説明

薬物送達ペン用の隠された針を有するハブアセンブリ

【課題】
注射前に患者が針を見なくてすむようにしたペン注射装置用のハブアセンブリを提供する。
【解決手段】
ペン注射装置用のハブアセンブリによって、注射の間、患者がハブアセンブリの針を見なくてすむようになる。ハブは、ペン注射装置に連結される。針はハブに受けられる。圧縮性部材は、ハブに連結され、前記針を完全に覆う第1の位置と注射のために針を露出する第2の位置との間で圧縮可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン注射装置用の隠された針に関する。本発明は、より詳細には、患者が針を見なくてすむようにそれを覆い、注射の間圧縮して針を露出する、ペン注射装置のハブに連結される圧縮性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達ペンは、正確に測定された用量の薬物を自己注射するのに使用される皮下注射器である。ペンは、例えば糖尿病患者によるインスリンの投与に幅広く使用される。
【0003】
典型的な従来技術の薬物送達ペンは、数回の投与に十分な液体薬物量が入ったカートリッジを含む。投与は、筋内組織層、皮下組織層または皮内組織層などの組織領域内になされる。
【0004】
図1、2に示されるような典型的なペン注射装置の組立ておよび動作は、2006年10月12日公開の特許文献1に記載され、その全てを参照により本明細書に組み込む。
【0005】
図1、2に示されるような例示的なペン注射器100のようなペン注射装置は、一般的に、投与ノブ/ボタン24、外側スリーブ13およびキャップ21を備える。投与ノブ/ボタン24によって、使用者は、注射されるべき薬物量をセット可能になる。外側スリーブ13は、薬物を注射するとき使用者によって把持される。キャップ21は、使用者がシャツのポケット、財布または他の適当な場所でペン注射装置100をしっかりと保持するのに使用される。
【0006】
図2は、図1に示される例示的な薬物送達ペンの分解図である。投与ノブ/ボタン24には2つの目的があり、注射されるべき薬物量のセットだけでなく、主ねじ7およびストッパ15によって薬物カートリッジ12を通る投与薬物の注射にも使用される。薬物カートリッジ12は、下側ハウジング17によって薬物送達ペンに取り付けられる。標準的な薬物送達ペンでは、投与送達機構は全て外側スリーブ13内で見られ、それについては精通している当業者なら理解されているのでここではより詳細に説明しない。薬物カートリッジ12内でのプランジャすなわちストッパ15の遠位方向運動によって、薬物がハブ20の針11に押し込まれる。薬物カートリッジ12は、隔壁16によって封じられる。隔壁16は、ハブ20内に配置される隔壁貫通針カニューレ18によって刺される。ハブ20は、好ましくは、下側ハウジング17にねじで取り付けられる、といってもカートリッジへの取付けなど他の取付け手段も使用可能である。使用者またはペン注射装置100を取り扱う人々を保護するため、外側シールド69がハブ20に取り付けられそれを覆う。内側シールド59は、外側シールド69内の患者針11を覆う。内側シールド59は、締まり嵌めまたはスナップ嵌めなどの任意の適当なやり方で、患者針11を覆うようにハブ20に固定され得る。外側シールド69および内側シールド59は使用前に取り外される。キャップ21は外側スリーブ13にぴったり嵌り、それによって使用者が薬物送達ペン100を安全に携帯できるようになる。
【0007】
薬物カートリッジ12は、一般的に、一方の端部が隔壁16で封じられ他方の端部がストッパ15で封じられる、ガラス管である。隔壁16は、隔壁貫通カニューレ18によって貫通可能であるが、薬物カートリッジ12に対しては移動しない。ストッパ15は、流体密封を維持しながら薬物カートリッジ12内で軸方向に移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0229562号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
外側シールド69および内側シールド59は、カートリッジ12内に貯蔵の薬物を患者に注射する前に、ハブ20および針11から取り外される。患者によっては、注射前に見える針11を見て不快になる。したがって、注射前に患者が針を見なくてすむようにするハブアセンブリを有するペン注射装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、ペン注射装置用のハブアセンブリは、注射前に患者が針を見なくてすむようにする圧縮性部材を有する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、圧縮性部材によって、患者に見られることなく針がプライミングされ得るようになる。
【0012】
本発明の例示的な一実施形態によるペン注射装置用のハブアセンブリによって、使用者は注射前に針を見なくてすむようになる。ハブはペン注射装置に連結される。針はハブに受けられる。圧縮性部材は、ハブに連結され、針を完全に覆う第1の位置と注射のために針を露出する第2の位置との間で移動可能である。
【0013】
本発明の目的、利点および顕著な特徴は、添付の図面とあわせて、本発明の例示的な実施形態を明らかにする以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0014】
本発明の様々な実施形態の上述の利得および他の利点は、本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明および添付の図面からより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】組立て後の既存のペン針アセンブリの斜視図である。
【図2】図1のペン針アセンブリの構成要素の分解斜視図である。
【図3】圧縮性部材が針を覆う位置にある、本発明の例示的な一実施形態によるハブアセンブリの斜視図である。
【図4】圧縮性部材が圧縮され針を露出している、図3のハブアセンブリの斜視図である。
【図5】圧縮性部材が針を覆う位置にある、本発明の例示的な他の実施形態によるハブアセンブリの側面図である。
【図6】圧縮性部材が圧縮され針を露出している、図5のハブアセンブリの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
複数の図を通して同じ参照番号は同じ部品、構成要素および構造を示すと理解されよう。
【0017】
図3、4に示されるような本発明の例示的な一実施形態では、ペン注射装置100(図2)用のハブアセンブリ101によって、注射の間、患者がハブアセンブリの針103を見なくてすむようになる。ハブアセンブリ101のハブ111は、ペン注射装置に連結される。針103は、ハブ111に受けられる。圧縮性部材121はハブ111に連結され、それによって注射の間針103が見えなくされる。
【0018】
ハブ111は、図2に示されるような典型的なハブである。ハブ111は、好ましくは円筒形であり、第1の端部112および第2の端部114を有する本体113を有する。実質的に平面の基部115は、ハブ本体113の第2の端部114に形成される。
【0019】
圧縮性部材121は、ハブ111上に配置される。接着剤によって、圧縮性部材の第1の端部123がハブ111の基部115に固定される。圧縮性部材121は、好ましくは、実質的に円筒形である。圧縮性部材121の第2の端部125にある開口127によって、注射の間、針103がそこを貫通することができるようになる。好ましくは、圧縮性部材121は、軟らかい発泡材料製のスポンジである。
【0020】
圧縮性部材121は、図3に示されるようなそれが圧縮されず実質的に針103の全体を覆う第1の位置と、図4に示されるようなそれが圧縮されて針の患者側端部104を露出する第2の位置との間で圧縮可能である。注射の間、ペン注射装置100(図1、2)に下方向の圧力を加えると、図4に示されるように、圧縮性部材121が圧縮される。それに応じて、針103の患者側端部104が露出し、それによって薬物が患者に投与され得るようになる。薬物投与後、針が抜かれ、それによって圧縮性部材に圧力がもはや加えられなくなる。それに応じて、圧縮性部材121は、図3に示されるような非圧縮位置に戻る。
【0021】
圧縮性部材121は、針103がプライミングされると圧縮性部材を変色させる化学指示薬を含むことができる。薬物は、化学指示薬と相互作用し、それによって圧縮性部材121内での色の変化が引き起こされて針のプライミングを示す。したがって、患者が針を見ることなく針103のプライミングがなされ得る。
【0022】
圧縮性部材121は、粘着性微小球を含むことができる。図4に示されるように圧縮性部材121が圧縮されると、粘着性微小球が破裂する。圧縮性部材121が図3に示されるような初期位置に戻ると、粘着性微小球が硬化し、それによって圧縮性部材が硬くなり、その結果もはや圧縮不可能になる。
【0023】
図5、6には、本発明のハブアセンブリ201の例示的な他の実施形態が示される。圧縮性部材221は、ハブ211上に配置される。好ましくは、ハブの柱と圧縮性部材221の間の摩擦嵌合によって圧縮性部材がハブ211に固定される。あるいは、圧縮性部材221の第1の端部223をハブ211の基部215に固定するのに接着剤を使用してもよい。圧縮性部材221は、圧縮性蛇腹部分225および非圧縮性部分227を有する。圧縮性部材221の第2の端部229にある開口228によって、注射の間、針203がそこを貫通できるようになる。
【0024】
圧縮性部材221は、図5に示されるようなそれが圧縮されず針203の全体を覆う第1の位置と、図6に示されるようなそれが圧縮されて針の患者側端部204を露出する第2の位置との間で移動可能である。注射の間、ペン注射装置100(図1、2)に下方向の圧力を加えると、図5に示されるように、圧縮性部材221の蛇腹部分225が圧縮される。それに応じて、針203の患者側端部204が露出し、それによって薬物が患者に投与され得るようになる。薬物投与後、針が抜かれ、それによって圧縮性部材221に圧力がもはや加えられなくなる。それに応じて、圧縮性部材221の蛇腹部分225は、図5に示されるような非圧縮位置まで戻る。
【0025】
前述の実施形態および利点は、単なる例であり、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態の説明は、例示的であり、本発明の範囲の限定を意図するものではない。様々な修正形態、変更形態および変形形態が当業者には明らかであろう。また、それらは、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物において定義される本発明の範囲内に入るものである。
【符号の説明】
【0026】
100 ペン注射装置
101 ハブアセンブリ
103 針
111 ハブ
112 第1の端部
114 第2の端部
121 圧縮性部材
127 開口
221 圧縮性部材
225 圧縮性蛇腹部分
227 非圧縮性部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペン注射装置用のハブアセンブリであって、
前記ペン注射装置に連結するハブと、
前記ハブによって受けられる針と、
前記ハブに連結され、前記針を完全に覆う第1の位置と注射のために前記針を露出する第2の位置との間で圧縮可能である、圧縮性部材と
を備えることを特徴とするハブアセンブリ。
【請求項2】
接着剤は、前記圧縮性部材を前記ハブに固定することを特徴とする請求項1に記載のハブアセンブリ。
【請求項3】
前記圧縮性部材は、発泡材料製であることを特徴とする請求項1に記載のハブアセンブリ。
【請求項4】
前記圧縮性部材は、粘着性微小球であって、前記圧縮性部材が前記第2の位置まで動かされると破裂しその結果前記圧縮性部材が前記第1の位置まで戻されると硬化する、粘着性微小球を有することを特徴とする請求項3に記載のハブアセンブリ。
【請求項5】
前記圧縮性部材は、圧縮性部分と非圧縮性部分を有することを特徴とする請求項1に記載のハブアセンブリ。
【請求項6】
前記圧縮性部分は、蛇腹部分を備えることを特徴とする請求項5に記載のハブアセンブリ。
【請求項7】
前記蛇腹部分は、プラスチック製であることを特徴とする請求項6に記載のハブアセンブリ。
【請求項8】
前記圧縮性部材は、前記針のプライミングの間、薬物に触れると変色することを特徴とする請求項3に記載のハブアセンブリ。
【請求項9】
前記蛇腹部分は、不透明であることを特徴とする請求項6に記載のハブアセンブリ。
【請求項10】
前記圧縮性部材は、実質的に円筒形であることを特徴とする請求項3に記載のハブアセンブリ。
【請求項11】
前記圧縮性部材は、それが前記第1の位置にあるとき、前記ハブの外径よりも小さい外径を有することを特徴とする請求項1に記載のハブアセンブリ。
【請求項12】
前記圧縮性部材は、その第1の端部から第2の端部に延びる開口であって、注射の間前記針がそこを貫通する、開口を有することを特徴とする請求項1に記載のハブアセンブリ。
【請求項13】
ハブに連結され、針を完全に覆う第1の位置と注射のために前記針を露出する第2の位置との間で圧縮可能であるように構成される、圧縮性部材を備えることを特徴とするペン注射装置のハブアセンブリ用のシールド。
【請求項14】
前記圧縮性部材は、発泡材料製であることを特徴とする請求項13に記載のハブアセンブリ。
【請求項15】
前記圧縮性部材は、蛇腹部分を備えることを特徴とする請求項13に記載のハブアセンブリ。
【請求項16】
ペン注射装置の針を見えなくする方法であって、
圧縮性部材で前記ペン注射装置の針を実質的に完全に覆うステップと、
注射のために、前記圧縮性部材を圧縮して前記針を露出するステップと
を含むことを特徴とするペン注射装置の針を見えなくする方法。
【請求項17】
前記圧縮性部材が圧縮されるとき前記圧縮性部材内の粘着性微小球を破裂させ、その結果前記圧縮性部材は、非圧縮位置に戻されると硬くなり、再利用を防止するステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のペン注射装置の針を見えなくする方法。
【請求項18】
薬物に触れると前記圧縮性部材を変色させ、前記針のプライミングを示すステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のペン注射装置の針を見えなくする方法。
【請求項19】
前記針は、患者に見られることなくプライミングされることを特徴とする請求項18に記載のペン注射装置の針を見えなくする方法。
【請求項20】
前記圧縮性部材を圧縮解除し、前記圧縮性部材を非圧縮位置に戻し、前記針を回収するステップをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のペン注射装置の針を見えなくする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−78751(P2011−78751A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−202110(P2010−202110)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】