース 10g
水 適量(100mlになるまで加える)
調製:処方量のbFGFを量り取り、水2mlを加え溶解させ、得られた溶液をDMPG、1,2-テトラデカノイルホスファチジン酸と混合し分散させ、用意しておいた。処方量のトレハロースを取り、注射用水30mlを加え溶解させ、少量の活性炭を加え発熱物質を除去し、冷却した後10g HSAを加え、撹拌、溶解し、bFGFのリン脂質液体と混合して、順次に0.8、0.6、0.4、0.2、0.1、0.05μm微孔性濾過膜を通過させ、透明分散液を得た。50ml市販の20%ヒト血清アルブミン注射液を加え、均一に混合し、1000〜10,000psiの低い圧力で1回の均質化を繰り返し、注射用水を100mlになるまで加え、均一に混合して、最終の分散液を得た。濾過(0.2μmのフィルタ)、分割包装し、窒素ガス充填、密封した。平均粒径が100nm未満であった。通常の方法により凍結乾燥してもよい。
【実施例39】
【0150】
実施例39
処方:
チモペンチン 10mg
テトラミリストイルカルジオリピン 500mg
HSA 1000mg
SPC 100mg
乳糖 20g
調製:処方量のチモペンチン、テトラミリストイルカルジオリピン、SPCを取り、適量の水中に加え、撹拌、分散させ、均質化機(4000〜24000psi)により、用意しておいた。処方量のHASを取り、水を加え20%の溶液に調製し、チモペンチン分散液体中に加え、20000psiで2回の分散を繰り返し、粒度100nm〜200nmになるように制御し、乳糖を加え噴霧乾燥し、チモペンチンを含むタンパク質ナノ粒子パーティクルを得た。このナノ粒子はさらにカプセル、打錠、パーティクル剤にしてもよく、そのまま粉霧剤に調製して、肺部投与しても良い。
実施例39-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述の製剤に加える以外、実施例39と同様に操作した。
【実施例40】
【0151】
実施例40
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 5g
カルジオリピン 5g
メタノール 3ml
ルベスセンシンA 0.2g
マルトース 10g
蒸留水 100mlになるまで加える 0%ショ糖を10%マルトースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が110nmであった。
実施例40-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述の製剤中に加える以外、実施例40と同様に操作した。
【実施例41】
【0152】
実施例41
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 5g
カルジオリピン 5g
DPPE-PEG 1000 1g
イソプロピルエーテル 3ml
イリスキノン 0.2g
トレハロース 10g
蒸留水 100mlになるまで加える
10%ショ糖を10%トレハロースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が130nmであった。
実施例41-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例41と同様に操作した。
【実施例42】
【0153】
実施例42
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 5g
カルジオリピン 5g
DLPG 5g
DPPE-PEG 10000 0.1g
無水エタノール 3ml
ホモハリントニン 0.2g
トレハロース 1g
乳糖 10g
蒸留水 100mlになるまで加える
10%ショ糖を10%乳糖、1%トレハロースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が106nmであった。
実施例42-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例42と同様に操作した。
【実施例43】
【0154】
実施例43
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 3g
SPC 5g
1,2-ジパルミトイルホスファチジン酸 1g
MCT 1g
デキサメタゾンパルミチン酸エステル 0.02g
トレハロース 10g
蒸留水 100mlになるまで加える 10%ショ糖を10%トレハロースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が90nmであった。
実施例43-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例43と同様に操作した。
【実施例44】
【0155】
実施例44
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 3g
SPC 5g
1,2-ヘキサデシルホスファチジルエタノールアミン 1g
MCT 1g
クロラムフェニコールパルミチン酸エステル 0.02g
蒸留水 100mlになるまで加える
具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が150nmであった。
実施例44-1
後部挿入法により0.01%〜10%(w/v)DSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例44と同様に操作した。
【実施例45】
【0156】
実施例45
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 3g
ジパルミトイルホスファチジルグリセロール 5g
1,2-ヘキサデシルホスファチジルエタノールアミン 1g
DMPE-PEG 1000 1g
エタノール 1g
ガンボギン酸 0.2g
マルトース 5g
トレハロース 10g
蒸留水 100mlになるまで加える
10%ショ糖を10%トレハロース、5%マルトースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が170nmであった。
実施例45-1
後部挿入法により0.01%〜10%(w/v)DSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例45と同様に操作した。
【実施例46】
【0157】
実施例46
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 10g
1,2-ジオレオイル基レシチン 3g
1,2-ジリノレオイルレシチン 1g
DMPE-PEG 5000 1g
エタノール 1g
ジヒドロアルテミシニン 0.2g
マルトース 10g
蒸留水 100mlになるまで加える
10%ショ糖を10%マルトースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が120nmであった。
実施例46-1
後部挿入法により0.01%〜10%(w/v)DSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例46と同様に操作した。
【実施例47】
【0158】
実施例47
処方:
ヒト血清アルブミン(HSA) 10g
リゾホスファチジルイノシトール 3g
1,2-ジリノレノイルレシチン 1g
エタノール 1g
ジヒドロアルテミシニン 0.2g
トレハロース 10g
蒸留水 100mlになるまで加える
10%ショ糖を10%トレハロースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が130nmであった。
実施例47-1
後部挿入法により0.01%〜10%(w/v)DSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例47と同様に操作した。
【実施例48】
【0159】
実施例48
処方:
ヒキガエルの脂溶性抽出物 0.1g
リゾホスファチジルグリセロールエステル 0.02g
リゾホスファチジルセリン 0.2g
1,2-ドコシルホスファチジン酸 3g
ブタ血清タンパク質PEG誘導体 1g
トレハロース 10g
蒸留水 100mlになるまで加える
具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が30nm未満であった。
実施例48-1
後部挿入法により0.01%〜10%(w/v)DSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例48と同様に操作した。
【実施例49】
【0160】
実施例49
処方:
コエンザイムQ10 0.1g
テトラミリストイルカルジオリピン 10g
ウシ血清アルブミン 0.1g
トレハロース 20g
蒸留水 100mlになるまで加える
ヒト血清アルブミンをウシ血清アルブミンに、10%ショ糖を20%トレハロースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が100nm未満であった。
実施例49-1
後部挿入法により0.01%〜10%(w/v)DSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例49と同様に操作した。
【実施例50】
【0161】
実施例50
処方:
ビタミンK1 0.1g
1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジン酸 2g
ウシ血清アルブミン 1g
トレハロース 10g
キシリトール 5g
蒸留水 100mlになるまで加える
ヒト血清アルブミンをウシ血清アルブミンに、10%ショ糖を10%トレハロース及び5%キシリトールに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が100nm未満であった。
実施例50-1
後部挿入法により0.01%〜10%(w/v)DSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例50と同様に操作した。
【実施例51】
【0162】
実施例51
処方:
20(S)-プロトパナキサジオール 0.1g
1,2-ジヘキサデシルホスファチジン酸 1g
1-テトラデカノイル-2-ヒドロキシレシチン 1g
1-リノレオイル-2-ヒドロキシレシチン 1g
1,2-ジオレオイルホスファチジン酸 1g
ウシ血清アルブミン 1g
トレハロース 10g
ショ糖 5g
蒸留水 100mlになるまで加える
10%ショ糖を10%トレハロース及び5%ショ糖に変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が100nm未満であった。
実施例51-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はPEG-THS、PEG-CHS、PEG-CHMを上述製剤に加える以外、実施例51と同様に操作した。
【実施例52】
【0163】
実施例52
処方:
20(R)-ジンセノサイドRg3 0.1g
1-ステアロイル-2-ヒドロキシレシチン 1g
SPC 1g
HSA 1g
10%ショ糖を10%トレハロースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が100nm未満であった。
実施例52-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DPPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例52と同様に操作した。
【実施例53】
【0164】
実施例53
処方:
ジンセノサイドRg2 0.1g
1-オレオイル-2-ヒドロキシレシチン 0.01g
EPG 1g
EPC 10g
1,2-ジステアロイルホスファチジン酸 0.1g
1,2-テトラデカノイルホスファチジルグリセロール 0.1g
1,2-ジステアロイルホスファチジルグリセロール 0.1g
ジパルミトイルホスファチジルコリン 0.1g
HSA 0.1g
10%ショ糖を10%トレハロースに変更する以外、具体的に「実施例13」に従って行った。調製されたタンパク質ナノ製剤の平均体積粒径が100nm未満であった。
実施例53-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、PEG-THS、PEG-CHS、PEG-CHM、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DPPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例53と同様に操作した。
【実施例54】
【0165】
実施例54
処方:
エスシンナトリウム 500mg
2-オクタコシルホスファチジン酸 1g
1,2-ジパルミトイルホスファチジルグリセロール 2g
ブタ血清タンパク質 10g
水 適量
調製方法:処方におけるエスシンナトリウム、2-オクタコシルホスファチジン酸、1,2-ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ブタ血清タンパク質を水で分散、撹拌し、均質化機により800psiで処理し、水を50mlになるまで加え、均一に混合した。外用すると、腫脹減退することができる。
実施例54-1
後部挿入法によりDSPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DPPE-PEG(PEG分子量100〜10000)、DMPE-PEG(PEG分子量100〜10000)又はDLPE-PEG(PEG分子量100〜10000)を上述製剤に加える以外、実施例54と同様に操作した。
【実施例55】
【0166】
実施例55 アジスロマイシン点眼薬(100ml)
処方:
アジスロマイシン 1g
DLPG 2g
EDTA-2Na 0.002g
ベンザルコニウム 0.003g
HSA 1g
水 適量
調製方法:アジスロマイシン、DLPGをエタノールで溶解して、溶液を得た。EDTA-2Na、HSAを水に溶解させ、2%溶液に調製し、前のステップで調製された溶液に加え、撹拌した。クエン酸でpH6〜8に調整し、マイクロジェット分散させ、12000psiで2回のサイクルを繰り返し、ベンザルコニウム及び水を加え、体積を100mlになるまで調整し、均一に混合して、アジスロマイシン点眼薬を得た。
【実施例56】
【0167】
実施例56
処方:
硝酸ミコナゾール 1g
ジカプリルホスファチジルコリン 10g
HSA 1g
キトサン 1g
水 適量
調製方法:硝酸ミコナゾール、ジカプリルホスファチジルコリンを適量エタノールで溶解し、用意しておいた。キトサンを適量酢酸で溶解し、市販の20%HSA 5ml及び水50mlを加え、均一に混合し、硝酸ミコナゾールリン脂質溶液に加え、分散させ、16000psiで3回のサイクルを繰り返し、pH4〜5に調整し、体積を100mlになるまで調整して、均一に混合して、硝酸ミコナゾールナノ粒子製剤を得た。この製剤は膣投与に外用することができる。
【0168】
「キトサン」を「オクタデシルアミン」、「脂肪アミン」、「ポリアミンコレステロールカチオン脂質」、「コレステロールカチオン脂質誘導体」に変更し、ナノ粒子をプラスに帯電させ、膣付着投与の目的を達することができる。
【実施例57】
【0169】
実施例57
処方:
シンバスタチン 1g
リン脂質 2g
卵白アルブミン 2g
乳糖 10g
水 適量
調製方法:処方量のシンバスタチン、リン脂質を取り、適量のエタノールで溶解し、用意しておいた。処方量の卵白アルブミン、乳糖を取り、水を加え5%の溶液に調製し、シンバスタチン/リン脂質溶液に加え、分散させ、均質化機(1000〜10000psi)により粒度300nm〜500nmになるように制御し、凍結乾燥又は噴霧乾燥を行い、シンバスタチンを含むタンパク質ナノ粒子パーティクルを得た。カプセルに充填し、又は直接打錠し、又はパーティクル剤に調製した。
実施例57-1
「スタチン類薬物」、「ヒルジン」、「メリチン(melittin)」、「インスリン」の経口投与又は関節腔注射投与又は皮下注射投与の薬剤の調製に用いる以外、具体的に、実施例57と同様に操作した。
【実施例58】
【0170】
実施例58
処方:
カルシトニン 1g
リン脂質 2g
タンパク質 1g
トレハロース 2g
調製方法:「実施例57」と同様にした。薬剤を注射投与又は経鼻投与した。
【実施例59】
【0171】
実施例59
処方:
ルンブロ・キナーゼ 1g
リン脂質 2g
タンパク質 2g
マンニトール 10g
水 適量
調製:「実施例57」と同様にした。製剤を経口投与した。
【実施例60】
【0172】
実施例60 ナノ銀
処方:
硝酸銀 1g
抱水ヒドラジン 1g
リン脂質 5g
PEGブタ血清タンパク質 1g
水 100mlになるまで加える
調製方法:硝酸銀を取り、水で0.1Mol/Lに調製し、リン脂質を加え、20000psiで3回の分散を繰り返し、用意しておいた。PEGブタ血清タンパク質を取り、水で5%溶液に調製し、上述のリポソーム分散液に加え、10000psiで1回の分散を繰り返し、限外ろ過により、封入されていない硝酸銀を除去し、残りのリポソーム液体に抱水ヒドラジンを加え、撹拌し、6時間反応させ、限外ろ過により余分の抱水ヒドラジンを除去し、水を50mlになるまで加え、酸類物質でpH6〜7に調整して、ナノ銀コロイドを得た。平均粒径が100nm未満であった。外用(膣、直腸などの腔投与を含む)、経口又は注射した。
実施例60-1
「ナノ金」、「ナノ鉄」などのコロイド分散系の調製に用いる以外、具体的に実施例60と同様に操作した。外用(膣、直腸などの腔投与を含む)、経口又は注射又は磁気ターゲティング投与した。
【実施例61】
【0173】
実施例61 ククルビタシンI(純度98%超え)
処方組成(100ml、ククルビタシンIの濃度0.1mg/ml)
ククルビタシンI 0.01g
DMPC 5g
DSPE-PEG2000 0.2 g
HSA 0.1g
トレハロース 10g
水 適量
調製方法:処方量のククルビタシンI、DMPCを少量のエタノールで溶解し、用意しておいた。処方量のトレハロースを取り、注射用水70mlを加え溶解させ、少量の活性炭を加え発熱物質を除去し、濾過し、濾液を冷却した後、ククルビタシンIのリン脂質溶液に加え、分散させ、順次に0.8、0.6、0.4、0.2、0.1、0.05μm微孔性濾過膜を通過させ、透明分散液を得、用意しておいた。25ml市販20%HSAを加え、均一に混合して、得られた溶液を濾過滅菌した。得られたHSAを含む水溶液を上述の分散系に加え、1000〜20,000psiで2回の高圧均質化を繰り返し、分散系を得た。外挿入法により0.2g DSPE-PEG2000を上述の分散ナノ粒子に挿入し、濾過(0.2μmのフィルタ)滅菌、分割包装し、密封した。
【0174】
凍結乾燥技術を採用することができる。
凍結乾燥プロセス:プレ凍結:-74℃、4h;真空にして乾燥した。第一段階乾燥:-30℃、30分間;第二段階乾燥:-20℃、12h;温度保持:15℃、5h。
実施例61-1
処方において通常量の酸化防止剤、例えばトコフェロール、ビタミンC又EDTA-2Naを加える以外、具体的に実施例61と同様に操作した。
実施例61-2
処方において、ククルビタシンIをククルビタシン抽出物(市販のククルビタシンBEを含む)、ククルビタシンA、ククルビタシンB、イソククルビタシンB、ジヒドロククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、イソククルビタシンD、ジヒドロククルビタシンD、イソククルビタシンE、ジヒドロククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンE、テトラヒドロククルビタシンI、ククルビタシンQに変更する以外、具体的に実施例61と同様に操作した。
実施例61-3
外挿入法により異なるPEG分子量のDPPE-PEG、DMPE-PEG、DLPE-PEGをナノ粒子に挿入した以外、具体的に実施例61と同様に操作した。
【実施例62】
【0175】
実施例62
処方:
ククルビタシンQ 0.1g
ポリエンホスファチジルコリン 10g
t-ブタノール 20ml
タンパク質 1g
ショ糖 20g
調製方法:処方量のククルビタシンQ、ポリエンホスファチジルコリン、t-ブタノールを取り、撹拌、溶解し、50%ショ糖溶液40mlを加え、均一に混合し、20%HSA溶液5mlを加え、均一に混合した。20000psiで1回の高圧均質化処理を繰り返し、注射用水を100mlになるまで追加し、均一に混合し、0.22μmのフィルタにより濾過滅菌して、平均粒度が50ナノ未満であった。1mlごとに分割包装し、通常の方法に従って凍結乾燥して、1000μg/ml/瓶の高濃度の凍結乾燥製品を調製できた。ククルビタシンQの薬理活性が高いので、一日の合計用量が1000μg未満になるため、本発明の技術によって高濃度の製剤を得られ、生産、運輸、貯蔵、使用に関するコストを低くすることができる。
【実施例63】
【0176】
実施例63 促進試験によるドセタキセルナノ粒子の化学安定性の検討
「実施例13」の処方を例として(凍結乾燥製剤)、室温の促進試験により検討した。
テスト条件:
カラム:Diamond ODS カラム(4.6mm×200mm、5μm);移動相:アセトニトリル-水(50:50、V:V);カラム温度:室温;検出波長:230nm、理論段数が5000以上;薬物濃度:約20μg/ml;注入量:20μL;外部標準法。
【0177】
測定結果は以下の表6に示す。
【0178】
【表6】

【0179】
粒径は明らかに変化しなかった。
【実施例64】
【0180】
実施例64 異なるドセタキセル製剤の急性毒性試験
薬品:「実施例13」の製剤及び現在市販のドセタキセル(タキソテール)製剤の処方プロセスに従って調製されたドセタキセルTween80溶液剤。
【0181】
動物:おすマウス、マウス体重18g-20g。
投与剤量:いずれも100mg/kgであった。
投与経路:静脈注射。
【0182】
観察時間:7日間。
試験は三回繰り返した。
マウス生存に関する状況は下記の表7に示す。
【0183】
【表7】

【0184】
三つのバッチのデータの結果によると、本発明の製剤(「実施例13」)は、市販のドセタキセル(タキソテール)製剤の処方プロセスに従って調製されたタキソテールTween80溶液剤よりも、はるかに毒性が低かった。
【実施例65】
【0185】
実施例65 タキソールナノ粒子
薬物「ドセタキセル」を「タキソール」に変更し、「実施例13」の方法に従って調製した。
【0186】
調製された分散体は0.22μmの微孔性濾過膜を通過させやすく、滅菌濾過の目的を達した。約30時間置くと、沈殿が生じなかった。
実施例65の対照例 クロロホルム溶媒を用いてタンパク質ナノ粒子を調製する場合の問題の説明
タキソール 60mg
クロロホルム 1ml
HSA 600mg
調製方法:処方量のタキソールを量り取り、1mlクロロホルムで溶解し、得られた溶液を用意しておいた。市販のHSA注射液を取り、水で希釈して2%濃度、即ち30mlの2%HSA溶液に調製した。2%HSA溶液を用いてタキソールクロロホルム溶液を乳化して、20000psiで分散させた。得られたナノ分散液を減圧下、クロロホルムを回収して、剰余の液体は0.8μmの微孔性濾過膜を通過させ難かった。約1時間置くと、沈殿が生じた。
【実施例66】
【0187】
実施例66 タキソールナノ粒子の毒性試験
薬品:「実施例65」に調製された製剤及び現在の市販タキソール(Cremophor RH40ポリエチレングリコールヒマシ油を用いた)製剤の処方プロセスに従って調製されたタキソール溶液剤。
【0188】
動物:おすマウス、マウス体重18g-20g。
投与剤量:いずれも50mg/kg。
投与経路:静脈注射。
【0189】
観察時間:7日間。
試験は三回繰り返した。
マウス生存に関する状況は下記の表8に示す。
【0190】
【表8】

【0191】
三つのバッチのデータの結果によると、本発明の製剤(「実施例65」)は、毒性が市販のタキソール製剤の処方プロセスに従って調製されたタキソール溶液剤よりはるかに低かった。
【実施例67】
【0192】
実施例67 ククルビタシンBリン脂質タンパク質ナノ製剤の薬学効力試験
マイクロプレートリーダ(スイスSunrise)、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(米国Fluka)、DMSO(Sigma)、RPMI 1640培養液(GIBCO)、胎仔ウシ血清(FBS)(天津TBD生物技術中心)。
【0193】
それぞれ、ヒト喉頭癌上皮細胞(Hep-2)、ヒト肝癌細胞(HepG-2)、ヒト肺腺癌細胞(A549)でククルビタシンB HSAナノ粒子のインビトロの腫瘍細胞成長に対する抑制作用を検討し、これらの細胞において同一の剤量によるククルビタシンB乳剤及びリポソームの抑制作用を比較した。
【0194】
1、試験方法
細胞を、10%胎仔ウシ血清を含むRPMI1640培養液で培養し、37℃、5%CO2インキュベーターに置いて、3〜4日ごとに継代培養した。対数増殖期の細胞を選び試験に用いた。壁に付着した細胞を0.25%パンクレアチン(EDTA1mMを含む)で消化した後培養液に懸濁させ、細胞濃度2.5×104/mlになるように調整し、ウェル毎に100μLで三つ組みにて96ウェルプレートに接種された。ブランクコントロールウェル(blank)へ培養液が添加された。18-24時間培養し、細胞が壁に付着した後、群別に異なる濃度の薬物(0.5μl)を加え、残った一つの群をコントロール群(薬を加えず細胞を加えた)とした。一定の時間(例えば24又は48時間)引き続き培養した後、ウェルごとに5mg/ml MTT試薬10μLを加え、4時間引き続き培養して、ウェルごとに10%SDS(10mM塩酸を含む)100μlを加え、インキュベーターに一晩置いた。マイクロプレートリーダ(570nm波長)により各穴のOD(optical density)値を測定した。OD値によって細胞抑制率を求めた。計算式は、抑制率(inhibition rate, IR)=[(コントロール群OD値平均数-blank群OD値平均数)-(試験群OD値平均数-blank群OD値平均数)]/(コントロール群OD値平均数-blank群OD値平均数)である。
【0195】
即ち:抑制率(%) = 1-( OD試験-ODブランク) /(ODコントロール- ODブランク)
(一)ククルビタシンB溶液のHep-2細胞の成長に対する抑制作用
Hep-2細胞の培養液にそれぞれ濃度0.1、1、10、100μMのククルビタシンB(DMSOで溶解させた)を加え、異なる時間の培養の後ククルビタシンBのHep-2細胞の成長に対する抑制作用を検討した。ククルビタシンBのHep-2細胞の増殖に対する抑制作用は、時間の延長及び剤量の上昇にしたがい増強されることが認められた。特に、作用時間が長く、剤量が高い場合に、この傾向はより顕著になった。結果は図7に示す。
(二)異なるククルビタシンB/HSA(ヒト血清アルブミン)比率で調製されたナノ粒子の異なる腫瘍細胞の成長に対する抑制作用
「実施例4」に従ってHSA 2%又は3%を含むククルビタシンB HSAナノ粒子(CuB薬物の濃度が同一で、即ちいずれも0.1mg/mlである)を調製した。2%HSAの処方においてククルビタシンBとHSAの比率が1/200(w/w)であった。3%HSAの処方においてCuBとHSAの比率が1/300(w/w)であった。ナノ粒子を調製する重要性を説明するために、CuBを10%エタノールを含有する注射液水で溶解させ、CuB溶液を調製し、CuB/HSAが1/300(w/w)の比率になるようにHSAを加え、CuB/HSA溶液におけるHSAの濃度が3%になった。CuB HSAナノ粒子、CuB/HSA溶液の異なる剤量によるHep-2、A549、HepG-2腫瘍細胞の成長の抑制作用をぞれぞれ検討した。結果はそれぞれ図8、図9、図10に示す。
【0196】
図面によると、ククルビタシンBナノ粒子のHep-2、A549、HepG-2細胞の成長に対する抑制作用はいずれも剤量の増加に従い強くなった。ククルビタシンBのHSA溶液では、Hep-2細胞のみにおいて、剤量の増加に従い順次に強くなる抑制作用が示されたが、HepG-2細胞において剤量が10nMを超えた後、抑制作用が顕著に強くなることはなく、A549細胞において、剤量が100nMを超えた後、むしろ抑制作用は低下する傾向がある。ククルビタシンB HSAナノ粒子は、各細胞において剤量が1μMになった後、抑制作用が溶液より顕著に強く、その中で、3%HSAのナノ粒子の抑制作用は2%HSAのナノ粒子より顕著に強かった。CuBのHSA溶液の幾つかの種類の腫瘍細胞に対する抑制作用が剤量の増加に従い変化するのは、ナノ粒子より顕著ではなく、A549細胞において、剤量が100nMを超えた後、むしろ抑制作用が低下する傾向が見られた。これは、この細胞の摂取機序が多数の薬物を持たないHSAにより飽和され、細胞への薬物の進入が阻害されるためと考えられる。一般のリポソーム及び乳剤では、非特異的な融合又はエンドサイトーシスなどによって細胞膜を通過させることしかできず、それに対する細胞の親和力及び摂取の選択性はHSAナノ粒子より低かった。ナノ粒子中におけるHSAが3%になると、この優勢はより顕著に示される。
【実施例68】
【0197】
実施例68 ククルビタシンB HSAナノ粒子及び乳剤、リポソームの異なる腫瘍細胞の成長に対する抑制作用の比較
同等剤量のCuBの異なる製剤(ククルビタシンB/HSA溶液、CuB HSAナノ粒子、CuBリポソーム、CuB乳剤)のHep-2、A549、HepG-2腫瘍細胞の成長に対する抑制作用を比較した。結果は図11に示す。
【0198】
図11によると、3%HSAのCuBナノ粒子はHep-2、A549、HepG-2細胞においていずれも最も強い抑制作用を示しており、2%HSAのCuBナノ粒子はHep-2細胞に対する抑制作用がリポソームと乳剤より強く、A549細胞において抑制作用がリポソームより弱く、HepG-2細胞において作用が乳剤及びリポソームと接近したことがわかる。CuB HSA溶液は各群において抑制作用が弱かったが、Hep-2細胞においてリポソームより強かった。
【0199】
上記の試験結果をまとめると、CuB HSAナノ粒子はインビトロの腫瘍細胞の成長に対して強い抑制作用を示した。HSAは、腫瘍細胞膜におけるアルブミン結合タンパク質(albumin binding protein, ABP)を結合して、それに運搬される薬物を容易に腫瘍細胞に摂取させることができる。CuB HSAナノ粒子において、薬物のほとんどはタンパク質より形成されるパーティクルの内部に包まれ、パーティクル表面のHSAにより細胞表面の受容体と結合して、薬物を細胞の内部まで運搬する。CuB HSA溶液では、ただ一部のCuBがHSAと分子結合体を形成しており、大量の薬物及びHSAはいずれも遊離の分子状態で溶液に存在する。
【実施例69】
【0200】
実施例69 ククルビタシンB HSAナノ粒子の体内抗腫瘍作用及び白血球の上昇作用
抗腫瘍薬物試験方法に従って、ヌードマウスの体内肝癌H22移植モデルを製作した。ランダムに群分けして、群ごとに10匹で、「ブランクコントロール群」、「シクロホスファミド陽性対照群(CTX 20mg・kg-1)」、「投与治療群(高、中、低剤量群、0.20mg・kg-1、0.10mg・kg-1、0.05mg・kg-1)」、「溶液群」(非ナノ粒子製剤)に分けた。モデル対照群に対し生理食塩水の注射液を投与した。モデル製作した後四日目に、腫瘍が一定の体積になる際に投与した。投与時間:5、7、9、11、13日目に投与した。14日目に、頸椎脱臼で動物を殺し、体重を量り、腫瘍塊を解剖し剥離し、電子てんびんで腫瘍の重量を量った。以下の公式により腫瘍抑制率を計算した。
【0201】
腫瘍抑制率(%)=(1−投与群の平均腫瘍重量/コントロール群の平均腫瘍重量)×100%
すべてのデータはいずれも平均値の標準偏差で(x±SD)表される。
マウスの尾静脈より採血し、通常の白血球カウントを行った。
結果は下記の表9に示す。
【0202】
【表9】

【0203】
ククルビタシンB溶液群において2匹のマウスが死んだが、ナノ粒子群においては死んだマウスがなく、毒性は溶液群より低く、HSAナノ粒子製剤の腫瘍抑制率は溶液群より高かった。HSAナノ粒子は、剤量が溶液群の半分である場合でも、腫瘍抑制率が依然として溶液より高く、剤量が溶液より一倍高い場合でも、毒性が依然として溶液群より低く、治療効果を向上させ毒性を低下させる作用が示された。
【0204】
「ブランクコントロール群」、「シクロホスファミド陽性対照群(CTX、20mg・kg-1)」、「投与治療群(高、中、低剤量群、0.20mg・kg-1 、0.10mg・kg-1、0.05mg・kg-1)」、「溶液群」の白血球数はそれぞれ、6.89、3.11、8.63、8.11、8.21、8.26(×109・L-1)であり、シクロホスファミド陽性対照群の白血球数が大きく低下し、ククルビタシンの各群の白血球数がいずれもシクロホスファミド陽性対照群より高く、かつブランクコントロール群より高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質-リン脂質分散体を含み、タンパク質-リン脂質分散体においてタンパク質とリン脂質の重量比が1:300〜300:1であり、タンパク質-リン脂質の粒径が5nm〜1000nmの間にあること、を特徴とする薬物送達システム。
【請求項2】
前記タンパク質-リン脂質分散体において、リン脂質の表面又はリン脂質の表面と内部がタンパク質層により被覆され、又はリポソーム二重層の内外層がタンパク質により被覆され、又はリポソーム内の水相にタンパク質ナノ粒子が形成されていること、を特徴とする請求項1に記載の薬物送達システム。
【請求項3】
前記タンパク質が、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、オボアルブミン、トウモロコシタンパク質、ヘモグロビン質及びその誘導体、ガラクトース化アルブミン及び修飾ブタ血清アルブミンからなる群から選ばれる少なくとも一種であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の薬物送達システム。
【請求項4】
前記リン脂質が、大豆レシチン、卵黄レシチン、EPG、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸セリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、水素化大豆レシチン、水素化卵黄レシチン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジカプリルホスファチジルコリン、ジオクタノイルホスファチジルコリン、ジヘキサノイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、L-α-ジミリストイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジカプリルホスファチジルグリセロール、ジオクタノイルホスファチジルグリセロール、ジヘキサノイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール及びそのナトリウム塩、ジラウロイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール、ジオレオイルホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルイノシトール、ジラウロイルホスファチジルイノシトール、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルコリン、DSPE-PEG、DPPE-PEG、DMPE-PEG及びDLPE-PEGからなる群から選ばる少なくとも一種であり、前記DSPE-PEG、DPPE-PEG、DMPE-PEG、DLPE-PEGにおけるPEGの分子量が100〜10000であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薬物送達システム。
【請求項5】
さらに、エタノール、メタノール、プロパノール、プロピレングリコール、メチルピロリドン、n-ブタノール、t-ブタノール、アセトン、酢酸エチル及びイソプロピルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒を含むこと、を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薬物送達システム。
【請求項6】
さらに、リン脂質との重量比が1:0.1〜1:10である油類物質を含み、前記油類物質は、MCT、構造化油、トコフェロール、酢酸トコフェロール、オレイン酸、オレイン酸エチル、大豆油、サフラワー油、オリーブ油、椰子油、オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、深海魚油および植物揮発性油からなる群から選ばれる少なくとも一種であること、を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の薬物送達システム。
【請求項7】
さらに、リガンド、抗体を含み、前記リガンドはガラクトース誘導体、トランスフェリン誘導体、葉酸及びその誘導体、アミノグルコース誘導体又はRGD及びその誘導体からなる群から選ばれ、前記抗体はネズミ抗体、ヒト化抗体、組換えネズミ抗体又は組換えヒト化抗体からなる群から選ばれること、を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薬物送達システム。
【請求項8】
さらに、コレステロール及び/又はシトステロールを含むこと、を特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の薬物送達システム。
【請求項9】
さらに、キトサン、オクタデシルアミン、脂肪アミン、ポリアミンコレステロールカチオン脂質又はコレステロールカチオン脂質誘導体の正荷電物質からなる群から選ばれること、を特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の薬物送達システム。
【請求項10】
さらに、pH調整剤を含むこと、を特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の薬物送達システム。
【請求項11】
前記pH調整剤は有機酸アルカリ又は無機酸アルカリであり、クエン酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、酢酸、グルコン酸、ラクトビオン酸、ソルビン酸、コハク酸、マレイン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、ギ酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、水酸化ナトリウム、アルギニン及びリジンからなる群から選ばれる少なくとも一種であること、を特徴とする請求項10に記載の薬物送達システム。
【請求項12】
(1)リン脂質含有相を調製するステップと、
(2)タンパク質含有水相を調製するステップと、
(3)リン脂質含有相とタンパク質含有水相とを混合し、温度0〜60℃、圧力400〜40000psiの条件下で、任意の押出ステップを行い、さらに均質化処理を行うステップとを含むこと、を特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の薬物送達システムの調製方法。
【請求項13】
前記タンパク質含有水相が、0.005〜50%(g/ml)のタンパク質水溶液であること、を特徴とする請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
前記均質化処理が、高圧均質化又はマイクロジェット均質化であること、を特徴とする請求項12又は13に記載の調製方法。
【請求項15】
さらに、凍結乾燥又は噴霧乾燥を含むこと、を特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の調製方法。
【請求項16】
凍結乾燥又は噴霧乾燥に用いられる添加剤は、ショ糖、乳糖、グルコース、マンニトール、デキストラン、トレハロース、キシリトール、マルトース、フルクトース、タンパク質、キトサン、グリシン、クエン酸及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であること、を特徴とする請求項15に記載の調製方法。
【請求項17】
さらに、濾過滅菌を含むことを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の調製方法。
【請求項18】
タンパク質-リン脂質分散体の薬物送達システムへの使用。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−509947(P2011−509947A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542500(P2010−542500)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000063
【国際公開番号】WO2009/092291
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(509008846)シェンヤン・ファーマスーティカル・ユニバーシティ (2)
【出願人】(510197634)ハンジョウ・ユホン・ファーマスーティカル・サイエンス・アンド・テクノロジー・カンパニー・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】